(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記判定機能は、前記変化量が前記規定値以下になっても、前記パージの開始から既定時間が経過するまで前記パージの終了の決定を保留する、請求項2に記載の自動分析装置。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、患者から採取された試料に試薬を混合して反応液を生成し、この反応液を分析する一連の処理を自動的に行う装置である。分析により反応液中の様々な成分の濃度や酵素活性などを示す分析データが得られる。数多くの検査項目に応じて多様な測定方法がある。例えば、反応液の特性を光学的に測定するための、光学法と称する方法が知られている。
【0003】
反応液中の各種のイオン濃度を分析することは重要である。この種の検査項目は、反応液の電気的特性を測るためのプローブとして電極を用いることから、電極法と称する手法で実施される。
【0004】
電極法によれば、反応液中の電極間の電位差を測定することで主に反応液の各種イオン濃度を計測することができる。電位差を正確に測るためにベース電位が重要である。ベース電位は、電極を校正液(参照溶液、あるいはリファレンスとも呼ばれる)と称する溶液に浸して、測定の都度校正される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施形態に係る自動分析装置1の一例を示す斜視図である。自動分析装置1は、反応ディスク11、ディスクサンプラ12、第1試薬庫13、第2試薬庫14、サンプリングアーム15、第1分注アーム16、第2分注アーム17、第1攪拌ユニット18、第2攪拌ユニット19、洗浄部20、電極ユニット21、測光ユニット22、および、制御回路30を備える。
【0012】
複数の反応管26が、反応ディスク11の周囲に円周状に配置される。試料を収納する試料容器12aがディスクサンプラ12に配置される。ディスクサンプラ12は円盤状に形成され、その中心を軸として回転して所望の試料容器12aをサンプリングアーム15による吸引位置に移動させる。
【0013】
第1試薬庫13は、複数の試薬ボトル13aを収納する第1試薬ラックを備える。試薬ボトル13aは、それぞれ試料の各種成分と反応する試薬を格納する。第2試薬庫14も同様に、複数の試薬ボトル14aを収納する第2試薬ラックを備える。試薬ボトル14aは、それぞれ試料の各種成分と反応する試薬を格納する。
【0014】
第1試薬庫13、第2試薬庫14、反応ディスク11、およびディスクサンプラ12は、それぞれ駆動装置により回転駆動される。測定に必要な試薬は、試薬ボトル13a,14aから、第1分注アーム16または第2分注アーム17により反応管26に分注される。
【0015】
サンプリングアーム15は、アーム15bを備える。プローブ15cがアーム15bの端部に設けられる。プローブ15cをディスクサンプラ12の所望の吸引位置に移動させて支柱15aを下降させ、プローブ15cを試料容器12a内に降下させた状態で、試料が所定量吸引される。その後、支柱15aを上昇させてアーム15bを反応ディスク11側に回転させ、試料を所望の反応管26内に吐出させる。
【0016】
サンプリングアーム15は、試料の吐出時も吸引時と同様に、所定の吐出位置で支柱15aを下降させることにより、反応管26内にプローブ15cを降下させて、プローブ15cから試料を吐出する。また、プローブ15cの根元部すなわちアーム15b側には、チューブが連結されており、このチューブはアーム15b内を通り、さらに支柱15a内を通って、その他端は図示しないポンプに連結される。つまりサンプリングアーム15は、第1分注アーム16および第2分注アーム17と共に、試料と試薬とを反応管26に分注して反応液を生成する。
【0017】
試料容器12a内の試料は、サンプリングアーム15のプローブ15cにより、反応ディスク11の反応管26に分注される。試料と試薬とを分注された反応管26は、反応ディスク11の回動により攪拌位置まで移動する。そして攪拌ユニット18,19により試料と試薬とが攪拌されて反応液が生成される。
【0018】
反応ディスク11はその中心を軸として回転し、所望の反応管26を第1分注アーム16、第2分注アーム17の試薬吐出位置に移動させる。第1試薬庫13および第2試薬庫14はともに円環状に形成されており、その中心を軸として回転する。第1試薬庫13は所望の試薬ボトル13aを第1分注アーム16の吸入位置に移動させる。同様に、第2試薬庫14は所望の試薬ボトル14aを第2分注アーム17の吸入位置に移動させる。
【0019】
第1分注アーム16は、アーム16bを備える。プローブ16cがアーム16bの端部に設けられる。第1分注アームは、このプローブ16cにより所望の試薬ボトル13aから試薬を吸引し、その試薬を所望の反応管26に所定量だけ分注する。第2分注アーム17は、アーム17bを備える。プローブ17cが、アーム17bの端部に設けられる。第2分注アーム17は、プローブ17cにより所望の試薬ボトル14aから試薬を吸引し、その試薬を所望の反応管26に所定量だけ分注する。
【0020】
反応ディスク11の回転により反応管26が第1攪拌位置、第2攪拌位置に達すると、第1攪拌ユニット18、第2攪拌ユニット19は該当する反応管26内に吐出された試料と試薬との反応液を攪拌子で攪拌する。さらに、反応ディスク11の回転に伴い反応管26が測光ユニット22の位置に達すると、測光ユニット22により、反応管26内の反応液の成分が分光分析される。測光ユニット22は、測光位置まで移動した反応管26に光を照射して反応管26内の反応液の吸光度変化を測定することにより、試料の成分分析を行う。
【0021】
電極ユニット21は、イオン選択性電極と参照電極とを備えるセンサである。電極ユニット21は、測定位置まで移動した反応管26内の反応液の電位を測定して、試料の電解質分析を行う。電極ユニット21および測光ユニット22は、制御回路30の制御のもとで分析機構として機能する。分析の終了した反応管26が洗浄部20の位置に達すると、反応管26内の反応液は排出される。その後、その反応管26は洗浄部20により洗浄される。
【0022】
制御回路30は、自動分析装置1各部を統括的に制御する。すなわち、制御回路30は、自動分析装置1の各部の動作・処理を制御して、検体(試料)の分析や反応管の洗浄等に係る全ての処理を統括的に制御する。
【0023】
図2は、電極ユニット21への校正液の供給ラインの一例を示す図である。校正液は、校正液を貯留するディスポーザブルな校正液タンク40から、供給ライン50を経由して電極ユニット21に供給される。供給ライン50は、反応管26の内部の温度を一定に保つための恒温槽10を経由して配管される。これにより校正液の温度は、反応管26内の反応液と同程度に保たれる。
【0024】
図3は、
図1に示される制御回路30の一例を示す機能ブロック図である。制御回路30は、表示回路5、入力インタフェース回路6および記憶回路7を備えるコンピュータであり、分析機構2および解析回路3に接続される。このうち分析機構2は、電極ユニット21および測光ユニット22を備える。
【0025】
解析回路3は、測光ユニット22からの電気信号を解析して反応液の光学的特性を解析する。また解析回路3は、電極ユニット21からの電気信号を解析して反応液の電気的特性を解析する。
【0026】
表示回路5は、例えばCRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、及びプラズマディスプレイ等の表示デバイスを有する。表示回路5は、制御回路30の制御に従って各種の情報を表示する。
【0027】
入力インタフェース回路6は、オペレータからの入力機器を介した各種指令又は/及び情報入力を受け付ける。入力機器としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、スイッチボタン等の選択デバイス、あるいはキーボードやタッチスクリーン等の入力デバイスを利用可能である。入力インタフェース回路6は、受け付けた各種指令や情報入力を制御回路30に通知する。
【0028】
記憶回路7は、例えば磁気記録媒体、光学記録媒体、あるいは半導体メモリ等の、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体である。記憶回路7は、制御回路30の検知機能30a、交換処理機能30b、測定機能30c、および判定機能30dを実現するためのプログラム、解析回路3の制御プログラム、分析機構2の制御プログラムなどを記憶する。
【0029】
制御回路30は、記憶回路7に記憶される制御プログラムを読み出してメモリ上に展開し、展開された制御プログラムに従って各部を制御する。制御回路30は実施形態に係る新規な処理機能として、検知機能30a、交換処理機能30b、測定機能30cおよび判定機能30dを備える。
【0030】
検知機能30aは、交換前の校正液タンク40が供給ライン50から取り外され、新たな交換後の校正液タンク40が供給ライン50に接続されたことを検知する。
【0031】
交換処理機能30bは、検知機能30aにより新たな校正液タンク40が供給ライン50に接続されたことが検知されると、供給ライン50に残留する古い校正液タンク40からの校正液を、新しい校正液タンク40からの校正液でパージする処理を開始する。
【0032】
測定機能30cは、パージ中に、交換後の校正液タンク40からの校正液の電位を電極ユニット21により繰り返し測定する。
【0033】
判定機能30dは、電極ユニット21により測定された電位に基づいて、パージ処理を終了すべき時点、すなわちパージの終了タイミングを判定し、そのタイミングでパージを終了させる。
【0034】
例えば判定機能30dは、測定機能30cにより測定された電位の時間に対する変化量が規定値以下になれば、パージの終了を決定する。また、判定機能30dは、上記電位の時間に対する変化量が規定値以下になっても、パージの開始から既定時間が経過するまでの間はパージの終了の決定を保留する。
【0035】
図4は、校正液タンク40の交換手順を模式的に示す図である。電極ユニット21は電極23を備える。校正液および反応液は、電極ユニット21において電極23に達するまで吸引され、電極23に触れた状態でその電位を測定される。
図4(a)に示されるように、交換前の校正液タンク40に貯留される校正液が規定量以下になると、送液ポンプ70が停止されたのち校正液タンク40が取り外され、
図4(b)に示されるように、新たな校正液タンク40が供給ライン50に接続される。その直後の供給ライン50内には新旧の校正液の混じり合った混合溶液60が存在する。混合溶液60の濃度は古い校正液の濃度と同じではなく、新しい校正液の濃度と等しくもない。よって混合溶液60はベース電位の計測に使用できないので、
図4(c)のタンク交換完了に至るまでに完全にパージされる必要がある。しかしながら従来は混合溶液60をどの程度排出すれば良いのかの判断が難しかった。この実施形態は、パージの終了を判定するのに有益な手法について開示する。
【0036】
図5は、校正液の交換の前後での校正液の電位の変化の一例を示すグラフである。
図5における符号2−aは、校正液の参照電位の変化を示す。符号2−bは、タンク交換直後に電極ユニット21より測定される校正液の電位の変化を示す。
【0037】
混合溶液60が電極ユニット21に到着するまでに校正液タンク40から供給される量は、校正液タンク40から電極ユニット21までの供給ライン50内の体積Vで表される。送液ポンプ70による単位時間(秒)毎の送液量をdVとすると、混合溶液60が電極ユニット21に到着するまでの時間はV/dVとなる。
【0038】
実施形態では、混合溶液60が電極ユニット21に到着する時間(V/dV)が経過した後に校正液交換完了の判定を開始する。この判定処理は、連続する2回のサンプリングで取得された電位の差Ek(k=1,2,3,4,5)が規定値Ev1以下となったとkに、校正液タンク40の交換作業の完了を判定する。
【0039】
図5に示されるように、E5の計測時に(E5<Ev1)が判明する。よって、このタイミングにて校正液タンク40の交換作業の完了が判定される。また、校正液タンク40の交換作業により次の試料の測定がペンディング状態となっている場合、上記2点間の電位の差が規定値Ev1以上であったとしても、Ev2未満となった時点で恒温槽10への試料の分注を開始する。
【0040】
図5に示されるように、E4の計測時に(E4<Ev2)が判明するため、このタイミングを持って試料の試料恒温部への分注が開始できると判定される。この閾値Ev2は、例えば校正液濃度の許容誤差、または、試料の反応管26への分注後に電極ユニット21による測定が可能となるまでの時間などを用いることができる。
【0041】
以上説明したようにこの実施形態では、校正液タンク40の交換により供給ライン50内の校正液をパージする際に、破棄される校正液の電位を測定し、電位の変化量が規定値以下になればパージ完了の判断基準とするようにした。これにより、確実に校正液の交換が完了したことを判定できるとともに、パージに要する校正液の消費を最小限にすることができる。しかも校正液の配管系統を冗長化する必要もない。さらには、パージ完了前に試料分析に係る前処理を開始し、測定のペンディング時間を短縮できる。つまり、次試料の測定が校正液の交換によりペンディングとなっている場合、校正液交換完了よりも前に試料の恒温作業を開始できる。すなわち、校正液の交換作業と次試料の恒温作業を並行して実施できるため、交換によるペンディング時間を短縮できる。
【0042】
校正液のロット差が少ない場合には早期に交換判定がクリアされるため、校正液の無駄な排出が減少し、かつ交換完了までの時間が短縮される。また、校正液の交換完了を正確に判定できるので、校正液のロット差による影響を最小限にできる。
【0043】
これらのことから、校正液タンクの交換に係る校正液の無用な消費を最小限に抑えることの可能な自動分析装置を提供することが可能となる。
【0044】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば
図4において、校正液および反応液は電極23まで吸引されるとして説明した。このほかにも、校正液および反応液を電極に流し込む形態の電極ユニットが知られている、本発明の実施形態はこの種の電極ユニットにも適用することが可能である。
【0045】
また、
図5に示される、校正液の電位測定の時間間隔は一定間隔でも、可変間隔でもよい。つまり測定機能30cが、測定した校正液の電位に基づいて、電位の測定の繰り返し周期を変化させるようにしてもよい。また、測定機能30cが、測定した電位の時間に対する変化量に基づいて、電位の測定の繰り返し周期を変化させるようにしてもよい。さらには、測定機能30cが、パージの開始からの時間の経過とともに、電位の測定の繰り返し周期を短縮するようにしても良い。このようにすればパージに要する期間をさらに短縮できることが見込まれる。
【0046】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示するものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。