特許第6712920号(P6712920)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6712920
(24)【登録日】2020年6月4日
(45)【発行日】2020年6月24日
(54)【発明の名称】接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 4/02 20060101AFI20200615BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20200615BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20200615BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20200615BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20200615BHJP
【FI】
   C09J4/02
   C09J11/06
   B32B27/30 A
   B32B27/34
   C09J11/08
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-141784(P2016-141784)
(22)【出願日】2016年7月19日
(65)【公開番号】特開2018-12754(P2018-12754A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2019年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 麻希子
(72)【発明者】
【氏名】星野 貴子
(72)【発明者】
【氏名】中島 剛介
【審査官】 上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−159835(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/108273(WO,A1)
【文献】 特開平10−007753(JP,A)
【文献】 特開2013−181146(JP,A)
【文献】 特開2015−030748(JP,A)
【文献】 特開2015−189941(JP,A)
【文献】 特開2001−055423(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/016535(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
B32B 1/00− 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミドを含有する被着体を接着する接着剤組成物であり、下記(1)〜(3)を含有する接着剤組成物。
(1)(1−1)、(1−2)、(1−3)を含有する(メタ)アクリレート
(1−1)式(B)の(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートからなる群の1種以上である芳香族基を有する(メタ)アクリレート
【化5】

(1−2)ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート
(1−3)一般式(A)で示される(メタ)アクリレート
【化1】

(2)重合開始剤
(3)還元剤
【請求項2】
(1−2)ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートである請求項1記載の接着剤組成物。
【請求項3】
(2)重合開始剤が、熱ラジカル重合開始剤である請求項1又は2記載の接着剤組成物。
【請求項4】
(3)還元剤が、バナジルアセチルアセトネートである請求項1〜3のうちの1項記載の接着剤組成物。
【請求項5】
更に、(4)エラストマーを含有する請求項1〜4のうちの1項記載の接着剤組成物。
【請求項6】
ポリアミドが、ナイロン6、ナイロン6,6から選ばれる1種以上である請求項1〜5のうちの1項記載の接着剤組成物。
【請求項7】
ポリアミドを含有する被着体が、充填剤を含有する請求項1〜6のうちの1項記載の接着剤組成物。
【請求項8】
充填剤が、無機繊維である請求項7記載の接着剤組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のうちの1項記載の接着剤組成物を第一剤と第二剤に分け、第一剤が少なくとも(2)重合開始剤を含有し、第二剤が少なくとも(3)還元剤を含有する二剤型の接着剤組成物。
【請求項10】
被着体のうち少なくとも1枚がポリアミドである被着体の間に、請求項1〜9のうちの1項記載の接着剤組成物からなる接着剤層を有する積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂の接合には、ボルト・ナット等による機械締結や、溶着といった手段がある。機械締結の場合、締結部品による積層体の大幅な質量増加のほか、締結部への応力集中が大きく、破壊の起点となる恐れがある。これに対して、溶着は質量増加がなく、ポリアミド等の熱可塑性樹脂に対しては有効であるが、大面積への適用が難しく、得られる積層体の大きさに限りがある。金属と、炭素繊維等通電性材料で強化された樹脂といった、電位差の異なる材料を機械締結又は溶着で接合した場合、その積層体は容易に腐食する恐れがある。
【0003】
接着剤組成物による接合は大面積への塗布が容易である。接着剤組成物による接合は、異種材料の接合であっても接着剤層を間に挟むため、被着体同士の接触が避けられ、電食を抑制できることが期待されている。
【0004】
しかしながら、樹脂は金属よりも接着しにくく、被着体同士が高強度で接着された積層体を得るのが困難であった。被着体の樹脂を溶かして接着する手法もあるが、樹脂を溶解させるための溶剤や加熱、加圧等が必要であり、工程が煩雑であった。
【0005】
ポリアミドを接着するに接着剤組成物については特許文献1〜4が開示されている。特許文献1は、ビスフェノールを有する(メタ)アクリレートを含有する組成物が例示されている。特許文献2は、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが例示されている。特許文献3〜4は、芳香族基を有する(メタ)アクリレートが例示されている。しかし、本発明のように、(1−1)と(1−2)と(1−3)といった、3種類の(メタ)アクリレートを併用することについて、特許文献1〜4は記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−126591号公報
【特許文献2】特開平11−256120号公報
【特許文献3】特開昭59−221372号公報
【特許文献4】特開昭59−221371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ポリアミドを接着する接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記の通りである。
<1>ポリアミドを含有する被着体を接着する接着剤組成物であり、下記(1)〜(3)を含有する接着剤組成物。
(1)(1−1)、(1−2)、(1−3)を含有する(メタ)アクリレート
(1−1)式(B)の(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートからなる群の1種以上である芳香族基を有する(メタ)アクリレート
【化6】

(1−2)ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート
(1−3)一般式(A)で示される(メタ)アクリレート
【化2】

(2)重合開始剤
(3)還元剤
<2>(1−2)ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートである<1>記載の接着剤組成物。
<3>(2)重合開始剤が、熱ラジカル重合開始剤である<1>又は<2>記載の接着剤組成物。
<4>(3)還元剤が、バナジルアセチルアセトネートである<1>〜<3>のうちの1項記載の接着剤組成物。
<5>更に、(4)エラストマーを含有する<1>〜<4>のうちの1項記載の接着剤組成物。
<6>ポリアミドが、ナイロン6、ナイロン6,6から選ばれる1種以上である<1>〜<5>のうちの1項記載の接着剤組成物。
<7>ポリアミドを含有する被着体が、充填剤を含有する<1>〜<6>のうちの1項記載の接着剤組成物。
<8>充填剤が、無機繊維である<7>記載の接着剤組成物。
<9><1>〜<8>のうちの1項記載の接着剤組成物を第一剤と第二剤に分け、第一剤が少なくとも(2)重合開始剤を含有し、第二剤が少なくとも(3)還元剤を含有する二剤型の接着剤組成物。
<10>被着体のうち少なくとも1枚がポリアミドである被着体の間に、<1>〜<9>のうちの1項記載の接着剤組成物からなる接着剤層を有する積層体。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ポリアミドへの接着性が大きい接着剤組成物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本実施形態を詳細に説明する。
(1)(メタ)アクリレートとは、例えば、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーをいう。使用量は特記しない限り、第一剤と第二剤の合計に対する使用量が好ましい。
【0011】
(1)(メタ)アクリレートは、(1−1)芳香族基を有する(メタ)アクリレート、(1−2)ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(1−3)一般式(A)で示される(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
【0012】
(1−1)芳香族基を有する(メタ)アクリレートは、例えば、接着剤組成物を剛直にするほか、エラストマー成分の溶解性を向上させる。
【0013】
このような単量体としては、式(B)の(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、式(B)の(メタ)アクリレートが好ましい。
【0014】
【化3】
【0015】
式(B)の(メタ)アクリレートとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、メチルベンジル(メタ)アクリレート、エチルベンジル(メタ)アクリレート、プロピルベンジル(メタ)アクリレート、メトキシベンジル(メタ)アクリレート、クロロベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。式(1)の(メタ)アクリレートの中では、ベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0016】
(1−1)の使用量は、(1)の合計100質量部中、10〜85質量部が好ましく、20〜70質量部がより好ましく、35〜65質量部が最も好ましい。10質量部以上だとエラストマー成分の溶解性が向上し、作業性や塗布性が向上する。85質量部以下だと剥離強度が向上する。
【0017】
(1−2)ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートは、例えば、被着体との接着性を向上させる。ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの中では、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0018】
(1−2)の使用量は、(1)の合計100質量部中、5〜60質量部が好ましく、10〜50質量部がより好ましく、15〜40質量部が最も好ましい。5質量部以上だと接着性が向上する。60質量部以下だとエラストマー成分の溶解性が向上し、作業性や塗布性が向上し、耐熱性が向上する。
【0019】
(1−3)一般式(A)で示される(メタ)アクリレートは以下の構造をいう。
【0020】
【化4】
【0021】
、R’は炭素数2〜6個のアルキレン基が好ましく、炭素数2個のエチレン基がより好ましい。R、R’はメチル基が好ましい。p、p’は1〜20が好ましく、3〜10がより好ましく、5が最も好ましい。
【0022】
このような単量体としては、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシテトラエトキシフェニル)プロパン及び2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等が挙げられる。これらの中では、2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパンが好ましい。
【0023】
(1−3)の使用量は、(1)の合計100質量部中、1〜60質量部が好ましく、10〜45質量部がより好ましく、15〜30質量部が最も好ましい。1質量部以上だと耐熱性が向上する。60質量部以下だとエラストマー成分の溶解性が向上し、作業性や塗布性が向上する。
【0024】
(2)重合開始剤としては、熱ラジカル重合開始剤が好ましい。熱ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物が好ましい。有機過酸化物としては、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンジハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド及びターシャリーブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。これらの中では、安定性の点で、クメンハイドロパーオキサイドが好ましい。
【0025】
(2)重合開始剤の使用量は、(1)の合計100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましく、0.8〜5質量部が最も好ましい。0.1質量部以上だと硬化速度が早くなる。20質量部以下だと貯蔵安定性が良くなる。
【0026】
(3)還元剤は、前記重合開始剤と反応し、ラジカルを発生する還元剤であれば使用できる。
【0027】
還元剤としては、第3級アミン、チオ尿素誘導体及び遷移金属塩等が挙げられる。
第3級アミンとしては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン及びN,N−ジメチルパラトルイジン等が挙げられる。チオ尿素誘導体としては、2−メルカプトベンズイミダゾール、メチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素及びエチレンチオ尿素等が挙げられる。遷移金属塩としては、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅及びバナジルアセチルアセトネート等が挙げられる。これらの中では、反応性の点で、遷移金属塩が好ましい。遷移金属塩の中では、バナジルアセチルアセトネートが好ましい。
【0028】
(3)還元剤の使用量は、(1)の合計100質量部に対して、0.05〜15質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましい。0.05質量部以上だと硬化速度が早くなる。15質量部以下だと貯蔵安定性が良くなる。
【0029】
本実施形態では、剥離強度と衝撃強度の向上のため、(4)エラストマーを使用することが好ましい。
【0030】
本実施形態で使用するエラストマーとしては、常温でゴム状弾性を有する高分子物質が好ましく、重合性ビニルモノマーに溶解又は分散できるものが好ましい。
【0031】
このようなエラストマーとしては、(メタ)アクリロニトリル−ブタジエン−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリロニトリル−ブタジエン−メチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、並びに、(メタ)アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、線状ポリウレタン、スチレン−ブタジエン等の各種合成ゴム、天然ゴム、各種熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらのエラストマーは相溶性に問題がなければ、1種以上を使用してもよい。
【0032】
これらの中では、重合性ビニルモノマーに対する溶解性や接着性が良好な点で、メチル(メタ)アクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体と(メタ)アクリロニトリル−ブタジエンゴムからなる群の1種以上が好ましく、メチル(メタ)アクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体と(メタ)アクリロニトリル−ブタジエンゴムを併用することがより好ましい。メチル(メタ)アクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体と(メタ)アクリロニトリル−ブタジエンゴムを併用する場合、その含有比率は、メチル(メタ)アクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体と(メタ)アクリロニトリル−ブタジエンゴムの合計100質量部中、質量比で、メチル(メタ)アクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体:(メタ)アクリロニトリル−ブタジエンゴム=10〜90:10〜90が好ましく、40〜60:40〜60がより好ましい。
【0033】
エラストマーの使用量は、(1)の合計100質量部に対して、10〜50質量部が好ましく、20〜40質量部がより好ましい。
【0034】
被着体のマトリックス樹脂となるポリアミドとしては、分子構造中に繰り返し単位としてアミド基(−NHCO−)を含む線状ポリマーが好ましい。ポリアミドとしては、脂肪族骨格を有するポリアミド、芳香族骨格を有するポリアミド、脂環式骨格を有するポリアミド等が挙げられる。これらの中では、脂肪族骨格を有するポリアミド(ナイロン)が好ましい。ポリアミドは、例えば、機械的性質に優れ、高い強度と靱性を有するため、車両部品等に使用できる。ポリアミドは、例えば、熱可塑性を有する。ポリアミドは、ラクタム又はアミノ酸の重縮合や、ジアミンとジカルボン酸の重縮合等から得られる。ポリアミドは、単独重合体でも良く、2種以上の共重合ポリアミド樹脂やブレンド物でも良い。
ナイロンとしては、ナイロン6(構造は−(−(CH−CONH−)−)、ナイロン6,6(構造は−(−(CH−CONH−(CH−NH−)−)、ナイロン12(構造は−(−(CH11−CONH−)−)等が挙げられる。ナイロンの中では、成形加工性、入手容易性の点で、ナイロン6、ナイロン6,6から選ばれる1種以上が好ましい。
【0035】
本実施形態で用いられるポリアミドは、補強効果を大きくするために、有機繊維、無機繊維、フィラー等の充填剤を含有しても良い。
【0036】
有機繊維としては、アラミド繊維、ポリエステル繊維等が挙げられる。無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、鉱物繊維等が挙げられる。フィラーとしては、タルク、炭酸カルシウム等が挙げられる。充填剤の中では、無機繊維が好ましい。無機繊維の中では、炭素繊維(カーボン繊維)が好ましい。
【0037】
ポリアミド中の繊維は、連続繊維でも、不連続繊維でも良い。連続繊維の場合は、例えば、織物、編物又は繊維を一方向に配置したもの、不織布、及び、それらの積層体であってもよい。
【0038】
充填剤の含有量は、ポリアミド100質量部中、5〜50質量部が好ましく、10〜40質量部がより好ましい。
【0039】
本実施形態は、接着剤組成物として使用する。本実施形態として、二剤型の接着剤組成物として使用することが好ましい。二剤型については、本実施形態の接着剤組成物の必須成分全てを貯蔵中は混合せず、接着剤組成物を第一剤及び第二剤に分け、第一剤に少なくとも重合開始剤を、第二剤に少なくとも還元剤を別々に貯蔵する。二剤型は貯蔵安定性に優れる点で好ましい。この場合、両剤を同時に又は別々に塗布して接触、硬化することにより、二剤型の接着剤組成物として使用できる。
【0040】
本実施形態の積層体となり得る、ポリアミド以外の被着体としては、紙、木材、セラミック、ガラス、陶磁器、ゴム、プラスチック、モルタル、コンクリート及び金属等が挙げられる。
【実施例】
【0041】
以下実施例により本実施形態を更に詳細に説明する。各物質の使用量の単位は質量部で示す。
【0042】
各物質として市販品を使用した。特記事項は以下の通りである。
NBR:アクリロニトリル−ブタジエン共重合体
MBS:メタクリル酸メチルーブタジエンースチレン共重合体
2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン:式(A)において、p、p’=5のものを用いた。
各種物性については、次のようにして測定した。
【0043】
〔接着剤組成物の調製〕
表1に示す量の各成分を撹拌混合し、接着剤組成物を得た。(2)クメンハイドロパーオキサイドを使用した組成物を第一剤、(3)バナジルアセチルアセトネートを使用した組成物を第二剤とした。第一剤と第二剤を等量ずつ撹拌混合し、接着剤組成物を得た。
【0044】
〔引張剪断強度(引張剪断接着強さ)〕
試験片として、ナイロン6をマトリックス樹脂とするカーボン繊維強化熱可塑性樹脂(CFRTP(PA6))と、アルミ合金(A5052−H34)板を用いた。試験片の大きさはどちらも100×25×2.0mmであり、ウエス拭きしてから用いた。温度23℃、湿度50%の環境下でJISK−6850に従い、一枚の試験片の片面に第一剤と第二剤を混合した接着剤組成物を塗布し、直ちに試験片同士を貼り合わせた。接着剤層の厚さは、0.1mmと3mmにした。この後、室温で24時間養生し、これを引張剪断強度測定用試料とし、引張剪断強度(単位:MPa)の測定を行い、引張剪断強度とした。
引張剪断強度を測定してから、破壊状態を観察した。接着剤層と被着体との接着が大きい点で、破壊状態は凝集破壊や表層材破が好ましく、凝集破壊がより好ましい。
測定は、温度23℃の環境下、引張速度10mm/分で行った。
各試験片の詳細を以下に示す。
CFRTP(PA6):ナイロン6をマトリックス樹脂とするカーボン繊維強化熱可塑性樹脂、東レ社製 トレカ TLP1060(カーボン長繊維を30質量%含有)
アルミ合金:A5052−H34
【0045】
(実施例1〜3、比較例1〜5)
表1に示す実施例や比較例の組成にて、接着剤組成物からなる接着剤層を被着体の間に有する積層体を作製し、引張剪断強度測定を行った。積層体として、カーボン繊維強化熱可塑性樹脂同士の間に接着剤層を有する積層体(CFRTP(PA6)/CFRTP(PA6))、カーボン繊維強化熱可塑性樹脂とアルミ合金の間に接着剤層を有する積層体(CFRTP(PA6)/アルミ合金)を作製した。
【0046】
【表1】
【0047】
本実施形態は、(1−2)2−ヒドロキシブチルメタクリレートを使用することにより、高い接着強度を示した。
(1−1)を使用しないと、エラストマー成分がモノマー成分に溶解せず、引張剪断強度を測定できなかった(比較例1)。(1−2)を使用しないと、接着剤厚さを3mmにしたとき接着性が低く、アルミ合金への接着性も低かった(比較例2)。(1−3)を使用しないと、接着剤厚さを3mmにしたとき接着性が低かった(比較例3)。2−ヒドロキシブチルメタクリレートの代わりに、2−ヒドロキシエチルメタクリレートや2−ヒドロキシプロピルメタクリレートを使用した場合、接着剤厚さを3mmにしたとき接着性が低かった(比較例4〜5)。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本実施形態により、被着体の少なくとも1枚が、ポリアミドをマトリックス樹脂である場合に、被着体同士が高強度で接合された積層体を提供できる。
本実施形態により、接着過程において溶剤の使用や加熱や加圧を行わなくても、被着体同士が高強度で接合された積層体を提供できる。
本実施形態により、被着体同士が強固に接合し、容易に剥がれることがない、ポリアミド複合部材を得ることができる。本実施形態により、異種材料を被着体としても電食の懸念が少なく、又、大型の部品を得ることも可能である。
【0049】
車両等の部品を接着する場合、2枚の被着体の隙間を一定にすることが難しく、被着体の隙間が大きい場合があった。本実施形態は、被着体の隙間(接着剤厚さ)が3mmと大きくても、接着性が大きい。本実施形態により、車両等の部品の樹脂化が進み、軽量化に繋がることから、産業上の有益性は大きい。