特許第6711481号(P6711481)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6711481
(24)【登録日】2020年6月1日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】段差解消スロープ
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/00 20060101AFI20200608BHJP
   E04F 15/00 20060101ALI20200608BHJP
【FI】
   E04F11/00 100
   E04F15/00 S
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-238106(P2015-238106)
(22)【出願日】2015年12月4日
(65)【公開番号】特開2017-101524(P2017-101524A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2018年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000138244
【氏名又は名称】株式会社モルテン
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】梶原 隆司
(72)【発明者】
【氏名】大野 博
(72)【発明者】
【氏名】大西 洋
(72)【発明者】
【氏名】天野 恵太
【審査官】 兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−077412(JP,U)
【文献】 特開平09−060279(JP,A)
【文献】 特開2011−214285(JP,A)
【文献】 実開平06−028080(JP,U)
【文献】 特開2015−059387(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/112882(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/00
E04F 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通路上の段差面に当接させる段差解消スロープであって、
前記段差面と交差する方向に所定の傾斜角で傾斜する上面をもつ本体と、
前記上面にあって前記段差面と平行に延在する第1凸部と、
前記上面にあって前記第1凸部の上方側で、前記本体が接地されている前記通路と平行に延在する底面を有する第1深凹部と、を備え、
前記第1凸部が、上方側に前記第1深凹部からC面又はR面状に連続する段部を、下方側に立上り部をそれぞれ有し、前記段部に向かって前記立上り部が陥没し突出部が形成されることを特徴とする段差解消スロープ。
【請求項2】
前記本体が軟質樹脂から形成されることを特徴とする請求項1に記載の段差解消スロープ。
【請求項3】
前記上面が、少なくとも一部の領域において、シボ加工されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の段差解消スロープ。
【請求項4】
さらに、前記第1凸部の下方側で前記第1凸部と平行に延在する浅凹部と、前記浅凹部の下方側で前記浅凹部と平行に延在する第2凸部と、を備え、前記第1凸部及び前記第2凸部が互いに異形状の断面を有する一対の凸部を構成することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の段差解消スロープ。
【請求項5】
前記上面にあって前記段差面と交差して延在する第2深凹部をさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の段差解消スロープ。
【請求項6】
前記浅凹部が前記傾斜角と同じ傾斜角の底面を有することを特徴とする請求項4に記載の段差解消スロープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通路上の段差面に当接させる段差解消スロープに関する。
【背景技術】
【0002】
屋外、屋内を問わず、様々な場所で段差が設けられており、車椅子の利用者、高齢者、足の不自由な方々にとっては、不便のみならず、場合によっては危険な状況に陥るような例もある。このような状況に対し、従来、種々の段差解消スロープが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1は、屋内で車椅子を利用する者が、敷居等の段差のある箇所を容易に通過できるようにするための段差解消用のブロックを開示している。当該ブロックは、スロープの傾斜面(スロープの上面)に、段差との当接面に平行な複数の溝を等間隔に設けており、各溝が車椅子の車輪が傾斜面上を転動する際の滑り止めの機能を果しているとしている。
【0004】
しかしながら、これらの技術では、段差解消スロープの傾斜面は側断面視において単調な凹凸の繰返しになっており、必ずしも滑り止め性能が高くないという問題がある。特に、雨などの悪天候で傾斜面が濡れている場合、洗浄後にまだ傾斜面が乾燥していない場合、車椅子の車輪や歩行者の足又は靴底が濡れている場合などには、傾斜面を乗り越す際に車椅子の車輪が空転してしまったり、高齢者等が足を滑らせてしまったりするおそれが高くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5−77412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のような課題に鑑み、車椅子の通行や高齢者等の徒歩によって乗り越す際における滑り止め性能を高めた段差解消スロープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の構成によって把握される。
(1)本発明の第1の観点は、通路上の段差面に当接させる段差解消スロープであって、前記段差面と交差する方向に所定の傾斜角で傾斜する上面をもつ本体と、前記上面にあって前記段差面と平行に延在する第1凸部と、前記上面にあって前記第1凸部の上方側で平行に延在する第1深凹部と、を備え、前記第1凸部が、上方側に前記第1深凹部から連続する段部を、下方側に立上り部をそれぞれ有し、前記段部に向かって前記立上り部が陥没し突出部が形成されることを特徴とする。
【0008】
(2)上記(1)の構成において、前記本体は、軟質樹脂から形成されてもよい。
【0009】
(3)上記(1)又は(2)の構成において、前記上面は、少なくとも一部の領域において、シボ加工されていてもよい。
【0010】
(4)上記(1)から(3)のいずれか1つの構成において、さらに、前記第1凸部の下方側で前記第1凸部と平行に延在する浅凹部と、前記浅凹部の下方側で前記浅凹部と平行に延在する第2凸部と、を備え、前記第1凸部及び前記第2凸部が互いに異形状の断面を有する一対の凸部を構成してもよい。
【0011】
(5)上記(1)から(4)のいずれか1つの構成において、前記上面にあって前記段差面と交差して延在する第2深凹部と、をさらに備えてもよい。
【0012】
(6)上記(4)の構成において、前記浅凹部は、前記傾斜角と同じ傾斜角の底面を有してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車椅子の通行や高齢者等の徒歩によって乗り越す際における滑り止め性能を高めた段差解消スロープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る段差解消スロープの斜視図である。
図2図1のα−α線における側断面図であって、(a)は全体を、(b)は一部を拡大して示す図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る段差解消スロープの斜視図である。
図4図3のβ−β線における接続部を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
【0016】
(第1実施形態)
第1実施形態にかかる段差解消スロープ1は、屋外や屋内において、通路上に存在する種々の段差面に当接させて使用される。屋内では、例えば、玄関の上り框や、脱衣場と風呂場を仕切る敷居のような段差部などに配置される。屋外では、例えば、家屋や店舗の入口に設けられている道路との間の段差部などに配置される。これらの段差部の高さはいろいろであるが、本実施形態に係る段差解消スロープ1はどのような高さにも適用できるものであり、配置場所を選ばない。
【0017】
段差解消スロープ1は、図1及び図2に示すように、車椅子や高齢者等の歩行者が通行する上面20と、上面20の両端に位置する両側面30,30と、段差面Dに当接する当接面40と、床F等に接地する底面50とによって構成された本体10を備えている。段差面Dの高さは特に限られないが、10〜100mm程度に設定される。
【0018】
上面20は、配置場所に応じて求められる角度で傾斜するとともに、通行方向の距離を有している。上面20には、段差面と平行に延在する浅凹部21と、浅凹部21を挟むように浅凹部21と平行に延在する一対の凸部22,22と、を備えている。浅凹部21と一対の凸部22,22の詳細については、後述する。
【0019】
また、上面20には、一対の凸部22,22の少なくとも一方と浅凹部21とは反対側で平行に延在する第1深凹部23と、浅凹部21及び一対の凸部22,22と交差して延在する第2深凹部24と、をさらに備えている。言い換えると、第1深凹部23は、浅凹部21とそれを挟む一対の凸部22,22とを一単位として、単位同士を区切るように位置している。これら深凹部は、上面20の水はけをよくするために設けられている。なお、図1及び図2では、第1深凹部23が3本、第2深凹部が3本の例を占めているが、これらの本数に限定されるものではなく、段差解消スロープ1の全体的な大きさに応じて適宜設定することができる。
【0020】
両側面30,30は、バリアーフリーの考え方から、上面20と同様に傾斜して構成されている。これにより、側面に車椅子の車輪や歩行者の足が衝突することを防ぐことができ、正面からだけではなく、側面からでも上面20へのアクセスが可能となる。両側面30,30には、上面20上の水分を横に排水するため、上面20から第1深凹部23が延長してきている。第1深凹部23の延長部分231は、上面20の傾斜による高さに応じて、高いほうがより長く、すなわち底面50に近い位置まで形成されている。
【0021】
次に、浅凹部21と一対の凸部22,22の詳細について説明する。図2(a)に示すように、まず、第1深凹部23によって、本体10の上面20は、区切られている。第1深凹部の底面23aは、上面20の傾斜とは異なり、例えば本体10が接地されている床F等と平行に形成されている。これは、上面20の傾斜とした場合に、上面20上の水分が浅凹部21と一対の凸部22,22の上を流れてしまうことを防止するためである。本実施形態では、水分は第1深凹部23及び/又はそれと交差する第2深凹部24を経由して、上面20上から排水される。
【0022】
これに対し、浅凹部21の底面21aは、図中、仮想線L1として示すように、傾斜角θ1をもって上面20の傾斜を構成しており、車椅子や歩行者が上り下りするに際し、円滑な通行が可能なようになっている。傾斜角θ1は車椅子を押して通行できることを考慮し、例えば最大14度に設定される。そして、浅凹部21の両側には浅凹部21を挟むように一対の凸部22,22が設けられており、上面20の低い側にある凸部22を第2凸部221、上面20の高い側にある凸部22を第1凸部222とすると、図2(b)で拡大して示すように、第2凸部221は浅凹部21の底面21aに対し角度θ2で急峻に立ち上がっており、第1凸部222は浅凹部21の底面21aに対し角度θ3でなだらかに立ち上がるように構成されている。
【0023】
また、図2(b)に示すように、第2凸部221と第1凸部222とは、同一又は相似の形状とはなっておらず、異形状となっている。ここで、本明細書では、輪郭が同じでも大きさが異なるものは、異形状とする。より詳しくは、浅凹部21の底面21aをつなぐ仮想線L1よりも上方において、第2凸部221は、上面20の下側から上側に向かって直線的に上方に向かい、頂点221aまできたときに浅凹部21の底面21aの下側端21a1に向かって深く落ち込んでいる。これに対し、第1凸部222は、第1凸部222の上方側で平行に延在する第1深凹部23と連続しており、第1凸部222の上方側には第1深凹部23から連続する段部222cを有している。段部222cを形成することにより、傾斜面ではない部分の面積が大きくなり、ひいては、歩行者の足、車椅子の通行時の車輪の設置面積を増やすことができ、優れた滑り止め効果を奏することが可能となる。また、段部222cをC面又はR面取りすることにより、通行時における足の痛みを和らげることができる。第1凸部222の下方側は、前記浅凹部につながる立上り部222bによってなだらかにつながっている。
【0024】
第1凸部222において、段部222cと立上り部222bとの境界においては、段部222cに向かって立上り部222bが陥没しており、立上り部222bが段部222cよりも上方に位置することにより頂点222a(突出部ともいう)が形成され、第1凸部222は、二段階の凸構造を有している。そして、第2凸部221の頂点221aと第1凸部222の頂点222aは、上面20の全区間を通じて、仮想線L1に平行な仮想線L2上に位置するように構成されている。
【0025】
このように、第2凸部221/浅凹部21/第1凸部222の組合せを一単位とすることにより、単調に凹凸を繰り返すだけの上面よりも、車椅子の車輪でも歩行者の足でも、確実に捉えることができる。すなわち、上面20の下側にあたる第2凸部221が車椅子の車輪や歩行者の足を支えるとともに、上側にあたる第1凸部222が浅凹部21と相まってなだらかに受け止めることができ、通行し易いと同時に滑り止め性能を高めている。
【0026】
そして、最下側の単位を除いて単位の両側に第1深凹部23を設けられていることから、前述したように、雨水等の水分を上面20すなわち第2凸部221/浅凹部21/第1凸部222の組合せの表面に流れ出すことを抑制し、上面20の傾斜方向に設けられている第2深凹部24と相まって排水が円滑に行われ、全体として、滑り止め機能が向上した段差解消スロープ1とすることができる。
【0027】
ところで、本発明にかかる段差解消スロープ1の本体10は、軟質樹脂製とすることが好ましく、上述した構成による効果をより一層奏することができるようになる。軟質樹脂としては、各種のエラストマーを採用することができ、例えば、TPS(スチレン系エラストマー)、TPEE(ポリエステル系エラストマー)、TPO(オレフィン系エラストマー)。TPA(ポリアミド系エラストマー)、TPU(ウレタン系エラストマー)などを採用することができる。
【0028】
さらに、上面20のうち、少なくとも一部の領域、例えば浅凹部21及び一対の凸部22,22の領域において、シボ加工されていることがより好ましい。シボ加工されていると、例えば、段差解消スロープ1が屋内に設置されており、歩行者が滑りやすい靴下を履いているような場合などであっても、より容易に上面20に引っ掛かり、第2凸部221/浅凹部21/第1凸部222の組合せと相まって、滑り止めの効果を相乗的に高めることができる。
【0029】
(第2実施形態)
次に、図3及び図4を参照して、第2実施形態を説明する。第2実施形態は、段差解消スロープ1の両側面30,30のうち少なくとも一方を切断面31とし、複数の本体10を切断面31同士で次のように接続したものである。複数の本体10を接続する点以外は第1実施形態と同様であるので、説明は省略する。なお、図3及び図4では、第2凸部221/浅凹部21/第1凸部222の組合せが5列の場合を示している。
【0030】
図3は、段差面が横方向に長いような場合に対応した段差解消スロープ1を示している、ここでは、互いに一方の側面30を切断された2本の本体10a,10bを接続した例を示している。もちろん、両側面30,30を切断したものを用意し、3本以上の本体を接続させてもかまわない。
【0031】
本体10a,10b同士を接続する場合には、例えば、図4に示すように、当接面40に近い方すなわち高さの高い側の切断面31に2本の締結ピン32,32とその間に大きめの六角ボルト33を取り付け、反対側の高さの低い側の切断面31に2本の小さめの六角ボルト34,34を取り付ける。ここでは図示していないが、本体10a,10bの裏側には切断面31a,31bから所定の距離に空間が設けられており、両方の切断面31a,31bに貫通させた大きめの六角ボルト33及び小さめの六角ボルト34,34を締め付けることによって、2本の本体10a,10bが締結される。
【0032】
(実施形態の効果)
上記した実施形態によれば、段差解消スロープ1は、第2凸部221/浅凹部21/第1凸部222の組合せであって第2凸部221及び第1凸部222を異形状(第2凸部221は浅凹部21に対して急峻、第1凸部222は浅凹部21に対してなだらか)としているので、車椅子の車輪や歩行者の足(屋内での素足や靴下を履いた状態、屋外での靴を履いた状態いずれでも)を支持し易すく、高い滑り止め効果を奏することができる。また、本体10の側面30も傾斜をもって構成されているので、正面からだけでなく左右の側面からでも車椅子や高齢者等の歩行者が楽に上がり下がりすることできる。
【0033】
さらに、段差解消スロープ1は、軟質樹脂で構成したり、第2凸部221/浅凹部21/第1凸部222の表面にシボ加工を施したりすることにより、より一層、引っ掛かり効果が高まる。
【0034】
また、段差解消スロープ1は、底面23aが水平な横方向の第1深凹部23と、傾斜方向の第2深凹部24とが設けられていることにより、屋外に設置されている場合であっても、雨水等の排水が円滑に行われ、水分による滑りを防止することができる。この点、洗浄した場合も同様である。
【0035】
以上、実施形態について説明したが、本発明は、具体的な実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を行ったものも含まれるものであり、そのことは、当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。例えば、段差解消スロープ1を段差面に対して横長にではなく縦長に配置するような形態であってもよいし、段差解消スロープを床等に固定するための手段を付加してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1…段差解消スロープ
10…本体
20…上面
21…浅凹部
21a…底面(浅凹部の)
22…一対の凸部
221…第2凸部
221a…頂点(第2凸部の)
222…第1凸部
222a…頂点(第1凸部の)
23…第1深凹部
23a…底面(第1深凹部の)
24…第2深凹部
24a…底面(第2深凹部の)
30…側面
31…切断面
40…当接面
50…底面
θ1…傾斜角(上面の)
θ2…角度(第1凸部と浅凹部との間)
θ3…角度(第2凸部と浅凹部との間)
D…段差面
F…床等
図1
図2
図3
図4