(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記加熱工程は、前記加熱器により前記処理槽内の温度を25℃以上70℃以下の温度範囲で推移させるとともに、前記温度範囲での、処理終了時における前記処理槽内の平均温度を30℃以上50℃以下に調整し、
水分率が20%以下で、肥料又は飼料として用いる粉末体を製造する、請求項4に記載の処理方法。
前記含水有機物が飲料抽出後の有機物残渣である、りんご粕又はコーヒ粕であり、前記りんご粕又は前記コーヒ粕からなる粉末体を製造する、請求項5又は6に記載の処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0012】
(1)<処理装置の全体構成>
図1は、本実施形態における処理装置10を側部24側から見たときの断面構成を示した断面図であり、
図2は、処理装置10を端部22側から見たときの断面構成を示した断面図である。
図1及び
図2に示すように、処理装置10は、処理槽12と、撹拌部14と、イオンガス供給部15と、排気部61と、加熱器72とを備えており、処理槽12内に収容された含水有機物を処理するものである。ここで、含水有機物としては、例えば、野菜くず、果実くず、飲料抽出後の有機物残渣、肉くず、サーモンなどの魚くず、汚物、廃棄食品などがある。また、含水有機物の一種である、飲料抽出後の有機物残渣としては、りんご粕、ミカン粕、葡萄粕、グレープフルーツ粕、桃粕、ニンジン粕、ピーマン粕、酒粕、緑茶粕、麦茶粕、コーヒ粕などがある。
【0013】
処理槽12は、底部20と、長手方向にて対向配置された一対の端部22(
図1)と、短手方向にて対向配置された一対の側部24(
図2)と、上部25とを有し、内部に密閉空間を形成している。処理槽12は、特に限定されないが、例えば繊維強化プラスチック(FRP:Fiber-Reinforced Plastics)で形成することができる。処理槽12の底部20には、ロードセル28を介して基台26が設けられている。
【0014】
なお、本実施形態における処理槽12は、一対の端部22が対向する長手方向における密閉空間の長さが約4.5[m]程度、一対の側部24が対向する短手方向における密閉空間の幅が約2.3[m]程度、上部25から底部20の曲面78,80の最下部までの密閉空間の高さが約1.6[m]程度に選定されている。
【0015】
ロードセル28は、ロードセル28上に設置された処理槽12から加わる荷重を測定しており、操作パネル(図示せず)からのリセット命令を受けると、リセット命令を受けた時点の測定値を基準値として設定する。これにより、ロードセル28は、処理槽12内に含水有機物を収容した直後にリセット命令が与えらえることで、処理前の含水有機物の重量を基準値として設置することができ、基準値を目安に、処理中の含水有機物の重量減少傾向や、処理終了後の含水有機物の重量を測定することができる。
【0016】
また、上部25には、所定位置に厚さ方向に開口した投入口68と、当該投入口68を開閉する蓋70とが設けられている。蓋70は、一端においてヒンジを介して上部25に回転可能に固定され、投入口68を開閉する。これにより、含水有機物は、蓋70が開状態となることで露出した投入口68から処理槽12内に投入され、蓋70が閉状態となることで密閉した処理槽12内に収容される。
【0017】
図2に示すように、側部24には、熱線ヒータ、PTCヒータなどの加熱器72がそれぞれ設けられている。加熱器72は、処理槽12内を加熱して、処理槽12内の温度を25℃以上70℃以下の範囲で推移させる。なお、ここで処理槽12内の温度とは、含水有機物が収容される処理槽12内の密閉空間に設置された温度計により測定される値である。
【0018】
このように、処理槽12内の温度が25℃以上70℃以下の範囲で推移する現象は、含水有機物の処理状態に応じて処理槽12内の温度が変化するためであるが、処理槽12内の温度が25℃以上70℃以下の範囲にあるときの処理槽12内の平均温度は、30℃以上50℃以下であることが望ましい。ここで、処理槽12内の平均温度とは、加熱器72による加熱によって処理槽12内の温度が25℃以上70℃以下の範囲にあるとき、処理槽12内の温度を所定間隔又は任意のタイミングで複数回測定していき、最終的に含水有機物の処理を終了したときの平均温度である。
【0019】
処理槽12内の平均温度が30℃未満になるような加熱処理で含水有機物を処理すると、含水有機物が乾燥し難くいため、処理槽12内の平均温度は30℃以上であることが望ましい。また、処理槽12内の平均温度が50℃超となるような加熱処理で含水有機物を処理すると、含水有機物が乾燥し過ぎてしまう恐れがあり、処理終了時、含水有機物が粉塵となって大気中に拡散し易くなるため、処理槽12内の平均温度は50℃以下であることが望ましい。
【0020】
処理槽12内に設けられる撹拌部14は、
図2に示すように、処理槽12の短手方向の一側に配置された第1撹拌部74と、他側に配置された第2撹拌部76とを有する。第1撹拌部74及び第2撹拌部76は同一構成を有しており、
図1に示すように、端部22間に配置された回転軸30と、当該回転軸30に設けられた羽根32とを有する。回転軸30は、端部22にそれぞれ設けられたベアリング34により、処理槽12に対し回転可能に支持されている。回転軸30の一端は、駆動部36に連結されている。
【0021】
本実施形態の場合、第1撹拌部74は反時計回り、第2撹拌部76は時計回りに回転し、処理槽12内に収容された含水有機物を、処理槽12の底部20側から、第1撹拌部74と第2撹拌部76との間に向けて導くように撹拌する。
【0022】
底部20は、これら第1撹拌部74及び第2撹拌部76に沿った円弧上の曲面78,80を有する。曲面78,80は、回転軸30を中心に回転する第1撹拌部74と第2撹拌部76の各羽根32が円状に回転する軌道に沿って形成されている。
【0023】
かかる構成に加えて、本実施形態における処理槽12の上部25には、所定位置に厚さ方向に貫通した排気口57が設けられている。排気口57には、流路60を介して排気部61が接続されている。排気部61は、例えば、ブロワであり、処理槽12で含水有機物を処理している際、処理槽12内の気体を吸引し、処理槽12内の気体を外部へと排気する。
【0024】
本実施形態において、排気部61は、処理槽12内から気体を1[m
3/min]以上300[m
3/min]以下、より好ましくは50[m
3/min]以上300[m
3/min]以下で排気することが望ましい。なお、処理槽12内からの気体の排気量は、処理槽12内の気体を外気に排出する排気部61からの気体の排気量であり、例えば、排気部61をブロアとした場合には、ブロアの設定値を調整することで、所望の排気量に調整することができる。
【0025】
ここで、処理槽12には、処理槽12から気体が排気された分だけ、後述するイオンガス供給部15からイオンガス(ここでは、マイナスイオンを含む気体(例えば、マイナスイオンを含む空気))が供給される。この場合、処理槽12内から気体を1[m
3/min]以上で排気することで、後述するイオンガス供給部15から処理槽12内に供給されるイオンガス供給量を最適な値に維持し得、また、処理槽12内で気体を適度に循環させて、処理槽12内における結露の発生を防ぎ、含水有機物の水分気化を促進させることができる。50[m
3/min]以上とすることで、イオンガス供給部15からのイオンガス共有量を増やすことができ、また、処理槽12内で気体を一段と循環させて、より確実に結露の発生防止などの効果を得ることができる。
【0026】
一方、処理槽12内から気体を300[m
3/min]以下で排気することで、イオンガス供給部15から処理槽12内に導かれたイオンガスを処理槽12内に留めることができ、また、処理槽12内で循環する気体によって含水有機物の水分が気化し過ぎてしまい、含水有機物が粉塵となることを抑制できる。
【0027】
イオンガス供給部15は、マイナスイオン発生器38Aと、上側ノズル44が形成された上側供給管40Aと、マイナスイオン発生器38A及び上側供給管40Aを連通する流路42とを有する。イオンガス供給部15は、例えばコロナ放電や熱電離などによりマイナスイオン発生器38Aでマイナスイオンを発生させ、マイナスイオンを含むイオンガスを、流路42を経由して上側供給管40Aまで供給し、上側供給管40Aの上側ノズル44から処理槽12内に排出する。
【0028】
本実施形態では、処理槽12内からの気体の排気にともなってマイナスイオン発生器38Aから外気を吸引し、マイナスイオン発生器38Aを通過する気体内にマイナスイオンを発生させる。マイナスイオン発生器38Aは、例えば、外気に含まれる酸素や窒素などの気体分子から電子を離脱させることにより、気体分子をイオン化する。
【0029】
ここで、本実施形態では、排気部61による処理槽12内からの気体の排気量を調整することで、イオンガス供給部15から処理槽12内に供給されるイオンガス供給量が調整されている。この場合、イオンガス供給部15から処理槽12内に供給されるイオンガスは、イオン密度が200万[pcs/cc]以上、好ましくは2000万[pcs/cc]超、さらに好ましくは6000万[pcs/cc]以上であることが望ましい。
【0030】
なお、従来の生ゴミ処理器に用いるマイナスイオンは、生ゴミ処理器内を脱臭するために使用されており、生ゴミなど含水有機物自体に直接影響を与えて処理する観点からは使用されていない。そのため、生ゴミ処理器で生成されるイオンガスは、生ゴミ処理器内の臭気(気体)に拡散する程度であり、マイナスイオンを生ゴミ中にまで拡散させることまでは考慮されていない。
【0031】
これに対して、本実施形態では、処理槽12内のイオン密度を200万[pcs/cc]以上、好ましくは2000万[pcs/cc]超、さらに好ましくは6000万[pcs/cc]以上として、処理槽12内のイオン密度を、従来の脱臭用に用いる生ゴミ処理器よりも格段的に高密度にすることで、イオンガス中のマイナスイオンが含水有機物中にも確実に拡散していき、含水有機物からの水分子の分離を促進している。ここで、含水有機物から分離した水分子は、処理槽12内を上昇していき、上記水分子の一部は、上昇する際に、水分子が複数(例えば、5〜6個)結びついたクラスター構造が壊れ、蒸発し、排気部61によって外部へ放出される。
【0032】
一方、残りの水分子、すなわちクラスター構造を維持した水分子は、撹拌されている含水有機物と、処理槽12内の気体で満たされた空間との境界に滞留するが、イオンガスが、上記境界に吹き付けられるため、イオンガス中のマイナスイオンが、水分子のクラスター構造を分解する。クラスター構造が分解された水分子は、加熱器72によって加えられた熱量によって容易に蒸発し、排気部61によって外部へ放出される。
【0033】
上記のように、イオンガスのイオン密度を高密度にすることで、イオンガスが含水有機物中に含まれる水分を含水有機物から分離し、さらに、イオンガスが水分子のクラスター構造を分解する。したがって、処理装置10は、含水有機物に含まれる水分を蒸発して容易に減量することができる。
【0034】
ここで、処理槽12内のイオン密度を2000万[pcs/cc]超にすることで、マイナスイオンが含水有機物中に一段と拡散し易くなるので、その分、イオンガスによって、含水有機物中に含まれる水分を含水有機物から分離させることができ、また、水分子のクラスター構造の分解を促進させることができる。さらに、処理槽12内のイオン密度を6000万[pcs/cc]以上にすることで、含水有機物中にマイナスイオンを一段と確実に拡散させることができる。
【0035】
マイナスイオン発生器38Aに連通する上側供給管40Aは、例えば円形状の開口でなる上側ノズル44が所定位置に所定間隔で形成されている。また、上側供給管40Aは、回転軸30に平行に配置されており、回転軸30よりも上方の位置に設けられている。
【0036】
本実施形態の場合、上側供給管40Aは、処理槽12内に含水有機物を収容した際に当該含水有機物よりも上方に位置するように配置されており、処理槽12内に含水有機物を収容した際に当該含水有機物に埋もれずに、上側ノズル44を介して含水有機物の上方からイオンガスを照射することができる。
【0037】
上側供給管40Aは、処理槽12の短手方向の中央に設けられている排気口57を挟んで両側に配置された第1配管64と、第2配管66とを有する。第1配管64は一方の側部24(
図2中左側の側部)に沿うように、第2配管66は他方の側部24(
図2中右側の側部)に沿うように配置されている。
【0038】
第1配管64には、上側ノズル44として第1上側ノズル45が形成されており、第2配管66には、上側ノズル44として第2上側ノズル47が形成されている。第1上側ノズル45及び第2上側ノズル47は、水平方向の処理槽12の中央向きから鉛直方向の下向きの範囲に開口しているのが好ましい。
【0039】
本実施形態では、第1配管64の中心部と第1上側ノズル45を結ぶ直線a1と、第2配管66の中心部と第2上側ノズル47を結ぶ直線a1とが、第1撹拌部74と第2撹拌部76との間に向けて延びている。これにより、第1配管64及び第2配管66は、処理槽12の底部20から第1撹拌部74と第2撹拌部76との間に導かれた含水有機物と、処理槽12の気体で満たされた空間と、の境界に向けてイオンガスを照射する。
【0040】
(2)<処理装置を使用した含水有機物の処理手法>
次に、処理装置10を使用した含水有機物の処理手法について説明する。この場合、使用者は、処理対象とする含水有機物を処理槽12内に投入し、処理槽12内の密閉空間に含水有機物を収容する(収容工程)。そして、使用者は、処理装置10の操作パネル(図示せず)を介して処理開始命令を与えることで、撹拌部14、排気部61、加熱器72及びマイナスイオン発生器38Aを駆動させ、処理装置10において含水有機物の処理を開始させる。
【0041】
この場合、処理装置10は、処理開始命令が与えられると、撹拌部14を駆動し、処理槽12内の含水有機物を撹拌する(撹拌工程)。なお、この際、撹拌部14による含水有機物の撹拌は、含水有機物が処理槽12内全体を循環する程度に撹拌させる。
【0042】
また、処理装置10は、処理開始命令が与えられると、排気部61を駆動し、処理槽12内から気体を1[m
3/min]以上300[m
3/min]以下で排気し始めるとともに(排気工程)、マイナスイオン発生器38Aを駆動して気体中にマイナスイオンを発生させる。
【0043】
マイナスイオン発生器38Aは、排気部61によって処理槽12内から気体が排気された分だけ外気を吸引し、外気に含まれる酸素や窒素などの気体分子から電子を離脱させ、気体分子をイオン化する。この際、排気部61による排気量が調整され、例えば、イオン密度が200万[pcs/cc]以上、好ましくは2000万[pcs/cc]超、さらに好ましくは6000万[pcs/cc]以上のイオンガスが、イオンガス供給部15から処理槽12内に供給され、処理槽12内がイオンガスで満たされる(イオンガス供給工程)。
【0044】
また、この際、処理装置10は、加熱器72を駆動し、処理槽12内を加熱し、処理槽12内の温度を25℃以上70℃以下の間で推移させるとともに、この温度範囲での処理終了時における処理槽12内の平均温度が30℃以上50℃以下になるように調整する(加熱工程)。
【0045】
処理装置10は、このように、含水有機物の撹拌と、処理槽12内の加熱と、処理槽12内からの気体の排気と、イオン密度が所定以上のイオンガスの処理槽12内への供給とを所定時間継続して行う。
【0046】
これにより、処理装置10は、含水有機物の撹拌や加熱、排気による処理槽12内での気体の循環、処理槽12内へのイオンガスの供給を行い、その相乗効果によって、含水有機物中に含まれる水分子を分離し易くして含水有機物を分解するとともに、水分子のクラスター構造を分解してゆき、含水有機物が効率的に分解させてゆく。これにより、処理装置10により処理される含水有機物は、最終的に、所望する水分率となり、かつ当初の含水有機物よりも大幅に減量した粉末体となり得る。
【0047】
ここで、含水有機物を処理することにより得られる粉末体を肥料や飼料として用いる場合、含水有機物の処理を終了する時間は、含水有機物の水分率を目安に決定される。より具体的には、粉末体の水分率が2%以上20%以下、より好ましくは10%以上20%以下となったとき、含水有機物の処理を終了することが望ましい。なお、水分率は乾燥減量法により測定した値である。乾燥減量法は、まず水分を含んだ処理前の含水有機物の重量を計測し、その後、含水有機物を加熱して水分を蒸発させ、水分がゼロになった含水有機物の重量を計測することによって、減量した重量を水分と仮定し、水分率を測定するものである。
【0048】
含水有機物を処理することで得られる粉末体の水分率が2%未満になると、粉末体が乾燥し過ぎて粉塵となってしまい、処理槽12を開放した際などに粉末体が大気中に舞い上がるなどしてしまうため、粉末体の水分率は2%以上であることが望ましい。また、粉末体の水分率を20%以下にすることで、中温性好気性菌の菌数を10
5/g以下にでき、粉末体を肥料や飼料として用いることができる。粉末体を肥料や飼料として用いる場合には、取り扱い易さから、粉末体の水分率を10%以上20%以下とすることが望ましい。
【0049】
なお、このような含水有機物の処理時間は、含水有機物の投入量や、含水有機物の種類、含水有機物の水分状態、処理槽12内の加熱温度、イオンガスの供給量、処理槽12内からの気体の排気量などによって変わってくるものの、水分率が40%以上90%以下で、おおよそ30[kg]以上300[kg]以下程度の一般的な野菜くずや、飲料抽出後の有機物残渣であれば、例えば、上述した処理条件においてイオン密度を6000万[pcs/cc]以上にして、2時間以上70時間以下の時間で連続的に含水有機物を処理することで、水分率が20%以下の粉末体を得ることができる。
【0050】
なお、一般的には、50℃以下の低い温度の処理槽では、含水有機物内の中温性好気性菌の菌数を10
5/g以下にすることは難しい。しかしながら、処理装置10では、含水有機物を処理する際に、含水有機物の撹拌や、処理槽12内での気体の循環、含水有機物へのイオンガスの供給を行うことで、処理槽12内の平均温度を50℃以下に低くしても、これらの相乗効果により、短時間で粉末体の中温性好気性菌の菌数を10
5/g以下にすることができる。
【0051】
なお、上述した他に、含水有機物を処理して含水有機物の総量を減少させることを目的とした場合には、ロードセル28により得られる含水有機物の重量測定の結果を目安に、含水有機物の処理時間を決めることもできる。処理装置10では、上述した処理条件において、含水有機物を2時間以上70時間以下の時間で連続的に処理することで、処理槽12内の処理前の含水有機物を、8分の1以上3分の1以下にまで減少させることができる。
【0052】
この場合、処理装置10は、ロードセル28によって、処理槽12内における処理前の含水有機物の重量から8分の1以上3分の1以下になったことを検知し、音や光などにより使用者に通知することで、含水有機物の処理終了時を使用者に知らせることができる。
【0053】
(3)<肥料又は飼料について>
次に、処理装置10により含水有機物を処理し、得られた粉末体については、水分率を20%以下にすることができ、また、栄養価も高いことから肥料又は飼料として用いることができる。肥料又は飼料となる含水有機物としては、上述したように、例えば、野菜くず、果実くず、飲料抽出後の有機物残渣、肉くず、サーモンなどの魚くず、汚物、廃棄食品などがあり、また、飲料抽出後の有機物残渣としては、りんご粕、ミカン粕、葡萄粕、グレープフルーツ粕、桃粕、ニンジン粕、ピーマン粕、酒粕、緑茶粕、麦茶粕、コーヒ粕などがある
【0054】
なお、これら含水有機物から肥料又は飼料を製造する場合、各含水有機物の種類毎に処理時間が若干異なってくることもあるため、複数種類の含水有機物を混合せずに、各含水有機物毎にそれぞれ処理装置10にて処理して肥料又は飼料を製造することが望ましい。
【0055】
ここで、従来、生ごみなどの含水有機物を粉砕しながら加熱などして処理する生ゴミ処理器によって製造された粉末体は、製造直後、水分率を20%以下にしても、時間経過とともに、水分率が上昇してゆき、水分率が20%超となってしまう。その結果、粉末体の中温性好気性菌の菌数が10
8/g以上となり腐敗が始まり、長期保存が困難であった。
【0056】
一方、処理装置10を使用し、例えばコーヒ粕やりんご粕を処理して得られた粉末体は、製造後に約1年間の間、常温(20℃±15℃(5〜35℃))にて放置していたが、製造から約1年後に水分率を測定したところ、水分率が未だ20%以下であることが確認できた。このことから、水分率が20%以下の粉末体にしつつも、従来と異なり、粉末体の多くの細胞壁が破壊されていないために、水分率が20%以下のまま長時間維持できていると推測することができる。よって、長期間、水分率を20%以下に維持できる、長期的に保存可能な肥料又は飼料を提供することができる。
【0057】
ここで、飲料抽出後で水分率が78.9%のりんご粕を200[kg]用意して、本実施形態における処理装置10にて上述した処理条件でイオン密度を6000万[pcs/cc]程度として、42時間継続して処理したところ、水分率が3.2%となり、重量が45[kg]の粉末体になることを確認している。処理前の重量からおおよそ5分の1に減少できた。
【0058】
また、飲料抽出後で水分率が71.0%の桃粕を40[kg]用意して、本実施形態における処理装置10にて上述した処理条件でイオン密度を6000万[pcs/cc]程度として、18時間継続して処理したところ、水分率が6.2%となり、重量が12[kg]の粉末体になることを確認している。処理前の重量からおおよそ4分の1に減少できた。
【0059】
また、飲料抽出後で水分率が87.1%のニンジン粕を231[kg]用意して、本実施形態における処理装置10にて上述した処理条件でイオン密度を6000万[pcs/cc]程度として、48時間継続して処理したところ、水分率が2.8%となり、重量が24[kg]の粉末体になることを確認している。処理前の重量からおおよそ10分の1に減少できた。
【0060】
また、飲料抽出後で水分率が84.4%のピーマン粕を200[kg]用意して、本実施形態における処理装置10にて上述した処理条件でイオン密度を6000万[pcs/cc]程度として、48時間継続して処理したところ、水分率が12.1%となり、重量が68[kg]の粉末体になることを確認している。処理前の重量からおおよそ3分の1に減少できた。
【0061】
また、飲料抽出後で水分率が45.0%の酒粕(小麦ふすま含有)を189[kg]用意して、本実施形態における処理装置10にて上述した処理条件でイオン密度を6000万[pcs/cc]程度として、48時間継続して処理したところ、水分率が3.5%となり、重量が96[kg]の粉末体になることを確認している。処理前の重量からおおよそ2分の1に減少できた。
【0062】
また、飲料抽出後で水分率が86.4%の緑茶粕を106[kg]用意して、本実施形態における処理装置10にて上述した処理条件でイオン密度を6000万[pcs/cc]程度として、24時間継続して処理したところ、水分率が2.3%となり、重量が17[kg]の粉末体になることを確認している。処理前の重量からおおよそ6分の1に減少できた。
【0063】
また、飲料抽出後で水分率が80.2%の麦茶粕を130[kg]用意して、本実施形態における処理装置10にて上述した処理条件でイオン密度を6000万[pcs/cc]程度として、18時間継続して処理したところ、水分率が20%以下となり、重量が69[kg]の粉末体になることを確認している。処理前の重量からおおよそ2分の1に減少できた。
【0064】
また、飲料抽出後で水分率が47.0%のコーヒ粕を303[kg]用意して、本実施形態における処理装置10にて上述した処理条件でイオン密度を6000万[pcs/cc]程度として、68時間継続して処理したところ、水分率が19.8%以下となり、重量が109[kg]の粉末体になることを確認している。処理前の重量からおおよそ3分の1に減少できた。
【0065】
(4)<動作及び効果>
以上の構成において、処理装置10では、処理槽12内に収容した含水有機物を撹拌部14で撹拌するとともに、加熱器72によって処理槽12内を加熱する。また、これと同時に、処理装置10では、排気部61によって、処理槽12内から気体を1[m
3/min]以上300[m
3/min]以下で排気し、この排気にともない、イオン密度が200万[pcs/cc]以上のイオンガスをイオンガス供給部15から処理槽12内に供給し、含水有機物を処理する。
【0066】
このように、処理装置10では、含水有機物の撹拌と、処理槽12内の加熱と、処理槽12内からの気体の排気と、含水有機物へのイオンガスの供給と、を用いて含水有機物を処理するようにしたことで、従来の培養基材を用いる場合に比べ、培養基材を用いない分だけ処理槽12の容量を有効活用でき、より効率的に処理することができる。
【0067】
また、処理装置10では、含水有機物の処理中、加熱器72によって処理槽12内の温度を25℃以上70℃以下の範囲で推移させ、望ましくはイオン密度を6000万[pcs/cc]以上にし、処理槽12内において含水有機物の処理を、2時間以上70時間以下の時間、連続して行う。これにより、処理装置10は、含水有機物から、水分率が20%以下の粉末体を生成することができる。
【0068】
また、本実施形態では、反時計回りに回転する第1撹拌部74と、時計回りに回転する第2撹拌部76とにより、第1撹拌部74と第2撹拌部76との間に処理槽12の底部20から含水有機物を導き、第1撹拌部74及び第2撹拌部76間の含水有機物と、処理槽12の気体で満たされた空間との境界に向けてイオンガスを照射するようにした。
【0069】
これにより、処理装置10では、第1撹拌部74と第2撹拌部76との間に掻き上げられた含水有機物全体にイオンガスを均一に照射できる。さらに、本実施形態では、第1撹拌部74と第2撹拌部76との間の上方に、処理槽12内の気体を排気する排気口57を設けたことから、第1撹拌部74と第2撹拌部76との間に含水有機物が掻き上げられることで、含水有機物から上昇する余分な蒸気を、そのまま排気口57から外部に排出させることができる。
【0070】
また、処理装置10において、処理槽12内にて含水有機物を撹拌しながら加熱し、さらに、処理槽12内から気体を排気し、含水有機物にイオンガスを照射する処理工程によって得られる粉末体は、水分率が20%以下となり、また、栄養価も高いことから、肥料又は飼料として用いることができる。
【0071】
(5)<他の実施形態>
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することが可能であり、処理槽として、種々の大きさの処理槽を適用してもよい。また、上述した実施形態においては、イオンガス供給部として、マイナスイオン発生器38Aを設け、マイナスイオンのイオン密度が、200万[pcs/cc]以上、好ましくは2000万[pcs/cc]超、さらに好ましくは6000万[pcs/cc]以上のイオンガスを処理槽12内に供給するイオンガス供給部15を適用したが、本発明はこれに限らず、プラスイオン発生器を設け、プラスイオンのイオン密度が、200万[pcs/cc]以上、好ましくは2000万[pcs/cc]超、さらに好ましくは6000万[pcs/cc]以上のイオンガスを処理槽12内に供給するイオンガス供給部を適用してもよい。
【0072】
また、その他のイオンガス供給部としては、プラスイオン及びマイナスイオンの両方を発生させるイオン発生器を設け、プラスイオン及びマイナスイオンを合わせたイオン密度が、200万[pcs/cc]以上、好ましくは2000万[pcs/cc]超、さらに好ましくは6000万[pcs/cc]以上のイオンガスを処理槽12内に供給するイオンガス供給部を適用してもよい。
【0073】
また、第1撹拌部74と第2撹拌部76の回転方向は任意の方向であってもよく、さらに、処理槽12内に1つの回転軸を設け、当該回転軸に羽根を設けた撹拌部を適用してもよい。また、処理槽12内にイオンガスを供給する上側供給管として、排気口57を挟んで両側に第1配管64及び第2配管66を設けた構成としたが、いずれか一方のみを設け、処理槽12内にイオンガスを供給するようにしてもよい。
【0074】
また、上述した実施形態においては、排気部61として、ブロワを設け、処理槽12内から気体を強制的に排気させるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らない。例えば、吸引側となるマイナスイオン発生器38Aに、吸気部となるブロワを設け、排気部を単なるフィルタなどとし、吸気部での吸引によって、排気部から処理槽12内の気体を1[m
3/min]以上300[m
3/min]以下で排気するようにしてもよい。
【解決手段】処理装置10では、処理槽12内に収容した含水有機物を撹拌部14で撹拌するとともに、加熱器72によって処理槽12内を加熱する。また、これと同時に、処理装置10では、排気部61によって、処理槽12内から気体を1[m
/min]以下で排気し、この排気にともない、イオン密度が200万[pcs/cc]以上のイオンガスをイオンガス供給部15から処理槽12内に供給し、含水有機物を処理する。