特許第6711482号(P6711482)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6711482岸壁クレーンおよび岸壁クレーンの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6711482
(24)【登録日】2020年6月1日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】岸壁クレーンおよび岸壁クレーンの制御方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 5/08 20060101AFI20200608BHJP
   B66C 19/00 20060101ALI20200608BHJP
【FI】
   B66C5/08
   B66C19/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-227689(P2016-227689)
(22)【出願日】2016年11月24日
(65)【公開番号】特開2018-83689(P2018-83689A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2019年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】518126144
【氏名又は名称】株式会社三井E&Sマシナリー
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松浦 昌博
(72)【発明者】
【氏名】市村 欣也
【審査官】 羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−037281(JP,U)
【文献】 実開昭59−137269(JP,U)
【文献】 特開2007−261745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 5/08
B66C 19/00−23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚構造体と、この脚構造体に支持されて海陸方向に延在するガーダと、このガーダの海側端部に起伏可能に連結されて海陸方向に延在するブームと、前記ブームを海側に前傾した起立状態に維持する固定機構とを備えていて、
前記固定機構が、前記ブームに設置された係合部と、前記脚構造体に設置されて前記係合部に対して係合および係合解除が自在な係止部とを有し、係合している前記係止部と前記係合部との間にテンションが生じることにより、前記ブームを起立状態に維持する構成にした岸壁クレーンにおいて、
起立状態の前記ブームを海側に押圧して前記テンションを増大させる押圧機構を備えて、
前記押圧機構が、前記脚構造体から突設される脚側部材と、前記ブームから突設されるブーム側部材と、を備えるとともに、前記ブームが起立状態で、前記脚側部材の先端部と前記ブーム側部材の先端部とが前記海陸方向に互いに対向するように前記脚側部材および前記ブーム側部材が配置されて、
前記脚側部材の先端部と前記ブーム側部材の先端部のどちらか一方の先端部が凸型の突起部で構成され、他方の先端部が凹型の孔で構成されて、前記凸型の突起部が前記凹型の孔に嵌入された状態で、起立状態の前記ブームを海側に押圧することを特徴とする岸壁クレーン。
【請求項2】
前記押圧機構が、前記凸型の突起部または前記凹型の孔のいずれか一方をその他方に向かって付勢することで起立状態の前記ブームを海側に付勢する付勢部材を有する請求項1に記載の岸壁クレーン。
【請求項3】
前記固定機構よりも上方となる位置に前記押圧機構が配置されている請求項1または2に記載の岸壁クレーン。
【請求項4】
海陸方向に延在するガーダを脚構造体に設置して、前記ガーダの海側端部から海側にブームを突設して、このブームにシーブを設置して、前記シーブに掛け回されるワイヤロープを巻き取ることにより前記ブームを海側に前傾した起立状態に起立させて、前記ブームに設置された係合部と前記脚構造体に設置された係止部とを係合させて、前記係合部と前記係止部との間にテンションを生じさせることにより前記ブームを起立状態に維持する岸壁クレーンの制御方法において、
前記ワイヤロープにより前記ブームを起立させて、前記係合部と前記係止部とを係合させることにより前記ブームの起立状態を維持するとともに、押圧機構の前記脚構造体から突設される脚側部材の先端部と前記ブームから突設されるブーム側部材の先端部とのどちらか一方の先端部に形成された凸型の突起部を他方の先端部に形成された凹型の孔に嵌入し、
前記凸型の突起部を前記凹型の孔に嵌入した状態の前記押圧機構により起立状態の前記ブームを海側に押圧して前記テンションを増大させることを特徴とする岸壁クレーンの制御方法。
【請求項5】
前記係合部と前記係止部とが係合した後に、前記ワイヤロープの張力を解放する請求項4に記載の岸壁クレーンの制御方法。
【請求項6】
通常時には起立状態の前記ブームを海側に押圧しない待機位置に前記押圧機構を切り替えて、
非常時には起立状態の前記ブームを海側に押圧する作動位置に前記押圧機構を切り替える請求項4または5に記載の岸壁クレーンの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は海陸方向に延在していて起伏可能に構成されるブームを備える岸壁クレーンおよび岸壁クレーンの制御方法に関するものであり、詳しくは荒天時であっても起立状態のブームを安定的に保持することができる岸壁クレーンおよび岸壁クレーンの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンテナ等の貨物を船舶から荷役する際に使用される岸壁クレーンが種々提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
文献1は、ブーム起伏用のワイヤロープでブームを水平状態から起立させた後に、脚構造体に備えたブーム固定ラッチを起立状態のブームのブーム固定ピンに係止させることにより、ブームを起立状態で脚構造体に固定する岸壁クレーンを提案する。
【0004】
海側に前傾したブームが海側に倒れようとするのをブーム固定ラッチにより支持することにより、脚構造体に対してブームを固定状態としている。つまりブーム固定ラッチは引っ張り方向の力によりブームを支持している。ブームを起立状態で固定することにより、船舶の接岸および離岸時に船橋とブームとが干渉することを回避できる。
【0005】
台風などの荒天時には、風等により起立状態のブームが押されることがある。ブームが海側に押される場合はブーム固定ラッチが引っ張りにより支持するので、ブームが傾くなどの不具合は発生しない。しかしながらブームが陸側に押される場合は、ブーム固定ラッチが圧縮方向の力を支持できないのでブームが鉛直に近づく方向に傾く恐れがあった。荒天時にブームが揺動することにより、岸壁クレーンのバランスが不安定になる不具合があった。
【0006】
またブームの揺動にともないブーム固定ラッチとブーム固定ピンとの間に繰り返し衝撃荷重が発生して、ブーム固定ラッチやブームが損傷する不具合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−261745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は荒天時であっても起立状態のブームを安定的に保持することができる岸壁クレーンおよび岸壁クレーンの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成する本発明の岸壁クレーンは、脚構造体と、この脚構造体に支持されて海陸方向に延在するガーダと、このガーダの海側端部に起伏可能に連結されて海陸方向に延在するブームと、前記ブームを海側に前傾した起立状態に維持する固定機構とを備えていて、前記固定機構が、前記ブームに設置された係合部と、前記脚構造体に設置されて前記係合部に対して係合および係合解除が自在な係止部とを有し、係合している前記係止部と前記係合部との間にテンションが生じることにより、前記ブームを起立状態に維持する構成にした岸壁クレーンにおいて、起立状態の前記ブームを海側に押圧して前記テンションを増大させる押圧機構を備えて、前記押圧機構が、前記脚構造体から突設される脚側部材と、前記ブームから突設されるブーム側部材と、を備えるとともに、前記ブームが起立状態で、前記脚側部材の先端部と前記ブーム側部材の先端部とが前記海陸方向に互いに対向するように前記脚側部材および前記ブーム側部材が配置されて、前記脚側部材の先端部と前記ブーム側部材の先端部のどちらか一方の先端部が凸型の突起部で構成され、他方の先端部が凹型の孔で構成されて、前記凸型の突起部が前記凹型の孔に嵌入された状態で、起立状態の前記ブームを海側に押圧することを特徴とする。
【0010】
上記の目的を達成する本発明の岸壁クレーンの制御方法は、海陸方向に延在するガーダを脚構造体に設置して、前記ガーダの海側端部から海側にブームを突設して、このブームにシーブを設置して、前記シーブに掛け回されるワイヤロープを巻き取ることにより前記ブームを海側に前傾した起立状態に起立させて、前記ブームに設置された係合部と前記脚構造体に設置された係止部とを係合させて、前記係合部と前記係止部との間にテンションを生じさせることにより前記ブームを起立状態に維持する岸壁クレーンの制御方法において、前記ワイヤロープにより前記ブームを起立させて、前記係合部と前記係止部とを係合させることにより前記ブームの起立状態を維持するとともに、押圧機構の前記脚構造体から突設される脚側部材の先端部と前記ブームから突設されるブーム側部材の先端部とのどちらか一方の先端部に形成された凸型の突起部を他方の先端部に形成された凹型の孔に嵌入し、前記凸型の突起部を前記凹型の孔に嵌入した状態の前記押圧機構により起立状態の前記ブームを海側に押圧して前記テンションを増大させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、押圧機構が起立状態のブームを海側に押して係合部と係止部との間に発生するテンションを増大させることができるので、ブームを脚構造体により強固に固定することができる。また風等により陸側にブームが押される場合であっても、押圧機構によりブームを支持することができるので、起立状態のブームが海陸方向に揺動することを抑制するには有利である。つまり起立状態のブームは海側にも陸側にも揺動し難いので、荒天時であってもブームを安定的に保持するには有利である。
【0012】
係合部と係止部とが強固に固定されるので、ブームの揺動にともない係合部および係止部に衝撃荷重が発生することを抑制できる。係合部、係止部またはブームが損傷する不具合を回避するには有利である。
【0013】
押圧機構が起立状態のブームを海側に付勢する付勢部材を有する構成にすることができる。
【0014】
この構成によれば付勢部材の付勢力により起立状態のブームを海側に押圧することができるので、係合部と係止部との間に発生するテンションを増大させるには有利である。
【0015】
押圧機構が起立状態のブームを海側に押圧する作動位置と、押圧しない待機位置とが設定されていて、押圧機構を作動位置と待機位置とに切り替え可能な構成にすることができる。
【0016】
この構成によれば押圧機構を待機位置に切り替えた場合、押圧機構に応力が発生しないので押圧機構を構成する部材に疲労や劣化が発生し難くなる。押圧機構の耐久性を向上させるには有利である。
【0017】
係合部と係止部とが係合した後に、ワイヤロープの張力を解放する構成にすることができる。
【0018】
この構成によれば、ワイヤロープに長時間過大な張力が発生する状態を回避できるので、ワイヤロープの長寿命化を実現するには有利である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の岸壁クレーンを例示する説明図である。
図2図1の岸壁クレーンの固定機構と押圧機構との周辺を拡大して例示する説明図である。
図3図2の押圧機構を作動位置に切り替えた状態を例示する説明図である。
図4】固定機構と押圧機構とを配置されるブームの上面を平面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の岸壁クレーンを図に示した実施形態に基づいて説明する。尚、図中ではブームおよびガーダが延在する海陸方向(横行方向ともいう)を矢印x、岸壁クレーンの走行方向を矢印y、上下方向を矢印zで示している。
【0021】
図1に例示するように本発明の岸壁クレーン1は、脚構造体2と、この脚構造体2の上部で支持されて横行方向(海陸方向)xに延在するガーダ3と、このガーダ3の海側端部に連結され横行方向xに延在するブーム4と、このガーダ3およびブーム4に沿って横行方向xに横行するトロリ5とを備えている。ブーム4はヒンジ部6を介してガーダ3に連結されていて、ガーダ3に対して起伏可能に構成されている。
【0022】
脚構造体2は、陸側に配置され上下方向zに延在する一対の陸側脚7と、海側に配置され上下方向zに延在する一対の海側脚8と、この海側脚8の上部に配置される頂部構造体9とを備えている。陸側脚7の上部には機械室10が配置されている。機械室10には、起伏駆動装置11と、この起伏駆動装置11を制御する制御装置(コンピュータ)12とが配置されている。
【0023】
起伏駆動装置11は、ブーム起伏用のワイヤロープ13の繰り出しおよび巻き取りを行なうドラムを備えている。ドラムから繰り出されたワイヤロープ13は、頂部構造体9の上端部に配置されるシーブおよびブーム4の上面に配置される複数のシーブに掛け回される。
【0024】
図1に実線で例示するように荷役作業を行なう作業状態の岸壁クレーン1は、ブーム4が倒伏状態でありその延在方向が水平方向となる。このときトロリ5はガーダ3およびブーム4に沿って横行しながら、コンテナ等の貨物を運搬する。
【0025】
荷役作業が完了して船舶が離岸する場合は、起伏駆動装置11のドラムでワイヤロープ13を巻き取る。ワイヤロープ13の巻き取りにともない、ブーム4はヒンジ部6を中心に起立していく。図1に二点鎖線で示すように、ブーム4が起立状態となったところで起伏駆動装置11を停止する。図1に二点鎖線で示す岸壁クレーン1の状態を休止状態という。本明細書においてブーム4の起立状態とは、ブーム4の延在方向が鉛直に近づいた状態であり、且つ海側に前傾している状態をいう。
【0026】
起立状態のブーム4と頂部構造体9との間には固定機構14が配置されていて、起立状態のブーム4はこの固定機構14により脚構造体2に固定され、起立状態を維持する。
【0027】
図2に例示するように固定機構14は、ブーム4に設置される係合部15と、この係合部15と係合および係合解除が自在であり頂部構造体9に設置される係止部16とを備えている。係合部15は、倒伏状態のブーム4の上面となる上面部から上方に向かって突設される支持フレーム17と、支持フレーム17に固定され走行方向yに沿って延在するブーム固定ピン18とを備えている。
【0028】
係止部16は、頂部構造体9から海側に突設される支持フレーム19と、支持フレーム19の海側端部から海側に向かって突設されブーム固定ピン18と係合可能に構成されるブーム固定ラッチ20とを備えている。このブーム固定ラッチ20は、走行方向yを軸方向とする水平ピン21により支持フレーム19に支持され、支持フレーム19に対して傾動可能に設置されている。
【0029】
また係止部16は、一端を支持フレーム19に固定され他端をブーム固定ラッチ20に固定されるアクチュエータ22を備えている。このアクチュエータ22により、支持フレーム19に対して水平ピン21を中心にブーム固定ラッチ20は傾動することができる。この実施形態ではブーム固定ラッチ20は、海側端部を上方に向けて傾動させた状態である係合解除位置と、海側端部を下方に向けて傾動させてブーム固定ピン18と係合する状態となる係合位置とにアクチュエータ22により移動可能である。
【0030】
ブーム固定ラッチ20は、下方に開口していてブーム固定ピン18と係合可能な切欠き部23を備えている。
【0031】
切欠き部23は下方に開口する形状に限定されず、上方に開口する形状に構成してもよい。この場合は、ブーム固定ラッチ20がブーム固定ピン18と係合する状態となる係合位置よりも、係合解除位置の方がブーム固定ラッチ20の海側端部は下方に位置する。
【0032】
またブーム固定ラッチ20が支持フレーム19に固定される水平ピン21を、上下方向zを軸方向とする垂直ピンで構成してもよい。このときブーム固定ラッチ20は垂直ピンを中心として水平面内で旋回する状態に構成される。
【0033】
天気が比較的に穏やかな通常時に岸壁クレーン1を休止状態とする際には、ワイヤロープ13をドラムで巻き取りブーム4を起立させる。ブーム4が所定の角度まで起立した後に、係合解除位置にあるブーム固定ラッチ20をアクチュエータ22により係合位置に移動させて、切欠き部23とブーム固定ピン18を係合させる。ブーム固定ラッチ20とブーム固定ピン18との係合の後は、ワイヤロープ13を緩めて張力を解放して、ワイヤロープ13に張力がほとんどかからない状態とする。
【0034】
このアクチュエータ22の制御は、機械室10に設置されている制御装置12で行うことができる。アクチュエータ22の制御はこれに限らず、専用の制御装置を別途設置してこの制御装置により制御する構成にしてもよい。
【0035】
起立状態のブーム4は海側に前傾しているので、係合部15と係止部16との間には引張方向のテンションTが発生する。このテンションTの大きさはブーム4の自重に応じた大きさとなる。このテンションTによりブーム4は陸側に引っ張られて、起立状態で脚構造体2に固定される状態となる。
【0036】
図2および図3に例示するように岸壁クレーン1は、固定機構14の近傍に設置される押圧機構24を備えている。この実施形態では押圧機構24が、頂部構造体9から海側に突設される脚側部材25と、倒伏状態のブーム4の上面となる上面部から上方に向かって突設されるブーム側部材26とを備えている。脚側部材25とブーム側部材26とは、ブーム4が起立状態のときにそれぞれの突設方向(以下、軸方向ということがある)が平面視において横行方向xと平行となり、互いに対向する位置に配置されている。
【0037】
押圧機構24は、ブーム4とブーム側部材26との間に配置される移動機構27を備えている。移動機構27は、ブーム側部材26をその軸方向に沿って移動させる構成を有していて、例えば油圧や空気圧を利用した伸縮シリンダで構成されている。図2に例示するようにブーム側部材26と脚側部材25とが接触しない待機位置と、図3に例示するようにブーム側部材26と脚側部材25とが接触する作動位置とに、移動機構27はブーム側部材26を移動させることができる。
【0038】
移動機構27の構成は上記に限らず、例えばラックアンドピニオンなどブーム側部材2
6を作動位置と待機位置とに切り替え可能であればよい。移動機構27は、ブーム側部材26に配置される構成に限らず、脚側部材25に配置される構成としてもよい。また移動機構27は、脚側部材25またはブーム側部材26の軸方向に沿った軸線上に配置されていればよく、脚側部材25やブーム側部材26の軸方向における途中部分に配置されてもよい。
【0039】
図2に例示するように通常時には、移動機構27が収縮することにより、ブーム側部材26が脚側部材25と離間する待機位置に維持される。
【0040】
風速が例えば30m/sec以上となる荒天時には、図3に例示するように移動機構27を伸長させることにより、ブーム側部材26が脚側部材25と接触する作動位置に移動する。本明細書において通常時とは、荒天時ではないとき、即ち風速が例えば30m/secよりも小さいときをいう。
【0041】
通常時と荒天時とを分ける風速は上記に限らず適宜設定することができる。例えば平均風速が10m/sec以上のときを荒天時に、10m/secより小さいときを通常時に設定することができる。また例えば平均風速が55m/sec以上のとき荒天時に、55m/secより小さい時を通常時に設定してもよい。
【0042】
図3に例示するようにブーム側部材26が作動位置となったとき、押圧機構24を構成する脚側部材25とブーム側部材26とが接触して互いに押し付けられて、これにともない反力Fを発生させる。そのためブーム4は押圧機構24により海側に押される力を受ける。
【0043】
ブーム4はブーム固定ラッチ20により海側に倒れないように支持され、押圧機構24により陸側に倒れないように支持される。つまりブーム4は海側にも陸側にも移動せず積極的に固定された状態となるため、荒天時に風等に押されてもブーム4が海陸方向に揺動し難くなる。起立状態のブーム4を安定的に保持するには有利である。
【0044】
押圧機構24により係合部15と係止部16との間に発生するテンションTを通常時よりも増大させることができる。固定機構14と押圧機構24とにより、起立状態のブーム4がその場に留まろうとする力が大きくなるので、テンションTまたは反力Fよりも小さい力の影響をブーム4はほとんど受けなくなる。起立状態のブーム4の安定性を向上するには有利である。
【0045】
ブーム固定ラッチ20とブーム固定ピン18とが係合した後に、ワイヤロープ13の張力を解放するので、ワイヤロープ13に長時間過大な張力が発生する状態を回避できる。ワイヤロープ13の長寿命化を実現するには有利である。またブーム4は固定機構14と押圧機構24とにより強固に固定されているので、荒天時にブーム4が海陸方向xに揺動してワイヤロープ13に過大な張力が発生する不具合を回避するには有利である。なおワイヤロープ13の張力を解放する構成は本発明の必須要件ではない。
【0046】
図2および図3に例示する実施形態では、係合部15がブーム固定ピン18を有し、係止部16がブーム固定ラッチ20を有しているが、本発明はこの構成に限定されない。係合部15をブーム固定ラッチ20等で構成し、係止部16をブーム固定ピン18等で構成してもよい。
【0047】
図2および図3に例示する実施形態では、ブーム側部材26の端部が凸型の半球形状の突起部で構成され、脚側部材25の海側端部が凹型の孔で構成されている。脚側部材25は孔に嵌入されたブーム側部材26の突起部を海側に押し返すことにより、ブーム4を海
側に押す反力Fを発生させている。
【0048】
脚側部材25の孔の底の周辺部に緩衝部材28を設置する構成にしてもよい。緩衝部材28を設置することにより、孔の底に応力が集中して破損する不具合を回避することができる。
【0049】
脚側部材25とブーム側部材26とが接触する端部の形状は上記に限らない。例えば脚側部材25の端部が凸型の半球形状の突起部で構成され、ブーム側部材26の端部が凹型の孔で構成されてもよい。この場合はブーム側部材26に緩衝部材28を設置する構成にしてもよい。また両方の端部をともに平面形状に形成して、平面どうしを接触させて反力Fを発生させる構成にしてもよい。
【0050】
脚側部材25とブーム側部材26とは、その突設方向に伸縮しない例えば鋼材等で構成することができる。脚側部材25とブーム側部材26の軸方向におけるそれぞれの長さは、図2に例示する待機位置にブーム側部材26が位置する通常時は互いに接触しない長さであり、図3に例示する作動位置に位置する非常時は互いに接触して反力Fを発生させる長さに設定される。休止状態の岸壁クレーン1における脚側部材25およびブーム側部材26の軸方向は、平面視において横行方向xと平行となる。
【0051】
脚側部材25またはブーム側部材26の少なくとも一方に、これらの突設方向に伸縮する付勢部材29を配置してもよい。付勢部材29は、例えばゴム部材や伸縮シリンダ等で構成することができる。図3に例示するようにブーム側部材26に付勢部材29を配置する場合は、脚側部材25とブーム側部材26との嵌合にともない付勢部材29が収縮する。収縮した付勢部材29はブーム4を海側に押圧する反力Fを発生させる。付勢部材29は脚側部材25に設置する構成にしてもよい。
【0052】
付勢部材29が押圧機構24の軸方向(横行方向x)に収縮できるので、ブーム側部材26が軸方向に移動する際の作動位置と待機位置との位置決めの精度がそれほど高くなくても反力Fを発生させることができる。
【0053】
移動機構27を構成する伸縮シリンダ等を付勢部材29として利用してもよい。この場合は、移動機構27はブーム側部材26を作動位置と待機位置との間で切り替える構成に加えて、ブーム側部材26を脚側部材25に付勢する構成を備える。
【0054】
図2に例示する通常時にも脚側部材25とブーム側部材26とが接触する構成としてもよい。つまりブーム4が起立状態のときには、押圧機構24によりブーム4が常時海側に押圧される構成にしてもよい。この構成により通常時も押圧機構24が働きブーム4を海側に押圧することができるので、通常時に突発的に風速の大きな風が発生した場合であってもブーム4が陸側に倒れることを回避できる。
【0055】
通常時には脚側部材25とブーム側部材26とが離間する構成とした場合には、通常時には押圧機構24を構成する各部材に応力が発生しないので押圧機構24の疲労や劣化を抑制するには有利である。
【0056】
図3に例示する実施形態では、頂部構造体9に設置されている固定機構14よりも上方となる位置に押圧機構24が配置されている。押圧機構24の方が固定機構14よりもヒンジ部6から離れた位置となるため、押圧機構24でブーム4を海側に押圧する力はてこの原理により増幅される。ブーム4を海側に押圧する押圧力を増大させるには有利である。
【0057】
本発明はこの構成に限定されず、頂部構造体9に設置されている固定機構14よりも下方となる位置に押圧機構24を配置する構成にしてもよい。この構成により固定機構14を頂部構造体9のより上方となる位置に配置することが可能となるので、ヒンジ部6から比較的離れた位置でブーム4を支持することができる。てこの原理により固定機構14は比較的小さな力でブーム4の起立状態を維持することができる。固定機構14を構成する各部材の強度等を抑制して、固定機構14の製造コストを抑制するには有利である。
【0058】
また固定機構14と押圧機構24とを上下方向zにおいて同じ高さで、走行方向yに並べて配置する構成にしてもよい。
【0059】
図4に例示するように岸壁クレーン1は、倒伏状態のブーム4において走行方向yと平行となる幅方向の略中心にワイヤロープ13を掛け回すシーブ30が設置されている。ブーム4の幅方向の略中心に沿ってワイヤロープ13が張設される。そのためブーム4の上面はワイヤロープ13を境界として一方側P1と他方側P2とに分けられている。
【0060】
固定機構14を構成する係合部15と押圧機構24を構成するブーム側部材26とは、ブーム4の上面の一方側P1に横行方向xに整列した状態で配置することが望ましい。この構成により、ブーム4の上面の他方側P2を通路31として確保することができる。この通路31は岸壁クレーン1のメンテナンス等を行なう際の作業員の通行に利用することができる。
【0061】
本発明の構成は、ガーダ3とブーム4とを連結するヒンジ部6に加えて、ブーム4の途中部分にもヒンジ部を備えている中折れ式クレーンにも適用することができる。中折れ式クレーンは休止状態のときにブーム4の海側部分とガーダ4とが水平な状態となり、これらの間に配置されるブーム4の陸側部分が起立状態となるクレーンである。そのためブーム4の陸側部分に係合部15は固定される。
【符号の説明】
【0062】
1 岸壁クレーン
2 脚構造体
3 ガーダ
4 ブーム
5 トロリ
6 ヒンジ部
7 陸側脚
8 海側脚
9 頂部構造体
10 機械室
11 起伏駆動装置
12 制御装置(コンピュータ)
13 ワイヤロープ
14 固定機構
15 係合部
16 係止部
17 支持フレーム
18 ブーム固定ピン
19 支持フレーム
20 ブーム固定ラッチ
21 水平ピン
22 アクチュエータ
23 切欠き部
24 押圧機構
25 脚側部材
26 ブーム側部材
27 移動機構
28 緩衝部材
29 付勢部材
30 シーブ
31 通路
T テンション
F 反力
P1 (ブームの上面の)一方側
P2 (ブームの上面の)他方側
x 横行方向
y 走行方向
z 上下方向
図1
図2
図3
図4