【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 閲覧場所:独立行政法人日本スポーツ振興センター管理部調達管財課、閲覧期間:2015年12月14日から1か月間。 アドレス:http://www.jpnsport.go.jp/newstadium/tabid/490/Default.aspx、ウェブサイト掲載日:2015年12月14日。
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記長軸方向において互いに対向する一方の前記木質部材と他方の前記木質部材の少なくとも一方に、前記連結用挿通孔に連続することで前記連結用ボルト軸の全長を収容可能な収容穴が形成されていることを特徴とする請求項4に記載のハイブリッド構造材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、木質部材による荷重や応力の負担度合いを増やし、より高い強度を有するハイブリッド構造材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明のハイブリッド構造材は、構造物の躯体を構成するハイブリッド構造材であって、鉄骨からなる中心鋼材と、前記中心鋼材に沿うように設けられた木質部材と、前記中心鋼材に形成され、前記中心鋼材の長軸方向に直交して前記木質部材の長軸方向の端面に突き当たる受圧部と、前記長軸方向に延び、一端部が前記木質部材に定着され、他端部が前記受圧部に定着されて、前記中心鋼材と前記木質部材とを接合する接合部材と、を備えることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、中心鋼材と木質部材とを、木質部材の端面を中心鋼材の受圧部に突き当てた状態で、中心鋼材の長軸方向に延びる接合部材によって接合する。これにより、中心鋼材と木質部材との間で、ハイブリッド構造材に作用する長軸方向の荷重や応力を伝達することができる。したがって、中心鋼材に加え、木質部材においても長軸方向の荷重や応力を負担することが可能となる。これによって、木質部材がハイブリッド構造材の強度及び応力負担要素として十分に機能することとなる。また、木質部材は、木材の繊維方向が長軸方向に合致するため、木材と中心鋼材の受圧部との間での応力伝達を効率よく行うことができる。
【0008】
本発明の一態様においては、本発明のハイブリッド構造材は、前記木質部材が、前記長軸方向に直交する木質部材側受圧面と、前記木質部材の前記端面から前記木質部材側受圧面まで前記長軸方向に沿って連通する挿通孔と、を備え、前記接合部材は、前記挿通孔に挿通されるボルト軸と、前記ボルト軸の両端部にそれぞれ配置され、前記木質部材側受圧面又は前記受圧部に突き当たる定着部材と、前記ボルト軸の両端部にそれぞれ螺着され、前記定着部材を前記木質部材側受圧面又は前記受圧部に押し付けるナットと、をさらに備える。
【0009】
このような構成によれば、接合部材を介し、中心鋼材と木質部材との間で、長軸方向の荷重や応力を確実に伝達することができる。
【0010】
本発明の一態様においては、本発明のハイブリッド構造材は、前記木質部材側受圧面が、前記木質部材の外表面に対して窪んで形成された凹部に設けられている。
【0011】
このような構成によれば、ボルト軸の端部に装着される定着部材及びナットを凹部内に収容することができる。したがって、定着部材及びナットが木質部材から外方に突出するのを抑え、外観を向上させることができる。
【0012】
本発明の一態様においては、本発明のハイブリッド構造材は、前記中心鋼材の長軸方向に沿って、複数本の前記木質部材が連結して設けられ、前記長軸方向において互いに対向する前記木質部材は、それぞれ、前記長軸方向に直交する連結用受圧面と、前記木質部材の端部から前記長軸方向に沿って前記連結用受圧面まで連通する連結用挿通孔と、を備え、前記長軸方向において互いに対向する前記木質部材同士は、一方の前記木質部材の前記連結用挿通孔と他方の前記木質部材の前記連結用挿通孔とに挿通された連結用ボルト軸と、前記連結用ボルト軸の両端部にそれぞれ装着され、一方の前記木質部材の前記連結用受圧面又は他方の前記木質部材の前記連結用受圧面に定着された連結用定着部材と、により連結されている。
【0013】
このような構成によれば、一本の中心鋼材に対し、長軸方向に複数本の木質部材が連結して設けられる場合、長軸方向において互いに対向する木質部材同士を、連結用ボルト軸と、連結用ボルト軸の両端部に装着される連結用定着部材によって連結することができる。このようにして、一本の中心鋼材に対し、長軸方向に複数本の木質部材が連結して設けられる場合であっても、複数本の木質部材と中心鋼材との間で、長軸方向の荷重や応力を確実に伝達することが可能となる。
【0014】
本発明の一態様においては、本発明のハイブリッド構造材は、前記長軸方向において互いに対向する一方の前記木質部材と他方の前記木質部材の少なくとも一方に、前記連結用挿通孔に連続することで前記連結用ボルト軸の全長を収容可能な収容穴が形成されている。
【0015】
このような構成によれば、一方の木質部材と他方の木質部材とを連結する際には、まず、連結用ボルト軸の全長を、連結用挿通孔と収容穴とに挿入して収容しておく。そして、一方の木質部材と他方の木質部材とを互いに突き合わせた後、収容しておいた連結用ボルト軸を、対向する他方の木質部材側に突出させ、他方の木質部材の連結用挿通孔に挿通する。その後、連結用ボルト軸の両端部にそれぞれ連結用定着部材を装着することで、一方の木質部材と他方の木質部材とを連結することができる。
これによって、長軸方向において互いに対向する木質部材同士を、容易かつ効率的に連結することができる。
【0016】
本発明の一態様においては、本発明のハイブリッド構造材は、前記長軸方向において互いに対向する一方の前記木質部材と他方の前記木質部材との間に挿入される隙間調整部材をさらに備える。
【0017】
このような構成によれば、中心鋼材に沿わせた状態で一方の木質部材と他方の木質部材とを連結するに際しては、一方の木質部材と他方の木質部材との間に隙間があった方が、作業が行いやすい。一方の木質部材と他方の木質部材とを中心鋼材に沿わせて互いに対向させた後に、隙間調整部材を挿入することで、一方の木質部材と他方の木質部材とを隙間無く配置することができる。これによって、一方の木質部材と他方の木質部材との間で、荷重や応力を確実に伝達することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、木質部材による荷重や応力の負担度合いを増やし、より高い強度を有するハイブリッド構造材を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明によるハイブリッド構造材を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
【0021】
ハイブリッド構造材を用いて構成した建築構造物の一部を示す側面図を
図1に示す。
図1のハイブリッド構造材における長軸方向に直交する断面図を
図2に示す。ハイブリッド構造材の長軸方向に直交する断面構造を示す図であり、
図1におけるY−Y矢視断面図を
図3に示す。ハイブリッド構造材における中心鋼材と木質部材との接合部の構成を示す側面図を
図4に示す。
【0022】
図1、
図2に示されるように、ハイブリッド構造材20A、20Bを用いて構成される建築構造物10の躯体10aは、例えば、梁11の下弦材12と、下弦材12の上面に接合されるラチス材13A,13Bと、を備える。
【0023】
下弦材12は、水平方向に延びる複数本のハイブリッド構造材20Aを、長軸方向CLに接続することで構成されている。
【0024】
ラチス材13A,13Bは、下弦材12の上面に設けられたブラケット14に接合プレート15を介して接合されている。ラチス材13A,13Bは、鉛直面内において、ブラケット14から斜め上方に向かって延び、図示しない上弦材に接合されている。ラチス材13A,13Bは、それぞれハイブリッド構造材20Bを備えている。
【0025】
図1〜
図3に示されるように、下弦材12を構成するハイブリッド構造材20Aは、中心鋼材21Aと、木質部材30Aと、接合部材40と、を備えている。
【0026】
中心鋼材21Aは、鋼材からなり、鉛直面内に位置するウェブ22Aと、ウェブ22Aの上端部に一体に接合され、水平面内に位置するフランジ23Aと、を一体に備えた断面T字状に形成されている。中心鋼材21Aには、さらに、リブプレート24Aと受圧プレート(受圧部)25Aとが一体に形成されている。
【0027】
リブプレート24Aは、ウェブ22Aの上下方向中間部において、ウェブ22Aの両側面22s、22sから水平方向外方に向かってそれぞれ延びるよう設けられている。
図1に示されるように、このリブプレート24Aは、中心鋼材21Aの長軸方向CLに沿って連続して形成されている。
【0028】
受圧プレート25Aは、中心鋼材21Aの端部21sから長軸方向CLに沿って一定寸法内方の位置に設けられている。受圧プレート25Aは、ウェブ22Aの両側面22s、22sから、それぞれ、ウェブ22Aおよびフランジ23Aに直交して水平方向外方に延びるよう形成されている。
図4に示されるように、受圧プレート25Aには、貫通孔25hが貫通形成されている。
【0029】
図3に示されるように、この実施形態において、リブプレート24Aの上側には、ウェブ22Aの両側面22sから所定寸法離間した位置に、ウェブ22Aと平行に設けられたサイドプレート26,26が設けられている。サイドプレート26,26は、その上下端部がフランジ23Aとリブプレート24Aとに接合され、中心鋼材21Aの長軸方向CL(
図1参照)に連続して形成されている。
【0030】
木質部材30Aは、例えば集成材からなる。集成材は、木質部材30Aの長軸方向CLに直交する方向に複数枚の薄い木材を積層し、接着剤により一体に接合したものである。この木質部材30Aは、木材の繊維方向が長軸方向CL(
図1参照)に合致するよう形成されている。
木質部材30Aは、中心鋼材21Aのウェブ22Aの両側にそれぞれ配置されている。木質部材30Aは、リブプレート24Aの上側においては、中心鋼材21Aのフランジ23Aとサイドプレート26とリブプレート24Aとに囲まれた空間内に収容されている。また、中心鋼材21Aのリブプレート24Aの下方においては、2本の木質部材30Aが、ウェブ22Aの側面22sに直交する方向に積層されて、ウェブ22Aの側面22sに沿うように設けられている。
【0031】
リブプレート24Aの上下にそれぞれ設けられた木質部材30Aは、その外表面30fが、フランジ23Aの側端部23sと、ほぼ面一となるように設けられている。また、リブプレート24Aの側端部24sは、木質部材30Aの外表面30fに対し、ウェブ22A側に近い位置に配置されている。
これによって、ハイブリッド構造材20Aは、側面視すると、主に木質部材30A,30Aの外表面30f,30fが露出し、いわゆる木表しとなって、外観が暖かみのある木質感に富んだものとなる。
【0032】
図4に示されるように、木質部材30Aの長軸方向CLの端部30eには、木質部材30Aの端面30sから長軸方向CLに沿って所定寸法内方の位置に、木質部材30Aの外表面30fに対しウェブ22A側に向かって凹んだ凹部31Aが形成されている。
また、木質部材30Aの端部30eには、端面30sから木質部材30Aの長軸方向CLに沿って内方に向かって延びるボルト挿通孔(挿通孔)32Aが形成されている。このボルト挿通孔32Aは凹部31Aに連通している。ボルト挿通孔32Aは、木質部材30Aの端面30sを中心鋼材21Aの受圧プレート25Aに突き当てたときに、受圧プレート25Aに形成された貫通孔25hに連通するよう形成されている。
【0033】
中心鋼材21Aと、木質部材30Aとは、接合部材40によって一体に接合される。接合部材40は、ボルト軸41と、ボルト軸41の両端にそれぞれ装着される座金(定着部材)42及びナット43と、を備える。
ボルト軸41は、木質部材30Aの端面30sを中心鋼材21Aの受圧プレート25Aに突き当てた状態で、受圧プレート25Aの貫通孔25h及び木質部材30Aのボルト挿通孔32Aに挿入される。
座金42は、例えば凹部31の側面(木質部材側受圧面)31s全面に突き当たる矩形状のプレート材からなり、ボルト軸41に挿通される。
ナット43は、ボルト軸41に螺着される。
【0034】
このような接合部材40において、ボルト軸41は、貫通孔25h及びボルト挿通孔32Aに挿入された状態で、その一端41aが木質部材30Aの凹部31A内に突出し、他端41bが受圧プレート25Aから突出する。ボルト軸41の一端41aには、凹部31A内で座金42及びナット43が装着され、ナット43の締付力によって座金42が凹部31Aにおいて受圧プレート25A側の側面31sに押圧されて突き当たっている。ボルト軸41の他端41bには、座金42及びナット43が装着され、ナット43の締付力によって座金42が受圧プレート25Aに押圧されて突き当たっている。
接合部材40においては、ボルト軸41の一端41a及び他端41bにおいて、それぞれナット43を所定の締付トルクで締め付けることにより、木質部材30Aの端部30eと中心鋼材21Aの受圧プレート25Aとが、ハイブリッド構造材20Aの長軸方向CLに延びるボルト軸41を介して接合される。
【0035】
また、
図1に示されるように、中心鋼材21Aと木質部材30Aとは、ウェブ22Aの側面22sに直交する方向に延び、木質部材30Aとウェブ22Aとを貫通する落下防止ボルト50によって、接合されている。
【0036】
下弦材12において、上記ハイブリッド構造材20A,20A同士を突き合わせて接続する部分においては、中心鋼材21A,21Aの端部21s,21s同士を突き合わせた状態で、両者のウェブ22A,22A、フランジ23A,23Aに跨がるように配置されたジョイントプレート28A及びボルト29Aを介して接合されている。
【0037】
図1、
図2に示されるように、ラチス材13A,13Bを構成するハイブリッド構造材20Bは、中心鋼材21Bと、木質部材30Bと、接合部材40と、を備えている。
【0038】
中心鋼材21Bは、鉛直面内に位置するウェブ22Bと、ウェブ22Bの一端に設けられ、ウェブ22Bに直交する両側方に延びるフランジ23Bと、と一体に備えた断面T字状に形成されている。
【0039】
中心鋼材21Bには、さらに、受圧プレート(受圧部)25Bが一体に形成されている。
受圧プレート25Bは、中心鋼材21Bの端部21sからハイブリッド構造材20Bの長軸方向CLに沿って一定寸法内方の位置に設けられている。受圧プレート25Bは、ウェブ22Bの両側面22s、22sから、ウェブ22Bおよびフランジ23Bに直交して水平方向外方に延びるよう形成されている。この受圧プレート25Bには、貫通孔25h(
図4参照)が貫通形成されている。
【0040】
木質部材30Bは、中心鋼材21Bのウェブ22Bの両側にそれぞれ沿うよう配置されている。
【0041】
木質部材30Bには、木質部材30Bの端面30sから長軸方向CLに沿って所定寸法内方の位置に、木質部材30Bの外表面30fに対しウェブ22B側に向かって凹んだ凹部31Bが形成されている。
また、木質部材30Bには、端面30sから木質部材30Bの長軸方向CLに沿って内方に向かって延びるボルト挿通孔(挿通孔)32Bが形成されている。このボルト挿通孔32Bは凹部31Bに連通している。ボルト挿通孔32Bは、木質部材30Bの端面30sを中心鋼材21Bの受圧プレート25Bに突き当てたときに、受圧プレート25Bに形成された貫通孔25h(
図4参照)に連通するよう形成されている。
【0042】
中心鋼材21Bと、木質部材30Bとは、上記ハイブリッド構造材20Aと同様、接合部材40によって一体に接合される。
図4に示されるように、接合部材40は、ボルト軸41と、ボルト軸41の両端にそれぞれ装着される座金42及びナット43と、を備える。
ボルト軸41は、木質部材30Bの端面30sを中心鋼材21Bの受圧プレート25Bに突き当てた状態で、受圧プレート25Bの貫通孔25h及び木質部材30Bのボルト挿通孔32Bに挿入される。ボルト軸41は、その一端41aが木質部材30Bの凹部31B内に突出し、他端41bが受圧プレート25Bから突出する。ボルト軸41の一端41aには、凹部31B内で座金42及びナット43が装着され、ナット43の締付力によって座金42が凹部31Bにおいて受圧プレート25B側の側面31sに突き当たっている。ボルト軸41の他端41bには、座金42及びナット43が装着され、ナット43の締付力によって座金42が受圧プレート25Bに突き当たっている。ボルト軸41の一端41a及び他端41bにおいて、それぞれナット43を所定の締付トルクで締め付けることにより、木質部材30Bの端部30eと中心鋼材21Bの受圧プレート25Bとが、ハイブリッド構造材20Bの長軸方向CLに延びるボルト軸41によって一体に接合される。
【0043】
上記したようなハイブリッド構造材20A,20Bは、その長軸方向CLの長さによっては、一本の中心鋼材21A,21Bに対し、複数本の木質部材30A,30Bを、長軸方向CLに連結して設けることがある。以下、ハイブリッド構造材20Aにおいて、複数本の木質部材30A,30A同士を長軸方向CLに連結する場合の構成について説明するが、ハイブリッド構造材20Bにおいても同様の構成が適用可能である。
ハイブリッド構造材において、中心鋼材に対して複数本の木質部材を長軸方向に接続する場合の、木質部材同士の接合構造を示す側面図を、
図5に示す。
図5に示す接合構造において、木質部材同士を接続するときの作業の流れを示す図を、
図6に示す。
図5に示す接合構造において、木質部材同士を接続するときの作業の流れを示す図であり、
図6に続く状態を示す図を、
図7に示す。
【0044】
図5に示されるように、ハイブリッド構造材20Aにおいて、複数本の木質部材30A,30A同士を連結するには、それぞれの木質部材30Aの端部30eに、端面30sから長軸方向CLに沿って所定寸法内方の位置に凹部61を形成する。また、木質部材30Aの端部30eには、端面30sから長軸方向CLに沿って延び、凹部61に連通するボルト挿通孔(連結用挿通孔)62を形成する。
【0045】
さらに、ハイブリッド構造材20Aの長軸方向CLにおいて互いに対向する木質部材30A,30Aのうちの少なくとも一方には、凹部61から、さらに長軸方向CLに沿って端面30sから離間する方向に延びるボルト収容穴63が形成されている。このボルト収容穴63は、凹部61を挟んで、ボルト挿通孔62と同軸上に形成されている。これらボルト挿通孔62及びボルト収容穴63は、ボルト軸81の全長を収容できる長さに形成されている。
【0046】
ハイブリッド構造材20Aの長軸方向CLにおいて、互いに対向する木質部材30A,30A同士は、接合部材80を介して接合される。
接合部材80は、ボルト軸(連結用ボルト軸)81と、ボルト軸81の両端部にそれぞれ装着される座金(連結用定着部材)82及びナット(連結用定着部材)83と、を備えている。
【0047】
ボルト軸81は、その両端部が、一方の木質部材30Aのボルト挿通孔62と、他方の木質部材30Aのボルト挿通孔62にそれぞれ挿入される。この状態でボルト軸81の両端部は、それぞれ木質部材30Aの凹部61内に露出する。ボルト軸81の両端部には、それぞれ座金82及びナット83が装着される。座金82及びナット83は、凹部61内でボルト軸81に装着され、座金82が凹部61において、他方の木質部材30Aに近接する側の側面(木質部材側受圧面)61sに定着されている。
このようにして、ハイブリッド構造材20Aの長軸方向CLにおいて互いに対向する木質部材30A,30A同士は、ハイブリッド構造材20Aの長軸方向CLに延びるボルト軸81を介して連結されている。
【0048】
ここで、ハイブリッド構造材20Aの長軸方向CLにおいて、互いに対向する木質部材30A,30A同士の間には、隙間調整プレート(隙間調整部材)85が挟み込まれている。
【0049】
上記したように、ハイブリッド構造材20Aの長軸方向CLにおいて、互いに対向する木質部材30A,30A同士を連結するには、以下のような手順で作業を行う。
まず、
図6に示されるように、一方の木質部材30Aのボルト挿通孔62及びボルト収容穴63に、ボルト軸81の全長を収容しておく。この状態でボルト軸81の中間部の一部は、凹部61内に露出している。そして、ボルト軸81を収容した木質部材30Aを、中心鋼材21Aのウェブ22Aの側面22sに沿うように配置する。
【0050】
次に、
図7に示されるように、この木質部材30Aに長軸方向CLで突き合わせる他の木質部材30Aを、中心鋼材21Aに沿わせて配置する。木質部材30A,30A同士を長軸方向CLで互いに対向させたら、必要に応じ、木質部材30A,30A同士の間に、隙間調整プレート85を挿入し、木質部材30A,30A同士の間の隙間を塞ぐ。
【0051】
次いで、ボルト軸81を収容した木質部材30A側から、ボルト軸81を他方の木質部材30A側にスライドさせ、他方の木質部材30Aのボルト挿通孔62に挿入する。このとき、一方の木質部材30Aにおいては、ボルト軸81の中間部が凹部61内に露出しているので、作業者は、この凹部61内でボルト軸81を指先等で保持し、他方の木質部材30A側にスライドさせることができる。
【0052】
ボルト軸81の両端部が、一方の木質部材30Aの凹部61と、他方の木質部材30Aの凹部61とに露出したら、
図5に示されるように、双方の木質部材30Aの凹部61内で座金82及びナット83をボルト軸81の端部に装着し、ナット83を所定の締付トルクで締め付ける。
これにより、木質部材30A,30A同士が接合部材80を介して接合される。
【0053】
上述したようなハイブリッド構造材20A,20Bによれば、鉄骨からなる中心鋼材21A,21Bと、中心鋼材21A,21Bに沿うように設けられた木質部材30A,30Bと、中心鋼材21A,21Bに形成され、中心鋼材21A,21Bの長軸方向CLに直交して木質部材30A,30Bの端面30sに突き当たる受圧プレート25A,25Bと、中心鋼材21A,21Bの長軸方向CLに延び、一端部が木質部材30A,30Bに定着され、他端部が受圧プレート25A,25Bに定着されて、中心鋼材21A,21Bと木質部材30A,30Bとを接合する接合部材40と、を備える。
このような構成によれば、中心鋼材21A,21Bと木質部材30A,30Bとの間で、ハイブリッド構造材20A,20Bに作用する長軸方向CLの荷重や応力を伝達することができる。したがって、中心鋼材21A,21Bに加え、木質部材30A,30Bにおいても長軸方向CLの荷重や応力を負担することが可能となる。これによって、木質部材30A,30Bがハイブリッド構造材20A,20Bの強度及び応力負担要素として十分に機能することとなる。また、木質部材30A,30Bは、木材の繊維方向が長軸方向CLに合致するため、木材と中心鋼材21A,21Bの受圧プレート25A,25Bとの間での応力伝達を効率よく行うことができる。
【0054】
また、木質部材30A,30Bは、長軸方向CLに直交する凹部31A,31Bの側面31sと、ボルト挿通孔32A,32Bと、を備えている。また、接合部材40は、ボルト挿通孔32A,32Bに挿通されるボルト軸41と、ボルト軸41の両端部にそれぞれ配置され、凹部31A,31Bの側面31s又は受圧プレート25A,25Bに突き当たる座金42と、ボルト軸41の両端部にそれぞれ螺着され、座金42を凹部31A,31Bの側面31s又は受圧プレート25A,25Bに押し付けるナット43と、をさらに備えている。
このような構成によれば、接合部材40を介し、中心鋼材21A,21Bと木質部材30A,30Bとの間で、長軸方向CLの荷重や応力を確実に伝達することができる。
また、接合部材40は、高力ボルト等ではなく、通常のボルト軸41及びナット43を用いた、いわゆる乾式接合であるため、例えばメンテナンスのため木質部材30A,30Bを交換する場合に、交換作業を容易に行うことができる。
【0055】
また、木質部材側受圧面となる側面31sは、木質部材30A,30Bの外表面に対して窪んで形成された凹部31に設けられている。
このような構成によれば、ボルト軸41の端部に装着されるナット43を凹部31内に収容することができる。したがって、ナット43が木質部材30A,30Bから外方に突出するのを抑え、外観を向上させることができる。
【0056】
また、中心鋼材21Aの長軸方向CLに沿って複数本の木質部材30Aが連結して設けられている場合、互いに対向する木質部材30A,30Aは、それぞれ、中心鋼材21Aの長軸方向CLに直交する凹部61の側面61sと、木質部材30Aの端部から長軸方向CLに沿って凹部61の側面61sまで連通するボルト挿通孔62と、を備えている。さらに、互いに対向する木質部材30A,30A同士は、一方の木質部材30Aのボルト挿通孔62と他方の木質部材30Aのボルト挿通孔62とに挿通されたボルト軸81と、ボルト軸81の両端部にそれぞれ装着され、一方の木質部材30Aの側面61s又は他方の木質部材30Aの側面61sに定着された座金82及びナット83と、により連結されている。
このような構成によれば、一本の中心鋼材21Aに対し、長軸方向CLに複数本の木質部材30Aが連結して設けられる場合であっても、中心鋼材21Aと複数本の木質部材30Aとの間で、長軸方向CLの荷重や応力を確実に伝達することが可能となる。
【0057】
また、長軸方向CLにおいて互いに対向する一方の木質部材30Aと他方の木質部材30Aの少なくとも一方に、ボルト挿通孔62に連続することでボルト軸81の全長を収容可能なボルト収容穴63が形成されている。
このような構成によれば、一方の木質部材30Aと他方の木質部材30Aとを連結する際には、ボルト軸81の全長を、ボルト挿通孔62とボルト収容穴63とに挿入して収容しておくことができる。そして、一方の木質部材30Aと他方の木質部材30Aとを互いに突き合わせた後、収容しておいたボルト軸81を、対向する他方の木質部材30A側に突出させ、他方の木質部材30Aのボルト挿通孔62に挿通する。その後、ボルト軸81の両端部に座金82及びナット83を装着する。これによって、長軸方向CLにおいて互いに対向する木質部材30A,30A同士を、容易かつ効率的に連結することができる。
【0058】
また、長軸方向CLにおいて互いに対向する一方の木質部材30Aと他方の木質部材30Aとの間に挿入される隙間調整プレート85をさらに備えている。
一方の木質部材30Aと他方の木質部材30Aとを連結するに際しては、一方の木質部材30Aと他方の木質部材30Aとの間に隙間があった方が、作業が行いやすい。一方の木質部材30Aと他方の木質部材30Aとを中心鋼材21Aに沿わせて互いに対向させた後に、隙間調整部材85を挿入することで、一方の木質部材30Aと他方の木質部材30Aとを隙間無く設けることができる。これによって、一方の木質部材30Aと他方の木質部材30Aとの間で、荷重や応力を確実に伝達することが可能となる。
【0059】
(実施形態の変形例)
なお、本発明のハイブリッド構造材は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、接合部材40,80に座金42,82を用いるようにしたが、引張方向の応力に対するハイブリッド構造材20A,20Bの強度をさらに高めるのであれば、座金42,82を拡大し、凹部31A,31Bの側面31s、受圧プレート25A,25Bに対する受圧面積を増大させればよい。
【0060】
また、上記実施形態では、ハイブリッド構造材20A,20Bについて、中心鋼材21A,21Bや木質部材30A,30Bの構成を示したが、その断面形状や配置、構造等は適宜変更することが可能である。例えば、リブプレート24Aやサイドプレート26は必須の構成ではない。また、例えば中心鋼材を断面H型の鋼材から形成し、鋼材の上下フランジとウェブとに囲まれる空間に木質部材を収容する構成等とすることもできる。
【0061】
また、上記実施形態では、ハイブリッド構造材20A,20Bを、梁11の下弦材12、ラチス材13A,13Bに用いる例を示したが、他のいかなる部材に対しても、上記と同様の構成を適用することができる。
さらに、ハイブリッド構造材20A,20Bは、長軸方向CLに沿って同一断面形状、同一断面構造である必要は無く、長軸方向CLに沿って、中心鋼材21A,21Bの断面を漸次小さくしたり、木質部材30A,30Bの配置数を増減させる等してもよい。
【0062】
また、ハイブリッド構造材20A,20Bを用いて構成する建築構造物10自体は、いかなる構造、形状であってもよい。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。