【実施例1】
【0014】
以下、本発明の実施例を図に従って説明する。
図1乃至
図4に示すように、本発明に係るワーク加工装置1は、加工手段3と、ワークWが載置されて支持(保持)するワーク支持手段5と、ワークWの被加工箇所裏面を支持(保持)する裏面支持手段7とにより構成される。
【0015】
加工手段3は、例えば複数のアームが連結されると共に各アーム9が独立して旋回及び回動してハンド部を所定箇所へ移動するように制御される従来公知の多関節型産業ロボットにより構成される。上記ハンド部にはワーク加工具13が着脱可能に取り付けられたり、例えば先端側アームの長手方向と直交する方向及び該長手方向と一致する方向へそれぞれ移動する二次元移動ヘッドや可動体にワーク加工具13が着脱可能に取り付けられたり、更に後述するように上記長手直交方向、上記長手方向、上記長手直交方向及び長手方向と直交する方向へそれぞれ移動する三次元移動ヘッド15を設けてワーク加工具13が着脱可能に取り付けられる。
【0016】
ワーク加工具13としてはワークWの被加工箇所に孔を形成するドリル等の穿孔具、ワークWにおける被加工箇所としての周縁や開口Wa内周縁のバリ等を切削除去したり、開口Waを所要の内径に切削加工したりするエンドミル、ワークWを切断したり、孔を形成したりする切断刃やレーザ光出力ヘッド等のいずれであってもよい。また、ワークWとしては、車種ごとに大きさや形状が異なる合成樹脂製の車両用バンパー、車両用内装パネル(ダッシュパネル、ドアパネル等)に適用される。
【0017】
上記三次元移動ヘッド15のX軸フレーム17は、先端側アーム9の長手直交方向(以下、X軸方向とする。)へ所定の長さで延出し、その長手方向中間部が先端側アーム9に内蔵された数値制御可能なサーボモータ等の電動モータ(図示せず)の出力軸に固定される。該X軸フレーム17にはX軸可動体19がX軸方向へ移動可能に支持され、該X軸可動体19はX軸移動部材21によりX軸方向へ数値制御可能に往復移動される。
【0018】
上記X軸可動体19には上記X軸と直交する方向(先端側アーム9の長手方向と一致するY軸方向)へ延出するY軸フレーム23の基端部が固定され、該Y軸フレーム23にはY軸可動体25がY軸方向へ移動可能に支持される。該Y軸可動体25はY軸移動部材27によりY軸方向へ数値制御可能に往復移動される。
【0019】
上記Y軸可動体25にはX軸及びY軸方向と直交する方向(Z軸方向)へ延出するZ軸フレーム29のZ軸方向中央部が固定され、該Z軸フレーム29にはZ軸可動体31がZ軸方向へ移動可能に支持される。該Z軸可動体31はZ軸移動部材33によりY軸方向へ数値制御可能に往復移動される。
【0020】
上記X軸移動部材21、Y軸移動部材27及びZ軸移動部材33は対応するX軸フレーム17、Y軸フレーム23及びZ軸フレーム29内にてそれぞれの長手方向に軸線を有して回転可能に軸支されると共に対応するX軸可動体19、Y軸可動体25及びZ軸可動体31に設けられたナット(図示せず)に噛合わされる送りねじ(図示せず)と、それぞれの送りねじに駆動連結される数値制御可能なサーボモータ等の電動モータとにより構成され、各電動モータの駆動に伴って対応するX軸可動体19、Y軸可動体25及びZ軸可動体31をそれぞれの方向へ移動させる。なお、符号21,27及び33はX軸移動部材21、Y軸移動部材27及びZ軸移動部材33の一部を構成する各電動モータを示す。
【0021】
上記Z軸可動体31には上記したワーク加工具9が取り付けられる。図はワークに予め形成された開口Waの内周円を切削加工するエンドミルを取り付けた例を示し、Z軸可動体31にZ軸方向へ軸線を有した電動モータ35の出力軸に固着されたスピンドルに対してチャック等(図示せず)を介して着脱可能に取り付けられる。
【0022】
ワーク支持手段5は、上記加工手段3により加工されるワークWを位置決め状態で支持(保持)するもので、本体37の図示する後側(加工手段3側)の図示する左右側にてワークWの長手方向幅に応じた間隔を設けて立設される左右一対の第1支持部材39、本体37の図示する前側の図示する左右側にてワークWの長手方向幅に応じた間隔を設けて立設される左右一対の第2支持部材41及び図示する前後方向及び左右方向の中間部に立設される中央支持部材43により構成される。
【0023】
これら第1及び第2支持部材39,41と中央支持部材43はワークWの裏面に対して支持部39a、41a、43aを当接して支持したり、先端部に設けられた吸着パッド(図示せず)によりワークWの裏面を吸着したりして保持する。
【0024】
各第1及び第2支持部材39,41及び中央支持部材43としては、本出願人が所有する、例えば特許5787423号発明のようにワークWの大きさや形状等に対応して各第1支持部材39を図示する左右方向及び上下方向へ、また各第2支持部材41を図示する前後方向、左右方向及び上下方向、更に中央支持部材43を上下方向へそれぞれ位置調整可能に構成したものであってもよい。ワークWの大きさや形状等に対応して各第1及び第2支持部材39,41及び中央支持部材43を上記した方向へそれぞれ移動する機構に付いては上記した特許5787423号発明に記載されているため、その詳細な説明を省略する。
【0025】
上記中央支持部材43の左右両側で第1支持部材39寄りの本体37には、裏面支持手段7がそれぞれ設けられる。各裏面支持手段7は、上記加工手段3と同様に複数本のアーム45が互いに揺動及び回動するように連結された多関節型産業ロボットで、先端側アーム45の先端部に設けられた後述する吸着パッド47を三次元移動してワークW裏面における複数の加工箇所周縁に位置するように駆動制御される。
【0026】
上記裏面支持手段7の先端側アーム45にはワークWの裏面に近接または当接して切削屑を集塵する集塵部材49が取付け部材51を介して取り付けられる。該集塵部材49は例えば円筒形状で、基端側(ワークW裏面に近接または当接する端部と反対側)の開口49aにガラス板、透明アクリル板等の透過板53が取り付けられて閉鎖されている。
【0027】
集塵部材49における基端側の外周面には内部と連通する接続口部49bが形成され、該接続口部49bには負圧集塵装置(図示せず)に接続される集塵パイプ55が接続されている。また、上記透過板53の外側に応じた取付け部材51には上記集塵部材49の中心軸線と一致する方向に軸線を向けたCCDカメラ等の撮像部材57が取り付けられている。更に、上記集塵部材49の先端側外周には負圧発生装置(図示せず)に接続され、ワークW裏面に対する当接に伴って弾性変形して伸縮する吸着パッド47aを有した吸着保持部材47が取り付けられている。
【0028】
なお、上記吸着保持部材47にはリミットスイッチ等の吸着検知器(図示せず)が取り付けられ、該吸着検知器はワークW裏面に対する圧接により吸着パッド47aが弾性変形して縮小した際に裏面に検知ロッドが当接して吸着したことを検知する。
【0029】
次に、加工位置の位置ずれ補正可能なワーク加工装置1の制御概略を説明すると、
図5において制御手段58のCPU59にはプログラム記憶手段61及び作業データ記憶手段63が接続され、プログラム記憶手段61には加工手段3を駆動制御してワークWにおける複数個所の被加工箇所に所要の加工を実行するためのプログラムデータ、ワーク支持手段5に載置されたワークWを加工する際に加工位置と被加工位置の位置ずれを検知して補正するためのプログラムデータ等が記憶される。
【0030】
また、作業データ記憶手段63はワークWがワーク支持手段5に正規の位置決め状態で支持(保持)された状態でワークWに設定された被加工位置における加工原点に関する三次元位置データを記憶する加工原点データ記憶領域65、加工原点から三次元移動ヘッド15を駆動して移動するワーク加工具13によりワークWに所要の加工を実行する加工データを記憶する加工データ記憶領域67、ワークWがワーク支持手段5に正規の位置決め状態で支持(保持)された際に撮像部材57により撮像されたワークW裏面における被加工箇所の基準撮像データを記憶する基準撮像データ記憶領域69、ワークの加工時にワーク支持手段5にワークWが実際に支持(保持)された際に撮像部材57により撮像されたワークW裏面における被加工箇所の実撮像データを記憶する撮像データ記憶領域71及び後述する比較判別手段75により判別された少なくとも二次元位置補正データを記憶する補正データ記憶領域73、補正データ記憶領域73に記憶された二次元位置補正データに基づいて補正された補正後加工原点データや加工データ記憶領域67から読み出された加工作業に必要な加工データを記憶する作業バッファ領域75等が設けられている。
【0031】
加工原点データ記憶領域65に記憶される加工原点データは、例えばワーク支持手段5に対してワークWを正規の位置決め状態で支持(保持)した状態で各アーム9を旋回及び回動制御してワーク加工具13を被加工箇所の加工原点へ移動させることにより教示入力する方法又は被加工箇所の加工原点の三次元位置座標データを直接数値入力する方法により行う。
【0032】
CPU59には比較判別手段77が接続され、ワークWを加工する際にワーク支持手段5に支持されたワークWの被加工箇所裏面に吸着パッド47が吸着して吸着検知器から吸着検知信号が出力されたタイミングで撮像部材57により撮像されて撮像データ記憶領域71に記憶された撮像データの加工原点と基準撮像データ記憶領域69に記憶された基準撮像データの加工原点を比較して少なくともX軸及びY軸方向に対する加工原点の位置ずれ量を判別して補正データとして補正データ記憶領域73に記憶させる。
【0033】
CPU59には加工手段駆動制御手段79が接続され、該加工手段駆動制御手段79は加工位置データ記憶領域65に記憶されたワークWに設定された被加工位置の三次元位置データに基づいて加工手段3を駆動制御してワーク加工具13を加工位置へ移動制御させる。
【0034】
CPU59には移動ヘッド駆動制御手段81が接続され、移動ヘッド駆動制御手段81は加工データ記憶領域67に記憶された加工データに基づいて三次元移動ヘッド15を駆動制御して移動するワーク加工具13によりワークWに所要の加工を実行させる。
【0035】
次に、ワーク加工装置による加工位置補正作用及び方法を説明すると、ワーク支持手段5の第1及び第2支持部材39,41及び中央支持部材41に、開口Waの内周縁が切削加工されるワークWを載置して支持(保持)させた後、裏面支持部材7の各アーム45を加工原点データ記憶領域65に記憶された加工原点データに基づいて旋回及び回動制御して集塵部材49を、その上端開口がワークW裏面の開口Wa周縁に近接または当接するように移動させる。このとき、ワークW裏面の開口Wa周縁に対して吸着パッド47を圧接してワークW裏面を吸着保持させる。(
図6参照)
【0036】
上記状態にて吸着検知器から出力される吸着検知信号に基づいて撮像部材57を撮像駆動して開口Waを含む周縁を撮像し、ワーク支持手段5にワークWが実際に支持された状態における開口周縁の撮像データを撮像データ記憶領域71に記憶させる。
【0037】
比較判別手段77は撮像データ記憶領域71に記憶された撮像データと基準撮像データ記憶領域69に記憶された上記開口Waを含む周縁の基準撮像データとを比較し、両者の撮像データが一致している場合には、CPU63は加工手段駆動制御手段79に加工原点データ記憶領域65に記憶された加工原点データを実加工原点データとして、また加工データ記憶領域67に記憶された上記開口Waに付いての加工データを読み出して作業バッファ領域75にそれぞれ記憶させる。(
図7参照)
【0038】
加工手段駆動制御手段79は上記作業バッファ領域75に記憶された実加工原点データに基づいて各アーム9を旋回及び回動制御してワーク加工具13を上記開口Waの加工原点へ移動させた後、移動ヘッド駆動制御手段81は作業バッファ領域75に記憶された上記開口Waに付いての加工データに基づいて各アーム45をそれぞれ旋回及び回動制御してワーク加工具13を加工原点から順次二次元方向へ移動制御することにより開口Waの内周縁を切削加工させる。
【0039】
一方、撮像データ記憶領域71に記憶された撮像データと基準撮像データ記憶領域69に記憶された上記開口Waの基準撮像データとが不一致の場合には、上記比較判別手段77は基準撮像データ及び撮像データに予め設定された加工原点における二次元方向の位置ずれ量を判別して補正データ記憶領域73に補正データを記憶させると、CPU63は補正データ記憶領域73に記憶された補正データに基づいて補正された上記開口Waの実加工原点データを、また上記開口Waに付いての加工データをそれぞれ作業バッファ領域75に記憶させる。(
図8参照)
【0040】
そして上記と同様に加工手段駆動制御手段79は上記作業バッファ領域75に記憶された実加工原点データに基づいて各アーム9を旋回及び回動制御してワーク加工具13を上記開口Waの実加工原点へ移動させた後、移動ヘッド駆動制御手段81は作業バッファ領域75に記憶された上記開口Waに付いての加工データに基づいて各アーム45をそれぞれ旋回及び回動制御してワーク加工具13を実加工原点から順次二次元方向へ移動制御することにより開口Waの内周縁を切削加工させる。
【0041】
更に、ワーク支持手段5によるワークWの支持位置が大きくずれて撮像部材57により開口Waの全体を撮像できない場合、即ち、開口Waの撮像データの一部が欠落している場合には、位置ずれ量が大きく、補正不能と判断してエラー信号を出力し、作業者にワークWの支持状態をやり直すように報知する。(
図9参照)
【0042】
なお、上記した開口Waの切削加工時においては、少なくとも二次元方向へ移動するワーク加工具13による切削加工に伴って切削屑が排出されるが、排出される切削屑は開口Waの周縁に近接または当接して負圧形成され集塵部材49により切削屑拐取装置へ回収され、ワークWへの付着を防止している。
【0043】
また、上記説明はワーク手に設けられた開口Waの内周縁を切削加工する場合を例に説明し、開口Waを含む基準撮像データと実撮像データに基づいて位置ずれ量を検知して補正データを演算する構成及び方法としたが、ワークWの裏面に開口等のように位置ずれ判断の基準になる特徴部がない場合には、ワークWの被加工箇所裏面に位置ずれの判断基準になる十字罫書き線や突部等のマークを予め設けておけばよい。
【0044】
上記説明は、集塵部材49、吸着保持部材と一体に撮像部材57を設け、吸着保持部材によりワークWの被加工箇所裏面を保持して位置ずれを規制した状態で被加工箇所周縁の裏面を撮像して位置ずれを検出する構成及び方法としたが、本発明においては必ずしも撮像部材を集塵部材49、吸着保持部材47と一体に設ける必要はなく、撮像部材のみを被加工箇所に応じて少なくとも二次元方向(X軸及びY軸方向へ移動可能に設けて被加工箇所周縁の裏面を撮像して位置ずれを検出する構成及び方法であってもよい。
【0045】
この場合にあっては、ワークにおける被加工箇所の位置ずれを規制した状態で被加工箇所裏面を撮像する必要から吸着保持部材と撮像部材を一体に設け、ワークの被加工箇所周縁(撮像箇所周縁)を保持して位置ずれを規制した状態で撮像するのが望ましい。また、撮像手段に切削屑が付着して撮像不能になるのを回避するため、撮像部材を上記吸着保持部材と共に集塵手段と一体に設けて撮像部材に切削屑が付着して撮像不能になるのを防止するのが望ましい。
【0046】
しかし、少なくとも二次元方向へ移動可能な撮像部材のみとする場合にあっては、撮像時に撮像部材を被加工箇所裏面へ移動すると共に加工時には切削屑の付着を回避することが可能な場所へ退避可能にするようにすればよい。
【0047】
上記説明は、撮像データと基準撮像データとが不一致の場合に比較判別される補正データに基づいて予め設定されたワーク加工具の加工原点データを補正し、補正された実加工原点データに基づいてワーク加工具を移動制御して実加工原点へ移動させる構成及び方法としたが、設定加工原点データに基づいてワーク加工具を設定された加工限定位置を移動させた後に補正データに基づいて少なくともX軸移動部材21及びY軸移動部材27を駆動制御してワーク加工具を設定加工原点位置から実加工原点位置へ移動して加工原点位置を補正した後に加工を実行する構成及び方法としてもよい。