【0008】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図4〜
図7は、本発明の熱交換器コアのろう付前の仮組構造を示すものである。
即ち、偏平チューブ7を積層してなる積層体8の両端に、一対の枠体13を被嵌することにより積層体8を拘束保持している。
なお、本発明においては、一対のプレート5、6の側壁1、側壁2が延びている方向(偏平チューブ7の両開口を結ぶ軸の方向)を側壁方向とする。
この積層体8を構成する偏平チューブ7は、
図1〜
図3に示す如く、一対のプレート5,プレート6を互いに逆向きに重ね合わせたものからなる。
プレート5,プレート6は、夫々その両側に側壁1と側壁2が溝底3に対して直角に立ち上げられている。そして、偏平チューブ7の両開口縁の溝底3に、偏平チューブ7の厚み方向に膨出した膨出部4が形成される。
また、その膨出部4は、その長手方向の両端部に位置し、側壁方向の幅が広い幅広部4aと、それらの幅広部4a間に位置し、偏平チューブ7の開口縁に形成された幅が狭い幅狭部4bとからなる。これらの一対のプレート5,プレート6間にはインナーフィン17が介装される。
一方のプレート6には、一対の側壁1、2の側壁方向の両端において縮小した縮幅部16が形成され、そこに厚み分内側に段付き状に形成された段部30を形成する。その段部30に、他方のプレート5の一対の側壁1、側壁2の縁部が着座される。
この例ではプレート5、プレート6の外面側には、夫々仕切部27が偏平チューブ7の膨出部4の膨出方向に突設されている。その仕切部27は、一方の側壁1の底部3との付根に一端が当接し、他端は他方の側壁2に達することなく、その手前まで形成されている。また、各プレート5、6には多数のディンプル18が膨出部4の膨出方向に突設されている。仕切部27とディンプル18の高さは、膨出部4の高さと同一である。
そして、各プレート5、6の側壁1と側壁2とはその形状が異なっている。
一方の側壁1は、平面において僅かに外側に「M字状」に突出して第1嵌着構造28が形成され、他方の側壁2は、平面において僅かに外側に「山型」に突出して第2嵌着構造29が形成される。即ち、プレート5とプレート6の第1嵌着構造28どうしを組合わせた時に嵌着できるように構成されている。このように一方の側壁1の形状と、他方の側壁2の形状とを異ならせることにより、一対のプレート5、6の側壁1と側壁2とを組み合わせたとき、その組違いを防止することができる。
図3は、その組み合わせが間違った場合を示している。この場合、プレート5の一方の側壁1の第1嵌着構造28と、プレート6の他方の側壁2の第2嵌着構造29とは、形状が異なるため組み合わせることができない。
このように誤組みを防止することで、各プレート5、6の仕切部27を一方の側壁1側に寄せることができ、
図12に示す如く、偏平チューブ7の外面側とケーシング9の内面で囲われた空間に第1流通路19が形成され、第1流体32(例えば、冷却水)をU字状に供給することができる。
なお、偏平チューブ7の内部には
図12に示す如く第2流通路20が形成され、
図11に示す如く第2流体33(例えば、排気)が流通する。その偏平チューブ7の内部に介装されるインナーフィン17は、
図2(C)に示す如く、その先端が偏平チューブ7の開口に近接(幅狭部4b)して配置される。
偏平チューブ7の膨出部4は、幅の狭い幅狭部4bとその両端に配置された比較的幅の広い幅広部4aとを有する。幅広部4aは各プレート5、6の四隅に形成される。各幅広部4aと幅狭部4bは、偏平チューブ7を積層したときに、
図4、
図6に示す如く、それらが整合するように形成される。また、偏平チューブ7は、第1嵌着構造28をもつ側壁1どうしを揃えた状態で積層体8を構成する。
次に、枠体13は、
図4に示す如く、その内周が積層体8の外周に整合する外枠部10と、その外枠部10の縁部から内側に曲折された内フランジ部11と、その内フランジ部11の内周縁から外側に立ち上げられ、側壁方向に延びるパッキン保持部12とを有する。
そして、
図4、
図5に示す如く、枠体13の外枠部10が積層体8の膨出部4の外周に被嵌されるとともに、積層体8の開口端が枠体13の内フランジ部11に当接する。それにより、多数の偏平チューブ7からなる積層体8の両端が拘束される。
このとき、枠体13の外枠部10が、
図6に示す如く、積層体8の膨出部4の幅広部4aを被嵌し、特に積層体8のコーナー部におけるろう付の信頼性を向上する。また、幅広部4aの接触部分は、その接触面積が大きくなるため、偏平チューブ7どうしのろう付強さが向上する。即ち、
図4において枠体13の外枠部10は、積層体8のコーナー部の幅広部4aを確実に保持し、その幅広部4aと枠体13とのろう付が確実に行われる。このとき、
図6に示す如く、幅広部4aどうしの接触長さは、好ましくは、外枠部10よりも少し長めになるようにする。
一対の枠体13により両端を拘束された積層体8は、
図7に示す如く、ケーシング9内に収納される。このケーシング9は、一対の第1側壁28aと第2側壁29aが立ち上げられた縦断面コ字状の本体9aと、その本体9aの開口端を被嵌する端蓋9bとからなる。また、本体9aには一対のパイプ21が嵌着される。
本体9aの第1側壁28aは「M字状」に形成され、その「M字状」の頂部にパイプ21が取付けられる。第2側壁29aは、「山型」に形成される。好ましくは、その「山型」の第2側壁29aに、本体9aの内部側に向けて積層体8を位置決めするための凸部を設けるとよい。端蓋9bは、本体9aの外形に整合するように形成される。また、本体9aと端蓋9bには、積層体8の仕切部27の位置に整合する仕切部27aがケーシング9の内側に凹陥して設けられる。
図8は積層体8とケーシング9の本体9aとの被嵌状態を示すものである。
前述の通り、積層体8は偏平チューブ7の第1嵌着構造28をもつ側壁1側を揃えた状態で積層されているため、一方の側壁1側は「M字状」の形状を有し、他方の側壁2側は山型の形状を有している。
その形状の違いによって、ケーシング9の本体9aに積層体8を取付けるとき、その入れ違いを防止している。
即ち、本体9aの第2側壁29a側には、積層体8の第2嵌着構造29側が配置され、本体9aの第1側壁28a側には、積層体8の第1嵌着構造28側が配置される。図に示す如く、積層体8の仕切部27が形成されている根元の位置に本体9aの第1側壁28aの谷部が当接し、積層体8の第2嵌着構造29側は本体9aの第2側壁29aが当接することにより、積層体8が本体9aに仮組みされる。
逆に、
図9に示す如く、本体9aの第1側壁28aに積層体8の第2嵌着構造29側を間違って配置しようとした場合、本体9aのM字状の谷部によって積層体8の第2嵌着構造29側が引っかかり、入れ違いを防止している。
その状態で端蓋9bを被嵌し、熱交換器コア15を組立て、それが高温の炉内に挿入され各部品間を一体にろう付する。なお、このとき互いにろう付される各部品の少なくとも一方側には、ろう材が被覆または塗布される。
ろう付後、
図8、
図10に示すように、熱交換器コア15のタンクを取付ける部分には、枠体13のパッキン抱持部12と、内フランジ部11と、ケーシング9の両端縁の内壁との間にシール用のパッキンが嵌入できる環状溝14が形成される。そして、その環状溝14にパッキン23が配置され、次いで、一対のタンク24,タンク25が嵌着される。
そして、
図11、
図12に示す如く、熱交換器コア15の両開口端に設けたスリット22の外側がカシメられ、そのカシメ部26によってケーシング9とタンク24及びタンク25との間が固定される。この例では、タンク24とタンク25はAL鋳物からなる。
次に、
図13は本発明に用いられる枠体13の変形例を示すものであり、(A)はその要部縦断面図であり、(B)は枠体13の斜視図である。
この例が
図12の実施例と異なる点は、枠体13の外枠部10の長さを側壁方向に延長すると共に、その延長方向の中間部にストッパ用の凸部34を外枠部10の内周に沿って形成し、各偏平チューブ7の端縁をそこに当接して位置決めしたものである。
このように、外枠部10を延長することにより外枠部10の内容量を大きくして、タンク25から各積層体8に流体を円滑に流通させるものである。
次に、
図14は本発明に用いられるケーシング9の変形例を示す縦断面図であって、この例が
図12に示すものと異なる点は、ケーシング9の端部を段付き状に拡開して、そこに拡開端部35を形成する。そして、その拡開端部35を外枠部10の外周に被嵌したものである。
それにより、外枠部10と最外側に位置する偏平チューブ7のプレートとの間隔を外枠部10の厚みと等しくする。そして、ケーシング9の仕切部27aと最外側の偏平チューブ7のプレートの仕切部27とを密着させ、その周りを流通する流体を円滑にU字状に流通させるものである。
次に、
図15は本発明に用いる偏平チューブ7の変形例を示しており、その偏平チューブ7を用いて積層体8を構成している。
この偏平チューブ7は、
図15に示す如く、各プレート5、6の幅広部4aの先端から、側壁方向に向けて、端舌片部4cが突出される。
図15では、この端舌片部4cは、
図15(B)に示す如く、各側壁1、2の部分を含んだ状態で、略L字状に突設される。また、幅狭部4bの長手方向の中間位置に、側壁方向へ中間突出部4dを突出しておくと好ましい。各端舌片部4cと、中間突出部4dの突出長さは略同一にする。
図16,
図17に示す如く、各端舌片部4cの先端と積層体8の外周における中間突出部4dの先端とが、枠体13の内フランジ部11に当接し、
図18に示す如く、幅狭部4bと枠体13の付根との間に空間36を形成する。これにより、各偏平チューブ7の開口に流体が円滑に導かれるようにすることができる。
そして、この実施例の偏平チューブ7を用いる場合、
図18に示す如く、その積層体8を被嵌する枠体13の外枠部10の幅を、少なくとも積層体8の膨出部4の幅狭部4bが被嵌される程度に延長する必要がある。
なお、
図19に示すように、偏平チューブ7に端舌片部4cのみを設けると共に、枠体13の外枠部10には、偏平チューブ7の膨出部4の長手方向中間部分に整合する部位の内周にのみストッパ用の凸部34を設ける態様でも良い。
第1嵌着構造28と第2嵌着構造29の形状は、上記実施例と異なってもよい。また、これらの形状に合わせて、ケーシング9の形状も変更することができる。例えば、熱交換器の仕切部27を多数設け、第1流通路の流路長を長くする場合には、その偏平チューブ7の側壁の形状が変更され、その形状に合わせて、ケーシング9の形状も変更される。
タンクの材質は制限されるものではなく、例えば、樹脂の射出成型品であってもよい。
この実施例で偏平チューブ7の外表面に設けたディンプル18は、なくともよい。
タンクと熱交換器コアとのカシメ構造は、スリット22により行う構造に変えて、熱交換器コアの開口端にカシメ爪を多数設け、それらをタンク側に曲折して行う構造でもよい。