(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記所定波長光の強さが第1の範囲にある場合には紙葉類が折れ紙葉類であると判定し、前記所定波長光の強さが前記第1の範囲の外側の第2の範囲にある場合には紙葉類が前記修復紙葉類であると判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の紙葉類取扱装置。
前記制御部は、前記複数の素子のうちの一部の素子が検出した前記所定波長光の強さが前記第2の範囲にあり、前記第1の範囲との境界値との差が一定以上でない場合、前記所定波長光の強さが前記素子の感度ムラあるいは前記紙葉類の蓄熱ムラによるものであると判定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の紙葉類取扱装置。
前記制御部は、紙葉類が前記修復紙葉類であると判定した場合には紙葉類を回収する回収庫まで当該紙幣を搬送して回収し、紙葉類が前記折れ紙幣であると判定した場合には紙葉類をリサイクルする収納庫まで当該紙幣を搬送して収納する、
ことを特徴とする請求項1に記載の紙葉類取扱装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照し、本発明にかかる紙葉類取扱装置の実施の形態を詳細に説明する。以下では、紙葉類取扱装置を、ATMやソータに適用した例について示しているが、小切手や商品券等、取引可能な様々な紙葉類を取り扱う装置に適用することができる。
【0010】
図1は、紙葉類取扱装置を適用したATM100の概略構成を示す図である。
図1に示すように、ATM100は、カードリーダ及びプリンタ101と、表示パネル102と、紙幣入出金口103と、金庫カセット104と、紙幣入出金機構105と、紙幣識別部106と、制御部107とを有して構成されている。
【0011】
カードリーダ及びプリンタ101は、利用者からATM100と取引するためのICカードの挿入や、利用者とATM100との間で行われた取引結果を印字した明細票を出力する。表示パネル102は、例えば、タッチパネルから構成され、利用者から取引に関する様々な操作を受け付け、または利用者とATM100との間で行われる取引に関する様々な情報を表示する。
【0012】
紙幣入出金口103は、利用者から取引のために入金される紙幣を受け付け、または利用者に対して取引された紙幣を出金する。金庫カセット104は、リサイクル可能な紙幣を金種ごとに収納する収納庫である。紙幣入出金機構105は、紙幣の入出金取引等の紙幣に関する処理を行う。紙幣識別部106は、入出金される紙幣の金種の識別や、その真偽等を判定する。
【0013】
制御部107は、ATM100を構成する各部の動作を制御する。例えば、制御部107は、紙幣識別部106から得られた情報をもとに、紙幣が修復紙幣であるか折れ紙幣であるかを判別する。ATM100は、不図示の通信部およびネットワークを介して、ホストコンピュータ108に接続されている。
【0014】
例えば、ATM100は、利用者が表示パネル102を介して入力あるいは指示した情報に従い、紙幣の入金及び出金を行う。ATM100では、入金の場合、紙幣識別部106が、利用者が紙幣入出金口103に投入した紙幣の金種、真偽、及び損傷を判別し、適切な金庫カセット104もしくは紙幣入出金口103に搬送する。また、ATM100は、出金の場合は、金庫カセット104から紙幣を搬送し、紙幣識別部106がその紙幣を精査して紙幣入出金口103に搬送する。
【0015】
以下では、紙葉類取扱装置をATMに適用した場合について説明しているが、例えば、自動現金仕分機(ソータ)に適用することも可能である。
【0016】
図2は、紙葉類取扱装置を適用したソータ200の概略構成を示す図である。
図2に示すように、ソータ200は、ハードウェアとしては表示パネル201と、紙幣投入口202と、仕分けポケット203と、紙幣識別部204と、制御部205とを有して構成されている。
【0017】
表示パネル201は、係員から紙幣の仕分けに関する様々な操作を受け付け、または係員とソータ200との間で行われる紙幣の仕分けに関する様々な情報を表示する。投入口202は、係員から仕分けする紙幣の投入を受け付ける。仕分けポケット203は、仕分けられた紙幣を金種ごとに収納する収納庫である。
【0018】
紙幣識別部204は、仕分けられる紙幣の金種の識別や、その真偽等を判定する。制御部205は、ソータ200を構成する各部の動作を制御する。例えば、制御部205は、紙幣識別部204から得られた情報をもとに、紙幣が修復紙幣であるか折れ紙幣であるかを判別する。ソータ200は、ATM100と同様に、不図示の通信部およびネットワークを介して、ホストコンピュータに接続されていてもよい。
【0019】
ソータの場合、係員が表示パネル201を操作して入力あるいは指示した情報に従い、紙幣入金口202にセットされた紙幣を、紙幣識別部204で金種、真偽、及び損傷を判別し、係員が設定した情報に従って仕分けポケット203に搬送する。
図1、2では、紙幣が搬送方向Aに搬送される様子を示している。続いて、上記ATM100やソータ200が備える紙幣識別部について説明する。まず、従来構成について説明する。
図3は、従来の紙幣識別部の概略構成を示す図である。
図3に示すように、従来の紙幣識別部306は、搬送ローラ3061と、光学センサ3062と、磁気センサ3063と、厚み検知センサ3064と、搬送ガイド3065とを有して構成されている。
【0020】
搬送ローラ3061は、搬送方向Aに搬送されてくる紙幣Pを紙幣識別部306内に搬送するためのローラである。本例では、搬送路Tを挟んで1対設けられているが、その数は、搬送路Tの長さに応じて任意に定めることができる。光学センサ3062は、搬送方向Aに搬送される紙幣Pの画像を取得するセンサである。
【0021】
磁気センサ3063は、上記紙幣Pの磁気特性を取得するセンサである。厚み検知センサ3064は、上記紙幣Pの厚みを検知するセンサである。厚み検知センサ3064は、1対のローラを含み、ローラの上下方向の移動量を検知することにより、上記紙幣Pの厚みを検知する。
【0022】
搬送ガイド3065は、上記紙幣Pを下流の搬送路に搬送するためのガイドである。このように、従来の紙幣識別部306は、紙幣を搬送する搬送ローラ3061と搬送ガイド3065、および各種判別に用いるセンサが搬送路Tに沿って配置されて構成される。
【0023】
次に、本実施例における紙幣識別部106について説明する。
【0024】
図4は、本実施例における紙幣識別部の概略構成を示す図である。
図4に示すように、紙幣識別部106は、搬送ローラ1061と、光学センサ1062と、磁気センサ1063と、厚み検知センサ1064と、搬送ガイド1065と、発熱機構部1066と、サーモセンサ部1067とを有して構成されている。搬送ローラ1061、光学センサ1062、磁気センサ1063、厚み検知センサ1064、搬送ガイド1065は、
図3に示した搬送ローラ3061、光学センサ3062、磁気センサ3063、厚み検知センサ3064、搬送ガイド3065と同様であるため、以下ではその説明を省略する。
【0025】
発熱機構部1066は、熱源部10661と、搬送ローラ10662とを有して構成されている。熱源部10661は、例えば、加熱対象物と高周波電源とコイルとを有して構成される。熱源部10661は、高周波電源から得られる電流をコイルに通して強磁場を発生させ、そのときに生じる電熱抵抗により熱を生じさせる。搬送ローラ10662は、搬送路Tを挟んで熱源部10661に対向する位置に設けられ、図示しない駆動源により回転し、紙幣Pを搬送方向Aに搬送する。
【0026】
本例では、発熱機構部1066を、紙幣識別部106の外側であってサーモセンサ部1067よりも上流側に設けている。発熱機構部1066を紙幣識別部106の外側に設けている理由は、発熱機構部1066を紙幣識別部106の内部に設けた場合、熱により紙幣識別部106の温度が上昇して各センサの検知精度が低下してしまうためである。しかし、紙幣識別部106の筐体に開口部などの熱を逃がす機構を設けていれば、発熱機構部1066を紙幣識別部106の内部に設けてもよい。
【0027】
図5は、上記熱源部10661の概略構成を示す上面図である。
図5に示すように、熱源部10661では、図示しない電源からコイルCにコイル電流I1を通電させると、磁束Bが生じて加熱対象物(例えば、熱伝導性の高い金属)の表面付近に渦電流I2が発生し、そのジュール熱により加熱対象物が加熱される。本例では、紙幣Pの搬送方向Aと垂直平面方向である長手方向にコイルCが加熱対象物に巻きつけられているため、短時間で均一に効率よく紙幣Pに熱を伝えることができる。続いて、
図4に戻って、サーモセンサ部1067について説明する。
【0028】
サーモセンサ部1067は、赤外線波長の強さを検出する1または複数の素子を有して構成された赤外線センサである。サーモセンサ部1067では、赤外線によって上記素子の温度が上昇することで生じる電気的性質の変化を検知する。
【0029】
図6は、サーモセンサ部1067の概略構成を示す上面図である。
図6に示すように、サーモセンサ部1067では、紙幣Pの搬送方向Aに対して垂直平面方向(本例では紙幣の長手方向)に複数の素子Sが配置され、各素子が紙幣Pから得られる赤外線を検出している。
図6では、上記搬送方向Aに2列の素子群が設けられ、1つの素子群には10個の素子Sが上記垂直平面方向に配置されている。
図5では、1列目の素子群まで紙幣Pが搬送され、その素子群を構成する各素子Sにより紙幣Pから得られる赤外線を検出している。
【0030】
本例では、サーモセンサ部1067は、搬送路Tを挟んで対向する上下位置に設けているが、上下位置に配置するスペースがない等、物理的な空間が制限される場合には、そのいずれか一方に設けてもよい。本例のように、上下位置に配置した方が熱量を精度良く測定することができるが、判別性能仕様やコストに応じて適宜選択すればよい。
【0031】
また、本例では、サーモセンサ部1067を紙幣識別部106の内部に設けているが、紙幣識別部106の外側であって、熱源部10661よりも下流側の位置Xに設けてもよい。サーモセンサ部1067を紙幣識別部106の外側に設けることにより、紙幣識別部106を小型化することができるとともに、従来の紙幣識別部106をそのまま使用して本構成を実現することができる。熱源部10661はサーモセンサ部1067よりも上流に設けられ、サーモセンサ部1067は紙幣識別部106よりも上流に設けられていればよい。両者を配置する間隔については、搬送速度や上記素子Sの感度等の設定環境に応じて定めればよい。このように、本実施例では、従来から用いられている光学センサや磁気センサ、厚み検知センサに加え、発熱機構部1066により紙幣から得られる赤外線の強さを検出するサーモセンサ部1067を有している。
【0032】
図3に示した従来構成の紙幣識別部106では、厚み検知センサ3064によってのみ紙幣の厚みを検知している。このため、搬送されてくる紙幣が修復紙幣であるか折れ紙幣であるかを正しく区別できない場合があったが、以下に示すように、蓄熱量や蓄熱率に着目することにより、両者を精度よく区別することができる。
【0033】
図7は、修復紙幣および折れ紙幣の例を示す図である。また、
図8は、修復紙幣および折れ紙幣を厚み検知センサが検知したときの出力値の推移を示す図である。
図7(a)は、中央部分が短手方向全体にわたって補修用部材により修復されている例を示している。修復紙幣が搬送方向Aに搬送されると、サーモセンサ部1067の各素子(本例では、スキャン位置Aおよびスキャン位置Bの素子)が、当該位置で紙幣をスキャンする。スキャン位置Aは補修用部材が付されていない位置であり、スキャン位置Bは補修用部材が付されている位置である。
図8(a)に示すように、スキャン位置Aに配置されている素子の出力値とスキャン位置Bに配置されている素子の出力値とを比較した場合、前者に比べて後者のほうがその値が大きくなっていることがわかる。その理由は、補修用部材の厚さだけ厚み検知センサのローラの変位量が大きくなるためである。
【0034】
図7(b)は、中央部分が短手方向全体にわたって折れが生じている例を示している。折れ紙幣が搬送方向Aに搬送されると、
図7(a)の場合と同様に、サーモセンサ部1067の各素子が紙幣をスキャンする。スキャン位置Aは折れがない位置であり、スキャン位置Bは折れがある位置である。
図8(b)に示すように、スキャン位置Aに配置されている素子の出力値とスキャン位置Bに配置されている素子の出力値とを比較した場合、
図8(a)と同様に、前者に比べて後者のほうがその値が大きくなっていることがわかる。その理由は、テープの厚さの場合と同様に、折れによる紙幣の厚さだけ厚み検知センサのローラの変位量が大きくなるためである。このように、
図8(a)に示す出力値の推移と
図8(b)に示す出力値がほぼ同じように推移するため、厚み検知センサでは修復紙幣と折れ紙幣とを区別することができない。
【0035】
そこで、本実施例では、修復紙幣と折れ紙幣との間に生じる蓄熱効果に着目し、両者の違いを区別している。すなわち、修復紙幣に付された補修用部材部分と補修用部材が付されていない折れ紙幣とでは材質が異なるため、蓄熱量や蓄熱率が異なってくる。そのため、以下に示すように、厚み検知センサによる判別に加え、さらにサーモセンサ部による判別を行っている。
【0036】
図4に示したように、紙幣識別部106に紙幣が搬送される際、紙幣識別部106よりも上流側にある熱源部10661が熱を放射し、紙幣が温められる。その後、熱源部10661と紙幣識別部106との間に設けられているサーモセンサ部1067が、搬送されてくる紙幣から得られる赤外線を検出する。上述したように、紙幣がサーモセンサ部1067を通過するときに、修復紙幣の場合は、折れ紙幣と比べて蓄熱効果が異なるため、補修用部材の部分と紙幣部分とで温度が異なった状態になる。一般に、物質が持つ温度によって放射される赤外線の強さは、絶対温度上昇の4乗に比例することが、ステファン・ボルツマンの公式により定められる。
【0038】
図9は、上記公式により物体の表面温度ごとの赤外線波長と放射エネルギーの関係を示す図である。
図9に示すように、同じ波長でも温度が高いほど放射エネルギーが大きいことがわかる。すなわち、蓄熱効果の異なる補修用部材と紙幣部分とでは、同じ波長の赤外線であっても放射エネルギーが異なることがわかる。例えば、赤外線波長が5μmの場合、紙幣部分から得られる放射エネルギーの値がV1とすると、蓄熱効果の高い補修用部材の場合には、放射率εが高くなり上記V1よりも大きい値V2の放射エネルギーが得られる。同様の考え方で、蓄熱効果の低い補修用部材の場合には、放射率εが低くなり上記V1よりも小さい値V3の放射エネルギーが得られる。すなわち、紙幣と紙幣以外の物質とによる放射率の違いにより、得られる放射エネルギーが異なるため、紙幣から得られる放射エネルギーの値から一定の範囲を超えている場合、何らかの補修用部材により修復されている可能性が高く、搬送されてきた紙幣は修復紙幣であると考えることができる。
【0039】
このように、本実施例では、物質から放射される赤外線の強さが異なることを利用して、サーモセンサ部1067の赤外波長検出素子でその差異を検出している。
【0040】
図10は、紙幣識別部106で行われる処理(紙幣判別処理)の処理手順を示すフローチャートである。
図10では、搬送されてきた紙幣が発熱機構部1066、サーモセンサ部1067、厚み検知センサ1064を通過したものとする。
【0041】
図10に示すように、紙幣判別処理では、制御部107は、厚み検知センサ1064の出力値であるローラの変位量から紙幣の厚みを演算する(ステップS1001)。制御部107は、演算した紙幣の厚みが、あらかじめ定められている紙幣の厚みよりも一定値(例えば、50μm)以上であるか否かを判定する(ステップS1002)。
【0042】
上記あらかじめ定められている紙幣の厚みとは、例えば、ATM100が取り扱う様々な金種の紙幣の厚みの平均値であり、制御部107内のメモリにあらかじめ記憶されている情報である。制御部107は、以下に示すように、演算した紙幣の厚みが上記平均値より一定以上厚いと判定した場合には、その紙幣が修復紙幣または折れ紙幣のいずれかであるとみなしている。
【0043】
制御部107は、演算した紙幣の厚みが、あらかじめ定められている紙幣の厚みよりも一定値以上厚くないと判定した場合(ステップS1002;No)、搬送されてきた紙幣は、修復紙幣でも折れ紙幣でもないと判定し(ステップS1003)、紙幣を紙幣入出金口103または金庫カセット104まで搬送させる(ステップS1004)。
【0044】
一方、制御部107は、演算した紙幣の厚みが、あらかじめ定められている紙幣の厚みよりも一定値以上厚いと判定した場合(ステップS1002;Yes)、さらに、サーモセンサ部1067を構成する各素子の出力値が所定の範囲内であるか否かを判定する(ステップS1005)。上記所定の範囲は、搬送されてきた紙幣が上記修復紙幣であるか折れ紙幣であるかを区別するための範囲であり、折れのない紙幣に対して赤外線を照射したときに得られる放射エネルギーの範囲である。上記所定の範囲は、
図9に示した例では、赤外線波長が5μmの場合における放射エネルギーの値V1から一定の幅(V1とV2の間からV1とV3の間までの幅Δ)の範囲である第1の範囲であり、あらかじめ制御部107内のメモリに記憶されている。
【0045】
上記第1の範囲の定め方としては、以下のように設定すればよい。例えば、紙幣が折れ紙幣の場合には、折れ部分の紙の体積が大きくなるため、折れのない他の部分に比べて蓄熱効率が高くなり、その結果、折れ部分の位置にある素子の出力値が他の素子の出力値よりも高い数値になる。そのため、事前に試験を繰り返す等により折れ部分の素子の出力値を読み取っておき、その平均値を上記所定の範囲の境界値とすればよい。
【0046】
制御部107は、サーモセンサ部1067を構成する各素子の出力値が全て第1の範囲内であると判定した場合(ステップS1005;Yes)、搬送されてきた紙幣は修復紙幣ではない(すなわち折れ紙幣である)と判定し(ステップS1006)、ステップS1004の場合と同様、紙幣を紙幣入出金口103または金庫カセット104まで搬送させる(ステップS1007)。
【0047】
一方、制御部107は、サーモセンサ部1067を構成する各素子の出力値のいずれかが第1の範囲内でないと判定した場合(ステップS1005;No)、搬送されてきた紙幣は修復紙幣であると判定し(ステップS1008)、紙幣を回収庫まで搬送させる(ステップS1009)。回収庫は、金庫カセット104のうちのいずれかをあらかじめ割り当てておけばよい。ソータ200の場合には仕分けポケット203のうちのいずれかを回収ポケットとしてあらかじめ割り当てておけばよい。上記第1の範囲内でない場合とは、上記第1の範囲の外側であって、例えば、
図9の赤外線波長が5μmの場合における放射エネルギーの上限値と下限値の間である第2の範囲であり、あらかじめ制御部107内のメモリに記憶されている。
【0048】
このように、本実施例では、補修用部材の有無により紙幣の蓄熱効率が異なることに着目し、修復紙幣であるか折れ紙幣であるかを区別している。すなわち、通常、補修用部材は材質が紙幣とは異なることから、蓄熱効果も異なってくる。そこで、上記処理を行うことにより、補修用部材の蓄熱量や蓄熱率と紙幣の蓄熱量や蓄熱率とを比較し、紙幣として想定される蓄熱量や蓄熱率と一定以上の差がある場合には補修用部材により修復された修復紙幣であると判定し、紙幣として想定される蓄熱量や蓄熱率と一定以上の差がない場合には修復紙幣ではなく折れ紙幣であると判定している。したがって、修復紙幣と折れ紙幣とを精度よく区別して検出し、紙幣の損傷状態に応じて装置内の適切な箇所に紙幣を搬送させることができ、損券の回収率を高めることができる。また、従来から行われている厚み検知センサと、上記蓄熱効果に着目した処理とを組み合わせて実行することにより、両者を確実に区別することができる。また、本例では、厚み検知センサによる厚み判定の後に上記蓄熱効果に着目した処理を実行する。このため、明らかに紙幣の厚みが通常の厚みである紙幣については上記蓄熱効果に着目した処理を実行することがなくなり、処理負荷を軽減し、紙幣を迅速に判別することができる。
【0049】
なお、
図10に示した紙幣判別処理では、ステップS1005において、サーモセンサ部1067の各素子の全ての出力値が上記第1の範囲にあるか否かを判定することにより、修復紙幣であるか折れ紙幣であるかを判定している。しかし、例えば、紙幣の取扱量が多い場合には、熱源部10661の発熱回数も多くなって装置内の温度が上がり、ATM100の使用環境によっては全ての素子の出力値が設定された第1の範囲を超えて第2の範囲となる場合がある。また、ATM100が店舗外に設置されている場合には気温の変化による外的環境に影響されやすく、全ての素子の出力値が設定された第1の範囲を超えて第2の範囲となる場合がある。
【0050】
このような場合に備え、以下では、サーモセンサ部1067の出力値と第1の範囲とを素子ごとに比較することで、上記のような環境の変化が生じた場合でも、精度よく修復紙幣と折れ紙幣とを区別する。
【0051】
図11は、
図10に示した紙幣判別処理の処理手順の変形例を示すフローチャートである。以下では、
図10に示したステップと同様の処理については、同一のステップ番号を付してその説明を省略している。
【0052】
図11に示すように、ステップS1005の処理が終了すると、制御部107は、一部の素子の出力値が上記第1の範囲を超えて第2の範囲にあるか否かを判定する(ステップS1101)。制御部107は、一部の素子の出力値が上記第1の範囲を超えていない、すなわち、全ての素子の出力値が上記第1の範囲を超えて第2の範囲にあると判定した場合(ステップS1101;No)、使用環境や外的環境といった環境要因により出力値が上昇したと判定し(ステップS1102)、ステップS1004の場合と同様、紙幣を紙幣入出金口103または金庫カセット104まで搬送させる(ステップS1103)。なお、本例では全ての素子の出力値が第1の範囲を超えているか否かを判定しているが、一定数以上の素子の出力値がその範囲を超えている場合に上記環境要因により出力値が上昇したと判定してもよい。
【0053】
一方、制御部107は、一部の素子の出力値が第1の範囲を超えて第2の範囲にあると判定した場合(ステップS1101;Yes)、さらに上記出力値と第1の範囲の境界値との差が一定以上であるか否かを判定する(ステップS1104)。制御部107は、上記出力値と第1の範囲の境界値との差が一定以上でないと判定した場合(ステップS1104;No)、その差は素子の感度ムラあるいは蓄熱効果のムラであると判定し(ステップS1105)、ステップS1004の場合と同様、紙幣を紙幣入出金口103または金庫カセット104まで搬送させる(ステップS1106)。
【0054】
一方、制御部107は、上記出力値と第1の範囲の境界値との差が一定以上であると判定した場合(ステップS1104;Yes)、
図10に示したステップS1008、S1009と同様、紙幣を回収庫まで搬送させる。
【0055】
このように、
図11に示した処理では、サーモセンサ部1067の素子ごとに、出力値が上記第1の範囲を超えて第2の範囲にあるか否かを判定するので、上記のような使用環境や外的環境による影響、あるいは各素子の感度による影響や蓄熱効果のムラによる影響を排除して、修復紙幣と折れ紙幣とを精度よく区別して検出することができる。
【0056】
なお、
図11に示した処理を実行する場合には、制御部107は、サーモセンサ部1067の各素子の出力値を比較しているので、例えば、ステップS1104において、出力値が上記所定の範囲を一定以上超えている素子を特定することにより、紙幣のどの位置や範囲に補修用部材が付されているのかを判別してもよい。例えば、
図6に示したように、紙幣搬送方向Aに2列の素子群が設けられている場合には、各素子群を構成する素子の位置をあらかじめ制御部107内のメモリに記憶しておき、その位置と上記出力値とを対応付けることにより、補修用部材の位置や範囲を把握することができる。
【0057】
制御部107が行う処理は、実際には、CPU(Central Processing Unit)が、あらかじめ制御部107内のメモリに記憶されているプログラムを読み出すことにより実行することができる。上記プログラムは、上記メモリにあらかじめ組み込まれて提供されるが、制御部107にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルで提供されてもよい。
【0058】
なお、本実施例では、修復紙幣の補修用部材が接着テープである場合について説明したが、これに限らず、糊粘着された紙により修復する場合等、補修用部材として様々な部材を用いることができる。また、本実施例では、折れ紙幣がZ折れ紙幣である場合について説明したが、これに限らず、Z形状以外の様々な折れ形状の紙幣に対しても適用することができる。