特許第6713047号(P6713047)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6713047非占有領域を求めるように構成された車両レーダーシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6713047
(24)【登録日】2020年6月4日
(45)【発行日】2020年6月24日
(54)【発明の名称】非占有領域を求めるように構成された車両レーダーシステム
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/931 20200101AFI20200615BHJP
【FI】
   G01S13/931
【請求項の数】24
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-528219(P2018-528219)
(86)(22)【出願日】2016年12月16日
(65)【公表番号】特表2019-504303(P2019-504303A)
(43)【公表日】2019年2月14日
(86)【国際出願番号】EP2016081459
(87)【国際公開番号】WO2017103129
(87)【国際公開日】20170622
【審査請求日】2018年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】518238850
【氏名又は名称】ヴィオニア スウェーデン エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】マノチャ、アシシュ
(72)【発明者】
【氏名】ハウ、イ
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン、マーチン
【審査官】 藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05045856(US,A)
【文献】 特開平05−203737(JP,A)
【文献】 特開2016−109675(JP,A)
【文献】 特開2014−062804(JP,A)
【文献】 特開平11−231052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00− 7/42
G01S 13/00−13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダー信号(4)を生成して送信するとともに、該送信されたレーダー信号(4)が1つ以上の物体(6)によって反射されたものである反射レーダー信号(5)を受信するように構成された少なくとも1つの送受信機装置(7)を備える車両レーダーシステム(3)であって、前記レーダー信号は、送受信機カバレッジ(9)をともに形成する複数の検知セクターである検知ビン(8a、8b、8c、8d、8e、8f、8g)を形成し、
各検知ビン(8a、8b、8c、8d、8e、8f、8g)について、該レーダーシステム(3)は、可能性のあるターゲット物体(10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10h、10i、10j)に対するターゲット角度(φ)及びターゲットレンジ(r)を取得するように構成され、該レーダーシステム(3)は、前記レーダー送受信機カバレッジ(9)の非占有領域境界(11)及び対応する非占有領域(12)を求めるように構成され
該車両レーダーシステム(3)は、所定の数(N)のレーダーサイクルにおいて観測された検出結果を記憶するように構成された検出メモリ(14)を備え、
該レーダーシステム(3)は、前記検出メモリ(14)に記憶された全ての検出結果の中で、各検知ビン(8a、8b、8c、8d、8e、8f、8g)における最も近い静止したターゲット物体(10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g)を選択することによって、各検知ビン(8a、8b、8c、8d、8e、8f、8g)における前記非占有領域境界(11)を計算するように構成されることを特徴とする、車両レーダーシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両レーダーシステム(3)であって、前記検知ビン(8a’、8b’、8c’、8d’、8e’、8f’、8g’)は不均一な角サイズを有することを特徴とする、車両レーダーシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両レーダーシステム(3)であって、該車両レーダーシステム(3)は、独立して、検出結果を移動検出結果又は静止検出結果に事前に分類するように構成されることを特徴とする、車両レーダーシステム。
【請求項4】
請求項3に記載の車両レーダーシステム(3)であって、該レーダーシステム(3)は、車両(1)に設置されるように構成され、該レーダーシステム(3)は、前記車両(1)の運動速度及びヨーレートに対する各検出されたターゲット物体(10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10h、10i、10j)のドップラー速度及び前記ターゲット角度(φ)の解析を行うことによって前記分類を行うように更に構成されることを特徴とする、車両レーダーシステム。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の車両レーダーシステム(3)であって、前記非占有領域境界(11’’)は、前記検出結果(10a’’、10b’’、10c’’、10d’’、10e’’、10f’’、10g’’、10e’’、10f’’、10g’’)の間に延びることを特徴とする、車両レーダーシステム。
【請求項6】
レーダー信号(4)を生成して送信するとともに、該送信されたレーダー信号(4)が1つ以上の物体(6)によって反射されたものである反射レーダー信号(5)を受信するように構成された少なくとも1つの送受信機装置(7)を備える車両レーダーシステム(3)であって、前記レーダー信号は、送受信機カバレッジ(9)をともに形成する複数の検知セクターである検知ビン(8a、8b、8c、8d、8e、8f、8g)を形成し、
各検知ビン(8a、8b、8c、8d、8e、8f、8g)について、該レーダーシステム(3)は、可能性のあるターゲット物体(10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10h、10i、10j)に対するターゲット角度(φ)及びターゲットレンジ(r)を取得するように構成され、該レーダーシステム(3)は、前記レーダー送受信機カバレッジ(9)の非占有領域境界(11)及び対応する非占有領域(12)を求めるように構成され
該車両レーダーシステム(3)は、
2つの検知ビン(8b’’’、8e’’’)のデカルト座標の間を補間することと、
中間ビン(8c’’’、8d’’’)の前記レンジが平滑化閾値を越えているか否かを調べることと、
前記平滑化閾値を越えている場合、前記中間ビン(8c’’’、8d’’’)をそれらの元の値から平滑化することと、を行うように構成された平滑化手順を実行するように構成されることを特徴とする、車両レーダーシステム。
【請求項7】
請求項6に記載の車両レーダーシステム(3)であって、前記検知ビン(8a’、8b’、8c’、8d’、8e’、8f’、8g’)は不均一な角サイズを有することを特徴とする、車両レーダーシステム。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の車両レーダーシステム(3)であって、該車両レーダーシステム(3)は、独立して、検出結果を移動検出結果又は静止検出結果に事前に分類するように構成されることを特徴とする、車両レーダーシステム。
【請求項9】
請求項8に記載の車両レーダーシステム(3)であって、該レーダーシステム(3)は、車両(1)に設置されるように構成され、該レーダーシステム(3)は、前記車両(1)の運動速度及びヨーレートに対する各検出されたターゲット物体(10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10h、10i、10j)のドップラー速度及び前記ターゲット角度(φ)の解析を行うことによって前記分類を行うように更に構成されることを特徴とする、車両レーダーシステム。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか1項に記載の車両レーダーシステム(3)であって、該車両レーダーシステム(3)は、所定の数(N)のレーダーサイクルにおいて観測された検出結果を記憶するように構成された検出メモリ(14)を備えることを特徴とする、車両レーダーシステム。
【請求項11】
請求項10に記載の車両レーダーシステム(3)であって、該レーダーシステム(3)は、前記検出メモリ(14)に記憶された全ての検出結果の中で、各検知ビン(8a、8b、8c、8d、8e、8f、8g)における最も近い静止したターゲット物体(10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g)を選択することによって、各検知ビン(8a、8b、8c、8d、8e、8f、8g)における前記非占有領域境界(11)を計算するように構成されることを特徴とする、車両レーダーシステム。
【請求項12】
請求項6乃至11の何れか1項に記載の車両レーダーシステム(3)であって、前記非占有領域境界(11’’)は、前記検出結果(10a’’、10b’’、10c’’、10d’’、10e’’、10f’’、10g’’、10e’’、10f’’、10g’’)の間に延びることを特徴とする、車両レーダーシステム。
【請求項13】
車両レーダーシステムの方法であって、該方法は、
レーダー信号(4)を生成して送信すること(20)と、
前記送信されたレーダー信号(4)が1つ以上の物体(6)によって反射されたものである反射レーダー信号(5)を受信すること(21)であって、前記レーダー信号は、送受信機カバレッジ(9)をともに形成する複数の検知セクターである検知ビン(8a、8b、8c、8d、8e、8f、8g)を形成することと、を含み、
該方法は、
各検知ビン(8a、8b、8c、8d、8e、8f、8g)について、可能性のあるターゲット物体(10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10h、10i、10j)に対するターゲット角度(φ)及びターゲットレンジ(r)を取得すること(22)と、
前記レーダー送受信機カバレッジ(9)の非占有領域境界(11)及び対応する非占有エリア(12)を求めること(23)と、
所定の数(N)のレーダーサイクルにおいて観測された検出結果を記憶することと、
記憶された全ての検出結果の中で、各検知ビン(8a、8b、8c、8d、8e、8f、8g)における最も近い静止したターゲット物体(10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g)を選択することによって、各検知ビン(8a、8b、8c、8d、8e、8f、8g)における前記非占有領域境界(11)を計算することと、を更に含むことを特徴とする、方法。
【請求項14】
前記検知ビン(8a’、8b’、8c’、8d’、8e’、8f’、8g’)は不均一な角サイズを有することを特徴とすることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記方法は、独立して、検出結果を移動検出結果又は静止検出結果に事前に分類することを含むことを特徴とする、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記分類は、車両(1)の運動速度及びヨーレートに対する各検出されたターゲット物体(10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10h、10i、10j)のドップラー速度及び前記ターゲット角度(φ)を解析することによって行われることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記非占有領域境界(11’’)は、前記検出結果(10a’’、10b’’、10c’’、10d’’、10e’’、10f’’、10g’’、10e’’、10f’’、10g’’)の間に延びることを特徴とする、請求項13乃至16の何れか1項に記載の方法。
【請求項18】
車両レーダーシステムの方法であって、該方法は、
レーダー信号(4)を生成して送信すること(20)と、
前記送信されたレーダー信号(4)が1つ以上の物体(6)によって反射されたものである反射レーダー信号(5)を受信すること(21)であって、前記レーダー信号は、送受信機カバレッジ(9)をともに形成する複数の検知セクターである検知ビン(8a、8b、8c、8d、8e、8f、8g)を形成することと、を含み、
該方法は、
各検知ビン(8a、8b、8c、8d、8e、8f、8g)について、可能性のあるターゲット物体(10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10h、10i、10j)に対するターゲット角度(φ)及びターゲットレンジ(r)を取得すること(22)と、
前記レーダー送受信機カバレッジ(9)の非占有領域境界(11)及び対応する非占有エリア(12)を求めること(23)と、
2つの検知ビン(8b’’’、8e’’’)のデカルト座標の間を補間することと、中間ビン(8c’’’、8d’’’)の前記レンジが平滑化閾値を越えているか否かを調べることと、前記平滑化閾値を越えている場合、前記中間ビン(8c’’’、8d’’’)をそれらの元の値から平滑化することとを含む平滑化手順を更に含むことを特徴とする、方法。
【請求項19】
前記検知ビン(8a’、8b’、8c’、8d’、8e’、8f’、8g’)は不均一な角サイズを有することを特徴とすることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記方法は、独立して、検出結果を移動検出結果又は静止検出結果に事前に分類することを含むことを特徴とする、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記分類は、車両(1)の運動速度及びヨーレートに対する各検出されたターゲット物体(10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10h、10i、10j)のドップラー速度及び前記ターゲット角度(φ)を解析することによって行われることを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記方法は、所定の数(N)のレーダーサイクルにおいて観測された検出結果を記憶することを含むことを特徴とする、請求項18〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記方法は、記憶された全ての検出結果の中で、各検知ビン(8a、8b、8c、8d、8e、8f、8g)における最も近い静止したターゲット物体(10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g)を選択することによって、各検知ビン(8a、8b、8c、8d、8e、8f、8g)における前記非占有領域境界(11)を計算することを含むことを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記非占有領域境界(11’’)は、前記検出結果(10a’’、10b’’、10c’’、10d’’、10e’’、10f’’、10g’’、10e’’、10f’’、10g’’)の間に延びることを特徴とする、請求項18乃至23の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーダー信号を生成、送信及び受信するように構成された少なくとも1つの送受信機装置を備える車両レーダーシステムに関する。これらのレーダー信号は、ともに送受信機カバレッジエリアを形成する複数の検知セクター(sensing sectors)である検知ビン(sensing bins)を形成する。
【背景技術】
【0002】
多くの車両レーダーシステムは、このレーダーシステムに備えられた適切なアンテナによって送信、受信されるレーダー信号を生成するように構成されたレーダー送受信機を備える。これらのレーダー信号は、例えば、FMCW(周波数変調連続波)信号の形態とすることができる。
【0003】
車両における衝突回避システムについては、車両を取り囲む環境の少なくとも一部の十分に信頼性のある表現を取得することが望まれており、この十分に信頼性のある表現は、自由空間(free space:無障害物空間、空き空間)表現として形成することができる。そのような表現は、静止物体及び移動物体の双方を含むはずである。
【0004】
特許文献1は、複数のセンサーフィールドが送受信機カバレッジエリアを形成し、所望の検出ゾーン上でオーバーレイされる物体検出システムを記載している。レンジゲートは、検知フィールド及び所望の検出ゾーンが重なり合うセンサーからの距離であり、物体がレンジゲートよりも小さなレンジを有する場合、その物体は、所望の検出ゾーン内にあるものとして判断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7227474号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、車両を取り囲む環境の少なくとも一部の自由空間表現を求めるより柔軟な車両レーダーシステムを得ることが望まれている。
【0007】
したがって、本開示の目的は、車両を取り囲む環境の少なくとも一部の自由空間表現を求める、従来技術のシステムよりも柔軟な車両レーダーシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、少なくとも1つの送受信機装置を備える車両レーダーシステムによって達成される。前記送受信機装置は、レーダー信号を生成して送信するとともに、該送信されたレーダー信号が1つ以上の物体によって反射されたものである反射レーダー信号を受信するように構成される。前記レーダー信号は、送受信機カバレッジをともに形成する複数の検知セクターである検知ビンを形成する。各検知ビンについて、該レーダーシステムは、可能性のあるターゲット物体に対するターゲット角度及びターゲットレンジ(target range:ターゲット距離)を取得するように構成される。該レーダーシステムは、前記レーダー送受信機カバレッジの非占有領域境界及び対応する非占有領域を求めるように更に構成される。
【0009】
この目的は、車両レーダーシステムの方法であって、該方法は、
−レーダー信号を生成して送信することと、
−前記送信されたレーダー信号が1つ以上の物体によって反射されたものである反射レーダー信号を受信することであって、前記レーダー信号は、送受信機カバレッジをともに形成する複数の検知セクターである検知ビンを形成することと、
−各検知ビンについて、可能性のあるターゲット物体に対するターゲット角度及びターゲットレンジを取得することと、
−前記レーダー送受信機カバレッジの非占有領域境界及び対応する非占有エリアを求めることと、
を含む、方法によっても達成される。
【0010】
一例によれば、前記検知ビンは不均一な角サイズを有する。
【0011】
別の例によれば、前記車両レーダーシステムは、独立して、検出結果(detections)を移動検出結果又は静止検出結果に事前に分類するように構成される。
【0012】
別の例によれば、前記レーダーシステムは、車両に設置されるように構成され、前記車両の運動速度(motion rate)及びヨーレート(yaw rate)に対する各検出されたターゲット物体の前記ドップラー速度及び前記角度の解析を行うことによって前記事前分類を行うように構成される。
【0013】
別の例によれば、前記車両レーダーシステムは、所定の数のレーダーサイクルにおいて観測された検出結果を記憶するように構成された検出メモリを備える。
【0014】
別の例によれば、前記レーダーシステムは、前記検出メモリに記憶された全ての検出結果の前記集合内で、各検知ビンにおける最も近い静止したターゲット物体を選択することによって、各検知ビンにおける前記非占有領域境界を計算するように構成される。
【0015】
他の例は、従属請求項に開示されている。
【発明の効果】
【0016】
本開示によって多くの利点が得られる。主として、従来技術のシステムよりも柔軟な方法で車両を取り囲む環境の少なくとも一部の自由空間表現を求める車両レーダーシステムが提供される。
【0017】
次に、添付図面を参照して本開示をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】車両の概略上面図である。
図2】検知ビンを有する車両の概略上面図である。
図3】一例による検知ビンを有する車両の概略上面図である。
図4】別の例による検知ビンを有する車両の概略上面図である。
図5】別の例による検知ビンを有する車両の概略上面図である。
図6】別の例による検知ビンを有する車両の概略上面図である。
図7】本開示による方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、道路2を方向Dに走行するように構成された車両1の上面図を概略的に示している。ここで、車両1は、従来からよく知られている方法で、信号4を送信し、反射信号5を受信するとともに、ドップラー効果を用いることによって、単体のターゲットを周囲から区別及び/又は分解するように構成された車両レーダーシステム3を備える。車両レーダーシステム3は、したがって、レーダー送受信機装置7を備え、受信信号5の位相及び振幅を同時にサンプリング及び解析することによって、ターゲットとなる可能性のある物体6の方位角を提供するように構成される。レーダー信号は、例えば、77GHzで動作するFMCW(周波数変調連続波)信号の形態とすることができる。車両レーダーシステム3は、レーダー制御ユニット(RCU)18も備える。
【0020】
図2に示すように、レーダー信号は、送受信機カバレッジエリア9をともに形成する複数の検知セクターすなわち検知ビン8a、8b、8c、8d、8e、8f、8gを形成する。この送受信機カバレッジエリアでは、角度法線(angle normal line)19が、車両の前方走行方向に延びている。
【0021】
本開示によれば、図3に関する一例に示すように、RCU18がレーダー送受信機カバレッジエリア9の非占有エリア境界11及び対応する非占有エリア12を極座標によって求めることが可能になるように、検知ビン8a、8b、8c、8d、8e、8f、8gごとに、可能性のあるターゲット物体10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10h、10i、10jに対するターゲット角度φ及びターゲットレンジrが取得される。本明細書の残りの部分では、非占有エリア12のみが論述されるが、対応する非占有体積(unoccupied volume)を考えることができる。明瞭にするために、ターゲット角度φ及びターゲットレンジrは、図3における1つのターゲット物体10cについてのみ示され、ターゲット角度φは、角度法線19に対して求められる。
【0022】
非占有エリア12は、非占有エリア境界11を示す実線内にある。この例では、検知ビン8a、8b、8c、8d、8e、8f、8gごとに、各検知ビン8a、8b、8c、8d、8e、8f、8gにおける非占有エリア境界11の位置を画定する最も近くで検出されたターゲット物体10a、10b、10c、10d、10e、10f、10gが存在する。求められた非占有エリア境界11の外側にあるターゲット物体は、この例では考慮されないが、更なる例において論述されるように考慮されてもよい。
【0023】
より詳細に言えば、自由空間は、角度量子化グリッドにおける検知ビン8a、8b、8c、8d、8e、8f、8gごとに1つである、複数のレンジ値として表される。したがって、レンジ値の数は検知ビンの数と同一である。検知ビンの数は、レーダー送受信機の視野の可視角度と各量子化角度ビンのサイズとに依存する。
【0024】
これは、検知ビン8a、8b、8c、8d、8e、8f、8gごとに、その所定の検知ビンの自由空間を記述する浮動小数点値、すなわち非占有空間のレンジが得られることを意味する。浮動小数点値が必須ではなく、幾つかの態様によれば、自由空間を記述する値は固定小数点値又はスケーリングされた整数値であることに留意されたい。
【0025】
これを取得するために、レーダー検出サイクルごとに、レーダー信号データを含む検出リストが、レンジ、方位角及びドップラー速度を取得するのに用いられる。
【0026】
一例によれば、図4を参照すると、検知ビン8a’、8b’、8c’、8d’、8e’、8f’、8g’の不均一な角サイズが用いられ、これは、例えば、幾つかの所定の運転シナリオにおいて有利であり、例えば、自由空間が主として送受信機装置7の前面に広がっている田舎道及びハイウェイの運転シナリオにとって有利である。これらの場合には、運転方向Dにはより高い分解能を用いることができ、側方にはより低い分解能を用いることができる。もちろん、検知ビンの任意の適したタイプの不均一な角サイズを考えることができ、幾つかの態様によれば、検知ビンは、車両の前面により小さな角サイズを有し、送受信機カバレッジエリア9の両端部に向けて増加していく角サイズを有してもよい。
【0027】
一例によれば、車両レーダーシステム3は、所定の数のN個の以前のレーダーサイクルにおいて観測された検出結果を記憶することによってロバスト性を高めるために用いられる検出メモリ14を備える。そのような以前のレーダーサイクルの検出結果は、検知ビンの現在の非占有エリア境界を求めるときに考慮される。
【0028】
一例によれば、検出結果は、独立して、移動検出結果又は静止検出結果に事前に分類される。ホストの運動速度及びヨーレートに対する各検出結果のドップラー速度及びドップラー角度を解析することによって、各検出結果を移動又は静止のいずれかとして事前に分類することができる。ヨーレートを考慮に入れることは、例えば、円形交差点等の曲線運転において利点がある。
【0029】
検出結果は、幾つかの態様によれば、静止物体のクラス、又は各移動物体の個々の移動クラスのいずれかに更に完全に分類される。これは、適した一般的な物体追跡アルゴリズムからの出力を組み込むことによって達成される。事前に分類された検出結果は、移動又は静止としてこのようにロバストに分類することができる。
【0030】
検出メモリ14に記憶された以前のサイクルからの検出結果は、それらを組み合わせた運動又はグループ運動によって補正される。静止した検出結果の該当するグループの場合、これは、車両の速度及びヨーレートの処理を通じて取得されるような車両の位置及び回転の変化によって、位置、すなわちx座標及びy座標を補償することを意味する。例えば、観測可能エリア、すなわち送受信機カバレッジエリア9を移動する物体に属する他の検出結果は、同じメカニズムによって補正され、それらのグループ運動ベクトルによって更に伝播される。
【0031】
幾つかの態様によれば、各検知ビン8a、8b、8c、8d、8e、8f、8gにおける自由空間境界11を計算するために、RCU18は、検出メモリ14に記憶された全ての検出結果の集合内で、各検知ビン8a、8b、8c、8d、8e、8f、8gにおける最も近い静止したターゲット物体10a、10b、10c、10d、10e、10f、10gを選択するように構成される。その場合、自由空間境界11のレンジは、これらの最も近いターゲット物体10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10h、10i、10jのレンジによって与えられる。
【0032】
自由空間内の異常値及び偽検出結果に対するロバスト性を高めるために、所与のビンにおける最も近いターゲット物体の集合を考慮することができる。とりわけ、最も近い静止したターゲット物体nではなく、所与の検知ビンを有する2番目、3番目、...、n番目に最も近いターゲット物体を選択することができる。
【0033】
特に粗い角度グリッド(すなわち、少数のビン)の場合、自由空間境界の表現は、一様でなく不連続に見える可能性がある。なぜならば、各ビンにおける情報は、1つのレンジ値に縮小されるからである。別の例を示す図5を参照すると、各検知ビン8a’’、8b’’、8c’’、8d’’、8e’’、8f’’、8g’’のレンジ値に加えて、各検知ビン8a’’、8b’’、8c’’、8d’’、8e’’、8f’’、8g’’における最も近い検出結果10a’’、10b’’、10c’’、10d’’、10e’’、10f’’、10g’’、10e’’、10f’’、10g’’のレンジ及び角度によって与えられる正確な位置を表す各検知ビン8a’’、8b’’、8c’’、8d’’、8e’’、8f’’、8g’’の角度値を記憶することができる。
【0034】
角度法線19に対するターゲット角度φ’’及びレンジr’’を有する第6の検出結果を得る場合の図5には、各ビンがこの例において個別の角度を有することが示されている。これによって、メモリ所要量は増加するが、より詳細な自由空間表現が与えられ、より正確で自然な道路境界線の視覚化が可能になる。これによって、僅かに異なる非占有エリア表現12’’が提供される。なぜならば、非占有エリア境界11’’は、検出結果10a’’、10b’’、10c’’、10d’’、10e’’、10f’’、10g’’、10e’’、10f’’、10g’’の間に延びるからである。
【0035】
これは、より平滑な非占有エリア境界表現を与え、各検知ビン8a’’、8b’’、8c’’、8d’’、8e’’、8f’’、8g’’において検出された物体10a’’、10b’’、10c’’、10d’’、10e’’、10f’’、10g’’、10e’’、10f’’、10g’’のより正確な位置特定を提供する。
【0036】
所定の検知ビン内の検出結果が利用可能でない場合、対応する自由空間境界は、デフォルトの最大レンジ値に設定される。これは、隣接するビンが良好に観測可能なレンジ境界を有する場合に望ましくない可能性がある。この問題を克服するために、角度平滑化を追加することができる。これは、例えば、隣接する検知ビンにわたるレンジ境界値のスライディングウィンドウ最小フィルター(sliding window minimum filter)等のフィルターを追加することによって行われる。
【0037】
角度平滑化に加えて、図6を参照すると、更なる平滑化手順が性能を大幅に改善する。このために、ビン中心の角度及びその検知ビンのレンジ値によって画定される各検知ビン8a’’’、8b’’’、8c’’’、8d’’’、8e’’’、8f’’’、8g’’’のデカルト座標が考慮される。任意の2つの検知ビンi、jのデカルト座標の間のユークリッド距離が所望の最小値よりも小さい場合、任意の中間検知ビンkのレンジ値は平滑化される。
【0038】
この平滑は、ビンi及びjのデカルト座標の間を補間することと、中間ビンkのレンジが補間されたレンジ値の形態の平滑化閾値を越えないことを確保することとによって行われる。補間されたレンジ値を越えている場合、中間ビンは、それらの元の外観から平滑化される。これは、この例では、第3の検知ビン8c’’’及び第4の検知ビン8d’’’が、点線で示すようなそれらの元の外観から、隣接する第2の検知ビン8b’’’及び第5の検知ビン8e’’’のデカルト座標16、17(円の記号で示されている)の間に延びる補間線境界線15によって制限される縮小形に平滑化されることを意味する。
【0039】
極座標表現を構成する角度検知ビンによるこの表現は、自然であり、効率的であり、ロバストかつ汎用的である。
【0040】
極座標表現は、一様な間隔のデカルトグリッドを用いる自由空間モデル化における現在の技術水準に反して、入力データが極座標で生成されるので自然である。この表現は、全視野を相対的に少ない数のレンジ値で表すことができ、求められた自由空間を他の処理ユニットに効率的に送信することが可能になるので効率的である。この表現は、ノイズのロバストなフィルタリングが可能であるのでロバストである。この表現は、全ての運転シナリオにおいて自由空間の表現を可能にするので汎用的である。周囲の状況に関する事前の前提を置く必要はなく、ハイウェイ、田舎道、都市部の運転、又は狭い駐車場において同様に機能する。
【0041】
図1に示すように、車両1は、安全制御ユニット35及び安全手段36、例えば、非常ブレーキシステム及び/又は警報信号デバイスを備える。安全制御ユニット35は、レーダーシステム3からの入力に応じて安全手段36を制御するように構成される。
【0042】
図7を参照すると、本開示は、車両レーダーシステムの方法に関し、本方法は、
20:レーダー信号4を生成して送信することと、
21:送信されたレーダー信号4が1つ以上の物体6によって反射されたものである反射レーダー信号5を受信することであって、レーダー信号は、送受信機カバレッジ9をともに形成する複数の検知セクターである検知ビン8a、8b、8c、8d、8e、8f、8gを形成することと、
22:各検知ビン8a、8b、8c、8d、8e、8f、8gについて、可能性のあるターゲット物体10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10h、10i、10jに対するターゲット角度φ及びターゲットレンジrを取得することと、
23:レーダー送受信機カバレッジ9の非占有領域境界11及び対応する非占有領域12を求めることと、
を含む。
【0043】
本開示は、上記例に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲の範囲内において自由に変更することができる。例えば、レーダーシステムは、乗用車、トラック及びバス等の任意のタイプの車両だけでなく、ボート及び航空機にも実装することができる。
【0044】
レーダー送受信機7は、任意の適したタイプのドップラーレーダーに適合される。車両レーダーシステム3には任意の数のレーダー送受信機7が存在することができ、それらのレーダー送受信機は、任意の適した方向における送信及び受信のために構成することができる。このため、複数の検知セクター又は検知ビンを、車両1の後方又は側部等の他の望ましい方向に向けることができる。
【0045】
この状況では、レーダーサイクルは、レーダーがデータを入手し、このデータを幾つかの信号処理レベルにおいて処理し、利用可能な結果を送出する1つの観測フェーズである。これは、固定時間間隔(すなわち、40ミリ秒〜60ミリ秒)をすることもできるし、環境条件及び処理負荷に応じた動的な時間間隔とすることもできる。
【0046】
本開示について非占有体積も考えることができるので、非占有エリア12は、一般に非占有領域12によって構成され、非占有エリア境界11は、一般に非占有領域境界12によって構成される。これに対応して、送受信機カバレッジエリア9は、一般に送受信機カバレッジによって構成される。
【0047】
全ての検出結果は、検出されたターゲット物体に対応する。
【0048】
一態様によれば、極座標と異なる座標、例えばデカルト座標が用いられる。
【0049】
一般に、本開示は、レーダー信号4を生成して送信するとともに、当該送信されたレーダー信号4が1つ以上の物体6によって反射されたものである反射レーダー信号5を受信するように構成された少なくとも1つの送受信機装置7を備える車両レーダーシステム3であって、レーダー信号は、送受信機カバレッジ9をともに形成する複数の検知セクターである検知ビン8a、8b、8c、8d、8e、8f、8gを形成する、車両レーダーシステムに関する。各検知ビン8a、8b、8c、8d、8e、8f、8gについて、当該レーダーシステム3は、可能性のあるターゲット物体10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10h、10i、10jに対するターゲット角度φ及びターゲットレンジrを取得するように構成され、当該レーダーシステム3は、レーダー送受信機カバレッジ9の非占有領域境界11及び対応する非占有領域12を求めるように更に構成される。
【0050】
一例によれば、検知ビン8a’、8b’、8c’、8d’、8e’、8f’、8g’は不均一な角サイズを有する。
【0051】
一例によれば、車両レーダーシステム3は、独立して、検出結果を移動検出結果又は静止検出結果に事前に分類するように構成される。
【0052】
一例によれば、レーダーシステム3は、車両1に設置されるように構成され、レーダーシステム3は、上記車両1の運動速度及びヨーレートに対する各検出されたターゲット物体10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10h、10i、10jのドップラー速度及び角度φの解析を行うことによって上記事前分類を行うように更に構成される。
【0053】
一例によれば、車両レーダーシステム3は、所定の数Nのレーダーサイクルにおいて観測された検出結果を記憶するように構成された検出メモリ14を備える。
【0054】
一例によれば、レーダーシステム3は、検出メモリ14に記憶された全ての検出結果の集合内で、各検知ビン8a、8b、8c、8d、8e、8f、8gにおける最も近い静止したターゲット物体10a、10b、10c、10d、10e、10f、10gを選択することによって、各検知ビン8a、8b、8c、8d、8e、8f、8gにおける非占有領域境界11を計算するように構成される。
【0055】
一例によれば、非占有エリア境界11’’は、検出結果10a’’、10b’’、10c’’、10d’’、10e’’、10f’’、10g’’、10e’’、10f’’、10g’’の間に延びる。
【0056】
一例によれば、車両レーダーシステム3は、
2つの検知ビン8b’’’、8e’’’のデカルト座標の間を補間することと、
中間ビン8c’’’、8d’’’のレンジが平滑化閾値を越えているか否かを調べることと、
平滑化閾値を越えている場合、中間ビン8c’’’、8d’’’をそれらの元の値から平滑化することと、
を行うように構成された平滑化手順を実行するように構成される。
【0057】
一般に、また、本開示は、車両レーダーシステムの方法であって、
20:レーダー信号4を生成して送信することと、
21:送信されたレーダー信号4が1つ以上の物体6によって反射されたものである反射レーダー信号5を受信することであって、レーダー信号は、送受信機カバレッジ9をともに形成する複数の検知セクターである検知ビン8a、8b、8c、8d、8e、8f、8gを形成することと、
22:各検知ビン8a、8b、8c、8d、8e、8f、8gについて、可能性のあるターゲット物体10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10h、10i、10jに対するターゲット角度φ及びターゲットレンジrを取得することと、
23:レーダー送受信機カバレッジ9の非占有領域境界11及び対応する非占有エリア12を求めることと、を含む、方法に関する。
【0058】
一例によれば、検知ビン8a’、8b’、8c’、8d’、8e’、8f’、8g’は不均一な角サイズを有する。
【0059】
一例によれば、本方法は、独立して、検出結果を移動検出結果又は静止検出結果に事前に分類することを含む。
【0060】
一例によれば、上記事前分類は、車両1の運動速度及びヨーレートに対する各検出されたターゲット物体10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10h、10i、10jのドップラー速度及び角度φを解析することによって行われる。
【0061】
一例によれば、本方法は、所定の数Nのレーダーサイクルにおいて観測された検出結果を記憶することを含む。
【0062】
一例によれば、本方法は、記憶された全ての検出結果の集合内で、各検知ビン8a、8b、8c、8d、8e、8f、8gにおける最も近い静止したターゲット物体10a、10b、10c、10d、10e、10f、10gを選択することによって、各検知ビン8a、8b、8c、8d、8e、8f、8gにおける非占有領域境界11を計算することを含む。
【0063】
一例によれば、非占有エリア境界11’’は、検出結果10a’’、10b’’、10c’’、10d’’、10e’’、10f’’、10g’’、10e’’、10f’’、10g’’の間に延びる。
【0064】
一例によれば、本方法は、
2つの検知ビン8b’’’、8e’’’のデカルト座標の間を補間することと、
中間ビン8c’’’、8d’’’のレンジが平滑化閾値を越えているか否かを調べることと、
平滑化閾値を越えている場合、中間ビン8c’’’、8d’’’をそれらの元の値から平滑化することと、を更に含む平滑化手順を含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7