(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上方を開口させた鍋と、鍋を水平に回転させる鍋回転機構と、鍋を下方から加熱する鍋加熱機構と、鍋を前方に向けて起立させる鍋起立機構とを基台に設けた加熱調理装置において、
鍋起立機構は、鍋の起立時に鍋の前端部を下降させるとともに鍋の後端部を上昇させる位置に仮想的に形成される水平な軸線を中心にして鍋を起立させ、軸線を鍋の底部中心の直下方位置を水平に通る位置であって鍋と鍋加熱機構との間を水平に通る位置に形成するとともに、軸線を垂直方向へ上下に昇降させる昇降機構を設けることを特徴とする加熱調理装置。
前記鍋起立機構で鍋を起立させる際に、撹拌翼を繰り返し昇降させて食材を撹拌しながら持ち上げるあおり動作を行う調理姿勢から鍋と干渉しない位置まで上昇させた退避姿勢に姿勢変更させることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の加熱調理装置。
【背景技術】
【0002】
従来より、工場や飲食店舗などにおいては、食材の加熱調理を行うために、加熱調理装置が利用されている。
【0003】
この加熱調理装置は、上方を開口させた鍋と、鍋を水平に回転させる鍋回転機構と、鍋を下方から加熱する鍋加熱機構と、鍋を前方に向けて起立させる鍋起立機構とを基台に設けた構成となっている。
【0004】
そして、加熱調理装置では、鍋の開口から食材を鍋に投入し、鍋回転機構で鍋を水平に回転させながら鍋加熱機構で鍋を加熱して食材の加熱調理を行い、調理後に鍋起立機構で鍋を前方に向けて起立させることで、鍋から食材を取出すようにしている(たとえば、特許文献1参照。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の加熱調理装置では、鍋起立機構が、鍋の前端部を支点として鍋の後端部を上方に持ち上げることで鍋を前方に回転させて起立させる構成となっていた。
【0007】
そのため、上記従来の加熱調理装置では、鍋起立機構に多大な負荷がかかり、消費電力の増大や故障の発生の原因となるおそれがあった。
【0008】
また、上記従来の加熱調理装置では、鍋起立機構で鍋を起立させた際に鍋の後端部分の食材が前方に向けて勢いよく移動してしまい飛散してしまうおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、請求項1に係る本発明では、上方を開口させた鍋と、鍋を水平に回転させる鍋回転機構と、鍋を下方から加熱する鍋加熱機構と、鍋を前方に向けて起立させる鍋起立機構とを基台に設けた加熱調理装置において、鍋起立機構は、鍋の起立時に鍋の前端部を下降させるとともに鍋の後端部を上昇させる位置に仮想的に形成される水平な軸線を中心にして鍋を起立させ
、軸線を鍋の底部中心の直下方位置を水平に通る位置であって鍋と鍋加熱機構との間を水平に通る位置に形成するとともに、軸線を垂直方向へ上下に昇降させる昇降機構を設けることにした。
【0010】
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、前記鍋起立機構は、前記鍋と鍋回転機構と鍋加熱機構とを設けた加熱ユニットごと起立させることにした。
【0011】
また、請求項3に係る本発明では、前記請求項2に係る本発明において、前記鍋起立機構は、前記加熱ユニットの重心を通る前記軸線を中心にして鍋を起立させることにした。
【0012】
また、請求項4に係る本発明では、前記請求項1〜請求項3のいずれかに係る本発明において、前記鍋起立機構で鍋を起立させる際に、撹拌翼を繰り返し昇降させて食材を撹拌しながら持ち上げるあおり動作を行う調理姿勢から鍋と干渉しない位置まで上昇させた退避姿勢に姿勢変更させることにした。
【発明の効果】
【0014】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0015】
すなわち、本発明では、上方を開口させた鍋と、鍋を水平に回転させる鍋回転機構と、鍋を下方から加熱する鍋加熱機構と、鍋を前方に向けて起立させる鍋起立機構とを基台に設けた加熱調理装置において、鍋起立機構は、鍋の起立時に鍋の前端部を下降させるとともに鍋の後端部を上昇させる位置に仮想的に形成される水平な軸線を中心にして鍋を起立させることにしているために、鍋起立機構にかかる負荷を軽減することができて、消費電力や故障の発生を抑制することができるとともに、食材を飛散させることなく鍋を迅速に起立させることができる。
【0016】
特に、前記鍋起立機構によって前記鍋と鍋回転機構と鍋加熱機構とを設けた加熱ユニットごと起立させることにした場合には、鍋の起立時に起立する鍋と鍋回転機構や鍋加熱機構との干渉を回避する必要がなくなり、鍋の起立動作を円滑に行わせることができる。
【0017】
また、前記鍋起立機構によって前記加熱ユニットの重心を通る前記軸線を中心にして鍋を起立させることにした場合には、鍋起立機構にかかる負荷をより一層軽減することができるとともに、鍋の起立動作をより一層円滑に行わせることができる。
【0018】
また、前記鍋起立機構で鍋を起立させる際に、撹拌翼を繰り返し昇降させて食材を撹拌しながら持ち上げるあおり動作を行う調理姿勢から鍋と干渉しない位置まで上昇させた退避姿勢に姿勢変更させることにした場合には、食材をあおりながら調理することができる撹拌翼を鍋の起立動作の支障とならないように設けることができる。
【0019】
さらに、前記鍋起立機構に前記鍋を上下に昇降させる昇降機構を設けて、前記鍋を低い位置で水平にした食材投入姿勢と、前記鍋を高い位置で起立させた食材排出姿勢とに姿勢変更させることにした場合には、倒伏させた状態の鍋の前端部の位置を低くするとともに、起立させた状態の鍋の前端部の位置を高くすることができるので、倒伏させた鍋に食材を投入する際の作業性や起立させた鍋から食材を取出す際の作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係る加熱調理装置の具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
【0022】
[実施例1]
図1〜
図4に示すように、加熱調理装置1は、基台2の前側中央部に加熱ユニット3を鍋起立機構4を介して起倒可能に取付けるとともに、基台2の後部に撹拌ユニット5を取付けている。なお、加熱調理装置1は、コンピューターやメモリーやタイマーなどから構成される制御ユニットで制御される。
【0023】
加熱ユニット3は、矩形箱型状のケース6に鍋7と鍋回転機構8と鍋加熱機構9とを設けている。
【0024】
鍋7は、上方を開口し、湾曲断面状の底部の上縁に直線傾斜断面状の縁部を形成しており、底部と縁部との間においてケース6に水平に回転自在に保持されている。
【0025】
鍋回転機構8は、ケース6の右側後部に駆動源(駆動モーターや減速機など)10を取付けるとともに、駆動源10に駆動ギヤ11を水平回動可能に設け、一方、鍋7の底部と縁部との間の外周面に従動ギヤ12を設け、駆動ギヤ11と従動ギヤ12とを無端状のチェン13で連動連結している。これにより、鍋回転機構8は、駆動源10を駆動することによって、加熱ユニット3のケース6に対して鍋7を水平に回転させる。
【0026】
鍋加熱機構9は、ケース6の中央下部(鍋7の底部の直下方)に加熱体としてメタルマットバーナーなどの面状のガスバーナー14を設けている。なお、ガスバーナー14には、ガス供給源に接続されたガス調整器15をホース16を介して接続している。これにより、鍋加熱機構9は、ガス調整器15で調整したガスをガスバーナー14で燃焼させることによって、鍋7を底側下方から加熱する。
【0027】
このように、加熱ユニット3は、鍋7と鍋回転機構8と鍋加熱機構9とを一体的なユニットに形成しており、鍋起立機構4によって基台2に対して前後に一体的に起倒可能となっている。
【0028】
鍋起立機構4は、基台2の右側上部に駆動源(駆動モーターや減速機など)17を取付けるとともに、基台2の左側上部に軸受18を取付け、一方、加熱ユニット3のケース6の左右側部に回動軸19,20を取付け、ケース6の右側の回動軸20を駆動源17に連動連結するとともに、ケース6の左側の回動軸19を軸受18で回動自在に支持している。
【0029】
ここで、鍋起立機構4は、加熱ユニット3のケース6に仮想的に軸線21を形成し、その軸線21の線上に回動軸19,20を配置している。これにより、鍋起立機構4は、駆動源17を駆動することによって、加熱ユニット3(鍋7、鍋回転機構8、鍋加熱機構9)を仮想的な軸線21を中心にして前方に向けて起立させたり後方に向けて倒伏させる。
【0030】
軸線21は、鍋7の起立時に鍋7の前端部を下降させるとともに鍋7の後端部を上昇させる位置(鍋7の前端よりも後方であって鍋7の後端よりも前方となる位置:鍋7の上方又は下方となる位置)を水平に通る位置に形成している。これにより、鍋7を起立させる際に、鍋7の起立に要する総回転エネルギーを小さくすることができ、鍋7の起立に与する消費電力を低減することができるとともに故障の発生を抑制することができ、さらには、鍋7を迅速に起立させても食材の飛散を抑止することができる。
【0031】
また、軸線21は、鍋7の底部中心の直下方位置を水平に通る位置に形成している。これにより、鍋7を起立させる際に、回転中心から鍋7の縁部までの直線距離が従来のように鍋の前端を中心に回転させる場合よりも短くなり、鍋7の回転に伴って鍋7の縁部の食材にかかる回転モーメントが小さくなるので、食材の飛散させることなく鍋7を迅速に起立させることができる。
【0032】
さらに、軸線21は、鍋7と鍋加熱機構9(ガスバーナー14)との間(鍋7の底部中心とガスバーナー14の中心との間)を水平に通る位置に形成している。これにより、鍋7を起立させる際に、鍋7の重量と鍋加熱機構9(ガスバーナー14)の重量とがバランスすることになり、鍋起立機構4にかかる負荷を軽減することができ、鍋7を円滑に起立させることができる。特に、軸線21を加熱ユニット3の重心を水平に通る位置に形成することで、より一層、鍋起立機構4にかかる負荷を軽減することができ、鍋7を円滑に起立させることができる。
【0033】
このように、鍋起立機構4は、仮想的な軸線21を中心にして鍋7を加熱ユニット3ごと起立又は倒伏(揺動)させるようになっている。そのため、加熱調理装置1では、加熱ユニット3を鍋起立機構4で軸線21を中心にして前後に揺動させながら食材の調理を行うことができるようになっている。また、加熱調理装置1では、調理後に鍋7を起立させる際に、加熱ユニット3と撹拌ユニット5とが干渉(衝突)しないように撹拌ユニット5を退避させるようにしている。
【0034】
撹拌ユニット5は、回転源22(モーターや減速機など)に回転軸23を取付けるとともに、回転軸23に螺旋状の撹拌翼24を取付けており、これら回転源22と回転軸23と撹拌翼24とを一体的に昇降源25(モーターや減速機など)で上下に昇降させることができるようにしている。これにより、撹拌ユニット5は、昇降源25によって撹拌翼24を鍋7の内部にまで降下させた調理姿勢(
図2参照)と鍋7の上方に上昇させた退避姿勢(
図4参照)とに姿勢変更可能となっている。
【0035】
ここで、撹拌翼24は、外周端が調理姿勢において鍋7の底部の湾曲面に近接又は接触するように前端から後端に向けて漸次半径を変化(拡径)させて鍋7の底面に沿った形状としている。そのため、撹拌翼24は、調理姿勢において鍋7の食材を撹拌しながら持ち上げるといった所謂あおりを行うことができる。なお、調理姿勢において、昇降源25によって撹拌翼24を上下に周期的又は非周期的に昇降させるようにしてもよく、また、回転源22によって撹拌翼24を正転又は逆転を周期的又は非周期的に繰り返させてもよい。このように、加熱調理装置1では、撹拌ユニット5に撹拌翼24を設けることで、撹拌翼24で食材をあおることができ、撹拌翼24を上下に昇降させることで食材の持ち上げなどを行うこともできる。
【0036】
加熱調理装置1は、以上に説明したように構成しており、水平状態にした鍋7の内部に食材を投入し、鍋回転機構8で鍋7を回転させて食材を混ぜながら鍋加熱機構9で鍋7を加熱して食材を加熱調理することができる。そして、加熱調理装置1は、調理後に撹拌ユニット5を退避姿勢として鍋起立機構4によって鍋7を起立させて食材を取出すことができる。
【0037】
以上に説明したように、上記加熱調理装置1は、上方を開口させた鍋7と、鍋7を水平に回転させる鍋回転機構8と、鍋7を下方から加熱する鍋加熱機構9と、鍋7を前方に向けて起立させる鍋起立機構4とを基台2に設けており、鍋起立機構4が、鍋7の起立時に鍋7の前端部を下降させるとともに鍋7の後端部を上昇させる位置に仮想的に形成される水平な軸線21を中心にして鍋7を起立させるように構成している。
【0038】
そのため、上記加熱調理装置1では、従来のように鍋の前端を中心にして起立させる場合と比べて鍋起立機構4にかかる負荷を軽減することができ、消費電力や故障の発生を抑制することができるとともに、食材を飛散させることなく鍋7を迅速に起立させることができる。
【0039】
また、上記加熱調理装置1は、鍋起立機構4によって鍋7と鍋回転機構8と鍋加熱機構9とを設けた加熱ユニット3ごと起立させるように構成している。
【0040】
そのため、上記構成の加熱調理装置1では、鍋7の起立時に起立する鍋7と鍋回転機構8や鍋加熱機構9との干渉を回避する必要がなくなり、鍋7の起立動作を円滑に行わせることができる。
【0041】
また、上記加熱調理装置1は、鍋起立機構4によって加熱ユニット3の重心を通る軸線21を中心にして鍋7を起立させるように構成している。
【0042】
そのため、上記構成の加熱調理装置1では、鍋起立機構4にかかる負荷をより一層軽減することができるとともに、鍋7の起立動作をより一層円滑に行わせることができる。
【0043】
また、上記加熱調理装置1は、鍋起立機構4で鍋7を起立させる際に、撹拌翼24を繰り返し昇降させて食材を撹拌しながら持ち上げるあおり動作を行う調理姿勢から鍋7と干渉しない位置まで上昇させた退避姿勢に姿勢変更させるように構成している。
【0044】
そのため、上記構成の加熱調理装置1では、撹拌翼24によって食材をあおりながら調理することができるとともに、撹拌翼24を退避させることで鍋7の起立動作の支障とならないようにすることができ、これによっても鍋7の起立動作を円滑に行わせることができる。
【0045】
[実施例2]
上記実施例1に係る加熱調理装置1では、鍋7の回動軸19,20(軸線21)の高さが固定されているが、これに限られず、鍋7の回動軸19,20(軸線21)の高さを上下に昇降できるようにすることもできる。
【0046】
図5及び
図6に示すように、加熱調理装置26は、実施例1に係る加熱調理装置1と概ね同一の構造でありながら、鍋起立機構4に回動軸19,20(軸線21)を上下に昇降させる昇降機構27,28を設けている。
【0047】
この昇降機構27,28は、軸線21を昇降させることで、加熱ユニット3ごと上下に昇降させることができるようにしている。
【0048】
そして、加熱調理装置26は、鍋7を低い位置で水平にした食材投入姿勢(
図6中に一点鎖線で示す状態)と、鍋7を高い位置で起立させた食材排出姿勢(
図6中に実線で示す状態)とに姿勢変更させる。
【0049】
これによに、加熱調理装置26では、加熱ユニット3を降下させ倒伏させた状態で鍋7に食材を投入して調理を行い、調理後に昇降機構27,28によって加熱ユニット3ごと軸線21を上昇させ、その後、鍋起立機構4で鍋を起立させ、加熱ユニット3を上昇させ起立させた状態で鍋7から調理後の食材を取出すことにしている。
【0050】
このように、上記加熱調理装置26は、鍋起立機構4に軸線21を上下に昇降させる昇降機構27,28を設けて、鍋起立機構4が昇降機構27,28で軸線21を上昇させた後に、鍋7を起立させる構成としている。
【0051】
そのため、上記構成の加熱調理装置26では、倒伏させた状態の鍋7の前端部の位置を低くするとともに、起立させた状態の鍋7の前端部の位置を高くすることができるので、倒伏させた鍋7に低い位置で食材を投入することができ、また、起立させた鍋7に高い位置から食材を取出すことができ、食材を投入する際や食材を取出す際の作業性を向上させることができる。