(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、セラミックス製ハニカム構造体は、自動車排ガス浄化用触媒担体、ディーゼル微粒子除去フィルタ、ガソリン微粒子除去フィルタ、或いは燃焼装置用蓄熱体等の種々の広範な用途に用いられている。ここで、セラミックス製ハニカム構造体(以下、単に「ハニカム構造体」と称す)は、ハニカム成形体製造装置を用いて、押出ダイ(口金)から押出成形することでハニカム成形体を得た後、更に焼成炉を用いてハニカム構造体を高温で焼成することにより製造されている。これにより、流体の流路を形成する一方の端面から他方の端面まで延びる、複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を備えるハニカム構造体が得られる。
【0003】
ハニカム成形体を押出成形する成形工程は、押出ダイを押出口に装着した押出成形機が用いられ、押出方向を水平方向に一致させた状態で、押出圧力及び押出速度を制御しながら、成形材料を押し出す。
【0004】
成形材料は、種々のセラミックス粒子及びバインダ等が原料として使用される。押出成形機から押出可能にするために、水及び/または界面活性剤等の液体が加えられ、押出に適した粘度の成形材料が混合工程及び混練工程を経て調製される。混合工程は、始めにバッチ式の混合装置(バッチミキサー)を用い、規定の配合比率で秤量された粉
末状または粉体状の原料を乾式混合し(第1の混合)、更に液体(水等)を加える湿式混合(第2の混合)を行い、湿式混合物(成形用混合物)を得る(例えば、特許文献1参照)。その後、湿式混合された湿式混合物(成形用混合物)を混練する混練工程を経て、押出成形に適するように調製された成形材料が押出成形機から押し出される(成形工程)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ハニカム構造体を製造する過程では、押出成形直後のハニカム成形体の成形体形状等を確認するため、ハニカム成形体の一部を製造ラインから抽出し、ハニカム成形体の真円度や押出速度の偏位、或いはハニカム成形体の曲がり等の品質を確認することが行われている。
【0007】
品質確認用に抽出され、各部の測定等を行ったハニカム成形体は、再び、製造ラインに戻されることなく、予め設置された回収用ボックス等に回収され、一時的に保管される。ハニカム成形体の成形工程の開始直後は、押出成形機の稼働及び停止を繰り返し、規定上の成形体形状の品質が確保されているか否かを複数回に亘ってチェックすることがある。そのため、回収用ボックス等に回収されるハニカム成形体の回収量が特に多くなる。
【0008】
更に、押出成形後の連続したハニカム成形体を所定のハニカム長さにカットするための切断時に発生する切断屑、或いはハニカム成形体を乾燥させた後、更に寸法精度を高めるために行われる端面研削加工等によって、切断屑や研削粉等が発生し、同様に回収されている。これらのハニカム成形体、或いは切断屑、研削粉等の押出成形機を通過した後の成形材料(以下、「使用済み成形材料」と称す。)は、いずれも未焼成の状態であり、再び、成形材料の原料の一部として使用することができる。
【0009】
そこで、混合工程(特に、第1の混合)において、セラミックス粒子等を混合する際に、原料の一部として回収された“使用済み成形材料”が一般に加えられる。これにより、使用済み成形材料を廃棄することなく、再使用(リサイクル)することができ、資源の有効活用を図ることができる。
【0010】
しかしながら、使用済み成形材料の再使用は、下記に掲げる不具合を生じることがあった。すなわち、セラミックス粒子等の原料に対し、使用済み成形材料を添加する比率、換言すると、乾式混合工程における乾式混合物の全量に占める使用済み成形材料の使用量の質量比率(=「再使用率」)が高くなると、所謂「ダマ」と呼ばれる凝集物が多く発生することが知られている。凝集物のような不均質な部分が成形材料に存在すると、押出成形の安定性を損なう。
【0011】
使用済み成形材料は、粒子表面積が大きく、選択的に水等の液体を吸収しやすいと考えられ、混練工程の際に不均質な部分である凝集物に成長する核が発生しやすいためと推察されている。また、使用済み成形材料の表面は、バインダ等が偏析している傾向が強く、当該バインダ等が水等を吸着しやすいため、凝集物が発生するとの要因も考えられている。
【0012】
したがって、使用済み成形材料の再使用率が、一定範囲(例えば、20質量%未満等)に制限されることが多かった。これにより、回収された使用済み成形材料の全量を、成形材料の原料として使い切ることがで
きず、一部の使用済み成形材料は廃棄されることがあった。その結果、成形材料の一部が無駄に消費されることとなり、原材料コストの増大を招来し、最終的にハニカム構造体の製造コストが嵩む等の問題を生じることがあった。
【0013】
一方、使用済み成形材料を含む原料を混合する混合工程において、液体の添加量は、上記凝集物の発生や粘度の変動等の大きな影響を成形材料に及ぼすことが知られている。更に、凝集物及び粘度の変動等によって、その後の成形工程の際に押出成形機に加わる機械的負荷(トルク)が過剰となったり、押出速度の不安定化の要因となることがあった。そのため、最終製品のハニカム構造体の製品形状等の品質安定性や生産性等が問題となることがあった。
【0014】
安定した押出成形を可能とするため、成形材料に添加する液体の添加量については、従来から細心の注意が払われている。しかしながら、液体の添加は、上述した第2の混合である湿式混合(湿式混合工程)でのみ実施されることが多く、その後の混練工程等で添加されることはほとんどなかった。ここで、湿式混合工程から混練工程を経て、成形材料が押出成形される成形工程までには、多くの時間がかかる。
【0015】
そのため、押出成形の際にハニカム成形体の成形体形状に異常が認められた場合、速やかに湿式混合工程で液体の添加量を調整しても、その効果が確認されるまでにタイムラグがあり、迅速な対応及び効果の確認ができないことがあった。
【0016】
そこで、本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、凝集物の発生を抑えるとともに使用済み成形材料の再使用率を高め、成形材料の無駄な消費をなくし、液体の添加による効果の確認を迅速に行うことができ、品質安定性の高いハニカム成形体の形成及びハニカム構造体の製造が可能なハニカム構造体の製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によれば、以下に掲げるハニカム構造体の製造方法が提供される。
【0018】
[1] ハニカム構造体を形成するための原料をバッチ処理により乾式混合する乾式混合工程と、前記乾式混合工程によって得られた乾式混合物に水、界面活性剤、潤滑剤、及び可塑剤の少なくともいずれか一種類を含む液体を添加し、湿式混合する湿式混合工程と、前記湿式混合工程によって得られた湿式混合物を混練する混練工程と、前記混練工程によって調製された成形材料を押出成形する成形工程とを有し、前記乾式混合工程は、既に前記成形工程を通過した使用済み成形材料を前記原料の一部として加え、乾式混合するものであり、
前記乾式混合物の全量に占める前記使用済み成形材料の質量比率を示す再使用率は、40質量%〜60質量%の範囲であり、前記混練工程は、前記湿式混合物を混練する過程で、前記液体を更に添加する液体再添加工程を有するハニカム構造体の製造方法。
【0020】
[
2] 前記液体再添加工程における前記液体の添加量の比率は、前記乾式混合物の全量を100%とした場合に対して、2質量%〜10質量%の範囲である前記[1
]に記載のハニカム構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明のハニカム構造体の製造方法によれば、湿式混合工程及び混練工程に含まれる液体再添加工程の二つの工程で、乾式混合物及び湿式混合物に対してそれぞれ液体を添加することができる。成形工程の直前の混練工程で液体の一部を添加することで、成形材料の粘度等の微調整を図ることができる。特に、湿式混合工程における液体の添加量の比率を減らすことで、成形材料における凝集物の発生を最小限に抑えた状態で、次工程の混練工程を行うことができ、良好な成形材料の調整が可能となる。これにより、使用済み成形材料の再使用率を高く設定することができ、成形材料を無駄に消費することがない。
【0022】
更に、押出成形後のハニカム成形体の成形体形状に異常が確認された場合であっても、成形工程の直前に液体を添加することで、迅速な対応を図ることができ、従来と比べて液体添加の効果の把握が速やかなものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ、本発明のハニカム構造体の製造方法の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良等を加え得るものである。
【0025】
本発明の一実施形態のハニカム構造体の製造方法(以下、単に「製造方法1」と称す。)は、
図1等に示すように、ハニカム構造体(図示しない)を製造するために作成される、ハニカム成形体2の押出成形処理に係るものであり、粉末状或いは粉体状のセラミックス粉体3a及びバインダ3b等からなる複数種類の原料3を乾式混合する乾式混合工程S1と、得られた乾式混合物4に液体5を添加し、バッチ処理または連続処理により湿式混合する湿式混合工程S2と、得られた湿式混合物6を混練する混練工程S3と、得られた混練物7を脱気及び圧密処理した成形材料8を押出成形機を用いて押出成形し、所望の形状のハニカム成形体2を形成する成形工程S4とを主に具備している。なお、セラミックス粉体3a等としては、例えば、コージェライトや炭化珪素等の周知のセラミックス原料を使用することができる。
【0026】
特に、本実施形態の製造方法1は、混練工程S3において、湿式混合物6を混練する過程で、液体5を更に添加する液体再添加工程S5を更に具備している。これにより、原料3から成形材料8に変換する成形材料8の調製プロセス(
図2参照)において、湿式混合工程S2及び混練工程S3の二段階で、液体5をそれぞれ添加することができる。
【0027】
更に、本実施形態の製造方法1は、原料3として、上記セラミックス粉体3a及びバインダ3b等に加え、“使用済み成形材料9”を含んでいる。ここで、使用済み成形材料9とは、既に示したように、押出成形後のハニカム成形体2の成形体形状や押出条件等の種々の確認を行うために、ハニカム成形体2(ハニカム構造体)の製造ラインから抽出され、成形工程S4以後の焼成工程に送られなかった一部のハニカム成形体2,或いはハニカム成形体2のサイズを整えるため、ハニカム成形体2から切断または除去された切断屑や切断粉、或いは、ハニカム成形体2を乾燥させた後に実施される端面研削によって生じる研削屑や研削粉等を総称するものである。
【0028】
すなわち、ハニカム成形体2を形成するための少なくとも一回は成形工程S4を通過したものであり、かつ未焼成のものである。そのため、高温の焼成温度に晒されておらず、成形材料8の原料3の一部として再使用が可能な素材である。上記のように、成形工程S4以後であって、焼成工程に送られる前の各段階において回収された使用済み成形材料9を、セラミックス粉体3a混合し、所定の比率で混合し使用される。
【0029】
本実施形態の製造方法1は、
図1に示した上記S1〜S5をそれぞれ実施可能な構成を有するハニカム成形体製造装置100を使用して実施することができる。ここで、ハニカム成形体製造装置100は、その機能的構成として、バッチ式の乾式混合部10と、バッチ式または連続式の湿式混合部20と、混練部30と、押出成形部40とを主に有し、混練部30は、その構成要素内に液体5を更に添加する液注ポンプ等の構成(図示しない)を備えている。以下、本実施形態の製造方法1の流れについて、上記ハニカム成形体製造装置100の各部構成とともに説明を行うものとする。
【0030】
押出成形部40は、ハニカム成形体2を押出成形するための、従来から使用されている周知の押出成形機に該当する。また、添加される液体5は、特に限定されないが、水、界面活性剤、潤滑剤、及び可塑剤をそれぞれ単独、若しくは、これらの中の少なくともいずれか一種類を含んで構成されるものを使用することができる。液体5が原料3とそれぞれ混合時及び混練時に添加されることにより、押出成形部40からの押出成形に適した粘度を備える均質連続体としての成形材料8が得られる。
【0031】
乾式混合工程S1は、バッチ式の乾式混合部10(バッチミキサー)を用いて実施される。所定の配合比率で秤量された複数種類の粉末状または粉体状のセラミックス粉体3a及びバインダ3b、及び使用済み成形材料9を含む原料3が乾式混合部10に投入され、撹拌機構(図示しない)によってセラミックス粉体3a、バインダ3b、及び使用済み成形材料9が互いに均一に混じり合うように撹拌混合を行う。
【0032】
これにより、原料3が複数種類のセラミックス粉体3a等が均一に分散した乾式混合物4に変換される(
図2参照)。なお、
図2において、乾式混合後の乾式混合物4やその他の成形材料8等を示す模式図において、使用済み成形材料9は、セラミックス粉体3aの一部として示し、特に区別をしていない。そのため、乾式混合後については、使用済み成形材料9についての図示を省略している。
【0033】
ここで、本実施形態の製造方法1において、乾式混合物4の全量に示す上記使用済み成形材料9の質量比率を示す再使用率は、例えば、20質量%〜60質量%の範囲に設定することができる。その結果、成形工程S4の実施後に回収される使用済み成形材料9をほとんど使い切ることができ、成形材料8を無駄にすることがない。このとき、使用済み成形材料9の再使用率が高くなると、既に説明したように、成形材料8の中に凝集物が多く発生することがある。係る凝集物が発生する不具合については、以下の湿式混合工程S2及び混練工程S3における液体再添加工程S5による、液体5の添加量の比率等の調整を図ることにより解消することができる(詳細は後述する)。
【0034】
得られた乾式混合物4は、湿式混合工程S2に送られる。ここで、湿式混合工程S2は、乾式混合物4をバッチ処理または連続処理によって湿式混合を行うバッチ式または連続式の湿式混合部20(バッチミキサーまたは連続ミキサー)を用いて行われる。バッチ式の湿式混合部20を用いた場合、乾式混合を行った乾式混合部10をそのまま利用することができ、規定の添加量の比率の液体5を投入した後、上記撹拌機構を利用して乾式混合物4と液体5の混合が行われる。一方、連続式の湿式混合部20を用いた場合、乾式混合部10によって混合された乾式混合物4が予め規定された投入割合で湿式混合部20に徐々に投入され、同時に液体5が投入され、撹拌機構(図示しない)によって湿式混合される。これにより、乾式混合物4及び液体5が均一に分散し、混合された湿式混合物6に変換される。
【0035】
本実施形態の製造方法1及びハニカム成形体製造装置100において、湿式混合工程S2(湿式混合部20)において添加される液体5の添加量の比率(液体添加率)は、後述する混練工程S3(混練部30)において添加される液体5の添加量の比率との関係から決定される。すなわち、成形材料8に加える液体5の予め規定した総添加量に対し、湿式混合工程S2において添加される液体5の添加量と、混練工程S3(液体再添加工程S5)において添加される液体5の添加量との合計が一致するように調整される。
【0036】
本実施形態の製造方法1において、液体再添加工程S5(混練工程S3)で添加される液体5の添加量の比率は、乾式混合物4の全量を100%とした場合に対して、2質量%〜10質量%を占める範囲に設定することができる。
【0037】
ここで、本実施形態の製造方法1では、湿式混合工程S2において添加される液体5の添加量の比率と液体再添加工程S5において添加される液体5の添加量の比率の合計が、乾式混合物4の全量を100%とした場合、25質量%〜35質量%の範囲に設定されている。前述のように、液体5の添加量の比率の合計が一致するように調整されるため、湿式混合工程S2の液体5の添加量の比率は、15質量%〜33質量%の範囲に本実施形態の製造方法1では設定される。このとき、液体再添加工程S5の液体5の添加量の比率は、湿式混合工程S2の液体5の添加量の比率よりも低く設定される。液体再添加工程S5が、成形工程S4の直前で実施され、成形材料8の粘度等の微調整を図る目的で液体5を添加するためである。特に、原料3の一部に、使用済み成形材料9を使用するため、湿式混合工程S2における液体5の添加量の比率を抑え、湿式混合物6の段階での凝集物の発生を抑え、成形材料8の段階で液体5の再添加を行い、粘度を調
整することができる。
【0038】
その後、混練部30(混練機)を使用して混練工程S3が実施される。本実施形態の製造方法1において、混練工程S3及び次工程の成形工程S4は、連続一体的に実施される。すなわち、ハニカム成形体製造装置100において、湿式混合部20から送られた湿式混合物6を、混練部30は混練し、更に当該混練部30と連続一体的に構成された押出成形部40に、処理された混練物7(成形材料8)が直接送り出される。そして、押出成形部40の押出ダイ(口金)を通じて成形材料8が押出成形される(
図1)。これにより、ハニカム成形体2が形成される(
図1または
図2参照)。
【0039】
本実施形態の製造方法1において、混練工程S3は、既に説明したように、湿式混合物6を混練する過程で、液体5を更に添加する液体再添加工程S5を更に含んでいる。すなわち、原料3から成形材料8を変換する調製プロセスにおいて、二度の液体5を添加する機会が設けられることになる。液体再添加工程S5における液体5の添加量の比率は、前述の通り、乾式混合物4の全量を100%とした場合に対して、2質量%〜10質量%の範囲に設定することができる。
【0040】
混練された混練物7を脱気及び圧密した成形材料8が押出成形部40(=押出成形機)に送られ、所定の押出圧力及び押出速度で押し出される(成形工程S4)。なお、押出成形部40に相当する押出成形機等の工程は、既に周知のものであるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0041】
上記説明したように、本実施形態の製造方法1によれば、湿式混合工程S2(湿式混合部20)及び混練工程S3(混練部30)の二つの工程または構成で乾式混合物4及び湿式混合物6に対してそれぞれ液体5を添加することが可能となり、押出成形される成形材料8を均質の状態にすることができる。更に、成形材料8を押し出す際の押出成形機の機械負荷を安定させることができる。
【0042】
特に、本実施形態の製造方法1は、原料3の一部として、凝集物の発生しやすい使用済み成形材料9を高い再使用率で使用するため、通常よりも成形材料8の調製が困難となる。そこで、液体5の添加を二段階で行うことにより、凝集物の発生を抑え、かつ粘度等の安定した成形材料8を調製しやすくなる。その結果、成形材料8の流動性及びハニカム成形体2の保形性を安定したものとすることができ、真円度等の成形体形状が良好なものとなる。
【0043】
更に、使用済み成形材料9の再使用率を高く設定することができるため、成形工程S4以降に回収される使用済み成形材料9の全量を使い切ることが可能となる。その結果、原材料コストを抑えることができる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明のハニカム構造体の製造方法について、下記の実施例に基づいて説明するが、本発明のハニカム構造体の製造方法は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0045】
1.成形材料の調製(実施例1〜5、比較例1,2)
上記のハニカム成形体製造装置を用い、コージェライト(セラミックス粉体に相当)を主成分とし、押出成形可能な粘度の成形材料(坏土)の調製を行った。ここで、実施例1〜3は、前述した使用済み成形材料の再使用率を20%とし、湿式混合工程における液体の添加量(以下、「液体添加率」と称す。)を通常に比べて−2%(実施例1)、−4%(実施例2)、及び−6%(実施例3)に減らし、一方、混練工程(液体再添加工程)において、押出成形直前の成形材料(混練物)にそれぞれ+2%(実施例1)、+4%(実施例2)、及び+6%(実施例3)の液体添加率の液体を添加したものである。なお、比較例1は、再使用率を20%とし、成形材料に添加する液体を湿式混合工程において全て投入したものである。
【0046】
一方、実施例4,5は、使用済み成形材料の再使用率を40%とし、湿式混合工程における液体の液体添加率を通常に比べて−4%(実施例4)、及び−6%(実施例5)に減らし、一方、混練工程(液体再添加工程)において、押出成形直前の成形材料(混練物)にそれぞれ+4%(実施例4)、及び+6%(実施例5)の液体添加率の液体を添加したものである。なお、比較例2は、再使用率を40%とし、成形材料に添加する液体を湿式混合工程において全て投入したものである。それぞれ調製された成形材料を押出成形機により押出成形し、略円柱状のハニカム成形体を得た。
【0047】
2.凝集物の存在比率の評価
実施例1〜5及び比較例1,2の成形材料を調製する過程で、湿式混合工程及び混練工程の試料をそれぞれ500g程度採取する。そして、採取した試料の質量を測定する。次に、メッシュ径が5mmの“ふるい”を用い、採取した試料を当該ふるいに投入し、振動を加えるふるい作業を行う。このふるい作業の後、ふるい内に残った「ふるい残試料」の質量を測定する。次に、メッシュ径が5mmの上記ふるいを通過した「一次通過試料」を、メッシュ径が2mmのふるいに投入し、振動を加える上記と同様のふるい作業”を行う。そして、メッシュ径が2mmのふるいを通過した「二次通過試料」の質量を測定する。ここで、「ふるい残試料」が5mm以上の大きさの成形材料であり、2mmメッシュのふるい内に残った「一次残試料(一次通過試料−二次通過試料)」が2mm超、5mm未満の大きさの成形材料であり、「二次通過試料」が2mm以下の大きさの成形材料である。「ふるい残試料」、「一次残試料」、及び「二次通過試料」の質量を採取した試料の質量で除した値から凝集物の存在比率を求める。湿式混合工程時の試料における凝集物の存在比率を示すグラフ(
図3)、及び混練工程時の試料における凝集物の存在比率(
図4)を示すグラフを示す。
【0048】
図3に示すように、再使用率が20%の場合、大きな凝集物(5mm以上)が存在する比率が、液体再添加工程における液体添加率が高くなるにつれて徐々に少なくなる傾向が認められた。同様に、再使用率が40%の場合でも類似の傾向が示された。更に、液体再添加工程を経て混練工程に送られた成形材料の場合、この大きな凝集物の存在比率の減少が特に顕著に示される。これにより、本発明のハニカム構造体のように、液体の添加を二段階で実施することにより、特に大きな凝集物の発生を抑制することができる。これにより、湿式混合工程及び混練工程の二度に分けて液体を添加することで、凝集物の発生を有効に抑制することができた。
【0049】
3.機械負荷の評価
ミキサー(混合機)の回転する主軸にデータ収集機器を取付け、押出スクリューによる混練時における主軸を回転させるためのモータの負荷(負荷電流)を計測した。ここで、負荷電流が大きくなること、或いは負荷電流の変動が激しくなることは、押出成形される成形材料に多くの凝集物が発生していることを示し、より強い力で回転させる必要があることを示している。ここで、
図5は、使用済み成形材料の再使用率が60%で、混練工程において液体を5%添加した場合のミキサーの負荷電流と時間(経過時間)との相関関係を示すグラフである。同様に、
図6は、使用済み成形材料の再使用率が60%で、混練工程における液体の添加がない場合のミキサーの負荷電流と時間(経過時間)との相関関係を示すグラフであり、
図7は、使用済み成形材料の再使用率が20%未満で、混練工程における液体の添加がない場合のミキサーの負荷電流と時間(経過時間)との相関関係を示すグラフである。
【0050】
まず、
図6及び
図7のグラフとの対比から、混練工程時に液体を添加しない場合において、再使用率が高いと、時間の経過とともにミキサーの負荷電流が高くなることが示された。すなわち、長時間の混練を継続することで再使用率の高い成形材料の負荷電流が高くなる、換言すれば、凝集物が多く発生しやすいことが示された。なお、再使用率が20%未満の場合(
図7)は、従来から実施されていた使用済み成形材料を使用した場合の限界であり、実用上の問題は発生しない。しかしながら、
図6に示されるように、時間経過とともに負荷電流が急激に増加する成形材料の場合、ミキサーにかかる負荷が高すぎるため、押出速度等の安定化が困難となるため、実用上は係る条件で押出成形をすることはできない。
【0051】
これに対し、使用済み成形材料の再使用率が60%であっても、
図5に示すように、混練工程時に液体を5%程度添加するものであれば、ミキサーの主軸にかかる負荷電流の値が大きく増大することがなく、安定した押出成形が可能となることが示された。その結果、大きな凝集物の発生を抑えた状態で、ハニカム成形体の押出成形が可能となることが示された。
【0052】
上記示したように、本実施形態のハニカム構造体の製造方法によれば、液体の添加を湿式混合工程及び混練工程の二段階で実施することで、成形材料における凝集物の発生を抑えることができる。そのため、従来は困難であった使用済み成形材料の再使用率を高めることができ、最大で60%程度までにすることができる。その結果、従来は廃棄処分とするなど、成形材料の一部を無駄に消費することを解消できる。更に、凝集物の発生を抑えることで、安定したハニカム成形体の押出成形が可能となり、ハニカム成形体の成形体形状及びハニカム構造体の製品形状が安定化し、良好な品質を維持したハニカム構造体の製造が可能となる。