特許第6711691号(P6711691)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6711691
(24)【登録日】2020年6月1日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】OPアンプおよび電子回路
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/45 20060101AFI20200608BHJP
   H03M 1/12 20060101ALI20200608BHJP
   G01R 19/00 20060101ALI20200608BHJP
【FI】
   H03F3/45 110
   H03M1/12 A
   G01R19/00 U
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-98546(P2016-98546)
(22)【出願日】2016年5月17日
(65)【公開番号】特開2017-208634(P2017-208634A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2019年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】手島 紘明
【審査官】 小林 正明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−115334(JP,A)
【文献】 特開2005−099170(JP,A)
【文献】 特開2003−022056(JP,A)
【文献】 特開2004−032603(JP,A)
【文献】 特開2013−168926(JP,A)
【文献】 特開2009−152680(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0233874(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 19/00
H03F 3/45
H03M 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1入力端子および第2入力端子と
前記第1入力端子に入力された信号と前記第2入力端子に入力された信号の差分に基づく差動出力信号を生成する差動増幅回路と、
Nチャネル型のトランジスタを出力トランジスタとするソースフォロア回路を含む第1出力回路と、
Pチャネル型のトランジスタを出力トランジスタとするソースフォロア回路を含む第2出力回路と、
前記第1出力回路の出力ノードおよび前記第2出力回路の出力ノードに接続された出力端子と、
前記差動出力信号を前記第1出力回路と前記第2出力回路の何れか一方に入力する選択回路と、を有する
ことを特徴とするOPアンプと、
前記OPアンプの前記出力端子から出力された信号をサンプリングするスイッチトキャパシタ回路と、を備え、
前記OPアンプの前記第2入力端子と前記出力端子とが接続され、
前記スイッチトキャパシタ回路は、前記OPアンプの前記出力端子から出力された信号に基づく電荷を容量に充電するサンプリング期間と、前記サンプリング期間に前記容量に充電された電荷を保持するホールド期間とを交互に繰り返し、
前記選択回路は、前記ホールド期間において、前記第1入力端子に入力された信号の直流成分が閾値よりも小さい場合に、前記差動増幅回路の出力ノードを前記第1出力回路の入力ノードに接続し、前記第1入力端子に入力された信号の直流成分が前記閾値よりも大きい場合に、前記差動増幅回路の出力ノードを前記第2出力回路の入力ノードに接続し、前記サンプリング期間において、直前の前記ホールド期間における前記差動増幅回路の出力ノードと前記第1出力回路の入力ノードおよび前記第2出力回路の入力ノードとの接続関係を維持する
ことを特徴とする電子回路。
【請求項2】
第1入力端子および第2入力端子と
前記第1入力端子に入力された信号と前記第2入力端子に入力された信号の差分に基づく差動出力信号を生成する差動増幅回路と、
PN型のトランジスタを出力トランジスタとするエミッタフォロア回路を含む第1出力回路と、
NP型のトランジスタを出力トランジスタとするエミッタフォロア回路を含む第2出力回路と、
前記第1出力回路の出力ノードおよび前記第2出力回路の出力ノードに接続された出力端子と、
前記差動出力信号を前記第1出力回路と前記第2出力回路の何れか一方に入力する選択回路と、を有する
ことを特徴とするOPアンプと、
前記OPアンプの前記出力端子から出力された信号をサンプリングするスイッチトキャパシタ回路と、を備え、
前記OPアンプの前記第2入力端子と前記出力端子とが接続され、
前記スイッチトキャパシタ回路は、前記OPアンプの前記出力端子から出力された信号に基づく電荷を容量に充電するサンプリング期間と、前記サンプリング期間に前記容量に充電された電荷を保持するホールド期間とを交互に繰り返し、
前記選択回路は、前記ホールド期間において、前記第1入力端子に入力された信号の直流成分が閾値よりも小さい場合に、前記差動増幅回路の出力ノードを前記第1出力回路の入力ノードに接続し、前記第1入力端子に入力された信号の直流成分が前記閾値よりも大きい場合に、前記差動増幅回路の出力ノードを前記第2出力回路の入力ノードに接続し、前記サンプリング期間において、直前の前記ホールド期間における前記差動増幅回路の出力ノードと前記第1出力回路の入力ノードおよび前記第2出力回路の入力ノードとの接続関係を維持する
ことを特徴とする電子回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OPアンプ、および上記OPアンプを用いた電子回路に関し、例えば、温度調節器や流量調節器等の計装機器において、センサからのアナログ信号をディジタル信号に変換するアナログ/ディジタル変換回路の入力インターフェースとして用いられるバッファ回路用OPアンプに関する。
【背景技術】
【0002】
プラントやビルの空調設備等に設けられる温度調節器や流量調節器等の計装機器は、温度や流量等をセンサによって検出し、センサからの検出結果に基づいてフィードバック制御を行うことにより、制御対象の温度や流量が目標値になるように制御している。
【0003】
一般に、計装機器は、アナログ信号をディジタル信号に変換するアナログ/ディジタル変換回路(以下、「A/D変換回路」とも称する。)を備えており、A/D変換回路によって、センサからのアナログ形式の検出信号をディジタル信号に変換し、そのディジタル信号を用いて各種データ処理を実行する。計装機器に搭載されるA/D変換回路としては、スイッチトキャパシタ回路を用いたΔΣ型のA/D変換回路等が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
計装機器では、上述したように取り込んだセンサの検出結果に基づいてフィードバック制御を行っているので、制御対象の温度や流量を高精度にコントロールするためには、センサの検出結果を確実に取り込み、且つA/D変換を高精度に行う必要がある。
例えば、スイッチトキャパシタ回路を用いたΔΣ型のA/D変換回路の場合、センサの出力信号に応じた電荷を入力容量に蓄積することによって、センサの検出結果をサンプリングし、そのサンプリング結果を用いてA/D変換を行っている。しかしながら、このようなスイッチトキャパシタ回路を用いたA/D変換回路の場合、センサの出力信号を入力容量に直接入力すると、センサの出力インピーダンスが大きいため、入力容量を十分に充電することができず、センサの検出結果を正確に取り込むことができない。
【0005】
そこで、従来の計装機器では、センサとA/D変換回路の入力段のスイッチトキャパシタ回路との間に、OPアンプから成るバッファ回路を設け、センサの出力信号を上記バッファ回路を介してスイッチトキャパシタ回路に入力していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−188089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
計装機器のA/D変換回路の入力段のバッファ回路として用いられるOPアンプは、センサの検出結果を確実に取り込むために、より小さい出力インピーダンスと、より広い出力電圧範囲が求められる。
【0008】
しかしながら、一般なCMOSプロセスのOPアンプの場合、出力回路として、出力インピーダンスは小さいが出力電圧範囲の狭いソースフォロア回路、または出力電圧範囲は広いが出力インピーダンスが大きい(同サイズのトランジスタを用いたソースフォロア回路と比較して10倍〜100倍程度の出力インピーダンス)ソース接地回路が採用されており、小さい出力インピーダンスと広い出力電圧範囲とを両立するバッファ回路を実現することは容易ではない。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、OPアンプを利用したバッファ回路の低出力インピーダンス化と出力電圧範囲の拡大を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るOPアンプ(1,1A)は、第1入力端子(INn)および第2入力端子(INp)と、第1入力端子に入力された信号と第2入力端子に入力された信号の差分に基づく差動出力信号を生成する差動増幅回路(10)と、第1導電型のトランジスタ(MN1)を出力トランジスタとするソースフォロア回路またはエミッタフォロア回路を含む第1出力回路(11)と、第2導電型のトランジスタ(MP1)を出力トランジスタとするソースフォロア回路またはエミッタフォロア回路を含む第2出力回路(12)と、第1出力回路の出力ノードおよび第2出力回路の出力ノードに接続された出力端子(OUT)と、差動出力信号を第1出力回路と第2出力回路の何れか一方に入力する選択回路(13)とを有することを特徴とする。
【0011】
上記OPアンプにおいて、選択回路は、第1入力端子または第2入力端子に入力された信号の直流成分の大きさに応じて差動出力信号の入力先を切り替えてもよい。
【0012】
本発明に係る電子回路は、第1入力端子と出力端子とが接続されたOPアンプ(1A)と、OPアンプの出力端子から出力された信号をサンプリングするスイッチトキャパシタ回路(2)とを備えることを特徴とする。
【0013】
上記電子回路において、スイッチトキャパシタ回路は、OPアンプの出力端子から出力された信号(Vout)に基づく電荷を容量(Cin)に充電するサンプリング期間(TΦ1)と、サンプリング期間に上記容量に充電された電荷を保持するホールド期間(TΦ2)とを交互に繰り返し、選択回路は、ホールド期間において、第1入力端子に入力された信号の直流成分が閾値(VT)よりも小さい場合に、差動増幅回路の出力ノード(n0)を第1出力回路の入力ノード(n1)に接続し、第1入力端子に入力された信号の直流成分が上記閾値よりも大きい場合に、差動増幅回路の出力ノードを第2出力回路の入力ノード(n2)に接続し、サンプリング期間において、直前のホールド期間における差動増幅回路の出力ノードと第1出力回路の入力ノードおよび第出力回路の入力ノードとの接続関係を維持してもよい。
【0014】
なお、上記説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を括弧を付して記載している。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したことにより、本発明によれば、OPアンプを利用したバッファ回路の低出力インピーダンス化と出力電圧範囲の拡大が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施の形態に係るOPアンプの構成を示す図である。
図2図2は、本発明の一実施の形態に係るOPアンプによってバッファ回路を構成した場合の一例を示す図である。
図3図3は、OPアンプの回路構成を示す図である。
図4図4は、バッファ回路としてのOPアンプの出力電圧範囲を説明するための図である。
図5図5は、本発明の一実施の形態に係るOPアンプをスイッチトキャパシタ回路の入力バッファ回路として用いた電子回路を示す図である。
図6図6は、選択信号生成回路の回路構成を示す図である。
図7図7は、図6の選択信号生成回路を用いたOPアンプのタイミングチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0018】
≪OPアンプ≫
図1は、本発明の一実施の形態に係るOPアンプの構成を示す図である。
図1に示されるように、OPアンプ1は、入力端子INn,INp、差動増幅回路10、選択回路13、出力回路11、12、出力端子OUTを有している。
【0019】
差動増幅回路10は、入力端子INnに入力された信号と入力端子INpに入力された信号の差分に基づく差動出力信号を生成する回路である。
【0020】
出力回路11は、第1導電型(例えば、Nチャネル型)のトランジスタを出力トランジスタとするソースフォロア回路を含む回路である。出力回路12は、第2導電型(例えば、Pチャネル型)のトランジスタを出力トランジスタとするソースフォロア回路を含む回路である。出力回路11の出力ノードおよび出力回路12の出力ノードは、出力端子OUTに夫々接続されている。
【0021】
選択回路13は、差動増幅回路10によって生成された差動出力信号を、出力回路11と出力回路12の何れか一方に入力する回路である。
【0022】
図2は、OPアンプ1によってバッファ回路を構成した場合の一例を示す図である。
図2に示すように、OPアンプ1は、差動増幅回路10の反転入力端子(INn,−)とOPアンプ1の出力ノードとを短絡することにより、差動増幅回路10の非反転入力端子(INp,+)に信号Vinを入力するバッファ回路(ボルテージフォロア)として機能させることができる。以下、差動増幅回路10の反転入力端子と出力ノードとを短絡した回路を、「ボルテージフォロア1A」と表記する。
【0023】
図2に示すボルテージフォロア1Aは、入力端子INpに入力された入力信号Vinの直流成分の大きさに応じて、OPアンプの出力回路として、出力回路11と出力回路12のどちらを使用するかを切り替える機能を有する。
【0024】
以下、OPアンプ1の具体的な回路構成について説明する。ここでは、OPアンプ1が、例えば、公知のCMOSプロセスによって半導体基板に形成された半導体集積回路として実現されているものとして説明する。
【0025】
図3は、OPアンプ1の回路構成を示す図である。
図3に示すように、差動増幅回路10は、例えば、Pチャネル型のMOSトランジスタ(以下、「PMOSトランジスタ」と称する。)MP3,MP4,MP5、およびNチャネル型のMOSトランジスタ(以下、「NMOSトランジスタ」と称する。)MN3,MN4,MN5から構成された差動入力回路110と、PMOSトランジスタMP6,MP7,MP8,MP9、およびNMOSトランジスタMN6,MN7,MN8,MN9から構成されたカスコード増幅回路111と、PMOSトランジスタMP10、NMOSトランジスタMN10、容量C、および抵抗Rから構成されたソース接地増幅回路112とを含む。
【0026】
差動増幅回路10の出力ノードn0は、後述するスイッチ回路130の端子Aに接続されている。
【0027】
選択回路13は、スイッチ回路130と選択信号131とを含む。スイッチ回路130は、差動増幅回路10の出力ノードn0と出力回路11の出力ノードn1および出力回路12の出力ノードn2との間に設けられ、選択信号生成回路131から与えられた選択信号SELに基づいて、差動増幅回路10の出力ノードn0の接続先を、出力回路11の出力ノードn1または出力回路12の出力ノードn2に切り替える回路である。
【0028】
選択信号生成回路131は、スイッチ回路130の接続先を切り替えるための選択信号SELを生成する回路である。
例えば、OPアンプ1を図2に示したボルテージフォロア1Aとして使用する場合には、選択信号生成回路131は、入力端子INpまたは入力端子INnに入力された信号の直流成分の大きさに基づいて、選択信号SELを生成する。選択信号SELは、例えば2値の信号である。
【0029】
より具体的には、選択信号生成回路131は、信号Vinの直流成分が所定の閾値VTよりも低い場合には、第1論理レベル(例えばLowレベル)の選択信号SELをスイッチ回路130に与えることにより、差動増幅回路10の出力ノードn0と出力回路11の入力ノードn1を接続(スイッチ回路130の端子aと端子bを接続)し、信号Vinの直流成分が所定の閾値VTよりも高い場合には、第2論理レベル(例えばHighレベル)の選択信号SELをスイッチ回路130に与えることにより、差動増幅回路10の出力ノードn0と出力回路12の入力ノードn2を接続(スイッチ回路130の端子aと端子cを接続)する。
【0030】
出力回路11は、上述したように、NMOSトランジスタを出力トランジスタとするソースフォロア回路であり、例えば、NMOSトランジスタMN1と、NMOSトランジスタMN2とを含む。
【0031】
NMOSトランジスタMN1は、出力トランジスタであり、そのドレイン電極が電源電圧としての固定電圧Vddが供給される電源ラインVddに接続され、そのソース電極が出力端子OUTに接続され、そのゲート電極がスイッチ回路130の端子Bに接続されている。
【0032】
NMOSトランジスタMN2は、NMOSトランジスタMN1の負荷であり、そのドレイン電極が出力端子OUTに接続され、そのソース電極が電源電圧としての固定電圧Vss(<Vdd)が供給される電源ラインVssに接続され、そのゲート電極にはバイアス電圧Vb1が印加されている。
【0033】
出力回路12は、上述したように、PMOSトランジスタを出力トランジスタとするソースフォロア回路であり、例えば、PMOSトランジスタMP1と、PMOSトランジスタMP2とを含む。
【0034】
PMOSトランジスタMP1は、出力トランジスタであり、そのドレイン電極が電源ラインVssに接続され、そのソース電極が出力端子OUTに接続され、そのゲート電極がスイッチ回路130の端子Cに接続されている。
【0035】
PMOSトランジスタMP2は、PMOSトランジスタMP1の負荷であり、そのドレイン電極が出力端子OUTに接続され、そのソース電極が電源ラインVddに接続され、そのゲート電極にはバイアス電圧Vb2が印加されている。
【0036】
上述した回路構成を有するボルテージフォロア1Aによれば、入力信号Vinの直流成分が閾値VTよりも低い場合には、低電位側に広い出力電圧範囲を有するNチャネル型の低出力インピーダンスのソースフォロア回路(出力回路11)を利用し、入力信号Vinの直流成分が閾値VTよりも高い場合には、高電位側に広い出力電圧範囲を有するPチャネル型の低出力インピーダンスのソースフォロア回路(出力回路12)を利用するので、図4に示すように、ボルテージフォロア1Aの出力電圧範囲を疑似的に広くすることができる。これにより、バッファ回路の低出力インピーダンス化と出力電圧範囲の拡大が可能となる。
【0037】
なお、選択されていない方の出力回路は、出力トランジスタのゲート電極と能動負荷を構成する負荷トランジスタのゲート電極を、電源ラインVddまたは電源ラインVssに接続することにより、その出力回路の出力ノードを高インピーダンス状態にすればよい。例えば、出力回路11が選択されている場合、選択されていない出力回路12のPMOSトランジスタMP1,MP2のゲート電極を電源ラインVDDに接続すればよい。
【0038】
≪応用例≫
次に、上述したOPアンプ1の適用例を示す。
図5は、本発明の一実施の形態に係るOPアンプ1をスイッチトキャパシタ回路の入力バッファ回路として用いた電子回路を示す図である。
【0039】
図5に示される電子回路100は、スイッチトキャパシタ回路としての積分回路2と、積分回路2の入力バッファ回路としてのボルテージフォロア1Aとを含む。ここで、積分回路2とボルテージフォロア1Aとは、例えば、公知のCMOSプロセスによって半導体基板に形成された1つのICチップとして実現されているものとする。
【0040】
積分回路2は、ボルテージフォロア1Aの出力端子OUTから出力された信号Voutをサンプリングし、積分するスイッチトキャパシタ回路であり、例えばΔΣ型のA/D変換回路の入力回路の一部を構成している。
【0041】
具体的に、積分回路2は、ボルテージフォロア1Aの出力端子OUTから出力された信号Voutに応じた電荷を入力容量Cinに充電するサンプリング期間TΦ1と、サンプリング期間に入力容量Cinに充電された電荷を保持するホールド期間TΦ2とを交互に繰り返すことにより、信号Voutを積分する。
【0042】
より具体的には、積分回路2は、入力容量Cinと、出力容量Cintと、信号Voutに応じた電荷を入力容量Cinに充電するためのサンプリング用スイッチSW1,SW3と、入力容量Cinに蓄えられた電荷を保持し、後段の出力容量Cinに転送するためのホールド用スイッチSW2,SW4と、差動増幅回路20とを含む。
【0043】
サンプリング用スイッチSW1,SW3は、信号Φ1によってオン/オフが制御され、ホールド用スイッチSW2,SW4は、信号Φ2によってオン/オフが制御される。
【0044】
積分回路2において、サンプリング期間TΦ1にサンプリング用スイッチSW1,SW3をオンさせるとともにホールド用スイッチSW2,SW4をオフさせ、ホールド期間TΦ2にサンプリング用スイッチSW1,SW3をオンさせるとともにホールド用スイッチSW2,SW4をオフさせるように、信号Φ1,Φ2を夫々の上記スイッチに入力することにより、信号Voutが積分される。
【0045】
OPアンプ1は、上述したようにボルテージフォロアであり、積分対象の入力信号Vinに応じた信号Voutを出力する。
【0046】
図5に示すOPアンプ1において、選択回路13は、積分回路2のホールド期間TΦ2に、入力端子INpに供給された入力信号Vinの大きさを判定し、判定結果に応じてOPアンプ1の出力回路として出力回路11と出力回路12の何れか一方を選択するとともに、積分回路2のサンプリング期間TΦ1に、直前のホールド期間TΦ2での出力回路の選択結果を維持する。
【0047】
具体的には、選択回路13は、ホールド期間TΦ2において、入力信号Vinの直流成分が閾値VTよりも小さい場合に、差動増幅回路10の出力ノードn0を出力回路11の入力ノードn2に接続し、入力信号Vinの直流成分が閾値VTよりも大きい場合に、差動増幅回路10の出力ノードn0を出力回路12の入力ノードn2に接続するとともに、サンプリング期間TΦ1において、直前のホールド期間TΦ2における差動増幅回路10の出力ノードn0と出力回路12の入力ノードn2および出力回路11の入力ノードn1との接続関係を維持する。
【0048】
より具体的には、選択回路13の選択信号生成回路131を、図6に示すような信号Φ2の立上りエッジ(または立下りエッジ)で動作するラッチ付きコンパレータCMPを用いて構成することにより、選択回路13を上記のように動作させることができる。
【0049】
図7は、図6の選択信号生成回路131を用いたOPアンプ1のタイミングチャートを示す図である。同図では、信号Φ1がHighとなる期間をサンプリング期間TΦ1とし、信号Φ2がHighとなる期間をホールド期間TΦ2としている。また、信号Φ1,Φ2がハイレベルであるときに対応するスイッチがオンし、信号Φ1,Φ2がローレベルであるときに対応するスイッチがオフするものとしている。
【0050】
図7に示すように、選択信号生成回路131を信号Φ2の立上りエッジで動作するラッチ付きコンパレータCMPで構成することにより、ホールド期間TΦ2が開始されるタイミングにおいて、入力信号Vinと閾値VTとの比較結果に応じて選択信号SELの論理レベルが更新され、サンプリング期間TΦ1において選択信号SELの論理レベルが保持される。
【0051】
これによれば、後段の積分回路2が信号Voutを取り込むサンプリング期間TΦ1においてOPアンプ1の出力回路が切り替わることがないので、積分回路2に対する悪影響を抑えることができる。例えば、OPアンプ1の出力回路の切り替わり時に信号Voutの瞬間的な変動があったとしても、その切り替わりのタイミングにおいては積分回路2のサンプリング用スイッチSW1がオフしているので、信号Voutの瞬間的な変動が積分回路2に与える影響は限定的である。
【0052】
以上、本発明に係るOPアンプによれば、当該OPアンプをバッファ回路として用いることにより、バッファ回路の低出力インピーダンス化と出力電圧範囲の拡大を実現することが可能となる。
【0053】
特に、スイッチトキャパシタ回路の入力バッファ回路として上記実施の形態に係るOPアンプ1を適用することにより、後段のスイッチトキャパシタ回路の動作に悪影響を与えることなく、スイッチトキャパシタ回路の性能を十分に発揮させることができる。
【0054】
すなわち、積分回路2が、計装機器に搭載されるΔΣ型のA/D変換回路の入力回路の一部である場合に、低出力インピーダンスのOPアンプ1を積分回路2の入力バッファ回路として用いることにより、センサからの信号によって入力容量Cinに十分に充電することができるので、センサからの信号を確実に取り込むことが可能となる。
【0055】
また、OPアンプ1の出力電圧範囲を疑似的に広くすることができるので、入力バッファ回路としてのOPアンプ1の出力電圧範囲によって、ΔΣ型のA/D変換回路の入力電圧範囲が制限されることを防ぐことができ、ΔΣ型のA/D変換回路の入力電圧範囲を広げることが可能となる。
【0056】
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0057】
例えば、上記実施の形態において、OPアンプ1が、公知のCMOSプロセスによって実現される場合を例示したが、バイポーラプロセス、Bi−CMOSプロセス、およびヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT:Heterojunction Bipolar Transistor)プロセス等の他の半導体製造プロセスによって実現してもよい。例えば、OPアンプ1をバイポーラプロセスによって実現する場合には、NMOSトランジスタMN1,MN2を夫々NPNトランジスタに変更したエミッタフォロア回路によって出力回路11を構成し、PMOSトランジスタMP1,MP2を夫々PNPトランジスタに変更したエミッタフォロア回路によって出力回路12を構成してもよい。
【0058】
また、上記実施の形態では、出力回路11,12の出力トランジスタ(NMOSトランジスタMN1,PMOSトランジスタMP1)の負荷として、能動負荷(NMOSトランジスタMN2,PMOSトランジスタMP2)を例示したが、出力回路11,12がソースフォロア回路を構成しているのであれば、上記の構成に限定されない。例えば、上記能動負荷の代わりに抵抗を用いてもよい。
【0059】
また、上記実施の形態では、入力回路としてのOPアンプ1を接続するスイッチトキャパシタ回路として、ΔΣ型のA/D変換回路の入力回路を構成する積分回路2を例示したが、入力したアナログ信号に応じた電荷を一定周期毎に容量に蓄えるスイッチトキャパシタ回路であれば、上述の積分回路2に限定されない。例えば、積分回路2の代わりに、スイッチトキャパシタ型のコンパレータやスイッチトキャパシタフィルタ等であってもよい。
【0060】
また、図2,5では、OPアンプ1をバッファ回路(ボルテージフォロア)として機能させるために、差動増幅回路10の反転入力端子(−)とOPアンプ1の出力端子OUTとをICチップの外部で短絡する場合を例示したが、これに限られず、ICチップの内側において入力端子INnと出力端子OUTとを短絡させてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…OPアンプ、1A…ボルテージフォロア、INn,INp…入力端子、OUT…出力端子、10…差動増幅回路、11,12…出力回路、13…選択回路、130…スイッチ回路、131…選択信号生成回路、n0,n1,n2…ノード、SW1,SW3…サンプリング用スイッチ、SW2,SW4…ホールド用スイッチ、Vin,Vout、Φ1,Φ2…信号、MN1〜MN10…NMOSトランジスタ、MP1〜MP10…PMOSトランジスタ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7