(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図を参照して、本形態の歩行者衝突検知装置を説明する。以下の説明では、上下前後左右の各方向を適宜用いて説明するが、左右方向は、車両の進行方向(前方)を向いた場合の左右方向を示している。
【0015】
図1を参照して、本形態の歩行者衝突検知装置の概略的構成を説明する。
図1(A)は車両10の前端部を示す斜視図であり、
図1(B)は車両10の前部に内蔵される歩行者衝突検知装置11を分解して示す斜視図である。
【0016】
図1(A)を参照して、車両10の前部の意匠部分は、上方から、フロントフード12、グリル16およびバンパ表皮14から構成されている。本形態の歩行者衝突検知装置11を構成する部材は、グリル16またはバンパ表皮14の後方に設けられている。車両10が歩行者に衝突したことを歩行者衝突検知装置11が検出すると、フロントフード12の近傍に配置されたエアバッグが膨張展開し、歩行者を二次衝突から保護する。または、ポップアップフード装置(不図示)が動作し、フロントフード12の後方部分が上方に持ち上げられ、歩行者の頭部に与える衝撃を軽減する。
【0017】
図1(B)を参照して、本形態の歩行者衝突検知装置11は、後方から、車体側に取り付けられるバンパ支持部材18と、バンパ支持部材18の前面に配置されるフォーム材20(衝撃吸収部材)と、フォーム材20の前部に組み込まれる検出チューブ22(筒状部材)と、バンパ表皮14と、を主要に備えている。
【0018】
また、フォーム材20と、検出チューブ22とは、後述する圧力センサ部26A、26B(
図2(B))、ECU30(
図3(A))と共に、衝撃エネルギーを検出し、歩行者衝突および停車時衝突を検知する衝突検出部15を構成している。
【0019】
本形態の歩行者衝突検知装置11は、所謂圧力変動式のものであり、検出チューブ22の内部圧力を、後述する圧力検出素子38A、38B(
図2(B))で測定し、測定された内部圧力の変動に基いて、上記したエアバッグ等の歩行者保護装置を作動させる。更に本形態の歩行者衝突検知装置11は、後述するように、停車時における衝突を検出し、歩行者衝突検知装置11が故障した状態で走行することを防止する機能も有する。
【0020】
バンパ支持部材18は車両の幅方向に伸び、金属から成る矩形断面を有する筒状の部材であり、フォーム材20等を支持し、且つ、大衝突時のエネルギーを吸収する役割を有する。歩行者衝突や軽衝突の際には、バンパ支持部材18は原則として変形しない。
【0021】
フォーム材20は樹脂材料から成り、バンパ支持部材18の左方端部付近から右方端部付近まで連続して形成されている。フォーム材20の材料としては、PPフォーム材またはポリエチレン等から成る発泡樹脂が採用される。フォーム材20は、歩行者衝突時等に変形することで、衝撃を吸収する作用を有する。
【0022】
検出チューブ22は、円形状の断面を有するパイプ状の樹脂製部材(例えばシリコン樹脂)であり、その内部は略密閉されている。検出チューブ22は、バンパ支持部材18の右方端部付近から左方端部付近に至るまで配置されている。検出チューブ22には、後述するように、不図示の圧力センサ部26A、26B(
図2(B))が配置されており、衝突時の衝撃により検出チューブ22が圧縮された際の圧力の変動を圧力センサ部26A、26Bで検出することで、歩行者の衝突を検知している。
【0023】
図2を参照して、本形態の歩行者衝突検知装置11の構成を詳述する。
図2(A)は、歩行者衝突検知装置11の構造を示す断面図であり、
図2(B)は歩行者衝突検知装置11に含まれる検出チューブ22と圧力センサ部26A、26Bとを示す断面図である。
【0024】
図2(A)を参照して、バンパ支持部材18の前面にはフォーム材20が固着されている。フォーム材20は、上記したように発泡樹脂から成る軟質の部材であり、その断面形状は、後方側に開口された略ハット形状を呈している。検出チューブ22は、フォーム材20の前面を後方に窪ませた凹部24に収納されている。
【0025】
車両10が走行している際に、歩行者衝突等による衝撃が車両10に生じると、この衝撃によりバンパ表皮14が後方に変形し、更に、変形したバンパ表皮14によりフォーム材20が後方に向かって押圧される。この時、歩行者衝突時にはバンパ支持部材18は変形や移動が生じないので、バンパ表皮14およびフォーム材20は、後方からバンパ支持部材18により支持される。その結果、フォーム材20が前後方向に圧縮される様に変形することで、衝撃エネルギーが吸収され、歩行者の脚部に作用する衝撃エネルギーが低減される。
【0026】
フォーム材20が前後方向に圧縮されると、フォーム材20の前端に配置された検出チューブ22も前後方向に圧縮され、その内部圧力が大きくなる。この圧力変動を、下記する圧力センサ部26A、26Bで計測し、圧力センサ部26A、26Bの出力に基いて、上記したエアバッグ等の歩行者保護装置を動作させている。
【0027】
図2(B)を参照して、検出チューブ22の両端には、検出チューブ22の内部圧力を計測する圧力センサ部26A、26Bが配置されている。
【0028】
圧力センサ部26Aは、圧力検出室36Aと、この圧力検出室36Aに内蔵される電極39Aおよび圧力検出素子38Aと、から構成されている。
【0029】
圧力検出室36Aは、検出チューブ22の左端と連通しており、実質的に密閉された空間を形成している。
【0030】
圧力検出素子38Aは、圧力検出室36Aの内部圧力を検出する素子であり、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)から構成されている。圧力検出素子38Aは、車両10の走行時に於いて、圧力検出室36Aの内部圧力を示す電気信号を、ECU30(
図3(A))に伝送する。
【0031】
電極39Aは、回転電極40A(スイッチ羽)と、固定電極42Aとから構成されている。電極39Aは、圧力検出室36Aの内部にて、圧力検出素子38Aと検出チューブ22との接続部分の近傍に配置されている。電極39Aは、車両10の停止時に於いて、車両10に衝撃が作用したことを検知する機能を有する。
【0032】
回転電極40Aは、検出チューブ22の断面と同等以上の面積を有する金属片であり、その上端部付近は回転可能に固定されている。車両10の前部に衝撃が作用していない状況下では、回転電極40Aは垂直な状態を維持しており、固定電極42Aとは接触していない。一方、車両10の前部に衝撃が作用している間は、回転電極40Aは時計回りに回転して固定電極42Aに接触し、電極39Aは導通状態となる。そして、この衝撃が終了した後は、回転電極40Aは固定電極42Aから離れて垂直状態となり、電極39Aは遮断状態となる。
【0033】
また、回転電極40Aは、検出チューブ22の端部から離間した位置に配置されている。すなわち、検出チューブ22の端部と回転電極40Aとの間には、検出チューブ22内部と外部との連通を許容する間隙が形成される。これにより、検出チューブ22の内部圧力と、圧力検出室36Aの内部圧力とが等しくなるので、使用状況下に於いて、回転電極40Aが検出チューブ22の端部を塞いでしまうことが防止される。
【0034】
固定電極42Aは、回転電極40Aよりも外側にて、回転電極40Aの近傍に固定された金属電極から構成される。
【0035】
上記した電極39Aは、停車中の車両10に衝撃が作用したことを検知する為に用いられる。具体的には、車両10が停車中に、他の車両が車両10の前部に衝突する等して衝撃が作用すると、この衝撃により検出チューブ22が前後方向に圧縮される。検出チューブ22が圧縮されると、検出チューブ22の内部から圧力検出室36Aに向かって移動しようとする空気が回転電極40Aの主面に当たる。これにより、回転電極40Aは時計回りに回転し、固定電極42Aと接触する。よって、回転電極40Aと固定電極42Aとが導通する状態となり、両者が導通したことがECUにより記録される。
【0036】
また、電極39Aとしては、永続的な変化を有するものが採用される。具体的には、電極39Aには、必要に応じて一定時間導通し、その後に遮断して元の状態に戻る、という性質が要求される。これは、検出チューブ22に作用した衝撃の大きさを計測し、一定以上の衝撃が作用した場合のみ、歩行者衝突検知装置11が故障したと判断するためである。
【0037】
電極39Aは、検出チューブ22から排出される空気量が大きくなると、回転電極40Aと固定電極42Aとが接触する時間が長くなる。また、検出チューブ22からの空気の供給が無くなると、回転電極40Aは反時計回りに反転し、固定電極42Aから離れて遮断状態となる。よって、電極39Aは、永続的な変化を有する。
【0038】
検出チューブ22の右端にも、圧力センサ部26Bが形成されている。圧力センサ部26Bの構成は、上記した圧力センサ部26Aと同様であり、圧力検出室36Bの内部に、圧力検出素子38B、電極39Bが内蔵されている。また、電極39Bの構成は、上記した電極39Aと同様であり、回転電極40Bと固定電極42Bとから構成されている。
【0039】
図3を参照して、歩行者衝突検知装置11の動作を説明する。
図3は、歩行者衝突検知装置11を構成する各部位を示すブロック図である。
【0040】
ECU30は、CPU31(Central Processing Unit)とRAM33(Random Access Memory)とから構成されている。ECU30は、車両10が走行している際に、各種センサから入力された情報に基いて所定の演算処理を行い、必要に応じてエアバッ
グ等の歩行者保護装置を作動させる歩行者衝突判定手段として機能している。また、ECU30は、車両10が停止している際に、各種センサから入力された情報に基いて所定の演算処理を行い、衝突を検知する検出部が故障しているか否かを判別する故障判定手段として機能している。
【0041】
ECU30の入力側端子は、上記した圧力検出素子38A、38B、車両10が走行する速度を計測する速度センサ28、電極39A、39Bに接続されている。また、ECU30の出力側端子は、エアバッグ32、ポップアップフード34、報知装置44に接続されている。
【0042】
車両10が走行している際は、ECU30は、これら各センサから得られた情報等を基に、エアバッグ等の歩行者保護装置を作動させるか否かの判断を行う。具体的には、圧力検出素子38A、38Bから入力された情報を演算処理することにより、車両10が歩行者に衝突したか否かの判断を行う。また、ECU30は、速度センサ28から入力された情報を演算処理し、衝突時の車両10の速度が、エアバッグ等の歩行者保護装置を動作させるべき速度範囲にあるか否かを判断する。
【0043】
車両10が所定の条件で歩行者に衝突したと判断されたら、ECU30の出力に基いてエアバッグ32はフロントフード12(
図1(A)参照)の上面に膨張展開される。また、ポップアップフード34を備える場合は、ECU30からの出力に基いて
図1(A)に示すフロントフード12の後方部分を上方に持ち上げる。これらにより、歩行者は保護される。
【0044】
車両が停止している際は、ECU30は、電極39A、39Bから入力された情報を基に、停車時に車両10の前部に衝撃が作用したか否かを検知する。停車中に衝撃が車両10に作用することにより、電極39A、39Bから所定の電気信号がECU30に入力されたら、RAM33にその情報が記憶される。更に、ECU30は、車両10を走行させるためにエンジンが始動させたら、RAM33から情報の読み出しを行い、読み出された情報が衝突したことを示すものであれば、報知装置44にその旨を表示させる。報知装置44として、例えばインスツルメントパネルが採用される。
【0045】
これにより、車両10を運転する運転手が、歩行者衝突検知装置11が故障していることを知ることができるので、歩行者衝突検知装置11が故障した状態で、車両10を走行させてしまうことが防止される。
【0046】
図3(B)を参照して、ECU30と電極39Aとは伝導線46(例えばワイヤハーネス)を経由して接続されている。具体的には、電極39Aの回転電極40Aは伝導線46を経由してECU30と接続されており、所定の電圧(例えば5V)が印加されている。一方、固定電極42Aは接地されている。
【0047】
車両10に衝撃が作用することにより、回転電極40Aが回転して固定電極42Aに接触すると、ECU30、伝導線46、回転電極40A、固定電極42Aの順番で電流が流れる。そして、この電流の導通時間が所定の条件を満たしていた場合、その旨を示す情報が、上記したRAM33に記録される。
【0048】
一方、車両10が停止しており衝撃が作用していない間は、回転電極40Aと固定電極42Aとは離間しているので、上記のように電流が流れることはない。
【0049】
よって、車両10が停止している間は、ECU30を待機状態(スタンバイモード)とするための僅かな電力は必要と成るが、歩行者衝突検知装置11全体としての消費電力は極めて小さい。
【0050】
図4および
図5を参照して、車両のエンジンが停止している際に、本形態の歩行者衝突検知装置11で、故障を検知するフローを説明する。
図4はこの検知方法を示すフローチャートであり、
図5(A)は車両前部を示す上面図であり、
図5(B)は圧力センサ部26Aに備えられる電極39Aを示す図であり、
図5(C)は衝撃作用時に電極39Aに流れる電流値を示すグラフである。
【0051】
図4を参照して、運転者が車両10を停止させてエンジンを停止させると(ステップS10)、車両に故障が発生しているか否かの検知を開始する。即ち、CPUが監視モードに移行する(ステップS11)。
【0052】
次に、スイッチ論理がLであるか否かの判断を行う(ステップS12)。ここで、スイッチ論理がLの場合は、
図5(B)に示す電極39Aは導通状態であり、スイッチ論理がHの場合は、電極39Aは遮断状態である。
【0053】
スイッチ論理がLの場合は、電極39Aが導通状態であるので、停車中の車両10に衝突が発生した可能性がある、と判断する(ステップS12のYES、ステップS13)。一方、スイッチ論理がLでなければ、衝突が発生した可能性があるとば判断せず、次のステップS13には移行しない(ステップS12のNO)。
【0054】
図5(B)に示すように、電極39Aは、回転電極40Aと固定電極42Aとから成るので、車両10の前部に衝突等の衝撃が作用すると、回転電極40Aが時計回りに回転して固定電極42Aに接触する。これにより、電極39Aは導通し、スイッチ論理がLとなる。具体的には、
図5(A)に示したように、停車時の車両に、前方から矢印で示す位置に衝撃が作用した場合、この衝撃により検出チューブ22が前後方向に圧縮される。この結果、検出チューブ22の内部の空気は、その両端に接続する圧力センサ部26A、26Bに流れ込み、
図2(B)に示した電極39A、39Bが導通して電流が流れる。
【0055】
電極39Aが導通したら、複数回連続してスイッチ論理がLであるかを判断する(ステップS14)。このステップを、
図5(C)を参照して説明する。
図5(C)では、電極39A、39Bに電流が流れる状況を示す。電極39Aに流れる電流の電流値を点線で示し、電極39Bに流れる電流を一点鎖線で示している。
【0056】
本ステップでは、電極39Aに電流が流れる時間L1が所定時間よりも長く、複数回連続してスイッチ論理がLの場合のみ、歩行者衝突検知装置11が故障したと判断している。例えば、電極39Aに電流が流れたら、歩行者衝突検知装置11に衝撃が作用して故障が生じている、と判断することも可能である。しかしながら、電極39Aに電流が瞬間的に流れた場合は、車両10に軽微な振動が作用したことにより、
図5(B)に示す回転電極40Aが回転して固定電極42Aに接触したことによることも考えられる。この場合は、歩行者衝突検知装置11は故障していない。このような場合を歩行者衝突検知装置11の故障と判断すると、故障の検出精度が落ちてしまう恐れがある。そこで本ステップでは、複数回連続してスイッチ論理がLの場合のみ、車両10前部に他車等が衝突し、歩行者衝突検知装置11に故障が生じたと判断している。停車中の車両10に他車が衝突するなどした場合は、大きな衝撃により検出チューブ22の圧力変化量が大きくなるので、長時間に渡り回転電極40Aは固定電極42Aに接触し続ける。この結果、比較的長期間に渡り電極39Aに電流が流れ、複数回連続してスイッチ論理がLと読み出される。このようにすることで、歩行者衝突検知装置11の故障を精度良く検出することが出来る。
【0057】
一方、スイッチ論理が連続して(例えば3回程度)Lでない場合は(ステップS14のNO)、スイッチ論理がHで有るか否かの判断を行い(ステップS19)、スイッチ論理がHであれば(ステップS19のYES)、故障なしと判断する(ステップS19のYES、ステップS21)。この場合、ステップS12でスイッチ論理がLであった理由は、車両の衝突ではなく、その他の振動等であると判断する。その後に、最初のフローであるステップS10に戻る(ステップS22)。
【0058】
ステップS19でスイッチ論理がHで無ければ(ステップS19のNO)、ループは所定回数(例えば5回)であるかを判断する(ステップS20)。所定回数で有れば(ステップS20のYES)、本形態の検知装置では故障を検出できないので、判定不可と判断する(ステップS23)。そして、故障が発生しており、且つ、その位置が不明であることをRAMに書き込み、終了する(ステップS28、ステップS29)。
【0059】
また、ステップS14でYESの場合は、衝突が生じたと判断し、バンパ表皮14の左右方向に於けるどの部分に衝突が発生したかを推定する。具体的には、検出チューブ22の左端に接続する圧力センサ部26Aに内蔵された電極39Aの出力と、検出チューブ22の右端に接続する圧力センサ部26Bに内蔵された電極39Bの出力とを比較する(
図5(A))。
【0060】
ステップS15では、
図5(A)を参照して、検出チューブ22の左端側に配置された電極39Aが、検出チューブ22の右端側に配置された電極39Bよりも早く導通したか否かを判断する。具体的には、
図5(A)にて矢印で示すように、バンパ表皮14の左方寄りの部分に衝撃が作用した場合、先ず、検出チューブ22の左端に接続する圧力センサ部26Aに空気が流入し、その後に、検出チューブ22の右端に接続する圧力センサ部26Bに空気が流入する。従って、この場合は、圧力センサ部26Aに内蔵された電極39Aが先ず導通し、その後に、圧力センサ部26Bに内蔵された電極39Aが導通する。よって、
図5(C)に示すように、電極39Aが導通し始めるタイミングP1が、電極39Bが導通し始めるタイミングP2よりも早くなる。よって、タイミングP1がタイミングP2よりも早かった場合、バンパ表皮14の左方寄りの部分に衝突が生じたと推測している(ステップS24)。そして、故障が発生しており、且つ、車体の左側に衝突が生じていることを示す情報をRAMに書き込む(ステップS25)。これにより、歩行者衝突検知装置11の故障箇所が容易に特定できるようになるので、歩行者衝突検知装置11の修理や交換が容易となる。
【0061】
また、P1とP2との時間差L3から、バンパ表皮14のどの部分に衝撃が生じたかを更に詳細に推定し、その推定結果をRAM33に記録することも可能である。
【0062】
一方、右端型に配置された電極39Bが、左端側に配置された電極39Aよりも早く導通した場合は、
図5(C)に示すタイミングP2がタイミングP1よりも早くなる(ステップS15のNO、ステップS16のYES)。このような場合は、バンパ表皮14の右方側で衝突が発生したと推測する(ステップS26)。そして、故障が発生しており、且つ、車体の右側に衝突が生じていることを示す情報を、RAMに書き込む(ステップS27)。この場合に於いても、P1とP2との時間差L3から、衝突箇所を更に詳細に推定することも可能である。
【0063】
また、
図5(C)を参照して、タイミングP1とタイミングP2とが、ほぼ同時であれば(ステップS16のNO)、バンパ表皮14の中央部付近で衝突が生じたと判断する(ステップS17)。そして、故障が発生しており、且つ、車体の中央に衝突が生じていることを示す情報をRAMに書き込む(ステップS18)。
【0064】
以上のステップにより、停車中に車両10の車両前部に衝撃が生じたことを記録することが可能となり、更に、衝撃が生じた部位を推定することが出来る(ステップS29)。
【0065】
図6に示すフローチャートに基いて、停車後に車両10のエンジンを始動させた後の歩行者衝突検知装置11の動作を説明する。以下に述べる動作は、エンジンが始動された後に行われる。
【0066】
運転者が車両10を走行させるべくエンジンを始動させると(ステップS50)、RAM内の故障検知結果を参照する(ステップS51)。
【0067】
そして、RAMの内部に、故障を検知した情報が格納されていれば(ステップS52のYES)、警告灯を点灯する。例えば、車両10のインスツルメントパネルの特定部分に配置された警告灯を点灯させる。これにより、運転者は、車両10の歩行者衝突検知装置11が故障していることを認知することができるので、歩行者衝突検知装置11が故障した状態で車両10を運転することが防止される。
【0068】
一方、RAMの内部に、故障を検知した情報が格納されていなければ(ステップS52のNO)、通常の起動を行い、警告灯は点灯しない。
【0069】
以上のように、本形態では、エンジン始動時に歩行者衝突検知装置11の故障の有無を確認し、故障の恐れがある場合や、故障なしの判定が出来ない場合に、警告灯を点灯させている。これにより、歩行者衝突検知装置11が故障している状態で、車両10が走行してしまうことが防止される。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更が可能である。