(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
繊維強化複合材の製造に用いられる連続した長尺シート状の強化繊維基材であって同じ方向に配向された強化繊維と熱可塑性樹脂とから成ると共に前記強化繊維の配向方向が当該強化繊維基材の長手方向に対し角度を為すように形成された強化繊維基材の製造方法であって、
シート状の強化繊維材料片であって複数本の前記強化繊維が一方向に引き揃えられて熱可塑性樹脂によって集束された強化繊維材料片を、その前記強化繊維の配向方向が前記長手方向に対し角度を為すかたちでテーブル上に敷置する敷置工程であって、前記長手方向と平行な方向であると共に前記テーブル上に位置する前記強化繊維基材を送る方向である送り方向に関し、前記テーブル上に位置する前記強化繊維基材に対する前記送り方向における後方で前記強化繊維材料片を敷置する敷置工程と、
前記敷置工程で敷置された前記強化繊維材料片である後行の前記強化繊維材料片を前記テーブル上に位置する前記強化繊維基材の後側の側縁に対し前記長手方向において付き合わせた状態とした上で、前記強化繊維基材の後側の側縁と前記後行の前記強化繊維材料片の前記強化繊維基材側の側縁とを溶着することで前記後行の前記強化繊維材料片が前記強化繊維基材と一体化された状態とする溶着工程と、
1回又は複数回の前記敷置工程及び前記溶着工程が行われる毎に、前記強化繊維基材が前記送り方向へ送られるように、前記テーブルの前方に設けられた巻取機構により前記強化繊維基材を巻き取る工程とを含む
ことを特徴とする強化繊維基材の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明による強化繊維基材の製造方法に関し、その一実施形態(実施例)を説明する。なお、以下で説明する実施例は、
図1等に示す自動積層装置をベースとした装置によって本発明を実現する例である。また、以下で説明する実施例において、その強化繊維基材の製造に用いられる強化繊維材料片は、強化繊維としての炭素繊維を一方向に引き揃えて熱可塑性樹脂(例えば、ポリアミド系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂等)を含浸させて形成された熱可塑性のUDプリプレグによる材料片であって細幅シート状を為す材料片であるものとする。さらに、本発明による強化繊維基材は長尺シート状を為すものであり、本実施例では、その強化繊維基材は、強化繊維(炭素繊維)の配向方向が、その強化繊維基材の長手方向及びその長手方向と水平方向において直交する強化繊維基材の幅方向に対し角度を為すように形成されたものとする。
【0017】
図1〜3に示す装置は、本実施例において本発明による強化繊維基材の製造方法を実現するための自動積層装置をベースとした装置(以下、「基材形成装置」と言う。)である。なお、その基材形成装置は、本発明に関わる部分及び供給ヘッド(ヘッド装置)の一部の構成を除いては、基本的には、特開2015−217540号公報に開示された自動積層装置と同様の構成を有する装置である。
【0018】
図1に示すように、基材形成装置は、前記した強化繊維材料片の元となる強化繊維材料の原反ロール21を搭載する供給ヘッド20と、強化繊維材料片が順次敷置されてシート状の強化繊維基材が形成されるテーブル40と、供給ヘッド20を吊り下げるかたちで支持する(吊持する)門型の支持機構50であって強化繊維材料片をテーブル40の上面上に敷置するためにテーブル40上で供給ヘッド20を移動させる支持機構50とを備えている。また、基材形成装置は、テーブル40上でシート状に形成された強化繊維基材を巻き取る巻取機構を備えている。
【0019】
それらの各構成要素について、テーブル40は、平面視において矩形状を為す天板41と、天板41を支持する支持台43とで構成されている。そして、そのテーブル40における天板41の上面が、強化繊維材料片を敷置する敷置面となる。
【0020】
支持機構50は、前記のように門型の構造を有するものであって、一対のサイドレール51、51、各サイドレール51に対応させて設けられた一対のコラム53、53、及び両コラム53、53間に架設されたクロスビーム55から成るガントリ部と、ガントリ部におけるクロスビーム55上に設けられて供給ヘッド20を支持するサドル部57とを備えている。
【0021】
その支持機構50について、ガントリ部における一対のサイドレール51、51は、支持機構50のベースとなる部分であって、長尺角柱状の基部51aを主体とする部分である。そして、その一対のサイドレール51、51は、その長手方向がテーブル40における天板41の長辺方向と平行を為す向きで、テーブル40に対し、天板41の短辺方向における両側において床面上に設置されている。また、その各サイドレール51において、基部51aの上面には、対応するコラム53の前記長手方向における移動を案内するためのガイドレール51bが設けられている。なお、前記のようにテーブル40(天板41)の長辺方向とサイドレール51の長手方向とは同じ方向であり、それらの方向は基材形成装置における前後方向に一致する。そこで、以下では、それらの方向及びそれと平行な方向を「前後方向」と称して説明する。
【0022】
各コラム53は、台座部53a、及び台座部53a上に立設された一対の支柱53b、53bで構成されている。そして、各コラム53は、その台座部53aにおいて対応するサイドレール51における基部51a上に載置された状態で設けられると共に、台座部53aがサイドレール51におけるガイドレール51bに案内されるかたちでサイドレール51の前後方向に移動可能に設けられている。また、クロスビーム55は、長尺角柱状の梁部材であって、その両端部のそれぞれがコラム53における各支柱53bの上端に取り付けられるかたちで、一対のコラム53、53間に架設されている。但し、そのようにクロスビーム55が架設された状態において、両コラム53、53は、サイドレール51の前後方向における位置が一致する状態となっており、それにより、クロスビーム55は、その長手方向がサイドレール51の前後方向と直交する方向(テーブル40(天板41)の短辺方向)に一致する状態となっている。
【0023】
そして、そのような梁構造を有するガントリ部において、各サイドレール51とそれに対応するコラム53との間には、例えばラック、ピニオンギア、駆動モータ等から成る駆動機構(いずれも図示略)が設けられている。すなわち、ガントリ部は、一対のコラム53、53及び両コラム53、53間に架設されたクロスビーム55が、その駆動機構により、サイドレール51の前後方向に沿って移動するように駆動される構成となっている。なお、前記のように、クロスビーム55の長辺方向とテーブル40(天板41)の短辺方向とは同じ方向であり、それらの方向は基材形成装置における幅方向に一致する。そこで、以下では、それらの方向及びそれと平行な方向を全て「幅方向」と称して説明する。
【0024】
サドル部57は、供給ヘッド20を支持機構50に対し支持された状態とするための機構であって、前記のように構成されたガントリ部におけるクロスビーム55上に設けられている。そのサドル部57は、クロスビーム55上で幅方向に移動可能に設けられた板状のサドルベース57aを主体とする。また、そのサドル部57は、サドルベース57aにおけるクロスビーム55側の面から下方へ向けて突出するようなかたちで、サドルベース57aに対し回転自在に支持された支持シャフト57bを有している。そのため、ガントリ部におけるクロスビーム55には、その支持シャフト57bの配置を許容すると共に幅方向におけるサドル部57の移動を許容するために、クロスビーム55を上下方向に貫通すると共にその幅方向に延在する孔55aが形成されている。そして、サドル部57における支持シャフト57bは、その孔55aに挿通され、クロスビーム55の下方まで延びている。
【0025】
また、サドル部57は、サドルベース57a上に設けられたヘッド駆動機構を有している。そのヘッド駆動機構は、支持シャフト57bを回動させるための構成であり、駆動モータ57c及び駆動モータ57cと支持シャフト57bとを連結して駆動モータ57cの出力軸の回転を支持シャフト57bに伝達する駆動伝達機構57dとで構成されている。従って、サドル部57は、その支持シャフト57bが、鉛直方向に延びる自身の軸心を回転中心として、そのヘッド駆動機構によって回動される構成となっている。
【0026】
その上で、支持機構50においては、そのサドル部57とクロスビーム55との間に、サドル部57を幅方向に沿って移動させるための駆動機構が設けられている。図示の例はその一例であって、その駆動機構は、サドル部57におけるサドルベース57aの側面に対し出力軸の軸心を鉛直方向に向けて取り付けられた駆動モータ59a、クロスビーム55の側面に取り付けられたラック59b、及び駆動モータ59aの出力軸に取り付けられると共にラック59bと噛合するピニオンギア59cで構成されている。従って、支持機構50は、その駆動機構により、クロスビーム55上においてサドル部57が幅方向に移動するように駆動される構成となっている。
【0027】
強化繊維材料を供給するための供給ヘッド20は、以上のように構成された支持機構50におけるサドル部57の支持シャフト57bに取り付けられることで、支持機構50におけるクロスビーム55に吊持された状態で設けられている。そして、支持機構50において、両コラム53、53がサイドレール51、51上で前後方向に移動するように駆動される、及び/又は、サドル部57がクロスビーム55上で幅方向に移動するように駆動されることで、供給ヘッド20は、テーブル40の上方において、前後方向、幅方向、あるいは前後方向及び幅方向と交差する方向へ移動する。
【0028】
その供給ヘッド20は、一対の支持板23、23を含む支持フレームを主体としており、その支持板23、23間で前記した原反ロール21を支持している。なお、その原反ロール21は、長尺テープ状の強化繊維材料がリール(巻枠)に巻回されて形成されたものである。また、その原反ロール21における強化繊維材料は、本実施例では、強化繊維としての炭素繊維による熱可塑性のUDプリプレグを細幅テープ状とした材料(以下、「プリプレグテープPT」と言う。)である。
【0029】
そして、基材形成装置においては、その供給ヘッド20における原反ロール21からプリプレグテープPTが引き出されると共に、そのプリプレグテープPTから切り出された強化繊維材料片としてのプリプレグテープ片PT’がテーブル40(天板41)上に順次敷置される。そのため、供給ヘッド20は、そのようなプリプレグテープ片PT’のテーブル40上への敷置を実現するための各機構を支持フレームの内部(支持板23、23間)に備えている。
【0030】
図2は、そのような供給ヘッド20における支持フレーム内の構成を概略的に示した図である。
図2に示すように、供給ヘッド20においては、原反ロール21から引き出されたプリプレグテープPTがガイドロール22に巻き掛けられて転向され、その敷置を実行する敷置機構27へ向けて送り出されている。そこで、その供給ヘッド20において、ガイドロール22と敷置機構27との間には、それぞれが一対のロールから成る2組のニップロール24、25が設けられている。
【0031】
各ニップロール24、25は、駆動機構(図示略)によって予め設定された回転速度で回転駆動される駆動ロール24a、25aと、その駆動ロール24a、25aに対し接離可能に設けられると共にプリプレグテープPTの敷置時において駆動ロール24a、25aに圧接されて従動回転する従動ローラ24b、25bとで構成されている。そして、ガイドロール22を経たプリプレグテープPTは、その両ニップロール24、25に挟持された状態で導かれ、各ニップロール24、25における駆動ローラ24a、25aが回転駆動されることで敷置機構27側へ送られる。
【0032】
また、供給ヘッド20は、プリプレグテープPTが予め定められた長さのプリプレグテープ片PT’として敷置されるように、プリプレグテープPTからプリプレグテープ片PT’を切り出すためのカッタ装置26を備えている。そのカッタ装置26は、ニップロール24、25間に設けられており、プリプレグテープPTを切断するためのカッタ26aと、カッタ26aと上下方向において対向するように設けられた受け台26bとを備えている。なお、その受け台26bは、その上面である受け面の位置がニップロール24、25間におけるプリプレグテープPTの経路と上下方向において略一致するように設けられている。
【0033】
また、そのカッタ装置26は、カッタ26aが受け台26bから離間した退避位置とカッタ26aの刃先が受け台26bの受け面に接する切断位置との2位置間でカッタ26aを変位させるための駆動機構(図示略)を備えている。そして、プリプレグテープPTがニップロール24、25間に亘る状態(両ニップロール24、25に挟持された状態)で、受け面26bへ向けてカッタ26aが駆動されることで、プリプレグテープPTが切断される。
【0034】
敷置機構27は、ニップロール25から送り出されたプリプレグテープPTをテーブル40(天板41)上に敷置するための機構であって、プリプレグテープPTを上方から押さえ付けてテーブル40の所望の位置に敷置するための敷置ガイド27aを備える。そして、敷置機構27は、その敷置ガイド27aがボールねじ機構によって支持されて上下方向に変位するように駆動される構成となっている。
【0035】
具体的には、敷置機構27は、駆動モータ27b、駆動モータ27bの出力軸に連結されたねじ軸27c、及びねじ軸27cに螺合されたナット27dから成るボールねじ機構を含み、敷置ガイド27aがブラケット27eを介してボールねじ機構におけるナット27dに支持された構成となっている。また、その敷置機構27は、ねじ軸27cの回転に対するナット27d及びブラケット27eの共周りを阻止すると共にブラケット27e及び敷置ガイド27aの上下方向の移動を案内するガイド(図示略)を備えている。その構成により、敷置機構27は、駆動モータ27bによるねじ軸27cの回転駆動に伴い、その回転方向によってナット27d及びブラケット27eが上方又は下方へ向けて変位し、それに従って敷置ガイド27aが上下方向に変位する構成となっている。
【0036】
そして、その敷置機構27においては、敷置ガイド27aの上下方向における位置に関し、プリプレグテープPTを敷置する際の位置であってテーブル40の前記敷置面に近接した位置である作動位置、及びテーブル40の前記敷置面から上方へ離間した位置である退避位置の2位置間で敷置ガイド27aが変位するように、駆動モータ27bの駆動が制御される。
【0037】
以上で説明した構成によれば、前述のように、支持機構50においてコラム53、53及び/又はサドル部57が前記のように移動することで、供給ヘッド20がテーブル40上を移動する。また、供給ヘッド20においては、その移動に合せた送り量で供給ヘッド20におけるニップロール25から敷置機構27側へプリプレグテープPTが送られると共に、敷置機構27における敷置ガイド27aが前記作動位置へ下降した状態とされてニップロール25から送り出されたプリプレグテープPTが敷置ガイド27aによってテーブル40上に押さえ付けられた状態とされる(
図2(a))。それにより、その供給ヘッド20の移動に伴い、テーブル40上においてプリプレグテープPTが供給ヘッド20の通過経路上に敷置された状態となる。
【0038】
その上で、供給ヘッド20においては、予め定められた長さのプリプレグテープPTが原反ロール21から引き出された時点で、カッタ装置26によりも上流側(プリプレグテープPTの経路における原反ロール21側)に位置するニップロール24における駆動ローラ24aの回転が停止されると共に、ニップロール24、25間に亘るプリプレグテープPTがカッタ装置26によって切断される。それにより、プリプレグテープPTにおけるその切断位置よりも上流側の部分の送りが停止されて原反ロール21からのプリプレグテープPTの引き出しが停止された状態となる。但し、プリプレグテープPTにおける前記切断位置よりも先端側の部分(プリプレグテープ片PT’)は、下流側のニップロール25によって敷置機構27側へ送られる。その結果として、予め定められた長さのプリプレグテープ片PT’が、供給ヘッド20の移動方向と一致した方向でテーブル40上に敷置される。このように、基材形成装置においては、供給ヘッド20の移動を伴ってプリプレグテープ片PT’の敷置工程が実行される。
【0039】
以上のような基材形成装置において、プリプレグテープ片PT’は、先に敷置された先行のプリプレグテープ片PT’に対し、幅方向に位置を合せた状態で、前後方向における後方に並べられるかたちで敷置される。そして、その順次敷置されたプリプレグテープ片PT’がテーブル40上において接合されることで、そのプリプレグテープ片PT’による長尺シート状の強化繊維基材(以下、「プリプレグシートPS」と言う。)が形成される。従って、そのプリプレグシートPSの長手方向は前記した前後方向と一致し、その幅方向は前記した幅方向と一致する。因みに、ここで言う前後方向における「後方」とは、そのように形成される強化繊維基材(プリプレグシートPS)の送り方向であって後述の巻取機構が設けられる側を前方としたときの後方(その前方とは反対側の方向)である。
【0040】
なお、前記した先行のプリプレグテープ片PT’は、それに続いてその後方に敷置される後行のプリプレグテープ片PT’が敷置される段階では、既にプリプレグシートPSに一体化された状態となっている。従って、その後行のプリプレグテープ片PT’は、実際には、プリプレグシートPSに対しその後方において敷置される。但し、そのプリプレグシートPSの後端部を形成しているのはその後行のプリプレグテープ片PT’に対する先行のプリプレグテープ片PT’であるため、後行のプリプレグテープ片PT’は、前記のように、それに対する先行のプリプレグテープ片PT’の後方に並べられるかたちで敷置される、とみなすことができる。
【0041】
その上で、本実施例では、その形成される強化繊維基材としてのプリプレグシートPSは、前述のように、強化繊維(炭素繊維)の配向方向がその長手方向(前後方向)及び幅方向に対し予め定められた所定の角度を為すものとなっている。一方で、前記のように敷置されるプリプレグテープ片PT’における強化繊維の配向方向は、その長手方向に沿った方向となっている。従って、前記した敷置工程は、供給ヘッド20をテーブル40の前後方向及び幅方向に対し前記所定の角度を為す方向に移動させるかたちで行われる。なお、以下では、その所定の角度については、幅方向に対する角度で表し、その角度を30°として説明する。
【0042】
因みに、その敷置工程における供給ヘッド20の移動は、ガントリ部においてコラム53、53及びクロスビーム55を後方へ移動させつつ、供給ヘッド20を支持するサドル部57をクロスビーム55上で幅方向に移動させることにより実現される。また、その移動時において、供給ヘッド20は、両支持板23、23がその移動方向と平行を為すと共に、原反ロール21が敷置機構27よりも移動方向における前側に位置する状態とされる。そして、その供給ヘッド20の状態は、支持機構50におけるサドル部57において、その供給ヘッド20を支持する支持シャフト57bがヘッド駆動機構によって回動されることで為される。
【0043】
また、前記のように順次敷置されるプリプレグテープ片PT’によってシート状に形成されるプリプレグシートPSは、テーブル40の前方に設けられた巻取機構における巻軸45によって巻き取られる。なお、その巻取機構については、公知の装置と同様のものであるために詳細な説明は省略するが、巻軸45を支持する支持機構、及び支持機構に支持された巻軸45を回転駆動する駆動機構(いずれも図示略)等で構成されている。また、巻取機構は、テーブル40と巻軸45との間に設けられたガイドロール47を有している。そして、テーブル40上で形成されたプリプレグシートPSは、ガイドロール47を経由して巻軸45側へ導かれ、その巻軸45に巻き取られることで、テーブル40上において前方へ送られる。
【0044】
さらに、本実施例の基材形成装置は、既に形成されたプリプレグシートPSに対し、テーブル40上において新たに敷置されたプリプレグテープ片PT’(後行のプリプレグテープ片PT’)を接合するための構成として、テーブル40上に設けられた位置合せ機構、及び供給ヘッド20に設けられた溶着機構29を備えている。それらの構成について、詳しくは以下の通りである。
【0045】
位置合せ機構は、先に敷置されたプリプレグテープ片PT’によって形成されたシート状のプリプレグシートPSに対し、新たに敷置されたプリプレグテープ片PT’を前後方向において隙間無く隣接した状態とするための機構である。そして、その位置合せ機構は、プリプレグテープ片PT’をプリプレグシートPSの後側(前後方向における前記後方の側)の側縁(以下、「後縁」と言う。)に突き合わせる押接プレート61を含む突合せ機構と、そのプリプレグテープ片PT’の位置を保持する位置保持機構63とを備える。
【0046】
その突合せ機構において、押接プレート61は、平面視において長尺矩形状を為す薄板状の部材であり、敷置されるプリプレグテープ片PT’の長手方向の寸法よりも大きい長辺方向の寸法を有する部材である。そして、その押接プレート61は、テーブル40上において、その長辺方向に延びる側面がプリプレグシートPSの前記後縁と平行を為す向きで、プリプレグシートPSの前記後縁から離間した位置に配置される。また、突合せ機構は、その押接プレート61をテーブル40上で変位させる駆動機構(図示略)を備えている。但し、その駆動機構は、プリプレグシートPSの前記後縁と直交する方向で押接プレート61を変位させるように構成されているものとする。それにより、その突合せ機構においては、押接プレート61は、前記側面がプリプレグシートPSの前記後縁に対し平行を為したまま、プリプレグシートPSの前記後縁に対し接近、離間するように駆動される。
【0047】
そして、その突合せ機構においては、前記した敷置工程によってプリプレグシートPSの前記後縁に沿ってプリプレグテープ片PT’が敷置された後、押接プレート61がプリプレグシートPS側へ変位するように駆動される。それにより、その新たに敷置されたプリプレグテープ片PT’は、押接プレート61によって押され、プリプレグシートPSの前記後縁に押し付けられた状態となる。その結果として、テーブル40上においては、そのプリプレグテープ片PT’が、プリプレグシートPSの前記後縁に突き合わされ、プリプレグシートPSに対し隙間無く隣接配置された状態となる。但し、その押接プレート61によるプリプレグテープ片PT’を押す量(あるいは力)は、その押す方向においてプリプレグテープ片PT’を変形させない(潰さない)程度に設定されているものとする。
【0048】
位置保持機構63は、前記のようにプリプレグシートPSに対し突き合わされた状態となったプリプレグテープ片PT’のプリプレグシートPSに対する位置を保持するための機構である。そこで、その位置保持機構63は、プリプレグシートPS及びプリプレグテープ片PT’を上方から押さえ付けて前記のようにプリプレグテープ片PT’の位置を保持する保持プレート63aを備えている。
【0049】
より詳しくは、位置保持機構63は、テーブル40上において幅方向に離間して配置されると共に前後方向に移動可能に設けられた一対の支脚ブロック63b、63b、及びその支脚ブロック63b、63b間に掛け渡されるかたちで設けられた支持梁63cを含み、保持プレート63aは、支持梁63cに吊下げられるかたちで設けられている。なお、テーブル40上には、幅方向における両側部のそれぞれに前後方向に延在するガイドレール41a、41aが設けられており、各支脚ブロック63bは、そのレール41aに案内されるかたちで前後方向に移動可能に設けられると共に、駆動機構(図示略)によって前後方向へ移動する構成となっている。
【0050】
また、支持梁63cは、その両端部において支脚ブロック63bに載置されるかたちでテーブル40の前記敷置面の上方に設けられている。但し、支持梁63cは、軸ピン等を介し、支脚ブロック63bに対し回動可能に連結されている。その上で、支持梁63cは、テーブル40上での前後方向における両支脚ブロック63b、63bの位置により、前記のように敷置されるプリプレグテープ片PT’に対し平面視において平行を為す、すなわち、幅方向に対し30°の角度を為すように設けられている。
【0051】
そして、保持プレート63aは、その支持梁63cに対し平面視において平行を為すと共に重複するような配置で、支持梁63cの下方に設けられている。但し、支持梁63cに対する保持プレート63aの支持は、保持プレート63aを上下方向に変位させる駆動手段(例えば、エアシリンダ/詳細略)を介して行われているものとする。従って、保持プレート63aは、その駆動手段によって下方へ向けて変位されることで、テーブル40上におけるプリプレグシートPSやプリプレグテープ片PT’を押さえ付けてその位置を保持することができる構成となっている。
【0052】
さらに、保持プレート63aは、
図3に示すように、板厚方向に貫通すると共にその長辺方向に延びるように形成された透孔63a1を有しており、狭幅の部分と広幅の部分とが両端部において連結されたような形状となっている。因みに、その狭幅の部分は敷置されたプリプレグテープ片PT’の位置を保持するための部分であり、広幅の部分はプリプレグシートPSの位置を保持するための部分である。また、その保持プレート63aに形成された透孔63a1は、後述する溶着機構29における溶着ヘッドが通過可能な大きさとなっている。
【0053】
なお、以上で説明した突合せ機構及び位置保持機構を備えた位置合せ機構においては、必要に応じて、幅方向に関しプリプレグシートPSに対するプリプレグテープ片PT’の位置を合せる機構が備えられる。
【0054】
溶着機構29は、前記のように供給ヘッド20に設けられており、プリプレグテープ片PT’をプリプレグシートPSに対し溶着するための溶着器29aを備える。この溶着器29aは、例えば、内蔵されたヒータの熱を溶着ヘッド29a1を介して対象に作用させる加熱溶着器である。但し、本発明におけるその溶着のために用いられる溶着器は、そのような加熱溶着器に限らず、赤外線溶着器や超音波溶着器、あるいはレーザ溶着器等であっても良い。
【0055】
その溶着機構29において、溶着器29aは、敷置機構27における敷置ガイド27aと同様に、ボールねじ機構によって支持されている。具体的には、溶着機構29は、駆動モータ29b、駆動モータ29bの出力軸に連結されたねじ軸29c、及びねじ軸29cに螺合されたナット29dから成るボールねじ機構を含み、溶着器29aがブラケット29eを介してボールねじ機構におけるナット29dに支持される構成となっている。また、その溶着機構29は、ねじ軸29cの回転に対するナット29d及びブラケット29eの共周りを阻止すると共にブラケット29e及び溶着器29aの上下方向の移動を案内するガイド(図示略)を備えている。その構成により、溶着機構29は、駆動モータ29bによるねじ軸29cの回転駆動に伴い、その回転方向によってナット29d及びブラケット29eが上方又は下方へ向けて変位し、それに従って溶着器29aが上下方向に変位する構成となっている。
【0056】
そして、その溶着機構29においては、溶着ヘッド29a1の上下方向における位置に関し、前記のような溶着が行われる際の位置であってテーブル40の前記敷置面に近接した位置である溶着位置、及びテーブル40の前記敷置面から上方へ離間した位置である退避位置の2位置間で溶着ヘッド29a1が変位するように、駆動モータ29bの駆動が制御される。但し、前記した敷置工程においては、その溶着機構29における溶着ヘッド29a1は、前記退避位置に位置した状態とされる。
【0057】
次に、以上のような構成を有する基材形成装置による長尺シート状の強化繊維基材としてのプリプレグシートPSの製造方法について説明する。
【0058】
先ず、その基材形成装置においては、前述のように、そのテーブル40上において、先に敷置された(先行の)プリプレグテープ片PT’によって形成されたプリプレグシートPSに対するその後方の隣接した位置に、プリプレグシートPSの前記後縁に沿った方向、すなわち、プリプレグシートPSの幅方向に対し30°の角度を為す方向で、(後行の)プリプレグテープ片PT’を敷置する敷置工程が行われる。なお、前述のように、敷置されるプリプレグテープ片PT’における強化繊維(炭素繊維)の配向方向は、そのプリプレグテープ片PT’の長手方向に沿った方向となっている。それに対し、敷置工程においては、プリプレグテープ片PT’は、プリプレグシートPSの幅方向に対し30°の角度を為す状態となるように敷置される。従って、そのようにプリプレグテープ片PT’が敷置された結果として、強化繊維(炭素繊維)の配向方向は、プリプレグシートPSの幅方向に対し30°の角度を為すかたちとなる。
【0059】
その敷置工程によって前記のようにプリプレグテープ片PT’が敷置された後、位置合せ機構における突合せ機構が駆動される。具体的には、その突合せ機構における押接プレート61が、プリプレグテープ片PT’へ向けてテーブル40上で変位するように駆動される。それにより、敷置されたプリプレグテープ片PT’は、押接プレート61によってプリプレグシートPS側へ押されてプリプレグシートPSの前記後縁に突き合わされ、プリプレグシートPSに対し隙間無く隣接配置された状態となる。
【0060】
なお、このプリプレグテープ片PT’をプリプレグシートPSの前記後縁に突き合わせる工程(突合せ工程)は、敷置されたプリプレグテープ片PT’とプリプレグシートPSの前記後縁との間の隙間を無くす工程である。但し、敷置工程においてプリプレグシートPSの前記後縁との間に隙間が無い状態にプリプレグテープ片PT’の敷置が行われ、且つ、テーブル40等の構成によってその隙間の無い状態が維持される(プリプレグテープ片PT’が動き難い状態となっている)場合には、この突合せ工程は省略される。従って、その場合は、その位置合せ機構における突合せ機構も不要となる。
【0061】
そして、前記のようにプリプレグテープ片PT’がプリプレグシートPSに対し隙間無く隣接配置された状態において、位置合せ機構における位置保持機構63が駆動される。具体的には、位置保持機構63は、先ず両支脚ブロック63b、63bが後方へ向けて移動するように駆動される。但し、その移動は、支持梁63c及び保持プレート63aが幅方向に対し為す角度(30°)を維持した状態で行われる。その上で、その移動は、前後方向に関し、保持プレート63aに形成された透孔63a1が、プリプレグシートPSとプリプレグテープ片PT’との隣接部分(プリプレグシートPSの前記後縁及びその前記後縁に突き合わされるプリプレグテープ片PT’の前記側縁)の上方に位置する状態となった時点で停止される。それにより、保持プレート63aは、平面視においてその透孔63a1の前後方向における中央に前記隣接部分が位置する配置となり、前記狭幅の部分がプリプレグテープ片PT’の上方に位置すると共に前記広幅の部分がプリプレグシートPSの上方に位置する状態となる。
【0062】
次いで、位置保持機構63は、保持プレート63aが前記のように配置された状態で、保持プレート63aが下方(プリプレグシートPS及びプリプレグテープ片PT’)へ向けて変位するように駆動される。それにより、位置保持機構63は、保持プレート63aにおける前記広幅の部分がプリプレグシートPSを前記後縁の近傍でテーブル40に対し押さえ付けると共に、前記狭幅の部分がプリプレグテープ片PT’をテーブル40に対し押さえ付けた状態となる。その結果として、プリプレグテープ片PT’は、その前記側縁がプリプレグシートPSの前記後縁に突き合わされた状態で、プリプレグシートPSに対する位置が保持された状態となる。そして、そのようにプリプレグテープ片PT’の位置を保持する工程(位置保持工程)が完了すると、突合せ機構は、その押接プレート61がプリプレグテープ片PT’から離間する方向へ変位するように駆動される。
【0063】
その上で、供給ヘッド20に設けられた溶着機構29により、プリプレグシートPSに対しプリプレグテープ片PT’を溶着する溶着工程が行われる。但し、その溶着工程は、本実施例では、供給ヘッド20を敷置工程における移動経路上で逆方向に移動させるかたちで行われるものとする。詳しくは、本実施例では、敷置工程が供給ヘッド20を一方向(例えば、
図3における左側から右(右上)側へ向けた方向)へ移動させるかたちで実行されると共に、敷置工程の開始位置へ戻すための供給ヘッド20の移動がその敷置工程におけるの移動経路に沿って逆方向(例えば、
図3における図の右側から左(左下)側)へ向けて行われるものとなっており、その上で、その戻すための供給ヘッド20の移動時において溶着工程が行われるものとする。
【0064】
なお、その溶着工程においては、供給ヘッド20は、前記した敷置工程において前記作動位置に位置する状態とされていた敷置ガイド27aが前記退避位置に位置する状態とされ、一方で、前記退避位置に位置した状態とされていた溶着ヘッド29a1が前記溶着位置に位置する状態とされる(
図2(b))。また、その状態では、溶着機構29(溶着器29a)における溶着ヘッド29a1は、前記した位置保持工程によりプリプレグシートPS及びプリプレグテープ片PT’を押さえ付けた状態となっている保持プレート63aにおける透孔63a1内に侵入した状態となっている。
【0065】
そして、その状態で供給ヘッド20を前記のように移動させると、溶着機構29における溶着器29aが、互いに突き合わされた状態となっているプリプレグシートPSの前記後縁(後側の側縁)及びプリプレグテープ片PT’の前記側縁上、すなわち、両者の隣接側の側縁上を移動し、それに伴い、その溶着器29aにおける溶着ヘッド29a1が、プリプレグシートPS及びプリプレグテープ片PT’における前記隣接側の側縁及びその周辺を含む側縁部(
図3において斜線で示す部分)をなぞるようなかたちで移動することとなる。
【0066】
それにより、プリプレグシートPSの後端部を形成している(先行の)プリプレグテープ片PT’における前記隣接側の側縁部、及び敷置された(後行の)プリプレグテープ片PT’における前記隣接側の側縁部が加熱され、プリプレグテープ片PT’に含まれる熱可塑性樹脂がその前記隣接側の側縁部において溶解された状態となる。そして、それに伴い、プリプレグシートPS(先行のプリプレグテープ片PT’)及び(後行の)プリプレグテープ片PT’におけるその前記側縁部の熱可塑性樹脂が互いに結合した状態となる。その上で、溶着ヘッド29a1の通過によって加熱状態が解消されて温度が低下することにより、前記のように溶解・結合した熱可塑性樹脂が硬化し、その結果として、敷置工程によって新たに敷置された(後行の)プリプレグテープ片PT’は、プリプレグシートPSに接合されてプリプレグシートPSと一体化された状態となる。言い換えれば、プリプレグシートPSに対しプリプレグテープ片PT’が接合されることで、プリプレグシートPSの新たな部分が追加された状態となる。
【0067】
このように、本発明に基づく本実施例の製造方法によれば、フィルム等のシート状の支持部材を用いると共にその支持部材に対し繊維強化材料片を積層・溶着する従来の製造方法とは異なり、テーブル40上において前後方向に並べられるかたちで順次敷置される強化繊維材料片としてのプリプレグテープ片PT’をその前記隣接側の側縁同士が加熱溶着を伴って接合されてシート状とすることで、そのプリプレグテープ片PT’によるシート状の強化繊維基材としてのプリプレグシートPSが形成される。すなわち、その製造方法によれば、従来のように支持部材を用いることなく、強化繊維材料片(プリプレグテープ片PT’)のみによる強化繊維基材(プリプレグシートPS)が製造される。
【0068】
そして、その溶着工程の完了後、位置保持機構63が保持プレート63aを上方へ変位させるように駆動されて保持プレート63aによるプリプレグシートPSの位置保持が解除されると共に、そのようにして形成されたプリプレグシートPSの後方に新たなプリプレグテープ片PT’を敷置する敷置工程が再び行われる。そして、その敷置工程及びそれに続く各工程が繰り返されることで、長尺シート状のプリプレグシートPSが順次形成(製造)される。また、そのように製造されたプリプレグシートPSは、強化繊維の配向方向がプリプレグシートPSの幅方向に対し30°の角度を為す、すなわち、強化繊維の配向方向がプリプレグシートPSの長手方向及び幅方向に対し角度を為すように形成されたものとなる。
【0069】
その上で、そのようにして形成されたプリプレグシートPSは、前述のように巻取機構における巻軸45に巻き取られ、テーブル40上においてはその巻き取りに伴って前方(送り方向)へ移動する。
【0070】
但し、その巻取機構における巻軸45の駆動は、前記のように繰り返される溶着工程と敷置工程との間に行われるものであり、溶着工程に伴って間欠的に行われる。具体的には、その駆動は、1回の溶着工程の完了毎に行われると共に、その1回の駆動により、プリプレグテープPT(プリプレグテープ片PT’)の1幅分だけプリプレグシートPS(前記後縁)が前方へ移動するようにプリプレグシートPSを巻き取るかたちで行われる。また、その駆動は、敷置工程から溶着工程までをプリプレグシートPSの形成サイクルがn回(n≧2)行われる毎に行われるものであっても良く、その場合は、そのn回目の溶着工程が完了した後に、プリプレグテープPT(プリプレグテープ片PT’)のn幅分だけプリプレグシートPS(前記後縁)が前方へ移動するようにプリプレグシートPSを巻き取るかたちで行われる。なお、前者の場合、敷置工程は、テーブル40上の同じ位置で毎回行われる。また、後者の場合は、敷置工程は、そのn回の前記形成サイクル中において、プリプレグテープ片PT’を敷置する位置が順次後方へ移動するようなかたちで行われる。
【0071】
以上では、本発明に基づく製造方法によって製造される強化繊維基材としてのプリプレグシートPSについて、そのプリプレグシートPSは、強化繊維の配向方向がプリプレグシートPSの長手方向及び幅方向の両方向に対し角度を為すと共に、その角度が幅方向に対し30°の角度を為す(=長手方向に対し60°の角度を為す)ものとして説明した。しかし、それはあくまでも一例であり、その配向方向(角度)は、製造が要求される強化繊維基材に応じて適宜に設定されるものである。すなわち、本発明による製造方法が対象とする強化繊維基材は、強化繊維の配向方向(角度)について、前記のように設定されたものに限らず、例えば幅方向に対し60°や45°の角度を為す等、他の角度に設定されたものも含む。
【0072】
また、その強化繊維基材は、強化繊維の配向方向(角度)が前記のように強化繊維基材の長手方向及び幅方向の両方向に対し角度を為すように設定されたものに限らず、その配向方向が幅方向に対し平行を為す(長手方向に対し90°の角度を為す)ように設定されたものも含む。なお、その場合、前記した敷置工程における供給ヘッド20の移動は、幅方向と平行な方向に向けて行われることとなる。
【0073】
このように、本発明による製造方法が対象とする強化繊維基材は、その強化繊維の配向が少なくとも強化繊維基材の長手方向に対し角度を為すように設定されたものであり、本発明の製造方法は、そのように強化繊維の配向方向が種々の角度に設定された強化繊維基材の製造に対し対応可能である。
【0074】
また、本発明は、以上で説明した実施形態(以下、「前記実施例」と言う。)に限定されるものではなく、以下のような他の実施形態(変形例)での実施も可能である。
【0075】
(1)前記実施例では、本発明による製造方法が基材形成装置によって自動的に実現される実施形態において、その基材形成装置は、前述した自動積層装置をベースとした装置、すなわち、強化繊維材料が巻回されて形成された原反ロールを搭載した供給ヘッド20がテーブル40上を移動することで敷置工程が行われる装置となっている。しかし、本発明の製造方法を装置によって自動化したかたちで実施する上で、その装置は、前記実施例の装置に限らず、例えば、
図4に示すような基材形成装置であっても良い。その基材形成装置については、詳しくは以下の通りである。
【0076】
溶着工程等が行われるテーブル80は、その一部が幅方向に移動可能に構成されている。具体的には、テーブル80は、ベースとなる部分である基台81と、基台81に形成された案内溝81a内で幅方向に移動可能に設けられた可動台83とで構成されている。また、基台81は、溶着工程等が行われる主体部81bと、案内溝81aの位置において幅方向に延びるようにして主体部81bに対し一体的に形成された案内部81cとで構成されている。そして、その基台81における案内溝81aは、主体部81b及び案内部81cに亘って幅方向に延びるように形成されている。従って、可動台83は、その案内溝81a内において、主体部81bと案内部81cとの間を移動可能となっている。なお、テーブル80は、基台81(案内溝81a)と可動台83との間に設けられた駆動機構(図示略)を備えている。そして、可動台83は、その駆動機構により、基台81における主体部81bと案内部81cとの間を移動するように駆動される。
【0077】
原反ロール21は、テーブル80の基台81における案内部81cに対し幅方向に並べられるかたちで設けられた支持台71上において、その原反ロール21を回転駆動する駆動機構を含む支持機構(図示略)によって支持されている。但し、その原反ロール21は、前記実施例の基材形成装置における供給ヘッド20に搭載された原反ロール21と同じく、長尺のプリプレグテープPTが巻回されて形成されたものであり、且つ、そのプリプレグテープPTも、前記実施例と同じく熱可塑性のUDプリプレグ材料である。そして、その基材形成装置は、強化繊維(炭素繊維)の配向方向が、製造されるプリプレグシートPSの長手方向に対し90°を為すプリプレグシートPSを製造するものとなっている。
【0078】
また、原反ロール21を支持する支持台71は、受け台71aを有している。その受け台71aは、幅方向における案内部81cの端部の上方にまで延びるように設けられている。そして、原反ロール21から引き出されたプリプレグテープPTは、その受け台71a上を経由してテーブル80(案内部81c)側へ導かれる。その上で、その受け台71aの上には、カッタを含むカッタ装置(いずれも図示略)が設けられているるものとする。それにより、原反ロール21から引き出されたプリプレグテープPTは、そのカッタ装置におけるカッタと受け台71aとの協働で切断される。
【0079】
また、テーブル80上で製造されたプリプレグシートPSを巻き取る巻取機構は、テーブル80の基台81における主体部81bの前方に設けられている。但し、その巻取機構は、前記実施例の基台製造装置における巻取機構と同じ構成であり、巻軸45及びガイドロール47を含んでいる。
【0080】
さらに、テーブル80の基台81における案内部81c上には、幅方向(案内部81cの延在方向)に移動可能に設けられた引出機構73が設けられている。また、その引出機構73は、空気を吸引する等の作用によってプリプレグテープPTを保持可能な保持ヘッド73aを備えている。そして、その引出機構73は、内装された駆動機構(図示略)により、案内部81c上を幅方向へ移動するように駆動される。
【0081】
また、テーブル80の基台81における主体部81b上には、前記実施例の基材形成装置における突合せ機構に相当する機構であって、押接プレート85を含む突合せ機構が設けられている。そして、その突合せ機構は、テーブル80上において、押接プレート85が駆動装置85a(詳細な図示略)によって前後方向に変位するように駆動される構成となっている。なお、その突合せ機構において、駆動装置85aは、基台81の主体部81bにおける案内溝81aよりも後方の部分(後側部)の上面上に配設されており、また、押接プレート85の初期位置も、その後側部上となっている。その上で、その駆動装置85aは、押接プレート85を、前後方向に関し案内溝81aを超えた前方まで変位させることが可能な構成となっているものとする。
【0082】
因みに、テーブル80において、可動台83の高さ寸法(上下方向における寸法)は、案内溝81aの深さ寸法との関係で、可動台83の上面の高さ位置と主体部81bの上面の高さ位置とが一致する大きさとなっている。すなわち、テーブル80は、幅方向に関し可動台83が主体部81bの範囲内に位置した状態で、上下方向に関し可動台83の上面と主体部81bの上面とが同一平面上に位置する構成となっている。従って、テーブル80は、可動台83が突合せ機構の前方に位置する状態で、初期位置において主体部81bの前記後側部に位置する押接プレート85が、可動台83上を通過して主体部81bにおける案内溝81aよりも前方の部分(前側部)まで変位することが可能なものとなっている。
【0083】
さらに、テーブル80の基台81における主体部81bには、その前記前側部の上面上に、前後方向に延在すると共に幅方向に離間して設けられた一対のガイドレール81d、81dが備えられている。そして、その主体部81bにおける前側部の上方には、そのガイドレール81d、81dによって前後方向の移動が案内されるかたちで、溶着機構87(詳細な図示略)が設けられている。
【0084】
但し、この例の溶着機構87は、前記実施例の基材形成装置における位置保持機構としての機能も備えているものとする。すなわち、その溶着機構87は、プリプレグシートPSに対しプリプレグテープ片PT’を溶着するための溶着ヘッドに加え、プリプレグシートPS及びプリプレグテープ片PT’をテーブル80(主体部81b)上で押さえ付けてプリプレグシートPSに対するプリプレグテープ片PT’の位置を保持するための保持プレートを備えており、さらに、その溶着ヘッド及び保持プレートを上下方向に変位させるための駆動手段も備えているものとする。
【0085】
なお、この例の場合、溶着機構87における溶着ヘッドは、プリプレグシートPSの幅方向に亘って存在し、プリプレグシートPS及びプリプレグテープ片PT’の前記隣接部分を幅方向に亘って一度に加熱することが可能な構成であるものとする。しかし、その溶着ヘッドは、幅方向に移動するように構成され、前記実施例と同様に、プリプレグシートPS及びプリプレグテープ片PT’の前記隣接部分を幅方向における端から順に加熱するものであっても良い。また、その溶着機構87に含まれる位置保持機構は、前記実施例と同じように構成されたものとする。しかし、その位置保持機構は、プリプレグシートPSを押さえ付ける保持プレートとプリプレグテープ片PT’を押さえ付ける保持プレートとがそれぞれ独立して設けられ、それぞれに対応させて設けられた駆動手段によって上下方向に変位駆動される構成であっても良い。
【0086】
以上で説明した
図4に示す基材形成装置においては、先ず、テーブル80上において、可動台83が基台81における案内部81c上に位置した状態にされると共に、引出機構73が支持台71の受け台71a上に移動した状態とされる。そして、その状態において、引出機構73が保持ヘッド73aによって受け台71a上に位置するプリプレグテープPTの先端部を吸着保持すると共に案内部81c上を主体部81b側へ向けて移動することにより、原反ロール21からプリプレグテープPTが引き出される。その上で、そのプリプレグテープPTの引き出し長さが所定の長さ(プリプレグシートPSの幅寸法と同じ長さ)となった時点で、引出機構73の前記移動が一旦停止されると共に、受け台71a上においてプリプレグテープPTがカッタ装置によって切断される。それにより、原反ロール21に連なるプリプレグテープPTからプリプレグテープ片PT’が切り出された状態となる。
【0087】
そのプリプレグテープ片PT’の切り出し後、引出機構73は、再び移動を開始すると共に、前記のように案内部81c上に位置する可動台83上の予め定められた位置に達した時点で停止する。そして、その引出機構73における保持ヘッド73aが下方へ向けて駆動されることで、その保持ヘッド73aによって保持されているプリプレグテープ片PT’が可動台83上に載置されると共に、その保持ヘッド73aによる保持状態が解除されることで、そのプリプレグテープ片PT’が可動台83(テーブル80)上に敷置された状態となる(敷置工程)。
【0088】
その上で、その可動台83は、基台81の主体部81bへ向けて移動するように駆動され、主体部81bにおける前記後側部上の突合せ機構の前方に位置した状態とされる。そして、その状態において、突合せ機構が駆動され、押接プレート85が前方へ向けて変位することにより、可動台83上のプリプレグテープ片PT’が、その押接プレート85によって主体部81bの前記前側部へ向けて押され、その主体部81bの前記前側部上にあるプリプレグシートPSの前記後縁に突き合わされた状態となる(突合せ工程)。
【0089】
そして、そのプリプレグシートPSとプリプレグテープ片PT’とが突き合わされた状態で溶着機構87が駆動され、前記実施例と同様に、その位置保持機構によってプリプレグシートPSに対するプリプレグテープ片PT’の位置が保持される(位置保持工程)と共に、溶着ヘッドによる溶着工程が実行される。それにより、プリプレグテープ片PT’は、プリプレグシートPSに接合され、プリプレグシートPSと一体化された状態となる。そして、そのように形成(製造)されたプリプレグシートPSは、その強化繊維(炭素繊維)の配向方向が、その長手方向に対し90°を為したものとなる。
【0090】
なお、その
図4に示す基材形成装置において、例えば、テーブル80における可動台を円盤状に形成すると共に、突合せ機構の前方に配置された状態でその可動台が予め設定された角度だけ回動駆動される構成とし、さらに、突合せ機構及び溶着機構をその角度に対応し得る構成とすれば、前記実施例と同様に、強化繊維の配向方向がプリプレグシートPSの長手方向及び幅方向の両方向に対し角度を為すようなプリプレグシートPSを形成することが可能である。
【0091】
(2)前記実施例等では、前記した位置保持工程として行われるテーブル上でのプリプレグシートPS及びプリプレグテープ片PT’の位置の保持(プリプレグシートPSに対するプリプレグテープ片PT’の位置の保持)が、上方からそれらを押さえ付ける保持プレートによって行われるものとしたが、その位置の保持を実現するための構成は、そのような保持プレートによるものに限らない。例えば、その位置保持のための構成は、テーブルをその上面における複数箇所に開口すると共に外部に連通される孔が形成された構成とし、その孔を介して空気を吸引することにより、テーブル上のプリプレグシートPS及びプリプレグテープ片PT’が吸引保持された状態(真空引きされた状態)となる構成であっても良い。
【0092】
なお、そのようにプリプレグシートPS及びプリプレグテープ片PT’がテーブル上で吸引保持される構成において、前記実施例のように敷置工程がプリプレグシートPSの前記後縁に対しプリプレグテープ片PT’を沿わせるようにして行われる場合であって、そのプリプレグテープ片PT’の敷置がテーブルの前後方向に関しプリプレグシートPSの前記後縁との間で隙間が生じない位置に行われる場合には、前記したプリプレグテープ片PT’をプリプレグシートPSの前記後縁に対し突き合わせる突合せ工程は省略可能である。
【0093】
因みに、前記した
図4に示す基材形成装置において、プリプレグテープ片PT’が敷置された状態で移動する可動台83も、前記のようにプリプレグテープ片PT’を吸引保持し得る構成であるのが望ましい。但し、その可動台83によるプリプレグテープ片PT’の吸引保持は、前述の突合せ機構による突合せ工程時は解除される必要がある。
【0094】
(3)前記実施例等では、ロール状に巻回された原反ロール(ロール体)のかたちで長尺のプリプレグテープPTが準備された上で、プリプレグテープ片PT’は、その原反ロールから引き出されたプリプレグテープPTから基材形成装置上において切り出されるものとなっている。すなわち、強化繊維材料片としてのプリプレグテープ片PT’は、長尺のプリプレグテープPTからその一部を切り出すことによって形成されるものとなっている。しかし、本発明においては、製造される強化繊維基材の基となる強化繊維材料片は、その強化繊維材料片が長尺(シート状、テープ状)の強化繊維材料から切り出されて形成される場合であっても、前記のように基材形成装置上ではなく、その装置にセットされる前の段階において予め所望の形状(大きさ)に切り出されて準備されたものであっても良い。そして、その場合は、そのように予め切り出されて準備された強化繊維材料片が、基材形成装置上にセットされる。また、その強化繊維材料片は、前記のような長尺の強化繊維材料から切り出されて形成されるものに限らず、所望の形状の強化繊維材料として形成されたものであっても良い。
【0095】
(
4)前記実施例等では、強化繊維基材の基となる強化繊維材料片を、強化繊維としての炭素繊維に対しマトリックス樹脂としての熱可塑性樹脂が含浸されて形成された炭素繊維プリプレグによるシート(テープ)材としたが、本発明においては、その強化繊維材料片は、前記のような炭素繊維以外に、ガラス繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維等を強化繊維として用いたものであっても良い。また、その強化繊維材料片は、前記のようにその強化繊維にマトリックス樹脂(熱可塑性樹脂)を含浸させたプリプレグとして形成されたものに限らず、強化繊維の集束性を維持する程度にマトリックス樹脂を添着させた所謂セミプレグとして形成されたものであっても良い。
【0096】
また、本発明は、以上で説明したいずれの実施形態にも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々に変更することが可能である。