(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記パルス入力判定回路は、そのトリガ入力に前記点消灯指示信号に応じたトリガ信号を受ける再トリガ可能単安定マルチバイブレータを含むことを特徴とする請求項1に記載の点灯回路。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用灯具、特に前照灯の光源としては、ハロゲンランプやHID(High Intensity Discharge)ランプが主流であったが、近年それらに代えて、LED(発光ダイオード)などの半導体光源を用いた車両用灯具の開発が進められている。
【0003】
さらなる視認性の向上のため、LEDに代えて、レーザダイオード(半導体レーザとも称する)と蛍光体とを備えた光源が開発されている(たとえば特許文献1参照)。特許文献1に記載の技術では、レーザダイオードから出射された励起光である紫外光が蛍光体に照射される。蛍光体は、紫外光を受けて白色光を生成する。蛍光体により生成された白色光は灯具前方に照射され、これにより所定の配光パターンが形成される。特許文献1に記載の技術では、励起光は灯具前方に照射されない。
【0004】
別の光源では、レーザダイオードは、紫外光に代えて青色の励起光を発生する。青色の励起光を受けた蛍光体は、励起光より長い波長領域(緑〜赤)にスペクトル分布を有する蛍光を発生する。蛍光体に照射された励起光は、蛍光体により散乱され、コヒーレンスが失われた状態で、蛍光体を通過する。蛍光体からは、散乱された青色光と、緑〜赤の蛍光を含む白色光が出力される。
【0005】
たとえばレーザ光源は、ハイビームよりも遠方を照射する追加ハイビームとして使用される。
図1は、追加ハイビームを備える灯具システム1200のブロック図である。左右のランプ(車両用灯具)1300L、1300Rは、同様に構成される。
【0006】
車両用灯具1300は、半導体光源(レーザダイオード)302、灯具ECU310、点灯回路320を備える。灯具ECU310は、CAN(Controller Area Network)あるいはLIN(Local Interconnect Network)などのバス203を介して、車両ECU202と接続される。
【0007】
図示しないハイビーム用の点灯回路の電源と、追加ハイビーム用の点灯回路320の電源は、共通化されている。灯具ECU310のスイッチ312は、バッテリ204から点灯回路320へのバッテリ電圧V
BATの供給経路上に設けられる。CPU(Central Processing Unit)314は、車両ECU202からの指令および車速情報等にもとづいて、スイッチ312のオン、オフを制御し、ハイビームおよび追加ハイビームの点消灯を制御する。
【0008】
高級感を演出するためには、追加ハイビームの光量は時間とともに緩やかに増減することが望ましい。これを徐変点灯、徐変消灯という。徐変点灯のみであれば、スイッチ312のターンオンの後、定電流コンバータ322が緩やかに立ち上がることを利用して実現できる。一方、徐変消灯に関しては、スイッチ312のターンオフのみでは、定電流コンバータ322の出力電流を緩やかに減少させることはできない。
【0009】
そこで点灯回路320には徐変点消灯回路324が設けられる。徐変点消灯回路324は、CPU314からの点消灯指示信号S1にもとづいて、定電流コンバータ322を制御し、徐変点灯、徐変消灯を実行する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
たとえば点消灯指示信号S1のハイレベルを、半導体光源302の点灯に、ローレベルを半導体光源302の消灯に割り当てたとする。このとき、点消灯指示信号S1が伝搬する信号ライン304が天絡(電源ラインとショート)すると、CPU314による点消灯指示信号S1の制御が不能となり、半導体光源302を消灯すべきときに消灯できず、周囲の車両に眩惑を与えるという問題が生ずる。点消灯指示信号S1の論理レベルを入れ替えた場合、信号ライン304が地絡(接地とショート)した場合に、半導体光源302を消灯すべきときに消灯できなくなる。あるいは、灯具ECU310の点消灯指示信号S1の出力形式や、徐変点消灯回路324の点消灯指示信号S1の受信形式によっては、信号ライン304の断線によっても同様の問題が生じうる。なおこのような問題は、徐変点灯、徐変消灯の有無にかかわらず生じうるし、追加ハイビームに限らず、ロービームやハイビームにおいても同様に生じうる。
【0012】
本発明はかかる状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、点消灯指示信号が伝搬する信号ラインに異常が生じた場合に、半導体光源を消灯可能な点灯回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のある態様は、プロセッサからの点消灯指示信号に応じて、半導体光源を点灯または消灯させる点灯回路に関する。点灯回路は、点灯を指示するときにパルス状すなわち矩形波であり、消灯を指示するとき一定レベルである点消灯指示信号を受け、点消灯指示信号がパルス状である点灯状態か否かを判定し、点灯状態においてアサートされる判定信号を生成するパルス入力判定回路と、判定信号がアサートされるとき、半導体光源に駆動電流を供給し、判定信号がネゲートされるとき、半導体光源への前記駆動電流の供給を停止する駆動回路と、を備える。
【0014】
点消灯指示信号を伝送するラインに、断線、天絡、地絡などの異常が発生すると、プロセッサが点消灯指示信号を制御不能となるが、いずれの場合においても点消灯指示信号は、一定レベルに維持される。したがってこの態様によれば、プロセッサが消灯を指示した場合のみでなく、異常が生じた場合にも、半導体光源を消灯することができ、安全性を高めることができる。
「点消灯指示信号がパルス状である」とは、点消灯指示信号が2つの異なる電位を交互に遷移する状態のほか、所定の電位とハイインピーダンス状態を交互に遷移する状態を含む。「点消灯指示信号が一定レベルである」とは、点消灯指示信号が所定の電位を持続する状態のほか、点消灯指示信号がハイインピーダンス状態を持続する状態を含む。
【0015】
パルス入力判定回路は、キャパシタと、点消灯指示信号のエッジに応答してキャパシタを充電(または放電)し、エッジが検出されないときキャパシタを放電(または充電)する充放電回路と、キャパシタの電圧と所定のしきい値電圧の比較結果にもとづいて判定信号を生成する判定部と、を含んでもよい。
点消灯指示信号がパルス状である場合には、周期的にエッジが検出されるため、周期的にキャパシタが充電(または放電)されて、キャパシタの電圧が増大(または低下)する。反対に点消灯指示信号が一定レベルである場合には、キャパシタが充電(または放電)されることなく、持続的に放電されるため、キャパシタの電圧が低下(または増大)する。したがってこの態様によれば、キャパシタの電圧にもとづいて、点灯状態と消灯状態を判定できる。
【0016】
充放電回路は、点消灯指示信号のエッジを検出するエッジ検出回路と、エッジ検出回路の出力に応答してキャパシタに電流を供給する電流源と、キャパシタを放電する放電経路と、キャパシタの電圧が制御端子に入力された比較トランジスタと、を含んでもよい。
点灯状態では、周期的なエッジに応答して電流源がキャパシタを繰り返し充電することで、キャパシタ電圧が増大し、比較トランジスタがオンする。消灯状態では、キャパシタが放電経路により放電されることで、キャパシタ電圧が低下し、比較トランジスタがオフする。したがって比較トランジスタのオン、オフに対応して、点灯状態と消灯状態を判定できる。
【0017】
エッジ検出回路は、点消灯指示信号を微分する微分回路を含んでもよい。
【0018】
パルス入力判定回路は、そのトリガ入力に点消灯指示信号に応じたトリガ信号を受ける再トリガ可能単安定マルチバイブレータを含んでもよい。
点消灯指示信号が点灯状態であるとき、再トリガ可能単安定マルチバイブレータは点消灯指示信号に応じたトリガ信号によって繰り返しトリガされ、したがってその出力は、非安定出力を持続する。反対に点消灯指示信号が消灯状態であるとき、再トリガ可能単安定マルチバイブレータの出力は安定出力を持続する。したがって、再トリガ可能単安定マルチバイブレータの出力状態にもとづいて、点灯状態、消灯状態を判定できる。
【0019】
パルス入力判定回路は、再トリガ可能単安定マルチバイブレータの後段に設けられたローパスフィルタをさらに含んでもよい。この場合、消灯状態から点灯状態への感度を鈍らせることができ、誤点灯を防止できる。
【0020】
パルス入力判定回路は、点消灯指示信号のエッジを検出するエッジ検出回路と、そのトリガ入力にエッジ検出回路の出力に応じたトリガ信号を受ける再トリガ不可能単安定マルチバイブレータと、再トリガ不可能単安定マルチバイブレータの後段に設けられたローパスフィルタと、を含んでもよい。
点消灯指示信号が消灯状態であるとき、再トリガ不可能単安定マルチバイブレータの出力は安定出力を持続する。反対に、点消灯指示信号が点灯状態であるとき、再トリガ不可能単安定マルチバイブレータの出力は、トリガ信号に応じて非安定出力となり、ある時定数時間の経過後に一旦、安定状態に戻り、次のトリガ信号に応じて再び非安定出力となる。つまり、再トリガ不可能単安定マルチバイブレータの出力は、安定状態と非安定状態を繰り返す。そしてローパスフィルタを後段に挿入し、短い安定状態を除去することにより、点灯状態と消灯状態を判定することができる。
【0021】
エッジ検出回路は、点消灯指示信号を微分する微分回路を含んでもよい。
【0022】
パルス入力判定回路は、キャパシタと、点消灯指示信号が第1レベルのときキャパシタを充電し、点消灯指示信号が第2レベルのときキャパシタを放電する充放電回路と、キャパシタの電圧を、第1電圧および第2電圧と比較し、比較結果にもとづいて、点灯指示か消灯指示かを判定する判定部と、を含んでもよい。充放電回路の充電速度および放電速度は、点消灯指示信号がパルス状であるときに、キャパシタの電圧が第1電圧と第2電圧の間に含まれるように規定されてもよい。
これにより、点消灯指示信号がパルス状であるか否かを判定できる。
【0023】
光源は、励起光を出射するレーザダイオードと、励起光の光軸上に設けられ、励起光により励起されて蛍光を発する蛍光体と、を備え、励起光と蛍光のスペクトルを含む白色の出力光を生成するよう構成されてもよい。
この構成の光源では、蛍光体に異常が発生すると、励起光が直接、出射されることとなり危険である。この光源を用いた灯具において、上述の点灯回路を用いることで、蛍光体に異常が発生した場合において、配線が天絡、地絡、断線等した場合に、励起光を確実に停止でき、安全性を高めることができる。
【0024】
本発明の別の態様は、車両用灯具である。この車両用灯具は、半導体光源と、ECU(Electronic Control Unit)からの情報にもとづいて、半導体光源の点灯・消灯を指示する点消灯指示信号を生成するプロセッサと、点消灯指示信号が点灯を指示するとき、半導体光源に駆動電流を供給する点灯回路と、を備える。点消灯指示信号は、点灯を指示するときにパルス信号、消灯を指示するとき一定レベルとなるよう生成される。
【0025】
本発明のさらに別の態様は、灯具システムに関する。灯具システムは、右ランプと、左ランプと、を備える。右ランプおよび左ランプはそれぞれ、半導体光源と、半導体光源の点灯・消灯を指示する点消灯指示信号を生成する灯具ECU(Electronic Control Unit)と、半導体光源に電流を供給する点灯回路と、を含む。右ランプの点灯回路は、右ランプの灯具ECUが生成する点消灯指示信号と、左ランプの灯具ECUが生成する点消灯指示信号の両方が点灯を指示するときに、右ランプの前記半導体光源を点灯させる。また左ランプの点灯回路は、左ランプの灯具ECUが生成する点消灯指示信号と、右ランプの灯具ECUが生成する点消灯指示信号の両方が点灯を指示するときに、左ランプの半導体光源を点灯させる。
この態様によれば、異常が生じた場合にも、半導体光源を消灯することができ、安全性を高めることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のある態様によれば、点消灯指示信号が伝搬する信号ラインに異常が生じた場合に、半導体光源を消灯できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0029】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0030】
また本明細書において、電圧信号、電流信号などの電気信号、あるいは抵抗、キャパシタなどの回路素子に付された符号は、必要に応じてそれぞれの電圧値、電流値、あるいは抵抗値、容量値を表すものとする。
【0031】
(第1の実施の形態)
図2は、第1の実施の形態に係る点灯回路400を備える車両用灯具300のブロック図である。車両用灯具300は、
図1と同様に、追加ハイビームであってもよいし、ロービームあるいは通常のハイビームであってもよい。
図2には灯具システム200全体が示される。
【0032】
車両用灯具300は、半導体光源302、灯具ECU310、点灯回路400を備える。点灯回路400は、プロセッサ(CPU)314からの点消灯指示信号S1に応じて、半導体光源302を点灯または消灯させる。半導体光源302は、たとえばレーザダイオードである。
【0033】
本実施の形態において、CPU314が生成する点消灯指示信号S1は、点灯を指示する点灯状態φ
ONにおいてパルス状であり、消灯を指示する消灯状態φ
OFFにおいて一定レベル(定常状態)である。点灯状態φ
ONは、点消灯指示信号S1が2つの異なる電位(ハイレベルとローレベル、ハイレベルと中間レベル、中間レベルとローレベルなど)を交互に遷移する状態であってもよい。あるいは点灯状態φ
ONは、点消灯指示信号S1が所定の電位(ハイレベル、ローレベルあるいは中間レベル)とハイインピーダンス状態を交互に遷移する状態であってもよい。また消灯状態φ
OFFは、点消灯指示信号S1が所定の電位(ハイレベル、ローレベルあるいは中間レベル)を持続する状態であってもよい。あるいは消灯状態φ
OFFは、点消灯指示信号S1がハイインピーダンス状態を持続する状態であってもよい。
【0034】
本実施の形態では、点灯状態φ
ONにおいて、点消灯指示信号S1はハイレベル(たとえば電源電圧V
DD)とローレベル(接地電圧V
GND)を所定の周期で繰り返し、消灯状態φ
OFFにおいて、点消灯指示信号S1はローレベル(接地電圧V
GND)に固定される。
【0035】
点灯回路400は、パルス入力判定回路402および駆動回路410を備える。パルス入力判定回路402は点消灯指示信号S1を受け、点消灯指示信号S1がパルス状である点灯状態φ
ONか否かを判定する。パルス入力判定回路402は、点灯状態φ
ONにおいて判定信号S2をアサートする。
【0036】
駆動回路410は、判定信号S2がアサート(たとえばハイレベル)されるとき、半導体光源302に駆動電流I
LDを供給し、判定信号S2がネゲート(たとえばローレベル)されるとき、半導体光源302への駆動電流I
LDの供給を停止する。
【0037】
駆動回路410は、たとえばコンバータ412および点灯制御回路414を含む。コンバータ412は、スイッチ312を介して供給される電源電圧V
Hiを受け、それを昇圧または降圧するスイッチングコンバータ(DC/DCコンバータ)を含む。コンバータ412のトポロジーは特に限定されず、半導体光源302の種類、個数などに応じて選択すればよい。
【0038】
点灯制御回路414は、半導体光源302に流れる電流I
LDを検出し、検出した電流I
LDが、半導体光源302の目標の光量に応じた基準値I
REFと一致するように、コンバータ412を制御する。点灯制御回路414の形式は特に限定されず、パルス幅変調のコントローラや、パルス周波数変調のコントローラ、ヒステリシス制御のコントローラなどを用いることができる。徐変点灯の機能を実装する場合、点灯制御回路414は、判定信号S2のアサートを契機として基準値I
REFを緩やかに増加させてもよい。また徐変消灯の機能を実装する場合、点灯制御回路414は、判定信号S2のネゲートを契機として基準値I
REFを緩やかに減少させてもよい。
【0039】
以上が車両用灯具300の基本構成である。続いてその動作を説明する。
【0040】
図3は、
図2の車両用灯具300の動作波形図である。時刻t1より前は、信号ライン304が正常であり、点消灯指示信号S1が正しく伝送される。区間Aにおいて、CPU314は、半導体光源302の点灯を指示するために、パルス状の点消灯指示信号S1を発生する。信号ライン304が正常であるとき、パルス入力判定回路402の入力信号もパルス状となり、パルス入力判定回路402は判定信号S2をアサートする。判定信号S2のアサートをトリガとして点灯制御回路414は、半導体光源302に供給される駆動電流I
LDを緩やかに増加させ、徐変点灯し、その後、駆動電流I
LDを目標値I
REFに安定化させ、半導体光源302の光量を一定に保つ。
【0041】
区間Bにおいて、CPU314は、半導体光源302の消灯を指示するために、ローレベルの点消灯指示信号S1を発生する。その結果、パルス入力判定回路402の入力にパルスが観測されなくなるため、パルス入力判定回路402は判定信号S2をネゲートする。判定信号S2のネゲートをトリガとして点灯制御回路414は、半導体光源302に供給される駆動電流I
LDを緩やかに低下させ、徐変消灯する。
【0042】
時刻t1に、信号ライン304が天絡したとする。信号ライン304が天絡すると、点消灯指示信号S1はハイレベル電圧に固定される。このときパルス入力判定回路402の入力端子にはパルスが観測されないため、判定信号S2のネゲートは維持される。したがって半導体光源302には駆動電流I
LDが供給されず、消灯が維持される。
【0043】
このように第1の実施の形態に係る点灯回路400によれば、プロセッサ314が消灯を指示した場合のみでなく、天絡、地絡あるいは断線等の異常が生じた場合にも、半導体光源302を消灯することができ、安全性を高めることができる。
【0044】
本発明は、
図2のブロック図および上述の説明から把握されるさまざまな回路に及ぶものであるが、以下ではその具体的な構成例を説明する。
【0045】
図4(a)、(b)は、第1構成例のパルス入力判定回路402aの回路図である。
図4(a)に示すようにパルス入力判定回路402aは、充放電回路420、キャパシタC2、判定部430を備える。キャパシタC2の一端の電位は固定される。充放電回路420は、点消灯指示信号S1のエッジに応答してキャパシタC2を充電し、エッジが検出されないときにはキャパシタC2を放電する。なお、充放電回路420の充電動作と放電動作はいれかえてもよい。判定部430は、キャパシタC2の電圧V
C2と所定のしきい値電圧V
THの比較結果にもとづいて、判定信号S2を生成する。
【0046】
図4(b)には、
図4(a)のパルス入力判定回路402aのより具体的な構成例が示される。この例では、判定信号S2のアサート(点灯)はローレベル、ネゲート(消灯)はハイレベルである。充放電回路420は、エッジ検出回路422、電流源424、放電経路426を含む。エッジ検出回路422は、点消灯指示信号S1のポジティブエッジを検出する。たとえばエッジ検出回路422は、微分回路(ハイパスフィルタ)を用いて構成できる。具体的には、エッジ検出回路422は、トランジスタTr1、抵抗R1、キャパシタC1、ダイオードD1、抵抗Rb2を含む。キャパシタC1および抵抗Rb2の直列接続が、微分回路を形成する。ダイオードD1は、点消灯指示信号S1のネガティブエッジにより負電圧にスイングするのを防止するクランパである。
【0047】
電流源424は、トランジスタTr2、Tr3、抵抗R2を含む。点消灯指示信号S1のポジティブエッジが検出されると、トランジスタTr2、Tr3に電流が流れ、キャパシタC2に電流が供給される。パルス状の点消灯指示信号S1が入力され、所定のインターバルでポジティブエッジが検出されると、キャパシタC2が電流源424により繰り返し充電される。
【0048】
放電経路426は、抵抗Rb4を含む。キャパシタC2の電荷は、抵抗Rb4を介して放電される。電流源424の充電電流は、放電経路426による放電電流よりも大きく設計される。
【0049】
判定部430は、トランジスタTr4、抵抗R3を含む。キャパシタ電圧V
C2は、放電経路426が形成する分圧回路によって分圧され、トランジスタTr4のベースに入力される。そしてトランジスタTr4のベースエミッタ間電圧がそのしきい値(順方向電圧Vbe≒0.6V)を超えると、トランジスタTr4が導通し、判定信号S2がローレベル(アサート)となる。
【0050】
図5(a)、(b)は、
図4(b)のパルス入力判定回路402aの動作波形図である。キャパシタC1と抵抗Rb2の接続ノードの電位をVxとする。
図5(a)には点灯指示の、
図5(b)には消灯指示の波形が示される。
図5(a)と
図5(b)で横軸の時間スケールが異なっていることに留意されたい。
【0051】
このように、
図4(b)のパルス入力判定回路402aによれば、パルス状の点消灯指示信号S1が入力されているか否かを判定することができる。
【0052】
図6は、第2構成例のパルス入力判定回路402bの回路図である。パルス入力判定回路402bは、入力回路432および再トリガ可能(retriggerable)単安定マルチバイブレータ434を含む。入力回路432は、トランジスタTr1、抵抗R1を含む反転回路であり、点消灯指示信号S1に応じた(反転論理)のトリガ信号S3を生成する。単安定マルチバイブレータ434は、そのトリガ入力にトリガ信号S3を受ける。単安定マルチバイブレータ434の発振周期は、パルス状の点消灯指示信号S1の周期より長く設定される。
【0053】
点消灯指示信号S1が点灯状態φ
ON、つまりパルス信号であるとき、単安定マルチバイブレータ434は点消灯指示信号S1に応じたトリガ信号S3によって繰り返しトリガされ、したがってその出力Qは、非安定出力を持続する。反対に点消灯指示信号S1が消灯状態であるとき、単安定マルチバイブレータ434の出力Qは安定出力を持続する。したがって、単安定マルチバイブレータ434の出力状態Qを判定信号S2として、点灯状態、消灯状態を判定できる。
【0054】
図4(a)、(b)のパルス入力判定回路402aでは、点消灯指示信号S1のデューティ比(パルス幅)が大きく(あるいは小さく)なると、微分信号Vxが短くなり、キャパシタC2の充電電流が不足し、パルス信号が入力されているにもかかわらず、判定信号S2がネゲートされるおそれがある。
図6のパルス入力判定回路402bによれば、点消灯指示信号S1のデューティ比やパルス幅にかかわらずに、パルス信号を検出できる。
【0055】
図6の利点は、点消灯指示信号S1のデューティ比やパルス幅を自由に変更できることを意味する。したがって、点消灯指示信号S1を半導体光源302の目標光量にもとづいてパルス幅変調し、点消灯指示信号S1に光量の情報を重畳してもよい。この場合、デューティ比100%は直流信号であり消灯状態となるため、100%は使用せずに、100%より低いデューティ比を上限として光量を制御する。また点灯回路400には、パルス入力判定回路402とは別に、点消灯指示信号S1のデューティ比を検出するための回路が追加される。あるいは点消灯指示信号S1を半導体光源302の目標光量にもとづいてパルス周波数変調し、点消灯指示信号S1に光量の情報を重畳してもよい。
【0056】
単安定マルチバイブレータ434の後段に、ローパスフィルタ(不図示)をさらに設けてもよい。この場合、消灯状態から点灯状態への感度を鈍らせることができ、誤点灯を防止できる。
【0057】
図7は、第3構成例のパルス入力判定回路402cの回路図である。
図6で用いた再トリガ可能単安定マルチバイブレータ434は、回路構成が複雑であるため専用のICが必要でありコストが高くなる。
図7では、パルス入力判定回路402cでは、少ない素子数で構成可能な再トリガ不可能(non-retriggerable)単安定マルチバイブレータ436が利用される。
【0058】
パルス入力判定回路402cは、エッジ検出回路422、単安定マルチバイブレータ436、ローパスフィルタ438、出力回路440を備える。エッジ検出回路422は、点消灯指示信号S1のポジティブエッジを検出する。エッジ検出回路422の構成は、
図4(b)のそれと同様である。
【0059】
単安定マルチバイブレータ436は、そのトリガ入力437にエッジ検出回路422の出力に応じたトリガ信号S3を受ける。単安定マルチバイブレータ436の後段には、ローパスフィルタ438が設けられる。出力回路440は、ローパスフィルタ438の出力を2値化して出力する。
【0060】
図8(a)〜(c)は、
図7のパルス入力判定回路402cの動作波形図である。
図8(a)〜(c)には、点消灯指示信号S1のデューティ比が10%、50%、90%のときの波形が示される。
図7のパルス入力判定回路402cによれば、デューティ比によらずに、点灯状態φ
ONを判定できる。
【0061】
図9は、第4構成例のパルス入力判定回路402dの回路図である。パルス入力判定回路402dの基本構成は、
図4(a)のパルス入力判定回路402aと同様である。充放電回路420dは、点消灯指示信号S1に応じてキャパシタC2を充電する。具体的には充放電回路420dは、点消灯指示信号S1が第1レベル(たとえばローレベル)のときキャパシタC2を充電し、点消灯指示信号S1が第2レベル(たとえばハイレベル)のときキャパシタC2を放電する。充電速度および放電速度は、点消灯指示信号S1がパルス状であるときに、キャパシタC2の電圧V
C2が電圧範囲Va〜Vb(Va<Vb)に含まれるように定められる。判定部430dは、キャパシタ電圧V
C2が、電圧範囲Va〜Vbに含まれているとき判定信号S2をアサートし、含まれていないとき判定信号S2をネゲートする。
【0062】
たとえば充放電回路420dは、トランジスタTr1、抵抗R1、R2を含む。点消灯指示信号S1がローレベルであるときトランジスタTr1がオンし、抵抗R1を介してキャパシタC2が充電される。充電速度は、抵抗R1で規定される。点消灯指示信号S1がハイレベルであるときトランジスタTr1がオフし、抵抗R1およびR2を介してキャパシタC2が放電される。放電速度は、抵抗R1、R2で規定される。
【0063】
たとえば点消灯指示信号S1のデューティ比が50%であるときに、キャパシタ電圧V
C2が、電源電圧V
CCと接地電圧V
GND(=0V)の中点電圧V
CC/2付近となるように、充電速度、放電速度を定めてもよい。
【0064】
判定部430dは、キャパシタ電圧V
C2を、2つのしきい値電圧Va、Vbと比較する。たとえば判定部430dは、トランジスタTr3、Tr4、抵抗R3、トランジスタTr2を含む。
トランジスタTr2のゲートソース間しきい値電圧をV
GS(TH2)、トランジスタTr3のゲートソース間しきい値電圧をV
GS(TH3)とする。
V
GS(TH2)<V
C2<V
CC−V
GS(TH3)のとき、トランジスタTr2、Tr3が両方オンとなり、トランジスタTr4もオンとなって、判定信号S2がハイレベル(≒V
CC)となる。V
C2<V
GS(TH2)であるとき、トランジスタTr2がオフ、トランジスタTr3
はオンであり、判定信号S2はローレベル(V
GND)となる。V
CC−V
GS(TH3)<V
C2のとき、トランジスタTr2がオン、トランジスタTr3がオフであり、判定信号S2はローレベルとなる。この構成によれば第1電圧Va=V
GS(TH2)、第2電圧Vb=V
CC−V
GS(TH3)として、キャパシタ電圧V
C2が電圧範囲Va〜Vbに含まれるか否かを判定できる。
【0065】
なお判定部430dは、キャパシタ電圧V
C2を電圧Va、Vbと比較する2個の電圧コンパレータと、2個の電圧コンパレータの出力を論理演算する論理ゲートと、を含むウィンドウコンパレータで構成してもよい。
【0066】
(第2の実施の形態)
図10は、第2の実施の形態に係る灯具システム200のブロック図である。灯具システム200の基本構成は、
図1の灯具システム1200と同様であり、車両ECU202、バッテリ204、右ランプ(車両用灯具)300R、左ランプ300Lを備える。右ランプ300Rと左ランプ300Lは同様に構成される。
【0067】
右ランプ300Rと左ランプ300Lの間には、クロス配線206、208が設けられる。クロス配線206は、右ランプ300Rの点消灯指示信号S1Rを、左ランプ300Lに伝送する。反対にクロス配線208は、左ランプ300Lの点消灯指示信号S1Lを、右ランプ300Rに伝送する。
【0068】
右ランプ300Rの点灯回路320Rは、自身の点消灯指示信号S1Rと、クロス配線208を介して入力される点消灯指示信号S1Lとが両方、点灯を指示するとき、半導体光源302Rを点灯させる。同様に左ランプ300Lの点灯回路320Lは、自身の点消灯指示信号S1Lと、クロス配線206を介して入力される点消灯指示信号S1Rとが両方、点灯を指示するとき、半導体光源302Lを点灯させる。
【0069】
点灯回路320Rは点消灯指示信号S1RとS1Lを論理演算する論理ゲート326を含む。たとえば点消灯指示信号S1R、S1Lがそれぞれ、点灯を指示するときにハイレベルとなるプラットフォームにおいては、論理ゲート326はANDゲートで構成しうる。当業者によれば、各信号の論理レベルに応じて論理ゲート326の論理式および構成が変更しうることが理解される。
【0070】
論理ゲート326の出力(判定信号)S4は、2つの点消灯指示信号S1R、S1Lが両方、点灯を指示するときにアサート(たとえばハイレベル)される。徐変点消灯回路324は、判定信号S4がアサートされると、定電流コンバータ322の動作を開始する。
【0071】
以上が灯具システム200の構成である。続いてその動作を説明する。
図11は、
図10の灯具システム200の動作波形図である。時刻t1より前は、信号ライン304R、304
Lがともに正常であり、点消灯指示信号S1R、S1Lが正しく伝送される。区間Aにおいて、CPU314R、314Lは、半導体光源302R、30
2Lの点灯を指示するために、ハイレベルの点消灯指示信号S1R、S1Lを発生する。このとき論理ゲート326R、326Lの出力(判定信号)S4R、S4Lはハイレベルとなり、徐変点消灯回路324R、324Lは、駆動電流I
LDを緩やかに増加させ、徐変点灯し、その後、駆動電流I
LDを目標値I
REFに安定化させ、半導体光源302R、302Lの光量を一定に保つ。
【0072】
区間Bにおいて、CPU314R、314Lは、半導体光源302の消灯を指示するために、ローレベルの点消灯指示信号S1R、S1Lを発生する。その結果、判定信号S4R、S4Lがローレベルとなり、半導体光源302R、302Lが徐変消灯する。
【0073】
時刻t1に、信号ライン304Rが天絡したとする。信号ライン304Rが天絡すると、点消灯指示信号S1Rは点灯指示に対応するハイレベル電圧に固定される。このとき反対側の点消灯指示信号S1Lはローレベルであるため、右ランプ300R、左ランプ300Lにおいて、判定信号S4R、S4Lはローレベルが維持され、したがって半導体光源302R、302Lの消灯が維持される。
【0074】
このように第2の実施の形態に係る灯具システム200によれば、プロセッサ314が天絡、地絡あるいは断線等の異常が生じた場合に、半導体光源302を消灯することができ、安全性を高めることができる。
【0075】
なお、
図10の灯具システム200において、点消灯指示信号S1L、S1Rそれぞれは、第1の実施の形態のように、点灯状態においてパルス状となるように設計されてもよい。この場合、論理ゲート326の前段に、第1の実施の形態で説明したパルス入力判定回路402を挿入し、論理ゲート326に左右の判定信号S2を入力すればよい。
【0076】
図示しないハイビーム用の点灯回路と、追加ハイビーム用の点灯回路320の電源は、共通化されている。灯具ECU310のスイッチ312は、バッテリ204から点灯回路320へのバッテリ電圧V
BATの供給経路上に設けられる。CPU(Central Processing Unit)314は、車両ECU202からの指令および車速情報等にもとづいて、スイッチ312のオン、オフを制御し、ハイビームおよび追加ハイビームの点消灯を制御する。
【0077】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。