(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
防火戸(防火仕様の自動ドアや開き戸等)では、全閉姿勢にある扉体が建物開口部を閉鎖することで、火災側の第1の空間と非火災側の第2の区間を区画し、第1の空間で火災が発生した場合に、第2の空間への延焼を防止する。
【0003】
防火戸の性能を評価する上で、第1の区間で火災が起きた場合に、非火災側である第2の空間において、所定時間発火が観察されないことが重要である。防火戸において、防火戸を構成する扉体や枠体等の構造物は、スチールやステンレス等の耐火製のある金属材料やその他の耐火材料(耐火ガラス等)から構成されており、第1の空間で発生した火炎が第2の空間へ延焼することが可及的に防止される。
【0004】
防火戸が通常の扉装置としても用いられる場合には、建物開口部を挟んで第1側及び第2側にそれぞれセンサが設けられる場合がある。より具体的には、建物開口部の上方の上ケースや上枠の構造物の第1側の面、第2側の面にセンサを設け、センサの検知信号を配線によって制御部に送信し、建物開口部の上方に設けた扉体の駆動機構を制御して扉体を開閉駆動することが行われる。例えば、第1側で火災が発生した場合に、火災初期においては、上ケース等の構造物の存在によって、当該構造物の第2側の面への熱伝導は遅延されるが、時間が経つにつれて、第2側の面の温度が上昇することになる。ここで、センサは取付部を含む大部分が樹脂から形成されているので、第2側の面の温度上昇によって取付部の樹脂が溶融すると、センサが第2側の面から脱落してしまう。センサが脱落すると、センサと制御部を繋ぐ配線が引き出されて当該センサがぶらさがった状態となるが、センサが建物開口部の高さ内にまで垂れ下がると、より高い輻射熱に晒されることになり、センサが自然発火温度に達した場合には、センサが発炎して防火扉としの性能を担保できなくなる可能性がある(
図4、
図12参照。これらの図については後に詳述する)。
【0005】
特許文献1には、防火仕様の自動ドア装置における周辺機器の発火防止装置が開示されており、防火仕様の自動ドア装置又はその近傍に取付け部材により設置したドア用周辺機器に、その発火温度より低い温度で当該機器を脱落させる手段(例えば、熱溶融性の取付け部材)を設けることで、火災発生時において、防火戸の周辺機器を、発火の可能性がある高温域から離脱させて比較的低温域である床面に落下させ、当該周辺機器の発火を防止している。特許文献1は、非燃焼側に設置されている周辺機器の発火を防止しようという点において、本願発明と共通するものであるが、以下に述べる本明細書の記載から明らかなように、具体的な課題達成手段が異なる。
【特許文献1】特許第3012233号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、センサを備えた防火戸において、非火災側のセンサの自然発火を防止することによって、当該防火戸の防火性能を確保することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明が採用した技術手段は、
建物開口部を閉鎖する扉体によって、火災側の第1の空間と非火災側の第2の空間に区画する防火戸において、
前記建物開口部の周辺の構造物の第2の空間に面する面部の所定部位にセンサが取り付けられており、
少なくとも前記所定部位を含む領域において、前記面部の外側、あるいは/および、内側には断熱材が設けてあり、
センサが取り付けられた状態において、火災時に、前記断熱材によって非火災側のセンサへの熱伝導を抑制する、
防火戸におけるセンサの取付構造、である。
【0008】
1つの態様では、前記構造物は上ケースであり、
前記第2の空間に面する面部は前記上ケースの見付面であり、
前記センサは、前記見付面の所定部位の外側に設けた断熱材に当接させた状態かつ前記見付面に非接触の状態で固定されている。
後述する図示の実施例では、前記センサは、螺子によって前記断熱材及び前記見付面に固定されているが、前記センサを、螺子によって前記断熱材のみに固定してもよい。
【0009】
1つの態様では、前記構造物は上ケースであり、
前記第2の空間に面する面部は前記上ケースの下面であり、
前記下面には切欠き部が形成されていると共に、切欠き部の上方に位置して下向き開口状の凹部が形成されており、
前記センサは、前記凹部内に位置した状態で、前記切欠き部の周縁に固定されており、
前記凹部を形成する壁の内側、あるいは/および、外側に断熱材が設けてあり、前記センサは、前記断熱材に囲まれた状態で取り付けられている。
1つの態様では、前記断熱材は、前記下向き開口状の凹部を設けずに、前記上ケース内に位置して、前記センサを囲むように取り付けられる。例えば、前記センサに被せるようにして断熱材を設けてもよい。
【0010】
1つの態様では、前記上ケースの一部は点検カバーとなっており、前記センサ及び前記断熱材は前記点検カバーに設けられる。
後述する実施例では、前記点検カバーの見付面(上ケースの室内側見付面)の外側に断熱材が設けてあるが、前記点検カバーの見付面(上ケースの室内側見付面)の内側に断熱材を設けてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、建物開口部の周辺の構造物を経由して、構造物の非火災側に設けたセンサへの熱伝導を抑制することで、前記センサが構造物から脱落する可能性を低減し、前記センサが発炎することを可及的に防止することで、防火戸の防火性能を向上させることができる。
本発明は、非火災側のセンサへの熱伝導を抑制して当該センサがなるべく脱落しないようにする点に特徴があるのに対して、特許文献1では積極的にセンサを脱落させる点に特徴を備えており、両者の技術思想は異なる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1において、左図は本実施形態に係る自動ドア装置(全閉状態)を室内側から見た正面図、右図は同装置を室外側から見た正面図であり、
図2は自動ドア装置の縦断面図である。自動ドア装置は、戸先側縦枠1と、戸尻側縦枠2と、上ケース3と、下枠4と、から形成された枠部と、枠部の幅方向戸尻側半部に設けられた縦長方形状の固定パネル5と、幅方向戸先側半部に形成された建物開口部を開閉する縦長方形状の扉体6と、を備えている。扉体6は、戸先側縦框60、戸尻側縦框61、上框62、下框63と、扉体6の面部を構成するパネル体64と、からなる。
図2において、扉体6を挟んで、左側が室外側、右側が室内側である。自動ドア装置は防火仕様となっており、戸先側縦枠1、戸尻側縦枠2、上ケース3、下枠4、戸先側縦框60、戸尻側縦框61、上框62、下框63は鋼製であり、パネル体64は耐火ガラス等の耐火部材からなる。
【0014】
上ケース3は、全体として開口幅方向に延びる箱状体であり、内部空間には、扉体6の走行機構(図示せず)及び駆動機構(図示せず)が収容されている。走行機構及び駆動機構は当業者においてよく知られているので省略されているが、1つの態様では、扉体6は上吊式引戸であり、上框62の上方部位は上ケース3内に位置しており、上框62の上面には、戸先側部位と、戸尻側部位にそれぞれ戸車が設けてある。例えば、戸先側の戸車が従動側戸車、戸尻側の戸車が駆動側戸車となっている。上ケース3の内部空間の下側部位に位置して、開口幅方向に延びるレールが設けてあり、扉体6の開閉移動時には、戸車がレール上を転動するようになっている。また、扉体6の開閉移動時には、下框63の下端に形成した振れ止め用のガイド突起630が、床面FLに埋設された下枠4に形成された凹状のガイド溝40に沿って移動するようになっている。
【0015】
駆動機構は、駆動側戸車を走行させる駆動チェーンと、駆動チェーンを駆動させる電動モータと、を備えており、通常時には、電動モータの正逆回転によって、戸車がレール上を転動することで、扉体6がレール上をスライド移動して開口部を開閉する。駆動機構は、さらに、自閉装置を備えており、開口部開放状態(全開及び半開を含む)において火災が発生した場合には、自閉装置が作動して、扉体6を閉鎖方向に移動させて全閉状態とする。
【0016】
上ケース3は、室外側見付面30と、室外側下面31と、室内側見付面32と、室内側下面33と、室外側見付面30と室内側見付面32を接続する上面34と、を備えており、鋼製の板材から形成されている。上ケース3の室内側部位は、室内側見付面32と室内側下面33とから断面視L形状に形成された点検カバーとなっている。点検カバーを構成する室内側見付面32の上端の片321は、丁番(図示せず)によって、上面34の室内側端部に形成された片340に対して回動可能に連結されており、点検カバーは、上ケース本体(室外側見付面30、室外側下面31、上面34、片340)に対して回動可能となっている。点検カバーを開放することで、上ケース3の内部空間を露出させ、駆動機構のメンテナンスが可能となっている。なお、点検カバーは掛止部を介して上ケース本体に回動可能に掛止させてもよく、あるいは、点検カバーを脱着可能に上ケース本体に固定させてもよい。
【0017】
上ケース3の室外側見付面30、室内側見付面32には、全閉時の扉体6の幅方向中央部位の上方に位置して、それぞれセンサ7が設けてある。センサ7は、センサ本体70と、カバー71と、からなる。センサ本体70は、赤外光を発する送光部と、反射光を受光する受光部と、を備え、センサ本体70の送光部から赤外光を全閉姿勢の扉体6の室外側及び室内側の所定の検知エリアにそれぞれ照射し、受光部の受光量の変化から、検知エリアに人や物が進入したことを検知し、検知信号を出力する。センサ本体70は、検知信号を出力するための配線72を備えており、配線72は、上ケース3内に設けられた制御部(図示せず)に接続されている。配線72は、上ケース3の室外側見付面30、室内側見付面32にそれぞれ形成した挿通孔(図示せず)を通って、上ケース3内に延びており、また、配線72は余長部(遊び長さ)を有しており、撓んだ状態(具体例では、ケース内に這わせて、制御部近傍で束ねた状態)で上ケース3内に収容されている。センサ7が検知エリアに進入した人を検知して、検知信号が出力されると、その検知信号が入力された制御部から電動モータに駆動信号が出力され、電動モータが回転して、閉鎖姿勢にある扉体6を開放方向に移動させる。
【0018】
センサ本体70は、センサ7の取付面となる底面700を有しており、底面700の上側部位は、肉薄の取付部701となっている。センサ本体70は、底面700を構造物の被取付面に当接させて、取付部701に形成された挿通孔702を通る螺子によって、構造物に固定される。カバー71は、カバー71をセンサ本体70に被せて一体化できるような形状に形成されている。センサ本体70(取付部701を含む)およびカバー71は樹脂製(例えば、ABS樹脂)である。
【0019】
従来のセンサ7は、センサ本体70の底面700を、上ケース3の室外側見付面30、室内側見付面32にそれぞれ直接当接させて、センサ本体70の上側に一体形成した取付部701を金属製の螺子で室外側見付面30、室内側見付面32にそれぞれ固定することで取り付けられており、室外側見付面30、室内側見付面32に固定されたセンサ本体70に対してカバー71を被せていた。
【0020】
図4を参照しつつ、従来のセンサの取付構造の課題について説明する。
図4は、室外側で火災が発生した場合を想定しており、扉体6を挟んで左側が加熱面、右側が非加熱面(防火試験における観察面)となる。なお、
図4では、センサ本体の取付部は図示されていない。
(ア)は加熱前の状態を示す。
(イ)は加熱中の状態(経過時間前半)を示し、(ア)の状態において室外側で火災が発生すると、加熱面である上ケース3の室外側見付面30に固定された室外側のセンサ7は、加熱直後から高温に晒され、早い段階で樹脂製のセンサ本体70の取付部が溶融して、室外側見付面30から脱落し、自然発火温度に達すると発炎する。非加熱面側の室内側見付面32に固定された室内側のセンサ7については、上ケース3の室内外方向の厚さ分、温度上昇のタイミングが遅れる。
(ウ)は加熱中の状態(経過時間後半)を示し、(イ)の状態からさらに加熱されると、室内側のセンサ7の取付部が溶融して、センサ7が室内側見付面32から脱落するが、センサ7は、その配線72によって室内側見付面32からぶら下がった状態となり、センサ7の一部が上ケース3の下端よりも下方に位置すると、その部分が加熱面側の輻射熱を直接受けることになる。この時、センサ7はある程度の自己消化性がある材質から形成されているので、発火しないまま60分経過すれば、特定防火設備としての性能を満たすことになる。しかし、センサ7が自然発火温度に達して発炎してしまうおそれがある。
(エ)は加熱中の状態を示し、(ウ)の状態に比べてセンサ7がさらに下方に位置しており、センサ7はガラスを通してさらに高温の輻射熱に晒されるため、センサ7が自然発火温度に達し、発炎のおそれが高い。
(オ)は加熱中の状態を示し、センサ7が床面に落下した状態を示す。落下した位置で高温の輻射熱に晒されてセンサ7が自然発火温度に達し、発炎のおそれが高い。
【0021】
本実施形態では、少なくとも一方のセンサ7(図示の例では、室内側のセンサ7)において、センサ本体70の底面700(取付部701を含む)が上ケース3の室内側見付面32と直接接触することがないように、センサ本体70の底面700と室内側見付面32との間に断熱材8が介装されている。断熱材8の断熱効果によって、上ケース3の室内側見付面32からセンサ本体70への熱伝導を抑制することで、熱伝導によりセンサ取付部701の樹脂が溶融することを可及的に防止して、室内側のセンサ7が脱落するおそれを低減し、結果として室内側のセンサ7が自然発火温度に達して発炎するおそれが低減する。
【0022】
本実施形態に係るセンサの取付構造の実施例を
図5に示す。
図5(A)は第1実施例を示し、
図5(B)は第2実施例を示し、
図5(C)は第3実施例を示す。
図6は
図5(A)の最右図の部分拡大図であり、
図7は
図5(B)の最右図の部分拡大図であり、
図8は
図5(C)の最右図の部分拡大図である。
【0023】
図5(A)及び
図6に基づいて、第1実施例について説明する。センサ7のセンサ本体70の底面700(取付部701を含む)に対応する面積(略同面積)を備えた断熱材8を用意する。断熱材8は、所定厚の板状体であり、第1面80と第2面81を備えている。断熱材8は、例えば、ケイ酸カルシウム板や石膏ボード等から構成されているが材質は限定されない。
【0024】
断熱材8は、第1面80を上ケース3の室内側見付面32の所定部位に当接させて、第1螺子S1によって室内側見付面32に対して固定する。次いで、センサ本体70の底面700(取付部701を含む)を断熱材8の第2面81に当接させて、センサ本体70の上側に一体形成された取付部701において、第2螺子S2によって、断熱材8及び室内側見付面32に固定する。センサ本体70を取り付けるにあたり、断熱材8及び室内側見付面32の所定部位には挿通孔(図示せず)が形成されており、センサ本体70から延びる配線72は挿通孔を通って上ケース3内部に延びており、上ケース3内に設けた制御部(図示せず)に接続されている。次いで、カバー71をセンサ本体70に被せる。図示の態様では、第2螺子S2は断熱材8及び室内側見付面32に螺設されているが、センサ本体70の取付部701を第2螺子S2によって、断熱材8にのみ固定する(例えば、断熱材8に埋め込んだナットに固定する)ようにしてもよい。こうすることで、火災時の熱が、第2螺子S2を介して上ケース3の室内側見付面32から取付部701に伝達することを防止できる。
【0025】
第1実施例において、センサ本体70の底面700は、上ケース3の室内側見付面32に直接接触することがなく、室内側見付面32とセンサ本体70の底面700の間には断熱材8が介装されているので、室内側見付面32からの直接の熱伝導が遮断され、センサ本体70の取付部701の温度上昇を抑制し、室内側見付面32からのセンサ7の脱落を防止する。
【0026】
図5(B)及び
図7に基づいて、第2実施例について説明する。第2実施例は、第1実施例の変形例であって、カバー71の足を延ばして、センサ本体70に被せた時に、断熱材8も一緒に覆うようになっている。第2実施例では、断熱材8が外部に露出することがないので美観上良好である。
【0027】
図5(C)及び
図8に基づいて、第3実施例について説明する。第3実施例は、第1実施例の変形例であって、上ケース3の室内側見付面32の所定部位に、凹部320を形成し、凹部320に断熱材8を装着するようになっている。凹部320は、室内側見付面32の所定部位に形成した切り欠きを上ケース3の内部から覆うように、断面視皿状の鋼製部材を取り付ける(例えば溶接)ことで形成されており、上面3200、下面3201、垂直状の底面3202、左右の側面(図示せず)から形成されている。断熱材8は、凹部320に埋め込んだ状態で室内側見付面32に固定される。より具体的には、断熱材8は、第1面80を凹部320の底面3202に当接させ、第1螺子S1によって底面3202に固定される。断熱材8を凹部320に固定した状態で、断熱材8の厚さ方向の一部は、凹部320からはみ出しており、断熱材8の第2面81は室内側見付面32に対して室内側に位置している。
【0028】
次いで、センサ本体70の底面700を断熱材8の第2面81に当接させて、センサ本体70の上側に形成された取付部701において、第2螺子S2によって、断熱材8及び凹部320の底面3202に固定する。センサ本体70の取付において、断熱材8及び底面3202の所定部位には挿通孔(図示せず)が形成されており、センサ本体70から延びる配線72は挿通孔を通って上ケース3内部に延びており、上ケース3内に設けた制御部(図示せず)に接続されている。次いで、カバー71をセンサ本体70に被せる。第3実施例では、より肉厚の断熱材8を採用できるものでありながら(より高い断熱効果を奏する)、センサ7の室内側見付面32からの突出寸法を抑えることができ、美観上良好である。図示の態様では、第2螺子S2は断熱材8及び凹部320の底面3202に螺設されているが、センサ本体70の取付部701を第2螺子S2によって、断熱材8にのみ固定する(例えば、断熱材8に埋め込んだナットに固定する)ようにしてもよい。
【0029】
本発明の他の実施形態について図面に基づいて説明する。
図9において、左図は他の実施形態に係る自動ドア装置(全閉状態)を室内側から見た正面図、右図は同装置を室外側から見た正面図であり、
図10は自動ドア装置の縦断面図である。
図9、
図10はそれぞれ
図1、
図2に対応しており、同一の要素については同一の参照番号が付されており、同一の参照番号が付された要素の説明については上述の記載を援用することができる。
図9、
図10に示す実施形態と
図1、
図2に示す実施形態との差異は、センサの形状及びセンサの取付部位の差異である。
【0030】
センサ9は、センサ本体90と、直方体状の取付ブラケット91と、からなる。取付ブラケット91の下面は開口しており、当該開口から取付ブラケット91内にセンサ本体90を嵌合することで一体化されている。取付ブラケット91の開口の周縁には周縁プレート910が形成されており、取付ブラケット91の長さ方向の両端には可動の取付タブ911が設けてある。センサ9はいわゆるビルトインタイプであり、従来では、上ケース3の室内側下面33に形成した切欠き部から上ケース3内に挿入し、切欠き部の周縁331を、取付タブ911と周縁プレート910で挟むようにして取り付けられている。すなわち、取付タブ911と周縁プレート910がセンサ9の取付部となっている。センサ9の大部分は、取付タブ911及び周縁プレート910を含み、樹脂製である。
【0031】
センサ9の目的・機能は、センサ7と同様であり、センサ本体90は、赤外光を発する送光部と、反射光を受光する受光部と、を備え、センサ本体90の送光部から赤外光を全閉姿勢の扉体6の室外側及び室内側の所定の検知エリアにそれぞれ照射し、受光部の受光量の変化から、検知エリアに人や物が進入したことを検知し、検知信号を出力する。センサ本体90は、検知信号を出力するための配線92を備えており、配線92は、上ケース3内に設けられた制御部(図示せず)に接続されている。配線72は余長部(遊び長さ)を有しており、撓んだ状態(具体例では、ケース内に這わせて、制御部近傍で束ねた状態)で上ケース3内に収容されている。検知信号が出力されると、検知信号が入力された制御部から電動モータに駆動信号が出力され、電動モータが回転して、閉鎖姿勢にある扉体6を開放方向に移動させる。
【0032】
図12を参照しつつ、従来のビルトインタイプのセンサの取付構造の課題について説明する。
図12は、室外側で火災が発生した場合を想定しており、扉体6を挟んで左側が加熱面、右側が非加熱面(防火試験における観察面)となる。なお、
図12では、センサ9の取付部は図示されていない。
(ア)は加熱前の状態を示す。
(イ)は加熱中の状態(経過時間前半)を示し、(ア)の状態において室外側で火災が発生すると、加熱面である上ケース3の室外側下面31に固定された室外側のセンサ9は、加熱直後から高温に晒され、早い段階でセンサ9の取付部(樹脂製)が溶融して凹部310から脱落し、自然発火温度に達すると発炎する。非加熱面側の室内側下面33に固定された室内側のセンサ9については、上ケース3の室内外方向の厚さ分、温度上昇のタイミングが遅れる。
(ウ)は加熱中の状態(経過時間後半)を示し、(イ)の状態からさらに加熱されると、室内側のセンサ9の取付部が溶融して、センサ9が室内側下面33の凹部330から脱落するが、センサ9は、その配線92によって凹部330からぶら下がった状態となり、センサ9の一部が上ケース3の下端よりも下方に位置すると、その部分が加熱面側の輻射熱を直接受けることになる。この時、センサ9はある程度の自己消化性がある材質から形成されているので、発火しないまま60分経過すれば、特定防火設備としての性能を満たすことになる。しかし、センサ9が自然発火温度に達して発炎してしまうおそれがある。
(エ)は加熱中の状態を示し、(ウ)の状態に比べてセンサ9がさらに下方に位置しており、センサ9はガラスを通してさらに高温の輻射熱に晒されるため、センサ9が自然発火温度に達し、発炎のおそれが高い。
(オ)は加熱中の状態を示し、センサ9が床面に落下した状態を示す。落下した位置で高温の輻射熱に晒されてセンサ9が自然発火温度に達し、発炎のおそれが高い。
【0033】
他の実施形態では、室内側下面33に形成した凹部330は、室内側見付面32に平行して延びる垂直壁3300、3301、上壁3302、上ケース3の見込方向に延びる左右の側壁3303、3304から下端が開口状の箱型に形成されており、凹部330の壁の外面あるいは/および内面に断熱材8を取り付けることで、センサ9が取り付けられた空間の周りを断熱材8で覆う。断熱材8の断熱効果によって、上ケース3の室外側部位から上ケース3の室内側下面33に取り付けたセンサ9への熱伝導を抑制することで、熱伝導によりセンサ9の取付部(取付タブ911、周縁プレート910)の樹脂が溶融することを可及的に防止して、室内側のセンサ9が上ケース3の室内側下面33(凹部330))から脱落するおそれを低減し、結果として室内側のセンサ9が自然発火温度に達して発炎するおそれが低減する。
【0034】
他の実施形態に係るセンサの取付構造の実施例を
図13〜
図16に示す。
図13(A)は第4実施例を示し、
図14は
図13(A)の最右図の部分拡大図であり、
図16(A)は第4実施例に係る取付構造を正面から見た図である。
図13(B)は第5実施例を示し、
図15は
図13(B)の最右図の部分拡大図であり、
図16(B)は第5実施例に係る取付構造を正面から見た図である。
【0035】
図13(A)、
図14、
図16(A)に基づいて第4実施例について説明する。第4実施例では、凹部330を形成する壁の外面に断熱材8を設けてある。より具体的には、垂直壁3300、3301、上壁3302、左右の側壁3303、3304の外面に、第1断熱要素82、第2断熱要素83、第3断熱要素84、第5断熱要素85、第6断熱要素86が取り付けてある。断熱材8の固定手段は限定されず、例えば螺子で固定されるが、箱状に一体形成された断熱材8を用意して、凹部330に被せるように取り付けてもよい。
【0036】
センサ9の取付ブラケット91を、上ケース3の室内側下面33に形成した切欠き部から、凹部330の壁で囲まれた空間内に挿入し、切欠き部の周縁331を、取付タブ911と周縁プレート910で挟むようにして室内側下面33に取り付け、次いでセンサ本体90を挿入して固定する。センサ本体90を取り付けるにあたり、凹部330の壁(図示の態様では、垂直壁3300)の所定部位及び断熱材8(図示の態様では、第1断熱要素82)の所定部位には、挿通孔(図示せず)が形成されており、センサ9から延びる配線92は挿通孔を通って上ケース3内部に延びており、上ケース3内に設けた制御部(図示せず)に接続されている。
【0037】
センサ9は、センサ9の取付部(取付タブ911、周縁プレート910)を含み、凹部330の壁で囲まれた空間内に位置すると共に、この凹部330は、第1断熱要素82、第2断熱要素83、第3断熱要素84、第5断熱要素85、第6断熱要素86で囲まれている。断熱材8の断熱効果によって、上ケース3の室外側部位から上ケース3の室内側下面33に取り付けたセンサ9への熱伝導を抑制することで、熱伝導によりセンサ9の取付部(取付タブ911、周縁プレート910)の樹脂が溶融することを可及的に防止して、室内側のセンサ9が上ケース3の室内側下面33(凹部330)から脱落するおそれを低減し、結果として室内側のセンサ9が自然発火温度に達して発炎するおそれが低減する。
【0038】
図13(B)、
図15、
図16(B)に基づいて第5実施例について説明する。第5実施例では、凹部330を形成する壁の内面に断熱材8を設けてある。より具体的には、垂直壁3300、3301、上壁3302、左右の側壁3303、3304の内面に、第1断熱要素82、第2断熱要素83、第3断熱要素84、第5断熱要素85、第6断熱要素86が取り付けてある。断熱材8の固定手段は限定されず、例えば螺子で固定されるが、箱状に一体形成された断熱材8を用意して、凹部330の内面に当接するように取り付けてもよい。
【0039】
センサ9の取付ブラケット91を、上ケース3の室内側下面33に形成した切欠き部から、凹部330及び断熱材8で囲まれた空間内に挿入し、切欠き部の周縁331を、取付タブ911と周縁プレート910で挟むようにして室内側下面33に取り付け、次いでセンサ本体90を挿入して固定する。センサ本体90を取り付けるにあたり、凹部330の壁(図示の態様では、垂直壁3300)の所定部位及び断熱材8(図示の態様では、第1断熱要素82)の所定部位には、挿通孔(図示せず)が形成されており、センサ9から延びる配線92は挿通孔を通って上ケース3内部に延びており、上ケース3内に設けた制御部(図示せず)に接続されている。
【0040】
センサ9は、センサ9の取付部(取付タブ911、周縁プレート910)を含み、第1断熱要素82、第2断熱要素83、第3断熱要素84、第5断熱要素85、第6断熱要素86で囲まれた空間内に位置している。断熱材8の断熱効果によって、上ケース3の室外側部位から上ケース3の室内側下面33に取り付けたセンサ9への熱伝導を抑制することで、熱伝導によりセンサ9の取付部(取付タブ911、周縁プレート910)の樹脂が溶融することを可及的に防止して、室内側のセンサ9が上ケース3の室内側下面33(凹部330)から脱落するおそれを低減し、結果として室内側のセンサ9が自然発火温度に達して発炎するおそれが低減する。