(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
X1004がVであり、X1005がSであり、X1006がAであり、X1007がGであり、X1008がWであり、X1009がYである、請求項1〜4のいずれか一項記載のペプチド。
前記アミノ酸配列がアミノ酸配列EYYVSAGWYDYNTDTYYEFE(配列番号2924)と少なくとも70%の同一性、少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を備える、請求項1〜5のいずれか一項記載のペプチド。
配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドをトレーサーとして用いた競合LANCEアッセイにおいて、ヒトプロテインSに25nM未満、10nM未満、5nM未満、3nM未満、または1nM未満のIC50で結合する、請求項1〜8のいずれか一項記載のペプチド。
ポリエチレングリコール(PEG)部分、ヒト血清アルブミン(HSA)、抗体若しくはそのフラグメント、ヒドロキシエチルデンプン、プロリン−アラニン−セリン若しくはその組み合わせを含む多量体(PAS化)、C12〜C18脂肪酸、またはポリシアル酸にコンジュゲートする、請求項1〜11のいずれか一項記載のペプチド。
Bpa、Bpa−K(Bio)−C、C(Atf−Bio)、C(Atf−LC−Bio)、C(FeBABE)、C(MalCy5)、C(NEM)、C(PEG)、K、K(Ac)、K(Ttds)、K(Ttds−γGlu)、K(Glutar)、K(Ttds−Mal)、T、Ttds、またはTtds−K(Bio)からなる群から選択される部分にコンジュゲートまたは付着している、請求項1〜12のいずれか一項記載のペプチド。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、プロテインSに結合し、またある場合に血液凝固カスケード内のプロテインSの阻害的な(つまり抗凝固性の)活性をブロックするペプチドを提供する。プロテインSは活性化されたプロテインC(APC)の補因子として機能し、第Va因子(FVa)及び第VIIIa因子(FVIIIa)を分解する。プロテインSを阻害すれば、プロテインCが媒介するFVaとFVIIIaの分解が低下し、血液諸因子が血液凝固カスケードで機能してトロンビンの生成、最終的にはフィブリンの生成が可能となる。プロテインSは70kDのビタミンK依存性糖タンパク質であり、635アミノ酸長であり、γ−カルボキシ−グルタミン酸ドメイン(Glaドメイン)、トロンビン感受性モジュール、上皮成長因子様ドメイン(EGFドメイン)、及び性ホルモン結合グロブリンに類似性を有する領域を含む。当該タンパク質は血漿内で遊離して見出され、また補体タンパクであるC4b結合タンパク(C4BP)と複合体を形成している。遊離プロテインSはAPC補因子として働き、複合体型は補因子の活性を持たない。プロテインSはリン脂質含有膜に対するAPCの親和性を増加させ、APCが媒介するFVaにおけるR306での切断を強化し、APCが媒介するFVIIIaの失活を強化する。Walker,J.Biol.Chem.,256(21),11128−11131(1981);Rosingら,J.Biol.Chem.,270(46),27852−27858(1995)。プロテインSはまた、例えばFXaおよびFVaと結合することで、APCと独立に凝固を妨げる。Hackeng,J.Biol.Chem.,269(33),21051−21058(1994)。ヒトプロテインSの配列は、配列番号2917(配列番号2918として提供される核酸配列)として提供されている。本発明は、一態様において、1つまたは複数のプロテインSの活性を任意選択でブロックし、それによりトロンビン形成を任意選択で強化するプロテインS結合ペプチドを提供する。本開示の文脈において、本明細書に記載の式Iによって含まれる任意のペプチド及び本明細書に記載の任意のプロテインS結合ペプチドは、「本発明のペプチド」及び「本明細書に記載のペプチド」とも称される。「ペプチド」には、従来的なペプチド(すなわち、従来的なペプチド骨格を有する)だけではなくペプチドミメティック(すなわち、修飾された骨格を有し、アミノ酸に見出される側鎖を任意選択で有するタンパク質様ポリマー)も含まれることが意図されている。
【0010】
いくつかのペプチドのアミノ酸配列が本明細書中で提供される。従来型のアミノ酸は、標準に従って1文字または3文字のコードで同定される。非従来型のアミノ酸及び追加のペプチドの構成単位を、例えば3つまたは4つの文字/数字コード(一般的な4文字の略称であるTtds及びDopaを例外とする)で表した例は、表1及び本明細書中の他の箇所に記載されている。非従来型のアミノ酸及び構成単位の化学的構造は当技術分野において公知であり、例えば米国特許出願公開第2013/0252896号に記載されており、表1〜3を含めその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0011】
本明細書で提供するペプチドのアミノ酸配列は、典型的なペプチド配列フォーマットで表現されている。例えば、あるアミノ酸の3文字のコードまたは1文字のコードは、ペプチド配列内の特定の位置に当該アミノ酸が存在することを示す。各々の非従来型のアミノ酸または構成単位のコードは、多くの場合において配列内でハイフンによって次の及び/または前のアミノ酸または構成単位のコードに接続している。隣接するアミノ酸は、化学結合(概してアミド結合)によって接続している。化学結合の形成により、アミノ酸の1−カルボキシル基は隣接するアミノ酸の左側に位置するときヒドロキシル基を除去され(例えば、Hle−隣接アミノ酸)、アミノ酸のアミノ基は隣接するアミノ酸の右側に位置するとき水素を除去される(例えば、隣接アミノ酸−Hle)。両方の修飾は、明示的に説明するハイフンがなくても、同一のアミノ酸に適用可能であり、アミノ酸配列に存在する従来型の隣接アミノ酸に適用可能であることが理解されている。アミノ酸がアミノ酸側鎖において2つ以上のアミノ基及び/またはカルボキシ基を含む場合、2−または3−アミノ基及び/または1−カルボキシ基は一般的にペプチド結合形成に使用される。一部の非従来型のアミノ酸について、最初の文字がCα原子という立体化学を示す場合、3文字のコードが使用される。例えば、最初の文字が大文字であることは、アミノ酸のL型がペプチド配列に存在することを示し、一方最初の文字が小文字であることは、対応するアミノ酸のD型がペプチド配列に存在することを示す。1文字のコードが使用されるとき、小文字はD−アミノ酸を表し、一方大文字はL−アミノ酸を表す。反対のことが示されない限り、本明細書中で提示されるアミノ酸配列はNからC末端の方向で提示される。
【0012】
本明細書中に記載のいくつかのペプチド配列のC末端は、OH、NH
2、またはC末端アミノ酸コードにハイフンによって連結している特定の末端アミンの略称の包含によって、しばしば明示的に説明される。本明細書中に記載のいくつかのペプチドのN末端は、水素(遊離N末端の)、またはN末端アミノ酸コードにハイフンによって連結している特定の末端カルボン酸若しくは他の化学基の略称の包含によって、明示的に説明される。
【0013】
本発明は、式(I):X1004−X1005−X1006−X1007−X1008−X1009−X1010−X1011−X1012−X1013−X1014−X1015−X1016−X1017−X1018−X1019の構造を含むペプチドを提供する(式中、X1004はA、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、p、Q、R、S、T、Tle、V、v、W、またはYであり;X1005はA、C、D、Dap、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、p、Q、R、S、s、T、V、W、またはYであり;X1006はA、a、Aib、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、p、Q、R、S、s、T、Tle、V、W、またはYであり;X1007はA、a、Aib、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Nmg、P、p、Q、R、S、s、T、Tle、V、W、またはYであり;X1008は1Ni、2Ni、A、Bta、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、p、Q、R、S、T、V、W、w、またはYであり;X1009はA、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、p、Q、R、S、T、V、W、Y、またはwであり;X1010はA、C、D、d、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、p、Q、R、S、T、V、W、w、またはYであり;X1011はA、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、p、Q、R、S、T、V、W、Y、またはwであり;X1012はA、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、n、P、p、Q、R、S、T、V、W、またはYであり;X1013はA、a、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、p、Q、R、S、T、t、V、W、またはYであり;X1014はA、C、D、d、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、p、Q、R、S、T、V、W、またはYであり;X1015はA、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、p、Q、R、S、T、t、Tle、V、W、またはYであり;X1016はA、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、p、Q、R、S、T、V、W、またはYであり;X1017はA、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Nle、P、p、Q、R、S、T、V、W、Y、またはyであり;X1018はA、C、D、E、e、F、G、H、I、K、L、M、N、P、p、Q、R、S、T、V、W、またはYであり;X1019はA、C、D、E、F、f、G、H、I、K、L、M、N、P、p、Q、R、S、T、V、W、またはYである(配列番号2921))。
【0014】
様々な実施形態において、本発明は、アミノ酸配列VSAGWYDYNTDTYYEF(配列番号2920)に対して少なくとも50%同一な(例えば、少なくとも55%同一な、少なくとも60%同一な、少なくとも65%同一な、少なくとも70%同一な、少なくとも75%同一な、少なくとも80%同一な、少なくとも85%同一な、または少なくとも90%同一な)アミノ酸配列であって、式Iの構造を有する前記アミノ酸配列を含む(またはそれからなる)ペプチドを提供する(式中、X1004はA、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、p、Q、R、S、T、Tle、V、v、W、またはYであり;X1005はA、C、D、Dap、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、p、Q、R、S、s、T、V、W、またはYであり;X1006はA、a、Aib、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、p、Q、R、S、s、T、Tle、V、W、またはYであり;X1007はA、a、Aib、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Nmg、P、p、Q、R、S、s、T、Tle、V、W、またはYであり;X1008は1Ni、2Ni、A、Bta、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、p、Q、R、S、T、V、W、w、またはYであり;X1009はA、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、p、Q、R、S、T、V、W、Y、またはwであり;X1010はA、C、D、d、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、p、Q、R、S、T、V、W、w、またはYであり;X1011はA、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、p、Q、R、S、T、V、W、Y、またはwであり;X1012はA、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、n、P、p、Q、R、S、T、V、W、またはYであり;X1013はA、a、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、p、Q、R、S、T、t、V、W、またはYであり;X1014はA、C、D、d、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、p、Q、R、S、T、V、W、またはYであり;X1015はA、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、p、Q、R、S、T、t、Tle、V、W、またはYであり;X1016はA、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、p、Q、R、S、T、V、W、またはYであり;X1017はA、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Nle、P、p、Q、R、S、T、V、W、Y、またはyであり;X1018はA、C、D、E、e、F、G、H、I、K、L、M、N、P、p、Q、R、S、T、V、W、またはYであり;X1019はA、C、D、E、F、f、G、H、I、K、L、M、N、P、p、Q、R、S、T、V、W、またはYである(配列番号2921))。
【0015】
本発明の様々な実施形態において、X1004はA、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、T、V、W、またはYであり;X1005はA、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、R、S、T、V、W、またはYであり;X1006はA、a、F、G、H、I、L、M、P、S、T、V、W、またはYであり;X1007はGまたはaであり;X1008はF、H、L、W、またはYであり;X1009はFまたはYであり;X1010はA、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W、またはYであり;X1011はA、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、またはYであり;X1012はA、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、n、P、Q、R、S、T、V、W、またはYであり;X1013はA、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W、またはYであり;X1014はA、D、d、E、G、H、N、Q、またはSであり;X1015はA、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W、またはYであり;X1016はA、D、E、F、H、I、L、M、N、S、T、W、またはYであり;X1017はA、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W、またはYであり;X1018はA、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、またはYであり;X1019はE、F、f、H、I、L、M、V、W、またはYである。
【0016】
一態様において、本発明のペプチドは式(I)の構造を含む(式中、X1004はA、F、H、I、K、L、T、V、W、またはYであり(例えば、X1004はA、F、I、L、T、V、及びWからなる群から選択され);X1005はA、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W、またはYであり(例えば、X1005はA、E、F、G、H、I、K、L、M、R、S、T、V、W、及びYからなる群から選択され);X1006はA、F、G、I、L、M、V、W、またはYであり(例えば、X1006はA、F、G、I、L、V、W、及びYからなる群から選択され);X1007はGであり;X1008はF、L、W、またはYであり(例えば、FまたはY);X1010はA、D、E、F、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W、またはYであり(例えば、X1010はD、E、F、H、I、K、L、N、Q、V、W、及びYからなる群から選択され);X1011はA、F、G、H、I、K、L、M、N、R、S、T、V、W、またはYであり(例えば、X1011はF、G、I、K、L、M、R、T、V、W、及びYからなる群から選択され);X1012はA、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、n、P、Q、R、S、T、V、W、またはYであり(例えば、X1012はD、E、F、G、H、I、K、L、N、Q、R、S、T、V、及びYからなる群から選択され);X1013はD、E、F、G、H、I、K、L、Q、R、S、T、V、またはWであり;X1014はD、d、E、G、H、またはNであり(例えば、X1014はD、E、及びHからなる群から選択され);X1015はD、E、H、I、K、M、Q、R、S、T、V、またはWであり;X1016はD、E、F、H、S、W、またはYであり(例えば、X1016はF、H、W、及びYからなる群から選択され);X1017はD、E、G、H、I、T、W、またはYであり;X1018はA、D、E、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、またはWであり;X1019はF、I、M、W、またはYである(例えば、X1019はF、I、M、及びWからなる群から選択される))。一態様または複数の態様において、X1004はVであり、X1005はSであり、X1006はAであり、X1007はGであり、X1008はWであり、X1009はYである。ペプチドは、VSAGWYDYNTDTYYEF(配列番号2920)に対して少なくとも50%同一なアミノ酸配列を任意選択で含む。
【0017】
一部の実施形態において、本発明のペプチドは、アミノ酸配列のN末端またはC末端に付着する1つまたは複数の追加のアミノ酸残基を含む。例えば、式Iの構造を含むペプチドは、一部の実施形態において、X1004に直接連結しているN末端アミノ酸を1つまたは複数さらに含み、前記N末端アミノ酸はX1003、X1002−X1003、及びX1001−X1002−X1003からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。X1003及びX1002は独立にA、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、p、Q、R、S、T、Tle、V、W、Y、またはyから選択される(例えば、X1003及びX1002は独立にA、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、p、Q、R、S、T、V、W、y、またはYから選択される)。例えば、一部の態様において、X1003はA、E、F、G、H、I、K、L、N、P、R、T、V、W、y、またはYであり、X1002はA、D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、R、T、V、W、y、またはYである。X1001はA、Bpa、C、D、E、e、F、G、H、I、K、L、M、N、P、p、Q、R、S、T、V、W、またはYである(例えば、X1001はA、D、E、e、F、G、H、I、K、L、M、N、P、p、Q、R、S、T、V、W、及びYからなる群から選択される)。
【0018】
式Iで示されるコア構造に加え、具体的に検討されている他の構造は、X1019に直接連結しているコア構造のC末端に1つまたは複数の追加のアミノ酸が付着している構造である。例えばC末端への追加は、A、C、D、E、e、F、G、H、I、K、L、M、N、P、p、Q、R、S、T、V、W、およびYからなる群、例えばA、D、E、e、F、G、H、I、K、L、M、N、P、p、Q、R、S、T、V、W、およびYからなる群から選択されるアミノ酸配列を任意選択で含む。本発明は、アミノ酸配列EYYVSAGWYDYNTDTYYEFE(配列番号2924)に対して少なくとも50%の同一性を備え、各々のアミノ酸の位置が上記で定義されている式X1001−X1002−X1003−X1004−X1005−X1006−X1007−X1008−X1009−X1010−X1011−X1012−X1013−X1014−X1015−X1016−X1017−X1018−X1019−X1020(配列番号2923)を含むペプチドをさらに提供する。
【0019】
本発明には、(i)アミノ酸配列VSAGWYDYNTDTYYEF(配列番号2920)、(ii)アミノ酸配列EYYVSAGWYDYNTDTYYEFE(配列番号2924)、または(iii)配列番号1〜2916のいずれか1つのアミノ酸配列に対して、少なくとも60%の同一性、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、またはそれからなるペプチドが含まれる。本明細書において、「少なくとも60%の同一性」及び類似した表現は、例えば60%から100%の任意の整数、例えば60%、65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%などを含む。また、「少なくとも[百分率]の同一性」という表現は、同一のアミノ酸(またはペプチド構成単位)の数を本発明のペプチドのアミノ酸(または構成単位)の総数で割ったものと等しいかそれ以上の任意の百分率([少なくとも百分率の同一性]≧[同一アミノ酸または構成単位の数]/[本発明のペプチドのアミノ酸または構成単位の総数])を含む。アラインされた2つ以上の配列のアミノ酸(またはヌクレオチド)のパーセント同一性算定は当技術分野でよく理解されており、従来から公知のコンピュータープログラムを用いて判定されている。例えば、パーセント配列同一性を判定するために2つ以上の配列をアラインするには、Altschulら(Nucleic Acids Res.,25:3389−402(1997))によって記述され国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)のウェブサイトで入手可能なBLAST(basic local alignment search tool)プログラムに組み込まれているアルゴリズムを用いて、任意選択で実施される。ペプチドは、好ましくはプロテインSと結合し、プロテインS活性を任意選択で阻害する。
【0020】
本発明には、環状構造を含むペプチドが含まれる。このとき、本発明には、内部に環状構造を含むペプチド(例えば、アミノ酸間の連結により形成される1つまたは複数のループ)、末端のアミノ酸とペプチド配列内のアミノ酸との相互作用により形成される環状構造を含むペプチド、および頭−尾環化ペプチドが含まれる。本発明のペプチドは、ある場合において、分子内ジスルフィド結合を含む。一部の実施形態において、分子内ジスルフィド結合はシステイン残基によって形成される。また、非システイン残基、または非システイン残基及びシステイン残基によって形成される環状構造を含むペプチドも提供される。環化に適切な非従来型のアミノ酸または化学的部分としては、以下に限定されないが、3−[2−(2−{2−[2−(2−アミノ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−プロピオン酸(FA19205)、3−(2−{2−[2−(2−アミノ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−プロピオン酸(FA19204)、3−{2−[2−(2−アミノ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−プロピオン酸(FA19203)、[2−(2−アミノ−エトキシ)−エトキシ]−酢酸(FA03202)、(S)−ホモ−システイン(Hcy)、D−ホモ−システイン(hcy)、アミノエチルチオール(Cea)、及びcなどがある。
【0021】
本明細書に記載のペプチドは、一部の実施形態において、N末端及び/またはC末端で、またはペプチド内部の残基で、1つまたは複数の部分にコンジュゲートまたは付着している。例示的な部分は、以下に限定されないが、カルボキシフルオレセイン−Ttds(FAM−Ttds)、プロリン−グルタミン酸塩タグ(「PE」)、パルミトイル(Palm)、2−フェニルアセチル、3−フェニルプロピオニル、2−(ナフタ−2−イル)アセチル、ヘキサノイル、2−メチルプロピオニル、3−メチルブタノイル、2−ナフチルスルホニル、アセチル、アミノオキシ酢酸(AOA)、レブリン酸(Lev)、ペンチン酸(Pyn)、1−ナフチルスルホニル、C、c、N−エチルマレイミド エチルマレイミド システイン(C(NEM))、3−[2−(2−{2−[2−(2−アミノ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−プロピオン酸(FA19205)、3−(2−{2−[2−(2−アミノ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−プロピオン酸(FA19204)、3−{2−[2−(2−アミノ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−プロピオン酸(FA19203)、[2−(2−アミノ−エトキシ)−エトキシ]−酢酸(FA03202)、K(Tdts−マレイミド)、2−アミノ−6−ε− (2−アミノオキシアミノオキシ−アセチルアミノ)−ヘキサン酸L−リシン(K(AOA))、アミノエチルチオール(Cea)、Eag、(S)−ホモ−リシン(Hly)、K、(S)−オルニチン(Orn)、(S)−2,4−ジアミノ酪酸(Dab)、(S)−ジアミノプロピオン酸(Dap)、(S)−ジアミノプロピオン酸(Hcy)、ペニシラミン(Pen)、ε−(ミリスチル)−L−リシン(K(Myr))、ε−(ミリスチル−Ttds)−L−リシン (K(Ttds−Myr))、ε−(パルミチル−Ttds)−L−リシン(K(Ttds−Palm))、ε−(ミリスチル−γ−グルタミル−Ttds)−L−リシン(K(Ttds−γGlu−Myr))、ε−(4−(p−ヨードフェニル)ブチリル))−L−リシン(K(AlbuTag))、ε−(4−(ペンチル)−ベンゾスルホンアミジル)−L−リシン(K(4PBSA))、(S)−4−ベンゾイルフェニルアラニン(Bpa)、Bpa−K(Bio)−C、C(Atf−Bio)、C(Atf−LC−Bio)、C(FeBABE)、C(MalCy5)、C(PEG)、ε−(アセチル)−L−リシン(K(Ac))、K(Ttds)、K(Ttds−γGlu)、K(Glutar)、K(Ttds−Mal)、T、Ttds、またはTtds−K(Bio)が含まれる。K(Bio)は、ε−(ビオチニル)−L−リシンである。C(Atf−Bio)は、2−アミノ−3−[2−(2−(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロ−ベンゾイルアミノ)−6−{6−[5−(2−オキソ−ヘキサヒドロ−チエノ[3,4−d]イミダゾール−6−イル)−ペンタノイルアミノ]−ヘキサノイルアミノ}−ヘキサノイルアミノ)−エチルジスルファニル]−プロピオン酸である。C(Atf−LC−Bio)は、2−アミノ−3−[2−(2−[6−(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロ−ベンゾイルアミノ)−ヘキサノイルアミノ]−6−{6−[5−(2−オキソ−ヘキサヒドロ−チエノ[3,4−d]イミダゾール−6−イル)−ペンタノイルアミノ]−ヘキサノイルアミノ}−ヘキサノイルアミノ)−エチルジスルファニル]−プロピオン酸である。C(FeBABE)は、2−アミノ−3−({4−[2,3−ビス−(ビス−カルボキシメチル−アミノ)−プロピル]−フェニルカルバモイル}−メチルスルファニル)−プロピオン酸のFe(III)錯体である。これは、チオエーテル結合及び芳香族スペーサーによってシステイン側鎖の硫黄に連結しているFe(III)のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)錯体である。C(MalCy5)は、2−{5−[1−(5−{2−[3−(2−アミノ−2−カルボキシ−エチルスルファニル)−2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イル]−エチルカルバモイル}−ペンチル)−3,3−ジメチル−1,3−ジヒドロ−インドール−2−イリデン]−ペンタ−1,3−ジエニル}−1,3,3−トリメチル−3H−インドリウムである。これは、マレイミド系チオエーテル結合によってシステインの硫黄にコンジュゲートする色素Cy5である。
【0022】
一態様において、ペプチドのアミノ酸配列は保存的置換を含み、アミノ酸残基は類似した側鎖を有するアミノ酸残基と入れ替えられる。類似した側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当技術分野で定義されており、塩基性側鎖を持つアミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を持つアミノ酸(例えば、アスパラギン酸及びグルタミン酸)、極性無電荷側鎖を持つアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、及びシステイン)、無極性側鎖を持つアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、及びトリプトファン)、ベータ分岐側鎖を持つアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、及びイソロイシン)、及び芳香族側鎖を持つアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びヒスチジン)が含まれる。しかし、実施者は保存的置換に限定されず、結果として得られるペプチドがプロテインSに対する結合能を保持し、全体または部分においてプロテインSの活性を任意選択で下方制御することが好ましいと理解されるだろう。例えば、
図1はアミノ酸配列JBS2512(配列番号2)の置換型変異体でありプロテインS結合特性を保持するペプチドを記載している。
【0023】
一態様において、本発明のペプチドは60アミノ酸以下、55アミノ酸以下、40アミノ酸以下、35アミノ酸以下、または30アミノ酸以下からなる。任意選択で、本発明のペプチドは25アミノ酸以下、20アミノ酸以下、15アミノ酸以下、または10アミノ酸以下からなる。様々な実施形態において、ペプチドは15〜35アミノ酸残基(例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または35アミノ酸残基)を含む。一部の態様において、アミノ酸は、アミノ酸配列内で本明細書中に記載のペプチドからN末端及び/またはC末端で除去される。かかるペプチドフラグメントは3〜14アミノ酸残基(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14アミノ酸残基)を含む。本発明のペプチドは、様々な実施形態において、例えば、別の標的(例えば、プロテインSの異なる領域または異なるプロテイン)と結合している第2のペプチドドメイン、または本発明のペプチドの半減期または安定性を増加させる第2のペプチドドメインに対して、融合または複合体化されている。このような融合物または複合体において、本発明のペプチドの大きさは、第2のペプチドまたは異種ペプチドのドメインから除外される。
【0024】
一態様において、ペプチドは、以下に限定されないが、ペプチドの溶解度を増加させるためのN末端及び/またはC末端の1つまたは2つのリシンを含めたペプチドの合成、操作、または使用を促進する1つまたは複数のアミノ酸をさらに含む。適切な融合タンパク質としては、以下に限定されないが、1つまたは複数のポリペプチド、ポリペプチドフラグメント、またはタンパク質配列の一部として一般に認識されないアミノ酸に連結している本発明のペプチドを含むタンパク質(例えば、プロテインS結合ペプチド)などがある。一態様において、融合ペプチドは、2つ以上のペプチドのアミノ酸配列全体、または代替的に、2つ以上のペプチドの部分(フラグメント)を含む。一部の態様において、ペプチド(例えば、プロテインS結合ペプチド)は、例えば以下のうち1つまたは複数のものに対して機能的に連結している:マーカータンパク質、精製を促進するペプチド、多量体たんぱく質形成を促進するペプチド配列、または前述のうちいずれかのフラグメント。適切な融合パートナーとしては、以下に限定されないが、Hisタグ、FLAGタグ、strepタグ、及びmycタグなどがある。
【0025】
任意選択で、本発明のペプチドは、ペプチドの半減期を強化する1つまたは複数の物質と融合する。半減期は、例えば、プロテインS結合ペプチドの分子量を増加させて腎クリアランスを回避することによって、及び/またはnFc受容体が媒介するリサイクル経路のためにリガンドを組み込むことによって、増加させることができる。一実施形態において、本発明のペプチドは、アルブミンポリペプチドまたはそのフラグメント(例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)またはウシ血清アルブミン(BSA))に融合、または化学的にコンジュゲートしている。アルブミンフラグメントは、アルブミンタンパク質の完全長の10%、25%、50%、または75%を含む。例示的なペプチド−アルブミンコンジュゲートは、JBS3216(配列番号462)がアルブミンにコンジュゲートしたJBS3754(配列番号999)である。JBS3761も同様に、アルブミン融合物の例である(配列番号1005)。あるいは、または加えて、本発明のペプチドは、アルブミン結合ドメインとまたはin vivoで投与したときにアルブミンと結合する脂肪酸と融合し、または複合体を形成する。アルブミン結合ドメインの一例は4−(p−ヨードフェニル)−ブタン酸から誘導される部分である「albuタグ」である(Dumelinら、Angew Chem Int Ed Engl 47:3196−3201(2008))。他の適切な融合パートナーとしては、以下に限定されないが、プロリン−アラニン−セリン多量体(PAS化)及びその抗体またはフラグメント(例えば、抗体のFc部分)などがある。
【0026】
一実施形態において、本発明の2つ以上のペプチドは、共に融合して、多量体化ドメインによって連結して、または化学結合によって付着して、ペプチド複合体を生成する。当該多量体のペプチドは、同一であっても異なっていても良い。従って、本発明は、本明細書に記載のいずれかのペプチドを含み、またはそれからなり、1つまたは複数のリンカーが任意選択で付着する、ホモ二量体(すなわち、2つの同一ペプチドを含む二量体)、ホモ多量体(すなわち、3つ以上の同一ペプチドを含む複合体)、ヘテロ二量体(すなわち、2つの異なるペプチドを含む二量体)、及びヘテロ多量体(すなわち、3つ以上のペプチドを含み、ペプチドのうち少なくとも2つが異なる複合体)を提供する。代表的な多量体は、JBS2572(配列番号62)単量体の四量体であり、40kDで4本のアームのPEG部分によって共役している、JBS3179(配列番号433)である。
【0027】
このとき、本発明は、第1のペプチド及び第2のペプチドを含むペプチド複合体を提供する。本明細書に記載のいずれのペプチドも、ペプチド複合体に適切なサブユニット(例えば、第1のペプチドまたは第2のペプチド)である。一部の実施形態において、ペプチド複合体は、25〜100アミノ酸を含み、例えば、30〜80アミノ酸、30〜60アミノ酸、または30〜50アミノ酸を含む。ペプチド複合体が媒介する少なくとも1つのプロテインS活性の阻害レベル(例えば、プロテインSとFVaの結合、リン脂質結合、またはAPC補因子活性)は、本発明の様々な実施形態において、第1のペプチドまたは第2のペプチド(単独で、または任意選択で一緒に)によって達成される阻害レベルより任意選択で高い。本明細書に記載の単量体プロテインS結合ペプチドにおける機能的特性、治療上及び診断上の応用はまた、本明細書に記載のペプチド複合体に対しても適用可能である。同様に、単量体プロテインS結合ペプチドの修飾についての記述はまた、ペプチド複合体に関連する。
【0028】
本開示の様々な態様において、ペプチド複合体のペプチドサブユニット(例えば第1のペプチド及び第2のペプチド)は、直接共に融合しているか、またはリンカー部分によって結合している。任意のリンカー部分は、ペプチド複合体の文脈における使用に適切である。本発明の一部の態様において、リンカー部分は、その立体構造の1つにおいて約1Å〜約100Å、例えば約5Å〜約80Å(約5Å〜約50Å)、約10Å〜約70Å(約10Å〜約60Å、約10Å〜約50Å、約10Å〜約40Å、または約10Å〜約30Å)の距離を架橋する。従って、リンカーはその立体構造の1つにおいて、任意選択で約1Å〜約100Åの長さであり、例えば約5Å〜約50Åまたは約10Å〜約30Åの長さである。より長い長さの(約100Åより長い)リンカーも検討されている。例えば、約2kDa〜約60kDaの分子量を任意選択で有する生体適合性高分子も、ペプチド複合体における使用を検討されている。生体適合性高分子の例としては、以下に限定されないが、PEG、PSA、プロリン−アラニン−セリン多量体、及びヒドロキシエチルデンプンなどがある。リンカー部分及び反応性基についてのさらなる記述は、国際特許公開第WO2011/143209号にて提供され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0029】
一態様において、リンカー部分は構造Z
1−20を含み、Zはオリゴマー構成単位である。オリゴマー構成単位の例としては、以下に限定されないが、アミノ酸、ヒドロキシ酸、エチレングリコール、プロピレングリコール、または前述のうちいずれかの組み合わせがある。例えば、リンカー部分は任意選択で、アミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、または4〜20のアミノ酸を含むポリペプチドである。一部の実施形態において、ZはG、s、S、a、A、Bal、Gaba、Ahx、Ttds、または前述のうちいずれかの組み合わせ(例えば、A、S、またはAとSの組み合わせを含む10merペプチド)である。所望に応じて、連結部分はアミン、エーテル、チオエーテル、マレイミド、ジスルフィド、アミド、エステル、アルケン、シクロアルケン、アルキン、トリゾイル(trizoyl)、カルバメート、カルボネート、またはヒドラゾンを含む。
【0030】
用語「第1のペプチド」及び「第2のペプチド」は、ペプチドの特定の物理的順序を意味することは意図されておらず、単にペプチド複合体の異なるサブユニットを区別することが意図されている。ペプチド複合体のサブユニットは、第1のペプチド及び第2のペプチドが標的(例えば、プロテインS)と相互作用する限り、任意の数の構成で連結していても良い。例えば、第1のペプチドのC末端が第2のペプチドのN末端に接続している、第1のペプチドのN末端が第2のペプチドのC末端に接続している、第1(または第2)のペプチドのN末端またはC末端が第2(または第1)のペプチドの内側の付着点に接続している、または第1及び第2のペプチドが内側の付着点(すなわち、いずれもがペプチドのアミノ酸配列内に位置し、N末端またはC末端には位置しない付着点)によって接続している。2つ以上のリンカーが使用されても良く、例えば、第1の連結部分が第1のペプチドのN末端及び第2のペプチドのC末端で付着し、第2の連結部分(同じタイプの部分であっても良く、異なるタイプの部分であっても良い)が第1のペプチドのC末端及び第2のペプチドのN末端で付着している。可能な構成についての議論は第1及び第2のペプチドに言及しているが、さらなるペプチドが本明細書に記載のように第1及び/または第2のペプチドに連結していても良いことが理解されるだろう。
【0031】
誘導体が本発明に含まれる。誘導体には、アミノ酸の付加、欠失、または置換とは別の何らかの方法で化学的に修飾されたペプチドが含まれる。このとき、本明細書で提供されるペプチドは、ポリマー、脂質、他の有機的部分、及び/または無機的部分に化学的に結合している。ペプチド及びタンパク質の修飾の例は、Hermanson,Bioconjugate Techniques、Academic Press,(1996)に示されている。本明細書に記載のペプチドは、他の部分(例えば、ペプチド部分)とのコンジュゲートを促進する官能基を任意選択で含む。例示的な官能基としては、以下に限定されないが、イソチオシアネート、イソシアネート、アシルアジド、NHSエステル、スルホニルクロリド、アルデヒド、エポキシド、オキシラン、カルボネート、アリール化剤、イミドエステル、カルボジイミド、無水物、ハロゲン化アルキル誘導体(例えば、ハロアセチル誘導体)、マレイミド、アジリジン、アクリロイル誘導体、アリール化剤、チオール−ジスルフィド交換試薬(例えば、ピリジルジスルフィドまたはTNBチオール)、ジアゾアルカン、カルボニルジイミダゾール、N,N’−ジスクシニルカルボネート、N−ヒドロキシスクシンイミジルクロロホルメート、及びヒドラジン誘導体などがある。マレイミドは、例えば、in vivoでアルブミンと結合するプロテインS結合ペプチドを生成するのに有用である。
【0032】
一態様において、本発明には、共有結合的に修飾されて1つ以上の水溶性高分子の付着を含む本明細書に記載のペプチドが含まれる。水溶性高分子(または他の化学的部分)は任意のアミノ酸残基に付着するが、一部の実施形態ではN末端またはC末端への付着が好ましい。有用な高分子としては、以下に限定されないが、PEG(例えば、大きさがおよそ40kD、30kD、20kD、5kD、または1kDのPEG)、ポリオキシエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、モノメトキシ−ポリエチレングリコール、デキストラン、ヒドロキシエチルデンプン、セルロース、ポリー(N−ビニルピロリドン)−ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリシアル酸(PSA)、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)及びポリビニルアルコール、さらに前述のうちいずれかの混合物などがある。一態様において、本発明のペプチドは、PEG化ペプチドである。PEG部分は種々の形をとることが可能で、例えば、直鎖状も分枝状も可能である。例示的なPEG化ペプチドとして、Ahx(6−アミノヘキサン酸)によってN末端にて及びLysのεアミノ基によってC末端終端にて20kD直鎖状PEG部分に付着しているJBS3216(配列番号462)のアミノ酸配列を含むJBS3755(配列番号1000)、ならびに20kDのPEG部分が分岐しているJBS3757(配列番号1002)などがある。水溶性高分子の付着のさらなる議論については、米国特許第4,640,835号;第4,496,689号;第4,301,144号;第4,670,417号;第4,791,192号;及び第4,179,337号を参照されたい。ペプチドの半減期または安定性を向上させる有用な他の部分が本明細書に記載されており、例えば、アルブミン(本発明のペプチドとコンジュゲート可能なように任意選択で修飾される)、脂肪酸鎖(例えば、C14脂肪酸のようなC12〜C18脂肪酸、またはオクタデカンジカルボン酸(oddc)のようなジカルボン酸)、抗体またはそのフラグメント(例えば、抗体のFc部分)、及びプロリン−アラニン−セリン多量体などがある。
【0033】
別の態様において、ペプチド誘導体には特定の細胞型、組織、及び/または器官に特異的な標的部分が含まれる。あるいは、ペプチドは、精製、検出、多量体化、相互作用パートナーとの結合、及びペプチド活性のキャラクタリゼーションを促進する1つまたは複数の化学的部分に結合している。例示的な化学的部分は、ビオチンである。本発明のペプチドへのコンジュゲートに適切な他の部分としては、以下に限定されないが、光増感剤、色素、蛍光色素、放射性核種、放射性核種含有複合体、酵素、毒素、及び細胞毒などがある。光増感剤としては、例えば、Photofrin、Visudyne、Levulan、Foscan、Metvix、Hexvix(登録商標)、Cysview
(商標)、Laserphyrin、Antrin、Photochlor、Photosens、Photrex、Lumacan、Cevira、Visonac、BF−200 ALA、及びAmphinexなどがある。所望に応じて、Hisタグ、FLAGタグ、strepタグ、またはmycタグがペプチドに結合している。
【0034】
加えて、一態様において、本発明のペプチドは、ペプチドのN末端アミノ酸でアシル化されている。別の態様において、本発明のペプチドは、ペプチドのC末端アミノ酸でアミド化されている。なおさらなる態様において、本発明のペプチドは、ペプチドのN末端アミノ酸でアシル化され、ペプチドのC末端アミノ酸でアミド化されている。
【0035】
誘導体にもまた、修飾若しくは非タンパク質構成アミノ酸、または修飾リンカー基を含むペプチドが含まれる(例えば、Grant,Synthetic Peptides:A User’s Guide,Oxford University Press(1992)を参照されたい)。修飾アミノ酸としては、例えば、アミノ基及び/またはカルボキシル基が別の基に置き換えられているアミノ酸などがある。非限定的な例としては、チオアミド、尿素、チオ尿素、アシルヒドラジド、エステル、オレフィン、スルホンアミド、リン酸アミド、ケトン、アルコール、ボロン酸アミド、ベンゾジアゼピン、及び他の芳香族または非芳香族のヘテロ環を組み込んだ修飾アミノ酸などがある(Estiarteら,Burgers Medicinal Chemistry,第6版,Volume 1,Part 4,John Wiley&Sons,New York(2002))。非タンパク質構成アミノ酸としては、以下に限定されないが、β−アラニン(Bal)、ノルバリン(Nva)、ノルロイシン(Nle)、4−アミノ酪酸(γ−Abu)、2−アミノイソ酪酸(Aib)、6−アミノヘキサン酸(ε−Ahx)、オルニチン(Orn)、ヒドロキシプロリン(Hyp)、タウリン、サルコシン、シトルリン(Cit)、システイン酸(Coh)、シクロヘキシルアラニン(Cha)、メチオニンスルホキシド(Meo)、メチオニンスルホン(Moo)、ホモセリンメチルエステル(Hsm)、プロパルギルグリシン(Eag)、5−フルオロトリプトファン(5Fw)、6−フルオロトリプトファン(6Fw)、3´,4´−ジメトキシフェニル−アラニン(Ear)、3´,4´−ジフルオロフェニルアラニン(Dff)、4´−フルオロフェニル−アラニン(Pff)、1−ナフチル−アラニン(1Ni)、2−ナフチルアラニン(2Ni)、1−メチルトリプトファン(1Mw)、ペニシラミン(Pen)、ホモセリン(Hse)、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、フェニルグリシン(Phg)、ベンゾチエニルアラニン(Bta)、L−ホモ−システイン(Hcy)、N−メチル−フェニルアラニン(Nmf)、2−チエニルアラニン(Thi)、3,3−ジフェニルアラニン(Ebw)、L−アルファ−t−ブチルグリシン(Tle)、Bpa、ホモフェニルアラニン(Hfe)、及びS−ベンジル−L−システイン(Ece)などがある。これら及び他の非タンパク質構成アミノ酸は、D−またはL−異性体として存在しうる。修飾リンカーの例としては、以下に限定されないが、可動性リンカーである4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンジアミン(Ttds)、グリシン、6−アミノヘキサン酸、ベータ−アラニン(Bal)、ペンチン酸(Pyn)、ならびにTtds、グリシン、6−アミノヘキサン酸及びBalの組み合わせなどがある。
【0036】
本発明のペプチドを構成するアミノ酸のホモログは、表1に示される通りになりうる。任意の実施形態において、本発明のペプチドの1つまたは複数のアミノ酸は、表1に示されるアミノ酸または構成単位に置換される。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0037】
一部の実施形態において、本発明のペプチド内でアミノ酸をつなぐペプチド(CO−NH)結合は反転され、「レトロ修飾(retro−modified)」ペプチド、すなわち参照ペプチドと比較して逆方向に構築(NH−CO結合)されたアミノ酸残基を含むペプチドを作る。レトロ修飾ペプチドは、参照ペプチドと同じアミノ酸キラリティーを含む。「インベルソ修飾(inverso−modified)」ペプチドは、参照ペプチドと同方向に構築されたアミノ酸残基を含む本発明のペプチドだが、アミノ酸のキラリティーが反転している。従って、参照ペプチドがL−アミノ酸を含む場合、「インベルソ修飾」ペプチドはD−アミノ酸等を含み、逆も同様である。インベルソ修飾ペプチドは、CO−NHペプチド結合を含む。「レトロ−インベルソ修飾」ペプチドは、逆方向に構築されキラリティーを反転させたアミノ酸残基を含むペプチドを指す。レトロ−インベルソアナログは、ペプチド結合(すなわち、NH−CO)と逆の末端と方向を有するが、参照ペプチドに見出される側鎖のトポロジーはほぼ保っている。レトロ−インベルソペプチドミメティックは、参照により本明細書に組み込まれる、Meziereら,J.Immunol.,159,3230−3237(1997)に記載の方法を含む標準的な方法を用いて作られる。部分レトロ−インベルソペプチドは、アミノ酸配列部分のみが逆転しエナンチオマーのアミノ酸残基に置き換えられているペプチドである。
【0038】
本発明のペプチドは、様々な方法で作られる。一態様において、ペプチドは、以下の文献に記載された内容を含む固相合成技術によって合成される。Merrifield,J.Am.Chem.Soc.,85,2149(1963);Davisら,Biochem.Intl.,10,394−414(1985);Larsenら,J.Am.Chem.Soc.,115,6247(1993);Smithら,J.Peptide Protein Res.,44,183(1994);O’Donnellら,J.Am.Chem.Soc.,118,6070(1996);Stewart及びYoung,Solid Phase Peptide Synthesis,Freeman(1969);Finnら,The Proteins,第3版,vol.2,pp.105−253(1976);及びEricksonら,The Proteins,第3版,vol.2,pp.257−527(1976)。本発明は、合成ペプチドについて検討する。あるいは、ペプチドは、ペプチド発現のために培養する宿主細胞に本発明のペプチドをコードする核酸を導入することによって、組換えで発現される。このようなペプチドは、培地または細胞ペレットから精製される。
【0039】
本発明にはまた、本発明のペプチドをコードする核酸配列を含む核酸が含まれる。DNA及び/またはRNA分子の調製方法は、当技術分野において公知である。所望に応じて、ペプチドコード配列は、発現ベクターに組み込まれる。当業者は、以下に限定されないが、プラスミド、プラスミド−リポソーム複合体、ウイルスベクターのような、当技術分野において公知の複数の発現ベクターのいずれであっても、本発明の文脈において適切であることを理解するだろう。これらの発現ベクターのいずれも、例えばSambrookら,Molecular Cloning,a Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)、及びAusubelら,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates and John Wiley&Sons,New York,N.Y.(1994)に記載されている標準的な組換えDNA技術を用いて調製される。任意選択で、核酸は、例えばプロモーター、アクティベーター、エンハンサー、キャップシグナル、ポリアデニル化シグナル、または転写若しくは翻訳の制御に関わる他のシグナルのような、1つまたは複数の制御配列に機能的に連結している。
【0040】
また、本発明のペプチド(若しくはペプチド複合体)または当該ペプチドをコードする核酸のいずれも、組成物(例えば、医薬組成物)にて提供される。このとき、ペプチド(またはペプチド複合体)は、本明細書でさらに記載される、生理的に許容される(すなわち、薬理的に許容される)担体、緩衝液、賦形剤、または希釈剤を用いて処方される。任意選択で、ペプチドは、本発明に含まれる、生理的に許容される塩の形をとる。「生理的に許容される塩」は、医薬的に許容される任意の塩を意味する。適した塩の例の一部としては、酢酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、グリコール酸塩、及びシュウ酸塩などがある。所望に応じて、組成物は1つまたは複数のさらなる医薬的に有効な薬剤を含む。
【0041】
本明細書で提供されるペプチドは、好ましくはプロテインSに結合し、以下に限定されないが、例えば血液凝固カスケードを下方制御する活性、といったプロテインS活性を少なくとも1つ、任意選択で阻害する。ペプチドは、いかなる特定の作用メカニズムに制約されることなく、プロテインSが活性化されたプロテインC(APC)、第V因子、または脂質表面と(競合的またはアロステリックに)結合することを阻害しても良く、それによってプロテインSによる自然発生の凝固阻害を制限する。プロテインS活性が減弱すると、FVa及びFVIIIaが容易に分解されず、阻害されるFXaが少なくなり、結果的にプロトロンビンからトロンビンへの変換が強化される。
【0042】
一態様において、本発明のペプチドは、モデル系及び/または血漿系においてプロテインSアンタゴニスト活性を示す。例示的な血漿ベースのアッセイは、外因性凝固経路によって開始するプロテインS/APC依存のトロンビン生成を調べる(Nicolaes,Blood Coagul.Fibrinolysis,8:28(1997))。プロテインSは、血漿内APCの抗凝固効果を強化する。トロンビン形成は、候補ペプチドの存在下においてFVIIIまたはFIX活性が大きく欠乏している(例えば、残存する凝固因子活性が1%未満)血漿で誘発される。トロンビン形成は、例えば、蛍光発生基質または発色基質を用いて検出される。トロンビン活性の計測システムは、Thrombinoscope BV(Maastricht,The Netherlands)によって提供される。プロトロンビン変換は、例えばThrombograph
(商標)(Thermo Scientific,Waltham,MA)によって計測され、得られたデータはThrombinoscope BVから入手可能なThrombinoscope
(商標)ソフトウェアが生成する校正自動トロンボグラム(Calibrated Automated Thrombogram)(CAT)にコンパイルされる。様々な実施形態において、ペプチドは、プロテインS/APC依存トロンビン生成アッセイにおいて、約20nM〜約100μM(例えば、約40nM〜約50μM)のEC50を示す。
【0043】
特定の実施形態において、プロテインS阻害ペプチドは、アッセイの間ピークトロンビン生成量を増加させ、及び/またはピークトロンビン形成の達成に必要な時間を減少させる。例えば、ペプチドは、FVIII非存在下での(例えば、FVIIIが枯渇した血漿内での)プロテインS制御トロンビン生成を、正常な血漿におけるプロテインS依存トロンビン生成レベルの少なくとも1%まで向上させる。一般的には、正常な(罹患していない)血漿は、約0.5U/mL〜約2U/mLの第VIII因子を含有する。従って、ある場合において、プロテインS結合ペプチド(例えば、プロテインS阻害ペプチド)は、FVIII非存在下でのトロンビン形成を、0.5U/mL〜2U/mLのFVIII存在下で観測されるトロンビン形成の少なくとも約1%強化することになるだろう。
【0044】
様々な態様において、ペプチドは、in vivoでのプロテインS阻害活性の特性を決定するために、トロンビン欠乏症または血友病の動物モデルに投与される。このようなin vivoのモデルは当技術分野において公知であり、例としては、血友病Aを引き起こすために抗FVIII抗体を投与されたマウス(Tranholmら,Blood,102,3615−3620(2003));凝固因子ノックアウトモデル、例えば以下に限定されないが、FVIIIノックアウトマウス(Biら,Nat.Genet.,10(1),119−121(1995))及びFIXノックアウトマウス(Wangら,PNAS,94(21),11563−66(1997));ウサギにおいて引き起こされた血友病A(Shenら,Blood,42(4),509−521(1973));及びチャペルヒルのHAイヌ(Lozierら,PNAS,99,12991−12996(2002))などがある。
【0045】
様々なペプチドが、以下に限定されないが、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、モルモット、及び霊長類を含む任意のソースからのプロテインSと結合する。一実施形態において、ペプチドはヒトプロテインSと結合する。任意選択で、本発明のペプチドは、2つ以上の種からのプロテインSと結合する(すなわち、ペプチドは複数の種間で交差反応性がある)。特定の態様において、ペプチドは、解離定数(K
D)が1×10
−4M以下、1×10
−5M以下、1×10
−6M以下、または1×10
−7M以下、または1×10
−8M以下、または1×10
−9M以下、または1×10
−10M以下で、プロテインSと結合する。
【0046】
親和性は、例として、以下に限定されないが、様々な技術、例えば親和性ELISA(EC50)アッセイ、競合ELISA(IC50)アッセイ、競合LANCE IC50アッセイ(例えば、本明細書に記載の同種のユーロピウムベースのTR−FRETアッセイ)及び/または表面プラズモン共鳴(BIAcore
(商標))など、の中から任意の1つ、2つ、またはそれ以上を用いて判定されうる。ELISAベースの親和性(EC50)アッセイ(例えば、実施例1に記載のアッセイ)を用いるとき、任意選択で、ペプチドは、1×10
−4M、1×10
−5M以下、1×10
−6M以下、1×10
−7M以下、1×10
−8以下、または1×10
−9M以下のEC50を示す。競合(IC50)ELISAアッセイまたはLANCE IC50アッセイを用いて特性決定するとき、本発明のペプチドは約10,000nM以下のIC50を任意選択で示す。例えば、ペプチドは、約5,000nM以下、約1,000nM以下、約500nM以下のIC50を示す。一態様において、ペプチドは、約250nM以下、約100nM以下、約50nM以下、約10nM以下(例えば、約9nM以下、約8nM以下、約7nM以下、約6nM以下、約5nM以下、約4nM以下、約3nM以下、または約1nM以下)のIC50を示す。任意選択で、競合アッセイはJBS0684(配列番号1)を「トレーサー」(すなわち、競合ペプチド)として利用する。従って、様々な実施形態において、ペプチドは、配列番号1(JBS0684)のアミノ酸配列を含む(またはそれからなる)ペプチドをトレーサーとして用いる競合LANCEアッセイにおいて、25nM未満、10nM未満、5nM未満、3nM未満、または1nM未満のIC50でヒトプロテインSと結合する。例示的なペプチド及びそのIC50値は、
図1にて提供されている。
【0047】
本発明のペプチドを特性決定するための適切な他のアッセイとして、ペプチドのプロテインSからの解放を試験するk
offアッセイがある。k
offアッセイの結果は解離速度定数ではなく、プロテインSとのインキュベート期間後にテストペプチドによってプロテインS結合からブロックされた競合ペプチドの百分率である。例示的なk
offアッセイとしては、以下のステップが含まれる:1)プロテインSが結果としておよそ90%を占めるようなテストペプチド量を用いたプロテインS被覆マイクロタイタープレートのインキュベーション;2)非結合テストペプチドの除去;3)プロテインSへの結合でテストペプチドと競合するビオチン化されたトレーサー(すなわち、競合)ペプチド(例えばJBS0684)の添加;4)テストペプチドが解放した結合部位をトレーサーが占有する一定時間のインキュベーション;5)非結合トレーサー及びテストペプチドの除去;及び6)ストレプトアビジン−セイヨウワサビペルオキシダーゼコンジュゲートを用いた発色反応による結合トレーサーの検出。結果として得られたシグナルは、テストペプチドが解放した結合部位を示す。インキュベーション期間内にプロテインSから解離しないテストペプチドは、完全に解離する分析物と比較して弱いシグナルをもたらす。任意選択で、ペプチドは、1×10
−3s
−1以下、1×10
−4s
−1以下、1×10
−5s
−1以下、1×10
−6s
−1以下、または1×10
−7s
−1以下のk
offを示す。
【0048】
全ての結合剤及び結合アッセイと同様に、当業者は、生体的に(例えば、治療的に)有効であるためには結合剤が検出可能な程度に結合すべきでない様々な部分について、列挙するのは消耗的であり非実用的となるだろうことを認識する。従って、用語「specifically bind(特異的に結合する)」は、ペプチドがプロテインSに対して、プロテインSではない無関連な対照タンパク質に対してよりも、より高い親和性で結合する能力を意味する。例えば、ペプチドはプロテインSに対して、対照タンパク質に対してよりも、少なくとも5倍、10倍、15倍、25倍、50倍、100倍、250倍、500倍、1000倍、または10,000倍高い親和性で結合しうる。一部の実施形態において、ペプチドは、結合すると逆の効果がもたらされうる、タンパク質またはヒト内に天然で存在する他の物質「抗標的」に対してよりも高い親和性で、プロテインSに結合する。プロテインS阻害ペプチドは、血流及び/または内皮において活性を発揮するので、血漿タンパク質は潜在的な抗標的となる。プロテインSはまた、凝固系タンパク質における、Glaドメイン含有の(例えば、GAS6、第VII因子、第IX因子、第X因子、プロテインC、プロテインZ、及びプロトロンビン)、EGF様ドメイン含有の(例えば、GAS6、第VII因子、第IX因子、第X因子、プロテインC、プロテインZ、及びトロンボモジュリン)、及びラミニンG様ドメイン含有の(例えば、GAS6)他のタンパク質に対し、相同性の高いドメインを持つ多ドメインタンパク質である。これらのドメインを有するタンパク質もまた、潜在的な抗標的である。様々な実施形態において、ヒトGAS6は、プロテインSに対する相同性(42%同一、57%共通配列)のため、抗標的である。従って、一態様において、本発明のペプチドはプロテインSに対して、ヒトGAS6のような抗標的に対する親和性よりも、少なくとも5倍、10倍、15倍、25倍、50倍、または100倍高い親和性で結合する(例えば表面プラズモン共鳴アッセイ(例えば、BIAcore)のような、任意の適切な方法を用いて試験される)。
【0049】
任意選択で、本発明のペプチドは、本明細書に記載の1つまたは複数の所望の特性を示し、ペプチドのアミノ酸配列は、所望に応じて、結合、安定性、及び/または活性を最適化するよう修飾されうる。例示的なペプチドは、10μM以下のK
DでプロテインSと結合し、及び/または、プロテインSへの結合親和性を抗標的への結合親和性より少なくとも10倍高く示す。あるいはまたは加えて、前記ペプチドは、プロテインSが欠乏しプロテインS及びAPCを補充した血漿またはFVIIIが阻害された/欠乏した血漿におけるトロンビン生成を、10μM以下のEC50(本明細書に記載のアッセイのような任意の適切なアッセイを用いて測定)で強化し、及び/または、第VIII因子活性非存在下でのプロテインS依存トロンビン生成を、正常な第VIII因子活性を含有する血漿におけるトロンビン形成レベルの少なくとも20%(例えば、40%)向上させる。あるいはまたは加えて、前記ペプチドは所望レベルの血漿安定性を達成し(例えば、投与量の50%以上がヒト血漿内に6時間後または12時間後残存する、または投与量の50%以上がマウス血漿内に4時間後または8時間後残存する)、及び/またはin vivoで所望の半減期を示し(例えば、少なくとも2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、または10時間)、及び/または所望レベルの溶解性を示す。あるいはまたは加えて、本発明のペプチドは、例えば静脈または皮下投与後のバイオアベイラビリティ所望レベルのような、バイオアベイラビリティ所望レベルを示し(例えば、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、または50%以上)、及び/またはin vivoでの所定の投与で所望レベルのプロテインS阻害活性を示す。
【0050】
本発明には、プロテインSを阻害する方法がさらに含まれる。当該方法は、プロテインSを本明細書に記載のペプチドと接触させることを含む。任意選択で、当該方法は、対象におけるプロテインSを阻害することを含み、当該方法は、ペプチドをプロテインS活性阻害に有効な量で対象に投与することを含む。プロテインS活性阻害の任意の程度が検討されている。例えば、本発明のペプチドは、凝固カスケードのプロテインS阻害を少なくとも約5%(例えば、少なくとも約10%、少なくとも約25%、または少なくとも約30%)低下させる。一部の実施形態において、ペプチドは、ペプチド非存在下でのプロテインS活性と比較して、プロテインS活性を少なくとも約50%、少なくとも約75%、または少なくとも約90%低下させる。
【0051】
本発明の一態様において、本発明のペプチドは、in vivoまたはin vitroでプロテインSを検出及び/または定量化するために使用される。プロテインSを試料内で検出及び/または定量化する例示的な方法は、(a)試料を本発明のペプチドと接触させること、及び(b)プロテインSに対するペプチドの結合を検出することを含む。前記方法は、プロテインSが適切な診断マーカーである場合における疾患の治療及び診断に有用である。ペプチド−プロテインS複合体は、直接的にまたは間接的に検出される。検出部分は、生体物質の同定に当技術分野で広く使用されており、例えば、色素(例えば、蛍光色素)、放射性核種及び放射性核種含有複合体、及び酵素などがある。検出を可能にする部分は、ペプチドに任意選択で付着またはコンジュゲートしている。一部の態様において、ペプチド−プロテインS結合は、間接的に検出される。このとき、ペプチドは、ペプチド−プロテインS結合に著しく干渉することなく本発明のペプチドと結合する相互作用パートナーと任意選択で接触され、相互作用パートナーが検出される。例示的な相互作用パートナーとしては、以下に限定されないが、抗体、抗原結合抗体フラグメント、アンチカリン及び抗体模倣物、アプタマー、ストレプトアビジン、アビジン、ニュートラアビジン、及びシュピーゲルマーなどがある。任意選択で、相互作用パートナーは、相互作用パートナー−ペプチド複合体の検出を促進する検出部分を含む。ペプチドは、一部の実施形態において、相互作用パートナーの結合を促進するよう修飾される。例えば、一態様において、本発明のペプチドは、ストレプトアビジンを含む相互作用パートナーに結合しているビオチンにコンジュゲートしている。例示的な相互作用パートナーは、例えばELISAに類似したアッセイで検出されるセイヨウワサビペルオキシダーゼと融合しているストレプトアビジンを含む。あるいは、本発明のペプチドは、抗体エピトープを含むよう修飾され、対応する抗体のペプチド−プロテインS複合体に対する結合が検出される。
【0052】
ペプチド−プロテインS複合体及び相互作用パートナー−ペプチド複合体は、例えば、以下に限定されないが、生化学的アッセイ(例えば、酵素アッセイ)、分光法(例えば、光学濃度、蛍光、FRET、BRET、TR−FRET、蛍光偏光、電気化学発光、またはNMRに基づいた検出)、陽電子放出断層撮影法(PET)、及び単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)のような、多数の方法のいずれかを用いて同定される。ペプチド−プロテインS複合体または相互作用パートナー−ペプチド複合体の蛍光検出を促進する検出可能部分としては、以下に限定されないが、フルオレセイン、Alexa Fluor(登録商標)350、Marina Blue
(商標)、Cascade Yellow
(商標)、Alexa Fluor(登録商標)405、Pacific Blue
(商標)、Pacific Orange
(商標)、Alexa Fluor(登録商標)430、Alexa Fluor(登録商標)488、Oregon Green(登録商標)488、Alexa Fluor(登録商標)500、Oregon Green(登録商標)514、Alexa Fluor(登録商標)514、Alexa Fluor(登録商標)532、Alexa Fluor(登録商標)555、テトラメチルローダミン、Alexa Fluor(登録商標)546、ローダミンB、Rhodamine Red
(商標)−X、Alexa Fluor(登録商標)568、Alexa Fluor(登録商標)594、Texas Red(登録商標)、Texas Red(登録商標)−X、Alexa Fluor(登録商標)610、Alexa Fluor(登録商標)633、Alexa Fluor(登録商標)635、Alexa Fluor(登録商標)647、Alexa Fluor(登録商標)660、Alexa Fluor(登録商標)680、Alexa Fluor(登録商標)700、Alexa Fluor(登録商標)750、B−フィコエリトリン、R−フィコエリトリン、アロフィコシアニン、BODIPY(登録商標)、Cy3、Cy5、TAMRA、及び蛍光タンパク質(GFP及びその誘導体)などがある。
【0053】
本発明はまた、異常なプロテインS活性に関連するまたはそれに起因する疾患若しくは障害にかかっている、または疾患若しくは障害にかかる危険性のある対象の診断方法を提供する。当該方法は、本発明のペプチドの対象への投与及びプロテインS−ペプチド複合体の検出を含む。複合体の検出は、上述されている。複合体の存在はプロテインSの存在を意味し、それによってプロテインSに関連する疾患または障害の診断が可能になる(例えば、(i)プロテインS阻害によって治療されうる疾患または障害、または(ii)プロテインSを阻害することによって回復または予防されうる症状を含む疾患または障害)。もし対象に対するペプチド投与が所望されなければ、対象から生体試料を取得し、本明細書に記載のペプチドと接触させ、プロテインS−ペプチド複合体を検出する。本明細書に記載のペプチドの使用方法はまた、本明細書に記載のペプチド複合体の使用のいずれかを含むことが理解されるだろう。
【0054】
例えば血栓形成傾向、静脈血栓症、及び肺塞栓症のような、一部の疾患及び障害は、プロテインSレベルの低下と関連している。プロテインS欠乏は遺伝性、または、例えばビタミンK欠乏、ワルファリン治療、妊娠、感染症、及び肝疾患の結果でありうる。欠乏を検出するために、方法はプロテインSの定量化を任意選択で伴う。もし生体試料におけるプロテインSが所望の閾値を下回る場合、疾患または障害の治療が開始される。ある場合において、治療は抗凝固療法(例えば、ヘパリンまたはワルファリン治療)を含む。
【0055】
本明細書に記載のペプチドは好ましくはプロテインSに結合し、従って、生体試料(例えば、血清のような生体液)、発酵抽出物、組織標本、培地などからのプロテインS(例えば、組換え型のプロテインS)精製に有用である。ペプチドはまた、以下に限定されないが、例えばC4BPのような、プロテインSと相互作用するタンパク質の精製に有用である。本発明には、プロテインSの商業生産における、またはプロテインSの特性決定方法における、本発明のペプチドの使用方法が含まれる。例えば、本発明には、プロテインSの精製方法が含まれる。当該方法は、プロテインSとペプチド間の複合体形成に適した条件下で、プロテインSを含有する試料を本明細書で規定されたペプチドと接触させること、試料から複合体を除去すること、及び、任意選択で、複合体を分離してプロテインSを解放することを含む。プロテインSとペプチド間の複合体形成に適した例示的な条件が実施例に開示されている。一部の実施形態において、ペプチドは、プロテインSの回収を促進するために、例えば固体支持体のような支持体に固定する。例えば、一実施形態において、ペプチドをクロマトグラフィーの固定相(例えば、シリカ、アフィニティークロマトグラフィービーズ、またはクロマトグラフィー樹脂)に固定し、プロテインSを含む試料をプロテインS−ペプチド複合体が形成されるように固定相に適用し、試料の残部を固定相から除去し、プロテインSを固定相から溶出する。このとき、本発明のペプチドは、一態様において、アフィニティークロマトグラフィー手法での使用に適切である。
【0056】
また、対象におけるトロンビン形成の強化方法が提供される。方法は、プロテインS阻害に有効な条件下において本明細書で提供されるペプチドを対象に投与することを含む。このとき、ペプチドは、対象におけるトロンビン形成強化に有効な量及び条件の下で投与される。本発明の様々な態様において、対象は「凝血因子欠乏」であり、つまり対象は、例えばFVIII、FIX、またはFXIのような、トロンビン形成に必要な1つまたは複数の血液因子が欠乏している。実際に、一実施形態において、対象はFVIIIが欠乏している。凝血因子欠乏は、臨床試料における因子の量を調べることによって同定される。実施者は、凝血因子欠乏の規模に従って血友病を分類する。軽度の血友病にかかっている対象は、正常量(1U/ml)のおよそ5%〜30%の第VIII因子または第IX因子を有する。中度の血友病は、正常な第VIII因子、第IX因子、または第XI因子のレベルのおよそ1%〜5%であることによって特徴づけられ、一方重度の血友病にかかっている対象は、正常量の1%未満の第VIII因子、第IX因子、または第XI因子を有する。欠乏は、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)試験によって間接的に同定されうる。本発明は、凝血因子欠乏にかかっていない対象におけるトロンビン形成強化をさらに含む。方法は、トロンビン形成強化に有効な条件下で、本明細書で提供されるペプチドを対象(例えば、凝血因子が正常な生理的レベルを備える対象)に投与することを含む。
【0057】
一態様において、ペプチドは、対象における血餅形成の増加に使用される。血餅形成の増加方法は、血餅形成増加に有効な量及び条件下で、本明細書に記載のペプチドを対象に投与することを含む。方法が有益な(例えば、治療的な)効果を達成するには、凝固カスケードを完全には回復させなくても良いことが理解されるだろう。凝血因子欠乏に関連する症状の発症または重症度を低下させるトロンビンまたは血餅形成における任意の強化または増加が検討されている。トロンビン形成及び凝血の促進における方法の有効性を判定する方法は、当技術分野で公知であり本明細書に記載されている。
【0058】
本発明には、対象における血液凝固障害の治療方法、すなわち対象における血液凝固障害の治療に有効な量及び条件の下で、対象に1つまたは複数の本発明のペプチド(または、ペプチド複合体)(すなわち、本明細書に記載のペプチドのいずれか1つまたは複数)を投与することを含む方法がさらに含まれる。「凝固障害」には、血液凝固因子活性の欠乏及び血小板活性の欠乏によって引き起こされる出血系障害(例えば、凝血能低下)が含まれる。血液凝固因子には、以下に限定されないが、第V因子(FV)、FVII、FVIII、FIX、FX、FXI、FXIII、FII(低プロトロンビン血症の原因となる)及びvon Willebrand因子が含まれる。因子欠乏は、例えば、in vivoでの因子の半減期短縮、因子の結合特性変化、因子の遺伝子的欠陥、及び因子の血漿濃度低下によって引き起こされる。凝固障害は、先天的または後天的でありうる。凝固障害はまた、凝血因子に対するインヒビターまたは自己免疫(例えば、抗体)の発達に由来する。一例において、凝固障害は、血友病Aである。あるいは、凝固障害は、血友病Bまたは血友病Cである。
【0059】
血小板障害は、血小板の機能不全または異常な循環血小板数減少によって引き起こされる。血小板数減少は、例えば、産生不足、血小板隔離、または抑制されない開存性破壊(uncontrolled patent destruction)によって引き起こされうる。血小板減少症(血小板欠乏症)は、化学療法及び他の薬物療法、放射線療法、手術、偶発的失血、及び他の病態を含めた様々な原因で存在しうる。血小板減少症を含めた例示的な病態として、以下のものがある:再生不良性貧血、乳がんに関連した特発性血小板減少性紫斑病を含む特発性または免疫性血小板減少症(ITP);HIV随伴性ITP及びHIVに関連した血栓性血小板減少性紫斑病;血小板減少症の原因となる転移性腫瘍;新生児ループス症候群脾腫を含む全身性エリテマトーデス;Fanconi症候群;ビタミンB12欠乏症;葉酸欠乏症;May−Hegglin異常;Wiskott−Aldrich症候群;慢性肝疾患;血小板減少症に関連した骨髄異形成症候群;発作性夜間ヘモグロビン尿症;C7E3 Fab(アブシキシマブ)療法後の急性深在性血小板減少症;母性同種免疫性血小板減少症を含む同種免疫性血小板減少症;抗リン脂質抗体及び血栓症に随伴する血小板減少症;自己免疫性血小板減少症;カルボプラチン誘発血小板減少症及びヘパリン誘発血小板減少症を含む薬剤性免疫性血小板減少症;胎児血小板減少症;妊娠性血小板減少症;Hughes症候群;ルポイド血小板減少症;偶発性及び/または大量失血;骨髄増殖性障害;悪性腫瘍患者における血小板減少症;がん患者に血栓性血小板減少性紫斑病/溶血性尿毒症候群として現れる血栓性微小血管症を含む血栓性血小板減少性紫斑病;輸血後紫斑病(PTP);自己免疫性溶血性貧血;潜在性空腸憩室穿孔;赤芽球ろう;自己免疫性血小板減少症;流行性腎症;リファンピシンに随伴する急性腎不全;Paris−Trousseau血小板減少症;新生児同種免疫性血小板減少症;発作性夜間ヘモグロビン尿症;胃がんにおける血液変化;溶血性尿毒症候群(例えば、小児期における尿毒状態);及びA型肝炎ウイルス及びCMV随伴性血小板減少症を含むウイルス感染に関連した血液所見。また血小板障害としては、以下に限定されないが、Von Willebrand病、腫瘍随伴性血小板機能異常症、Glanzman血小板無力症、及びBernard−Soulier病などがある。さらなる出血系障害としては、以下に限定されないが、外傷によって誘発される出血状態、1つまたは複数の接触因子(例えばFXI、FXII、プレカリクレイン及び高分子キニノーゲン(HMWK))の欠乏、ビタミンK欠乏症、フィブリノーゲン障害(無フィブリノーゲン症、低フィブリノーゲン症、及び異常フィブリノーゲン血症を含む)、及びアルファ2−アンチプラスミン欠乏症などがある。一実施形態において、本発明のペプチドは、例えば、手術、外傷、脳内出血、肝疾患、腎疾患、血小板減少症、血小板機能異常症、血腫、内出血、関節血症、低体温症、月経、妊娠、及びデング出血熱によって引き起こされる過度の出血のような、過度の出血の治療に使用される。上記全ては、本開示の文脈において「血液凝固障害」と考えられる。
【0060】
一態様において、本発明のペプチドは、対象における1つまたは複数の抗凝固薬の効果を(全体的または部分的に)反転させるのに使用される。多数の抗凝固薬が当技術分野において公知であり、例えば、ヘパリン;例えばワルファリンまたはジクマロールのようなクマリン誘導体;TFPI;ATIII;ループス抗凝固薬;線虫抗凝固薬ペプチド(NAPc2);FVIIaインヒビター;活性部位ブロックFVIIa(FVIIai);活性部位ブロックFIXa(FIXai);FIXaインヒビター;フォンダパリナックス(fondaparinux)、イドラパリナックス(idraparinux)、DX−9065a、及びラザキサバン(razaxaban)(DPC906)を含むFXaインヒビター;活性部位ブロックFXa(FXai);活性化プロテインC(APC)及び水溶性トロンボモジュリンを含むFVaまたはFVIIIaインヒビター;ヒルジン、ビバリルジン、アルガトロバン、及びキシメラガトランを含むトロンビンインヒビター;及び凝血因子と結合する抗体または抗体フラグメント(例えば、FV、FVII、FVIII、FIX、FX、FXIII、FII、FXI、FXII、von Willebrand因子、プレカリクレイン、または高分子キニノーゲン(HMWK))などがある。
【0061】
本明細書において、「treating(治療)」及び「treatment(治療)」は、疾患または障害(例えば、血液凝固障害)に随伴する症状の重症度及び/または発症の任意の低減を意味する。当業者は、障害またはそれに随伴する症状からの保護または改善は、任意の程度において、例えばヒト患者のような対象に有益であることを理解するだろう。患者の生活の質は、対象における症状の重症度を任意の程度で低下させる及び/または症状の出現を遅らせることによって、改善される。従って、一態様における方法は、対象が血液凝固障害にかかる危険性があると判定(例えば、凝固因子の欠乏(例えば、FVIII、FIX、またはFXI)が検出される、または抑制的な抗体が検出される)された後可能な限り速やかに、または血液凝固障害(例えば、血友病A、血友病B、または血友病C)が検出された後可能な限り速やかに、実施される。さらなる一態様において、ペプチドは、傷害時または手術時の過度な失血から全体的または部分的に保護するために、投与される。
【0062】
上記を考慮して、本発明は、医薬で使用するための、すなわち、例えばプロテインSの阻害が有益な場合における疾病の治療方法のような、対象の治療方法で使用するためのペプチド(またはペプチド複合体)を提供する。一態様において、疾病または障害は、血液凝固障害である。対象は、疾病若しくは障害にかかっており、または疾病若しくは障害(または、例えば過度の失血のような、不利な生体現象)にかかる危険性がある。方法は、疾病または障害を、全体的または部分的に治療または予防するために有効な量及び条件において、対象にペプチド(またはペプチド複合体)を投与することを含む。本発明は、薬剤の製造で使用するためのペプチド(またはペプチド複合体)をさらに提供する。例えば、ペプチド(またはペプチド複合体)は、本明細書で詳細に記載のように、血液凝固障害の治療用薬剤の製造で使用されうる。
【0063】
一部の実施形態において、本発明のペプチド複合体またはペプチドをコードする核酸配列を含む核酸を対象に投与することは有利である。このような核酸は、一態様において、ペプチド複合体またはペプチドに、代えてまたは加えて、提供される。発現ベクター、核酸制御配列、投与方法などは、本明細書及び米国特許公開第20030045498号にさらに記載されている。
【0064】
対象(例えば、ヒトのような哺乳類)に投与するペプチドの量及び投与条件(例えば、投与タイミング、投与経路、投薬レジメン)は、合理的な期間を通して所望の生体反応に影響を与えるのに充分である。単に実例として、一態様において、方法は、例えば約0.1μg/kg〜約100mg/kgあるいはそれを超えて投与することを含む。多くの血液凝固障害の慢性的特性を考えれば、対象は何週間、何ヶ月、または何年か続く治療過程を通して本発明のペプチドを受けることになり、一日または一週間に1回以上の適用が必要になりうると想像される。他の実施形態において、本発明のペプチドは、急性の状態(例えば、手術または外傷に起因する出血、または凝固置換療法を受けている対象の因子インヒビター/自己免疫性エピソード)を治療するために、相対的に短い治療期間、例えば1〜14日間、投与される。
【0065】
例えば本明細書に記載のペプチドを含む医薬組成物のような、生理的に許容できる組成物を投与する適切な方法は、当技術分野において公知である。状況に応じて、医薬組成物は、体腔に適用または滴下注入され、皮膚または粘膜を通して吸収され、経口摂取され、吸入され、及び/または血液循環に導入される。一態様において、本発明のペプチドを含む組成物は、静脈内に、動脈内に、または腹腔内に投与され、本発明のペプチドが血液循環に導入される。非静脈内投与も、特に低分子治療薬に関しては適している。特定の状況において、本発明のペプチドを含む医薬組成物を、経口に、局所に、舌下に、経膣に、直腸に、肺に;大脳内の(実質内の)、脳室内の、筋肉内の、眼内の、門脈内の、病巣内の、髄内の、髄腔内の、心室内の、経皮的な、皮下の、鼻腔内の、尿道の、または腸内の手段による注入を通して;徐放系によって;または植え込み装置によって、送達することが望ましい。所望に応じて、ペプチドは、例えば脚への送達のために大腿動脈経由でというように、対象部分への供給を行う動脈内または静脈内投与によって局所的に投与される。一実施形態において、ペプチドは、例えば米国特許5,439,686及び5,498,421、ならびに米国特許公開2003/0059474、2003/0064033、2004/0043077、2005/0048127、2005/0170005、2005/0142205、2005/142201、2005/0233945、2005/0147689。2005/0142206、2006/0024379、2006/0260777、2007/0207210、2007/0092452、2007/0281031、及び2008/0026068に記載のように、微粒子に組み込まれる。あるいは、組成物は、膜、スポンジ、または所望の分子の吸収若しくは被包に適した他の素材の植え込みによって投与される。植え込み装置が使用される場合、一態様における装置は、任意の適切な組織に植え込みされ、所望の分子の送達は、様々な態様において、拡散、徐放性巨丸剤、または継続投与によって行われる。他の態様において、ペプチドは、外科的処置または傷害の治療の間に露出している組織に直接投与されるか、または輸血処置によって投与される。治療的送達アプローチは当業者に公知であり、その一部が、例えば米国特許第5,399,363号にさらに記載されている。
【0066】
投与を促進するために、一実施形態におけるペプチドまたはペプチド複合体は、担体(すなわち、賦形剤、アジュバント、緩衝剤、または希釈剤)を含む生理的に許容される組成物に処方される。生理的に許容される無菌担体は、当技術分野において公知である。注射可能な使用に適切な実例的剤形としては、限定なしで、無菌の水溶液または分散物、及び無菌の注射可能な溶液または分散物の即時調製用無菌粉末などがある(例えば、米国特許第5,466,468を参照されたい)。本明細書で提供されるペプチドを含む医薬組成物は、このような医薬組成物の使用に関する指示を提供する包装材料と共に、容器内に任意選択で配置される。一般的に、このような指示には、試薬濃度を記述する具体的表現に加え、特定の実施形態において、医薬組成物の再構成に必要となりうる賦形剤成分または希釈剤の相対的量を記述する具体的表現が含まれる。
【0067】
適時、本発明のペプチド及びペプチド複合体は、追加的または増強的な生体効果を達成するために、他の物質及び/または他の治療モダリティーと組み合わせて投与される。併用治療には、以下に限定されないが、血漿由来のまたは組み換えの凝固因子、血友病予防治療、免疫抑制剤、血漿因子阻害抗体アンタゴニスト(すなわち、抗インヒビター)、抗線維素溶解薬、抗生物質、ホルモン療法、抗炎症剤(例えば、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)またはステロイド性抗炎症物質)、凝血促進剤、及び鎮痛剤が含まれる。一態様において、方法は、例えば以下のものを対象に投与することを伴う、従来の補充因子治療レジメンに対する補助療法である。FXIII、FXII、FXI(例えば、HEMOLEVEN(登録商標)(Laboratoire francais du Fractionnement et des Biotechnologies,Les Ulis,France)およびFXI濃縮物(BioProducts Laboratory,Elstree,Hertfordshire,UK))、FX、FIX(例えば、BENEFIX
(登録商標)Coagulation Factor IX(Wyeth,Madison,NJ);ALPHANINE(登録商標)SD(Grifols,Los Angeles,CA);MONONINE(登録商標)(CSL Behring, King of Prussia,PA);BEBULIN−VH
(商標)(Baxter,Deerfield,IL);PROFILNINE(登録商標)SD(Grifols,Los Angeles,CA);またはPROPLEX T
(商標)(Baxter,Deerfield,IL))、FVIII(例えば、ADVATE
(商標)(Baxter, Deerfield,IL);HELIXATE(登録商標)FS(CSL Behring,King of Prussia,PA);REFACTO(登録商標)(Wyeth,Madison,NJ)、XYNTHA
(商標)(Wyeth,Madison,NJ)、KOGENATE(登録商標)及びKOGENATE(登録商標)FS(Bayer,Pittsburgh,PA);ALPHANATE(登録商標)(Grifols,Los Angeles,CA);HEMOPHIL M
(商標)(Baxter,Deerfield,IL);KOATE(登録商標)−DVI(Talecris Biotherapeutics−USA,Research Triangle Park,NC);またはMONARC−M
(商標)(Baxter,Deerfield,IL))、FVIIa(例えば、NOVOSEVEN(登録商標)FVIIa(Novo Nordisk,Princeton,NJ)及びFVII濃縮物(Baxter Bioscience,Vienna,AustriaまたはBioProducts Laboratory,Elstree,Hertfordshire,UK))、FV、FVa、FII、及び/またはFIII。ある場合において、対象はまた、第VIII因子インヒビターバイパス活性を持つ凍結乾燥された無菌ヒト血漿画分であるFEIBA VH Immuno
(商標)(Baxter BioScience,Vienna,Austria)を受ける。FEIBA VH Immuno
(商標)は、第VIII因子インヒビターバイパス活性及びプロトロンビン複合体因子(第II、VII、IX、及びX因子ならびにプロテインC)とほぼ同等の単位を含有する。他の例示的な併用治療としては、以下に限定されないが、プレカリクレイン、高分子キニノーゲン(HMWK)、Von Willebrand因子、組織因子、及びトロンビンなどがある。あるいはまたは加えて、ペプチドは、1つまたは複数の異なるプロテインS結合ペプチド、例えば1つまたは複数の異なる本発明のペプチド、と同時に処方される。一態様において、ペプチドの投与により、所望の生体反応の達成に必要な並行治療薬の投与量を低減することが可能である。また、任意選択で、ペプチド(またはペプチド複合体)は、例えば国際特許公開第WO2013/141965に記載のTFPI結合ペプチドのような、組織因子経路インヒビター(TFPI)結合ペプチドの投与を含む治療レジメンの一部となる。
【0068】
従って本発明には、本発明のペプチド(または複数種類のペプチド、またはペプチド複合体)を、1つまたは複数の追加的に適切な物質と組み合わせて対象に投与することが含まれ、各々が薬剤に適切なレジメンに従って投与される。投与戦略には、ペプチド(またはペプチド複合体)及び1つまたは複数の追加的に適切な薬剤の同時投与(すなわち、実質的に同時の投与)及び非同時投与(すなわち、異なる時間で、任意の順序で、重複しているかしていないかを問わない投与)が含まれる。異なる構成成分は、任意選択で、同じまたは別々の組成物で、及び同じまたは異なる投与経路によって、投与されることが理解されるだろう。
【0069】
本発明は、例えばプロテインS結合ペプチドのような、プロテインS結合化合物の同定方法をさらに提供する。一態様において、方法は、(a)プロテインSを、プロテインS−ペプチド複合体の形成が可能な条件下で、本発明に記載のペプチド及びテスト化合物(第二のペプチドであっても良い)と接触させることを含む。当該方法は、(b)ステップ(a)で形成されるプロテインS−ペプチド複合体の測定、及び(c)テスト化合物の存在下で形成されたプロテインS−ペプチド複合体の数を、テスト化合物の非存在下で形成されたプロテインS−ペプチド複合体の数と比較すること、をさらに含む。テスト化合物の存在下で形成されたプロテインS−ペプチド複合体の数の、テスト化合物の非存在下で形成されたプロテインS−ペプチド複合体の数と比較しての減少は、テスト化合物がプロテインS結合化合物であることを示す。一態様において、方法は、ステップ(c)において、比較のためテスト化合物の非存在下でプロテインS−ペプチド複合体を形成することをさらに含むが、情報が別々に(例えば、あらかじめ用意された標準品から)取得されうる限り、このことは要求されない。
【0070】
プロテインS、ペプチド、及びテスト化合物を、同時にまたは経時的に、ペプチド及び/またはテスト化合物を添加する前及び/または後に任意選択で洗浄ステップを伴って、混合する。一実施形態において、プロテインS−ペプチド複合体の形成が可能な条件下で、プロテインSと本明細書中に記載のペプチドを接触させ、非結合ペプチドを除去し、残存するプロテインS−ペプチド複合体とテスト化合物を接触させる。プロテインS−ペプチド複合体からのペプチドの置き換えが検出されると、テスト化合物がプロテインS結合化合物であることを示す。置き換えは、例えば、テスト化合物を曝露する前及び後のプロテインS−ペプチド複合体の数を測定することによって検出される。
【0071】
プロテインS−ペプチド複合体は、試料内のペプチドを検出するための当技術分野で公知の検出手段を含む、任意の適切な検出手段を用いて、検出及び/または測定(定量化)される。例えば、本発明の一実施形態において、本発明のペプチドは、シグナルを生成する標識を含む。例示的な標識は本明細書に記載され、例えば、放射性核種、蛍光色素、同位体、酵素基質、及び酵素などがある。方法は、プロテインS−ペプチド複合体によって生成されたシグナルの測定、及びテスト化合物の存在下で生成されたプロテインS−ペプチド複合体のシグナルを、テスト化合物の非存在下で生成されたプロテインS−ペプチド複合体のシグナルと比較することを含む。テスト化合物の曝露を受けたプロテインS−ペプチド複合体を含む試料からのシグナルの(テスト化合物の曝露を受けないプロテインS−ペプチド複合体の類似した試料から生成されるシグナルと比較しての)減少は、複合体形成が阻害または中断されたこと及び、テスト化合物がプロテインS結合化合物であることを示す。
【0072】
プロテインS結合化合物を同定する本発明の方法は、当技術分野で公知の様々なハイスループットスクリーニング技術を特に受け入れられる。任意の「テスト化合物」(例えば、小分子、ペプチド、タンパク質(例えば、抗体またはそのフラグメント)、ペプチドミメティック、またはポリヌクレオチド(DNAまたはRNA))が、本明細書に記載の方法を用いたスクリーニングに適切である。所望に応じて、テスト化合物の収集物、母集団、またはライブラリーが、本明細書に記載の方法を用いて、プロテインS結合(及び、任意選択で抗プロテインS活性)のスクリーニングを受ける。本発明書に包含されるハイスループットスクリーニング方法には、数十〜数十万のテスト化合物のスクリーニングが可能な自動化された手順が含まれている。
【0073】
本文書全体は、一体化した開示として関連づけられることを意図され、本文書の同一の文、段落、節の中に見出されない場合であっても、本明細書に記載の特徴の全ての組み合わせが検討されているものと理解されるべきである。例えば、タンパク質療法が記述されている場合、(タンパク質をコードするポリヌクレオチド/ベクターを用いた)ポリヌクレオチド療法を伴う実施形態は明確に検討されており、その逆もまた当てはまる。明示的に反対のことが示されない限り、本発明の一ペプチドまたは一方法に関して本明細書で提供される記述は、本発明のペプチド及び方法の各々及び全てに、それぞれ適用される。また、明示的に反対のことが示されない限り、本発明のペプチドまたはその使用に関して本明細書で提供される記述は、本発明のペプチド複合体に適用される。
【0074】
本発明にはまた、例えば、明確に上述されているバリエーションよりも任意の点で範囲が狭い本発明の全ての実施形態が含まれる。ある属として記述されている本発明の態様に関して、全ての個々の種は、本発明の別々の態様と考えられる。「a」または「an」と共に記述または請求されている本発明の態様に関して、文脈上より限定的な意味が明白に要求されない限り、これらの用語は「1つまたは複数」を意味するものと理解されるべきである。本発明の態様が特徴を「comprising(含む)」と記述されている場合、実施形態はまた、特徴「consisting of(からなる)」または「consisting essentially of(本質的に〜からなる)」ものとも考えられる。
【0075】
本明細書において引用された全ての出版物、特許及び特許出願は、個々の出版物または特許出願が、明確に及び個々に参照により組み込まれていると示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0076】
本発明は、以下の実施例の参照によってより容易に理解されるだろう。以下の実施例は実例を介して提供されるものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0077】
実施例1
以下の実施例は、本明細書に記載のペプチドの生成及び選択、ならびにプロテインS結合の特性決定について記述する。
【0078】
ペプチドは、主にアセチル化N末端及びアミド化C末端を用いてのFmoc固相合成によって合成された。未加工の生成物は、HPLCによって90%超に精製され、TFA塩として凍結乾燥された。凍結乾燥されたペプチドは−15℃未満で保管された。プロテインS結合ペプチド配列は、mRNAディスプレイライブラリー及び選択アッセイのパネルを使用して同定された。mRNAのディスプレイ方法は、例えば国際特許公開第WO2005/051985号及びLiuら、Methods in Enzymology,318,268−293(2000)に記載されている。簡潔に述べると、mRNAはピューロマイシン分子を通して自身のコードされたペプチドに直接連結している。ペプチドRNA複合体は、一連の選択過程で完全長のプロテインSに曝露され、その間プロテインS結合候補となるペプチドRNA複合体は単離され濃縮された。所望の性質を持つRNAコードペプチドは、逆転写されコードDNAを得た。
【0079】
選択過程では、適度かつ高度に厳密な選択ステップだけではなく、阻害性抗プロテインS抗体に基づく競合的な条件も含まれた。選択プロセスは、進行的に厳密な5つの選択過程から開始した。約10
13のランダムな20merのペプチド−mRNA複合体からなるライブラリーを、常磁性のストレプアビジンビーズ上に固定した100nMのビオチン化されたヒトプロテインSと共に1時間インキュベートした。プロテインSビーズ及び対照用非被覆ストレプアビジンビーズに対するペプチド/mRNA融合物の結合を、放射線標識ペプチド−mRNA複合体のシンチレーション測定によってモニターした。非結合ペプチド−mRNA複合体を、4つの洗浄ステップによって除去した。次に、プロテインS被覆ビーズに結合しているペプチド/mRNA複合体を増幅し、次の選択過程に供した。プロテインS結合ペプチド−mRNA複合体の進行的濃縮が5つの選択過程を通じて観測された。例えば、過程2におけるペプチドの高度に厳密な選択は母集団の約99%を除外し、高い親和性バインダーの亜集団を残した。
【0080】
親和性試験を促進するため、mRNAディスプレイ(296ペプチド)によって同定されるユニークなペプチド配列を、N末端でビオチン化されたバリアントとして合成した。上述の様々なスクリーニングアッセイにおいてプロテインSに検出可能な親和性を持つペプチドを、ELISAに基づくEC50結合アッセイにおいてさらに特性決定した。簡潔に述べると、Nunc Polysorb MTPウェルを50μlのプロテインS(3μg/ml)で被覆し、2%の酵母抽出物及び0.1%のTween80でブロックした。ビオチン化したペプチドをプロテインS被覆ウェル及びブロックした対照用ウェル(プロテインSなし)でインキュベートした。いくつかの洗浄ステップの後、発色基質としてTMBを用いたストレプアビジン−HRPによって結合ペプチドが検出された。EC50値は、バックグラウンド補正し正規化した結合シグナルの非線形回帰によるペプチド滴定曲線から得られた。ペプチドの親和性は二桁マイクロモルからナノモル以下に及んだ(EC50)。mRNAディスプレイ及びスクリーニングアッセイによって同定した例示的なペプチドとしては、JBS0684(配列番号1)及びJBS2512(配列番号2)などがある。
【0081】
実施例2
本実施例では、追加プロテインS結合ペプチドの生成及びプロテインS結合の特性決定について記述する。本実施例は、血漿系血友病モデルについてさらに記述し、本明細書に記載のペプチドのプロテインS阻害活性について実証する。
【0082】
実施例1で同定されたペプチドは、プロテインS結合をさらに精査するため、そして改善された活性を持つペプチドを同定するため、置換解析にかけた。例えば、親ペプチドJBS2512の各アミノ酸位置を、8つの代表的なアミノ酸セット(Ala、Asp、Phe、Gly、Leu、Lys、Ser、Pro)によって別々に置換した。従って、1つの親ペプチドからおよそ160の新規ペプチド候補を作成した。これらの新規ペプチド候補の各々が、親ペプチドと比較して1つのアミノ酸が交換されている。
【0083】
新規ペプチド候補を合成し(純度>60%)、競合的結合アッセイ(ELISA IC50)で親和性を、トロンビン生成アッセイ(CAT)で活性をスクリーニングした。競合(IC50)ELISAを実施し、ビオチン化されたトレーサーペプチドJBS0684を用いて候補ペプチドとプロテインS結合において競合させた。トレーサーと競合するペプチドは、トレーサー(及び互い)と同じプロテインSの領域に結合する。96ウェルPolySorpプレート(Nunc)をコーティング緩衝液(15mMのNa
2CO
3、35mMのNaHCO
3、pH9.6)内で3μg/mLのプロテインSで一晩コーティングした。プレートを洗浄緩衝液(HNaT:175mMのNaCl、25mMのHEPES、5mMのCaCl
2、0.1%のTween80、pH7.35)で3回洗浄し、HNaT中100μlの2%酵母抽出物で少なくとも1時間ブロックした。次にプレートをHNaTで3回洗浄した。JBS0684を結合ELISAで判定したEC90値に対応した濃度で適用した。競合物のペプチド保存液(10mM)をHSAのないHNaTにて1/33.3に希釈し、連続の1/3希釈物をHNaTと共に3%のDMSOで調製した。希釈物をビオチン化トレーサーペプチドで1:6の比(20μlの競合希釈物及び100μlのトレーサーペプチド)でさらに希釈した。競合及びトレーサーペプチドの混合物をプロテインSでコーティングされたマイクロタイタープレートに適用し、1.5時間インキュベートした。プレートをHNaTで3回洗浄した。HRPコンジュゲートストレプトアビジンをマイクロタイタープレートに適用し、混合物を1時間インキュベートし、プレートをHNaTで3回洗浄し、TMB(3,3‘5,5’−テトラメチルベンジジン)を適用し、次に起こるHRPによるTMBの発色性変換を検出することによって、ペプチド−プロテインS結合を検出した。ペプチドのIC50測定値が本明細書で提供される(例えば、表3を参照されたい)。
【0084】
またペプチドに対し、血友病血漿におけるプロテインS/APC依存トロンビン生成向上の試験を、CATアッセイを用いて行った。プロテインSは、血漿内APCの抗凝固を強化する。CATアッセイは、外因性凝固経路によって開始されるAPCを介したトロンビン生成に対するプロテインSの影響を定量化する(Nicolaes,Blood Coagul.Fibrinolysis,8:28(1997))。APC(35nM)及びプロテインS(25nM)をプロテインSが枯渇した血漿に加え、血漿試料を、ヤギで産生した高力価の熱失活抗ヒトFVIII血漿(4490BU/ml;Baxter BioScience,Vienna,Autria;50BU/ml最終血漿濃度)と共にインキュベートした。血漿中のトロンビン形成は、Fluoroskan Ascent(登録商標)リーダー(Thermo Labsystems,Helsinki,Finland)の校正自動トロンボグラフィー(CAT)が追跡し、トロンビンピークの高さによって定量化した。トロンビン形成は、APC非存在時及びピークの高さを約20%まで低下させる濃度でのAPC存在時において、高い組織因子(TF)濃度で判定した。本明細書に記載のペプチドの、血漿中プロテインS(PS)のAPC補因子活性に対する阻害的効果は、APCを追加したFVIII阻害の貯留正常血漿にて測定された。完全な(100%)プロテインS/APC阻害は、APCの追加がない場合のトロンビンピークの高さである。PS/APC阻害の欠如(0%)は、一定の量のAPCを用いた場合のトロンビンピークの高さの値と相関がある。ペプチドの順位付けは、2つの規定されたペプチド濃度(EC50及びEC90)におけるSDを含めて野生型対照群の平均値と比較して正規化した値によって行った。
【0085】
例示的なCATアッセイ条件は、以下の通りである。プロテインSが枯渇した血漿に35nMのAPC及び35nMのプロテインSを補充した。保存APCを10pMのTF及び15μMのPLで希釈した。凍結乾燥したペプチドを100%のDMSOに溶解させ5mM保存濃度にして、HNABSA5緩衝液+0.1%のTween80でさらに希釈した。最終的なペプチド血漿濃度は140nM(EC90野生型)及び90nM(EC50野生型)だった。96ウェルImmulon 2HB(透明)U底(ThermoElectron)プレートに、80μl血漿(+CTI+Z994−5)、10μlペプチド希釈物、及び10μlのAPC−TF−PL混合物またはキャリブレーターを混合した。蛍光発生基質及びHEPES緩衝CaCl
2(100mM)を含有する20μLのFluCa試薬を各ウェルに分注することによってトロンビン生成を開始した。Fluoroskan Ascent(登録商標)リーダー(390nm励起及び460nm発光をフィルター)を用いて蛍光強度を37℃で記録した。得られたトロンビン生成曲線のパラメーターをThrombinoscope
(商標)ソフトウェア(Thrombinoscope)及びトロンビンキャリブレーターを用いて算出し、内部フィルター及び基質消費効果を補正した(Hemker,Pathophysiol Haemost Thromb,33:415(2003))。
【0086】
競合結合アッセイ及びCATアッセイの両方について、ペプチド候補を、親ペプチドよりすぐれた、類似した、または劣った活性を有するものとして特性決定した。分析によって、3つのN末端位及び13位、15位、及び17位のうちに位置する6つの異なる位置で強化的置換が明らかになった。許容的置換(活性に負の影響を与えなかった置換)を、1〜3位、11位、13位、15位、17位、18位、及び20位を含むいくつかの位置で同定した。強化的置換を持つ選定ペプチドを再合成して(純度>90%)ELISA IC50アッセイにかけた。結果を表2に示す。
【表2】
【0087】
mRNAディスプレイによる選定及び置換解析を経た多くのペプチドが、低ペプチド濃度の血漿系において、非常に良好なプロテインS/APC補因子活性阻害を示した。例えば、JBS2512は、CATアッセイにおいてプロテインSに対する非常に良好な結合親和性及び低いEC50値を示した。JBS2572は、HisからLeuへの非相同的置換を3位に有し、これはCATアッセイにおける親和性及び活性をJBS2512と比較して1.6倍増加させる。競合結合アッセイ(ELISA IC50)において、JBS2572は2.5±0.3nMのIC50を示した。JBS2572は、血友病血漿中のPS/APC依存トロンビン生成を向上させた。
【0088】
また、競合、相同的なユーロピウムベースのTR−FRETアッセイ(LANCE IC50アッセイ)においてJBS0684をトレーサー(すなわち、プロテインS結合の競合物)として用いてペプチドを特性決定した。以下の試薬をPerkin−Elmer ProxiPlate MTPウェルで混合した(表示濃度は最終濃度である):Eu標識プロテインS(10nM)、Ulight
(商標)標識ストレプトアビジン(100nM)、トレーサー(JBS0684(300nM))、及びペプチド(3倍希釈ステップで滴定)。最終量は、50μl/ウェルだった。反応混合物を1時間室温でインキュベートし、次に以下の機器設定を用いて665nmの蛍光発光をマルチモードリーダー(SpectraMax(登録商標)M5,Molecular Devices)に記録した:Ex 340nm、Em 665nm、delay 50μsec、integration 100μsec、reads 100。水溶性ユーロピウム標識プロテインSに対するトレーサーペプチドの結合が、アクセプターフルオロフォア(ULight
(商標))で標識されたストレプトアビジンによって検出された。非ビオチン化されたペプチドによるトレーサーのプロテインS結合阻害は、Eu標識プロテインSとULight
(商標)標識ストレプトアビジン間でTR−FRETが減少する結果をもたらす。665nm蛍光発光シグナルの非線形回帰を用いて、一定のトレーサー濃度におけるペプチド滴定曲線からIC50値を取得した。Molecular Devices M5リーダーを用いて、JBS2572は49±6nMのIC50値を示した。より低いプロテインS(2nM)及びトレーサー濃度(60nM)が使用可能なTecan F500リーダーを用いて追加的な測定を行った;JBS2572のLANCE IC50値は10nMの範囲内だった。
【0089】
またプロテインS親和性を、Biacore(Biacore3000またはBiacoreT200)によって、ヒト完全長プロテインS及びヒトGAS6を用いて判定した。簡潔に述べると、プロテインSまたはGAS6の1000RUをCM5チップ上に固定した。プロテインS結合ペプチドのプロテインSに対する動態を探るため、3mMのCaCl
2及び1%のDMSOを含有するHBS緩衝液中にある様々な濃度のペプチドをフローセルに注入し、センサーチップに固定したタンパク質と相互作用させた。チップは、HBS緩衝液中4MのMgCl
2で再生できた。センサーグラムをk
on及びk
offの決定及びK
Dの算出についてLangmuir結合モデルに適合させた。抗標的GAS6に関するペプチド結合の研究を用いて、ペプチドのプロテインSへの特異性について試験した。JBS2572がプロテインSへの結合について6nMのK
D(k
on=2.48×10
5 1/Ms,k
off=1.48×10
−3 1/s)を25℃で示した。37℃では、K
Dは3.8×10
−9(4nM)だった(k
on=1.14×10
6 1/Ms,k
off:4.31×10
−3 1/s)。
【0090】
実施例1及び2では、プロテインS結合ペプチドを生成及び特性決定する例示的な方法が提供される(例えば、プロテインS−阻害ペプチド)。ヒトプロテインSに結合する数百個のペプチドを同定した。例示的なペプチドの置換解析でさらなるプロテインS結合ペプチドが生成され、プロテインS結合ペプチド内における置換が許容的だった(すなわち、プロテインSへの親和性を保持した)こと及び、ある場合においては親和性が向上したことが実証された。多くのペプチドが、10μM未満の解離定数またはIC50でヒトプロテインSに結合していた。実施例は、EC50が10μM未満の血漿アッセイ系における本発明のペプチドのプロテインS補因子活性阻害をさらに実証する。生理的プロテインS濃度の存在下でin vitroでの活性が実証された。
【0091】
実施例3
本実施例は、本発明のペプチドが非プロテインSタンパク質(「抗標的」)に低減された親和性を示すことを実証する。
【0092】
プロテインSは、Glaドメイン(例えば、GAS6(Growth Arrest Specific−6遺伝子にコードされたタンパク質)、第VII因子、第IX因子、第X因子、プロテインC、プロテインZ、及びプロトロンビンのような)、EGF様ドメイン(例えば、GAS6、第VII因子、第IX因子、第X因子、プロテインC、プロテインZ、及びトロンボモジュリンのような)、及びラミニンG様ドメイン(例えば、GAS6)を含有する他の凝固系タンパク質の領域に高度に類似したドメインを含む。これらの他の凝固系タンパク質は、従って、潜在的な抗標的である。ヒトGAS6は、最もプロテインSに類似しているため(42%同一性、57%共通配列)、抗標的結合の判定に使用した。
【0093】
Biacore(表面プラズモン共鳴)によって抗標的GAS6との相互作用を測定した(実施例2を参照)。ペプチドのヒトGAS6との相互作用からの最大シグナルは、プロテインSが相互作用パートナーの場合に取得したシグナルよりもはるかに低かった。低いGAS6結合シグナルの動態解析はエラーが起きやすかったため、センサーグラムを視覚的に検討して抗標的結合を推定した。JBS2572は、1μM濃度でGAS6との特異的な結合を示さなかった。JBS2572の抗標的に対する親和性は、当該ペプチドのヒトプロテインSに対する親和性より少なくとも10倍(実際は、少なくとも150倍)小さかった。本実施例によって提供されたデータは、本明細書に記載のペプチドが特異的にプロテインSと結合することを確証するものである。
【0094】
実施例4
ヒトプロテインSに対する親和性が増加したペプチドは、JBS2572(配列番号62)の配列を基にしたライブラリーを部分的に無作為化したものから取得した。高親和性結合物の選定は、実施例1及び2に記載した方法に類似した方法を用いたmRNAディスプレイ及びスクリーニングアッセイによって達成した。ペプチドプールに適用された選定条件は、プロテインSへの増加した結合シグナルを結果としてもたらした。3つの選択過程からの強化されたペプチドプールを配列決定し、例えばJBS3216〜3223(配列番号462〜469)及びJBS3231〜3314(配列番号477〜560)のアミノ酸配列を得た。親和性成熟プールからのいくつかのペプチドを化学的に修飾した。JBS3319を40kDのPEG部分とコンジュゲートさせ、JBS3318(配列番号564)を得た。JBS3319単量体が4本のアームの10kDのPEG部分で一緒になった四量体は、JBS3321(配列番号567)を得た。JBS3179(配列番号433)は、40kDのPEG部分を含むJBS3206四量体である。JBS3322(配列番号568)は、40kDのPEG部分を含むJBS3206単量体である。
【0095】
18の代表的なペプチド(JBS3216、JBS3218、JBS3221、JBS3223、JBS3232、JBS3235、JBS3236、JBS3258、JBS3260、JBS3263、JBS3274、JBS3281、JBS3283、JBS3284、JBS3296、JBS3297、JBS3306、及びJBS3314)について、Biacore及びLANCE IC50アッセイによってプロテインS結合親和性を評価した。ペプチドのプロテインS活性阻害能をCATアッセイによって判定し、血漿安定性についても調べた。
【0096】
18のペプチド全ての親和性及び活性が、親のJBS2572と比較して向上していた。結果は、本明細書に記載のペプチドのアミノ酸配列内での複数の置換が許容的である(すなわち、ペプチドがプロテインSと結合する能力を損なっていない)ことを実証している。例えば、JBS2572の配列中7つのアミノ酸位置での置換(1〜3位、13位、15位、17位、及び20位)を含むJBS3216及びJBS2512は、親ペプチドJBS2572(K
D=4nM)よりもプロテインSに対する高い親和性(K
D=0.2nM)を示した。実際、最適化されたペプチドは、1×10
−4〜6×10
−4s
−1の範囲のk
offでpM親和性(20倍の向上)を示した。活性及び安定性は、1.5倍まで向上した。上述の内容に類似した方法を用いた例示的なBiacoreの結果を表4に示す。貯留された正常血漿及びマウス血漿において37℃で血漿安定性を判定した;例示的な結果も表3に示す。安定性解析においても、ヒト血漿内での24時間のインキュベーション後、JBS3318、JBS3179、及びJBS3322について80%を超える結合活性、及びJBS3216について約50%結合活性が残存していることが明らかになった。JBS3179、JBS3318、及びJBS3322はまた、抗標的であるGAS6(1μM)と相互作用しないと判定された。
【表3】
【0097】
重度の血友病Aにかかっている3人の個体の血漿におけるペプチドの阻害活性をCATアッセイ(すなわち、トロンビン系のAPC抵抗試験)にて解析した。例えばJBS3179、JBS3318、及びJBS3322では100nMより低いEC50で血漿内のプロテインS/APC依存トロンビン生成が向上した。JBS3179はCATアッセイで6nMのEC50を示し、JBS3216についてもヒト血友病A患者血漿におけるCATアッセイでの凝固が効率的に向上した(EC50=85nM)。JBS3216についてもいくつかの非ヒト哺乳類:カニクイザル、キヌザル、ブタ、ヒツジ、イヌ、ウサギ、ラット、及びマウス、におけるトロンビン生成が向上した。
【0098】
JBS3179もin vivoでの有益な活性を示した。ペプチドは、25U/kgのADVATEと投与の際は血友病マウス尾切断モデルにおける出血を用量依存的に低減し、サブ効果のあるFVIII用量と同時投与の際は関節血症の血友病Aマウスモデルにおける関節出血を大きく低減し、血友病誘発ウサギモデルにおけるex vivoのトロンビン形成を向上させた。
【0099】
実施例5
本実施例では、プロテインSと結合する追加のペプチドについて記述し、本明細書に記載のペプチドにおけるアミノ酸配列内での可変性がプロテインS結合及び阻害に関して許容的であることを実証する。
【0100】
JBS2572アミノ酸配列において複数の置換を有するいくつかのペプチドを合成し、上述したLANCE IC50及びCATアッセイを用いて評価した。アッセイについては、貯留された正常血漿に3nMのAPCを補充し、6pMのTF及び15μMのリン脂質(DOPC/POPS 80/20)でトリガーした。保存APCをTF−PL混合物で24nMに希釈した(血漿濃度:3nM)。例示的な結果を表4に示す。解析は、1位、4位、5位、13位、15位、及び17位にフォーカスし、親配列内での複数の置換が許容的であり、多くの場合において、JBS2572親配列内に1つの置換を有するペプチドと比較して結合親和性及び阻害活性を増加させることを示した。
【表4】
【0101】
実施例6
本実施例では、本明細書に記載のペプチドがプロテインS(PS)のC4BPに対する結合を妨害する能力について実証する。C4BPは、7つの同一なα鎖(MW 70kDa)及びより小さなベータ鎖(45kDa)を含有する、タコに類似する分子である。プロテインSはβ鎖に結合し、プロテインSのC4BPとの複合体形成は、プロテインSのAPC補因子活性を消失させる。カルシウムイオン存在下におけるプロテインS及びC4BPの解離定数は、約0.5nMである。この高い親和性のため、遊離PSのレベルはβ鎖含有C4BPに対するモル過剰に対応している。
【0102】
本明細書に記載のペプチドのPS/C4BP複合体に対する影響を調べるため、上述の方法に類似した方法を用いてLANCE IC50アッセイを確立した。JBS2572またはJBS3216を、事前に作られたC4BP/PS複合体に加えた。複合体の濃度に変化があった後、TR−FRETシグナルを記録した。両方のペプチドについて、C4BP/PS複合体の時間及び濃度依存の解離が観測された。JBS3216のIC50は0.3nM、JBS2572のIC50は2nMであった。複合体減少の時間依存性は、両方のペプチドについて類似していた。100nMのJBS2572またはJBS3216の存在下における2時間のインキュベーション後、C4BP/PS複合体はそれぞれ60%及び50%減少していた。加えて、LANCE IC50アッセイにおいて、ビオチン化されたJBS2572のプロテインSに対する結合がC4BPによって阻害されていた。JBS2697をストレプトアビジンセファロースに結合させて、(a)プロテインS(1.6pmol)、(b)C4BP(8.5pmol)、及び(c)プロテインS(1.6pmol)+C4BP(8.5pmol)と共に室温で1時間インキュベートしたプルダウン式実験は、改変したLANCE IC50アッセイの結果を支持するものだった。JBS2697は、プロテインSのみを用いた実験(a)ならびにC4BP及びプロテインSの混合物を用いた実験(c)でのみ、遊離プロテインSと相互作用した。
【0103】
これらの発見は、本明細書に記載のペプチドが時間依存的様式において一定nM濃度で事前に作られたC4BP/PS複合体のフラクションを低減しうることを実証している。ペプチドによるC4BP/PS相互作用の中断(逆も同様)は、C4BP/PS複合体の競合的またはアロステリックな阻害性に由来しうる。C4BPのプロテインSに対する結合部位は、プロテインSのラミニンGドメインに0.1〜0.6nMのK
Dで位置づけられていた。従って、ラミニンGドメインは、ペプチドとプロテインS間の相互作用に関係していると思われる。タンパク質限定加水分解を用いた結合部位マッピング実験は、この観測を支持するものである。タンパク質分解フラグメントのN末端配列決定は、プロテインSのLG1ドメイン内のペプチド保護領域を同定した。これは、LG1ドメインがペプチドの標的結合領域であることを強く示唆するものである。