特許第6711859号(P6711859)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ファナック株式会社の特許一覧

特許6711859モータ駆動装置およびモータ駆動装置の異常発熱検出方法
<>
  • 特許6711859-モータ駆動装置およびモータ駆動装置の異常発熱検出方法 図000002
  • 特許6711859-モータ駆動装置およびモータ駆動装置の異常発熱検出方法 図000003
  • 特許6711859-モータ駆動装置およびモータ駆動装置の異常発熱検出方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6711859
(24)【登録日】2020年6月1日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】モータ駆動装置およびモータ駆動装置の異常発熱検出方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20200608BHJP
   H02M 7/06 20060101ALI20200608BHJP
【FI】
   H02M7/48 M
   H02M7/06 H
   H02M7/06 N
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-72046(P2018-72046)
(22)【出願日】2018年4月4日
(65)【公開番号】特開2019-187002(P2019-187002A)
(43)【公開日】2019年10月24日
【審査請求日】2019年8月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】田川 貴聡
(72)【発明者】
【氏名】堀越 眞一
【審査官】 土井 悠生
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/175597(WO,A1)
【文献】 特開2014−064435(JP,A)
【文献】 特開2014−075949(JP,A)
【文献】 特開2016−005317(JP,A)
【文献】 特開2000−184584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/00−7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを駆動するモータ駆動装置であって、
ヒートシンクと、
前記ヒートシンクに設けられ、交流電源から供給される交流電圧を直流電圧に整流する整流器と、
前記整流器で整流された直流電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
前記ヒートシンクに設けられ、前記モータの駆動開始前の初期充電期間に前記平滑コンデンサを充電するために用いられる充電抵抗と、
前記充電抵抗に設けられる温度センサと、
前記交流電源から前記整流器に入力される入力電力を検出する入力電力検出部と、
前記平滑コンデンサのコンデンサ電圧を検出するコンデンサ電圧検出部と、
前記初期充電期間を経過した以降に前記温度センサで検出される温度が第1の閾値以上である場合に、前記整流器への前記交流電圧の入力を停止させる制御部と、
前記制御部が異常発熱であると判断した前記充電抵抗または前記整流器が異常発熱である旨を報知する報知部と、
を備え
前記制御部は、前記温度が前記第1の閾値以上であり、前記入力電力が第2の閾値未満である場合に、前記充電抵抗が異常発熱であると判断し、前記温度が前記第1の閾値以上であり、前記入力電力が前記第2の閾値以上であり、前記コンデンサ電圧が第3の閾値以上である場合に、前記整流器が異常発熱であると判断すモータ駆動装置。
【請求項2】
請求項に記載のモータ駆動装置であって、
前記制御部は、前記温度が前記第1の閾値以上であり、前記入力電力が前記第2の閾値以上であり、前記コンデンサ電圧が前記第3の閾値未満である場合に、前記コンデンサ電圧が低下していると判断し、
前記報知部は、前記コンデンサ電圧が低下している旨を報知する、モータ駆動装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のモータ駆動装置であって、
前記交流電源と前記整流器との間に設けられる電源供給用スイッチを備え、
前記制御部は、前記電源供給用スイッチを開いた状態にすることで、前記整流器への前記交流電圧の入力を停止させる、モータ駆動装置。
【請求項4】
請求項のいずれか1項に記載のモータ駆動装置であって、
前記充電抵抗に並列に接続される充電用スイッチを備え、
前記制御部は、前記初期充電期間では前記充電用スイッチを開いた状態にし、前記初期充電期間を経過した以降に前記充電用スイッチを閉じた状態にする、モータ駆動装置。
【請求項5】
モータを駆動するモータ駆動装置の異常発熱検出方法であって、
前記モータ駆動装置は、
ヒートシンクと、
前記ヒートシンクに設けられ、交流電源から供給される交流電圧を直流電圧に整流する整流器と、
前記整流器で整流された直流電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
前記ヒートシンクに設けられ、前記モータの駆動開始前の初期充電期間に前記平滑コンデンサを充電するために用いられる充電抵抗と、
前記充電抵抗に設けられる温度センサと、
前記交流電源から前記整流器に入力される入力電力を検出する入力電力検出部と、
前記平滑コンデンサのコンデンサ電圧を検出するコンデンサ電圧検出部と、
を有し、
前記初期充電期間を経過した以降に前記温度センサで検出される温度が第1の閾値以上である場合に、前記整流器への前記交流電圧の入力を停止させる第1のステップと、
前記第1のステップで判断された前記充電抵抗または前記整流器が異常発熱である旨を報知する第2のステップと、
を含み、
前記第1のステップは、前記温度が前記第1の閾値以上であり、前記交流電源から前記整流器に入力される入力電力が第2の閾値未満である場合に、前記充電抵抗が異常発熱であると判断し、前記温度が前記第1の閾値以上であり、前記入力電力が前記第2の閾値以上であり、前記平滑コンデンサのコンデンサ電圧が第3の閾値以上である場合に、前記整流器が異常発熱であると判断する、モータ駆動装置の異常発熱検出方法。
【請求項6】
請求項に記載のモータ駆動装置の異常発熱検出方法であって、
前記第1のステップは、前記温度が前記第1の閾値以上であり、前記入力電力が前記第2の閾値以上であり、前記コンデンサ電圧が前記第3の閾値未満である場合に、前記コンデンサ電圧が低下していると判断し、
前記第2のステップは、前記コンデンサ電圧が低下している旨を報知する、モータ駆動装置の異常発熱検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータを駆動するモータ駆動装置およびモータ駆動装置の異常発熱検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ駆動装置では、交流電源から供給される交流電圧を直流電圧に変換する整流器などの発熱部品が設けられており、当該発熱部品が異常発熱により焼損することを防ぐ対策が講じられている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、IGBTモジュール内に設けられる温度センサの単位時間当たりの温度変化量に基づいて、IGBTモジュールに大電流が流れないようモータのトルクを制御することで、異常発熱による焼損を防ぐ保護装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−207812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、モータ駆動装置には、IGBTモジュール以外にも複数の発熱部品があり、各々の発熱部品に1つずつ温度センサを設けて異常発熱を検出しようとすると、温度センサの数が増えて設置スペースが増大することが懸念される。
【0006】
そこで、本発明は、温度センサの設置スペースの削減を図りつつ異常発熱を検出し得るモータ駆動装置およびモータ駆動装置の異常発熱検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、モータを駆動するモータ駆動装置であって、ヒートシンクと、前記ヒートシンクに設けられ、交流電源から供給される交流電圧を直流電圧に整流する整流器と、前記整流器で整流された直流電圧を平滑化する平滑コンデンサと、前記ヒートシンクに設けられ、前記モータの駆動開始前の初期充電期間に前記平滑コンデンサを充電するために用いられる充電抵抗と、前記充電抵抗に設けられる温度センサと、を備える。
【0008】
本発明の第2の態様は、モータを駆動するモータ駆動装置の異常発熱検出方法であって、前記モータ駆動装置は、ヒートシンクと、前記ヒートシンクに設けられ、交流電源から供給される交流電圧を直流電圧に整流する整流器と、前記整流器で整流された直流電圧を平滑化する平滑コンデンサと、前記ヒートシンクに設けられ、前記モータの駆動開始前の初期充電期間に前記平滑コンデンサを充電するために用いられる充電抵抗と、前記充電抵抗に設けられる温度センサとを有し、前記初期充電期間を経過した以降に前記温度センサで検出される温度が第1の閾値以上である場合に、前記整流器への前記交流電圧の入力を停止させる第1のステップと、異常発熱である旨を報知する第2のステップと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、充電抵抗と整流器とがヒートシンクにそれぞれ設けられ、その充電抵抗に設けられる温度センサを用いて整流器および充電抵抗の双方の異常発熱を検出することが可能となる。このため、整流器および充電抵抗のそれぞれに温度センサが設けられる場合に比べて、温度センサのセンサ数を抑えて設置スペースを削減することができる。また、初期充電期間以降にも使用される整流器に比べて使用期間が短く整流器に比べて発熱し難い充電抵抗に温度センサが設けられる。このため、温度センサの耐久性を向上させ得る設置スペースを確保し易い。したがって、本発明によれば、温度センサの設置スペースの削減を図りつつ異常発熱を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態におけるモータ駆動装置の構成を示す模式図である。
図2図1の整流器および充電抵抗がヒートシンクに配置される様子を示す概略図である。
図3図1のモータ駆動装置の異常発熱検出方法に関する制御部の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るモータ駆動装置について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
【0012】
〔実施の形態〕
図1は、実施の形態におけるモータ駆動装置10の構成を示す模式図である。モータ駆動装置10は、交流電源Pから供給される交流電圧に基づいて、モータMを駆動させる。なお、本実施の形態では、交流電源Pは、三相交流電源である。
【0013】
モータ駆動装置10は、整流器12、平滑コンデンサ14、逆変換器16および初期充電部18を有する。整流器12は、交流電源Pから供給される交流電圧を直流電圧に変換する。
【0014】
整流器12として、例えば、ダイオード整流回路、あるいは、半導体スイッチング素子のブリッジ回路を有する整流回路などが挙げられる。半導体スイッチング素子として、例えば、IGBT、パワーMOSFET、バイポーラトランジスタ、または、サイリスタなどが挙げられる。
【0015】
平滑コンデンサ14は、整流器12で変換された直流電圧を平滑化する。逆変換器16は、平滑コンデンサ14のコンデンサ電圧を、モータMを駆動するための交流電圧に変換し、変換した交流電圧をモータMに出力する。
【0016】
初期充電部18は、整流器12への交流電圧の入力が開始されてからモータMの駆動が開始される前までの初期充電期間に平滑コンデンサ14を充電するためのものであり、整流器12と平滑コンデンサ14との間に設けられる。
【0017】
この初期充電部18は、充電抵抗22と、充電抵抗22に対して並列接続される充電用スイッチ24とを有する。
【0018】
充電抵抗22は、初期充電期間に平滑コンデンサ14を充電するために用いられる抵抗であり、この充電抵抗22には温度センサ26が内蔵される。充電用スイッチ24は、初期充電期間では開いた状態にされ、初期充電期間以外には閉じた状態にされる。
【0019】
充電用スイッチ24が開いた状態にされる初期充電期間中、初期充電部18では、整流器12から供給される直流電流は充電抵抗22を通じて平滑コンデンサ14に流れ込み、平滑コンデンサ14が充電される。平滑コンデンサ14のコンデンサ電圧が所定値になるまで充電されると、充電用スイッチ24が閉じた状態にされて初期充電動作が完了する。充電用スイッチ24が閉じた状態では、整流器12から供給される直流電流は、充電抵抗22を通らずに、充電用スイッチ24を通る。
【0020】
また、初期充電部18は、上記のように、初期充電期間中に整流器12から供給される直流電流を充電抵抗22を通じて平滑コンデンサ14に流すため、過大な突入電流が平滑コンデンサ14に流れることを抑制することができる。
【0021】
図2に示すように、整流器12および充電抵抗22は、ヒートシンク30に設けられる。このヒートシンク30において整流器12および充電抵抗22が設けられる側が吸熱面側であり、この吸熱面側とは反対の放熱面側には多数の放熱フィン30aが設けられる。なお、ヒートシンク30に設けられる整流器12および充電抵抗22の上側には、回路基板BDが配置される。この回路基板BDには平滑コンデンサ14などが実装される。ただし、図2では平滑コンデンサ14は図示されていない。
【0022】
上記のように、充電抵抗22には温度センサ26が設けられているため、その温度センサ26を用いてヒートシンク30上の整流器12および充電抵抗22の双方の異常発熱を検出することが可能となる。このため、整流器12および充電抵抗22のそれぞれに温度センサ26が設けられる場合に比べて、温度センサ26のセンサ数を抑えて設置スペースを削減することができる。
【0023】
また、温度センサ26は、初期充電期間以降にも使用される整流器12に比べて使用期間が短く整流器12に比べて発熱し難い充電抵抗22に設けられる。このため、温度センサ26の耐久性を向上させ得る設置スペースを確保し易い。
【0024】
図1の説明に戻り、モータ駆動装置10は、電源供給用スイッチ32、入力電力検出部34、コンデンサ電圧検出部36、制御部38および報知部40を有する。
【0025】
電源供給用スイッチ32は、交流電源Pと整流器12との間に設けられる。本実施の形態では、交流電源Pが三相交流電源であるため、電源供給用スイッチ32は、相ごとに設けられる。電源供給用スイッチ32が閉じた状態の場合、交流電源Pから供給される交流電圧は整流器12に入力される。一方、電源供給用スイッチ32が開いた状態の場合、交流電源Pから供給される交流電圧が整流器12に入力されない。
【0026】
入力電力検出部34は、交流電源Pから整流器12に入力される入力電力を検出するためのものであり、入力電圧検出部34Aと入力電流検出部34Bとを有する。入力電圧検出部34Aは、交流電源Pから整流器12に入力される入力電圧を検出する。本実施の形態では、交流電源Pが三相交流電源であるため、入力電圧検出部34Aは、相ごとに入力電圧を検出する。入力電圧検出部34Aは、検出した入力電圧を制御部38に出力する。
【0027】
入力電流検出部34Bは、交流電源Pから整流器12に入力される入力電流を検出する。本実施の形態では、交流電源Pが三相交流電源であるため、入力電流検出部34Bは、相ごとに入力電流を検出する。入力電流検出部34Bは、検出した入力電流を制御部38に出力する。
【0028】
コンデンサ電圧検出部36は、平滑コンデンサ14のコンデンサ電圧を検出し、検出したコンデンサ電圧を制御部38に出力する。
【0029】
制御部38は、図示しない入力部から与えられる電源投入指令に応じて、電源供給用スイッチ32を閉じた状態に制御することで、整流器12に対して交流電圧の入力を開始させる。制御部38は、交流電圧の入力を開始させてから所定の初期充電期間を経過するまで初期充電部18の充電用スイッチ24を開いた状態に制御することで平滑コンデンサ14を充電させる。制御部38は、初期充電期間が経過すると、初期充電部18の充電用スイッチ24を閉じた状態で維持させる。
【0030】
制御部38は、初期充電期間を経過した以降に、温度センサ26で検出される温度に基づいて、整流器12および充電抵抗22の発熱状態を監視する。具体的には、制御部38は、温度センサ26で検出される温度と第1の閾値とを比較することで、発熱状態を監視する。
【0031】
ここで、温度センサ26で検出される温度が第1の閾値以上である場合、制御部38は、整流器12および充電抵抗22の少なくとも一方が異常発熱したと判断し、電源供給用スイッチ32を開いた状態にして、整流器12への交流電圧の入力を停止させる。
【0032】
しかしながら、温度センサ26で検出される温度だけでは、ヒートシンク30上に配置される整流器12および充電抵抗22のどちらが異常発熱しているかが分からない。そこで、本実施の形態では、制御部38は、温度センサ26、入力電力検出部34およびコンデンサ電圧検出部36の検出結果に基づいて、整流器12および充電抵抗22のいずれが異常発熱であるか判断する。
【0033】
具体的には、温度センサ26で検出される温度が第1の閾値以上であり、入力電力検出部34で検出される入力電圧および入力電流から計算される入力電力が第2の閾値未満である場合に、制御部38は、充電抵抗22が異常発熱であると判断する。
【0034】
また、温度センサ26で検出される温度が第1の閾値以上であり、上記の入力電力が第2の閾値以上であり、コンデンサ電圧検出部36で検出されるコンデンサ電圧が第3の閾値以上である場合に、制御部38は、整流器12が異常発熱であると判断する。
【0035】
なお、温度センサ26で検出される温度が第1の閾値以上であり、上記の入力電力が第2の閾値以上であり、コンデンサ電圧検出部36で検出されるコンデンサ電圧が第3の閾値未満である場合、制御部38は、コンデンサ電圧が低下していると判断する。
【0036】
このように制御部38は、整流器12に温度センサ26がなくても、充電抵抗22に内蔵される温度センサ26を用いて、整流器12および充電抵抗22のいずれが異常発熱であるか判断し得る。
【0037】
制御部38は、整流器12および充電抵抗22のいずれかが異常発熱であると判断した場合、報知指令を生成し、生成した報知指令を報知部40に与える。また、制御部38は、コンデンサ電圧が低下していると判断した場合、報知指令を生成し、生成した報知指令を報知部40に与える。
【0038】
報知部40は、報知指令に基づいて、制御部38によって異常発熱であると判断された旨を報知する。すなわち、制御部38によって整流器12が異常発熱であると判断された場合、報知部40は、整流器12が異常発熱である旨を報知する。また、制御部38によって充電抵抗22が異常発熱であると判断された場合、報知部40は、充電抵抗22が異常発熱である旨を報知する。また、制御部38によってコンデンサ電圧が低下していると判断された場合、報知部40は、コンデンサ電圧が低下している旨を報知する。
【0039】
なお、報知部40の具体的な報知手法としては、例えば、表示部に表示させる表示手法、音響発生器から警告音を発生させる音発生手法、警告灯などの灯具から光を発生させる光発生手法などが挙げられる。なお、2以上の報知手法が用いられてもよい。
【0040】
次に、モータ駆動装置10の異常発熱検出方法について説明する。図3は、モータ駆動装置10の異常発熱検出方法に関する制御部38の処理手順を示すフローチャートである。
【0041】
制御部38は、初期充電期間を経過すると、ステップS1において、温度センサ26で検出される温度と第1の閾値とを比較する。ここで、温度センサ26で検出される温度が第1の閾値未満である場合、制御部38は、異常発熱が生じていないと判断し、上記の比較を所定時間間隔で繰り返す。
【0042】
これに対し、温度センサ26で検出される温度が第1の閾値以上である場合、制御部38は、整流器12および充電抵抗22の少なくとも一方が異常発熱したと判断し、ステップS2に進む。制御部38は、ステップS2において、電源供給用スイッチ32を開いた状態にして整流器12への交流電圧の入力を停止させ、ステップS3に進む。
【0043】
制御部38は、ステップS3において、入力電力検出部34で検出される入力電圧および入力電流から入力電力を計算し、計算した入力電と第2の閾値とを比較する。ここで、入力電が第2の閾値未満である場合、制御部38は、充電抵抗22が異常発熱であると判断し、ステップS4に進んで、その旨を報知部40に報知させる。
【0044】
これに対し、入力電が第2の閾値以上である場合、制御部38は、整流器12および充電抵抗22のどちらが異常発熱であるかが未だ判断できないため、ステップS5に進んで、コンデンサ電圧検出部36で検出されるコンデンサ電圧と第3の閾値とを比較する。
【0045】
ここで、コンデンサ電圧が第3の閾値以上である場合、制御部38は、整流器12が異常発熱であると判断し、ステップS6に進んで、その旨を報知部40に報知させる。一方、コンデンサ電圧が第3の閾値未満である場合、制御部38は、コンデンサ電圧が低下していると判断し、ステップS7に進んで、その旨を報知部40に報知させる。
【0046】
〔変形例〕
以上、本発明の一例として上記実施の形態が説明されたが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることはもちろんである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0047】
例えば、上記実施の形態では、温度センサ26が充電抵抗22に内蔵されたが、例えば、充電抵抗22の表面上に取り付けられていてもよい。つまり、温度センサ26は、充電抵抗22に設けられていればよい。なお、温度センサ26が充電抵抗22に内蔵されている場合、外部の塵芥などが温度センサ26と接触することが抑制される。したがって、加工対象物を切削する工作機器などにモータ駆動装置10が用いられても、温度センサ26は、切削液や切削片などの影響を受けにくく、安定して温度を検出できる。
【0048】
また、上記実施の形態では、充電用スイッチ24としてサイリスタが適用されているが、サイリスタ以外の半導体スイッチング素子が適用されてもよく、メカニカルスイッチが適用されてもよい。つまり、充電用スイッチ24の具体的な種類は特に限定されない。電源供給用スイッチ32についても同様に、具体的な種類は特に限定されない。
【0049】
また、上記実施の形態では、1つのモータMが設けられたが、複数のモータMが設けられてもよい。複数のモータMが設けられる場合、そのモータ数に対応する数の逆変換器16の各々が並列接続された状態で、整流器12の後段に設けられる。
【0050】
なお、初期充電部18および平滑コンデンサ14は、各々の逆変換器16に共通とされる。ただし、平滑コンデンサ14は、各々の逆変換器16と整流器12との間にそれぞれ設けられていてもよい。この場合、各々の平滑コンデンサ14に対してコンデンサ電圧検出部36がそれぞれ設けられる。
【0051】
〔技術的思想〕
上記実施の形態および変形例から把握し得る技術的思想について、以下に記載する。
【0052】
モータ駆動装置(10)は、モータ(M)を駆動する装置である。このモータ駆動装置(10)は、ヒートシンク(30)と、ヒートシンク(30)に設けられ、交流電源(P)から供給される交流電圧を直流電圧に整流する整流器(12)と、整流器(12)で整流された直流電圧を平滑化する平滑コンデンサ(14)と、ヒートシンク(30)に設けられ、モータ(M)の駆動開始前の初期充電期間に平滑コンデンサ(14)を充電するために用いられる充電抵抗(22)と、充電抵抗(22)に設けられる温度センサ(26)と、を備える。
【0053】
このモータ駆動装置(10)では、整流器(12)と充電抵抗(22)とがヒートシンク(30)にそれぞれ設けられ、その充電抵抗(22)に設けられる温度センサ(26)を用いて整流器(12)および充電抵抗(22)の双方の異常発熱を検出することが可能となる。このため、整流器(12)および充電抵抗(22)のそれぞれに温度センサ(26)が設けられる場合に比べて、温度センサ(26)のセンサ数を抑えることができる。また、初期充電期間以降にも使用される整流器(12)に比べて使用期間が短く整流器(12)に比べて発熱し難い充電抵抗(22)に温度センサ(26)が設けられる。このため、温度センサ(26)の設置スペースの制約を受けにくいので、温度センサ(26)の設置自由度を向上することができる。したがって、温度センサ(26)の設置スペースの削減を図りつつ異常発熱を検出することができる。
【0054】
モータ駆動装置(10)は、初期充電期間を経過した以降に温度センサ(26)で検出される温度が第1の閾値以上である場合に、整流器(12)および充電抵抗(22)の少なくとも一方が異常発熱であると判断して、整流器(12)への交流電圧の入力を停止させる制御部(38)と、異常発熱である旨を報知する報知部(40)と、を備えるようにしてもよい。このようにすれば、異常発熱が継続することを回避しつつ、その異常発熱の要因を特定する機会をオペレータに与えることができる。
【0055】
モータ駆動装置(10)は、交流電源(P)から整流器(12)に入力される入力電力を検出するための入力電力検出部(34)を備え、制御部(38)は、温度が第1の閾値以上であり、入力電力が第2の閾値未満である場合に、充電抵抗(22)が異常発熱であると判断し、報知部(40)は、充電抵抗(22)が異常発熱である旨を報知するようにしてもよい。このようにすれば、充電抵抗(22)に設けられる温度センサ(26)を用いて、ヒートシンク(30)に設けられる整流器(12)および充電抵抗(22)のうちの充電抵抗(22)が異常発熱であることを正しく検出し、その旨を報知することができる。
【0056】
モータ駆動装置(10)は、平滑コンデンサ(14)のコンデンサ電圧を検出するコンデンサ電圧検出部(36)を備え、制御部(38)は、温度が第1の閾値以上であり、入力電力が第2の閾値以上であり、コンデンサ電圧が第3の閾値以上である場合に、整流器(12)が異常発熱であると判断し、報知部(40)は、整流器(12)が異常発熱である旨を報知するようにしてもよい。このようにすれば、充電抵抗(22)に設けられる温度センサ(26)を用いて、ヒートシンク(30)に設けられる整流器(12)および充電抵抗(22)のうちの整流器(12)が異常発熱であることを正しく検出し、その旨を報知することができる。
【0057】
制御部(38)は、温度が第1の閾値以上であり、入力電力が第2の閾値以上であり、コンデンサ電圧が第3の閾値未満である場合に、コンデンサ電圧が低下していると判断し、報知部(40)は、コンデンサ電圧が低下している旨を報知するようにしてもよい。このようにすれば、充電抵抗(22)に設けられる温度センサ(26)を用いて、コンデンサ電圧が低下していることを正しく検出し、その旨を報知することができる。
【0058】
モータ駆動装置(10)は、交流電源(P)と整流器(12)との間に設けられる電源供給用スイッチ(32)を備え、制御部(38)は、電源供給用スイッチ(32)を開いた状態にすることで、整流器(12)への交流電圧の入力を停止させるようにしてもよい。
【0059】
モータ駆動装置(10)は、充電抵抗(22)に並列に接続される充電用スイッチ(24)を備え、制御部(38)は、初期充電期間では充電用スイッチ(24)を開いた状態にし、初期充電期間を経過した以降に充電用スイッチ(24)を閉じた状態にするようにしてもよい。
【0060】
異常発熱検出方法は、モータ(M)を駆動するモータ駆動装置(10)の異常発熱検出方法である。モータ駆動装置(10)は、ヒートシンク(30)と、ヒートシンク(30)に設けられ、交流電源(P)から供給される交流電圧を直流電圧に整流する整流器(12)と、整流器(12)で整流された直流電圧を平滑化する平滑コンデンサ(14)と、ヒートシンク(30)に設けられ、モータ(M)の駆動開始前の初期充電期間に平滑コンデンサ(14)を充電するために用いられる充電抵抗(22)と、充電抵抗(22)に設けられる温度センサ(26)と、を有する。異常発熱検出方法は、初期充電期間を経過した以降に温度センサ(26)で検出される温度が第1の閾値以上である場合に、整流器(12)への交流電圧の入力を停止させる第1のステップと、異常発熱である旨を報知する第2のステップと、を含む。
【0061】
この異常発熱検出方法では、整流器(12)と充電抵抗(22)とがヒートシンク(30)にそれぞれ設けられ、その充電抵抗(22)に設けられる温度センサ(26)を用いて整流器(12)および充電抵抗(22)の双方の異常発熱を検出することが可能となる。このため、整流器(12)および充電抵抗(22)のそれぞれに温度センサ(26)が設けられる場合に比べて、温度センサ(26)のセンサ数を抑えることができる。また、初期充電期間以降にも使用される整流器(12)に比べて使用期間が短く整流器(12)に比べて発熱し難い充電抵抗(22)に温度センサ(26)が設けられる。このため、温度センサ(26)の設置スペースの制約を受けにくいので、温度センサ(26)の設置自由度を向上することができる。したがって、温度センサ(26)の設置スペースの削減を図りつつ異常発熱を検出することができる。
【0062】
第1のステップは、温度が第1の閾値以上であり、交流電源(P)から整流器(12)に入力される入力電力が第2の閾値未満である場合に、充電抵抗(22)が異常発熱であると判断し、第2のステップは、充電抵抗(22)が異常発熱である旨を報知するようにしてもよい。このようにすれば、充電抵抗(22)に設けられる温度センサ(26)を用いて、ヒートシンク(30)に設けられる整流器(12)および充電抵抗(22)のうちの充電抵抗(22)が異常発熱であることを正しく検出し、その旨を報知することができる。
【0063】
第1のステップは、温度が第1の閾値以上であり、入力電力が第2の閾値以上であり、平滑コンデンサ(14)のコンデンサ電圧が第3の閾値以上である場合に、整流器(12)が異常発熱であると判断し、第2のステップは、整流器(12)が異常発熱である旨を報知するようにしてもよい。このようにすれば、充電抵抗(22)に設けられる温度センサ(26)を用いて、ヒートシンク(30)に設けられる整流器(12)および充電抵抗(22)のうちの整流器(12)が異常発熱であることを正しく検出し、その旨を報知することができる。
【0064】
第1のステップは、温度が第1の閾値以上であり、入力電力が第2の閾値以上であり、コンデンサ電圧が第3の閾値未満である場合に、コンデンサ電圧が低下していると判断し、第2のステップは、コンデンサ電圧が低下している旨を報知するようにしてもよい。このようにすれば、充電抵抗(22)に設けられる温度センサ(26)を用いて、コンデンサ電圧が低下していることを正しく検出し、その旨を報知することができる。
【符号の説明】
【0065】
10…モータ駆動装置 12…整流器
14…平滑コンデンサ 16…逆変換器
18…初期充電部 22…充電抵抗
24…充電用スイッチ 26…温度センサ
30…ヒートシンク 32…電源供給用スイッチ
34…入力電力検出部 36…コンデンサ電圧検出部
38…制御部 40…報知部
図1
図2
図3