(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
太陽電池等の2次元受光素子の出力性能を測定するため、またその均一性の検査のために、光源装置が用いられている。
【0003】
かかる光源装置において、キセノンランプやハロゲンランプの組み合わせが光源として用いられている(特許文献1〜4参照)。これら光源をランプ光源と呼称する。
【0004】
図1は、かかるキセノンランプやハロゲンランプの組み合わせのランプ光源を用いる従来の光源装置について説明する概念構成図である。
【0005】
図1において、放物面鏡2の焦点に配置されたランプ光源1より射出した光束は、第1の反射鏡3で反射されてインテグレーター4に入射する。インテグレーター4で均一化された光量の光が、再び出射して、第2の反射鏡5及び光学系6を通して、被照射面7に照射される。
【0006】
かかる光源装置の利用として、例えば、ソーラーシミュレータとして利用することが可能である。ソーラーシミュレータの場合、太陽光のスペクトルにシミュレートされたランプ光源1の発光が照射される被照射面7を太陽電池の表面として、当該太陽電池の発光効率の測定に用いることが可能である。
【0007】
上記のようなランプ光源1を用いる光源装置では、特に高い強度の照射が必要な場合は、ランプの寿命が短いという問題があった。また、光学系の損失が大きいため、ランプに投入した電力のうちたかだか数%が光として照射されるにすぎず、省電力化が難しかった。さらに、ランプ光源が不要な赤外線を同時に発生するため、照射面および照射面に置かれた試料を不必要に加熱する問題もあった。
【0008】
かかるランプ光源1による光源装置の不都合を解消するべく、発光ダイオード(LED)を光源とするLED光源装置も開発されてきた。かかるLED光源装置を用いた太陽電池の評価方法及び装置も提案されている(特許文献5〜8)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献5〜8に示される技術は、専ら太陽電池の特性評価を目的とする評価方法及び評価装置であって、特定の少数の波長、例えば、特許文献5にあっては、赤外、赤、青の3つの波長帯と、白の広波長帯のLEDを用い、特許文献6、7にあっては、赤外、紫外、赤、青の波長帯のLEDを用いている。
【0011】
そして、特許文献5に記載の発明では、LED毎に発光させ、対応するLEDの絶対分光感度を取得し、各LEDの絶対分光感度の値から、計算により太陽電池の絶対分光感度曲線を求めることを開示している。
【0012】
特許文献6、7に記載の発明は、特許文献5の太陽電池の特性評価方法を前提として、これに用いる太陽電池評価装置における温度によるLEDの発光効率のばらつきを解消するべく水冷式の冷却ユニットを開示している。
【0013】
しかし、上記特許文献5〜7に示される技術では、LEDの発光色の輝線スペクトルが離散的であり、より理想的に目的のスペクトルに近似させることは困難を伴う。
【0014】
加えて、現在、上記した特許文献1〜8に示されるような太陽光のシミュレータ及び太陽電池の特性評価の他、多様な照明用途が考えられている。従来より特定光のシミュレーションに加え、室内光のシミュレート、塗装物・印刷物等の異なる環境での色のチェックや人工的な環境での植物の効率的な栽培育成を狙った特殊照明などが考えられている。
【0015】
一方、近年、スマートフォン等の携帯機器を室内等の低照度の環境で使用する機会が多くなっている。その際、携帯機器用の補助電源として、太陽電池による充電装置が用いられる。したがって、同様に、かかる充電装置に使用する太陽電池の特性、特に低照度環境下での特性を評価することが必要である。
【0016】
そのためには、低照度での照明を可能とする光源装置が必要となる。しかし、これまで低照度での太陽光スペクトルを精度良くシミュレートする光源装置は提供されていなかった。
【0017】
したがって、上記従来の技術状況に鑑みて、本発明の課題は、低照度でも高いスペクトル近似度で、高い光量均一度で太陽光スペクトルの光を出力できるLED光源を用いるLED光源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決する本発明に従うLED光源装置は、基本的側面として、それぞれ異なる発光波長の複数のLED素子で構成されるLED光源と、前記LED光源の複数のLED素子に駆動電流を供給するLED駆動部と、所定の波長スペクトルに対応して前記複数のLED素子のそれぞれの発光強度を決定して、前記LED駆動部の駆動電流を制御するフィードバック制御部と、前記LED光源による発光照射を受ける被照射面と、前記被照射面の照度の波長毎の強度を測定する分光放射計を有し、前記分光放射計により測定される波長毎の強度に基づき、前記フィードバック制御部は前記所定の波長スペクトルに対応する様に前記LED駆動部の駆動電流を制御し、更に前記LED駆動部は、前記複数のLED素子を定電流駆動し、更に前記複数のLED素子に流れる電流を検知して前記定電流駆動をフィードバック制御することを特徴とする。
【0019】
上記の課題を解決する本発明に従うLED光源装置は、前記基本的側面において、さらに、複数のLED光源は、レーザ素子と蛍光体とで構成され、前記蛍光体が、前記レーザ素子により励起されて、所定の波長光を発光することを特徴とする。
【0020】
上記の課題を解決する本発明に従うLED光源装置は、前記基本的側面において、さらに、前記複数のLED光源のそれぞれの出力光を、インテグレーターを通して前記被照射面に照射し、前記被照射面で前記複数のLED光源の出力光の波長が合成されることを特徴とする。
【0021】
さらに、前記複数のLED光源の出力光を、共通のインテグレーターを通して波長合成し、前記共通のインテグレーターの出力光を前記被照射面に照射することを特徴とする。
【0022】
また、特定の発光波長のLED光源が得られないとき、隣接する波長のLED光源の出力を、空間フィルターを通して、前記特定の発光波長に近似させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
上記により簡単な装置構成で、最大1SUNからろうそくの明かり程度である1/10000SUNまでの任意の照度で、目標とするスペクトルの光を出力できるLED発光装置が提供可能である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下図面に基づき、本発明に従うLED光源装置の実施例を説明する。
【0026】
図2は、本発明に従うLED光源装置の実施例ブロック図である。
【0027】
LED光源装置は、制御装置10と、これにより発光制御される複数のLED素子で構成されるLED光源11と、LED光源11により照射される被照射面12に設けられたセンサー部130と本体部131で構成される分光放射計13と、更に記憶装置14を有して構成される。
【0028】
制御装置10は、管理プログラムを実行するパーソナルコンピュータと同様機能の情報処理部100、フィードバック制御部101及び、低照度対応可能のLED駆動部102を有する。さらに、LED駆動部102とLED光源11の間にLED光源11を定電流制御するアナログ出力部102a、及びLED光源11に流れる実際の電流値を検知するアナログ入力部102bを備える。
【0029】
記憶装置14は、制御装置10の外部に独立して若しくは、情報処理部100の付属部として備えられる。そして、情報処理部100における管理プログラムの実行により、複数の光源のそれぞれに対応する所定のスペクトルデータが記憶装置14に書き込み/読出し可能に格納されている。
【0030】
図2において、LED光源11は、より超寿命でエネルギー効率に優れた、発光ダイオード(LED素子)ないしは半導体レーザ等の発光スペクトル幅が狭い光源(以降単に、LED素子という)を用いる。必要とされるスペクトル帯域を全てカバーできるように異なる発光波長特性を有する複数のLED素子を選定する。
【0031】
図2に示すように、制御装置10により出力レベルを調整されるLED光源11からの発光が被照射面12に照射される。
【0032】
被照射面12には、スペクトル照度分布をリアルタイムに測定する機能装置(被照射面12の光特性の検知手段:分光放射計)13を本体部131と一体で構成する照度センサー130が組み込まれる。これにより、照射中に照射光のスペクトルの測定が可能になる。
【0033】
LED光源11の各々のLED素子は、スペクトル分布中の固有のスペクトル領域に寄与するため、分光放射計13により測定されたスペクトル中の特定のスペクトル領域の強度を望みの値にするべく、コンピュータとソフトウエア、あるいはロジック制御ハードウエアとユーザーインターフェイス(ハードウエア/ソフトウエア)によって構成されるフィードバック制御装部101により、その発光強度がフィードバック制御される。
【0034】
すなわち、フィードバック制御部101は、記憶装置14に予め格納したユーザーが希望する光源の所定の波長スペクトルに対応するべく、分光放射計13で測定された各波長帯の照度の測定値と、所定の波長スペクトルとを比較して、その差分が小さくなるように、LED駆動部102を制御する。
【0035】
LED駆動部102は、フィードバック制御部101からの制御値に対応してアナログ出力部102aの定電流値を設定してLED光源11を駆動する。さらに、LED駆動部102は、アナログ入力部102bで検知されるLED光源11の実際の電流値を入力し、先の定電流値となるように、アナログ出力部102aに対してフィードバック制御する。
【0036】
ここで、LED駆動部102、アナログ出力部102a及びアナログ
入力部102bは、LED光源11の低照度発光を可能とするべく、低照度(11lux〜1123lux)での出力照度が高い光量均一度で再現できるように設計されている。
【0037】
本発明は、上記のフィードバック制御部101によるフィードバック制御と、LED駆動部102におけるフィードバック制御との二重のフィードバック制御に特徴を有し、これにより1/10000SUN〜1SUNの範囲、即ちろうそくの明かりほどの低照度から戸外の太陽光下の照度の光を、高いスペクトル近似度で、出力可能なLED光源装置が再現できる。
【0038】
図3は、光源装置10における複数の光源によるスペクトル合成を説明する図である。それぞれ発光スペクトル幅が狭い複数のLED素子の波長(λ
1〜λ
n)を順に並べることにより、
図3(1)に示すように所定の帯域のスペクトル合成30が得られる。そして、記憶装置14に予め格納したユーザーが所望する所定の発光スペクトル31(
図3(2))に対応するべく、個々のLED素子の発光強度を制御することにより、所望のスペクトル31に対応する合成スペクトルが生成できる。
【0039】
図4は、
図2に示した記憶装置14に予め格納されるユーザーが所望する発光スペクトル31に対応するスペクトル情報テーブルの例を示す図である。このスペクトル情報テーブルには、光源となるLED素子(No.1〜n)毎に発光中心周波数(f
1〜f
n)と、所望の発光スペクトル31に対応する照度(L
1〜L
n)が登録されている。
【0040】
フィードバック制御部101は、スペクトル照度分布をリアルタイムに測定する分光放射計13から得られるLED光源11のLED素子(No.1〜No.n)毎の被照射面12における実照度と
図4のスペクトル情報テーブルの所望スペクトルに対応する照度(L
1〜L
n)とを比較して、差分を求める。次いで、この差分が零となるように、LED駆動部102に制御信号を送り、対応するLED素子の電流を制御してスペクトル情報テーブル(
図4)の所望スペクトル31の照度に一致させる。
【0041】
図5は、LED光源11の一構成例である。それぞれ構成が同じ複数の光源(簡単化のために図では3本の光源)が示されている。光源は、発光ダイオード(LED素子)20A(20B、20C)を使用している。ここでLED素子20A(20B、20C)のそれぞれは、所要の発光強度が得られるように同一規格のLED素子を複数本で構成されてもよい。
【0042】
LED素子20A(20B、20C)の発光を、結合光学系21A(21B、21C)を通して、インテグレーター22A(22B、22C)に入力する。インテグレーター22A(22B、22C)により、LED素子20A(20B、20C)の発光の照度を均一化できる。
【0043】
インテグレーター22A(22B、22C)の出力は、投影光学系D1(D2、D3)を通して再び放射され、被照射面12に照射される。図に示すように、各光源からの光は被照射面12での照度面分布が均一になるべく、インテグレーター22A(22B、22C)によって整えられる。各々の光源の放射角特性は光源に固有であるため、インテグレーター22A(22B、22C)への入射に際して損失が最小になるように結合光学系21A(21B、21C)が設定される。
【0044】
3本のLED素子20A(20B、20C)のそれぞれは、異なる波長スペクトルを有している。したがって、被照射面12に照射される光のスペクトルは、3本の光源のそれぞれ異なる波長スペクトルを重ねた(合成した)ものが得られる。
【0045】
すなわち、最も基本的な構成では、3つの光源からの光束は各々インテグレーターで分布が調整され、被照射面12において合成される。すなわち、3つの光源のそれぞれは、異なる波長スペクトルを有している。したがって、被照射面12に照射される光のスペクトルは、3本の光源のそれぞれ異なる波長スペクトルを重ねた(合成した)ものが得られる。
【0046】
このとき、上記した投影光学系D1(D2、D3)を用いて、被照射面12に結像照明する構成に代えて、投影光学系D1(D2、D3)の出射端面を2次光源として、被照射面25にレンズを絞りとして結像するケーラー照明とすることも目的に応じて可能である。
【0047】
上記した
図5の光源装置10において、照射光束のスペクトル分布は、基本的に全ての光源の強度スペクトル分布を重ね合わせたものである。所望の波長帯域を連続的にカバーするためには、十分な種類の光源が必要であり、各々スペクトル幅が適切である必要がある。各光源の強度は電源およびLED駆動部102によって容易に可変できるため、全体としてスペクトル発生の自由度が確保できる。
【0048】
ここで、上記の構成において、調達が可能なLED素子から波長選択を行う際には、望みの波長帯を完全にカバーする光源が得られない場合が想定される。
【0049】
このような場合、近傍波長において十分なスペクトル幅を有する光源が存在すれば、これを適切に設計された光学フィルターを通すことによって、若しくは波長弁別性を有する空間フィルターアレイによってスペクトル整形することによって、望みの光源として用いることができる。このとき、フィルター通過後の光束には空間的な強度/スペクトルむらが必然的に生じるが、インテグレーターを通過することによってこのようなむらは解消される。
【0050】
図6は、かかる対応を説明する図であり、空間フィルターアレイによってスペクトル整形する例である。波長λの光源が得られない場合(
図6(1))、隣接する波長の光源のスペクトルを合成して得る場合を想定する。
【0051】
図6(1)において、スペクトルA、Bは、スペクトルDに隣接するそれぞれ光源A、光源Bの発光スペクトルである。スペクトルDに対応する光源が調達不能である場合、まず、スペクトルA、Bを合成して合成スペクトルCを生成する(
図6(2))。
【0052】
次いで、光源A、光源Bの合成スペクトルCの合成光Eを、空間フィルター70(
図6(3))を通すことにより、空間フィルター70を通過後に中心波長λのスペクトルD(
図6(4))を有する光Fを生成することができる。
【0053】
空間フィルター70は、各々の透過特性が異なるフィルターを2次元もしくは、一次元に配列したものである。このフィルターアレイを通す光束が有限の太さであれば、光束の部分々のスペクトルを変えて、かつ出口で再びまとめることができる。このようにすることで、微細に調整して求めるスペクトルを得ることが可能である。
【0054】
また、市場で光源が調達出来ない場合への対処としては、次の方法もある。
【0055】
現在、市場では短波長で高い出力を有する半導体レーザ光源や発光ダイオードが入手可能である。白色発光ダイオードにおいて既に実証・実現されているように、望みの波長帯において効率よく蛍光を発生する蛍光体を用いれば、上記レーザ光源、発光ダイオード光源で蛍光体を励起して、適切に設計されたバンドパス光学フィルターによって望みの波長帯での光源とすることができる。
【0056】
図7は、上記に示した本発明に従うLED光源装置をソーラーシミュレータに用いた場合のスペクトルの測定結果を説明する図である。ソーラーシミュレータは、太陽電池等の発光効率を屋内において測定する場合に使用される装置である。したがって、ソーラーシミュレータとして用いる照明装置は、太陽光のスペクトルに近似した照射光を出力することが要求される。
【0057】
図7において、スペクトルIは太陽光のスペクトルである。スペクトルIIは、本発明に従うLED光源装置のスペクトルである。
【0058】
図から容易に理解できるように、本発明に従うLED光源装置では、多少のピーク値が部分的に存在するが、400nm〜800nmの波長領域において、発光スペクトルの飛びが少ないほぼ連続して全域スペクトルを発生することが可能であり、好ましく太陽光のスペクトルIに近似していることが理解できる。
【0059】
図8は、ろうそくの明かり程度の低照度(1/10000SUN)の場合のスペクトルを示す。同様に、スペクトルIは太陽光のスペクトルである。スペクトルIIは、本発明に従うLED光源装置のスペクトルである。
【0060】
この図からも,本発明により低照度においても、基準太陽光スペクトルに近いスペクトルを得ることができる。横軸に波長、縦軸に照度を示している。
【0061】
ここで、効率のよいLED素子を選び、適切な熱設計を行うことにより、水冷等の大がかりな機構を有さずに、一般的な強制空冷によりLED光源の温度を一定に保つことが可能である。
【0062】
以上説明したように、本発明に従うLED光源装置は、超寿命かつ経済的な電力消費率での運用ができる光源を用いる簡単な装置構成によって、様々な用途に応じてリアルタイムにスペクトル分布・光量を変更出来、均一な光束を発生・照射する光源装置を提供する、レーザ光源または発光ダイオード光源等の電力消費の小さいデバイスを発光光源とすることが可能であり、産業上寄与するところ大である。