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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6711952
(24)【登録日】2020年6月1日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】X線診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20200608BHJP
   A61B 6/02 20060101ALI20200608BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20200608BHJP
【FI】
   A61B6/03 321Z
   A61B6/02 351C
   A61B6/00 300D
   A61B6/00 300X
【請求項の数】12
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-174449(P2019-174449)
(22)【出願日】2019年9月25日
(62)【分割の表示】特願2015-83675(P2015-83675)の分割
【原出願日】2015年4月15日
(65)【公開番号】特開2019-213960(P2019-213960A)
(43)【公開日】2019年12月19日
【審査請求日】2019年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 悟
【審査官】 亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−245814(JP,A)
【文献】 特開2006−110372(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/098250(WO,A1)
【文献】 特開2012−249960(JP,A)
【文献】 特開2011−005018(JP,A)
【文献】 特開2005−160544(JP,A)
【文献】 特開2004−242873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 − 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のX線管及び第1のX線検出器を回転可能に保持する第1の撮影系と、
第2のX線管及び第2のX線検出器を回転可能に保持し、かつ、前記第1の撮影系とは独立に回転中心を設定可能な第2の撮影系と、
前記第1の撮影系及び前記第2の撮影系を用いて三次元画像の生成に用いる投影データを収集するための回転撮影において、前記第1の撮影系の回転中心と前記第2の撮影系の回転中心とを実質的に一致させる処理回路と、
を備える、X線診断装置。
【請求項2】
前記処理回路は、前記回転撮影のプログラムが操作者によって選択されたとき、前記第1の撮影系の回転中心と前記第2の撮影系の回転中心とを実質的に一致させる、請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項3】
前記処理回路は、前記回転中心における対象物の幾何学的拡大率を前記第1の撮影系と前記第2の撮影系とで実質的に一致させる、請求項1又は2に記載のX線診断装置。
【請求項4】
前記処理回路は、前記第1の撮影系及び前記第2の撮影系の少なくともいずれか一方のX線焦点と受像面との距離を調整して、前記回転中心における前記対象物の幾何学的拡大率を実質的に一致させる、請求項3に記載のX線診断装置。
【請求項5】
前記処理回路は、前記第1のX線検出器と前記第2のX線検出器とでX線信号収集領域を実質的に一致させる、請求項3又は4に記載のX線診断装置。
【請求項6】
前記処理回路は、前記第1のX線検出器と前記第2のX線検出器とでマトリックスサイズを実質的に一致させる、請求項3〜5のいずれか一つに記載のX線診断装置。
【請求項7】
前記処理回路は、前記第1のX線管と前記第2のX線管とでX線焦点サイズを実質的に一致させる、請求項1〜6のいずれか一つに記載のX線診断装置。
【請求項8】
前記第1のX線検出器により収集されたX線信号に基づいて順次生成される第1のX線画像及び前記第2のX線検出器により収集されたX線信号に基づいて順次生成される第2のX線画像を用いて、三次元画像を再構成する再構成回路を更に備える、請求項1〜7のいずれか一つに記載のX線診断装置。
【請求項9】
前記再構成回路は、前記第1の撮影系と前記第2の撮影系とで、前記回転中心における対象物の幾何学的拡大率が実質的に一致しない場合に、前記対象物の空間分解能を一致させるフィルタ処理後に三次元画像を再構成する、或いは、前記対象物の空間分解能を一致させるフィルタを用いて三次元画像を再構成する、請求項8に記載のX線診断装置。
【請求項10】
前記処理回路は、前記第1の撮影系と前記第2の撮影系とで、前記回転中心における前記対象物の幾何学的拡大率及びX線信号収集領域の少なくともいずれか一方が実質的に一致しない場合、一方のX線信号収集領域に基づいて生成されたX線画像において他方のX線画像の再構成領域を示す情報を含めてディスプレイに表示させる、請求項9に記載のX線診断装置。
【請求項11】
前記処理回路は、前記第1の撮影系と前記第2の撮影系とで、前記回転中心における前記対象物の幾何学的拡大率及びX線信号収集領域の少なくともいずれか一方が実質的に一致しない場合、コリメータを制御して前記第1の撮影系及び前記第2の撮影系の再構成領域を一致させる、請求項9に記載のX線診断装置。
【請求項12】
前記処理回路は、前記第1の撮影系を被検体の正面に移動させ、前記第2の撮影系を前記被検体の側面に移動させて、前記第1の撮影系の回転中心と、前記第2の撮影系の回転中心とを実質的に一致させる、請求項1〜11のいずれか一つに記載のX線診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線診断装置は、検査時のみならず頭部動脈瘤などのインターベンション治療時にも活用される。また、頭部の血管は構造が複雑で、一方向から観察しただけでは血管構造の理解が難しい場合がある。このようなことから、第1の撮影系と第2の撮影系とを有し、同時に2方向からの撮影が可能であるバイプレーン型のX線診断装置は、頭頚部の検査や治療に適したシステムである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−138837号公報
【特許文献2】特許第4703119号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、第1の撮影系及び第2の撮影系を用いた回転撮影を簡便にすることができるX線診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のX線診断装置は、第1の撮影系と、第2の撮影系と、処理回路と、を備える。第1の撮影系は、第1のX線管及び第1のX線検出器を回転可能に保持する。第2の撮影系は、第2のX線管及び第2のX線検出器を回転可能に保持し、かつ、前記第1の撮影系とは独立に回転中心を設定可能である。処理回路は、前記第1の撮影系及び前記第2の撮影系を用いて三次元画像の生成に用いる投影データを収集するための回転撮影において、前記第1の撮影系の回転中心と前記第2の撮影系の回転中心とを実質的に一致させる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1の実施形態に係るX線診断装置の構成例を示すブロック図である。
図2図2は、第1の実施形態に係るX線診断装置による処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図3図3は、第1の実施形態に係る制御部の位置合わせ部による位置合わせ処理の処理手順を示すフローチャートである。
図4図4は、第1の実施形態を説明するための図(1)である。
図5図5は、第1の実施形態を説明するための図(2)である。
図6図6は、第1の実施形態を説明するための図(3)である。
図7図7は、第1の実施形態を説明するための図(4)である。
図8A図8Aは、第2の実施形態を説明するための図(1)である。
図8B図8Bは、第2の実施形態を説明するための図(2)である。
図9図9は、第2の実施形態の変形例1を説明するための図である。
図10図10は、第2の実施形態の変形例2を説明するための図である。
図11図11は、その他の実施形態に係るX線診断装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、実施形態に係るX線診断装置を説明する。実施形態に係るX線診断装置は、第1の撮影系と、第2の撮影系とを備えるバイプレーン型のX線診断装置である。なお、実施形態は、以下の実施形態に限られるものではない。また、一つの実施形態に記載した内容は、原則として他の実施形態にも同様に適用される。
【0008】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係るX線診断装置の構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係るX線診断装置1の構成例を示すブロック図である。なお、X線診断装置1に、被検体P(例えば、人体)は含まれない。また、図1に示す構成は一例に過ぎない。例えば、図1に例示する各部は、適宜統合若しくは分離して構成されてもよい。
【0009】
図1に示すように、第1の実施形態に係るX線診断装置1は、X線撮影機構10と、画像処理装置100とを有する。X線撮影機構10は、第1の撮影系と、第2の撮影系とを備えるバイプレーン撮影機構である。第1の撮影系は、X線管球11aと、X線検出器12aと、C型アーム13aとを有し、第2の撮影系は、X線管球11bと、X線検出器12bと、Ω型アーム13bとを有する。術者は、第1の撮影系と第2の撮影系とで同じ領域を撮影するとは限らないので、第1の撮影系及び第2の撮影系は、独立に制御される。言い換えると、第1の撮影系の回転中心と第2の撮影系の回転中心とが独立に制御される。これにより、術者は、第1の撮影系と第2の撮影系とで異なる領域を撮影することが可能になる。例えば、術者は、第1の撮影系で頭蓋内を中心として観察し、第2の撮影系で頚部血管を中心に観察することが可能になる。このように第1の撮影系と第2の撮影系とで回転中心が独立することにより、フレキシブルな撮影が可能となる。
【0010】
また、X線撮影機構10は、寝台14を有し、インジェクター50が接続される。寝台14は、被検体Pを載せるベッドである。また、X線撮影機構10において、図1に示すように、X軸、Y軸及びZ軸からなる3次元直交座標系を定義する。すなわち、X軸は水平方向を示し、Y軸は鉛直方向を示し、Z軸は被検体Pの体軸方向を示す。3次元直交座標系において、矢印で示す方向を正方向とする。
【0011】
X線管球11a及びX線管球11bは、図示しない高電圧発生部から供給される高電圧を用いてX線を発生する装置である。
【0012】
X線検出器12a及びX線検出器12bは、例えば、FPD(X線平面検出器:Flat Panel Detector)やI.I.(イメージ・インテンシファイア:Image Intensifier)である。X線検出器12a及びX線検出器12bは、被検体Pを透過したX線を検出するためのX線検出素子がマトリックス状に配列された装置であり、各X線検出素子は、被検体Pを透過したX線を電気信号(X線信号)に変換して蓄積し、蓄積した電気信号を後述する画像メモリ22に格納する。なお、X線検出器12aによって変換されたX線信号のことを第1のX線信号と称し、X線検出器12bによって変換されたX線信号のことを第2のX線信号と称する。
【0013】
C型アーム13aは、X線管球11aとX線検出器12aとを保持するアームであり、X線管球11aとX線検出器12aとは、C型アーム13aにより被検体Pを挟んで対向するように配置される。C型アーム13aは、X線管球11a及びX線検出器12aを支持し、支持部(図示を省略)に設けられたモータにより、寝台14上に横臥する被検体Pの周りをプロペラのように高速回転する。ここで、C型アーム13aは、直交するX軸、Y軸及びZ軸の3軸に関してそれぞれ回転可能に支持され、図示しない駆動部によって各軸で個別に回転する。
【0014】
Ω型アーム13bは、X線管球11bとX線検出器12bとを保持するアームであり、X線管球11bとX線検出器12bとは、Ω型アーム13bにより被検体Pを挟んで対向するように配置される。Ω型アーム13bは、X線管球11b及びX線検出器12bを支持し、天井レールからなる支持部(図示を省略)に設けられたモータにより、寝台14上に横臥する被検体Pの周りを回転する。ここで、Ω型アーム13bは、直交するX軸、Y軸及びZ軸の3軸に関してそれぞれ回転可能に支持され、図示しない駆動部によって各軸で個別に回転する。
【0015】
インジェクター50は、被検体Pに挿入されたカテーテルから造影剤を注入するための装置である。ここで、インジェクター50からの造影剤注入開始は、後述する画像処理装置100を介して受信した注入開始指示に従って実行される場合であってもよいし、術者などの操作者が直接インジェクター50に対して入力した注入開始指示に従って実行される場合であってもよい。
【0016】
このように構成されるX線撮影機構10は、図示しない撮影制御部によって制御される。例えば、撮影制御部は、後述する制御部30の制御のもと、X線撮影機構10による撮影に係る各種処理を制御する。例えば、撮影制御部は、C型アーム13aや、Ω型アーム13bを回転させながら所定のフレームレートで投影データを収集する回転撮影を制御する。一例を挙げると、撮影制御部は、インジェクター50に造影剤注入開始を指示する信号を出力し、単一の造影剤注入の後に複数回の回転撮影を制御する。また、撮影制御部は、C型アーム13aや、Ω型アーム13bを回転制御している間、図示しない高電圧発生部を制御してX線管球11aや、X線管球11bからX線を連続的又は断続的に発生させ、X線検出器12a又はX線検出器12bによって被検体Pを透過したX線を検出させるように制御する。
【0017】
画像処理装置100は、図1に示すように、A/D(Analog/Digital)変換部21と、画像メモリ22と、サブトラクション部23と、フィルタリング部24と、3次元画像処理部25と、A/D変換部26と、LUT(Look Up Table)27と、アフィン変換部28と、3次元再構成部29と、制御部30と、表示部40とを有する。また、画像処理装置100は、図示していないが、例えば、マウスやキーボード、トラックボール、ポインティングデバイスなど、X線診断装置1に対する各種操作を操作者から受け付ける入力部を有する。
【0018】
表示部40は、画像処理装置100によって処理された各種画像や、GUI(Graphical User Interface)などの各種情報を表示する。例えば、表示部40は、CRT(Cathode Ray Tube)モニタや液晶モニタなどである。A/D変換部21は、X線検出器12aに接続され、X線検出器12aから入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換し、変換したデジタル信号をX線収集画像として画像メモリ22に格納する。A/D変換部26は、X線検出器12bに接続され、X線検出器12bから入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換し、変換したデジタル信号をX線収集画像として画像メモリ22に格納する。
【0019】
画像メモリ22は、X線収集画像(投影データ)を記憶する。例えば、画像メモリ22は、第1の撮影系によって収集された投影データと、第2の撮影系によって収集された投影データとをそれぞれ記憶する。また、画像メモリ22は、後述する3次元再構成部29によって再構成された再構成データ(ボリュームデータ)や、3次元画像処理部25によって生成された3次元画像を記憶する。また、画像メモリ22は、後述するサブトラクション部23によって生成された差分画像を記憶する。
【0020】
サブトラクション部23は、DSA(Digital Subtraction Angiography)画像などの差分画像を生成する。例えば、サブトラクション部23は、造影剤注入前に被検体Pを回転撮影して収集されたX線信号から生成された収集画像と、造影剤注入後に被検体Pを回転撮影して収集されたX線信号から生成された収集画像との差分画像を生成する。より具体的には、サブトラクション部23は、画像メモリ22に記憶された、略同一方向から収集されたマスク画像及びコントラスト画像の投影データを用いてDSA画像を生成する。
【0021】
フィルタリング部24は、高周波強調フィルタリングなどを行う。LUT27は、諧調変換を行う。アフィン変換部28は、画像の拡大や縮小、移動などを行う。
【0022】
3次元再構成部29は、X線撮影機構10による回転撮影によって収集された投影データから再構成データ(以下、3次元画像データ又はボリュームデータと記す)を再構成する。例えば、3次元再構成部29は、サブトラクション部23によってマスク画像とコントラスト画像とが差分され、画像メモリ22によって記憶されたサブトラクション後の差分画像を投影データとし、この投影データからボリュームデータを再構成する。或いは、3次元再構成部29は、画像メモリ22に記憶されたマスク画像やコントラスト画像を投影データとし、この投影データからボリュームデータを別々に再構成する。そして、3次元再構成部29は、再構成したボリュームデータを画像メモリ22に格納する。さらに再構成した2つのボリュームデータをサブトラクション部23によって差分することで、サブトラクション画像から再構成されたボリュームデータとほぼ同一のボリュームデータを生成する。
【0023】
ここで、第1の実施形態に係る3次元再構成部29は、第1の撮影系によって収集されたマスク画像とコントラスト画像とに基づいてサブトラクション部23が生成した差分画像と、第2の撮影系によって収集されたマスク画像とコントラスト画像とに基づいてサブトラクション部23が生成した差分画像とを用いて、ボリュームデータを再構成する。すなわち、3次元再構成部29は、2つの撮影系から収集された2次元のX線画像を用いてボリュームデータを再構成する。なお、上述したボリュームデータの生成については、後述する。
【0024】
3次元画像処理部25は、画像メモリ22によって記憶されたボリュームデータから3次元画像を生成する。例えば、3次元画像処理部25は、ボリュームデータからボリュームレンダリング画像や、MPR(Multi Planar Reconstruction)画像を生成する。そして、3次元画像処理部25は、生成した3次元画像を画像メモリ22に格納する。
【0025】
制御部30は、X線診断装置1全体を制御する。具体的には、制御部30は、X線撮影機構10によるX線画像の撮影、画像再構成、表示画像の生成、表示部40における表示画像の表示などに係る各種処理を制御する。また、制御部30は、回転撮影プログラムの選択を操作者から受付ける。なお、制御部30は、後述する位置合わせ部31を有する。
【0026】
なお、画像メモリ22は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、又は、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置などである。また、サブトラクション部23、フィルタリング部24、3次元画像処理部25、LUT27、アフィン変換部28、3次元再構成部29、及び制御部30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などの電子回路やASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路である。
【0027】
このように構成されるX線診断装置1は、例えば、以下に示すような血管治療に利用される。この血管治療では、ガイドワイヤーやカテーテルなどのデバイスが被検体Pの鼠蹊部などから挿入される。そして、挿入されたデバイスを患部まで運んで治療(例えばコイリング、或いは、バルーンやステントによる血管拡張など)が行われる。
【0028】
ここで術者は、カテーテルやガイドワイヤーを操作する場合、例えば、第1の撮影系を被検体P正面にセットし、第2の撮影系を被検体P側面にセットする。すなわち、第1の撮影系と第2の撮影系とで90度の視差のある画像が生成される。そして、術者は、第1の撮影系の画像と第2の撮影系の画像とを観察しながらカテーテルやガイドワイヤーを操作する。術者は、仮に任意の血管分岐でカテーテルやガイドワイヤーの操作が困難な状況が発生すると、カテーテルやガイドワイヤーを観察し易い角度に第1の撮影系及び第2の撮影系を移動させて、カテーテルやガイドワイヤーを操作する。
【0029】
しかしながら、カテーテルやガイドワイヤーを観察し易い角度に第1の撮影系及び第2の撮影系を移動させることは容易ではない。例えば、豊富な経験を有する医師であれば血管分岐毎にある程度見易い角度を把握している場合がある。このような場合、術者は、見易い角度に第1の撮影系及び第2の撮影系を移動することができる。しかし、豊富な経験を有さない医師にはどの角度に第1の撮影系及び第2の撮影系を移動すれば良いか分からないことが多い。さらに、血管の形状は個人差がある上、さらに血管分岐に狭窄などの問題が起こっている場合、豊富な経験を有する医師であっても、どの角度に第1の撮影系及び第2の撮影系を移動すれば良いか判断し難い場合がある。
【0030】
このような場合、3次元画像データから血管画像を生成して透視画像に重畳させる3次元ロードマップを使用すると、術者は、血管の3次元的な屈曲を把握できるため、カテーテルやガイドワイヤーの操作が容易になる。しかし、これまでの3次元ロードマップでは3次元画像データの収集に以下の手順が必要であった。
【0031】
まず、術者は、第2の撮影系を退避させて、被検体Pの位置合わせを行う。そして、術者は、第1の撮影系が回転中に被検体Pに干渉しないことを確認してから、寝台14の近くにインジェクター50を移動させる。続いて、術者は、カテーテルやガイドワイヤーとインジェクター50とを接続し、インジェクター50での造影条件を設定する。
【0032】
そして、インジェクター50を駆動して被検体Pに造影剤を注入する前後に、術者は、第1の撮影系を用いて高速に回転撮影することにより、X線画像データを収集し、3次元画像を生成する。その後、術者は、被検体Pの状態を確認し、カテーテルやガイドワイヤーをインジェクター50から取り外し、インジェクター50を退避させる。そして、術者は、再び第2の撮影系を移動させて被検体Pの位置合わせを行う。
【0033】
このような3次元画像データの収集には通常5分以上が必要である。すなわち、この3次元画像データの収集により、造影剤の使用量が増えること、被曝量が増えること、5分以上手技が中断することになる。また、術者は、手技を中断しなければ、この5分程度の間に困難な状況を回避してカテーテルやガイドワイヤーの操作を進めることができるかもしれない。
【0034】
ところで第1の撮影系及び第2の撮影系を用いた回転撮影では撮影時間が短縮できる、あるいは第2の撮影系を退避する必要がなくなるなどのメリットがある。しかし第1の撮影系と第2の撮影系とは独立に回転中心を設定可能である。このため、術者は、第1の撮影系及び第2の撮影系を用いた回転撮影では、第1の撮影系及び第2の撮影系について独立して撮影領域を確認する必要がある。例えば、術者は、第1の撮影系を回転撮影範囲の開始角度と終了角度で透視し、同様に第2の撮影系を回転撮影範囲の開始角度と終了角度で透視する。そして、術者は、第1の撮影系及び第2の撮影系の注目領域が視野からはみ出していないことを確認する。これらのことが原因で、従来、術者は、カテーテルやガイドワイヤーの操作を支援する目的で3次元ロードマップの使用を選択していなかった。
【0035】
そこで、第1の実施形態に係るX線診断装置1は、カテーテルが目的の血管に入らないなどカテーテルやガイドワイヤーの操作を支援する場合、第1の撮影系及び第2の撮影系を用いた回転撮影において、第1の撮影系の回転中心と第2の撮影系の回転中心とを実質的に一致させる。例えば、X線診断装置1は、第1の撮影系を被検体P正面に、第2の撮影系を被検体P側面にセットし、且つ2つの撮影系の回転中心が実質的に一致するように移動させる。
【0036】
以下、本実施形態に係るX線診断装置1による処理の一例について、図2を用いて説明する。図2は、第1の実施形態に係るX線診断装置1による処理の手順の一例を示すフローチャートである。図2に示すように、X線診断装置1において、制御部30は、回転撮影プログラムの選択を操作者から受付けたか否かを判定する(ステップS101)。
【0037】
ここで、制御部30は、回転撮影プログラムの選択を操作者から受付けたと判定しなかった場合(ステップS101、No)、ステップS101の判定処理を繰り返す。一方、制御部30が、回転撮影プログラムの選択を操作者から受付けたと判定した場合(ステップS101、Yes)、制御部30の位置合わせ部31が、位置合わせ処理を実行する(ステップS102)。図3を用いて、制御部30の位置合わせ部による位置合わせ処理の処理手順について説明する。
【0038】
図3は、第1の実施形態に係る制御部30の位置合わせ部31による位置合わせ処理の処理手順を示すフローチャートである。図3に示すように、制御部30の位置合わせ部31は、第1の撮影系の回転中心と第2の撮影系の回転中心とを実質的に一致させる(ステップS201)。図4及び図5を用いて、ステップS201の処理について説明する。図4は、第1の実施形態を説明するための図(1)であり、図5は、第1の実施形態を説明するための図(2)である。
【0039】
図4では、位置合わせ処理前の第1の撮影系及び第2の撮影系の一例を示し、図5では、位置合わせ処理後の第1の撮影系及び第2の撮影系の一例を示す。また、図4及び図5では、被検体Pと、第1の撮影系及び第2の撮影系とを図示している。
【0040】
図4では、第1の撮影系の回転中心C1と、第2の撮影系の回転中心C2とが一致していない。制御部30の位置合わせ部31は、図4に示す状態から、第2の撮影系を制御して、図5に示すように、第1の撮影系の回転中心C1と第2の撮影系の回転中心C2とを実質的に一致させる。なお、図5に示す例では、制御部30の位置合わせ部31は、第1の撮影系及び第2の撮影系を移動させる場合を示したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、制御部30の位置合わせ部31は、第1の撮影系を移動させて、第1の撮影系の回転中心と第2の撮影系の回転中心とを実質的に一致させてもよいし、第1の撮影系及び第2の撮影系を移動させて、第1の撮影系の回転中心と第2の撮影系の回転中心とを実質的に一致させてもよい。また、回転中心は、撮影範囲の中心であるものとする。
【0041】
図3に戻る。続いて、制御部30の位置合わせ部31は、更に、回転中心における対象物の幾何学的拡大率を第1の撮影系と第2の撮影系とで実質的に一致させる(ステップS202)。例えば、制御部30の位置合わせ部31は、第1の撮影系及び第2の撮影系の少なくともいずれか一方のX線焦点と受像面との距離(SID:Source to image-receptor distance)を調整して、回転中心における対象物の幾何学的拡大率を実質的に一致させる。
【0042】
より具体的な一例として、第1の撮影系のSOD(Source to object distance:X線焦点と被検体Pの中心付近にある回転中心までの距離)が650mmであり、第2の撮影系のSODが700mmであり、第1の撮影系のSIDが1100mmである場合について説明する。かかる場合、制御部30の位置合わせ部31は、第2の撮影系のSIDを1184.6mm(=1100X700/650)に調整する。このようにして制御部30の位置合わせ部31は、収集画像の空間分解能を一致させる。
【0043】
また、制御部30の位置合わせ部31は、検出器のピクセルサイズが異なる場合、回転中心での分解能が一致するようにSIDを制御する。より具体的な一例として、第1の撮影系のX線検出器12aのピクセルサイズが100μmであり、第2の撮影系のX線検出器12bのピクセルサイズが120μmであり、第2の撮影系のSODが共に700mmであり、第1の撮影系のSIDが1100mmである場合について説明する。かかる場合、制御部30は、第2の撮影系のSIDを1320mm(=700X120X1100/(700X100))に調整する。
【0044】
また、制御部30の位置合わせ部31は、更に、第1の撮影系と第2の撮影系とでX線の照射範囲を実質的に一致させる(ステップS203)。例えば、制御部30の位置合わせ部31は、更に、第1のX線検出器12aと第2のX線検出器12bとでX線信号収集領域を実質的に一致させる。図6を用いて、ステップS203の処理について説明する。図6は、第1の実施形態を説明するための図(3)である。
【0045】
図6では、被検体Pに対するX線照射範囲を黒丸FOV1で図示している。制御部30の位置合わせ部31は、図6に示すように、第1の撮影系のX線検出器12aのX線信号収集領域をD1に調整し、第2の撮影系のX線検出器12bのX線信号収集領域をD2に調整して、第1のX線検出器12aと第2のX線検出器12bとでX線信号収集領域を実質的に一致させる。また、制御部30の位置合わせ部31は、第1のX線検出器12aと第2のX線検出器12bとでマトリックスサイズが異なる場合には、更に、第1のX線検出器12a及び第2のX線検出器12bの少なくともいずれか一方を制御してマトリックスサイズを実質的に一致させる。また、制御部30の位置合わせ部31は、第1のX線管球11aと第2のX線管球11bとでX線焦点サイズが異なる場合には、更に、第1のX線管球11a及び第2のX線管球11bの少なくともいずれか一方を制御してX線焦点サイズを実質的に一致させる。
【0046】
続いて、制御部30の位置合わせ部31は、位置合わせ処理の終了を受付けたか否かを判定する(ステップS204)。ここで、制御部30の位置合わせ部31は、位置合わせ処理の終了を受付けたと判定した場合(ステップS204、Yes)、位置合わせ処理を終了する。一方、制御部30の位置合わせ部31は、位置合わせ処理の終了を受付けたと判定しなかった場合(ステップS204、No)、幾何学的拡大率の変更を受付けたか否かを判定する(ステップS205)。
【0047】
制御部30の位置合わせ部31は、幾何学的拡大率の変更を受付けたと判定した場合(ステップS205、Yes)、幾何学的拡大率を調整する(ステップS206)。例えば、制御部30の位置合わせ部31は、ステップS202と同様に、第1の撮影系のSID及び第2の撮影系のSIDのいずれか一方の撮影系のSIDが変更された場合、他方の撮影系のSIDを調整して、回転中心における対象物の幾何学的拡大率を第1の撮影系と第2の撮影系とで実質的に一致させる。
【0048】
制御部30の位置合わせ部31は、ステップS206の終了後、或いは、幾何学的拡大率の変更を受付けたと判定しなかった場合(ステップS205、No)、X線照射範囲の変更を受付けたか否かを判定する(ステップS207)。ここで、制御部30の位置合わせ部31は、X線照射範囲の変更を受付けたと判定しなかった場合(ステップS207、No)、ステップS204に移行する。一方、制御部30の位置合わせ部31は、X線照射範囲の変更を受付けたと判定した場合(ステップS207、Yes)、X線照射範囲を調整する(ステップS208)。例えば、制御部30の位置合わせ部31は、第1の撮影系のX線検出器12aでX線信号収集領域を変更すると、第2の撮影系のX線検出器12bでもX線信号収集領域が一致するように自動的に切り替える。図7を用いて、ステップS208の処理について説明する。図7は、第1の実施形態を説明するための図(4)である。
【0049】
図7では、被検体Pに対するX線照射範囲が図6に示す黒丸FOV1から黒丸FOV2に変更された場合を図示している。制御部30の位置合わせ部31は、図7に示すように、第1の撮影系のX線検出器12aのX線信号収集領域をD3に調整し、第2の撮影系のX線検出器12bのX線信号収集領域をD4に調整して、第1のX線検出器12aと第2のX線検出器12bとでX線信号収集領域を実質的に一致させる。
【0050】
また、制御部30の位置合わせ部31は、例えば、第1の撮影系のX線検出器12aでマトリックスサイズが変更されると、第2の撮影系のX線検出器12bでマトリックスサイズを第1の撮影系のX線検出器12aと一致するよう自動的に変更する。同様に、制御部30の位置合わせ部31は、第2の撮影系のX線検出器12bでマトリックスサイズが変更されると、第1の撮影系のX線検出器12aでマトリックスサイズを第2の撮影系のX線検出器12bと一致するよう自動的に変更する。
【0051】
また、制御部30の位置合わせ部31は、収集ピクセルサイズも同様に制御する。より具体的には、制御部30の位置合わせ部31は、第1の撮影系のX線検出器12aで収集ピクセルサイズが変更されると、第2の撮影系のX線検出器12bのX線信号収集領域或いはマトリックスサイズを制御して、第1の撮影系のX線検出器12aと第2の撮影系のX線検出器12bとで収集ピクセルサイズが一致するように自動的に切り替える。同様に、制御部30の位置合わせ部31は、第2の撮影系のX線検出器12bで収集ピクセルサイズが変更されると、第1の撮影系のX線検出器12aのX線信号収集領域或いはマトリックスサイズを制御して、第1の撮影系のX線検出器12aと第2の撮影系のX線検出器12bとで収集ピクセルサイズが一致するように自動的に切り替える。
【0052】
また、制御部30の位置合わせ部31は、更に、第1のX線管球11aのX線焦点サイズが変更されると、第2のX線管球11bのX線焦点サイズを制御して、第1のX線管球11aと第2のX線管球11bとでX線焦点サイズを実質的に一致させる。同様に、制御部30の位置合わせ部31は、第2のX線管球11bのX線焦点サイズが変更されると、第1のX線管球11aのX線焦点サイズを制御して、第1のX線管球11aと第2のX線管球11bとでX線焦点サイズを実質的に一致させる。
【0053】
図2に戻る。制御部30は、ステップS102の位置合わせ処理が完了すると、回転撮影の開始を受付けたか否かを判定する(ステップS103)。例えば、制御部30は、撮影スイッチが押下されたか否かを判定する。ここで、制御部30は、回転撮影の開始を受付けたと判定しなかった場合(ステップS103、No)、ステップS103の判定処理を繰り返す。一方、制御部30は、撮影スイッチが押下され、回転撮影の開始を受付けたと判定した場合(ステップS103、Yes)、ステップS104に移行し、撮影を開始する。
【0054】
なお、回転撮影の開始前には、回転撮影の準備として、例えば以下の処理が行われる。術者は、回転撮影によってアームが回転中に被検体Pに接触しないことを確認するため、各アームを回転終了角から開始角に向かってゆっくりと回転させる。そして、術者は、回転開始角度でアームが停止すると、次にインジェクター50を準備し、カテーテルやガイドワイヤーにインジェクター50を接続する。さらに術者は、造影条件を設定する。インジェクター50の準備が完了すると撮影準備完了である。
【0055】
X線診断装置1においては、制御部30の制御のもと、X線撮影機構10がバイプレーンによってマスク画像を収集する(ステップS104)。最初は例えば第1の撮影系が0度〜100度まで回転すると同時に、第2の撮影系が−100度から0度まで回転する。回転中にほぼ等角度間隔でデータを例えば各々100枚収集する。
【0056】
マスク画像を収集後、X線診断装置1は、第1の撮影系及び第2の撮影系を逆方向に回転させて、第1の撮影系及び第2の撮影系を元の位置に戻す(ステップS105)。アームはそれぞれ回転開始角度に戻る。
【0057】
元の位置に戻ったら、X線診断装置1は、インジェクター50に駆動信号を送信し、被検体Pに造影剤を注入する(ステップS106)。回転開始位置に戻ると、X線診断装置1からインジェクター50に信号が送信され、造影剤注入が開始される。例えば、インジェクター50は、2〜3(cc/sec)で3秒間造影剤を被検体Pに注入する。
【0058】
続いて、X線診断装置1は、所定の時間が経過したか否かを判定する(ステップS107)。X線診断装置1は、所定の時間が経過したと判定しなかった場合(ステップS107、No)、所定の時間が経過するまで判定処理を繰り返す。なお、所定の時間とは造影剤が撮影部位に到達するまでの時間であり、ここでは約1秒である。
【0059】
X線診断装置1は、所定の時間が経過したと判定した場合(ステップS107、Yes)、制御部30の制御のもと、X線撮影機構10がバイプレーンによってコントラスト画像を収集する(ステップS108)。例えば、X線診断装置1は、造影剤注入後に、ステップS104の撮影と同様に、第1の撮影系及び第2の撮影系を順方向に回転させて、それぞれ画像データを収集する。
【0060】
X線診断装置1は、撮影が完了すると収集した画像データを一旦画像メモリ22に格納する(ステップS109)。画像メモリ22に画像データが蓄積されると、マスク画像、コントラスト画像がサブトラクション部23に転送される。
【0061】
次に、サブトラクション部23は、おおよそ同じ角度同士の造影前の画像(投影データ)と造影後の画像(投影データ)とをサブトラクションする(ステップS110)。なお、このサブトラクションにより生成されたDSA画像は、3次元再構成部29に送られる。
【0062】
3次元再構成部29は、収集された2次元の投影データから3次元のボリューム画像を再構成する(ステップS111)。すなわち、3次元再構成部29は、第1のX線検出器12aにより収集されたX線信号に基づいて順次生成される第1のX線画像及び第2のX線検出器12bにより収集されたX線信号に基づいて順次生成される第2のX線画像を用いて、3次元画像をハーフ再構成する。再構成方法の一例としては、ここではFeldkamp等によって提案されたフィルタードバックプロジェクション法の場合を示す。3次元再構成部29は、200フレームのDSA画像に対して例えばShepp&LoganやRamachandranのような適当なコンボリューションフィルターをかける。次に、3次元再構成部29は、逆投影演算を行うことにより再構成データを得る。
【0063】
ここで再構成領域は、X線管球の全方向へのX線束に内接する円筒として定義される。この円筒内は、例えばX線検出器の1検出素子の幅に投影される再構成領域中心部での長さdで三次元的に離散化され、離散点のデータの再構成像を得る必要がある。但しここでは離散間隔の一例を示したが、これは装置やメーカーによって違うこともあるので、基本的には装置によって定義された離散間隔を用いれば良い。なお、ここでは、直接再構成法により3次元画像を再構成する場合について説明したが、3次元再構成部29は、逐次近似再構成法を用いて3次元画像を再構成してもよい。再構成された3次元画像は3次元画像処理部25に送られる。
【0064】
このようにして、3次元再構成部29によって3次元画像が再構成された後、X線診断装置1は、第1の撮影系及び第2の撮影系により透視画像が順次生成される。また、3次元画像処理部25は、3次元再構成部29によって再構成された3次元画像から、現時点の第1の撮影系及び第2の撮影系の位置から投影した血管画像を生成する。ここで、3次元画像処理部25は、血管画像として、ボリュームレンダリング画像や、投影画像、MIP画像などを生成する。そして、3次元画像処理部25は、生成された血管画像とリアルタイムで実行されている透視画像とを重畳させた3次元ロードマップ画像を生成し、表示部40に表示させる。これにより、術者は、カテーテル、ガイドワイヤーを入れようとしている血管が手前側に位置するのか、あるいは奥側に位置するのかを把握しながらカテーテルやガイドワイヤーを操作できる。この結果、術者は、短時間でのカテーテルの挿入が可能となる。
【0065】
上述したように、第1の実施形態に係るX線診断装置1は、独立に回転制御される第1の撮影系の回転中心と第2の撮影系の回転中心とを実質的に一致させる。これにより、術者は、開始角度と終了角度での確認作業を簡易化できる。例えば、術者は、第1の撮影系を被検体Pの正面にセットし、第2の撮影系を被検体Pの側面にセットして、注目領域が視野の中心近辺に入っていることを確認するだけで撮影系と被検体Pとの相対的な位置合わせができる。これにより、術者は、被検体Pの位置合わせ作業を簡易化することが可能となる。
【0066】
さらに、上述した第1の実施形態では、X線診断装置1は、第2の撮影系を退避させる作業や、退避させた第2の撮影系を再度被検体Pに位置合わせする作業を省略することが可能である。このように、第1の実施形態では、第2の撮影系を退避させる作業、被検体Pの位置合わせ作業、退避させた第2の撮影系を再度被検体Pに位置合わせする作業を省略又は簡易化することができる。このため、術者は、従来よりも短時間且つ少ない手間で3次元画像を観察することができるようになる。
【0067】
また、従来の3次元画像の再構成処理では、例えば注射器などで造影剤を注入した場合、注入可能な造影剤量が限られるので、インジェクター50が使用されていた。例えば、造影剤存在下でのX線画像の収集までに4.5秒から5秒程度かかるのに対して、注射器では3秒分程度の造影剤しか注入できない。すなわち、注射器などで造影剤を注入した場合、造影撮影まで造影剤が続かない。この一方で、第1の実施形態では、第1の撮影系及び第2の撮影系を用いて回転撮影回転撮影するので、造影剤の注入から造影撮影までを3秒以内にすることができれば、インジェクター50を使用しなくてもよい。かかる場合、カテーテルやガイドワイヤーとインジェクター50とを接続する作業、インジェクター50での造影条件を設定する作業、カテーテルやガイドワイヤーをインジェクター50から取り外す作業、インジェクター50を退避させる作業が更に不要になる。この結果、手技時間を更に短縮可能になる。
【0068】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、制御部30の位置合わせ部31による位置合わせ処理により第1の撮影系と第2の撮影系とで空間分解能を実質的に一致させて、3次元画像を再構成する場合について説明した。ところで、位置合わせ処理において、空間分解能を実質的に一致できない場合がある。そこで、第2の実施形態では、制御部30の位置合わせ部31による位置合わせ処理により空間分解能を実質的に一致できない場合に実行する各種処理について説明する。
【0069】
例えば、第1の撮影系のX線検出器12aのマトリックスサイズ及び、第2の撮影系のX線検出器12bのマトリックスサイズが1024X1024であり、各ピクセルの大きさが100μmであるとする。また、説明の便宜上、第1の撮影系のSODが600mmであり、SIDが1200mmであり、第2の撮影系のSODが300mmであり、SIDが1200mmであるX線光学系を例にする。かかる場合、第1の撮影系でのX線拡大率は2倍、第2の撮影系でのX線拡大率は4倍となる。このため、第2の撮影系での収集画像が非常に狭い範囲の細かい構造が見えるのに対し、第1の撮影系での収集画像は、第2の撮影系の画像に比べると広範囲にぼやけた画像が収集される。ここで、第1の撮影系と第2の撮影系とで幾何学的拡大率が実質的に一致している場合、正面方向からの投影軌跡に対し、90度異なる方向からもシャープな画像を元にした逆投影演算により構造のない部分では投影軌跡を打ち消すことができる。しかし、第1の撮影系と第2の撮影系とで幾何学的拡大率が実質的に一致していない場合、投影軌跡を適切に打ち消すことができず、アーチファクトとして残ってしまう。
【0070】
このように第1の撮影系と第2の撮影系とで、回転中心における対象物の幾何学的拡大率が実質的に一致しない場合に、3次元再構成部29は、対象物の空間分解能を一致させるフィルタ(再構成関数)を用いて3次元画像を再構成する。図8Aは、第2の実施形態を説明するための図(1)であり、図8Bは、第2の実施形態を説明するための図(2)である。
【0071】
図8Aでは、第1の撮影系で収集された画像に対する再構成関数の一例を示し、図8Bでは、第2の撮影系で収集された画像に対する再構成関数の一例を示す。また、図8A及び図8Bでは、第1の撮影系でのX線拡大率が2倍であり、第2の撮影系でのX線拡大率が4倍である場合について説明する。
【0072】
例えば、3次元再構成部29は、図8A及び図8Bに示すように、第1の撮影系で収集された画像に対する再構成関数と、第2の撮影系で収集された画像に対する再構成関数とで異なる再構成関数を用いて3次元画像を再構成することで、回転中心における対象物の幾何学的拡大率を実質的に一致させる。これにより、3次元再構成部29は、回転中心における対象物の幾何学的拡大率が異なることにより生じるアーチファクトを抑制することが可能になる。
【0073】
なお、3次元再構成部29は、対象物の空間分解能を一致させるフィルタ処理後に3次元画像を再構成するようにしてもよい。例えば、3次元再構成部29は、前処理でボケがほぼ一致するように第2の撮影系の収集画像に低周波強調フィルタ処理が施された後に、直接再構成法で3次元画像を再構成する。
【0074】
(第2の実施形態の変形例1)
また、制御部30の位置合わせ部31は、第1の撮影系と第2の撮影系とで、回転中心における対象物の幾何学的拡大率及びX線信号収集領域の少なくともいずれか一方が実質的に一致しない場合、一方のX線信号収集領域に基づいて生成されたX線画像において他方のX線画像の再構成領域を示す情報を含めて表示部40に表示させる。図9は、第2の実施形態の変形例1を説明するための図である。図9では、第1の撮影系からの収集画像の再構成領域より、第2の撮影系からの収集画像の再構成領域が狭い場合を示す。図9に示すように、制御部30の位置合わせ部31は、第2の撮影系からの収集画像では再構成領域が狭くなるので、第2の撮影系の再構成領域に合わせて第1の撮影系の収集画像に再構成領域を示すガイドラインL1を表示する。
【0075】
(第2の実施形態の変形例2)
あるいは、制御部30の位置合わせ部31は、第1の撮影系と第2の撮影系とで、回転中心における対象物の幾何学的拡大率及びX線信号収集領域の少なくともいずれか一方が実質的に一致しない場合、コリメータを制御して第1の撮影系及び第2の撮影系の再構成領域を一致させるようにしてもよい。ここで、コリメータは、X線管球11a及びX線管球11bから曝射されたX線のX線量を調節するためのX線フィルタによってX線量が調節されたX線の照射範囲を絞り込むためのスリットである。図10は、第2の実施形態の変形例2を説明するための図である。図10では、第1の撮影系からの収集画像の再構成領域より、第2の撮影系からの収集画像の再構成領域が狭い場合を示す。図10に示すように、制御部30の位置合わせ部31は、コリメータの開口度を調整することによりX線の照射範囲(ファン角やコーン角)を調整し、再構成領域以外の領域R1を遮蔽する。
【0076】
(その他の実施形態)
実施形態は、上述した実施形態に限られるものではない。
【0077】
上記の実施形態の説明において、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0078】
また、上記の実施形態で説明した制御方法は、予め用意された制御プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この制御プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この制御プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0079】
また、上記の第1〜第2の実施形態の説明で図示したX線診断装置は、例えば、図11に示すように構成されてもよい。図11は、その他の実施形態に係るX線診断装置1aの構成例を示す図である。
【0080】
図11に示すように、その他の実施形態に係るX線診断装置1aは、X線撮影機構210と、画像処理装置200とを有する。ここで、X線撮影機構210、画像処理装置200は、図1に示したX線撮影機構10、画像処理装置100にそれぞれ対応する。
【0081】
X線撮影機構210は、図11に示すように、第1の撮影系と、第2の撮影系とを備えるバイプレーン撮影機構である。第1の撮影系は、X線管球211aと、X線検出器212aと、C型アーム213aとを有し、第2の撮影系は、X線管球211bと、X線検出器212bと、Ω型アーム213bとを有する。ここで、図11に示すX線管球211a、X線検出器212a、C型アーム213a、X線管球211b、X線検出器212b、及びΩ型アーム213bは、図1に示したX線管球11a、X線検出器12a、C型アーム13a、X線管球11b、X線検出器12b、及びΩ型アーム13bにそれぞれ対応する。
【0082】
また、X線撮影機構210は、寝台214を有し、インジェクター250が接続される。ここで、図11に示す寝台214及びインジェクター250は、図1に示した寝台14及びインジェクター50にそれぞれ対応する。
【0083】
また、画像処理装置420は、図11に示すように、A/D変換器221と、記憶回路222と、サブトラクション回路223と、フィルタリング回路224と、3次元画像処理回路225と、A/D変換器226と、LUT回路227と、アフィン変換回路228と、3次元再構成回路229と、処理回路230と、ディスプレイ240とを有する。
【0084】
ここで、A/D変換器221は、図1に示したA/D変換部21に対応し、記憶回路222は、図1に示した画像メモリ22に対応する。サブトラクション回路223は、図1に示したサブトラクション部23に対応し、図2に示すステップS110の処理を実行する。フィルタリング回路224、3次元画像処理回路225、A/D変換器226、LUT回路227、アフィン変換回路228、及びディスプレイ240は、は、図1に示したフィルタリング部24、3次元画像処理部25、A/D変換部26、LUT27、アフィン変換部28、及び表示部40にそれぞれ対応する。3次元再構成回路229は、図1に示した3次元再構成部29に対応し、図2に示すステップS111の処理を実行する。なお、その他の実施形態における3次元再構成回路229は、特許請求の範囲における再構成回路の一例である。
【0085】
また、処理回路230は、図1に示した制御部30に対応する。処理回路230は、回転撮影のプログラムが操作者によって選択されたとき、位置合わせ機能231を実行し、例えば、第1の撮影系の回転中心と第2の撮影系の回転中心とを実質的に一致させる。位置合わせ機能231は、図1に示す位置合わせ部31により実現される機能である。その他の実施形態における処理回路230は、特許請求の範囲における処理回路の一例である。
【0086】
ここで、例えば、図11に示す処理回路230の構成要素である位置合わせ機能231が実行する処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路222へ記録されている。処理回路230は、プログラムを記憶回路222から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路230は、図11の処理回路230内に示された位置合わせ機能231を有することとなる。すなわち、処理回路230は、位置合わせ機能231に対応するプログラムを記憶回路222から読み出し実行することで、位置合わせ部31と同様の処理を実行する。
【0087】
例えば、図3に示すステップ201からステップS208は、処理回路230が記憶回路222から位置合わせ機能231に対応するプログラムを呼び出し実行することにより、実現されるステップである。
【0088】
なお、図11においては単一の処理回路230にて、位置合わせ機能231にて行われる処理機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。
【0089】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(central preprocess unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC))、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図11における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0090】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、第1の撮影系及び第2の撮影系を用いた回転撮影を簡便にすることができる。
【0091】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0092】
1 X線診断装置
11a、11b X線管球
12a、12b X線検出器
13a C型アーム
13b Ω型アーム
29 3次元再構成部
30 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11