(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6711904
(24)【登録日】2020年6月1日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】過電圧保護デバイスおよび過電圧保護デバイスを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
H01T 4/12 20060101AFI20200608BHJP
H01T 4/16 20060101ALI20200608BHJP
H01T 21/00 20060101ALI20200608BHJP
【FI】
H01T4/12 F
H01T4/16 F
H01T21/00
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-515495(P2018-515495)
(86)(22)【出願日】2016年9月7日
(65)【公表番号】特表2018-535510(P2018-535510A)
(43)【公表日】2018年11月29日
(86)【国際出願番号】EP2016071110
(87)【国際公開番号】WO2017050579
(87)【国際公開日】20170330
【審査請求日】2018年3月23日
(31)【優先権主張番号】102015116278.4
(32)【優先日】2015年9月25日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】ティーディーケイ・エレクトロニクス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TDK ELECTRONICS AG
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】リナー, フランツ
【審査官】
太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】
特表2014−523648(JP,A)
【文献】
特開2000−133409(JP,A)
【文献】
特開2000−068029(JP,A)
【文献】
特開2013−069561(JP,A)
【文献】
特開平09−190868(JP,A)
【文献】
特開平10−312876(JP,A)
【文献】
特開平03−230487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 1/00− 4/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過電圧保護デバイス(1)を製造するための方法であって、
1つの基体(2)を作製するステップであって、当該基体が、2つのセラミック層(3)の間に配設されている少なくとも1つの内部電極(4)を備え、当該少なくとも1つの内部電極(4)が、当該基体(2)の側面(5,6)に達しているステップと、
前記基体(2)の少なくとも1つの側面(5,6)上で前記少なくとも1つの内部電極(4)をエッチングするステップであって、これにより前記基体(2)の当該少なくとも1つの側面(5,6)と前記内部電極(4)との間に1つの空洞(11)が形成されるステップと、
前記基体(2)の互いに反対側にある2つの側面(5,6)上に、2つの外部電極(7,10)を取り付けるステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記空洞(11)を1つのガスで充填するステップをさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの内部電極(4)は、前記基体(2)の2つの互いに反対側にある側面(5、6)上でエッチングされることを特徴とする、請求項1または2に記載に方法。
【請求項4】
前記方法は、前記基体(2)を焼結するステップをさらに備え、当該ステップは前記内部電極(4)のエッチングの前に実施されることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの内部電極(4)をエッチングするステップ用に、過硫酸ナトリウム,硫酸,または塩化鉄(iii)をベースにしたエッチング溶液が用いられることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は過電圧保護デバイスならびに過電圧保護デバイスを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
過電圧保護デバイスは、過電圧が起こる場合に使用されてよく、これによりこれと接続された回路構成体を過電圧による損傷からの保護として用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決すべき課題は、改善された過電圧保護デバイスおよびこれを製造するための方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題は請求項1に記載の過電圧保護デバイスによって解決される。さらに上記の課題は第2の独立請求項に記載の方法によって解決される。
【0005】
1つの過電圧保護デバイスが提示され、この過電圧保護デバイスは、2つのセラミック層の間に配設されている少なくとも1つの内部電極を備える1つの基体を備え、ここでこの少なくとも1つの内部電極は、この基体の少なくとも1つの側面から後退しており、ここでこの少なくとも1つの内部電極とこの少なくとも1つの側面との間は、1つのガス充填された空洞となっており、そしてここでこの基体の2つの互いに反対側にある側面上にはそれぞれ1つの外部電極が配設されている。この過電圧保護デバイスは、2つ以上の内部電極を備えてよく、ここで各々の内部電極は、2つのセラミック層の間に配設されている。これらの内部電極の各々は、この基体の少なくとも1つの側面から後退しており、ここでそれぞれの内部電極とこの側面との間は、1つのガス充填された空洞となっている。
【0006】
このガス充填された空洞は、具体的にはスパークギャップとして利用することができる。これにより、このガス充填された空洞は、上記の内部電極と上記の外部電極との間に電圧が印加され、この電圧が1つの所定の絶縁破壊電圧を越えない限り、絶縁状態となっている。この絶縁破壊電圧を越えると、このガス充填された空洞に配設されているガスはイオン化され、そして上記の外部電極(複数)は、上記の内部電極(複数)およびこの空洞において丁度形成されたスパークギャップを介して、互いに電気的に導通して接続される。このようにして短絡が発生する。この過電圧保護デバイスにおける短絡が引き起こされることによって、この過電圧保護デバイスと回路接続されている回路構成体を損傷から保護することができる。
【0007】
このガスは、たとえば窒素または希ガスであってよい。代替としてこのガスは、たとえば空気またはガス混合体であってよい。このガス混合体は、アルゴン,ネオン,および水素の1つ以上を含んでよい。
【0008】
上述した過電圧保護デバイスは、省スペースの構造を特徴としている。上記の内部電極(複数)が、上記の側面に対して後退していることによって、上記のスパークギャップは、この過電圧保護デバイスの基体に一体化することができる。これらの内部電極の後退は、選択的エッチング処理によって実現することができ、この選択的エッチング処理では、上記の内部電極が上記の側面に対して狙いを定めて後退され、ここでこれらの内部電極の材料が除去される。この方法は、非常に小さな空洞を高い精度で作ることを可能とする。たとえば5〜20μmの長さ、好ましくは10μmの長さを有する空洞を作ることができる。このようにして、所望の絶縁破壊電圧に調整することができる。
【0009】
ここに記載されているように、この過電圧保護デバイスには、1つの単一の内部電極で充分である。1つの代替の実施形態においては、この過電圧保護デバイスは、積層方向に重なり合って配設されている複数の内部電極を備えてよい。この代替の実施形態による過電圧保護デバイスは、改善された通電容量を備える。さらにこの代替の実施形態による過電圧保護デバイスにおいては、この過電圧保護デバイスが故障して交換されなければならなくなるまで、絶縁破壊が複数回発生し得る。
【0010】
上記の少なくとも1つの内部電極と上記の少なくとも1つの側面上に配設されている外部電極との間には1つのスパークギャップが形成され得る。このスパークギャップは、上記の2つの外部電極の間に印加される電圧が上記の絶縁破壊電圧を越える場合に、これらの2つの外部電極の短絡を生じるように引き起こされ得る。
【0011】
こうして上記の過電圧保護デバイスは、上記の2つの外部電極の間に絶縁破壊電圧より大きな電圧が印加される場合に、上記の空洞に配設されたガスが、スパークギャップを用いて、そして上記の少なくとも1つの内部電極を用いて、これらの外部電極を電気的に導通して互いに接続するように構成することができる。
【0012】
上記の少なくとも1つの内部電極は、上記の基体の2つの互いに反対側にある側面上でそれぞれの側面から後退していてよく、ここでこの少なくとも1つの内部電極とこれらのそれぞれの側面との間に、それぞれ1つのガス充填された空洞が配設されている。このような過電圧保護デバイスは、簡単なエッチング処理で作製することができ、このエッチング処理でこの内部電極は、エッチング溶液に曝露される。1つの側面に対してのみ後退した1つの内部電極を有する過電圧保護デバイスを作製するためには、他の側面はこのエッチング工程の間、保護レジストを用いて覆われていなければならない。こうしてこの方法は、保護レジストの取り付けおよび除去の追加の工程を必要とする。代替として、1つの側面に対してだけ後退している少なくとも1つの内部電極を有する過電圧保護デバイスは、この過電圧保護デバイスが一面でエッチング溶液に浸されることによって作製することができる。この際このデバイスは、第2の側面がこのエッチング溶液に接触しないように浸すことができる。
【0013】
さらに、上記の内部電極が上記の基体の2つの側面に対して後退している過電圧保護デバイスは、さらに絶縁破壊電圧が方向依存性を全く有しないことを特徴とする。これはこのデバイスが対称的に構成されているからである。
【0014】
上記の内部電極は、銅を含んでよく、または銅から成っていてよい。上記の内部電極は、タングステンを含んでよく、またはタングステンから成っていてよい。上記の外部電極(複数)は、銅または銀を含んでよく、あるいはこれらの材料の1つから成っていてよい。
【0015】
上記のセラミック層は、酸化アルミニウム、ガラスフリットが混入された酸化アルミニウム、または酸化ジルコニウムを含んでよい。酸化アルミニウム、ガラスフリットが混入された酸化アルミニウム、または酸化ジルコニウムを含むセラミック層は、上記の過電圧保護デバイスにとりわけ良好に適している。これはこれらが焼結処理に耐え、気密であり、そしてさらに上記の内部電極のエッチング処理に適合しているからである。さらに、小さなキャパシタンスを有する過電圧保護デバイスが有利である。この理由から、酸化アルミニウム、ガラスフリットが混入された酸化アルミニウム、または酸化ジルコニウムを含むセラミック層が適しているが、これはこれらの材料が小さな誘電率を有しているからである。
【0016】
上記の基体は、その辺長がそれぞれ0.1mm〜3.0mmの範囲にある設置面を備えてよい。ここで設置面とは、その面法線が上記の基体の積層方向に対し平行となっている面を表している。たとえばこの設置面の辺長は、0.7mm〜1.5mmとなっていてよい。このデバイスは0603サイズのデバイス、0402サイズのデバイス、0201サイズのデバイス、または01005サイズのデバイスであってよい。これらの仕様は、本願出願日で有効な版のEIA規格によるデバイスの寸法の定義である。たとえばコード01005は、このデバイスが0.4mmの長さおよび0.2mmの幅を有することを示している。
【0017】
過電圧保護デバイスは、表面取り付け用のデバイス、いわゆる表面実装デバイス(SMD)であってよい。これに応じて、この過電圧保護デバイスは、1つの配線基板上にはんだ付けされるようになっていてよい。さらにこの過電圧保護デバイスは、はんだ付け可能な接続面(複数)を備えてよく、これらの接続面は、たとえば上記の外部電極(複数)から形成することができる。
【0018】
さらにこれらの外部電極は、1つの電気メッキ層を備えてよい。この電気メッキ層は、外部メタライジング部の焼成の後の電気メッキ処理において取り付けることができる。
【0019】
本発明のもう1つの態様は、過電圧保護デバイスを製造するための方法に関する。ここでこの過電圧保護デバイスは、上記の過電圧保護デバイスであってよい。これに応じて、上記の過電圧保護デバイスに関連して開示されたいかなる構造的または機能的特徴も本方法に当てはまるものである。この逆に、この方法に関して開示された機能的および構造的特徴に関する全ては、上記の過電圧保護デバイスにも当てはまり得るものである。
【0020】
本方法は、以下の処理ステップを備える。
−1つの基体を作製するステップであって、この基体は、2つのセラミック層の間に配設されている少なくとも1つの内部電極を備え、ここでこの少なくとも1つの内部電極が、この基体の側面(複数)に達しているステップ。
−上記の基体の少なくとも1つの側面上で上記の少なくとも1つの内部電極をエッチングするステップであって、こうして上記の基体のこの少なくとも1つの側面と上記の内部電極との間に1つの空洞が形成されるステップ。
−上記の基体の互いに反対側にある2つの側面上に、2つの外部電極を取り付けるステップ。
【0021】
ここで上記のステップ(複数)は、好ましくはここに示す順序で実施されてよい。上記の2つの外部電極の取り付けによって、上記の空洞は封止することができる。
【0022】
上記の少なくとも1つの内部電極のエッチングによって、上記の空洞を簡単に作ることができる。さらにこのエッチングは、この空洞を高い精度で所望の深さで作ることを可能とする。
【0023】
上記の方法は、上記の空洞を1つのガスで充填するステップをさらに備えてよい。このガスは上記の外部電極の焼成の際に封止されるプロセスガスであってよい。銀から成る外部電極を使用する場合には、その焼成は、還元雰囲気下で行われなければならず、たとえば窒素雰囲気下で行われる。この焼成は、還元雰囲気下、たとえば窒素雰囲気下で行われるが、これは上記の内部電極が同またはタングステンを含み得るからであり、そしてこれらの材料は還元雰囲気を必要とするからである。上記の少なくとも1つの内部電極は、上記の基体の2つの互いに反対側にある側面上でエッチングすることができる。代替として、上記の内部電極は、上記の基体の1つの側面上でのみエッチングすることもできる。
【0024】
上記の方法は、上記の基体を焼結するステップをさらにさらに備えてよく、ここでこのステップは上記の内部電極のエッチングの前に実施される。
【0025】
上記の内部電極のエッチングのステップ用に、1つのエッチング溶液が用いられてよく、このエッチング溶液は、過硫酸ナトリウム,硫酸,または塩化鉄(iii)をベースにしたエッチング溶液である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
以下では、図を参照して、本発明を詳細に説明する。
【
図1】1つの第1の実施形態例による、1つの過電圧保護デバイスを示す。
【
図2】1つの第2の実施形態例による、1つの過電圧保護デバイスを示す。
【
図3】1つの製造方法の途中の1つの過電圧保護デバイスを示す。
【
図4】この製造方法の後の時点での過電圧保護デバイスを示す。
【
図5】この製造方法のさらに後の時点での過電圧保護デバイスを示す。
【
図6】1つの代替の方法の形態における過電圧保護デバイスを示す。
【0027】
図1は、1つの第1の実施形態例による、1つの過電圧保護デバイス1を示す。この過電圧保護デバイス1は、1つの基体2を備える。この基体2は2つのセラミック層3を備える。さらにこの基体2は、1つの内部電極4を備え、この内部電極は、上記の2つのセラミック層3の間に積層方向Sに配設されている。
【0028】
この基体2は、1つの第1の側面5および1つの第2の側面6を備え、ここでこの第2の側面6は、この第1の側面5の反対側にある。この基体2の第1の側面5上には、1つの第1の外部電極7が配設されている。この第1の外部電極7は、この第1の側面5を完全に覆っており、さらにこの基体2の上面8および下面9をそれぞれ部分的に覆っている。この基体2の第2の側面6上には、1つの第2の外部電極10が配設されている。この第2の外部電極10は、この第2の側面6を完全に覆っており、そしてまたこの基体2の上面8および下面9をそれぞれ部分的に覆っている。
【0029】
第1および第2の側面5,6は、それぞれこれらの面法線が上記の積層方向Sに対し垂直となるように設けられている。上面8および下面9は、これらの面法線が上記の積層方向Sに対し平行となるように設けられている。この上面8およびこの下面9は、上記の内部電極4に対し平行となっている。
【0030】
内部電極4は、基体2の第1の側面5に対して後退している。これに対応して、1つの空洞11が第1の外部電極7と内部電極4との間に形成されている。この空洞11は、1つのガスで充填されている。
【0031】
さらにこの内部電極4は、第2の側面6に対しても後退しており、こうして第2の外部電極10とこの内部電極4との間にも同様に空洞11が形成されている。この空洞11も、1つのガスで充填されている。
【0032】
上記の過電圧保護デバイス1は、具体的には避雷器として使用することができる。こうしてこのデバイスは、過電圧の場合に短絡スイッチとして用いられる。この過電圧保護デバイス1は、これに回路接続されている回路構成体に対する過電圧保護を可能とする。
【0033】
この過電圧保護デバイスにおける短絡は、上記のガス充填された空洞11に形成されている1つのスパークギャップによって実現することができる。第1の外部電極7および第2の外部電極10は、それぞれこれらに割り当てられる回路構成体と回路接続されていてよい。これに対応して、この第1の外部電極7およびこの第2の外部電極10には、それぞれ1つの電位が印加されてよい。内部電極4はいわゆる浮遊電極として使用することができ、こうしてこの電極には電位は全く印加されない。
【0034】
上記の空洞11に配設されたガスは当初絶縁性として作用する。しかしながら外部電極7,10の内の1つと内部電極4との間の電位差が、絶縁破壊電圧を越えると、これよりこのガスはイオン化され、そしてスパークギャップを形成し、このスパークギャップを介して、それぞれの外部電極7,10が内部電極4と電気的に導通して接続される。これらの外部電極7,10のそれぞれ他の1つとこの内部電極4との間の電位差も絶縁破壊電圧より大きくなると、これよりそれぞれべつの空洞11におけるこのガスもイオン化され、そしてもう1つのスパークギャップを形成する。この時点でこれら2つの外部電極7,10は、これらのスパークギャップおよびこの内部電極4を介して電気的に導通して互いに接続され得る。以上により、短絡が生じ得る。
【0035】
上記の絶縁破壊電圧は、内部電極4と2つの外部電極7,10との間の距離、および用いられる充填ガスおよびその充填圧によって決定される。上記の絶縁破壊電圧は、パッシェンの法則を用いて計算することができる。この過電圧保護デバイス1は、100V以上の絶縁破壊電圧用に設計することができる。
【0036】
この内部電極4は、銅を含んでよく、または銅から成っていてよい。代替として、この内部電極4は、タングステンを含んでよく、またはタングステンから成っていてよい。
図1に示す過電圧保護デバイス1では、外部電極7,10は、内部電極4と直接接続されていない。このためこれらの外部電極7,10用に、内部電極用の材料と異なる材料を使用することができる。これらの外部電極7,10は、たとえば銀を含んでよい。
【0037】
図2は、1つの第2の実施形態例による、1つの過電圧保護デバイス1を示す。この第2の実施形態による過電圧保護デバイス1は、1つの空洞11が、内部電極4と第1の外部電極7との間にのみ設けられていることが、
図1に示す過電圧保護デバイス1とは異なっている。内部電極4は、基体2の第2の側面6まで引き出されており、そしてこれに対応して第2の外部電極10に接している。この第2の外部電極10およびこの内部電極4は、電気的に互いに接続されている。このためこの内部電極4は、浮遊電極として使用されない。その代り、この内部電極4には、第2の外部電極と同じ電位が印加される。
【0038】
上記の第2の実施形態例による過電圧保護素子1は、小さな限界電圧を特徴とする。上記のスパークギャップは、2つの外部電極7,10を互いに短絡するためには、ここではただ1つの空洞11を乗り越えなければならない。このためこのデバイスは、既に上記の第1の実施形態例よりも小さな電圧で、動作可能である。
【0039】
この第2の実施形態例では、好ましくは、内部電極4と同じ材料を含む外部電極7,10が用いられてよい。ここでこの内部電極4およびこれらの外部電極7,10は、たとえば銅を含む。
【0040】
以下では、
図3〜5を参照して、上記の第1の実施形態例による過電圧保護デバイス1を製造するための方法が説明される。
【0041】
図3は、1つの印刷されたグリーンシート12を示し、このグリーンシートから複数の過電圧保護デバイス1が作製される。この際このグリーンシート12から後に基体2のセラミック層3が作製される。このグリーンシート12上には、導電性の材料13の帯状体(複数)が印刷され、これらから過電圧保護デバイス1の内部電極4が作製される。この材料13は、銅ペーストであってよい。
【0042】
過電圧保護デバイス1が故障するまでの絶縁破壊の回数を大きくするために、2つのセラミック層の間に配設された単一の内部電極4の代わりに、隣り合う複数の細い内部電極4を用いることもできる。この場合、銅ペーストから成る1つの帯状体の代わりに、銅ペーストの複数の細い帯状体が塗布されるであろう。しかしながら、このような過電圧保護デバイス1の構成は、このデバイス1の通電容量を低減し得る。
【0043】
ここでこれらの印刷されたグリーンシート12は、重なり合って積層される。グリーン状態の各々のデバイス1は、1つ以上の印刷されたシートを備えてよい。上記の第1の実施形態例による過電圧保護デバイスの作製のために、1つの印刷されたグリーンシートと1つの印刷されていないグリーンシートから成る1つの積層体が形成される。積層方向に重なり合って配設された複数の内部電極を有する1つの代替の過電圧保護デバイス1の作成のために、複数の印刷されたグリーンシートが重なり合って配設されてよい。
【0044】
この積層の後に、印刷されたグリーンシート(複数)から成るこの積層体はプレスされる。次の方法ステップにおいて、これらのグリーンシート(複数)12は、
図3で点線で示す分離線14に沿って個々に分離される。
【0045】
続いてこの積層体は焼結され、そして場合によりラビングされる。
図4は、これらの2つのステップの後の、1つの過電圧保護デバイス1を示す。
【0046】
次のステップにおいて、基体2の少なくとも1つの側面5,6上で上記の内部電極(複数)4は、エッチングされ、こうしてこの基体2のこの少なくとも1つの側面5,6とこの内部電極4との間に1つの空洞11が形成される。
図5は、このステップの後の1つのデバイス1を示し、ここでは第1および第2の側面5,6の両面上で内部電極4がエッチングされている。ここでこのエッチングステップは、内部電極4の材料が除去されるように行われる。これによりこの過電圧保護デバイス1に空洞11を形成するエッチング溝が形成される。このエッチングステップの持続時間および用いられるエッチング溶液に依存して、このエッチング溝の深さは所望の値に調整することができる。
【0047】
内部電極4のエッチングのステップのために、上記のデバイスは、たとえば過流酸ナトリウム、硫酸、または塩化鉄(iii)ベースの溶液に曝露される。空洞11の長さに対応するバックエッチングされた領域の長さは、たとえば5〜20μmであってよい。これは湿式化学エッチング処理であってよい。
【0048】
次の方法ステップにおいては、ここで上記の外部電極7,10が第1および第2の側面5,6に取り付けられる。これらの外部電極7,10は、たとえば
図4に示す積層体がメタライジングペーストに浸され、そして続いてこのメタライジングペーストが焼成されることによって生成することができる。さらに、このメタライジングペーストは、この外部電極上に電気メッキ層を生成するために電気メッキされてよい。
【0049】
上記の外部電極7,10を取り付けるステップにおいて、空洞11が封止される。これに合わせて、この方法ステップにおいて、この空洞11は上記のガスで充填されなければならない。こうして
図1に示す過電圧保護デバイス1が生成される。
【0050】
図6は、1つの代替のエッチング処理を実行した後の過電圧保護デバイス1を示し、このエッチング処理では、上記の内部電極4が上記の基体の第1の側面上でのみ選択的にエッチングされている。ここではこの基体の第2の側面6は、このエッチング処理の前にマスキングされている。たとえば基体2は、このエッチング処理の前に、その第2の側面6で保護レジストに浸されてよい。代替として、この基体2は、第1の側面5でのみエッチング溶液に浸されてよく、こうしてこの第2の側面6は、このエッチング溶液と接触することはなく、そしてこれに対応して内部電極4はこの第2の側面6でエッチングされない。こうしてこの内部電極4は、この第2の側面6と面一となっており、そして第1の側面5からバックエッチングされている。
【0051】
図6に示す過電圧保護デバイスは、複数の重なり合って配設された内部電極4を備え、ここで2つの内部電極4の間には、それぞれ1つのセラミック層3が配設されている。
【符号の説明】
【0052】
1 : 過電圧保護デバイス
2 : 基体
3 : セラミック層
4 : 内部電極
5 : 第1の側面
6 : 第2の側面
7 : 第1の外部電極
8 : 上面
9 : 下面
10 : 第2の外部電極
11 : 空洞
12 : グリーンシート
13 : 導電性材料
14 : 分離線
S : 積層方向