(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、評価対象の構造物に対応した解析モデルを詳細に構築して解析を実施するためには、当該構造物についての設計条件が示された設計計算書又は図面等の情報が必要であり、それらの情報から解析モデルを構築するためには、長い作業時間と専門知識を要し、そのために高額の費用を要する。
【0007】
本発明は、上述のような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、評価対象の構造物に対応した解析モデルを構築することなく、数種類の構造物に関するパラメータを特定することで構造物の振動特性を容易に評価することができることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0009】
本発明の一態様としての振動特性評価方法は、構造物の振動特性を評価するものである。当該振動特性評価方法は、構造物を特定するための複数の特定パラメータの値を設定し、設定された複数の特定パラメータの値により特定される構造物の振動特性を表す複数の振動パラメータの値を取得することにより、構造物についての複数の特定パラメータの値と複数の振動パラメータの値とを含む組データを取得する(a)ステップを有する。当該振動特性評価方法は、複数の特定パラメータの値を構造物としてあり得る範囲内で網羅的に変更しながら(a)ステップを繰り返すことにより、複数の組データを取得し、取得された複数の組データが格納されたデータベースを作成する(b)ステップを有する。そして、当該振動特性評価方法は、データベースを用いて評価対象の構造物の振動特性を評価する(c)ステップを有する。
【0010】
また、他の一態様として、(c)ステップでは、(b)ステップの後、評価対象の構造物についての複数の特定パラメータの値を設定し、設定された評価対象の構造物についての複数の特定パラメータの値と、データベースに格納された複数の組データに含まれる複数の特定パラメータの値とを比較することにより、複数の組データから、評価対象の構造物に類似した構造物についての組データを選択し、選択された組データに含まれる複数の振動パラメータの値を用いて、評価対象の構造物の振動特性を評価してもよい。
【0011】
また、他の一態様として、(a)ステップでは、データベース作成用の構造物を設定し、設定されたデータベース作成用の構造物についての複数の特定パラメータの値を設定し、設定された複数の特定パラメータの値と、データベース作成用の構造物に対応した解析モデルと、を用いた解析を行って複数の振動パラメータの値を取得することにより、組データを取得してもよい。そして、(b)ステップでは、設定されるデータベース作成用の構造物を構造物としてあり得る範囲内で網羅的に変更しながら(a)ステップを繰り返すことにより、複数の組データを取得し、取得された複数の組データが格納されたデータベースを作成してもよい。
【0012】
また、他の一態様として、複数の特定パラメータは、構造物の設計年代を表す第1パラメータと、構造物の構造種別を表す第2パラメータと、構造物の基礎形式を表す第3パラメータと、を含んでもよい。
【0013】
また、他の一態様として、第2パラメータの値は、ラーメン高架橋又は橋脚に設定され、第3パラメータの値は、直接基礎形式、杭基礎形式又はケーソン基礎形式に設定されてもよい。
【0014】
また、他の一態様として、複数の特定パラメータは、構造物の軌道形式を表す第4パラメータと、構造物の構造高さを表す第5パラメータと、構造物の断面幅を表す第6パラメータと、構造物の鉄筋比を表す第7パラメータと、構造物の地盤種別を表す第8パラメータと、を含んでもよい。
【0015】
また、他の一態様として、第4パラメータの値は、スラブ軌道若しくはバラスト軌道、又は、橋脚のような構造物の場合には桁形式を含む値が設定されてもよい。
【0016】
また、他の一態様として、複数の振動パラメータは、構造物の等価固有周期を表す第9パラメータと、構造物の降伏震度を表す第10パラメータと、を含んでもよい。
【0017】
また、他の一態様として、振動特性評価方法は、鉄道構造物の振動特性を評価するものであってもよい。
【0018】
本発明の一態様としてのデータベース作成方法は、構造物の振動特性を評価するためのデータベースを作成するものである。当該データベース作成方法は、構造物を特定するための複数の特定パラメータの値を設定し、設定された複数の特定パラメータの値により特定される構造物の振動特性を表す複数の振動パラメータの値を取得することにより、構造物についての複数の特定パラメータの値と複数の振動パラメータの値とを含む組データを取得する(a)ステップを有する。そして、当該データベース作成方法は、複数の特定パラメータの値を構造物としてあり得る範囲内で網羅的に変更しながら(a)ステップを繰り返すことにより、複数の組データを取得し、取得された複数の組データが格納されたデータベースを作成する(b)ステップを有する。
【0019】
また、他の一態様として、データベースは、評価対象の構造物についての複数の特定パラメータの値を設定し、設定された評価対象の構造物についての複数の特定パラメータの値と、データベースに格納された複数の組データに含まれる複数の特定パラメータの値とを比較することにより、複数の組データから、評価対象の構造物に類似した構造物についての組データを選択し、選択された組データに含まれる複数の振動パラメータの値を用いて、評価対象の構造物の振動特性を評価するためのものであってもよい。
【0020】
本発明の一態様としての振動特性評価装置は、構造物の振動特性を評価するものである。当該振動特性評価装置は、構造物を特定するための複数の特定パラメータの値を設定し、設定された複数の特定パラメータの値により特定される構造物の振動特性を表す複数の振動パラメータの値を取得することにより、構造物についての複数の特定パラメータの値と複数の振動パラメータの値とを含む組データを取得する取得処理を、複数の特定パラメータの値を構造物としてあり得る範囲内で網羅的に変更しながら繰り返すことにより、複数の組データを取得し、取得された複数の組データが格納されたデータベースを作成する作成部を有する。そして、当該振動特性評価装置は、データベースを用いて評価対象の構造物の振動特性を評価する評価部を有する。
【0021】
また、他の一態様として、評価部は、評価対象の構造物についての複数の特定パラメータの値を設定し、設定された評価対象の構造物についての複数の特定パラメータの値と、データベースに格納された複数の組データに含まれる複数の特定パラメータの値とを比較することにより、複数の組データから、評価対象の構造物に類似した構造物についての組データを選択し、選択された組データに含まれる複数の振動パラメータの値を用いて、評価対象の構造物の振動特性を評価してもよい。
【0022】
また、他の一態様として、作成部は、データベース作成用の構造物を設定し、設定されたデータベース作成用の構造物についての複数の特定パラメータの値を設定し、設定された複数の特定パラメータの値と、データベース作成用の構造物に対応した解析モデルと、を用いた解析を行って複数の振動パラメータの値を取得することにより、組データを取得する取得処理を、設定されるデータベース作成用の構造物を構造物としてあり得る範囲内で網羅的に変更しながら繰り返すことにより、複数の組データを取得し、取得された複数の組データが格納されたデータベースを作成してもよい。
【0023】
また、他の一態様として、複数の特定パラメータは、構造物の設計年代を表す第1パラメータと、構造物の構造種別を表す第2パラメータと、構造物の基礎形式を表す第3パラメータと、を含んでもよい。
【0024】
また、他の一態様として、複数の特定パラメータは、構造物の軌道形式を表す第4パラメータと、構造物の構造高さを表す第5パラメータと、構造物の断面幅を表す第6パラメータと、構造物の鉄筋比を表す第7パラメータと、構造物の地盤種別を表す第8パラメータと、を含んでもよい。
【0025】
また、他の一態様として、複数の振動パラメータは、構造物の等価固有周期を表す第9パラメータと、構造物の降伏震度を表す第10パラメータと、を含んでもよい。
【0026】
本発明の一態様としてのデータベース作成装置は、構造物の振動特性を評価するためのデータベースを作成するものである。当該データベース作成装置は、構造物を特定するための複数の特定パラメータの値を設定し、設定された複数の特定パラメータの値により特定される構造物の振動特性を表す複数の振動パラメータの値を取得することにより、構造物についての複数の特定パラメータの値と複数の振動パラメータの値とを含む組データを取得する取得処理を、複数の特定パラメータの値を構造物としてあり得る範囲内で網羅的に変更しながら繰り返すことにより、複数の組データを取得し、取得された複数の組データが格納されたデータベースを作成する作成部を有する。
【0027】
また、他の一態様として、データベースは、評価対象の構造物についての複数の特定パラメータの値を設定し、設定された評価対象の構造物についての複数の特定パラメータの値と、データベースに格納された複数の組データに含まれる複数の特定パラメータの値とを比較することにより、複数の組データから、評価対象の構造物に類似した構造物についての組データを選択し、選択された組データに含まれる複数の振動パラメータの値を用いて、評価対象の構造物の振動特性を評価するためのものであってもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明の一態様を適用することで、評価対象の構造物に対応した解析モデルを構築することなく、構造物の振動特性を容易に評価することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0031】
なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実施の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0032】
また本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0033】
(実施の形態)
本発明の一実施形態である実施の形態の振動特性評価装置及び振動特性評価方法について、比較例の振動特性評価装置及び振動特性評価方法と比較しながら説明する。本実施の形態の振動特性評価装置及び振動特性評価方法は、データベースとしての構造物インベントリーデータベースを作成し、作成されたデータベースとしての構造物インベントリーデータベースを用いて評価対象の構造物の振動特性を評価するものである。
【0034】
インベントリーとは、「商品や財産などの目録、あるいは商品や財産の目録を作成する在庫調査や棚卸」という意味であり、この内容を発展させて分野ごとに述語として用いられている用語である。従って、構造物の諸元と関連付けインベントリーデータベースを構築する場合には、構造物の諸元から振動特性を求めるための目録的意味合いとなる。
【0035】
詳細は後述するものの、本実施の形態の振動特性評価装置及び振動特性評価方法は、前述したように、構造物インベントリーデータベースを作成し、作成された構造物インベントリーデータベースを用いて評価対象の構造物の振動特性を評価する点に、特徴を有する。
【0036】
なお、本実施の形態では、振動特性評価装置及び振動特性評価方法が、鉄道構造物の振動特性を評価するものである場合を例示して説明する。しかし、本実施の形態の振動特性評価装置及び振動特性評価方法は、複数の場所に互いに種類が異なる複数の構造物が設置されている場合に、適用可能である。従って、本実施の形態の振動特性評価装置及び振動特性評価方法は、複数の場所に互いに種類が異なる複数の構造物が設置されている場合には、鉄道用以外の用途の構造物の振動特性を評価する場合にも、適用可能である。
【0037】
また、本実施の形態では、振動特性評価装置及び振動特性評価方法が、地震動を受けた構造物の振動特性を評価するものである場合を例示して説明する。しかし、本実施の形態の振動特性評価装置及び振動特性評価方法は、例えば鉄道車両が通行する際の振動等、地震動以外の振動を受けた構造物の振動特性を評価する場合にも、適用可能である。
【0038】
また、本実施の形態の振動特性評価装置及び振動特性評価方法は、構造物の耐震性能を評価する耐震性能評価装置及び耐震性能評価方法に適用可能である。
【0039】
<比較例の振動特性評価装置及び振動特性評価方法>
図1は、比較例の振動特性評価装置を示すブロック図である。
図2は、比較例の振動特性評価方法を示すフロー図である。
図3は、等価固有周期と降伏震度を説明するための図である。
図4は、解析モデルの一例を示す図である。
【0040】
図1に示すように、比較例の振動特性評価装置110は、評価対象の構造物の振動特性を評価する評価部112を有する。
【0041】
また、
図2に示すように、比較例の振動特性評価方法は、評価対象の構造物の振動特性を評価する評価ステップ(ステップS112)を有する。
【0042】
図1及び
図2に示すように、評価部112は、ステップS112では、評価対象の構造物に関する地盤、部材、荷重条件など膨大な解析パラメータを設定し、設定されたパラメータにより特定される評価対象の構造物の振動特性を表す複数の振動パラメータの各々の値を取得する。
【0043】
具体的には、評価ステップ(ステップS112)は、解析パラメータ設定ステップ(ステップS116)と、振動パラメータ取得ステップ(ステップS118)と、を含む。評価部112は、ステップS116では、評価対象の構造物についての膨大な解析パラメータの各々の値を設定する。また、評価部112は、ステップS118では、設定された膨大な解析パラメータの各々の値に基づき構築された評価対象の構造物に対応した解析モデルを用いた解析を行って、評価対象の構造物についての複数の振動パラメータの各々の値を取得する。
【0044】
ここで、構造物の地震時挙動を評価するためには、評価部112は、複数の振動パラメータとして、等価固有周期T
eq及び降伏震度K
hyを含む複数の振動パラメータを評価する。
図3は、構造物の上端における水平変位と震度との関係、即ち構造物の弾塑性特性を示す。この弾塑性特性を示す曲線上の降伏点Yにおける震度が降伏震度K
hyであり、降伏点Yにおける水平変位が降伏変位δ
yである。また、等価固有周期T
eqは弾塑性特性を踏まえた構造物の周期特性を示す指標で、降伏点Yと原点とを結んだ直線L1の傾き(割線剛性)を用いて評価される。
【0045】
上記した等価固有周期T
eq及び降伏震度K
hyを含む複数の振動パラメータを評価するためには、解析モデルを詳細に構築即ち作成し、構築された解析モデルを用いてプッシュ・オーバー解析等の解析を行うことが望ましい。また、鉄道構造物の耐震設計標準においては、梁ばね系の解析モデルを用いて解析を行うことが推奨されている。
【0046】
しかし、比較例の振動特性評価装置及び振動特性評価方法では、評価対象の構造物に対応した解析モデルを詳細に構築して解析を実施するためには、当該構造物についての設計条件が示された設計計算書又は図面等の情報が必要であり、それらの情報から解析モデルを構築するためには、長い作業時間と高い専門知識を要し、そのために高額の費用を要する。
【0047】
図4は、構造物の解析モデルの例を示す図である。
図4は、杭基礎形式を有する杭RC(Reinforced Concrete:鉄筋コンクリート)橋脚の動的解析モデルの例を示す。
図4に示すように、杭RC橋脚としての橋脚30は、橋脚本体31と、フーチング32と、3本の基礎杭33と、を有する。橋脚本体31、フーチング32及び3本の基礎杭33の各々は、解析モデルにおいて、複数の節点34と、互いに隣り合う2つの節点34を接続する梁要素35と、により表される。また、
図4では図示を省略するが、節点34のうち、基礎杭33を表すものである節点34aについては、地面36よりも下方に配置されているため、ばね要素を介して、周辺の地盤に接続されている。
【0048】
ここで、構造物の解析モデルにおいては、通常、数百個の節点、数百個のばね要素、及び、数百個の梁要素が設定される場合がある。
図4に示す杭RC橋脚としての橋脚30の解析モデルとしても、例えば218個の節点、163個の梁要素、及び、347個のばね要素が設定された例がある。また、解析モデルを用いた解析を実行するためには、それらの数百個の節点、数百個のばね要素、及び、数百個の梁要素に、適切な質量、適切な剛性、並びに、骨格曲線及び履歴曲線等の非線形特性、を含む多種多様な情報を設定して入力する必要がある。そして、それらの情報を整理又は入力等するためには、長い作業時間と高い専門知識を要し、そのために高額の費用を要する。
【0049】
更に、評価対象の構造物が設計年代の古い構造物である場合には、設計計算書又は図面等の情報が完全に残っていない場合があるので、評価対象の構造物に対応した解析モデルを容易に構築できず、評価対象の構造物の振動特性を評価できないおそれがある。
【0050】
<本実施の形態の振動特性評価装置及び振動特性評価方法>
次に、
図5乃至
図7を参照し、本実施の形態の振動特性評価装置及び振動特性評価方法について説明する。
【0051】
図5は、実施の形態の振動特性評価装置を示すブロック図である。
図6及び
図7は、実施の形態の振動特性評価方法を示すフロー図である。
【0052】
図5に示すように、本実施の形態の振動特性評価装置10は、データベースとしての構造物インベントリーデータベースを作成する作成部11と、作成されたデータベースとしての構造物インベントリーデータベースを用いて評価対象の構造物の振動特性を評価する評価部12と、を有する。
【0053】
また、
図6及び
図7に示すように、本実施の形態の振動特性評価方法は、データベースとしての構造物インベントリーデータベースを作成する作成ステップ(ステップS11)と、作成されたデータベースとしての構造物インベントリーデータベースを用いて評価対象の構造物の振動特性を評価する評価ステップ(ステップS12)と、を有する。
【0054】
なお、本願明細書において、構造物インベントリーデータベースとは、構造物の諸元から振動特性を求める、即ちピックアップするための目録としてのデータベースを意味する。また、以下では、「構造物インベントリーデータベース」は、単に「データベース」とも称される。
【0055】
本実施の形態の振動特性評価装置10のうち作成部11は、構造物の振動特性を評価するためのデータベースを作成するデータベース作成装置である。また、本実施の形態の振動特性評価方法のうち作成ステップ(ステップS11)は、構造物の振動特性を評価するためのデータベースを作成するデータベース作成方法である。
【0056】
図5及び
図6に示すように、作成部11は、ステップS11では、構造物を特定するための複数の特定パラメータの各々の値を設定し、設定された複数の特定パラメータの各々の値により特定される構造物の振動特性を表す複数の振動パラメータの各々の値を取得することにより、構造物についての複数の特定パラメータの各々の値と複数の振動パラメータの各々の値とを含む組データを取得する取得処理としての組データ取得ステップ(ステップS13)を行う。そして、作成部11は、ステップS11では、複数の特定パラメータの各々の値を構造物としてあり得る範囲内で網羅的に変更しながらステップS13を繰り返すことにより、複数の組データを取得し、取得された複数の組データが格納されたデータベースを作成する。
【0057】
即ち、作成部11は、構造物を特定するための複数の特定パラメータの各々の値を設定し、設定された複数の特定パラメータの各々の値により特定される構造物の振動特性を表す複数の振動パラメータの各々の値を取得することにより、構造物についての複数の特定パラメータの各々の値と複数の振動パラメータの各々の値とを含む組データを取得する取得処理を、複数の特定パラメータの各々の値を構造物としてあり得る範囲内で網羅的に変更しながら繰り返すことにより、複数の組データを取得し、取得された複数の組データが格納されたデータベースを作成する。
【0058】
このようなデータベースとしての構造物インベントリーデータベースを事前に用意しておき、この構造物インベントリーデータベースから評価対象の構造物に類似した構造物についての振動パラメータの値を選択することで評価対象の構造物の振動特性を評価することができる。そのため、評価対象の構造物に対応した解析モデルを評価する度に構築することなく、構造物の振動特性を容易に評価することができ、地震動を受けた構造物の地震応答、即ち地震時挙動を評価することができる。従って、評価対象の構造物の振動特性の評価に要する作業時間を大幅に短縮することができる。また、評価対象の構造物の振動特性の評価に要する費用を低減することができる。更には、評価対象の構造物が設計年代の古い構造物であり、設計計算書又は図面等の情報が完全に残っていない場合でも、構造物の高さや設計年代、断面幅がわかることによって多少のばらつきはあるものの評価対象の構造物の振動特性を評価することができる。
【0059】
前述したように、構造物の振動特性として、等価固有周期T
eq及び降伏震度K
hyを含む複数の振動パラメータを評価することが好ましい。例えば等価固有周期T
eq(例えば0.1〜1秒程度)が、地震動の周期に近いか否か、又は、降伏震度K
hyが想定される地震時の水平震度よりも小さいか否かを評価することにより、構造物の地震時の被害の程度を予測することができる。
【0060】
即ち、本実施の形態では、地震時の構造物の非線形挙動に与える感度が大きい複数のパラメータを複数の特定パラメータとして抽出し、複数の特定パラメータに対応した構造物の振動特性を表す、等価固有周期T
eq又は降伏震度K
hy等の複数の振動パラメータの各々の値を事前に収集してデータベースとしての構造物インベントリーデータベースに格納することにより、1質点系の動的解析による地震時挙動を容易に評価することができる。
【0061】
具体的には、組データ取得ステップ(ステップS13)は、特定パラメータ設定ステップ(ステップS14)と、振動パラメータ取得ステップ(ステップS15)と、を含む。作成部11は、ステップS14では、構造物を特定するための複数の特定パラメータの各々の値を設定する。また、作成部11は、ステップS15では、設定された複数の特定パラメータの各々の値により特定される構造物の振動特性を表す複数の振動パラメータの各々の値を取得する。
【0062】
ここで、振動特性を表す複数の振動パラメータの各々の値を取得する方法として、詳細な計算書からの情報を利用して複数の振動パラメータの各々の値を収集して取得する方法、又は、想定し得る複数の特定パラメータの各々の値を用いて網羅的なプッシュ・オーバー解析を事前に行うことにより複数の振動パラメータの各々の値を算出して取得する方法が考えられる。プッシュ・オーバー解析とは、漸増載荷解析とも称され、橋梁等の耐震解析の一手法であり、地盤及び構造物の非線形を考慮した解析モデルに対して、地震荷重を静的に漸増載荷して荷重と変位との関係を得るものである。
【0063】
好適には、作成部11は、組データ取得ステップ(ステップS13)では、データベース作成用の構造物、即ち構造物インベントリーデータベース作成用の構造物を設定し、設定されたデータベース作成用の構造物についての複数の特定パラメータの各々の値を設定し、設定された複数の特定パラメータの各々の値と、データベース作成用の構造物に対応した解析モデルと、を用いた解析を行って複数の振動パラメータの各々の値を取得することにより、組データを取得する。このとき、作成部11は、特定パラメータ設定ステップ(ステップS14)では、設定されたデータベース作成用の構造物についての複数の特定パラメータの各々の値を設定する。また、作成部11は、振動パラメータ取得ステップ(ステップS15)では、設定されたデータベース作成用の構造物についての複数の振動パラメータの各々の値を取得する。
【0064】
そして、作成部11は、ステップS11では、設定されるデータベース作成用の構造物を構造物としてあり得る範囲内で網羅的に変更しながらステップS13を繰り返すことにより、複数の組データを取得し、取得された複数の組データが格納されたデータベースを作成する。このとき、作成部11は、ステップS13を行った後、設定されるデータベース用の構造物を変更することにより、データベース作成用の構造物についての複数の特定パラメータの各々の値を構造物としてあり得る範囲内で網羅的に変更し、再びステップS13を行う。
【0065】
これにより、複数の特定パラメータの各々の値と、複数の振動パラメータの各々の値とを含む組データを、構造物と関連付けて取得し、データベースに格納することができる。
【0066】
構造物としてあり得る範囲内で網羅的に変更するとは、特定パラメータの組合せとして、例えば数万ケース程度、好ましくは例えば数十万ケース程度、より好ましくは例えば数百万ケース程度の組合せ数を網羅することを意味する。
【0067】
このようにしてデータベースが作成された後(ステップS11の後)、
図5及び
図7に示すように、評価部12は、評価ステップ(ステップS12)では、評価対象の構造物についての複数の特定パラメータの各々の値を設定する。また、評価部12は、評価ステップ(ステップS12)では、設定された評価対象の構造物についての複数の特定パラメータの各々の値と、データベースに格納された複数の組データに含まれる複数の特定パラメータの各々の値とを比較することにより、複数の組データから、即ち構造物インベントリーデータベースの中から、評価対象の構造物に類似した構造物についての組データを選択する。そして、評価部12は、評価ステップ(ステップS12)では、選択された組データに含まれる複数の振動パラメータの各々の値を用いて、評価対象の構造物の振動特性を評価する。
【0068】
即ち、評価部12は、地震時挙動を評価するために、評価対象の構造物について、複数の特定パラメータの各々の値を調査し、データベースとしての構造物インベントリーデータベースから、複数の特定パラメータの各々の値の組合せが評価対象の構造物と類似した構造物又は構造物群を抽出する。そして、評価対象の構造物と類似した構造物又は構造物群に対応した解析モデルを用いて地震応答解析を行う。具体的には、評価対象の構造物と類似した構造物の等価固有周期T
eq又は降伏震度K
hy等の振動特性を表す振動パラメータが構造物インベントリーデータベース中に格納されているので、その振動パラメータを用いて例えば非線形スペクトル法を行うことにより、構造物の地震挙動を把握することができる。これにより、評価対象の構造物の解析モデルを構築することなく、地震時挙動即ち振動特性を評価することができ、作業時間を大幅に短縮することができる。
【0069】
なお、「構造物又は構造物群」と表記しているのは、ある評価対象の構造物に類似した構造物は1つとは限らないためである。そのため、本実施の形態の振動特性評価方法を行って得られた評価結果は、例えば等価固有周期T
eq又は降伏震度K
hyがある程度の範囲の広がりを有する場合がある。
【0070】
具体的には、評価ステップ(ステップS12)は、特定パラメータ設定ステップ(ステップS16)と、組データ選択ステップ(ステップS17)と、振動パラメータ取得ステップ(ステップS18)と、を含む。評価部12は、ステップS16では、評価対象の構造物についての複数の特定パラメータの各々の値を設定する。また、評価部12は、ステップS17では、評価対象の構造物に類似した構造物についての組データを選択する。そして、評価部12は、ステップS18では、評価対象の構造物についての複数の振動パラメータの各々の値を取得する。このような方法により、評価部12は、評価対象の構造物の振動特性を評価することができる。
【0071】
例えば、評価対象の構造物についてのある特定パラメータに着目したとき、データベースに格納された複数の組データのうち、評価対象の構造物についての当該特定パラメータの値と等しい、又は、当該特定パラメータの値と最も近い当該特定パラメータの値を有する組データを選択することができる。
【0072】
次に、
図8を参照し、本実施の形態の振動特性評価方法における網羅的なプッシュ・オーバー解析を用いた場合の具体的なデータベースの作成方法について説明する。
図8は、実施の形態の振動特性評価方法において構造物の振動特性を評価するためのデータベースを作成する方法を説明するための図である。
図8(a)は、複数の特定パラメータを例示し、
図8(b)は、複数の解析モデルを例示し、
図8(c)は、データベースを例示している。
【0073】
図8(a)に示すように、本実施の形態の振動特性評価方法では、構造物を特定するための複数の特定パラメータとして、構造物の振動特性に及ぼす影響、又は、地震時の構造物の非線形挙動に与える感度が大きい、例えば8つのパラメータP1乃至P8を用いる。このような場合、複数の特定パラメータは、「設計年代」、「構造種別」、「軌道形式」、「基礎形式」、「構造高さ」、「断面幅」、「鉄筋比」及び「地盤種別」の8つのパラメータP1乃至P8を含む。
【0074】
「設計年代」(パラメータP1)は、構造物が設計された年代、即ち構造物の設計年代を表すパラメータである。「設計年代」の値は、例えば1970年代等に設定される。
【0075】
「構造種別」(パラメータP2)は、構造物の構造の種別、即ち構造種別を表すパラメータである。構造物が高架橋又は橋梁である場合には、構造種別の値は、例えばラーメン高架橋又は橋脚に設定される。
【0076】
「軌道形式」(パラメータP3)は、構造物の軌道の形式、即ち構造物の軌道形式を表すパラメータである。「軌道形式」は、例えばスラブ軌道若しくはバラスト軌道、又は、構造物が橋脚である場合には桁形式を含む値に設定される。
【0077】
「基礎形式」(パラメータP4)は、構造物の基礎の形式、即ち構造物の基礎形式を表すパラメータである。「基礎形式」の値は、例えば直接基礎形式、杭基礎形式又はケーソン基礎形式に設定される。
【0078】
「構造高さ」(パラメータP5)は、構造物の高さ、即ち構造物の構造高さを表すパラメータである。
【0079】
「断面幅」(パラメータP6)は、構造物の断面幅を表すパラメータである。構造物が例えば柱等の部材を有する場合、「断面幅」は、当該柱等の部材の断面幅を表すパラメータである。また、「断面幅」は、構造物又は構造物に含まれる部材についての、軌道に沿った方向とその方向に垂直な断面における幅である。
【0080】
「鉄筋比」(パラメータP7)は、構造物の鉄筋比を表すパラメータである。構造物の引張鉄筋比を表すパラメータは、「引張鉄筋比」と称される。また、構造物の帯鉄筋比を表すパラメータは、「帯鉄筋比」と称される。
【0081】
「地盤種別」(パラメータP8)は、構造物が設置されている地盤の種別、即ち構造物の地盤種別を表すパラメータである。「地盤種別」の値は、例えば「G3地盤」といった地盤の分類による表現や「地盤の固有周期0.3秒」といった地盤の固有周期を直接的に表現する方法が設定される。
【0082】
図8に示す例では、まず、データベース作成用の構造物を複数個設定し、
図8(a)に示すように、設定される複数のデータベース作成用の構造物の各々についての、上記した例えば8つの特定パラメータの各々の値の組み合わせを設定する。
【0083】
そして、各構造物についてのステップS13(
図6参照)を複数回行う際に、
図8(b)に解析モデルID1、ID2、ID3及びID4として示すように、複数の解析モデルを構築し、複数の解析モデルを含む解析モデル群を構築する。
【0084】
次に、解析モデル群に含まれる複数の解析モデルの各々を用いて、プッシュ・オーバー解析等の解析を行う。これにより、
図8(c)に示すように、各構造物モデルで表される構造物の振動特性を表す、例えば等価固有周期T
eq及び降伏震度K
hyを含む複数の振動パラメータを取得する。そして、複数の解析モデルの各々の解析結果として取得された複数の振動パラメータの各々の値と、複数の解析モデルの各々に対応した構造物を特定する複数の特定パラメータの各々の値とが関連付けられた構造物インベントリーデータベースであるデータベースが作成される。
【0085】
次に、
図9を参照し、本実施の形態の振動特性評価方法を用いて高架橋及び橋梁群よりなる鉄道路線全体の地震時の被害の程度を予測する方法について説明する。
図9は、実施の形態の振動特性評価方法を用いて高架橋及び橋梁群の地震時の被害の程度を予測する方法を説明するための図である。
図9(a)は、評価対象の構造物からなる実構造物群を例示し、
図9(b)は、データベースを例示し、
図9(c)は、評価対象の構造物に類似した構造物からなる類似構造物群を例示し、
図9(d)は、高架橋及び橋梁群の地震時の被害の程度を予測した結果を例示している。
【0086】
まず、
図9(a)に示すように、評価対象の構造物からなる実構造物群について、評価対象の構造物の一般図等の図面情報に基づいて、当該評価対象の構造物ごとに、即ち高架橋及び橋梁群よりなる鉄道路線の区間ごとに、上記した8つの特定パラメータとしてのパラメータの各々の値を、調査して設定する。
図9(a)に示す例では、構造物40A、40B及び40Cを含む構造物群が、実構造物群として示されている。
【0087】
次に、
図9(b)に示すように、構造物インベントリーデータベースであるデータベースを参照し、設定された8つの特定パラメータの各々の値を、構造物インベントリーデータベースに格納された複数の組データに含まれる複数の特定パラメータの各々の値と比較し、類似性を判断する。そして、構造物インベントリーデータベースに格納された複数の組データから、当該評価対象の構造物ごとに、その構造物に類似した構造物又は構造物群の組データを抽出して選択し、
図9(c)に示すように、評価対象の構造物に類似した構造物を含む類似構造物群を抽出して設定する。
図9(c)に示す例では、構造物40A、40B及び40Cの各々について抽出された類似構造物群が、示されている。
【0088】
次に、類似構造物群に対し、当該類似構造物群に含まれる各々の構造物の振動特性を評価する。例えば等価固有周期T
eq又は降伏震度K
hy等の振動パラメータを用いて例えば非線形スペクトル法を行うことにより、類似構造物群が地震動EQを受けたときの各構造物の地震応答解析を大規模に行う。これにより、
図9(d)に示すように、例えば高架橋及び橋梁群の地震時の被害の程度を予測した結果を得ることができる。
図9(d)に示す例では、地
図41と、地
図41上に配置された鉄道路線42と、地震が発生した場合に鉄道路線42の各区間において予想される構造物の被害の程度を示す棒グラフ43と、を表す可視化マップが、示されている。このようにして、高架橋及び橋梁群の地震時の被害の程度として、可能性のある解を算出することができる。
【0090】
表1に示すように、「設計年代」、「構造種別」及び「基礎形式」の3つの特定パラメータは、上位概念としてのグループに分類される。一方、「軌道形式」、「構造高さ」、「断面幅」、「鉄筋比」及び「地盤種別」の5つのパラメータは、下位概念としてのグループに分類される。なお、「軌道形式」の特定パラメータは、上位概念としてのグループに分類されてもよく、「基礎形式」の特定パラメータは、下位概念としてのグループに分類されてもよい。
【0091】
複数の組データが、上位概念としての3つの特定パラメータをインデックスとして複数のグループに大分類された場合、大分類された複数のグループの各々の中では、例えば複数の組データの各々にそれぞれ対応した複数の解析モデルが互いに類似すること等により、評価対象の構造物に類似した構造物群を短時間で選択することができる。一方、大分類された複数のグループの各々の中で、複数の組データが、下位概念としての5つの特定パラメータをインデックスとして小分類された場合、例えば同一の解析モデルについての細かな特徴の差異で組データをソートすることができること等により、評価対象の構造物に近い構造物を的確に選択することができる。
【0092】
実際に構造物の解析モデルを構築し、プッシュ・オーバー解析によって振動特性を評価する場合には、例えば、
図10に示すフローに従って、構造物の解析モデルが構築される。まず、設計計算書又は図面等を確認する(ステップS31)。次に、軸線を作成する(ステップS32)。次に、断面等の要素諸元を整理する(ステップS33)。次に、地盤条件を整理する(ステップS34)。次に、荷重条件を整理する(ステップS35)。
【0093】
また、
図10に示すフローに従って、構造物の解析モデルを構築する場合、解析モデルを構築する際の作業項目と、前述した8つの特定パラメータとの関係を、表2に示す。なお、前述したように、「断面幅」は、主として柱の断面幅を表す場合が多いため、表2では、「柱等の断面幅」と表記されている。
【0095】
表2に示す「軸線の作成」という作業項目(
図10のステップS32に相当)には、「構造種別」等の4つの特定パラメータが対応している。また、表2に示す「要素諸元の整理」という作業項目(
図10のステップS33に相当)には、「設計年代」等の5つの特定パラメータが対応している。また、表2に示す「地盤条件の整理」という作業項目(
図10のステップS34に相当)には、「基礎形式」等の2つの特定パラメータが対応している。また、表2に示す「荷重条件の整理」という作業項目(
図10のステップS35に相当)には、「設計年代」等の5つの特定パラメータが対応している。
【0096】
ここで、「構造種別」、「軌道形式」、「基礎形式」、「構造高さ」、「断面幅」、「鉄筋比」及び「地盤種別」の7つの特定パラメータについては、構造物の具体的な形状又は寸法が与えられるため、構造物の解析モデルの構築に直接用いることができる。
【0097】
一方、「設計年代」については、主に断面等の要素諸元と荷重条件に関連しているが、「設計年代」に対応した当該要素諸元等については、設計方法又は材料の変遷を考慮して設定することができる。例えば「設計年代」に対応した要素諸元については、その年代で必要とされる耐力、使用されている材料を、選定する。部材の耐力を推定するためには、断面幅及び鉄筋比の値が必要となるが、これらの断面幅及び鉄筋比の値は、「設計年代」とは別の特定パラメータとして設定する。一方、使用材料の強度等を特定する必要がある場合には、「設計年代」を特定してその年代における一般的な値を設定することにより、概略の値を設定することができる。
【0098】
インベントリー即ち目録を設定する際には、表1の上位概念に基づいて、組データを分類する。具体的には、複数の組データを、「構造種別」及び「基礎形式」の違いによって、例えば直接基礎形式のラーメン高架橋、杭基礎形式のラーメン高架橋、直接基礎形式の橋脚、杭基礎形式の橋脚の4種類に、分類する。
【0099】
従って、複数の特定パラメータが、上位概念として、少なくとも「構造種別」及び「基礎形式」の各々のパラメータを含むことが好ましい。これにより、まず「構造種別」及び「基礎形式」で分類することができる。そのため、例えばデータベース中に大量に格納された複数の組データを高速で検索するか又は当該複数の組データに高速でアクセスすることができ、評価対象の構造物の振動特性の評価に要する時間を更に短縮することができる。
【0100】
また、構造種別及び基礎形式で分類された組データに含まれる複数の特定パラメータのうち、構造種別及び基礎形式以外の特定パラメータについては、取得しやすい特定パラメータの順に並べられることが好ましい。これにより、組データに含まれる複数の特定パラメータの各々の値のうち、一部の特定パラメータの値が欠落している場合でも、組データにおいて、値が欠落しにくい特定パラメータの値が先に並べられることになるため、組データ同士をある特定パラメータの値に着目して並べ替えたり、当該複数の組データに高速でアクセスすることができる。そのため、取得しにくい一部の特定パラメータの値が欠落している場合でも、データベースを用いて評価対象の構造物の振動特性を容易に評価することができる。
【0101】
以下では、本実施の形態の振動特性評価方法により作成される構造物インベントリーデータベースを用いて評価対象の構造物を評価することが可能であることを説明する。
【0102】
例えば直接基礎形式のラーメン高架橋であって、上部工が先行して降伏する条件で複数の特定パラメータの各々の値を変更した13538ケースについて、プッシュ・オーバー解析を行って構造物インベントリーデータベースとしてのデータベースを作成した。ここで、構造物の構造高さが8mであることが判明した場合には、その条件に適合するケースの数が、13538ケースのうち710ケースに減少し、予想される等価固有周期及び降伏震度の値の範囲がより狭い範囲に狭まることが明らかになった。また、構造物の構造高さが8mであり、且つ、柱の断面幅が1.0mであることが判明した場合には、その条件に適合するケースの数が、13538ケースのうち更に少ない206ケースに減少し、予想される等価固有周期及び降伏震度の値の範囲が更に狭い範囲に狭まることが明らかになった。
【0103】
また、直接基礎形式のラーメン高架橋であって、基礎が先行して降伏する条件で複数の特定パラメータの各々の値を変更した42453ケースについて、プッシュ・オーバー解析を行って構造物インベントリーデータベースとしてのデータベースを作成した。ここで、構造物の構造高さが8mであることが判明した場合には、その条件に適合するケースの数が、42453ケースのうち2788ケースに減少し、予想される等価固有周期及び降伏震度の値の範囲がより狭い範囲に狭まることが明らかになった。また、構造物の構造高さが8mであり、且つ、柱の断面幅が1.0mであることが判明した場合には、その条件に適合するケースの数が、42453ケースのうち更に少ない496ケースに減少し、予想される等価固有周期及び降伏震度の値の範囲が更に狭い範囲に狭まることが明らかになった。
【0104】
このように、本実施の形態の振動特性評価方法によれば、データベースとしての構造物インベントリーデータベースを用いることにより、評価対象の構造物に対応した解析モデルを構築することなく、振動特性の値を評価することができることが明らかになった。
【0105】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0106】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0107】
例えば、前述の各実施の形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。