特許第6711704号(P6711704)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6711704-バイパス電極付き保護素子 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6711704
(24)【登録日】2020年6月1日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】バイパス電極付き保護素子
(51)【国際特許分類】
   H01H 85/06 20060101AFI20200608BHJP
【FI】
   H01H85/06
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-122203(P2016-122203)
(22)【出願日】2016年6月21日
(65)【公開番号】特開2017-228379(P2017-228379A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2019年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】300078431
【氏名又は名称】ショット日本株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西川 正泰
(72)【発明者】
【氏名】中島 慎太郎
【審査官】 関 信之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−185960(JP,A)
【文献】 特開2001−052593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 85/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、この絶縁基板に設けた複数のパターン電極と、所定の前記パターン電極間を電気接続した低抵抗材からなるバイパス電極と、所定の前記パターン電極の間を橋設すると共に前記バイパス電極と近接して設けたヒューズエレメントとを備え、前記バイパス電極は、前記絶縁基板に設けられ、前記ヒューズエレメントよりも溶融温度が高く、溶融した前記ヒューズエレメントに溶解性の金属ペーストを焼結して形成した金属材から構成されており、前記金属ペーストは、ガラスフリット含有量を未添加ないし2質量%未満のものを用いたことを特徴とするバイパス電極付き保護素子。
【請求項2】
前記絶縁基板の片面にさらに抵抗発熱素子を設けたことを特徴とする請求項1に記載のバイパス電極付き保護素子。
【請求項3】
前記バイパス電極は、銅、銀、銅合金、銀合金の群から選択された少なくとも1つの溶解性の金属材を用いたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバイパス電極付き保護素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気・電子機器の回路保護素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モバイル機器など小型電子機器の急速な普及に伴い、搭載する電源の保護回路に実装される保護素子も小型薄型のものが使用されている。二次電池パックの保護回路には、例えば特許文献1に記載されるような表面実装部品(SMD)の保護素子が好適に利用される。これらの保護素子には、被保護機器の過電流により生ずる過大発熱や過電圧などの異常状態を検知し、または周囲温度の異常過熱に感応して、所定条件でヒューズを作動させ電気回路を遮断する非復帰型保護素子がある。該保護素子は、機器の安全を図るために、保護回路が機器に生ずる異常を検知すると信号電流により抵抗素子を発熱させ、その発熱で可融性の合金材からなるヒューズエレメントを溶断させて回路を遮断するか、あるいは過電流によってヒューズエレメントを溶断させて回路を遮断できる。
【0003】
特許文献1によると、はんだ付け温度で溶融する低融点金属材と、低融点金属材に溶解性の金属構造材とを積層して成るヒューズエレメント材を用いた保護素子がある。この保護素子のヒューズエレメント材は、はんだ付け作業で液相化した低融点金属材を、その温度で固相の金属構造材に付着させて一定時間溶断しないように界面張力で支えて保持することで、少なくともはんだ付け作業の間、ヒューズエレメントの形状を維持してヒューズエレメント材がはんだ付け作業温度で誤動作するのを防止する。はんだ付けが完了し回路保護素子が被保護回路に実装されると、ヒューズエレメント材の金属構造材は、はんだ付けの熱で媒質である低融点金属材中に拡散または溶解され希薄化しているので、設置環境の異常過熱や内蔵する抵抗発熱素子のヒータ加熱により容易に消失し、以後溶断を妨げることなく動作するようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−079608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の保護素子は、錫基はんだ合金の低融点金属材に、銀や銅の金属構造材を積層したヒューズエレメント材を用いるが、金属構造材が低融点金属材に溶解すると拡散界面に銀や銅の金属間化合物が生成する。このため、界面に生じた高抵抗の金属間化合層が障壁となって保護素子の電気抵抗を増大させてしまうという欠点があった。
【0006】
本発明は、上述の問題点を解消するために提案されたものであり、表面実装型の回路保護素子において、耐リフロー性を具備しながら拡散界面に金属間化合物の高抵抗層が生じても内部抵抗値が増大しない保護素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、絶縁基板と、この絶縁基板に設けた複数のパターン電極と、所定のパターン電極間を電気接続した低抵抗材からなるバイパス電極と、パターン電極の間を橋設すると共にバイパス電極と近接して設けたヒューズエレメントとを備え、バイパス電極は、絶縁基板に設けられ、該ヒューズエレメントよりも溶融温度が高く、溶融したヒューズエレメントに溶解性の金属材から構成されたことを特徴とするバイパス電極付き保護素子が提供される。このバイパス電極付き保護素子の絶縁基板には、必要に応じて抵抗発熱素子を設ける。本発明のバイパス電極は、積層セラミック基板の内部電極用に用いられる特定の金属ペーストを焼結して形成された焼結電極からなる。このバイパス電極用の金属ペーストは、ガラスフリット含有量を未添加ないし2質量%未満としたことを特徴とする。ここでいう近接とは、溶融したヒューズエレメントがバイパス電極を速やかに浸潤できる程度に接近していればよく、ヒューズエレメントがバイパス電極に当接した状態でも、ヒューズエレメントをバイパス電極の近傍に設ける(例えば、バイパス電極にヒューズエレメントを被せて、ヒューズエレメントとバイパス電極との間に隙間がある等の)状態でもどちらでもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るバイパス電極付き保護素子は、絶縁基板に設けられたバイパス電極を有し、該バイパス電極は、ヒューズエレメントより溶融温度が高い金属からなり、溶融したヒューズエレメントがバイパス電極を濡らすと同時にバイパス電極を溶解して行くが、液相化したヒューズエレメントを固相のバイパス電極ではんだ付け作業が終わるまで一定時間溶断しないように固−液界面の濡れを利用して付着させて保持する。従って、少なくともはんだ付け作業の間、ヒューズエレメントの形状を維持してヒューズエレメントがはんだ付け作業温度で誤動作するのを防止できる。
【0009】
さらに本発明のバイパス電極は、金属ペーストを焼結して形成するため、スポンジ様の巣の多いポーラス状の電極材であり、液相化したヒューズエレメントを速やかに浸透させて縦深方向に立体的に溶解させることができ、この保護素子がリフローはんだ付けされた後、再加熱によりヒューズエレメントを速やかに溶断させる。しかも、バイパス電極に浸潤したヒューズエレメントとの界面に高抵抗の金属間化合物層が生成されても、バイパス電極が溶解(すなわち保護素子が動作)するまで、残余のバイパス電極が途中に金属間化合物層を介することなくパターン電極間の導通路を維持するので保護素子の内部抵抗が上昇するのを防止する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係るバイパス電極付き保護素子10の部品部材を分解した斜視図を示す。
図2】本発明に係るバイパス電極付き保護素子20であり、(a)は(b)のd−d線に沿って蓋体を切断した平面図を示し、(b)は(a)のD−D線に沿った断面図を示し、(c)はその下面図を示す。
図3】本発明に係るバイパス電極付き保護素子30であり、(a)は(b)のd−d線に沿って蓋体を切断した平面図を示し、(b)は(a)のD−D線に沿った断面図を示し、(c)はその下面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るバイパス電極付き保護素子10は、図1に示すように、絶縁基板11と、この絶縁基板11に設けた銅、銀、銅合金、銀合金からなる複数のパターン電極12と、所定のパターン電極12の間を電気接続した銅、銀、銅合金、銀合金などの低抵抗材からなるバイパス電極13と、所定のパターン電極12の間を橋設すると共にバイパス電極13と近接して設けた少なくとも1つのヒューズエレメント14と、このヒューズエレメント14の表面に塗布した動作フラックス(図示せず)と、この動作フラックスごとヒューズエレメント14の上部を覆った蓋体15とを備え、該バイパス電極13は、絶縁基板11に設けられ、ヒューズエレメント14よりも溶融温度が高く、かつ溶融したヒューズエレメント14に溶解性の金属材から構成されたことを特徴とする。本発明のバイパス電極13は、積層セラミック基板の内部電極用に用いられる金属ペーストを焼結して形成された焼結電極からなり、該バイパス電極用金属ペーストは、ガラスフリット含有量を未添加ないし2質量%未満のものを用いたことを特徴とする。ガラスフリット含有量が2質量%を上回るとガラス材がバイパス電極13の溶解や溶融ヒューズエレメント14の浸透を阻害するようになるため、バイパス電極13の融け残りが生じ易くなる。一方、本発明のパターン電極12は、材料等を特に限定されない。例えば、本発明のパターン電極12は、上述のバイパス電極用金属ペーストを用いて焼結形成してバイパス電極13と同じ構成とすることもできるし、あるいは、溶融ヒューズエレメントに溶解しない別の導電材料を選定することもできる。一例として、バイパス電極用の金属ペーストより多くのガラスフリットを含有(すなわち、ガラスフリットを2質量%以上、好ましくは2〜5質量%含有するなど)した別の金属ペーストを用いて焼結形成するか、または同じバイパス電極用の金属ペーストを用いてパターン電極12も焼結形成し、このパターン電極12のみを溶融ヒューズエレメントに溶解しないニッケルなどバリア性の被覆材でさらに覆ってもよい。このバイパス電極付き保護素子10の絶縁基板11は、耐熱性の絶縁板、例えば、ガラスエポキシ基板、セラミックス基板、ガラス基板などからなり、絶縁基板11の片面に必要に応じて抵抗発熱素子を設けてもよい。抵抗発熱素子は必要に応じて絶縁コーティングを施す。抵抗発熱素子を設けない場合は、ヒューズエレメント14に接続されるパターン電極12のうち中央の電極を省略してもよい。蓋体14は、絶縁基板11およびヒューズエレメント14の上部を覆って所望のキャビティ空間を確保できればよく、形状、材質を制限するものではない。例えば、蓋体14には、ドーム状樹脂フイルムカバー、プラスチック蓋、セラミックス蓋などが好適に利用できる。
【0012】
本発明に係るバイパス電極付き保護素子20は、図2に示すように、絶縁基板21と、この絶縁基板21に設けた銅、銀、銅合金、銀合金からなる複数のパターン電極22と、所定のパターン電極22の間を電気接続した銅、銀、銅合金、銀合金などの低抵抗材からなるバイパス電極23と、所定のパターン電極22の間を橋設すると共にバイパス電極23と近接して設けた少なくとも1つのヒューズエレメント24と、このヒューズエレメント24の表面に塗布した動作フラックス(図示せず)と、この動作フラックスごとヒューズエレメント24の上部を覆った蓋体25とを備え、バイパス電極23は、絶縁基板21に設けられ、ヒューズエレメント24よりも溶融温度が高く、溶融したヒューズエレメント24に溶解性の金属材から構成されたことを特徴とする。このバイパス電極付き保護素子20の絶縁基板21は、耐熱性の絶縁板、例えば、ガラスエポキシ基板、セラミックス基板、ガラス基板などからなり、絶縁基板21の片面に抵抗発熱素子26を設ける。抵抗発熱素子26は絶縁コーティング(図示せず)を施す。なお、抵抗発熱素子26は、図2のようにヒューズエレメント24の搭載面と異なるもう一方の板面に設けてもよいし、図3のようにヒューズエレメント34と同じ板面に積層して設けてもよい。蓋体25は、絶縁基板21およびヒューズエレメント24の上部を覆って所望のキャビティ空間を確保できればよく、形状、材質を制限するものではない。例えば、蓋体25には、ドーム状樹脂フイルムカバー、プラスチック蓋、セラミックス蓋などが好適に利用できる。
【実施例】
【0013】
本発明に係る実施例1のバイパス電極付き保護素子20は、図2に示すように、アルミナ・セラミックスの絶縁基板21と、この絶縁基板21の上下面に設けた複数の銀合金製パターン電極22と、所定のパターン電極22と電気接続され絶縁基板21の下面に設けた抵抗発熱素子26と、所定のパターン電極22の間を電気接続した銀材からなるバイパス電極23と、所定のパターン電極22の間を橋設すると共にバイパス電極23と近接して設けたヒューズエレメント24と、このヒューズエレメント24の表面に塗布した動作フラックス(図示せず)と、この動作フラックスごとヒューズエレメント24の上部を覆って絶縁基板21に固着した液晶ポリマー製の蓋体25とを備え、バイパス電極23は、絶縁基板21の上面に設けられ、ヒューズエレメント24よりも溶融温度が高く、溶融したヒューズエレメント24に溶解性の銀材から構成され、ガラスフリットが未添加の銀ペーストを焼結して成り、パターン電極22は、基板上下面のパターン電極22を電気接続する銀合金のハーフ・スルーホール27を有する。特に図示しないが、実施例1の抵抗発熱素子26の表面はガラスのオーバーグレーズを施している。
【0014】
本発明に係る実施例2のバイパス電極付き保護素子30は、実施例1の回路保護素子20を変形したもので、図3に示すように、アルミナ・セラミックスの絶縁基板31と、この絶縁基板31の上下面に設けた複数の銀合金製パターン電極32と、所定のパターン電極32と電気接続され絶縁基板31の上面に設けた抵抗発熱素子36と、所定のパターン電極32の間を電気接続した銀合金からなるバイパス電極33と、所定のパターン電極32の間を橋設すると共にバイパス電極33と近接して設けたヒューズエレメント34と、このヒューズエレメント34の表面に塗布した動作フラックス(図示せず)と、この動作フラックスごとヒューズエレメント34の上部を覆って絶縁基板31に固着した液晶ポリマー製の蓋体35とを備え、バイパス電極33は、絶縁基板31の上側に設けられ、ヒューズエレメント34よりも溶融温度が高く、溶融したヒューズエレメント34に溶解性の銀合金から構成され、ガラスフリットが未添加の銀合金ペーストを焼結して成り、パターン電極32は、基板上下面のパターン電極32を電気接続する銀合金のハーフ・スルーホール37を有する。特に図示しないが、実施例2の抵抗発熱素子36の所定表面はガラスのオーバーグレーズを施している。
【0015】
なお、実施例1および実施例2のバイパス電極付き保護素子は、絶縁基板上下面のパターン電極を電気接続する配線手段は、ハーフ・スルーホールに替えて該基板を貫通した導体スルーホールや、平面電極パターンによる表面配線に変更してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明のバイパス電極付き保護素子は、他の表面実装部品と共に被保護回路板にマウントでき、リフロー工法などで一括はんだ付け実装されて、電池パックなど2次電池の保護装置に利用できる。
【符号の説明】
【0017】
10、20、30・・・バイパス電極付き保護素子、
11、21、31・・・絶縁基板、
12、22、32・・・パターン電極、
13、23、33・・・バイパス電極、
14、24、34・・・ヒューズエレメント、
15、25、35・・・蓋体、
26、36・・・抵抗発熱素子、
17、27、37・・・ハーフ・スルーホール。
図1
図2
図3