特許第6711674号(P6711674)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6711674
(24)【登録日】2020年6月1日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】X線診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/02 20060101AFI20200608BHJP
【FI】
   A61B6/02 351M
   A61B6/02 353B
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-76506(P2016-76506)
(22)【出願日】2016年4月6日
(65)【公開番号】特開2017-185046(P2017-185046A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2019年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】長江 亮一
(72)【発明者】
【氏名】早津 泰人
(72)【発明者】
【氏名】飯島 吉昭
(72)【発明者】
【氏名】坂口 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】渡部 勇一郎
【審査官】 芝沼 隆太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−81690(JP,A)
【文献】 特開2014−133103(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/001635(WO,A1)
【文献】 特開2013−17056(JP,A)
【文献】 特開2013−233317(JP,A)
【文献】 特開2011−206167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動的な関心部位を含む複数の医用画像を経時的に収集する収集部と、
画像間における前記動的な関心部位の移動距離が、視野差角度から導出される距離に対応する距離となる2つの医用画像を、前記複数の医用画像から取得する取得部と、
前記2つの医用画像を立体視画像を表示する表示部に表示させる表示制御部と、
を備える、X線診断装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記関心部位の移動距離が前記視野差角度から導出される距離と一致する2つの医用画像、又は、前記関心部位の移動距離が前記視野差角度から導出される距離に近似する2つの医用画像を取得する、請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記関心部位が画像中心によって分けられる2つの領域間を移動する場合の前記視野差角度に対応する距離を導出し、前記関心部位の画像間での距離が導出した距離に対応する距離となる2つの医用画像を取得し、
前記表示制御部は、前記2つの医用画像を前記表示部に表示させる、請求項1又は2に記載のX線診断装置。
【請求項4】
前記取得部は、前記関心部位が画像中心によって分けられる2つの領域のどちらか一方の領域内で移動する場合の前記視野差角度に対応する距離を導出し、前記関心部位の画像間での距離が導出した距離に対応する距離となる2つの医用画像を取得し、
前記表示制御部は、前記2つの医用画像を前記表示部に表示させる、請求項1又は2に記載のX線診断装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記関心部位の移動方向が水平方向となるように医用画像を回転させた後、前記複数の医用画像を前記表示部に表示させる、請求項1〜4のいずれか一項に記載のX線診断装置。
【請求項6】
前記取得部は、画像間での前記関心部位の移動距離が前記視野差角度から導出される距離に対応する距離となるように、X線の照射方向を制御する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のX線診断装置。
【請求項7】
前記取得部は、前記関心部位の画像間での移動距離が前記視野差角度から導出される距離に相当する位相の医用画像を取得する、請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項8】
前記表示制御部は、前記医用画像の一部の領域であって、前記関心部位を含む所定の領域を前記表示部に表示させる、請求項1〜7のいずれか一項に記載のX線診断装置。
【請求項9】
前記表示制御部は、前記所定の領域を拡大して前記表示部に表示させる、請求項8に記載のX線診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、X線診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、3Dモニタを利用して医用画像を立体視する技術が知られている。例えば、立体視用メガネ等の専用機器を用いて、2つの視点から撮影された視野差画像を立体視可能な3Dモニタが実用化されている。また、例えば、レンチキュラーレンズ等の光線制御子を用いて、複数の視点から撮影された多視野差画像(例えば、2視点からの視野差画像や、9つの視点からの視野差画像など)を裸眼にて立体視可能な3モニタが実用化されている。このような3Dモニタで医用画像を表示させることで、観察者は奥行き方向の情報を得ることができ、空間的な位置関係を容易に把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−81690号公報
【特許文献2】特開2003−245273号公報
【特許文献3】特表2005−528157号公報
【特許文献4】特許第5121173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、動的な部位を容易に立体視することを可能にするX線診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施の形態のX線診断装置は、取得部と、表示制御部とを備える。取得部は、画像間における関心部位の移動距離が、所定の視野差角度から導出される距離に相当する複数の医用画像を取得する。表示制御部は、前記複数の医用画像を立体視画像を表示する表示部に表示させる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1の実施形態に係るX線診断装置の構成の一例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る動的な部位の視野差画像の取得の一例を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る注目領域の一例を説明するための図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る注目領域の視野差角度と距離とを説明するための図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る視野差画像を示す図である。
図6A図6Aは、第1の実施形態に係る移動距離の算出例を説明するための図である。
図6B図6Bは、第1の実施形態に係る移動距離の算出例を説明するための図である。
図7図7は、第1の実施形態に係る視野差画像の回転の一例を示す図である。
図8図8は、第1の実施形態に係る制御機能によるX線の照射方向の制御の一例を説明するための図である。
図9図9は、第1の実施形態に係る位相情報を用いた視野差画像の取得の一例を説明するための図である。
図10A図10Aは、第1の実施形態に係る制御機能による視野差画像の表示例を示す図である。
図10B図10Bは、第1の実施形態に係る制御機能による視野差画像の表示例を示す図である。
図11図11は、第1の実施形態に係るポストプロセスの処理手順を示すフローチャートである。
図12図12は、第1の実施形態に係るLive時の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に添付図面を参照して、本願に係るX線診断装置の実施形態を詳細に説明する。なお、本願に係るX線診断装置は、以下に示す実施形態によって限定されるものではない。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るX線診断装置100の構成の一例を示す図である。図1に示すように、第1の実施形態に係るX線診断装置100は、高電圧発生器11と、X線管12と、コリメータ13と、天板14と、Cアーム15と、X線検出器16とを備える。また、第1の実施形態に係るX線診断装置100は、Cアーム回転・移動機構17と、天板移動機構18と、Cアーム・天板機構制御回路19と、絞り制御回路20と、処理回路21と、入力回路22と、ディスプレイ23とを備える。また、第1の実施形態に係るX線診断装置100は、画像データ生成回路24と、記憶回路25と、画像処理回路26とを備える。また、X線診断装置100は、インジェクター30及び心電計40と接続される。そして、X線診断装置100は、図1に示すように、各回路が相互に接続され、各回路間で種々の電気信号を送受信したり、インジェクター30と電気信号を送受信したりする。
【0009】
インジェクター30は、被検体Pに挿入されたカテーテルから造影剤を注入するための装置である。ここで、インジェクター30からの造影剤注入は、後述する処理回路21を介して受信した注入指示に従って実行される。具体的には、インジェクター30は、後述する処理回路21から受信する造影剤の注入開始指示や、注入停止指示、さらに、注入速度などを含む造影剤注入条件に応じた造影剤注入を実行する。なお、インジェクター30は、操作者が直接インジェクター30に対して入力した注入指示に従って注入開始や、注入停止を実行することも可能である。
【0010】
心電計40は、図示しない端子が取り付けられた被検体Pの心電波形(ECG:Electrocardiogram)を取得し、取得した心電波形を、時間情報とともに、処理回路21、画像データ生成回路24および画像処理回路26に送信する。
【0011】
図1に示すX線診断装置100においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路25へ記憶されている。Cアーム・天板機構制御回路19、絞り制御回路20、処理回路21、画像データ生成回路24、及び、画像処理回路26は、記憶回路25からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の各回路は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
【0012】
なお、上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。
【0013】
高電圧発生器11は、処理回路21による制御の下、高電圧を発生し、発生した高電圧をX線管12に供給する。X線管12は、高電圧発生器11から供給される高電圧を用いて、X線を発生する。
【0014】
コリメータ13は、絞り制御回路20による制御の下、X線管12が発生したX線を、被検体Pの関心領域に対して選択的に照射されるように絞り込む。例えば、コリメータ13は、スライド可能な4枚の絞り羽根を有する。コリメータ13は、絞り制御回路20による制御の下、これらの絞り羽根をスライドさせることで、X線管12が発生したX線を絞り込んで被検体Pに照射させる。天板14は、被検体Pを載せるベッドであり、図示しない寝台の上に配置される。なお、被検体Pは、X線診断装置100に含まれない。
【0015】
X線検出器16は、被検体Pを透過したX線を検出する。例えば、X線検出器16は、マトリックス状に配列された検出素子を有する。各検出素子は、被検体Pを透過したX線を電気信号に変換して蓄積し、蓄積した電気信号を画像データ生成回路24に送信する。
【0016】
Cアーム15は、X線管12、コリメータ13及びX線検出器16を保持する。X線管12及びコリメータ13とX線検出器16とは、Cアーム15により被検体Pを挟んで対向するように配置される。なお、図1では、X線診断装置1がシングルプレーンの場合を例に挙げて説明しているが、実施形態はこれに限定されるものではなく、バイプレーンの場合であってもよい。
【0017】
Cアーム回転・移動機構17は、Cアーム15を回転及び移動させるための機構であり、天板移動機構18は、天板14を移動させるための機構である。Cアーム・天板機構制御回路19は、処理回路21による制御の下、Cアーム回転・移動機構17及び天板移動機構18を制御することで、Cアーム15の回転や移動、天板14の移動を調整する。絞り制御回路20は、処理回路21による制御の下、コリメータ13が有する絞り羽根の開度を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線の照射範囲を制御する。
【0018】
画像データ生成回路24は、X線検出器16によってX線から変換された電気信号を用いて画像データを生成し、生成した画像データを記憶回路25に格納する。例えば、画像データ生成回路24は、X線検出器16から受信した電気信号に対して、電流・電圧変換やA(Analog)/D(Digital)変換、パラレル・シリアル変換を行い、画像データを生成する。一例を挙げると、画像データ生成回路24は、造影剤が注入されていない状態で撮像された画像データ(マスク画像)及び造影剤が注入された状態で撮像された画像データ(コントラスト画像)を生成することができる。画像データ生成回路24は、生成した画像データを記憶回路25に格納する。
【0019】
記憶回路25は、画像データ生成回路24によって生成された画像データを受け付けて記憶する。また、記憶回路25は、図1に示す各回路によって読み出されて実行される各種機能に対応するプログラムを記憶する。一例を挙げると、記憶回路25は、処理回路21によって読み出されて実行される算出機能211に対応するプログラム、取得機能212に対応するプログラム及び制御機能213に対応するプログラムを記憶する。
【0020】
画像処理回路26は、記憶回路25が記憶する画像データに対して各種画像処理を行うことでX線画像を生成して、記憶回路25に格納する。例えば、画像処理回路26は、記憶回路25が記憶するマスク画像とコントラスト画像とを読み出し、サブトラクション(Logサブ)することで差分画像を生成することができる。なお、画像処理回路26は、造影剤投与直前の1フレームをマスク画像として用いることで、体動による位置合わせ(レジストレーション)のミスを最小限に抑えることが可能である。また、画像処理回路26は、移動平均(平滑化)フィルタ、ガウシアンフィルタ、メディアンフィルタなどの画像処理フィルタによるノイズ低減処理を実行することも可能である。すなわち、画像処理回路26は、造影剤を用いて経時的に撮影された複数の画像データ群それぞれに対して、位置ずれ補正及びノイズ除去を含む前処理を実行することができる。
【0021】
入力回路22は、所定の領域(例えば、関心部位などの注目領域)などの設定などを行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード等によって実現される。入力回路22は、処理回路21に接続されており、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換し処理回路21へと出力する。
【0022】
ディスプレイ23は、操作者の指示を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)や、画像処理回路26によって生成された種々の画像を表示する。例えば、ディスプレイ23は、記憶回路25によって記憶されたX線画像を表示する。ここで、ディスプレイ23は、後述する処理回路21によって取得された視野差画像を表示することで、観察者が立体視可能となる立体視画像を表示する3Dモニタである。例えば、ディスプレイ23は、シャッター方式によって画像を3次元表示する。一例を挙げると、ディスプレイ23は、右目用の画像(以下、右目画像)と左目用の画像(以下、左目画像)とを、例えば120Hzで交互に表示する。ここで、ディスプレイ23は、赤外線出射部を有し、赤外線出射部は、右目画像と左目画像とを切り替えるタイミングに合わせて赤外線の出射を制御する。
【0023】
観察者は、立体視用メガネとして、シャッターメガネを装着する。このシャッターメガネは、赤外線受光部を有する。赤外線受光部は、ディスプレイ23の赤外線出射部から出射された赤外線を受光し、シャッターメガネの左右それぞれに取り付けられたシャッターの透過状態及び遮光状態を交互に切り替える。すなわち、シャッター方式の3次元表示では、観察者の右眼に右目画像が入射され、左眼に左目画像が入射されるように、シャッターメガネのシャッターが制御される。なお、ディスプレイ23は、シャッター方式による3Dモニタに限られるものではなく、例えば、偏光メガネ方式や、レンチキュラーレンズなどの光線制御子を用いることで裸眼による立体視が可能な方式(例えば、特開2005−86414号公報など)などでもよい。
【0024】
処理回路21は、算出機能211、取得機能212及び制御機能213を実行することで、X線診断装置100全体の動作を制御する。例えば、処理回路21は、装置全体を制御するための制御機能213に対応するプログラムを記憶回路25から読み出して実行することにより、種々の処理を実行する。例えば、処理回路21は、入力回路22から転送された操作者の指示に従って高電圧発生器11を制御し、X線管12に供給する電圧を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線量やON/OFFを制御する。また、例えば、処理回路21は、操作者の指示に従ってCアーム・天板機構制御回路19を制御し、Cアーム15の回転や移動、天板14の移動を調整する。また、例えば、処理回路21は、操作者の指示に従って絞り制御回路20を制御し、コリメータ13が有する絞り羽根の開度を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線の照射範囲を制御する。
【0025】
また、処理回路21は、操作者の指示に従って、画像データ生成回路24による画像データ生成処理や、画像処理回路26による画像処理、あるいは解析処理などを制御する。また、処理回路21は、操作者の指示を受け付けるためのGUIや記憶回路25が記憶する画像などを、ディスプレイ23に表示するように制御する。また、処理回路21は、インジェクター30に対して、造影剤注入開始及び終了の信号を送信することで、造影剤の注入タイミングを制御する。また、処理回路21は、心電計40から受信するECGの時間情報と画像データ生成回路24によって生成された画像データの時間情報とを対応付ける。なお、処理回路21による算出機能211、取得機能212及び制御機能213の詳細については、後述する。また、算出機能211及び取得機能212は、特許請求の範囲における取得部に対応する。また、制御機能213は、特許請求の範囲における表示制御部に対応する。
【0026】
以上、X線診断装置100の構成の一例について説明した。かかる構成のもと、本実施形態に係るX線診断装置100は、以下、詳細に説明する処理回路21による処理によって、動的な部位を容易に立体視することを可能にする。ここで、X線診断装置100による立体視画像の取得及び表示について説明する。上述したように、X線診断装置100においては、例えば、ディスプレイ23が右目画像及び左目画像をそれぞれ観察者の右眼及び左目に対して出射することで立体視画像を表示する。すなわち、X線診断装置100は、対象部位に対する視点位置が所定の角度ずれた視野差画像を収集して、ディスプレイ23によって表示させる。例えば、X線診断装置100は、右目画像と左目画像とで対象部位に対する視点位置が「4°」ずれた2つのX線画像を右目画像及び左目画像として取得して、ディスプレイ23によって表示させる。
【0027】
ここで、対象部位が静的な部位の場合、X線診断装置100は、Cアーム15の角度を変化させることで、対象部位に対する視点位置(収集方向)を所定の角度ずらしたX線画像を収集する。一例を挙げると、X線診断装置100は、Cアーム15制御し、所定の位置と所定の位置からCアーム15を「4°」回転させた位置でそれぞれX線画像を収集し、観察者の右眼及び左眼に対してそれぞれ出射することで静的な部位の立体視画像を表示することができる。
【0028】
一方、対象部位が動的な部位の場合、仮にCアーム15の角度を変化させたX線画像を収集したとしても対象部位が動いてしまうため、対象部位に対する視点位置が所定の角度ずれた視野差画像を収集することが困難な場合がある。そこで、X線診断装置100は、Cアーム15を固定した状態でX線画像を収集し、対象部位の位置が所定の角度分変化した複数のX線画像を視野差画像として取得する。図2は、第1の実施形態に係る動的な部位の視野差画像の取得の一例を示す図である。例えば、X線診断装置100は、図2に示すように、心臓を対象とした撮像において、関心部位が所定の角度分動いた位置に描出されたX線画像をそれぞれ右目画像及び左目画像として取得する。すなわち、X線診断装置100は、心臓の拍動に伴って動く関心部位が所定の角度分移動した2つのX線画像を右目画像及び左目画像として取得する。
【0029】
ここで、心臓が対象部位の場合、例えば、冠動脈に挿入されたガイドワイヤ―や、冠動脈に留置されたステント、動脈瘤、血栓、狭窄、所定の心筋領域などが注目領域(関心部位)となる。すなわち、X線診断装置100は、心臓を対象部位として撮像した場合に、心臓の拍動に伴って移動するこのような注目領域の移動距離が、所定の角度分となる2つのX線画像を視野差画像として取得する。
【0030】
具体的には、取得機能212は、画像間における関心部位(注目領域)の移動距離が、所定の視野差角度から導出される距離に相当する複数の医用画像を取得する。より具体的には、取得機能212は、関心部位(注目領域)の移動距離が所定の視野差角度から導出される距離と一致する複数の医用画像、又は、関心部位の移動距離が所定の視野差角度から導出される距離に近似する複数の医用画像を取得する。すなわち、取得機能212は、視野差角度が所定の角度となる視野差画像を、注目領域の移動距離に基づいて取得する。以下、図3図6Bを用いて、X線診断装置100による視野差画像の取得の一例を説明する。なお、図3図6Bにおいては、対象部位が心臓であり、注目領域がガイドワイヤ―のマーカーである場合について示す。また、図3図6Bにおいては、心臓を対象として経時的に収集された複数のX線画像(フレーム群)から視野差画像を取得する場合について示す。
【0031】
図3は、第1の実施形態に係る注目領域の一例を説明するための図である。例えば、取得機能212は、図3に示すように、心臓を経時的に撮像したフレーム群からガイドワイヤ―のマーカーが描出されたX線画像(フレーム)を視野差画像として取得する。ここで、注目領域は、観察者によって指定される場合であってもよく、自動で抽出される場合であってもよい。例えば、観察者によって指定される場合、制御機能213が、図3に示すフレーム群を時系列に沿ってディスプレイ23に表示させる。そして、入力回路22が、フレーム群を観察する観察者から注目領域(例えば、ガイドワイヤ―のマーカー)の指定操作を受け付ける。入力回路22が注目領域の指定操作を受け付けると、算出機能211は、指定操作を受け付けた注目領域についてのトラッキング処理を実行することで、フレーム群の各フレームに含まれる注目領域(例えば、ガイドワイヤ―のマーカー)をそれぞれ抽出する。
【0032】
取得機能212は、算出機能211によって注目領域(例えば、ガイドワイヤ―のマーカー)が抽出された複数のフレームから視野差画像を取得する。具体的には、取得機能212は、算出機能211によって算出されるフレーム間における注目領域の移動距離に基づいて、視野差画像を取得する。なお、算出機能211による移動距離の算出については後に詳述する。ここで、観察者は注目領域を指定する際に注目領域が明瞭に描出されたフレームを用いることが多いことから、取得機能212は、例えば、注目領域の指定操作を受け付けたフレームを視野差画像の一方として取得してもよい。
【0033】
また、注目領域が自動で抽出される場合、算出機能211は、例えば、パターンマッチングなどの画像処理によりフレーム群の各フレームに含まれる注目領域(例えば、ガイドワイヤ―のマーカー)をそれぞれ抽出する。取得機能212は、算出機能211によって注目領域(例えば、ガイドワイヤ―のマーカー)が抽出された複数のフレームから視野差画像を取得する。注目領域が自動で抽出される場合においても、取得機能212は、算出機能211によって算出されるフレーム間における注目領域の移動距離に基づいて、視野差画像を取得する。なお、取得機能212は、注目領域が抽出された複数のフレームのうち、例えば、注目領域が明瞭に描出されたフレームを視野差画像の一方として取得してもよい。
【0034】
ここで、取得機能212によって取得される視野差画像は、視野差画像の一方のフレームにおける注目領域の位置と視野差画像の他方のフレームにおける注目領域の位置とに基づいて、各フレームが右目画像か、或いは左目画像かが決められる。例えば、図3に示すフレームが視野差画像として取得され、マーカーの位置が視野差画像の他方のフレームにおけるマーカーの位置よりも右側にある場合、図3に示すフレームは左目画像となる。一方、図3におけるマーカーの位置が、視野差画像の他方のフレームにおけるマーカーの位置よりも左側にある場合、図3に示すフレームは右目画像となる。
【0035】
上述したように、フレーム群の各フレームから注目領域がそれぞれ抽出されると、取得機能212は、フレーム間での注目領域の移動距離が、注目領域の視野差の角度から導かれる距離となるフレームを取得する。ここで、算出機能211は、取得機能212が視野差画像を取得するためのフレーム間の注目領域間の距離を算出する。例えば、算出機能211は、図3において取得したフレームにおけるガイドワイヤ―のマーカーの位置と、その他のフレームにおけるガイドワイヤ―のマーカーの位置との距離をそれぞれ算出する。取得機能212は、算出機能211によって算出された距離に基づいて、視野差画像のフレームを取得する。なお、注目領域の指定操作を受け付けたフレームを視野差画像の一方として取得した場合、或いは、注目領域が明瞭に描出されたフレームを視野差画像の一方として取得した場合には、取得機能212は、算出機能211によって算出された距離に基づいて、視野差画像の他方のフレームを取得する。
【0036】
ここで、視野差角度から導出される距離について、図4を用いて説明する。図4は、第1の実施形態に係る注目領域の視野差角度と距離とを説明するための図である。図4においては、注目領域としてガイドワイヤ―のマーカーを用いる場合を例に示す。例えば、図4に示すように、心臓の拍動に伴ってマーカーが左右方向(水平方向)に交互に移動している場合、画像中心(表示面の中心線)よりも左側にあるときのマーカーの位置とX線管12とを結ぶ線と、画像中心(表示面の中心線)よりも右側にあるときのマーカーの位置とX線管12とを結ぶ線とのなす角度が注目領域の視野差角度となる。そして、視野差角度から導出される距離は、視野差角度を所定の角度とした場合の画像中心の右側にあるマーカーと左側にあるマーカーとの距離を示す。
【0037】
例えば、視野差角度が「4°」の場合、図4に示すように、X線管12と左側のマーカーとを結ぶ線と、X線管12と画像中心とを結ぶ線とのなす角度を「2°」とし、画像中心とマーカーとの距離が算出される。そして、算出された距離の位置にマーカーが描出されたフレームが視野差画像として取得される。すなわち、画像中心から左側で、算出された距離の位置にマーカーが描出されたフレームが右目画像として取得される。また、画像中心から右側で、算出された距離の位置にマーカーが描出されたフレームが左目画像として取得される。なお、距離の算出の詳細については後述する。
【0038】
このように、算出機能211によって距離が算出されると、取得機能212は、算出された距離に基づいて視野差画像を取得する。すなわち、取得機能212は、注目領域のマーカーが視野差角度から導出される距離分移動したフレームを取得する。例えば、取得機能212は、図3に示すような左目画像と、図5に示す右目画像とをそれぞれ取得する。なお、図5は、第1の実施形態に係る視野差画像を示す図である。
【0039】
このように、取得機能212は、算出機能211によって算出された移動距離に基づいて、視野差画像を取得する。ここで、算出機能211による移動距離の算出は、注目領域が移動する位置に応じてそれぞれ異なる。具体的には、注目領域が画像中心を通過する場合と、通過しない場合とでそれぞれ異なる。以下、図6A及び図6Bを用いて、各場合の移動距離の算出について説明する。図6A及び図6Bは、第1の実施形態に係る移動距離の算出例を説明するための図である。なお、図6Aにおいては、注目領域が画像中心を通過する場合について示す。また、図6Bにおいては、注目領域が画像中心を通過しない場合について示す。また、図6A及び図6Bにおいては、視野差角度を「4°」とした場合の例について示す。
【0040】
まず、注目領域が画像中心を通過する場合について示す。図4においても示すように、注目領域が画像中心を通過する場合(すなわち、注目領域が画像中心によって分けられる2つの領域間を移動する場合)、算出機能211は、図6Aに示すように、X線管12、画像中心(基準点)及び画像中心の右側(或いは、左側)にある注目領域(例えば、マーカ)によって形成される三角形に基づいて距離を算出する。すなわち、算出機能211は、図6Aに示すように、X線管12と右側の注目領域の位置とを結ぶ線と、X線管12と基準点とを結ぶ線とのなす角度を「2°」とし、基準点と右側の注目領域との距離を算出する。ここで、画像中心(基準点)上の注目領域とX線管12との距離「SOD」は、撮像条件から取得することができる。そこで、算出機能211は、例えば、「基準点と右側の注目領域との距離」を「SOD×tan2°」により算出する。一例を挙げると、「SOD=70cm」の場合、算出機能211は、「基準点と右側の注目領域との距離=2.4cm」と算出する。
【0041】
すなわち、取得機能212は、注目領域が画像中心(基準点)から右側に「2.4cm」移動した時点(例えば、T1時)のフレームを左目画像として取得する。同様に、取得機能212は、注目領域が画像中心(基準点)から左側に「2.4cm」移動した時点(例えば、T2時)のフレームを右目画像として取得する。
【0042】
次に、注目領域が画像中心を通過しない場合について示す。注目領域が画像中心を通過しない場合とは、注目領域が画像中心によって分けられる2つの領域のどちらか一方の領域内で移動する場合であり、例えば、図6Bの上側の図に示すように、注目領域が画像中心の左側の領域でのみ移動する場合である。かかる場合、算出機能211は、図6Bの下側の図に示すように、X線管12及び各注目領域によって形成される三角形に基づいて距離を算出する。すなわち、算出機能211は、図6Bの下側の図に示すように、X線管12と一方の注目領域とを結ぶ線と、X線管12と他方の注目領域とを結ぶ線とのなす角度が「4°」となる注目領域の移動距離を算出する。
【0043】
一例を挙げると、算出機能211は、視野差画像の一方のフレームを仮定して、仮定したフレームにおける注目領域の位置に基づいて、視野差角度に応じた移動距離を算出する。例えば、算出機能211は、T1時のフレームを視野差画像の一方のフレームと仮定して、視野差角度「4°」に応じた距離を算出する。すなわち、算出機能211は、図6Bに示すT1時の注目領域と基準点との距離を算出する。そして、算出機能211は、算出した距離と「SOD」とから、T1時の注目領域とX線管12とを結ぶ線と、基準点とX線管12とを結ぶ線とのなす角度「θ」を算出する。さらに、算出機能211は、算出した角度「θ」から視野差角度「4°」を減算した角度「θ−4」での基準点と注目領域との距離を算出する。
【0044】
取得機能212は、注目領域が画像中心(基準点)から左側に、算出された距離分移動した時点(例えば、T2時)のフレームを視野差画像のもう一方にフレームとして取得する。すなわち、取得機能212は、T1時のフレームを左目画像として取得し、T2時のフレームを右目画像として取得する。
【0045】
上述したように、算出機能211は、注目領域が画像中心を通過する場合と、通過しない場合とでそれぞれ異なる手法により移動距離を算出する。そして、取得機能212は、算出機能211によって算出された移動距離に基づいて、視野差画像の各フレームを取得する。ここで、視野差角度は観察者によって任意に設定することができる。すなわち、算出機能211は観察者によって設定された視野差角度に応じた移動距離を算出し、取得機能212は算出された移動距離に対応するフレームを視野差画像として取得する。
【0046】
また、取得機能212は、注目領域の移動距離が、算出機能211によって算出された距離に相当する2つのフレームを視野差画像として取得するが、注目領域の移動距離が算出された距離と一致しない場合であってもよい。すなわち、取得機能212は、注目領域の移動距離が、算出された距離に近似する2つのフレームを視野差画像として取得する場合であってもよい。例えば、取得機能212は、注目領域の移動距離が算出された距離と一致するフレームがない場合に、注目領域の移動距離が算出された距離に最も近い2つのフレームを視野差画像として取得する。
【0047】
また、上述した距離は、ピクセル数で換算される場合であってもよい。かかる場合には、例えば、算出機能211は、算出した距離をディスプレイ23のピクセル数に換算する。そして、取得機能212は、換算されたピクセル数に基づいて視野差画像を取得する。
【0048】
制御機能213は、取得機能212によって取得された視野差画像を、立体視画像を表示するディスプレイ23に表示させる。ここで、制御機能213は、注目領域の移動方向が水平方向となるように回転させた後、視野差画像をディスプレイ23に表示させることができる。例えば、動的な部位の動きに伴って移動する注目領域の移動方向は、水平方向であるとは限らない。そこで、制御機能213は、注目領域の移動方向が水平方向となる(観察者の両目と平行となる)ように、視野差画像を回転させる。
【0049】
図7は、第1の実施形態に係る視野差画像の回転の一例を示す図である。例えば、図7の左側の図に示すように、注目領域が斜め方向に移動していた場合、制御機能213は、図7の右側の図に示すように、注目領域の移動方向が水平方向となるように視野差画像を回転させる。すなわち、制御機能213は、右目画像と左目画像とをそれぞれ回転させることで、注目領域の移動方向が水平方向となるように視野差画像を回転させる。
【0050】
また、制御機能213は、フレーム群において注目領域が移動するようにX線の照射方向を制御することもできる。図8は、第1の実施形態に係る制御機能213によるX線の照射方向の制御の一例を説明するための図である。図8においては、被検体内における注目領域の3次元的な移動方向を示す。例えば、図8に示すように注目領域が動いている状態で、X線照射方向1からX線を照射した場合、注目領域はX線画像の奥行き方向に移動することとなる。この場合、フレーム群における注目領域の位置はほとんど変わらず、視野差画像を取得することが困難となる。そこで、制御機能213は、X線の照射方向が図8のX線照射方向2になるように、例えば、Cアーム15を制御する。これにより、注目領域は複数のフレーム間で位置が変化することとなり、視野差画像を取得することが可能となる。
【0051】
なお、X線の照射方向は、注目領域の移動方向が水平方向となるように制御されてもよく、或いは、単に注目領域の位置がフレーム間で変化するように制御されてもよい。注目領域の位置がフレーム間で変化するように制御した場合、制御機能213は、注目領域の移動方向が水平方向となるように右目画像と左目画像を回転させる。
【0052】
上述した実施形態では、フレーム群から右目画像と左目画像を取得する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、位相を用いて視野差画像を取得する場合であってもよい。具体的には、取得機能212は、周期的に動く部位を対象とした医用画像において、注目領域の画像間での移動距離が所定の視野差角度から導出される距離に相当する位相の医用画像を取得する。図9は、第1の実施形態に係る位相情報を用いた視野差画像の取得の一例を説明するための図である。例えば、取得機能212は、図9に示すように、X線画像の撮影中、同時に被検体から取得するECG波形に基づいて、収縮期画像と拡張期画像とを視野差画像として取得する。
【0053】
かかる場合には、例えば、制御機能213が、撮影前の透視によって取得された各フレームに対して取得時の位相を対応付ける。取得機能212が、透視によって取得された各フレームから上述したように視野差画像を取得し、取得した視野差画像の各フレームの位相を取得する。透視後、撮影が開始されると、取得機能212は、取得した位相に対応する2つのフレームを視野差画像として取得する。
【0054】
制御機能213は、上述した視野差画像を種々の方法でディスプレイ23に表示させることができる。例えば、制御機能213は、視野差画像の全体をディスプレイ23に表示させる。また、例えば、制御機能213は、医用画像の一部の領域であって、注目領域を含む所定の領域をディスプレイ23に表示させる。図10Aは、第1の実施形態に係る制御機能213による視野差画像の表示例を示す図である。例えば、制御機能213は、図10Aに示すように、注目領域であるガイドワイヤ―のマーカーを含む所定の領域のみを示した左目画像及び右目画像をディスプレイ23に表示させる。例えば、心臓を対象とした医用画像では、画像の全領域が同一方向に移動することはほとんどない。従って、画像の全領域を同一の立体視画像として観察することが難しいため、制御機能213は、注目領域を含む所定の領域のみを表示させるように制御する。ここで、所定の領域以外の領域は、例えば、電子シャッターなどの遮蔽オブジェクトを配することにより、表示させないように制御される。また、所定の領域以外の領域は、例えば、右目画像或いは左目画像のどちらか一方の対応する領域が表示される場合であってもよい。
【0055】
また、制御機能213は、注目領域を含む所定の領域を拡大してディスプレイ23に表示させることもできる。図10Bは、第1の実施形態に係る制御機能による視野差画像の表示例を示す図である。例えば、制御機能213は、図10Bに示すように、左目画像及び右目画像について、注目領域であるガイドワイヤ―のマーカーを含む所定の領域をそれぞれ拡大した画像を視野差画像として表示させる。
【0056】
次に、図11及び図12を用いて、第1の実施形態に係るX線診断装置100の処理について説明する。第1の実施形態に係るX線診断装置100は、上述したように収集されたX線画像に対する処理(ポストプロセスの処理)と、リアルタイムで収集されるX線画像に対する処理(Live時の処理)を実行することができる。これらの処理について、以下、順に説明する。
【0057】
図11は、第1の実施形態に係るポストプロセスの処理手順を示すフローチャートである。図11に示すステップS101、S102、S106、S107及びS108は、処理回路21が記憶回路25から制御機能213に対応するプログラムを読み出して実行するステップである。また、ステップS103及びS105は、処理回路21が記憶回路25から取得機能212に対応するプログラムを読み出して実行するステップである。また、ステップS104及び105は、処理回路21が記憶回路25から算出機能212に対応するプログラムを読み出して実行するステップである。ステップS101及びステップS102では、処理回路21が、収集されたX線画像をディスプレイ23に表示させ、位相に基づいて視野差画像を取得する位相モードであるか否かを判定する。
【0058】
ここで、位相モードである場合(ステップS102肯定)、ステップS103において、処理回路21が、予め対応付けて記憶された位相の情報に基づいて視野差画像に相当する所定の位相画像を取得する。一方、位相モードでない場合(ステップS102否定)、ステップS104において、処理回路21が、画像ごとの注目領域を特定する。そして、ステップS105において、処理回路21が、注目領域の画像間の移動量を算出し、所定の視野差角度となる2つの画像を視野差画像として取得する。
【0059】
ステップS106では、処理回路21が、取得された画像における注目領域の移動方向が水平であるか否かを判定する。ここで、注目領域の移動方向が水平ではない場合には(ステップS106否定)、処理回路21は、ステップS107において注目領域が水平に移動するように画像を回転させ、ステップS108において立体視画像を表示させる。一方、注目領域の移動方向が水平である場合には(ステップS106肯定)、処理回路21は、ステップS108において立体視画像を表示させる。
【0060】
図12は、第1の実施形態に係るLive時の処理手順を示すフローチャートである。図12に示すステップS201、S203、S204、S206、S207、S108及びS209は、処理回路21が記憶回路25から制御機能213に対応するプログラムを読み出して実行するステップである。また、図12に示すステップS202及びS205は、処理回路21が記憶回路25から算出機能212に対応するプログラムを読み出して実行するステップである。また、図12に示すステップS205は、処理回路21が記憶回路25から取得機能212に対応するプログラムを読み出して実行するステップである。ステップS201では、処理回路21が、Liveの透視画像をディスプレイ23に表示させる。
【0061】
ステップS202及びステップS203では、処理回路21が、画像ごとの注目領域を特定し、注目領域が画像内で平行移動するか否かを判定する。ここで、注目領域が平行移動しない場合(ステップS203否定)、処理回路21が、ステップS204において注目領域が画像内で平行移動するようにX線の照射方向を制御し、ステップS205において注目領域の画像間の移動量を算出し、所定の視野差角度となる2つの画像を視野差画像として取得する。
【0062】
一方、注目領域が平行移動する場合(ステップS203肯定)、処理回路21が、ステップS205において注目領域の画像間の移動量を算出し、所定の視野差角度となる2つの画像を視野差画像として取得する。その後、ステップS206では、処理回路21が、取得した画像の位相情報を記憶回路25に保持させる。そして、処理回路21は、透視又は撮影によりX線画像を開始する。さらに、処理回路21は、記憶回路25に保持させた位相情報に対応する時点のX線画像を視野差画像として取得する。
【0063】
ステップS207では、処理回路21が、取得された画像における注目領域の移動方向が水平であるか否かを判定する。ここで、注目領域の移動方向が水平ではない場合には(ステップS207否定)、処理回路21は、ステップS208において注目領域が水平に移動するように画像を回転させ、ステップS209において立体視画像を表示させる。一方、注目領域の移動方向が水平である場合には(ステップS207肯定)、処理回路21は、ステップS209において立体視画像を表示させる。
【0064】
上述したように、第1の実施形態によれば、取得機能212は、画像間における注目領域(関心部位)の移動距離が、所定の視野差角度から導出される距離に相当する複数の医用画像を取得する。制御機能213は、複数の医用画像を立体視画像を表示するディスプレイ23に表示させる。従って、第1の実施形態に係るX線診断装置100は、動的な部位を容易に立体視させることを可能にする。
【0065】
また、第1の実施形態によれば、取得機能212は、注目領域の移動距離が所定の視野差角度から導出される距離と一致する複数の医用画像、又は、注目領域の移動距離が所定の視野差角度から導出される距離に近似する複数の医用画像を取得する。従って、第1の実施形態に係るX線診断装置100は、状況に応じて最適な視野差画像を取得することを可能にする。
【0066】
また、第1の実施形態によれば、算出機能211は、注目領域が画像中心によって分けられる2つの領域間を移動する場合の所定の視野差角度に対応する距離を導出し、取得機能212は注目領域の画像間での距離が導出した距離に相当する2つの医用画像を取得する。また、算出機能211は、注目領域が画像中心によって分けられる2つの領域のどちらか一方の領域内で移動する場合の所定の視野差角度に対応する距離を導出する。取得機能212は、注目領域の画像間での距離が導出した距離に相当する2つの医用画像を取得する。そして、制御機能213は、2つの医用画像をディスプレイ23に表示させる。従って、第1の実施形態に係るX線診断装置100は、注目領域が移動する位置に応じて最適な視野差画像を取得することを可能にする。
【0067】
また、第1の実施形態によれば、制御機能213は、注目領域の移動方向が水平方向となるように医用画像を回転させた後、複数の医用画像をディスプレイ23に表示させる。従って、第1の実施形態に係るX線診断装置100は、注目領域が画像内でどのように移動している場合であってもよい立体視画像を表示させることを可能にする。
【0068】
また、第1の実施形態によれば、制御機能213は、画像間での注目領域の移動距離が所定の視野差角度から導出される距離に相当するように、X線の照射方向を制御する。従って、第1の実施形態に係るX線診断装置100は、注目領域が被検体内でどの方向で動いていても、注目領域を立体視させる視野差画像を取得することを可能にする。
【0069】
また、第1の実施形態によれば、取得機能212は、周期的に動く部位を対象とした医用画像において、注目領域の画像間での移動距離が所定の視野差角度から導出される距離に相当する位相の医用画像を取得する。従って、第1の実施形態に係るX線診断装置100は、視野差画像を容易に取得することを可能にする。
【0070】
また、第1の実施形態によれば、制御機能213は、医用画像の一部の領域であって、注目領域を含む所定の領域をディスプレイ23に表示させる。また、制御機能213は、所定の領域を拡大してディスプレイ23に表示させる。従って、第1の実施形態に係るX線診断装置100は、注目領域を観察し易い立体視画像を表示させることを可能にする。
【0071】
(第2の実施形態)
さて、これまで第1の実施形態について説明したが、上述した第1の実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0072】
上述した実施形態では、視野差画像として2つのフレームを取得する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、3つ以上のフレームを視野差画像として取得する場合であってもよい。かかる場合には、例えば、取得機能212は、各フレーム間における注目領域の移動距離が算出機能211によって算出された距離に相当するフレームを3つ以上取得する。そして、制御機能213は、例えば、レンチキュラーレンズ等の光線制御子を用いることで3つ以上のフレームを含む視野差画像を立体視表示させることができるディスプレイ23に対して、取得した3つ以上のフレームを表示させる。
【0073】
また、上述した実施形態では、経時的に収集されるフレーム群から2つのフレームを取得して立体視画像の静止画を表示させる場合について説明した。しかしながら、実施形態は、これに限定されるものではなく、例えば、経時的に収集されるフレーム群から複数の視野差画像を取得して表示させることで、立体視画像の動画像を表示させる場合であってもよい。例えば、血管内にガイドワイヤ―を挿入させている動画像を立体視画像で表示させる場合であってもよい。かかる場合には、算出機能211及び取得機能212が、ガイドワイヤ―の動きがあまりない各時点でのフレーム群について上記した処理を実行することで、取得機能212が各時点における視野差画像をそれぞれ取得する。そして、制御機能213が、取得された複数の視野差画像を時系列に沿って順に表示させる。
【0074】
また、第1の実施形態で図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0075】
また、上記実施形態で説明した表示方法は、予め用意された制御プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この表示プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この制御プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0076】
以上説明したとおり、少なくとも一つの実施形態によれば、動的な部位を容易に立体視することを可能にする。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0078】
21 処理回路
100 X線診断装置
211 算出機能
212 取得機能
213 制御機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12