(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記媒質封入ミラーにはミラー機能を有効にする媒質を封入しており、前記媒質封入ミラーを超音波ビームが入射しない位置に配置して、前記媒質封入ミラーのミラー機能を無効化した場合に、前記画像生成部が詳細視画像を生成し、
前記制御部が前記ミラー回転機構を制御して前記媒質封入ミラーを回転し、前記媒質封入ミラーのミラー機能を有効化して前記超音波ビームの指向角が拡大した場合、前記画像生成部が第1の粗視画像を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の液中可視化装置。
前記制御部が前記ミラー回転機構を制御して、前記媒質封入ミラーの回転角度をさらに変更し、前記超音波ビームの指向角を拡大させた状態で、超音波ビームの送受信方向を変更した場合、前記画像生成部が第2の粗視画像を生成する
ことを特徴とする請求項2に記載の液中可視化装置。
前記制御部が前記ミラー回転機構を制御して、前記媒質封入ミラーを回転し、前記超音波ビームの指向角を拡大させた状態で、超音波ビームの送受信方向を変更した場合、前記画像生成部が第2の粗視画像を生成する
ことを特徴とする請求項4に記載の液中可視化装置。
媒質封入ミラーを介して超音波センサから液体中へ超音波ビームを送信し、前記媒質封入ミラーを介して前記液体中の物体からの反射波を前記超音波センサで受信し、前記超音波センサで受信した反射波の情報に基づいて画像を生成し、生成した画像を表示する液中可視化装置の液中可視化方法であって、
前記液中可視化装置は、前記媒質封入ミラーにはミラー機能を有効にする媒質を封入しており、前記媒質封入ミラーを超音波ビームが入射しない位置に配置して、前記媒質封入ミラーのミラー機能を無効化した場合に詳細視画像を生成し、ミラー回転機構を制御して前記媒質封入ミラーを回転し、前記媒質封入ミラーのミラー機能を有効化して前記超音波ビームの指向角が拡大した場合、第1の粗視画像を生成する
ことを特徴とする液中可視化方法。
前記液中可視化装置は、前記ミラー回転機構を制御して、前記媒質封入ミラーの回転角度をさらに変更し、前記超音波ビームの指向角を拡大させた状態で、超音波ビームの送受信方向を変更した場合、第2の粗視画像を生成する
ことを特徴とする請求項8に記載の液中可視化方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態における液中可視化装置の構成を表すブロック図である。
図2は、第1の実施形態におけるプローブの移動形態の具体例を表す斜視図であり、(a)は多関節型アームを利用する場合、(b)は遠隔操作ビークルを利用する場合である。
図3は、第1の実施形態における超音波センサと媒質封入ミラー及びミラー回転機構の構造を表すXY平面図である。
図4は、第1の実施形態における超音波センサと媒質封入ミラー及びミラー回転機構の構造を表すとともに動作を説明するXZ平面図であり、(a)は媒質封入ミラーのミラー機能を無効化した状態、(b)は媒質封入ミラーの反射機能を有効化した状態、(c)は媒質封入ミラーを回転させて視野を変更した状態である。
図5は、第1の実施形態における超音波センサの構造を表す斜視図である。
図6は、第1の本実施形態における媒質封入ミラーの構造を表す斜視図及びXZ断面図であり、(a)は斜視図、(b)はモータの接続側を示す図、(c)は軸受の接続側を示す図である。
【0013】
図1に示す本実施形態の液中可視化装置80は、プローブ10と、媒質入替装置20と、ミラー回転装置30と、送受信装置40と、計算機50とを備えている。プローブ10は、超音波センサ11、媒質封入ミラー12、ミラー回転機構18を有する。ミラー回転機構18は、媒質封入ミラー12に図示しないエンコーダを備えたモータ15、軸受16(
図3参照)、シャフト17(
図3参照)により構成される。媒質入替装置20は、媒質封入ミラー12にチューブ21,22を介し接続されている。ミラー回転装置30は、ミラー回転機構18のモータ15に配線接続された接続されたモータ制御部31を備えている。送受信装置40は、超音波センサ11に配線接続されている。計算機50は、媒質入替装置20及びミラー回転装置30と送受信装置40に配線接続されている。送受信装置40は、パルサ41、レシーバ42、波形合成部43、遅延制御部44、及びメモリ45を備えている。計算機50は、コントローラ51及び表示部52を備えている。なお、ミラー回転装置30、送受信装置40とを含んで構成される制御部70を有していてもよい。
【0014】
プローブ10は、例えば
図2(a)で示すように多関節型のアーム61の先端に取り付けられるか、あるいは、例えば
図2(b)で示すように遠隔操作ビークル62に搭載されて、構造物300の内部に満たされた液体W(本実施形態では水)の中を移動する。そして、例えば液体Wの中にはブロック301A,301Bや配管302A,302Bが存在しており、それらの位置や形状を観測するようになっている。なお、媒質入替装置20、ミラー回転装置30、送受信装置40、及び計算機50は、地上に設置されている。
【0015】
図5に示す超音波センサ11は、アレイ型であって、一方向に配列された複数の圧電素子13を有している。各圧電素子13は、送受信装置40のパルサ41からの駆動信号(パルス電圧)によって発振し、媒質封入ミラー12を介して液体Wの中へ超音波を送信する。また、各圧電素子13は、媒質封入ミラー12を介して液体Wの中の物体からの反射波を受信し、波形信号に変換して送受信装置40のレシーバ42に出力する。そして、各圧電素子13の超音波の送受信タイミングを変化させることにより、圧電素子13の配列方向(Y方向)に超音波ビーム100の電子走査を行うようになっている。
【0016】
なお、本実施形態では、セクタ式電子走査(詳細には、XY面において、超音波ビーム100(
図3参照)の始点を固定しつつ、ビームの送受信方向を変更する走査)を行っているが、リニア式電子走査(詳細には、XY面において、超音波ビーム100の送受信方向を固定しつつ、ビームの始点を変更する走査)を行ってもよい。
【0017】
図1に示す送受信装置40の遅延制御部44は、計算機50のコントローラ51からの指令に応じて、パルサ41及び波形合成部43へ、超音波ビーム100の送受信方向に対応する遅延パターンを順次出力するようになっている。
【0018】
パルサ41は、遅延制御部44からの遅延パターンに基づき、超音波センサ11の各圧電素子13へ駆動信号を出力するとともに、各駆動信号の出力タイミング(すなわち、各圧電素子13の超音波の送信タイミング)を変化させる。これにより、超音波ビーム100の送信方向を制御する。
【0019】
レシーバ42は、超音波センサ11の各圧電素子13からの波形信号を入力する。波形合成部43は、遅延制御部44からの遅延パターンに基づき、各波形信号の入力タイミング(すなわち、各圧電素子13の超音波の受信タイミング)を変化させて合成する。これにより、超音波ビームの受信方向を制御する。そして、合成信号に対し所定の処理(詳細には、アナログ信号からデジタル信号への変換処理等)を行って波形データを取得する。波形データは、反射波の強度と伝搬時間の組み合わせからなるデータである。
【0020】
遅延制御部44は、波形合成部43で取得した波形データを、XY面における超音波ビーム100の送受信方向と関連付けて、メモリ45に収録するとともに、計算機50のコントローラ51に出力する。このとき同時に媒質入替装置20から媒質送出有無のデータとミラー回転装置30から媒質封入ミラー12の角度データもコントローラ51に出力され、波形データと媒質の有無及びミラー角度が関連付けられる。
【0021】
コントローラ51は、XY面における超音波ビーム100の送受信方向と波形データに基づいて画像を生成する。詳細には、例えば、反射波の強度を、画素の色調で示すとともに、超音波ビーム100の送受信方向と反射波の伝搬時間に基づいてマッピングしたセクタ画像を生成する。そして、生成した画像を表示部52に表示させるようになっている。セクタ画像と測定位置との関係は、媒質の有無とミラーの角度によって決定される超音波ビーム100の送受信方向により関連付けられる。なお、前述したコントローラ51の画像生成機能は、特許請求の範囲に記載の画像生成部を構成する。
【0022】
本実施形態の要部である媒質封入ミラー12は、
図6に示すように、XZ平面の断面が半楕円形状の筒容器で構成されている。この容器は、音響インピーダンスが液体Wとほぼ同じである合成樹脂で形成されている。本実施形態では、水の音響インピーダンス(音速1480m/s×密度1000kg/m3程度)とほぼ同じ音響インピーダンスを有する、例えば架橋ポリスチレン等で形成されている。そして、プローブ10を液体Wの中に投入した場合に容器の外側が液体Wで満たされることから、容器自体にミラー機能が無く、容器の内部に満たす媒質によってミラー機能を得るようになっている。
【0023】
なお、媒質封入ミラー12は、圧電素子13の配列方向(言い換えれば、超音波ビーム100の走査方向)と
図3に示す媒質封入ミラー12の長辺がY軸と平行となるように、かつ、超音波センサ11から媒質封入ミラー12へ送信する超音波ビーム100の軸線Lが楕円の中心EO又は回転軸の中心ROと交わらないように配置されている。すなわち、超音波ビーム100は、媒質封入ミラー12の曲面に入射するように配置されている(
図4(a)参照)。
【0024】
図1に示す媒質入替装置20は、媒質封入ミラー12の内部に満たす媒質を入れ替えるためのものである。詳細には、例えば、チューブ21を介して液体Wの音響インピーダンスとほぼ同じ音響インピーダンスを有する媒質Ma(本実施形態では水)を送出・吸引する媒質送出吸引機構23(詳細には、例えばポンプ等)と、チューブ22を介して液体Wの音響インピーダンスと著しく異なる(詳細には、桁数が異なる程度の)音響インピーダンスを有する媒質Mb(本実施形態では空気)を送出・吸引する媒質送出吸引機構24(詳細には、例えば圧縮機等)とを有している。
【0025】
ミラー回転装置30は、媒質封入ミラー12を回転させるためのものである。媒質封入ミラーのXZ面の両側面には、
図6(b)(c)に示すように、モータ15を接続する穴12Aとチューブ21、22を接続する穴12B,12Cと軸受を接続する穴12Dが設けられている。モータ制御部31は、媒質封入ミラーの角穴に接続されたモータ15、軸受16、シャフト17で構成されるミラー回転機構18を制御して、媒質封入ミラーを所定の角度に回転させる。モータ15とシャフトは図示しないプローブ10本体に固定されている。
【0026】
そして、
図4(a)で示すように、媒質封入ミラー12の内部に媒質Maを満たした場合は、容器と媒質Maの音響インピーダンスがほぼ同じであるから、媒質封入ミラー12のミラー機能を無効化する。これにより、超音波センサ11からの超音波ビーム100を透過して直進させるとともに、ミラー透過後の超音波ビーム100Aの指向角φa(詳細には、超音波ビームの走査方向に直交するXZ面におけるビームの指向角)を維持する。なお、本実施形態では、超音波センサ11に音響ミラー14を取り付けることにより、超音波ビーム100Aの指向角φaを調整している。
【0027】
図6で示したXZ平面が半楕円形状について、さらに説明する。
図4(a)には、楕円の中心EOが長軸MAAと短軸MIAの交点となる楕円のうち、下半分の半楕円を利用している。符号108は媒質封入ミラー12の回転軸を示す。ここでは、実際に超音波の経路を計算した寸法で作図しており、回転軸の中心ROと楕円の中心EOが一致していない場合を示している。
【0028】
なお、
図4(a)に示す楕円は、長軸MAAの長さを2a、短軸MIAの長さを2bとし、xy平面上の2次元直交座標系で、原点EOが長軸MAAと短軸MIAの交点となる楕円は代数的に次のように書ける。
x
2/a
2+y
2/b
2=1 (1)
また、曲率半径rは、
r=a
2b
2(x
2/a
4+y
2/b
4)
3/2 (2)
となる。
【0029】
一方、
図4(b)で示すように、媒質封入ミラー12の内部に媒質Mbを満たした場合は、容器と媒質Mbの音響インピーダンスが著しく異なるから、媒質封入ミラー12の反射機能を有効化する。これにより、超音波センサ11からの超音波ビーム100と媒質Mbの外周面の曲率(言い換えれば、容器の内周面の曲率)の交点における超音波ビーム100の入射角と外周面の曲率に応じて反射して進行方向を変えるとともに、ミラー反射後の超音波ビーム100Bの指向角φbを拡大する(φb>φa)。
【0030】
さらに、
図4(c)で示すように、
図4(b)と同様に媒質封入ミラー12の内部に媒質Mbを満たし、媒質封入ミラー12の反射機能を有効化した状態で、ミラー回転装置30のモータ制御部31がミラー回転機構18を制御して媒質封入ミラー12を回転する。これにより、超音波センサ11からの超音波ビーム100と媒質Mbの外周面の曲率(言い換えれば、容器の内周面の曲率)の交点における超音波ビーム100の入射角と外周面の曲率に応じて反射して進行方向を変えるとともに、ミラー反射後の超音波ビーム100Cの指向角φcを拡大する(φc>φa)。
図4(b)と
図4(c)では、超音波ビーム100の入射角と媒質Mbの外周面の曲率の条件が異なるので、ミラー反射後の拡大した超音波ビームの送受信方向と指向角も異なる。このように、ミラーの曲率を楕円のように変化させることにより、ミラーの回転角度に応じて、超音波ビームの送受信方向と指向角を変更することができ、プローブを動かさずに観測範囲を拡大することができる。本実施例では、ミラー表面形状として楕円筒面を一例に説明したが、ミラー表面の曲率は、ミラーの回転角度における超音波ビームの送受信方向と指向角の条件により変更してもよい。
【0031】
次に、本実施形態の動作及び作用効果について
図7〜
図14を参照して説明する。
図7は、第1の実施形態における動作手順の一例を表すフローチャートである。
図8は、第1の実施形態における粗視モードの実施例を説明するためのXZ平面図である。
図9は、
図8の粗視モードの実施例で得られた波形データを表す図である。
図10は、第1の実施形態における粗視画像の一例を表す図である。
図11は、第1の実施形態における詳細視モードの実施例を説明するためのXZ平面図である。
図12は、第1の実施形態における詳細視画像の一例を表す図である。
図13は、第1の実施形態における詳細視モードの他の実施例を説明するためのXZ平面図である。
図14は、第1の実施形態における詳細視画像の他の例を表す図である。
【0032】
まず、
図7において、構造物300(
図2参照)の内部に満たされた液体Wの中にプローブ10を投入して観測位置に配置する。観測範囲を
図4(b)、
図4(c)で示す指向角φb、φcとする。ステップS201では、例えば
図8で示すように、
図4(b)に示す条件で媒質封入ミラー12の内部に媒質Mbを満たして、媒質封入ミラー12の反射機能を有効化する(粗視モード、指向角φb(φiでi=b))。
【0033】
そして、ステップS202に進み、プローブ10の周辺にどのような物体があるかを大まかに観測する。すなわち、超音波センサ11からの超音波ビームが超音波ビームの入射角と媒質封入ミラー内の媒質Mbの外周面の曲率に応じて反射して進行方向を変え、ミラー反射後の超音波ビーム100Bが構造物300の底面303に向かって送信される。そして、例えば構造物300の底面303及びブロック301A,301Bからの反射波が媒質封入ミラー12を介して超音波センサ11で受信される。
【0034】
このとき、前述したように超音波ビーム100Bの指向角φbが拡大しているため、反射波の伝搬時間にそれぞれ対応して反射波の強度が積算される範囲も拡大している。そして、XY面における、ある超音波ビームの送受信方向γ(後述の
図9参照)において、例えば
図9で示すような波形データを取得する。具体的に説明すると、伝搬時間t1未満では、底面303からの反射波を受信して、その強度が比較的弱い値(b1〜b2の間の値)となる。伝搬時間t1〜t2の範囲では、ブロック301Aからの反射波を受信して、その強度が比較的強い値(b2〜b3の間の値)となる。伝搬時間t2〜t3の範囲では、反射波を受信しないため、その強度がほぼゼロとなる。伝搬時間t3以上では、底面303からの反射波を受信して、その強度が比較的弱い値(b1〜b2の間の値)となる。
【0035】
その後、計算機50のコントローラ51は、XY面における超音波ビームの送受信方向と波形データに基づいて、例えば
図10で示すような粗視画像を生成し、生成した粗視画像を表示部52に表示させる。
図10の粗視画像には、反射波の強度がb2以上である領域61Aと、反射波の強度がb1未満である領域62Aが表われており、ブロック301Aの位置や形状を大まかに観測することができる。また、反射波の強度がb2以上である領域61Bと、反射波の強度がb1未満である領域62Bが表われており、ブロック301Bの位置や形状を大まかに観測することができる。
【0036】
そして、ステップS203に進み、全ての計画範囲の粗視モードによる観測が完了していなければ、ステップS201に戻り、
図4(c)に示すように媒質封入ミラー12を回転して観測範囲を変更する。例えば、ステップS201で、粗視モード、指向角φc(φiでi=c)において、処理を繰り返す。こうして、計画範囲の粗視モードによる観測が完了した後、詳細視モードで観測する範囲を決定し、詳細視モードに進む。
【0037】
ステップS204では、まず、媒質封入ミラーを
図4(b)の角度に戻し、媒質送出吸引機構24により、媒質封入ミラー12の内部から媒質Mbを吸引するとともに、媒質送出吸引機構23により、媒質封入ミラー12の内部へ媒質Maを送り出す。これにより、媒質封入ミラー12の内部に媒質Maを満たして、媒質封入ミラー12のミラー機能を無効化する(詳細視モード)。
【0038】
そして、ステップS205に進み、例えば
図11で示すように、ブロック301A,301Bを細かに観測する。すなわち、超音波センサ11からの超音波ビームが媒質封入ミラー12を透過して直進し、ミラー透過後の超音波ビーム100Aがブロック301A又は301Bの側面に向かって送信される。そして、ブロック301A又は301Bの側面からの反射波が媒質封入ミラー12を介して超音波センサ11で受信される。このとき、前述したように超音波ビーム100Aの指向角φaが小さいため、反射波の伝搬時間にそれぞれ対応して反射波の強度が積算される範囲も小さい。
【0039】
その後、計算機50のコントローラ51は、XY面における超音波ビームの送受信方向と波形データに基づいて、例えば
図12で示すような詳細視画像を生成し、生成した詳細視画像を表示部52に表示させる。
図12の詳細視画像には、反射波の強度がb2以上である反射領域63Aが表われており、ブロック301Aの位置や形状を細かに観測することができる。また、反射波の強度がb2以上である領域63Bが表われており、ブロック301Bの位置や形状を細かにすることができる。
【0040】
そして、全ての計画範囲の観測が完了していなければ、ステップS206の判定が満たされず、前述のステップS204に移行する。なお、全ての計画範囲の観測が完了しているなら、一連の処理を終了する。
【0041】
ステップS204に移行した場合は、例えば
図13で示す配管302A,302B(
図2参照)を細かに観測する。すなわち、超音波センサ11からの超音波ビームが媒質封入ミラー12を透過して直進し、ミラー透過後の超音波ビーム100Aが配管302A又は302Bの側面に向かって送信される。そして、配管302A又は302Bの側面からの反射波が媒質封入ミラー12を介して超音波センサ11で受信される。
【0042】
その後、計算機50のコントローラ51は、XY面における超音波ビームの送受信方向と波形データに基づいて、例えば
図14で示すような詳細視画像を生成し、生成した詳細視画像を表示部52に表示させる。
図14の詳細視画像には、反射波の強度がb2以上である反射領域64Aが表われており、配管302Aの位置や形状を細かに観測することができる。また、反射波の強度がb2以上である領域64Bが表われており、配管302Bの位置や形状を細かに観測することができる。
【0043】
以上のように本実施形態においては、媒質封入ミラー12とミラー回転機構18とミラー回転装置30を用いることにより、詳細視機能と粗視機能を兼ね備え、粗視範囲について、プローブを動かさずに変更し、観測範囲を拡大することができる。また、例えば詳細視用の超音波センサと粗視用の超音波センサ及び拡散ミラーを搭載する場合と比べ、プローブの大型化を抑制することができる。
【0044】
なお、第1の実施形態においては、ブロック301A,301Bの粗視画像→ブロック301A,301Bの詳細視画像→配管302A,302Bの詳細視画像の順序で取得する場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。例えば、配管302A,302Bの詳細視画像→ブロック301A,301Bの粗視画像→ブロック301A,301Bの詳細視画像の順序で取得してもよい。
【0045】
また、第1の実施形態において、媒質入替装置20は、地上に設置され、媒質封入ミラー12に比較的長いチューブ21,22を介し接続された媒質送出吸引機構23,24(詳細には、ポンプや圧縮機等)で構成された場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。
【0046】
図15は、媒質入替装置の変形例の構造を表すXZ平面図である。
図15で示す変形例のように、媒質入替装置20Aは、媒質封入ミラー12に比較的短いチューブ25A,25Bを介し接続された遮蔽弁26A,26Bで構成されてもよい。このような変形例においては、媒質封入ミラー12の内部に液体Wより比重が軽い媒質Mbを予め満たして、粗視モードとする。そして、遮蔽弁26A,26Bを開くことにより、媒質封入ミラー12の内部から媒質Mbを流出させるとともに、媒質封入ミラー12の内部に媒質Maとして液体Wを流入させる。これにより、粗視モードから詳細視モードに切替える。したがって、本変形例では、粗視モードから詳細視モードへの1度の切替えしかできないものの、媒質入替装置の構成を簡素化することができる。
【0047】
また、第1の実施形態において、媒質封入ミラー12は、半楕円形状の筒容器で構成された場合を例にとって説明したが、これに限らず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。例えば、断面が半楕円形状以外の他の部分楕円形状の容器で構成されてもよい。また、ある角度の範囲に応じて楕円の長軸MAA、短軸MIA(
図4参照)の大きさが異なる、連続的に曲率が異なる曲面形状のミラーを構成してもよい。これらの場合も、前記同様の効果を得ることができる。
【0048】
第1の実施形態の液中可視化装置80は、媒質封入ミラー12の内部に満たす媒質を入れ替える媒質入替装置20を有し、制御部70が媒質入替装置20により媒質封入ミラー12のミラー機能を無効化した場合、画像生成部(例えば、コントローラ51)が詳細視画像を生成する(
図4(a)参照)。制御部70が媒質入替装置20により媒質封入ミラー12のミラー機能を有効化して超音波ビームの指向角が拡大した場合、画像生成部が第1の粗視画像を生成する(
図4(b)参照)。また、制御部70がミラー回転機構18を制御して、媒質封入ミラー12を回転し、超音波ビームの指向角を拡大させた状態で、超音波ビームの送受信方向を変更した場合、画像生成部が第2の粗視画像を生成する(
図4(c)参照)。
【0049】
また、制御部70は、媒質封入ミラー12の内部に第1の媒質(例えば、媒質Ma)を満たして媒質封入ミラー12のミラー機能を無効化した場合に、画像生成部が詳細視画像を生成し(
図4(a)参照)、媒質封入ミラー12の内部に第2の媒質(例えば、媒質Mb)を満たして媒質封入ミラーの反射機能を有効化して超音波ビームの指向角が拡大した場合に、画像生成部が粗視画像を生成する(
図4(b)、(c)参照)。
【0050】
超音波センサ11は、一方向に配列された複数の圧電素子13を有し、圧電素子13の配列方向に超音波ビームを電子走査し(
図5参照)、媒質封入ミラー12は、表面の曲率が一定でない形状の容器で構成され、容器の内部に媒質を満たしている(
図4、
図6参照)。圧電素子13の配列方向と容器の軸(例えば、楕円の中心EOを含む軸又は回転軸)が平行となるように、かつ、超音波センサ11から媒質封入ミラー12へ送信する超音波ビームの軸線Lが容器の軸と交わらないように配置されている(
図4(a)参照)。
【0051】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態を、
図16から
図21を参照しつつ説明する。なお、本実施形態においては、第1の実施形態と同等の部分は同一の符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0052】
図16は、第2の実施形態における液中可視化装置の構成を表すブロック図である。
図17は、第2の実施形態における超音波センサと表面が楕円筒面である媒質封入ミラー及びミラー回転機構の構造を表すXY平面図である。
図18は、第2の実施形態における超音波センサと媒質封入ミラー及びミラー回転機構の構造を表すとともに動作を説明するXZ平面図であり、(a)は媒質封入ミラーのミラー機能を無効化した状態、b)は媒質封入ミラーの反射機能を有効化した状態、(c)は媒質封入ミラーを回転させて視野を変更した状態である。
図19は、第2の実施形態における媒質封入ミラーの構造を表す斜視図及びXZ断面図であり、(a)は斜視図、(b)はモータの接続側を示す図である。
【0053】
図16に示す第2の実施形態の液中可視化装置80Aは、
図1に示す第1の実施形態の液中可視化装置80Aと比較して、媒質入替装置20が省略されている。また、
図16に示すプローブ10Aの構成は、
図1に示すプローブ10と同様であるが、超音波センサ11との関係で、配置構成が異なる。詳細は、
図18を参照して後述する。他の構成については同様であるので、説明は省略する。
【0054】
液中可視化装置80Aの遅延制御部44は、波形合成部43で取得した波形データを、XY面における超音波ビーム100の送受信方向と関連付けて、メモリ45に収録するとともに、計算機50のコントローラ51に出力する。このとき同時にミラー回転装置30から媒質封入ミラー12の角度データもコントローラ51に出力され、波形データと媒質の有無及びミラー角度が関連付けられる。
【0055】
コントローラ51は、XY面における超音波ビーム100の送受信方向と波形データに基づいて画像を生成する。詳細には、例えば、反射波の強度を、画素の色調で示すとともに、超音波ビーム100の送受信方向と反射波の伝搬時間に基づいてマッピングしたセクタ画像を生成する。そして、生成した画像を表示部52に表示させるようになっている。セクタ画像と測定位置との関係は、ミラーの角度によって決定される超音波ビーム100の送受信方向により関連付けられる。なお、前述したコントローラ51の画像生成機能は、特許請求の範囲に記載の画像生成部を構成する。
【0056】
そして、
図18(a)で示すように、媒質封入ミラー12の内部は常に液体Wの音響インピーダンスと著しく異なる(詳細には、桁数が異なる程度の)音響インピーダンスを有する媒質Mb(本実施形態では空気)が満たされている。媒質封入ミラー12は水平時には超音波ビーム100がミラー内に入射しないように上方に配置されている。これにより、超音波センサ11からの超音波ビーム100を透過して直進させ、超音波ビーム100Aの指向角φa(詳細には、超音波ビームの走査方向に直交するXZ面におけるビームの指向角)を維持する。
【0057】
一方、
図18(b)で示すように、媒質封入ミラー12をミラー回転装置30のモータ制御部31がモータ15を制御して、ミラー回転機構18により、超音波ビーム100がミラーに入射するまでミラーを回転させて、媒質封入ミラー12の反射機能を有効化する。これにより、超音波センサ11からの超音波ビーム100と媒質Mbの外周面の曲率(言い換えれば、容器の内周面の曲率)の交点における超音波ビーム100の入射角と外周面の曲率に応じて反射して進行方向を変えるとともに、ミラー反射後の超音波ビーム100Bの指向角φdを拡大する(φd>φa)。
【0058】
図18(c)で示すように、媒質封入ミラー12を
図18(b)の状態からさらに回転させる。これにより、超音波センサ11からの超音波ビーム100と媒質Mbの外周面の曲率(言い換えれば、容器の内周面の曲率)の交点における超音波ビーム100の入射角と外周面の曲率の関係が
図18(b)の条件から変化し、超音波ビームの進行方向を変えるとともに、ミラー反射後の超音波ビーム100Cの指向角もφeに変化する(φe>φa)。このように、ミラーが水平な状態で超音波ビームが入射しない上方に配置することにより、媒質入替装置により媒質の入れ替えを行わずに、ミラーの回転のみで、超音波ビームの送受信方向と指向角を変更することができ、プローブの構成を簡素化することができる。本実施例では、ミラー表面形状として楕円筒面を一例に説明したが、ミラー表面の曲率は、ミラーの回転角度における超音波ビームの送受信方向と指向角の条件により変更してもよい。
【0059】
すなわち、媒質封入ミラー12にはミラー機能を有効にする媒質を封入しており、媒質封入ミラー12を超音波ビームが入射しない位置に配置して、媒質封入ミラーのミラー機能を無効化した場合に、画像生成部(例えば、コントローラ51)が詳細視画像を生成する(
図18(a)参照)。制御部70がミラー回転機構18を制御して媒質封入ミラー12を回転し、媒質封入ミラー12のミラー機能を有効化して超音波ビームの指向角が拡大した場合、画像生成部が第1の粗視画像を生成する(
図18(b)参照)。また、制御部70がミラー回転機構12を制御して、媒質封入ミラー12の回転角度をさらに変更し、超音波ビームの指向角を拡大させた状態で、超音波ビームの送受信方向を変更した場合、画像生成部が第2の粗視画像を生成する(
図18(c)参照)。
【0060】
次に、本実施形態の動作及び作用効果について説明する。
図20は、本実施形態における動作手順の一例を表すフローチャートである。
図21は、第2の実施形態における粗視モード及び詳細視モードの実施例を説明するためのXZ平面図であり、(a)は粗視モードの説明図であり、(b)(c)は、詳細視モードの説明図である。
【0061】
まず、構造物300(
図2参照)の内部に満たされた液体Wの中にプローブ10を投入して観測位置に配置する。観測範囲を
図18(b)、
図18(c)で示す指向角φd、φe(φiにおいて、i=d又はi=e)とする。
図20において、ステップS201Aでは、例えば
図21(a)で示すように、
図18(c)に示す条件で超音波ビームの送受信を行う(粗視モード、指向角φe)。
【0062】
そして、ステップS202に進み、プローブ10の周辺にどのような物体があるかを大まかに観測する。計算機50のコントローラ51は、XY面における超音波ビームの送受信方向と波形データに基づいて、第1の実施の形態に示す
図10のような粗視画像を生成し、生成した粗視画像を表示部52に表示させる。このようにして、ブロック301Aとブロック301Bの位置や形状を大まかに観測することができる。
【0063】
そして、ステップS203に進み、全ての計画範囲の粗視モードによる観測が完了していなければ、ステップS201Aに戻り、
図18(b)に示すように媒質封入ミラーを回転して観測範囲を変更する。こうして、計画範囲の粗視モードによる観測が完了した後、詳細視モードで観測する範囲を決定し、詳細視モードに進む。
【0064】
ステップS204Aでは、媒質封入ミラーを
図18(a)に示す水平の角度に戻し、超音波ビームを直接、液体W中に送信する(詳細視モード)。
【0065】
そして、ステップS205に進み、例えば
図21(b)で示すように、ブロック301A,301Bを細かに観測する。すなわち、超音波センサ11からの超音波ビームが液体W中を直進し、超音波ビーム100Aがブロック301A又は301Bの側面に向かって送信される。そして、ブロック301A又は301Bの側面からの反射波が超音波センサ11で受信される。このとき、前述したように超音波ビーム100Aの指向角φaが小さいため、反射波の伝搬時間にそれぞれ対応して反射波の強度が積算される範囲も小さい。
【0066】
その後、計算機50のコントローラ51は、XY面における超音波ビームの送受信方向と波形データに基づいて、第1の実施の形態に示す
図12で示すような詳細視画像を生成し、生成した詳細視画像を表示部52に表示させる。このようにして、ブロック301Aとブロック301Bの位置や形状を細かに観測することができる。
【0067】
そして、全ての計画範囲の観測が完了していなければ、ステップS206の判定が満たされず、前述のステップS204Aに移行する。
【0068】
ステップS204Aに移行した場合は、例えば
図21(c)で示すように、配管302A,302Bを細かに観測する。すなわち、超音波センサ11からの超音波ビームが液体W中を直進し、超音波ビーム100Aが配管302A又は302Bの側面に向かって送信される。そして、配管302A又は302Bの側面からの反射波が超音波センサ11で受信される。
【0069】
その後、計算機50のコントローラ51は、XY面における超音波ビームの送受信方向と波形データに基づいて、第1の実施の形態に示す
図14で示すような詳細視画像を生成し、生成した詳細視画像を表示部52に表示させる。このようにして、配管302Aと配管302Bの位置や形状を細かに観測することができる。
【0070】
最後に、ステップS206において、全ての計測範囲を観測したならば、一連の処理を終了する。
【0071】
以上のように本実施形態においては、粗視範囲において、プローブを動かさずに変更し、観測範囲を拡大することができる。さらに、媒質封入ミラー12を水平な状態で超音波ビームが入射しない位置に配置することにより、媒質入替装置により媒質の入れ替えを行わずに、ミラーの回転のみで詳細視機能と粗視機能を変更することができ、プローブの構成を簡素化することができる。
【0072】
なお、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様にブロック301A,301Bの粗視画像→ブロック301A,301Bの詳細視画像→配管302A,302Bの詳細視画像の順序で取得する場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。例えば、配管302A,302Bの詳細視画像→ブロック301A,301Bの粗視画像→ブロック301A,301Bの詳細視画像の順序で取得してもよい。
【0073】
また、第2の実施形態においても第1の実施形態と同様に、媒質封入ミラー12は、断面が半楕円形状の筒容器で構成された場合を例にとって説明したが、これに限らず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。例えば、半楕円形状以外の他の部分楕円形状の筒容器で構成されてもよい。また、ある角度の範囲に応じて楕円の長軸MAA、短軸MIA(
図4参照)の大きさが異なる、連続的に曲率が異なる曲面形状のミラーを構成してもよい。これらの場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0074】
図22は、媒質封入ミラーの変形例を表す図である。
図22に示すように媒質封入ミラー12の曲率を円筒面12aと楕円筒面12bで構成される一部の曲率が一定でない形状であってもよい。
【0075】
以上のように構成された本実施形態においても、第1の実施形態と同様、媒質封入ミラーを用いることにより、プローブの大型化を抑制しつつ、粗視機能と詳細視機能を兼ね備えることができる。
【0076】
なお、第1及び第2の実施形態においては、複数の圧電素子13を有するアレイ型の超音波センサ11を備えた場合(すなわち、圧電素子13の配列方向に超音波ビームを電子走査する場合)を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。例えば、1つだけの圧電素子13を有する超音波センサと、この超音波センサを回動又は平行移動させる駆動機構とを備えてもよい。すなわち、圧電素子13の配列方向に超音波ビームを機械的に走査してもよい。
【0077】
液中可視化装置80,80Aは、内部に満たす媒質によってミラー機能を有する表面の曲率が一定でない媒質封入ミラー12と、媒質封入ミラー12を回転するミラー回転機構18と、ミラー回転機構18を制御する制御部(例えば、ミラー回転装置30)と、媒質封入ミラー12ーを介して液体中へ超音波ビームを送信するとともに、媒質封入ミラー12を介して液体中の物体からの反射波を受信する超音波センサ11と、超音波センサ11で受信した反射波の情報に基づいて画像を生成する画像生成部(例えば、コントローラ51)と、画像生成部で生成した画像を表示する表示部と、を備える。
図18において、媒質封入ミラー12を超音波ビームが入射しない位置に配置して、ミラー機能を無効化した場合に、詳細視画像が生成され、媒質封入ミラーを回転し媒質封入ミラーのミラー機能を有効化して、粗視画像が生成される。
【0078】
本実施形態によれば、媒質封入ミラー12を用いることにより、プローブの大型化を抑制しつつ、粗視機能と詳細視機能を兼ね備えることができ、さらに媒質封入ミラー回転機構を備えることにより媒質封入ミラーを回転させて、拡大した超音波ビームの視野を変更することが可能になる。