(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
投影レンズと、この投影レンズの後側焦点よりも後方側に配置された発光ダイオードと、この発光ダイオードからの光を上記投影レンズへ向けて反射させるリフレクタと、を備えた車両用灯具において、
上記発光ダイオードは、上記投影レンズの光軸に対して左側に配置された第1発光チップと右側に配置された第2発光チップとを備えており、
上記リフレクタは、該リフレクタの反射面として、上記第1および第2発光チップよりも後方側において上記光軸の左側に位置する左後方エリアおよび上記光軸の右側に位置する右後方エリアと、上記第1および第2発光チップよりも前方側において上記光軸の左側に位置する左前方エリアおよび上記光軸の右側に位置する右前方エリアとを備えており、
上記左後方エリアおよび上記右前方エリアは、上記第1発光チップからの出射光を上記第2発光チップからの出射光よりも上記投影レンズの後側焦点への収束度合いが高くなるように反射させる反射面形状を有しており、
上記右後方エリアおよび上記左前方エリアは、上記第2発光チップからの出射光を上記第1発光チップからの出射光よりも上記投影レンズの後側焦点への収束度合いが高くなるように反射させる反射面形状を有している、ことを特徴とする車両用灯具。
上記左後方エリアおよび上記右前方エリアは、上記第1発光チップの発光中心を第1焦点とするとともに上記投影レンズの後側焦点を第2焦点とする楕円面と略同一の反射面形状を有しており、
上記右後方エリアおよび上記左前方エリアは、上記第2発光チップの発光中心を第1焦点とするとともに上記投影レンズの後側焦点を第2焦点とする楕円面と略同一の反射面形状を有している、ことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。
上記リフレクタの反射面は、上記左後方エリアと上記左前方エリアとが連続的に形成されるとともに、上記右後方エリアと上記右前方エリアとが連続的に形成されている、ことを特徴とする請求項1または2記載の車両用灯具。
上記発光ダイオードは、上記第1および第2発光チップの左右両側に少なくとも1つの発光チップがそれぞれ追加配置された構成となっている、ことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の車両用灯具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記「特許文献1」に記載された車両用灯具は、発光ダイオードが横長矩形状の発光面を有しているので、横長の配光パターンを形成することが容易に可能である。
【0006】
しかしながら、このような車両用灯具において、遠方視認性を高めるために横長のスポット状の配光パターンを形成するようにした場合には、次のような問題がある。
【0007】
すなわち、発光ダイオードの構成として、横長矩形状の発光面を形成するために左右1対の発光チップを備えた構成とした場合には、両発光チップの間に隙間が形成されてしまうので、この隙間によって横長のスポット状の配光パターンにはその左右方向の中心位置に暗部が形成されてしまう。しかも、各発光チップはその外周縁部において急激に輝度が低下する輝度分布を有しているので、このことによっても横長のスポット状の配光パターンはその左右方向の中心領域が暗いものとなってしまう。したがって遠方視認性を高めることができなくなってしまう。
【0008】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、リフレクタを備えたプロジェクタ型の車両用灯具において、遠方視認性に優れた横長のスポット状の配光パターンを形成することができる車両用灯具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、リフレクタの構成に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0010】
すなわち、本願発明に係る車両用灯具は、
投影レンズと、この投影レンズの後側焦点よりも後方側に配置された発光ダイオードと、この発光ダイオードからの光を上記投影レンズへ向けて反射させるリフレクタと、を備えた車両用灯具において、
上記発光ダイオードは、上記投影レンズの光軸に対して左側に配置された第1発光チップと右側に配置された第2発光チップとを備えており、
上記リフレクタは、該リフレクタの反射面として、上記第1および第2発光チップよりも後方側において上記光軸の左側に位置する左後方エリアおよび上記光軸の右側に位置する右後方エリアと、上記第1および第2発光チップよりも前方側において上記光軸の左側に位置する左前方エリアおよび上記光軸の右側に位置する右前方エリアとを備えており、
上記左後方エリアおよび上記右前方エリアは、上記第1発光チップからの出射光を上記第2発光チップからの出射光よりも上記投影レンズの後側焦点への収束度合いが高くなるように反射させる反射面形状を有しており、
上記右後方エリアおよび上記左前方エリアは、上記第2発光チップからの出射光を上記第1発光チップからの出射光よりも上記投影レンズの後側焦点への収束度合いが高くなるように反射させる反射面形状を有している、ことを特徴とするものである。
【0011】
上記「発光ダイオード」は、投影レンズの後側焦点よりも後方側に配置されていれば、その第1および第2発光チップの発光面の形状や向き等の具体的な構成は特に限定されるものではない。
【0012】
上記「左後方エリア」および「右後方エリア」は、第1および第2発光チップよりも後方側に位置していれば、その具体的な形成範囲は特に限定されるものではない。
【0013】
上記「左前方エリア」および「右前方エリア」は、第1および第2発光チップよりも前方側に位置していれば、その具体的な形成範囲は特に限定されるものではない。
【0014】
上記「左後方エリア」および「右前方エリア」は、第1発光チップからの出射光を第2発光チップからの出射光よりも投影レンズの後側焦点への収束度合いが高くなるように反射させる反射面形状を有していれば、その具体的な反射面形状は特に限定されるものではない。
【0015】
上記「右後方エリア」および「左前方エリア」は、第2発光チップからの出射光を第1発光チップからの出射光よりも投影レンズの後側焦点への収束度合いが高くなるように反射させる反射面形状を有していれば、その具体的な反射面形状は特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0016】
本願発明に係る車両用灯具は、左右1対の第1および第2発光チップを有する発光ダイオードおよびリフレクタを備えたプロジェクタ型の車両用灯具として構成されているので、横長のスポット状の配光パターンを形成することが容易に可能となる。
【0017】
その上で、上記リフレクタは、その反射面として第1および第2発光チップよりも後方側に位置する左後方エリアおよび右後方エリアとその前方側に位置する左前方エリアおよび右前方エリアとを備えており、その際、左後方エリアおよび右前方エリアは、左側に位置する第1発光チップからの出射光を右側に位置する第2発光チップからの出射光よりも投影レンズの後側焦点への収束度合いが高くなるように反射させる反射面形状を有しており、また、右後方エリアおよび左前方エリアは、第2発光チップからの出射光を第1発光チップからの出射光よりも投影レンズの後側焦点への収束度合いが高くなるように反射させる反射面形状を有しているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0018】
すなわち、左後方エリアおよび右前方エリアからの反射光によって第1発光チップの投影像が灯具正面方向の位置に形成されるとともに、右後方エリアおよび左前方エリアからの反射光によって第2発光チップの投影像が灯具正面方向の位置に形成されるので、横長のスポット状の配光パターンをその左右方向の中心位置が明るい配光パターンとして形成することができる。そしてこれにより遠方視認性を高めることができる。
【0019】
一方、左後方エリアからの反射光によって第2発光チップの投影像が該反射光による第1発光チップの投影像の右側に形成され、右前方エリアからの反射光によって第2発光チップの投影像が該反射光による第1発光チップの投影像の左側に形成され、右後方エリアからの反射光によって第1発光チップの投影像が該反射光による第2発光チップの投影像の左側に形成され、左前方エリアからの反射光によって第1発光チップの投影像が該反射光による第2発光チップの投影像の右側に形成されるので、横長のスポット状の配光パターンをその中心位置から左右両側へ向けて徐々に明るさが減少する配光パターンとして形成することができる。
【0020】
このように本願発明によれば、リフレクタを備えたプロジェクタ型の車両用灯具において、遠方視認性に優れた横長のスポット状の配光パターンを形成することができる。
【0021】
上記構成において、左後方エリアおよび右前方エリアとして、第1発光チップの発光中心を第1焦点とするとともに投影レンズの後側焦点を第2焦点とする楕円面と略同一の反射面形状を有する構成とし、右後方エリアおよび左前方エリアとして、第2発光チップの発光中心を第1焦点とするとともに投影レンズの後側焦点を第2焦点とする楕円面と略同一の反射面形状を有する構成とすれば、横長のスポット状の配光パターンを、その左右方向の中心位置が極めて明るい配光パターンとして形成することができ、これにより遠方視認性をさらに高めることができる。
【0022】
上記構成において、リフレクタの反射面として、左後方エリアと左前方エリアとが連続的に形成されるとともに右後方エリアと右前方エリアとが連続的に形成された構成とすれば、第1および第2発光チップからの出射光に対する利用効率を高めることができる。
【0023】
上記構成において、発光ダイオードとして、第1および第2発光チップの左右両側に少なくとも1つの発光チップがそれぞれ追加配置された構成とすれば、横長のスポット状の配光パターンをさらに左右両側に拡げた形状を有するとともに滑らかな光度分布を有する横長の配光パターンを形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0026】
図1は、本願発明の一実施形態に係る車両用灯具10を示す側断面図であり、
図2は、そのII−II線断面図である。
【0027】
これらの図に示すように、本実施形態に係る車両用灯具10は、ヘッドランプの一部として組み込まれた状態で用いられるプロジェクタ型の灯具ユニットであって、ハイビーム用配光パターンの一部として横長のスポット状の配光パターンを形成するように構成されている。
【0028】
すなわち、この車両用灯具10は、投影レンズ12と、この投影レンズ12の後側焦点Fよりも後方側に配置された発光ダイオード14と、この発光ダイオード14を上方側から覆うように配置され、該発光ダイオード14からの光を投影レンズ12へ向けて反射させるリフレクタ16とを備えた構成となっている。
【0029】
その際、発光ダイオード14は、基板22を介してヒートシンクとしての機能を有するベース部材20に支持されており、投影レンズ12は、レンズホルダ18を介してベース部材20に支持されており、リフレクタ16は、その下端縁においてベース部材20に支持されている。
【0030】
投影レンズ12は、前面が凸面で後面が平面の平凸非球面レンズであって、その外周フランジ部においてレンズホルダ18に支持されている。その際、この投影レンズ12は、その光軸Axが灯具前後方向に延びるように配置された状態でレンズホルダ18に支持されている。
【0031】
発光ダイオード14は、白色発光ダイオードであって、左右方向に互いに隣接して配置された第1および第2発光チップ14a1、14a2を備えており、これら第1および第2発光チップ14a1、14a2によって全体として横長矩形状の発光面を形成するようになっている。
【0032】
図3(a)は、発光ダイオード14を取り出して示す平面図である。
【0033】
図3(a)に示すように、発光ダイオード14を構成する左右1対の第1および第2発光チップ14a1、14a2は、いずれも同一サイズの正方形に近い横長矩形状の発光面を有している。これら第1および第2発光チップ14a1、14a2は、投影レンズ12の光軸Axに関して左右対称の位置関係で、互いに間隔をおいて配置されている。
【0034】
そして、発光ダイオード14は、第1および第2発光チップ14a1、14a2を光軸Axと略同じ高さの位置において上向きにした状態で配置されている。
【0035】
図3(b)は、第1および第2発光チップ14a1、14a2の輝度分布を、
図3(a)のIII−III線断面の位置において示す図である。その際、このIII−III線断面の位置は、図中2点鎖線で示すように、第1および第2発光チップ14a1、14a2の発光中心A1、A2を含む光軸Axと直交する鉛直面(以下「基準鉛直面RP」という)の位置に設定されている。
【0036】
図3(b)に示すように、第1および第2発光チップ14a1、14a2の輝度分布は、いずれもその発光中心A1、A2から左右方向に離れるに従って輝度Lvが低下し、その左右両縁部において輝度Lvが急激に低下する特性を有している。
【0037】
図1に示すように、リフレクタ16の反射面16aは、その光軸Axを含む鉛直断面形状が、発光ダイオード14の発光面全体としての発光中心(すなわち
図3(a)において両発光中心A1、A2の中点として光軸Ax上に位置する点)Aを第1焦点とするとともに、投影レンズ12の後側焦点Fを第2焦点とする楕円形状に設定されている。
【0038】
一方、
図2に示すように、リフレクタ16の反射面16aは、平面視において4つの反射エリアに区分けされている。
【0039】
すなわち、この反射面16aは、第1および第2発光チップ14a1、14a2よりも後方側において光軸Axの左側に位置する左後方エリア16a1Rおよび光軸Axの右側に位置する右後方エリア16a2Rと、第1および第2発光チップ14a1、14a2よりも前方側において光軸Axの左側に位置する左前方エリア16a1Fおよび光軸Axの右側に位置する右前方エリア16a2Fとに区分けされている。
【0040】
その際、左後方エリア16a1Rおよび右前方エリア16a2Fは、第1発光チップ14a1からの出射光を第2発光チップ14a2からの出射光よりも投影レンズ12の後側焦点Fへの収束度合いが高くなるように反射させる反射面形状を有している。一方、右後方エリア16a2Rおよび左前方エリア16a1Fは、第2発光チップ14a2からの出射光を第1発光チップ14a1からの出射光よりも投影レンズ12の後側焦点Fへの収束度合いが高くなるように反射させる反射面形状を有している。
【0041】
具体的には、左後方エリア16a1Rおよび右前方エリア16a2Fは、第1発光チップ14a1の発光中心A1を第1焦点とするとともに投影レンズ12の後側焦点Fを第2焦点とする楕円面と略同一の反射面形状を有している。一方、右後方エリア16a2Rおよび左前方エリア16a1Fは、第2発光チップ14a2の発光中心A2を第1焦点とするとともに投影レンズ12の後側焦点Fを第2焦点とする楕円面と略同一の反射面形状を有している。
【0042】
リフレクタ16の反射面16aは、左後方エリア16a1Rおよび右後方エリア16a2Rが基準鉛直面RPの位置まで前方側へ延長形成されており、また、左前方エリア16a1Fおよび右前方エリア16a2Fが基準鉛直面RPの位置まで後方側へ延長形成されている。そして、この反射面16aは、左後方エリア16a1Rと左前方エリア16a1Fとが基準鉛直面RPの位置において連続的に形成されており、また、右後方エリア16a2Rと右前方エリア16a2Fとが基準鉛直面RPの位置において連続的に形成されている。
【0043】
さらに、この反射面16aは、左後方エリア16a1Rと右後方エリア16a2Rとが光軸Axを含む鉛直面の位置において連続的に形成されており、また、左前方エリア16a1Fと右前方エリア16a2Fとが光軸Axを含む鉛直面の位置において連続的に形成されている。
【0044】
図4(a)は、車両用灯具10から前方へ照射される光により、車両前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンPSを透視的に示す図である。
【0045】
この配光パターンPSは、図中2点鎖線で示すハイビーム用配光パターンPH1の一部として形成されるスポット状の配光パターンであって、灯具正面方向の消点であるH−Vを中心として横長に延びるように形成されている。
【0046】
なお、ハイビーム用配光パターンPH1は、配光パターンPSと、図示しない他の車両用灯具からの照射光によって形成される配光パターンとの合成配光パターンとして形成されるようになっている。
【0047】
配光パターンPSは、リフレクタ16で反射した発光ダイオード14からの光によって投影レンズ12の後側焦点面上に形成された発光ダイオード14の光源像を、投影レンズ12により上記仮想鉛直スクリーン上に反転投影像として投影することにより形成されるが、発光ダイオード14の発光面は、第1および第2発光チップ14a1、14a2で構成されているので、配光パターンPSは第1および第2発光チップ14a1、14a2の投影像によって形成される。
【0048】
その際、リフレクタ16の反射面16aは4つの反射エリアに区分けされているので、第1および第2発光チップ14a1、14a2の投影像は各反射エリア毎に形成される。
【0049】
図5は、配光パターンPSを4つの反射エリア毎に分解して示す図である。
【0050】
図5(a2)は、
図5(a1)に示す左後方エリア16a1Rからの反射光によって形成される配光パターンPa1R、Pb1Rを示す図である。
【0051】
配光パターンPa1Rは、第1発光チップ14a1の投影像として形成される配光パターンである。
【0052】
左後方エリア16a1Rは、第1発光チップ14a1の発光中心A1を第1焦点とするとともに投影レンズ12の後側焦点Fを第2焦点とする楕円面と略同一の反射面形状を有しているので、第1発光チップ14a1から出射して左後方エリア16a1Rで反射した光は、投影レンズ12の後側焦点Fの近傍を通る。したがって、配光パターンPa1Rは、H−Vを中心とした小さくて明るい配光パターンとして形成される。
【0053】
一方、配光パターンPb1Rは、第2発光チップ14a2の投影像として形成される配光パターンである。
【0054】
第2発光チップ14a2から出射して左後方エリア16a1Rで反射した光は、投影レンズ12の後側焦点Fの左側を通る。したがって、配光パターンPb1Rは、H−Vから右側にずれた位置において配光パターンPa1Rよりも大きくて明るさが減少した配光パターンとして形成され、その左端部が配光パターンPa1Rの右端部と重複している。
【0055】
図5(b2)は、
図5(b1)に示す右後方エリア16a2Rからの反射光によって形成される配光パターンPa2R、Pb2Rを示す図である。
【0056】
配光パターンPa2Rは、第2発光チップ14a2の投影像として形成される配光パターンであり、配光パターンPb2Rは、第1発光チップ14a1の投影像として形成される配光パターンである。
【0057】
第1および第2発光チップ14a1、14a2は、光軸Axに関して左右対称の位置関係で配置されており、また、右後方エリア16a2Rは、光軸Axに関して左後方エリア16a1Rと左右対称の位置関係で配置されているので、配光パターンPa2R、Pb2Rは、H−Vを通る鉛直線であるV−V線に関して配光パターンPa1R、Pb1Rと左右対称の位置関係で形成される。
【0058】
図5(c2)は、
図5(c1)に示す左前方エリア16a1Fからの反射光によって形成される配光パターンPa1F、Pb1Fを示す図である。
【0059】
配光パターンPa1Fは、第2発光チップ14a2の投影像として形成される配光パターンである。
【0060】
左前方エリア16a1Fは、第2発光チップ14a2の発光中心A2を第1焦点とするとともに投影レンズ12の後側焦点Fを第2焦点とする楕円面と略同一の反射面形状を有しているので、第2発光チップ14a2から出射して左前方エリア16a1Fで反射した光は、投影レンズ12の後側焦点Fの近傍を通る。したがって、配光パターンPa1Fは、H−Vを中心とした小さくて明るい配光パターンとして形成される。
【0061】
その際、第2発光チップ14a2から左前方エリア16a1Fまでの距離は、第1発光チップ14a1から左後方エリア16a1Rまでの距離よりも長いので、配光パターンPa1Fは、
図5(a2)に示す配光パターンPa1Rよりもやや小さくて明るい配光パターンとして形成される。
【0062】
一方、配光パターンPb1Fは、第1発光チップ14a1の投影像として形成される配光パターンである。
【0063】
第1発光チップ14a1から出射して左前方エリア16a1Fで反射した光は、投影レンズ12の後側焦点Fの左側を通る。したがって、配光パターンPb1Fは、H−Vから右側にずれた位置において配光パターンPa1Fよりも大きくて明るさが減少した配光パターンとして形成され、その左端部が配光パターンPa1Fの右端部と重複している。
【0064】
配光パターンPb1Fは、
図5(a2)に示す配光パターンPb1Rよりもやや小さくて明るい配光パターンとして形成される。
【0065】
図5(d2)は、
図5(d1)に示す右前方エリア16a2Fからの反射光によって形成される配光パターンPa2F、Pb2Fを示す図である。
【0066】
配光パターンPa2Fは、第1発光チップ14a1の投影像として形成される配光パターンであり、配光パターンPb2Fは、第2発光チップ14a2の投影像として形成される配光パターンである。
【0067】
第1および第2発光チップ14a1、14a2は、光軸Axに関して左右対称の位置関係で配置されており、また、右前方エリア16a2Fは、光軸Axに関して左前方エリア16a1Fと左右対称の位置関係で配置されているので、配光パターンPa2F、Pb2Fは、V−V線に関して配光パターンPa1F、Pb1Fと左右対称の位置関係で形成される。
【0068】
図4(a)に示すように、配光パターンPSは、4つの小さくて明るい配光パターンPa1R、Pb2R、Pa1F、Pb2FがH−Vを中心にして形成されるとともに、その左右両側にこれらよりも大きくて明るさが減少した配光パターンPa2R、Pb2FおよびPb1R、Pb1Fが部分的に重複した状態で形成されるので、全体として横長のスポット状の配光パターンとして形成され、かつ、その中心位置から左右両側へ向けて徐々に明るさが減少する配光パターンとして形成される。
【0069】
しかも、配光パターンPa1F、Pb2Fは、配光パターンPa1R、Pb2Rよりもやや小さくて明るい配光パターンとして形成され、また、配光パターンPb2F、Pb1Fは、配光パターンPa2R、Pb1Rよりもやや小さくて明るい配光パターンとして形成されるので、配光パターンPSは配光ムラの少ない配光パターンとして形成される。
【0070】
なお、
図4(b)は、仮にリフレクタ16の反射面16aが、本実施形態のように4つの反射エリアに区分けされておらず、発光ダイオード14の発光面全体としての発光中心Aを第1焦点とするとともに投影レンズ12の後側焦点Fを第2焦点とする単一の楕円形状に設定されているとした場合に形成される配光パターンPS´を示す図である。
【0071】
この配光パターンPS´は、横長のスポット状の配光パターンとして形成されるが、左右1対の発光チップ14a1、14a2の投影像としての配光パターンP1´、P2´がV−V線の両側に形成されたものとなり、V−V線の近傍に暗部が形成されてしまう。
【0072】
次に本実施形態の作用効果について説明する。
【0073】
本実施形態に係る車両用灯具10は、左右1対の第1および第2発光チップ14a1、14a2を有する発光ダイオード14およびリフレクタ16を備えたプロジェクタ型の車両用灯具10として構成されているので、横長のスポット状の配光パターンPSを形成することが容易に可能となる。
【0074】
その上で、リフレクタ16は、その反射面16aとして第1および第2発光チップ14a1、14a2よりも後方側に位置する左後方エリア16a1Rおよび右後方エリア16a2Rとその前方側に位置する左前方エリア16a1Fおよび右前方エリア16a2Fとを備えており、その際、左後方エリア16a1Rおよび右前方エリア16a2Fは、左側に位置する第1発光チップ14a1からの出射光を右側に位置する第2発光チップ14a2からの出射光よりも投影レンズ12の後側焦点Fへの収束度合いが高くなるように反射させる反射面形状を有しており、また、右後方エリア16a2Rおよび左前方エリア16a1Fは、第2発光チップ14a2からの出射光を第1発光チップ14a1からの出射光よりも投影レンズ12の後側焦点Fへの収束度合いが高くなるように反射させる反射面形状を有しているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0075】
すなわち、左後方エリア16a1Rおよび右前方エリア16a2Fからの反射光によって第1発光チップ14a1の投影像としての配光パターンPa1R、Pa2Fが灯具正面方向の位置に形成されるとともに、右後方エリア16a2Rおよび左前方エリア16a1Fからの反射光によって第2発光チップ14a2の投影像としての配光パターンPa2R、Pa1Fが灯具正面方向の位置に形成されるので、横長のスポット状の配光パターンPSをその左右方向の中心位置が明るい配光パターンとして形成することができる。そしてこれにより遠方視認性を高めることができる。
【0076】
一方、左後方エリア16a1Rからの反射光によって第2発光チップ14a2の投影像としての配光パターンPb1Rが配光パターンPa1Rの右側に形成され、右前方エリア16a2Fからの反射光によって第2発光チップ14a2の投影像としての配光パターンPb2Fが配光パターンPa2Fの左側に形成され、右後方エリア16a2Rからの反射光によって第1発光チップ14a1の投影像としての配光パターンPb2Rが配光パターンPa2Rの左側に形成され、左前方エリア16a1Fからの反射光によって第1発光チップ14a1の投影像としての配光パターンPb1Fが配光パターンPa1Fの右側に形成されるので、横長のスポット状の配光パターンPSをその中心位置から左右両側へ向けて徐々に明るさが減少する配光パターンとして形成することができる。
【0077】
このように実施形態によれば、リフレクタ16を備えたプロジェクタ型の車両用灯具10において、遠方視認性に優れた横長のスポット状の配光パターンPSを形成することができる。
【0078】
その際、実施形態においては、左後方エリア16a1Rおよび右前方エリア16a2Fが、第1発光チップ14a1の発光中心A1を第1焦点とするとともに投影レンズ12の後側焦点Fを第2焦点とする楕円面と略同一の反射面形状を有する構成となっており、右後方エリア16a2Rおよび左前方エリア16a1Fが、第2発光チップ14a2の発光中心A2を第1焦点とするとともに投影レンズ12の後側焦点Fを第2焦点とする楕円面と略同一の反射面形状を有する構成となっているので、横長のスポット状の配光パターンPSを、その左右方向の中心位置が極めて明るい配光パターンとして形成することができ、これにより遠方視認性をさらに高めることができる。
【0079】
しかも実施形態においては、基準鉛直面RPの位置において左後方エリア16a1Rと左前方エリア16a1Fとが連続的に形成されるとともに右後方エリア16a2Rと右前方エリア16a2Fとが連続的に形成されているので、第1および第2発光チップ14a1、14a2からの出射光に対する利用効率を高めることができる。
【0080】
上記実施形態においては、左後方エリア16a1Rおよび右後方エリア16a2Rが基準鉛直面RPの位置まで前方側へ延長形成されており、また、左前方エリア16a1Fおよび右前方エリア16a2Fが基準鉛直面RPの位置まで後方側へ延長形成されているものとして説明したが、左後方エリア16a1Rおよび右後方エリア16a2Rと前方側に位置する左前方エリア16a1Fおよび右前方エリア16a2Fとが、第1および第2発光チップ14a1、14a2の前後両側に互いに離れた位置に形成された構成とすることも可能である。
【0081】
上記実施形態においては、第1および第2発光チップ14a1、14a2が光軸Axに関して左右対称の位置関係で配置されているものとして説明したが、光軸Axに関して左右非対称の位置関係で配置された構成とすることも可能である。
【0082】
上記実施形態においては、左後方エリア16a1Rおよび左前方エリア16a1Fと右後方エリア16a2Rおよび左前方エリア16a1Fとが光軸Axに関して左右対称の反射面形状を有しているものとして説明したが、光軸Axに関して左右非対称の反射面形状を有する構成とすることも可能である。
【0083】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0084】
図6は、本変形例に係る車両用灯具110を示す、
図2と同様の図である。
【0085】
同図に示すように、本変形例に係る車両用灯具110は、その基本的な構成については上記実施形態の場合と同様であるが、発光ダイオード114の構成が上記実施形態の場合と異なっている。
【0086】
すなわち、本変形例の発光ダイオード114は、上記実施形態の発光ダイオード14と同様の構成を有する第1および第2発光チップ114a1、114a2を備えているが、その左右両側に第3および第4発光チップ114a3、114a4が追加配置された構成となっている。
【0087】
第3および第4発光チップ114a3、114a4は、第1および第2発光チップ114a1、114a2と同様の構成を有しており、第1および第2発光チップ114a1、114a2と等間隔で配置されている。
【0088】
なお、これに伴って、本変形例においては、発光ダイオード114を支持する基板122およびベース部材120の構成が上記実施形態の場合と一部異なっている。
【0089】
図7は、車両用灯具110から前方へ照射される光により上記仮想鉛直スクリーン上に形成されるハイビーム用配光パターンPH2を透視的に示す図である。
【0090】
このハイビーム用配光パターンPH2は、上記実施形態で形成される配光パターンPSに対して、8つの配光パターンPd1F、Pd2F、Pc2R、Pc1R、Pc1F、Pc2F、Pd2R、Pd1Rが、配光パターンPSよりも大きい横長の配光パターンとして重畳されることにより形成されている。
【0091】
配光パターンPd1Fは、第4発光チップ14a4から出射して左前方エリア16a1Fで反射した光によって形成される配光パターンであり、配光パターンPc1Fは、第3発光チップ14a3から出射して右前方エリア16a2Fで反射した光によって形成される配光パターンである。
【0092】
配光パターンPd2Fは、第4発光チップ14a4から出射して右前方エリア16a2Fで反射した光によって形成される配光パターンであり、配光パターンPc2Fは、第3発光チップ14a3から出射して左前方エリア16a1Fで反射した光によって形成される配光パターンである。
【0093】
配光パターンPc2Rは、第3発光チップ14a3から出射して左後方エリア16a1Rで反射した光によって形成される配光パターンであり、配光パターンPd2Rは、第4発光チップ14a4から出射して右後方エリア16a2Rで反射した光によって形成される配光パターンである。
【0094】
配光パターンPc1Rは、第3発光チップ14a3から出射して右後方エリア16a2Rで反射した光によって形成される配光パターンであり、配光パターンPd1Rは、第4発光チップ14a4から出射して左後方エリア16a1Rで反射した光によって形成される配光パターンである。
【0095】
8つの配光パターンPd1F、Pd2F、Pc2R、Pc1R、Pc1F、Pc2F、Pd2R、Pd1Rは、4つの配光パターンPd1F、Pd2F、Pc2R、Pc1RがV−V線の左側に形成され、4つの配光パターンPc1F、Pc2F、Pd2R、Pd1RがV−V線の右側に形成される。
【0096】
その際、4つの配光パターンPd1F、Pd2F、Pc2R、Pc1Rは、この順番でV−V線から順次左側に離れるようにして互いに部分的に重複した状態で形成される。また、4つの配光パターンPc1F、Pc2F、Pd2R、Pd1Rは、この順番でV−V線から順次右側に離れるようにして互いに部分的に重複した状態で形成される。そして、配光パターンPd1Fと配光パターンPc1FとがV−V線の位置で部分的に重複した状態で形成される。
【0097】
本変形例の構成を採用することにより、上記実施形態における横長のスポット状の配光パターンPSをさらに左右両側に拡げた形状を有するとともに滑らかな光度分布を有する横長の配光パターンとして、ハイビーム用配光パターンPH2を形成することができる。
【0098】
なお、このハイビーム用配光パターンPH2を、ハイビーム用配光パターン自体としてではなく、その一部として形成することも可能である。
【0099】
また、本変形例の発光ダイオード114の代わりに、その第3および第4発光チップ114a3、114a4の左右両側にさらに他の発光チップが追加配置された発光ダイオードを備えた構成とすることも可能である。このような構成とすることにより、ハイビーム用配光パターンPH2よりもさらに左右両側に大きく拡がるハイビーム用配光パターンを形成することができる。
【0100】
なお、上記実施形態およびその変形例において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【0101】
また、本願発明は、上記実施形態およびその変形例に記載された構成に限定されるものではなく、これ以外の種々の変更を加えた構成が採用可能である。