特許第6711911号(P6711911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6711911
(24)【登録日】2020年6月1日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】直動伸縮機構
(51)【国際特許分類】
   B25J 18/02 20060101AFI20200608BHJP
   F16G 13/20 20060101ALI20200608BHJP
【FI】
   B25J18/02
   F16G13/20
【請求項の数】19
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-520805(P2018-520805)
(86)(22)【出願日】2017年5月19日
(86)【国際出願番号】JP2017018934
(87)【国際公開番号】WO2017208872
(87)【国際公開日】20171207
【審査請求日】2019年4月15日
(31)【優先権主張番号】特願2016-108401(P2016-108401)
(32)【優先日】2016年5月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】510341215
【氏名又は名称】ライフロボティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002103
【氏名又は名称】特許業務法人にじいろ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尹 祐根
(72)【発明者】
【氏名】神田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】松田 啓明
【審査官】 貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/152265(WO,A1)
【文献】 特開平6−320472(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/070915(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/137171(WO,A1)
【文献】 特開平5−277982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 − 21/02
F16G 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに前後端面において屈曲可能に連結される平板形状の複数の第1コマと、
互いに底部の前後端面において屈曲可能に連結される溝形状の複数の第2コマと
前記複数の第1コマの先頭と前記複数の第2コマの先頭とを結合する結合部と、
前記第1、第2コマを挟み込み且つ前後移動自在に支持するために複数のローラを装備する送り出し機構部とを具備し、
前記第1、第2コマは互いに接合されたとき直線状に硬直し、前記第1、第2コマは互いに分離されたとき屈曲状態に復帰し、
前記ローラに接する側の前記第1、第2コマの表面には前後にわたる少なくとも一の溝部が形成され
前記溝部以外の表面は前記溝部の底面よりも面精度が高い、直動伸縮機構。
【請求項2】
前記溝部は、前記第1コマの上面と前記第2コマの下面とにそれぞれに形成される請求項1記載の直動伸縮機構。
【請求項3】
前記溝部は、前記第2コマの両側面にそれぞれ形成される請求項2記載の直動伸縮機構。
【請求項4】
前記溝部は、前記第1コマの上面の幅中央に形成される請求項2記載の直動伸縮機構。
【請求項5】
前記溝部は、前記第2コマの下面の幅中央に形成される請求項2記載の直動伸縮機構。
【請求項6】
前記ローラの転動体の外周面は前記第1、第2コマの表面のうち前記溝部を除いた表面部分に接する請求項1記載の直動伸縮機構。
【請求項7】
前記ローラは同軸に離間して配置された複数の転動体を有し、
前記複数の転動体の外周面は前記第1、第2コマの表面のうち前記溝部を除いた複数の表面部分にそれぞれ接する請求項1記載の直動伸縮機構。
【請求項8】
前記ローラの転動体の幅は前記第1、第2コマの幅よりも短い請求項6と7のいずれか一項記載の直動伸縮機構。
【請求項9】
互いに前後端面において屈曲可能に連結される平板形状の複数の第1コマと、
互いに底部の前後端面において屈曲可能に連結される溝形状の複数の第2コマと、
前記複数の第1コマの先頭と前記複数の第2コマの先頭とを結合する結合部と、
前記第1、第2コマを挟み込み且つ前後移動自在に支持するために複数のローラを装備する送り出し機構部とを具備し、
前記第1、第2コマは互いに接合されたとき直線状に硬直し、前記第1、第2コマは互いに分離されたとき屈曲状態に復帰し、
前記ローラに接する側の前記第1、第2コマの表面には前後にわたる少なくとも一の溝部が形成され、
前記ローラの転動体の幅は前記溝部の幅よりも短く、
前記ローラの転動体の外周面は前記溝部の底面に接する直動伸縮機構。
【請求項10】
互いに前後端面において屈曲可能に連結される平板形状の複数の第1コマと、
互いに底部の前後端面において屈曲可能に連結される溝形状の複数の第2コマと
前記複数の第1コマの先頭と前記複数の第2コマの先頭とを結合する結合部と、
前記第1、第2コマを挟み込み且つ前後移動自在に支持するために複数のローラを装備する送り出し機構部とを具備し、
前記第1、第2コマは互いに接合されたとき直線状に硬直し、前記第1、第2コマは互いに分離されたとき屈曲状態に復帰し、
前記ローラに接する側の前記第1、第2コマの表面には前後にわたって少なくとも一の凸状の線条部が形成され
前記線条部の凸面の面精度は、前記線条部以外の表面の面精度よりも高い、直動伸縮機構。
【請求項11】
前記線条部は、前記第1コマの上面と前記第2コマの下面とにそれぞれに形成される請求項10記載の直動伸縮機構。
【請求項12】
前記線条部は、前記第2コマの両側面にそれぞれ形成される請求項11記載の直動伸縮機構。
【請求項13】
前記線条部は、前記第2コマの上面の幅中央に形成される請求項11記載の直動伸縮機構。
【請求項14】
前記線条部は、前記第2コマの下面の幅中央に形成される請求項11記載の直動伸縮機構。
【請求項15】
互いに前後端面において屈曲可能に連結される平板形状の複数の第1コマと、
互いに底部の前後端面において屈曲可能に連結される溝形状の複数の第2コマと、
前記複数の第1コマの先頭と前記複数の第2コマの先頭とを結合する結合部と、
前記第1、第2コマを挟み込み且つ前後移動自在に支持するために複数のローラを装備する送り出し機構部とを具備し、
前記第1、第2コマは互いに接合されたとき直線状に硬直し、前記第1、第2コマは互いに分離されたとき屈曲状態に復帰し、
前記ローラに接する側の前記第1、第2コマの表面には前後にわたる少なくとも一の凸状の線条部が形成され、
前記ローラの転動体の外周面は前記第1、第2コマの表面のうち前記線条部を除いた表面部分に接する直動伸縮機構。
【請求項16】
互いに前後端面において屈曲可能に連結される平板形状の複数の第1コマと、
互いに底部の前後端面において屈曲可能に連結される溝形状の複数の第2コマと、
前記複数の第1コマの先頭と前記複数の第2コマの先頭とを結合する結合部と、
前記第1、第2コマを挟み込み且つ前後移動自在に支持するために複数のローラを装備する送り出し機構部とを具備し、
前記第1、第2コマは互いに接合されたとき直線状に硬直し、前記第1、第2コマは互いに分離されたとき屈曲状態に復帰し、
前記ローラに接する側の前記第1、第2コマの表面には前後にわたる少なくとも一の凸状の線条部が形成され、
前記ローラは同軸に離間して配置された複数の転動体を有し、
前記複数の転動体の外周面は前記第1、第2コマの表面のうち前記線条部を除いた複数の表面部分にそれぞれ接する直動伸縮機構。
【請求項17】
前記ローラの転動体の幅は前記第1、第2コマの幅よりも短い請求項15と16のいずれか一項記載の直動伸縮機構。
【請求項18】
前記ローラの転動体の幅は前記線条部の幅よりも短く、
前記ローラの転動体の外周面は前記線条部の表面に接する請求項11記載の直動伸縮機構。
【請求項19】
互いに前後端面において屈曲可能に連結される平板形状の複数の第1コマと、
互いに底部の前後端面において屈曲可能に連結される溝形状の複数の第2コマと
前記複数の第1コマの先頭と前記複数の第2コマの先頭とを結合する結合部と、
前記第1、第2コマを挟み込み且つ前後移動自在に支持するために複数のローラを装備する送り出し機構部とを具備し、
前記第1、第2コマは互いに接合されたとき直線状に硬直し、前記第1、第2コマは互いに分離されたとき屈曲状態に復帰し、
前記ローラは、前記ローラを前記第1、第2コマの表面の一部分を転動させるために、前記前記第1、第2コマの幅よりも短く、
前記ローラが転動する前記第1、第2コマの表面の前記一部分は前記ローラが転動しない前記第1、第2コマの表面の他の部分よりも面精度が高い、直動伸縮機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は直動伸縮機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より多関節ロボットアーム機構が産業用ロボットなど様々な分野で用いられている。発明者らはこのような多関節ロボットアーム機構に適用できる直動伸縮機構を開発した(特許文献1)。直動伸縮機構の多関節ロボットアーム機構への採用は肘関節部を不要とし、容易に特異点を解消することができるので非常に有益な構造である。
【0003】
直動伸縮機構は、屈曲可能に連結された平板形状を有する金属製の複数のコマ(第1コマ)と、底板において屈曲可能に連結された溝形状を有する金属製の複数のコマ(第2コマ)とを有する。第1、第2コマは先端で結合されており、前方に送り出されるとき第1、第2コマは重ね合わされ、硬直状態が確保される。それにより一定の剛性を有する柱状のアーム部が構成される。後方に引き戻されるとき第1、第2コマは分離され、それぞれ屈曲可能な状態に復帰し、支柱の内部に収納される。送り出し機構は角筒形状のフレームの4面に複数のローラを装備してなり、第1、第2コマを4方向から強固に挟み込みながら前後移動を実現するとともに、アーム部を上下左右に支持する。
【0004】
アーム部の先端にはハンド等のエンドエフェクタ(手先効果器)が装備されており、その高い位置精度の実現にはアーム部の円滑で直線的な前後移動が必要とされる。そのためローラに接する第1、第2コマそれぞれの上下左右の各表面に高い面精度(表面粗さ)が要求され、第1、第2コマは高価な部品とならざるを得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5435679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
目的は、直動伸縮機構のコスト低減を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る直動伸縮機構は、互いに前後端面において屈曲可能に連結される平板形状の複数の第1コマと、互いに底部の前後端面において屈曲可能に連結される溝形状の複数の第2コマと、前記第1、第2コマは互いに接合されたとき直線状に硬直し、前記第1、第2コマは互いに分離されたとき屈曲状態に復帰し、前記複数の第1コマの先頭と前記複数の第2コマの先頭とを結合する結合部と、前記第1、第2コマを挟み込み且つ前後移動自在に支持するために複数のローラ装備する送り出し機構部とを具備し、前記ローラに接する前記第1、第2コマの表面には前後にわたる少なくとも一の溝部が形成される。前記溝部以外の表面は前記溝部の底面よりも面精度が高い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る直動伸縮関節を装備するロボットアーム機構の外観を示している。
図2図2は、図1のロボットアーム機構の構成を図記号表現により示す図である。
図3図3は、図1のロボットアーム機構の内部構造を示す側面図である。
図4図4は、図1のロボットアーム機構の構成を図記号表現により示す図である。
図5図5は、図3の第1コマの構造を示す図である。
図6図6は、図3の第2コマの構造を示す図である。
図7図7は、図3のアーム部をローラとともに示す図である。
図8図8は、図3の第1コマの他の構造を示す図である。
図9図9は、図3の第2コマの他の構造を示す図である。
図10図10は、図8の第1コマと図9の第2コマとからなるアーム部をローラとともに示す図である。
図11図11は、図7のローラの第1、第2コマに対して接する面の変形例を示す図である。
図12図12は、図7のローラの第1、第2コマに対して接する面の他の変形例を示す図である。
図13図13は、図10のローラの第1、第2コマに対して接する面の変形例を示す図である。
図14図14は、図10のローラの第1、第2コマに対して接する面の他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら第1、第2、第3実施形態に係る直動伸縮機構を説明する。なお、各実施形態に係る直動伸縮機構は、単独の機構(関節)として使用することができる。以下の説明では、複数の関節部のうち一の関節部が各実施形態に係る直動伸縮機構で構成されたロボットアーム機構を例に説明する。ロボットアーム機構として、ここでは直動伸縮機構を備えた極座標型のロボットアーム機構を説明するが、他のタイプのロボットアーム機構であってもよい。以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0010】
図1は第1実施形態に直動伸縮機構を装備するロボットアーム機構の外観を示している。図2は、図1のロボットアーム機構の側面図である。図3は、図1のロボットアーム機構の内部構造を側方から見た図である。
ロボットアーム機構は、基台1、支柱部2、ショルダー部4、アーム部5及び手首部6を備える。支柱部2、ショルダー部4、アーム部5及び手首部6は、基台1から順番に配設される。複数の関節部J1,J2,J3,J4,J5,J6は基台1から順番に配設される。基台1には円筒体をなす支柱部2が典型的には鉛直に設置される。支柱部2は旋回用の回転関節部としての第1関節部J1として機能する。第1関節部J1は回転軸RA1を備える。回転軸RA1は鉛直方向に平行である。支柱部2は下部フレーム21と上部フレーム22とを有する。下部フレーム21の一端は第1関節部J1の固定部に接続される。下部フレーム21の他端は基台1に接続される。下部フレーム21は円筒形状のハウジング31により覆われる。上部フレーム22は第1関節部J1の回転部に接続され、回転軸RA1を中心に軸回転する。上部フレーム22は円筒形状のハウジング32により覆われる。第1関節部J1の回転に伴って下部フレーム21に対して上部フレーム22が回転し、それによりアーム部5は水平に旋回する。円筒体をなす支柱部2の内部中空には後述する直動伸縮機構としての第3関節部J3の第1、第2コマ列51、52が収納される。
【0011】
支柱部2の上部には起伏回転関節部としての第2関節部J2を収容するショルダー部4が設置される。第2関節部J2は回転関節である。第2関節部J2は回転軸RA1に垂直な回転軸RA2を有する。ショルダー部4は、第2関節部J2の固定部(支持部)としての一対のサイドフレーム23を有する。一対のサイドフレーム23は、上部フレーム22に連結される。一対のサイドフレーム23は、鞍形形状のカバー33により覆われる。一対のサイドフレーム23にモータハウジングを兼用する第2関節部J2の回転部としての円筒体24が支持される。円筒体24の周面には、送り出し機構25が取り付けられる。送り出し機構25のフレーム26には、ドライブギア56、ガイドローラ57及びローラユニット58が支持される。円筒体24の軸回転に従って送り出し機構25は回動し、送り出し機構25に支持されたアーム部5が上下に起伏する。送り出し機構25は円筒形状のカバー34により覆われる。鞍形カバー33と円筒カバー34との間の間隙は断面U字形状のU字蛇腹カバー14により覆われる。U字蛇腹カバー14は、第2関節部J2の起伏動に追従して伸縮する。
【0012】
第3関節部J3は直動伸縮機構により提供される。直動伸縮機構は発明者らが新規に開発した構造を備えており、可動範囲の観点でいわゆる従来の直動関節とは明確に区別される。第3関節部J3のアーム部5は屈曲自在であるが、中心軸(伸縮中心軸RA3)に沿ってアーム部5の根元の送り出し機構25から前方に送り出されるときには屈曲が制限され、直線的剛性が確保される。アーム部5は後方に引き戻されるときには屈曲が回復される。アーム部5は第1コマ列51と第2コマ列52とを有する。第1コマ列51は屈曲自在に連結された複数の第1コマ53からなる。第1コマ53は略平板形に構成される。第1コマ53は端部箇所の蝶番部(ヒンジ部)で屈曲自在に連結される。第2コマ列52は複数の第2コマ54からなる。第2コマ54は横断面コ字形の溝状体又はロ字形の筒状体に構成される。第2コマ54は底板端部箇所のヒンジ部で屈曲自在に連結される。第2コマ列52の屈曲は、第2コマ54の側板の端面どうしが当接する位置で制限される。その位置では第2コマ列52は直線的に配列する。第1コマ列51の先頭の第1コマ53と、第2コマ列52の先頭の第2コマ54とは結合コマ55により接続される。例えば、結合コマ55は第1コマ53と第2コマ54とを合成した形状を有している。
【0013】
第1、第2コマ列51,52はローラユニット58を通過する際に互いに押圧されて接合する。接合により第1、第2コマ列51,52は直線的剛性を発揮し、柱状のアーム部5を構成する。ローラユニット58の後方にはドライブギア56がガイドローラ57とともに配置される。ドライブギア56は図示しないモータユニットに接続される。モータユニットは、ドライブギア56を回転させるための動力を発生する。第1コマ53の内側の面、つまり第2コマ54と接合する側の面の幅中央には連結方向に沿ってリニアギア539が形成されている。複数の第1コマ53が直線状に整列されたときに隣合うリニアギア539は直線状につながって、長いリニアギアを構成する。ドライブギア56はガイドローラ57に押圧された第1コマ53のリニアギア539に噛み合わされる。直線状につながったリニアギア539はドライブギア56とともにラックアンドピニオン機構を構成する。ドライブギア56が順回転するとき第1、第2コマ列51,52はローラユニット58から前方に送り出される。ドライブギア56が逆回転するとき第1、第2コマ列51,52はローラユニット58の後方に引き戻される。引き戻された第1、第2コマ列51,52はローラユニット58とドライブギア56との間で互いに分離される。分離された第1、第2コマ列51,52はそれぞれ屈曲可能な状態に復帰する。屈曲可能な状態に復帰した第1、第2コマ列51,52は、ともに同じ方向(内側)に屈曲し、支柱部2の内部に鉛直に収納される。このとき、第1コマ列51は第2コマ列52に略平行にほぼ揃った状態で収納される。
【0014】
アーム部5の先端には手首部6が取り付けられる。手首部6は第4〜第6関節部J4〜J6を装備する。第4〜第6関節部J4〜J6はそれぞれ直交3軸の回転軸RA4〜RA6を備える。第4関節部J4は伸縮中心軸RA3と略一致する第4回転軸RA4を有する回転関節であり、この第4関節部J4の回転によりエンドエフェクタは揺動回転される。第5関節部J5は第4回転軸RA4に対して垂直に配置される第5回転軸RA5を有する回転関節である。第5関節部J5の回転によりエンドエフェクタは前後に傾動回転される。第6関節部J6は第4回転軸RA4と第5回転軸RA5とに対して垂直に配置される第6回転軸RA6を有する回転関節であり、この第6関節部J6の回転によりエンドエフェクタは軸回転される。
【0015】
エンドエフェクタ(手先効果器)は、手首部6の第6関節部J6の回転部下部に設けられたアダプタ7に取り付けられる。エンドエフェクタはロボットが作業対象(ワーク)に直接働きかける機能を持つ部分であり、例えば把持部、真空吸着部、ナット締め具、溶接ガン、スプレーガンなどのタスクに応じて様々なツールが存在する。エンドエフェクタは、第1、第2、第3関節部J1,J2,J3により任意位置に移動され、第4、第5、第6関節部J4,J5,J6により任意姿勢に配置される。特に第3関節部J3のアーム部5の伸縮距離の長さは、基台1の近接位置から遠隔位置までの広範囲の対象にエンドエフェクタを到達させることを可能にする。第3関節部J3はそれを構成する直動伸縮機構により実現される直線的な伸縮動作とその伸縮距離の長さとが従前の直動関節と異なる特徴的な点である。
【0016】
図4はロボットアーム機構の構成を図記号表現により示している。ロボットアーム機構において、根元3軸を構成する第1関節部J1と第2関節部J2と第3関節部J3とにより3つの位置自由度が実現される。また、手首3軸を構成する第4関節部J4と第5関節部J5と第6関節部J6とにより3つの姿勢自由度が実現される。図4に示すように、第1関節部J1の回転軸RA1は鉛直方向に設けられる。第2関節部J2の回転軸RA2は水平方向に設けられる。第2関節部J2は第1関節部J1に対して回転軸RA1と回転軸RA1に直交する軸との2方向に関してオフセットされる。第2関節部J2の回転軸RA2は、第1関節部J1の回転軸RA1には交差しない。第3関節部J3の移動軸RA3は回転軸RA2に対して垂直な向きに設けられる。第3関節部J2は第2関節部J2に対して回転軸RA1と回転軸RA1に直交する軸との2方向に関してオフセットされる。第3関節部J3の回転軸RA3は、第2関節部J2の回転軸RA2には交差しない。複数の関節部J1−J6の根元3軸のうちの一つの回転関節部を直動伸縮関節部J3に換装し、第1関節部J1に対して第2関節部J2を2方向にオフセットさせ、第2関節部J2に対して第3関節部J3を2方向にオフセットさせることにより、本実施形態に係るロボット装置のロボットアーム機構は、特異点姿勢を構造上解消している。
【0017】
本実施形態に係る直動伸縮機構を構成する第1、第2コマ53,54の表面には前後にわたって少なくとも一の溝部が形成されてなる。
(第1コマ53)
図5は、図3の第1コマ53の構造を示す図である。第1コマ53は全体として略平板体である。矩形平板の本体部531の後端中央には軸受け部533が後方に突出する。本体部531の前端両側にシャフト支持部532が前方に突出する。第1コマ53の軸受け533は、その後ろ隣りの第1コマ53のシャフト支持部532の間に嵌め込まれる。軸受け部533の軸受け孔535に図示しないシャフトが挿入される。シャフトの両端はシャフト支持部532のシャフト受け534に固定される。この蝶番構造により複数の第1コマ53が屈曲自在に連結される。第1コマ53の背面の幅中央には連結方向(長さ方向)と平行に前後に渡ってリニアギア539が設けられる。当該背面両側には四角錐台形状の一対の突起部(ピンホールブロック)536が垂直に突出される。一対のピンホールブロック536は第1コマ53の前後方向(長さ方向)の中央付近の両側に位置する。ピンホールブロック536にはその前後方向に沿ってロックピンホール537が空けられている。
【0018】
(第2コマ54)
図6は、図3の第2コマ54の構造を示す図である。第2コマ54は全体として断面コ字形の溝状体又は断面ロ字形の筒状体である。ここでは、第2コマ54は断面コ字形の溝状体とする。第2コマ54は、底板541と、同サイズ、同形状の一対の側板540とからなる。底板541の後端中央には軸受け部543が後方に突出する。底板541の前端両側にシャフト支持部542が前方に突出する。軸受け543は、その後ろ隣りの第2コマ54のシャフト支持部542の間に嵌め込まれる。軸受け部543の軸受け孔545に図示しないシャフトが挿入される。シャフトの両端はシャフト支持部542のシャフト受け544に固定される。この蝶番構造により複数の第2コマ54が屈曲自在に連結される。
【0019】
一対の側板540それぞれの前端上部にはロックピンブロック546が内側に突設される。ロックピンブロック546は直方体をなし、その前面には、ロックピン547が前方向きに設けられる。ロックピン547は円柱体をなし、連結方向と平行に前方に向かって突設される。一対の側板540それぞれの後端上部にはチャックブロック548が内側に突設される。チャックブロック548は、四角錐台形状をなし、その傾斜面が後方に向く。第2コマ列52において、前方の第2コマ54のチャックブロック548は、後方の第2コマ54のロックピンブロック546とともに、ピンホールブロック536を前後に受ける受け部を構成する。
【0020】
(ロック機構)
直動伸縮機構は、第1、第2コマ53,54の接合状態を堅持するためのロック機構を有する。ロック機構は、第2コマ54のチャックブロック548及びロックピンブロック546と、第1コマ53のピンホールブロック536とにより構成される。
【0021】
アーム部5が伸長するとき、前後の第2コマ54の受け部により第1コマ53のピンホールブロック536が狭み込まれ、これにより第1、第2コマ53,54は接合される。第1、第2コマ53,54の接合状態は、第1コマ53のピンホール537に第2コマ54のロックピン547が挿入された状態で維持される。第2コマ54のロックピン547は、第2コマ54がローラユニット58の最後尾のローラ59を通過し、その前方の第2コマ54に対して直線状に整列するとき、第1コマ53のピンホール537に挿入される。第1コマ53のピンホール537に第2コマ54のロックピン547が挿入された状態は、前後の第2コマ54が直線状に整列された状態、つまり、アーム部5の後端部分がローラユニット58に堅持された状態で維持される。
【0022】
アーム部5が収縮するとき、ローラユニット58の後方において、第2コマ54は屈曲可能な状態に復帰し、重力により下方に引かれる。一方、第1コマ53はドライブギア56により水平姿勢を維持した状態で後方に引かれる。第2コマ54が下方に引かれ、第1コマ53が後方に引かれることで、第1コマ53のピンホール537から第2コマ54のロックピン547が抜け、前後の第2コマ54の受け部は、第1コマ53のピンホールブロック536を開放し、これにより第1、第2コマ53,54の接合状態が解除され、互いに屈曲可能に分離される。
【0023】
本実施形態に係る直動伸縮機構のアーム部5を構成する第1、第2コマ53,54のローラに接する4面のうち少なくとも一表面には前後にわたる少なくとも一の溝部が形成される。ここでは、第1コマ53の上面に溝部551が形成される。第2コマ54の下面に溝部552が形成される。第2コマ54の両側面に溝部553,554が形成される。以下詳細に説明する。
【0024】
溝部551は、第1コマ53の上ローラ59に接する表面、つまり第1コマ53の上面に、第1コマ53の長さ方向(前後方向)と平行に、前後にわたって、幅中央に位置される。溝部551は、例えば1mm又はそれ未満の浅い矩形溝であり、その幅は好適には第1コマ53の幅の1/5〜4/5、好ましくは第1コマ53の幅の1/2である。
【0025】
溝部552は、第2コマ54の下ローラ59に接する表面、つまり第2コマ54の底板541の下面に、第2コマ54の長さ方向(前後方向)と平行に、前後にわたって、幅中央に位置される。溝部552は、例えば1mm又はそれ未満の浅い矩形溝であり、その幅は第1コマ53の溝部551の幅と略等価である。
【0026】
溝部553,554は、第2コマ54が左右ローラ60に接する表面、つまり両側板540に、第2コマ54の長さ方向と平行に、前後にわたって幅中央に設けられる。溝部553,554は、例えば1mm又はそれ未満の浅い矩形溝であり、その幅は好適には側板540−1の高さ(第2コマ54の高さ)の1/5〜4/5、好ましくは第1コマ53の溝部551の幅と略等価である。
【0027】
第1、第2コマ53,54が接合され直線的に配列されたとき、第1、第2コマ53,54の溝部552、553,554は一直線に連続する。アーム部5の下面、左側面、右側面には、その軸方向にそって長く溝部が形成される。
【0028】
詳細は後述するが、第1コマ53の上面、第2コマ54の下面、側面のうちローラの外周面(転動面)に接触する面は、アーム部5の円滑で直線的な前後移動のために、高い寸法精度及び高い面精度(表面粗さ)での切削、研削、研磨等の機械加工を要求される。溝部552、553,554は窪んでおり、ローラの外周面に接触しないので、高い寸法精度及び高い面精度は必要とされない。高い寸法精度及び高い面精度を要求する面積の減少により、加工コスト及び歩留まりの低減を実現し、第1、第2コマ53,54の製造コストを低減させる事ができる。
【0029】
図7は、図3のアーム部5を送り出し機構のローラとともに示す図である。ローラユニット58は、ドライブギア56、ガイドローラ57及び第1、第2コマ列51,52とともに直動伸縮機構(第3関節部J3)の主要な構造体である。ローラユニット58は、上下ローラ59と左右ローラ60とを装備する。
上下ローラ59は、回転軸RA2に平行な回転軸を有する。上下ローラ59は例えば4個であり、そのうち2個が移動軸RA3の上側に、残りの2個が下側に配設される。上側、下側それぞれの2個のローラ59は回転軸が互いに平行になるよう移動軸RA3に沿って一列に配列される。上側の2個のローラ59と、下側の2個のローラ59は、接合された第1、第2コマ53,54の合計厚に等価な距離を隔てられる。ここでの、第1、第2コマ53,54の合計厚とは、アーム部5の最下面からアーム部5の最上面までの距離に略等価である。それにより上下ローラ59は第1、第2コマ53,54を接合し、上下から強固に強固に接合し且つ前後移動自在に支持することができる。
【0030】
左右ローラ60は、移動軸RA3と回転軸RA2とに直交する回転軸を有する。左右ローラ60は例えば2個であり、そのうち1個が移動軸RA3の左側に、残りの1個が右側に配設される。左側のローラ60と右側のローラ60とは、第1、第2コマ53,54の幅に等価な距離を隔てられる。ここでの、第1、第2コマ53,54の幅とは、アーム部5の左側の最外面から右側の最外面までの距離に略等価である。それにより左右ローラ60は、第1、第2コマ53,54を左右から強固に強固に接合し且つ前後移動自在に支持する。
【0031】
アーム部5の先端に装備されたエンドエフェクタ(手先効果器)を高い位置精度で移動させるためには、アーム部5の円滑で直線的な前後移動が必要とされる。アーム部5の円滑で直線的な前後移動の実現は、アーム部5がローラにより上下左右から強固に挟まれることが一つの条件である。アーム部5をローラ59,60により上下左右から強固に挟みこみ且つ平滑に前後移動させるためには、第1、第2コマ53,54の耐久性を向上させるにはローラ59,60に接する第1、第2コマ53,54の寸法精度及び表面の面精度(表面粗さ)を高くしなければならない。しかしながら、高い寸法精度及び高い面精度の機械加工は高価であり、かつ歩留まりが低くなる。
【0032】
本実施形態によれば、ローラに接するアーム部5の上下左右の表面にそれぞれ溝部551,552,553、554が前後にわたって凹設される。具体的には、第1コマ53のローラに接する表面に溝部551が設けられ、第2コマ54の底板541のローラに接する表面に溝部552が設けられ、第2コマ54の側板540−1のローラに接する表面に溝部553が設けられ、第2コマ54の側板540のローラに接する表面に溝部554が設けられる。
【0033】
アーム部5の上下左右のローラ59,60に接する側の面に設けられた溝部551,552,553、554はローラ59,60に接触しない。そのため、アーム部5の上下左右のローラに接する側の面に溝部551,552,553、554を設けることは、ローラ59,60に接するコマ表面の面積、つまり、精度の高い機械加工が必要とされる面積を縮小し、第1、第2コマ53,54の製造コストの低下に寄与する。また、第1、第2コマ53,54の表面に設けられる溝部551,552,553,554がコマの左右ではなく、コマの前後にわたって設けることで、アーム部5の上下左右の面に対してローラ59,60の一部分が常に接触する状態が確保される。これにより、第1、第2コマ53,54の表面に溝部551,552,553,554が設けられていることによる、アーム部5を上下左右から支持するローラ59,60の支持力の低下を抑制でき、直動伸縮機構のアーム部5の円滑な前後移動が阻害されない。
【0034】
さらに、アーム部5の下面の溝部552の幅を上面の溝部551の幅と同一にすることは、アーム部5の下面が下側ローラ59から受ける応力を、アーム部5の上面が上側ローラ59から受ける応力と同一にし、上側ローラ59と下側ローラ59とのうち一方のローラへの過剰負荷を抑制する。したがって、第1、第2コマ53,54に溝部551,552が設けられていることによる、第1、第2コマ53,54と上下ローラ59との耐久性能の低下を抑制し、これら部品の交換頻度の増加を抑える。同様に、アーム部5の左側面の溝部553の幅を右側面の溝部554の幅と同一にすることは、一対の側板540それぞれの表面に溝部553,554を設けることによる、第2コマ54と左右ローラ60との耐久性能の低下を抑制し、これら部品の交換頻度の増加を抑える。
【0035】
なお、上記では、第1、第2コマ53,54の表面(ローラに接する面)に対して溝部を凹設した例を説明したが、実施形態はこれに限定されない。例えば、溝部はアーム部5の上下左右のうち少なくとも一の表面に設けられていればある程度の効果は奏され得る。また、第1、第2コマ53,54の表面には、複数の溝部が前後にわたって設けられていてもよい。また、アーム部5の両側面を一対の側板540とともに形成する、第1コマ53の両側面それぞれに前後にわたって溝部が形成されていてもよい。
【0036】
さらに、第1、第2コマ53,54の表面(ローラに接する面)に、前後にわたって少なくとも一の凸状の線状部が凸設されていてもよい。図8は、図3の第1コマ53の他の構造を示す図である。図9は、図3の第2コマ54の他の構造を示す図である。図10は、図8の第1コマ53と図9の第2コマ54とからなるアーム部5をローラとともに示す図である。ここでは、アーム部5の上下左右の4つの面それぞれに線状部561,562,563,564が形成される。
【0037】
線状部561は、第1コマ53のローラに接する表面、つまりアーム部5の上面の幅中央に位置し、第1コマ53の長さ方向と平行に、前後にわたって設けられる。線状部561は、高さ数mmの低い線状突起であり、その幅は好適には第1コマ53の幅の1/5〜4/5、好ましくは第1コマ53の幅の1/2である。第1、第2コマ53,54の接合による柱状体(アーム部5)が構成されたとき、隣接する第1コマ53の線状部561は繋がり、アーム部5の上面には、前後にわたって連続する長い線状部が形成される。
【0038】
線状部562は、底板541の表面、つまりアーム部5の下面の幅中央に位置し、第2コマ54の長さ方向と平行に、前後にわたって設けられる。線状部562は、高さ数mmの低い線状突起であり、その幅は第1コマ53の線状部561の幅と略等価である。
【0039】
線状部563は、側板540−1の表面、つまりアーム部5の左側面の高さ中央に位置し、第2コマ54の長さ方向と平行に、前後にわたって設けられる。線状部563は、高さ数mmの低い線状突起であり、その幅は好適には側板540−1の高さ(第2コマ54の高さ)の1/5〜4/5、好ましくは第1コマ53の線状部561の幅と略等価である。
【0040】
線状部564は、側板540の表面、つまりアーム部5の右側面の高さ中央に位置し、第2コマ54の長さ方向と平行に、前後にわたって設けられる。線状部564は、線状部563と同一の断面形状、幅に形成される。第1、第2コマ53,54の接合による柱状体(アーム部5)が構成されたとき、隣接する第2コマ54の線状部562、563,564は繋がり、アーム部5の下面、左側面、右側面には、前後にわたって連続する長い線状部が形成される。
【0041】
アーム部5の上下左右のローラに接する表面にそれぞれ線状部561,562,563、564を設けることは、アーム部5の上下左右のローラに接する表面にそれぞれ溝部551,552,553、554を設けた場合と同等の効果を得られる。すなわち、ローラ59,60に接するコマ表面の面積、つまり、精度の高い機械加工処理が必要とされる面積を縮小し、第1、第2コマ53,54の製造コストの低下に寄与する。また、第1、第2コマ53,54の表面に設けられる線状部561,562,563,564がコマの左右ではなく、コマの前後にわたって設けることで、アーム部5の上下左右の面に対してローラ59,60の一部分が常に接触する状態が確保される。これにより、第1、第2コマ53,54の表面に線状部561,562,563,564が設けられていることによる、アーム部5を上下左右から支持するローラ59,60の支持力の低下を抑制でき、直動伸縮機構のアーム部5の円滑な前後移動が阻害されない。
【0042】
さらに、アーム部5の下面の線状部562の幅を上面の線状部561の幅と同一にすることは、アーム部5の下面が下側ローラ59から受ける応力を、アーム部5の上面が上側ローラ59から受ける応力と同一にし、上側ローラ59と下側ローラ59とのうち一方のローラへの過剰負荷を抑制する。したがって、第1、第2コマ53,54に線状部561,562が設けられていることによる、第1、第2コマ53,54と上下ローラ59との耐久性能の低下を抑制し、これら部品の交換頻度の増加を抑える。同様に、アーム部5の左側面の線状部563の幅を右側面の線状部564の幅と同一にすることは、一対の側板540それぞれの表面に線状部563,564を設けることによる、第2コマ54と左右ローラ60との耐久性能の低下を抑制し、これら部品の交換頻度の増加を抑える。
【0043】
なお、上記では、第1、第2コマ53,54の表面(ローラに接する面)に対して線状部を凸設した例を説明したが、実施形態はこれに限定されない。例えば、線状部はアーム部5の上下左右のうち少なくとも一の表面に設けられていればよい。また、第1、第2コマ53,54の表面には、複数の線状部が前後にわたって設けられていてもよい。また、アーム部5の両側面を一対の側板540とともに形成する、第1コマ53の両側面それぞれに前後にわたって線状部が形成されていてもよい。さらに、線状部は、その幅がコマ表面から外側に向かって狭くなる、断面が円弧形状、三角形状等であってもよい。これにより、精度の高い機械加工処理が必要とされる面積を縮小し、第1、第2コマ53,54の製造コストを低減することができる。
【0044】
なお、高コストで精度の高い機械加工処理が必要される面積を縮小させるために、アーム部5を上下左右に支持するローラ59,60のうち少なくとも一のローラの幅を第1、第2コマ53,54の幅よりも短く構成し、第1、第2コマ53,54の表面に接する面積を縮小するようにしてもよい。図11は、図7のローラ59,60の寸法と設置位置とを示す図である。図12は、図7のローラ59,60の寸法と設置位置との他の例を示す図である。図13は、図10のローラ59,60の寸法と設置位置とを示す図である。図14は、図10のローラ59,60の寸法と設置位置との他の例を示す図である。
【0045】
図11に示すように、上下ローラ59の転動体の幅は、溝部551、552の幅よりも短い。転動体の外周面は、溝部551、552の底面に接する。同様に、左右ローラ60は、溝部553,554の幅よりも短い幅を有する転動体を備え、溝部553,554の底面を支持可能にフレーム26に取り付けられる。これにより、ローラ59,60が接する面を、溝部551,552,553,554の底面に限定することができ、精度の高い機械加工が必要とされる面積を縮小し、第1、第2コマ53,54の製造コストを低減させることができる。また、上下ローラ59が溝部551,552に嵌めこまれている構造は、第1、第2コマ53,54の左右方向(幅方向)への動きを制限し、左右ローラ60が溝部553,554に嵌めこまれている構造は、第1、第2コマ53,54の上下方向(厚み方向)への動きを制限し、これによりアーム部5の直線的な前後移動を案内する。
【0046】
図12に示すように、上下ローラ59各々は複数、ここでは2つの転動体591を装備する。2つの転動体591は、同一径であり、溝部551,552の幅に略等価な距離を隔てて同軸に配置される。上側のローラ59の2つの転動体591の外周面は第1コマ53の表面のうち溝部551で分離された2つの表面部分、換言すると第1コマ53の表面のうち溝部551の範囲を除いた2つの表面部分にそれぞれ接する。下側のローラ59の2つの転動体591の外周面は第2コマ54の表面のうち溝部552で分離された2つの表面部分、換言すると第2コマ54の表面のうち溝部552の範囲を除いた2つの表面部分にそれぞれ接する。同様に、左右ローラ60各々は複数、ここでは2つの転動体601を装備する。2つの転動体601は、同一径であり、溝部553,554の幅に略等価な距離を隔てて同軸に配置される。左側のローラ60の2つの転動体601の外周面は第2コマ54の左側面のうち溝部553で分離された2つの表面部分にそれぞれ接する。右側のローラ60の2つの転動体601の外周面は第2コマ54の右側面のうち溝部554で分離された2つの表面部分にそれぞれ接する。
【0047】
これにより、ローラ59,60が第1、第2コマ53,54に対して接する面を、第1、第2コマ53,54の表面のうち溝部551,552,553,554の範囲を除いた最外表面だけにすることができ、精度の高い機械加工が必要とされる面積を縮小し、第1、第2コマ53,54の製造コストを低減させることができる。
【0048】
図13に示すように、上下ローラ59は、凸状の線状部561,562の幅と略等価な幅を有する転動体を備える。転動体の外周面は線状部561,562の上面(第1、第2コマ53,54の最外表面)に接する。同様に、左右ローラ60は、線状部563,564の幅と略等価な幅を有する転動体を備え、その転動体の外周面は線状部563,564の上面(第1、第2コマ53,54の最外表面)に接する。これにより、ローラ59,60が第1、第2コマ53,54に対して接する面を、線状部561,562,563,564の上面だけにすることができ、精度の高い機械加工が必要とされる面積を縮小し、第1、第2コマ53,54の製造コストを低減させることができる。
【0049】
図14に示すように、上下ローラ59各々は複数、ここでは2つの転動体591を装備する。2つの転動体591は、同一径であり、線条部561,562の幅に略等価な距離を隔てて同軸に配置される。上側のローラ59の2つの転動体591の外周面は第1コマ53の表面のうち線条部561で分離された2つの表面部分、換言すると第1コマ53の表面のうち線状部561の範囲を除いた2つの表面部分にそれぞれ接する。下側のローラ59の2つの転動体591の外周面は第2コマ54の表面のうち線条部562で分離された2つの表面部分、換言すると第2コマ54の表面のうち線状部562の範囲を除いた2つの表面部分にそれぞれ接する。同様に、左右ローラ60各々は複数、ここでは2つの転動体601を装備する。2つの転動体601は、同一径であり、線条部563,564の幅に略等価な距離を隔てて同軸に配置される。左側のローラ60の2つの転動体601の外周面は第2コマ54の左側面のうち線条部563で分離された2つの表面部分、換言すると第2コマ54の表面のうち線状部563の範囲を除いた2つの表面部分にそれぞれ接する。右側のローラ60の2つの転動体601の外周面は第2コマ54の右側面のうち線条部564で分離された2つの表面部分、換言すると第2コマ54の表面のうち線状部564の範囲を除いた2つの表面部分にそれぞれ接する。
【0050】
これにより、ローラ59,60が接触する面を、第1、第2コマ53,54の表面のうち線状部561,562,563,564の範囲を除いた最外表面だけに限定することができ、精度の高い機械加工が必要とされる面積を縮小し、第1、第2コマ53,54の製造コストを低減させることができる。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0052】
5…アーム部、26…角筒フレーム、53…第1コマ、54…第2コマ、59…上下ローラ、60…左右ローラ、551,552,553,554…溝部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14