特許第6713120号(P6713120)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 小松 晃雄の特許一覧 ▶ 明昌機工株式会社の特許一覧

特許6713120銅焼結基板ナノ銀含浸型接合シート、製法及び接合方法
<>
  • 特許6713120-銅焼結基板ナノ銀含浸型接合シート、製法及び接合方法 図000010
  • 特許6713120-銅焼結基板ナノ銀含浸型接合シート、製法及び接合方法 図000011
  • 特許6713120-銅焼結基板ナノ銀含浸型接合シート、製法及び接合方法 図000012
  • 特許6713120-銅焼結基板ナノ銀含浸型接合シート、製法及び接合方法 図000013
  • 特許6713120-銅焼結基板ナノ銀含浸型接合シート、製法及び接合方法 図000014
  • 特許6713120-銅焼結基板ナノ銀含浸型接合シート、製法及び接合方法 図000015
  • 特許6713120-銅焼結基板ナノ銀含浸型接合シート、製法及び接合方法 図000016
  • 特許6713120-銅焼結基板ナノ銀含浸型接合シート、製法及び接合方法 図000017
  • 特許6713120-銅焼結基板ナノ銀含浸型接合シート、製法及び接合方法 図000018
  • 特許6713120-銅焼結基板ナノ銀含浸型接合シート、製法及び接合方法 図000019
  • 特許6713120-銅焼結基板ナノ銀含浸型接合シート、製法及び接合方法 図000020
  • 特許6713120-銅焼結基板ナノ銀含浸型接合シート、製法及び接合方法 図000021
  • 特許6713120-銅焼結基板ナノ銀含浸型接合シート、製法及び接合方法 図000022
  • 特許6713120-銅焼結基板ナノ銀含浸型接合シート、製法及び接合方法 図000023
  • 特許6713120-銅焼結基板ナノ銀含浸型接合シート、製法及び接合方法 図000024
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6713120
(24)【登録日】2020年6月5日
(45)【発行日】2020年6月24日
(54)【発明の名称】銅焼結基板ナノ銀含浸型接合シート、製法及び接合方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 3/26 20060101AFI20200615BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20200615BHJP
   B22F 7/08 20060101ALI20200615BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20200615BHJP
【FI】
   B22F3/26 Z
   B22F1/00 K
   B22F7/08 E
   H01L21/60 311Q
【請求項の数】9
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2019-239019(P2019-239019)
(22)【出願日】2019年12月27日
【審査請求日】2020年1月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597120466
【氏名又は名称】小松 晃雄
(73)【特許権者】
【識別番号】597138508
【氏名又は名称】明昌機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084342
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 久巳
(74)【代理人】
【識別番号】100213883
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 雅史
(72)【発明者】
【氏名】小松 晃雄
(72)【発明者】
【氏名】片瀬 徹也
【審査官】 河口 展明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−202944(JP,A)
【文献】 特開2010−065277(JP,A)
【文献】 特開2007−151805(JP,A)
【文献】 特開2016−054098(JP,A)
【文献】 特開2013−168545(JP,A)
【文献】 特開2017−057488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00−9/30
C22C 1/04−1/05
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結結合した複数の銅ナノ粒子からなる多孔質の銅焼結構造体である銅焼結基板と、
該銅焼結基板の表面及び微細孔に配置された、有機被覆を有する複数の銀シングルナノ粒子と、
のみから構成される接合シートであり、
前記銀シングルナノ粒子は互いに結合し、前記銅焼結構造体とも結合し、
前記銀シングルナノ粒子の数密度は、前記接合シートの少なくとも片側の表面で高く、内部では低く、傾斜濃度化されていて、
前記銀シングルナノ粒子を分散させて前記銅焼結基板に配置する際に用いる溶媒が蒸発除去されて、乾燥状態の表面を有し、
前記銀シングルナノ粒子は、銀核の粒径分布における84%粒径(D84)が1.4〜2.0nm、粒径分布幅が15%以下の銀ナノ粒子であることを特徴とする接合シート。
【請求項2】
前記銀シングルナノ粒子は、有機被覆量10〜15質量%のカルボン酸被覆銀ナノ粒子である請求項に記載の接合シート。
【請求項3】
前記銅ナノ粒子は、有機被覆を有さない、平均粒径が5×101nmの銅粒子である請求項1又は2に記載の接合シート。
【請求項4】
前記数密度が、前記接合シートの裏表の両方の表面から内部に向けて低くなっている請求項1〜3のいずれかに記載の接合シート。
【請求項5】
前記数密度が、前記接合シートの裏表の表面のうち、片側の表面から他方の表面に向けて低くなっている請求項1〜3のいずれかに記載の接合シート。
【請求項6】
有機被覆を有する銀シングルナノ粒子を溶媒に分散させてシングルナノ銀分散液を得る、シングルナノ銀分散液準備工程と、銅ナノ粒子を含有するナノ銅ペーストを焼成して多孔質の銅焼結基板を形成する銅焼結基板形成工程と、前記銅焼結基板の表面に、前記シングルナノ銀分散液を塗布若しくは含浸させ、更に乾燥させて前記溶媒を除去することにより、前記銅焼結基板の前記表面及び該表面に隣接する体積領域に、傾斜濃度化された銀シングルナノ粒子を配置して、傾斜機能を付与する傾斜機能付与工程、を有する接合シートの製法であり、
前記接合シートは乾燥状態の表面を有し、
前記銀シングルナノ粒子は、銀核の粒径分布における84%粒径(D84)が1.4〜2.0nm、粒径分布幅が15%以下の銀ナノ粒子であることを特徴とする接合シートの製法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の接合シートを介して、第1被接合物と第2被接合物を接合する接合方法であり、第1被接合物と、1枚以上の前記接合シートと、第2被接合物と、をこの順に積層して積層体を形成する積層ステップと、圧力を加えつつ、当該積層体を焼成して接合体を形成するステップを有することを特徴とする接合方法。
【請求項8】
前記積層ステップにおいて、積層に先立って実装時の固定化を確実にするための固定化助剤を前記接合シートの表面に添加し、
前記固定化助剤は、イソボロニルシクロヘキサノールを10〜30質量%の濃度でメチルシクロヘキサンに溶解させた溶液である請求項7に記載の接合方法。
【請求項9】
被接合物に、請求項1〜5のいずれかに記載の接合シートを積層して仮留めしてなる積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結接合用の接合シートとその製法及び接合方法に関し、更に詳しくは、パワー半導体と銅基板の接合等の、高温での使用に耐える接合構造を形成するための、焼結接合用の接合シートとその製法及び接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の先端技術の高度化に伴って、半導体等接合製品の小型化・高性能化が要請され、高温環境でも使用できる耐熱性を具えた接合材料が求められている。現在の市販流通品である鉛合金はんだは、有害物質の鉛金属イオンが当該はんだを使用した工業製品が廃棄される際に排出されるため、環境有害物質に指定され、現在、代替品が無いとの理由で例外的に使用が認められている状況である。鉛フリー合金はんだ使用上限温度は現状で230℃であり、鉛はんだ使用温度320℃ですら、市場が求める耐熱性の要請からはほど遠い状況にある。より高温での使用に耐え、かつ市場が認める諸特性を備えた、鉛フリーな接合材料が要請されている。
【0003】
銀ナノ粒子は比較的低温で焼結でき、優れた電気的・熱的特性を有することから、鉛はんだに代わる半導体接合材料として、種々の製法が開発されており、それを分散させた焼結性接合剤ペーストはよく知られている。また、そのペーストに高分子有機材料を混錬させて、ペーストの粘度調整溶剤等を除外させて薄くシート状にまで加工したナノ金属接合シートについても開発され、ペーストを塗布・乾燥・焼結する工程よりも実装時により簡便となる工夫がされたナノ金属接合シート(特許文献4)や、焼結を不完全な状態で終了させてあるナノ銀接合シート(特許文献6)についても知られている。しかし、これらナノ金属ペースト材料の従来品では、接合特性に関しては鉛はんだや鉛フリー型はんだに比較して優れているが、ダイアタッチ時のはみ出しやペースト塗布厚の不均一、焼結層の脆弱性など実装過程での種々の問題点が生じる。ナノ金属ペーストのシート化材料であるナノ金属接合シートでは実装過程での簡便さの問題は解決しているが、ペーストのシート化時に混錬する高分子材料の焼成過程でペーストよりさらに高温・長時間焼成が必要となり、この点での改善は不可欠である。
【0004】
特開2006−202944号公報(特許文献1)には、図15に示すように、半導体素子101の銀電極111と銅基板121aとの間に、多孔質金属層である銅ポーラス板103を介在させ、ナノ銀ペースト104を、銀電極111と銅ポーラス板103との間、及び銅基板121aと銅ポーラス板103との間に設置し、加熱して接合する接合方法の発明が開示されている。この発明は、ナノ銀ペーストの使用量削減と応力緩和の効果を有するが、ナノ銀ペーストのバインダに含まれる有機成分が焼成の際に多量にガス化するため、形成される接合構造の接合強度、耐熱性、電気伝導度及び熱伝導度に悪影響を及ぼすこと、ペースト状の接合材料であるためシート状の接合材料に比べて実装過程での種々の複雑さが存在すること、更に加熱接合過程での焼成設定温度で、長い保持時間を要すること等の欠点がある。
【0005】
被接合材料にナノ銀ペーストを塗布して焼成により接合する方法や、その結果生じる接合構造については、いくつかの従来技術が存在する。特開2012−074627号公報(特許文献2)には接触抵抗を低減せしめる観点から、特開2018−193604号公報(特許文献3)には放熱性の向上と損傷抑制の観点から、特開2016−021578号公報(特許文献5)にはコスト削減の観点から、特許文献1と同様な接合方法又は接合構造の発明が開示されている。しかし、いずれもペースト状の接合材料を使用するため、シート状の接合材料に比べて実装過程での種々の複雑さが存在することや焼成設定温度で
の加熱接合に長時間を要すること等の欠点がある。
【0006】
特開2017−069560号公報(特許文献4)には、金属微粒子を含む加熱接合用シートの発明が開示されている。しかし、この発明には、加熱接合用シートが含有する熱分解性バインダが焼成時に多量の気体を発生させるため、接合強度等が低下し、かつ焼成設定温度での加熱接合に長時間を要する欠点等がある。また、国際公開2015−056589号公報(特許文献6)には、銀ナノ粒子を含有するペーストの焼結により作製される加熱接合用の銀シートであって、該焼結を途中で停止させてある銀シートの発明が開示されている。しかし、この発明では、加圧下で焼成設定温度170℃〜250℃での加熱接合に於いて完全焼結には更に3〜30分の長時間を要することや、多量の銀ナノ粒子を含有するため高コストである等の欠点がある。
【0007】
一般に加熱接合用の接合シートを用いた半導体実装分野での高精度化・微細化接合に要請される課題を要約して述べると、実装プロセスの簡易化・短時間化、低コスト化、合わせて高機能性保持と共に、長期安定性も有し、同時に量産性も保証すること、さらに近年重要となる製品の廃棄時における環境安全性が挙げられる。
より詳しくは、接合シートには工業製品として次の特性が求められる。(1)焼成前では、工業製品としての保存時における品質安定性、切断容易性など積層体形成作業の簡便性、(2)焼結進行時においては、より低い焼結温度、より短い焼結時間、焼結時に発生する分解成分の安全性、(3)焼結完了後は接合強度特性、電気伝導・熱伝導特性、環境温度の変化への適正応答性、すなわち応力緩和特性を有するなど長期品質信頼性が求められる。上記の通り、これらをすべて解決した製品は見当たらないし、はんだ等現状市場流通製品に比較して、優れた特性を有し、応力緩和が最適化なされていなければならない。本発明は、流通製品であるはんだ接合剤や接合シートより、上記のすべての点で優れている性能特性を有する製品を実現することを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−202944号公報
【特許文献2】特開2012−074627号公報
【特許文献3】特開2018−193604号公報
【特許文献4】特開2017−069560号公報
【特許文献5】特開2016−021578号公報
【特許文献6】国際公開2015−056589号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Ph. Buffat and J−P. Borel Phys. Rev. A13, 2287 (1976)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって本願発明の課題は、鉛フリーで、高温耐熱接合用途に用いることができ、実装が簡便で、形成される接合の強度、電気伝導度及び熱伝導度に優れ、低コストに製造でき、長期保存可能な、焼結接合用の接合シートとその製法、及び該接合シートを用いた接合方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、銅ナノ粒子からなる銅焼結基板と、シングルナノ銀単分散液の該銅焼結基板への塗布・乾燥を組み合わせて、強接合かつ長期信頼性を示す加圧・短時間焼結接合型の接合シートを実現することにより上記課
題を解決するものである。すなわち、ナノ金属ペーストの金属成分を銅ナノ粒子に置き換えて低価格化を図り、ナノ銅ペーストを無加圧、あるいは低加圧下で焼成して、微細孔を多数保有する均一厚みで平行度が良く、内部応力緩和機能を保有する数十ミクロン程度の厚みの焼結完了済みの銅焼結基板を作成し、その接合面となる表面、好ましくは両方の表面には、均一粒子径のシングルナノ銀単分散液を表面から内部にしみこませて塗布して乾燥させる。好ましくは低分子カルボン酸で被覆された、銀シングルナノ粒子を単分散させたシングルナノ銀分散液の塗布乾燥膜(ナノ銀含浸領域)の焼成設定温度は250℃程度が可能であり、銀シングルナノ粒子の粒径分布幅が小さく、短時間内に焼成が一気に進む設計が可能な特徴がある。
【0012】
本発明の第1の形態は、焼結結合した複数の銅ナノ粒子からなる多孔質の銅焼結構造体である銅焼結基板と、該銅焼結基板の表面及び微細孔に配置された、有機被覆を有する複数の銀シングルナノ粒子から構成される接合シートであり、前記銀シングルナノ粒子は互いに結合し、前記銅焼結構造体とも結合し、前記銀シングルナノ粒子の数密度は、前記接合シートの少なくとも片側の表面で高く、内部では低く、傾斜濃度化されていることを特徴とする接合シートである。
【0013】
本発明の第2の形態は、前記銀シングルナノ粒子は、銀核の粒径分布における84%粒径(D84)が1.4〜2.0nm、粒径分布幅が15%以下の銀ナノ粒子である前記接合シートである。
【0014】
本発明の第3の形態は、前記銀シングルナノ粒子が、有機被覆量10〜15質量%のカルボン酸被覆銀ナノ粒子である前記接合シートである。
【0015】
本発明の第4の形態は、前記数密度が、前記接合シートの裏表の両方の表面から内部に向けて低くなっている前記接合シートである。
【0016】
本発明の第5の形態は、前記数密度が、前記接合シートの裏表の表面のうち、片側の表面から他方の表面に向けて低くなっている前記接合シートである。ただし、該数密度が低い方の表面においても、銀シングルナノ粒子の数密度は、接合機能を有する程度の数密度となっている。
【0017】
本発明の第6の形態は、有機被覆を有する銀シングルナノ粒子を溶媒に分散させてシングルナノ銀分散液を得る、シングルナノ銀分散液準備工程と、銅ナノ粒子を含有するナノ銅ペーストを焼成して多孔質の銅焼結基板を形成する銅焼結基板形成工程と、前記銅焼結基板の表面に、前記シングルナノ銀分散液を塗布若しくは含浸させ、更に乾燥させることにより、前記銅焼結基板の前記表面及び該表面に隣接する体積領域に、傾斜濃度化された銀シングルナノ粒子を配置して、傾斜機能を付与する傾斜機能付与工程、を有することを特徴とする接合シートの製法である。
【0018】
本発明の第7の形態は、前記接合シートを介して、第1被接合物と第2被接合物を接合する接合方法であり、第1被接合物と、1枚以上の前記接合シートと、第2被接合物、をこの順に積層して積層体を形成する積層ステップと、圧力を加えつつ、当該積層体を焼成して接合体を形成するステップを有することを特徴とする接合方法である。
【0019】
本発明の第8の形態は、前記積層ステップにおいて、積層に先立って実装時の固定化を確実にするための固定化助剤を前記接合シートの表面に添加する前記接合方法である。
【0020】
本発明の第9の形態は、被接合物に、前記接合シートを積層して仮留めしてなる積層体である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の第1の形態によれば、焼結結合した複数の銅ナノ粒子からなる多孔質の銅焼結構造体である銅焼結基板と、該銅焼結基板の表面及び微細孔に配置された、有機被覆を有する複数の銀シングルナノ粒子から構成される接合シートであり、前記銀シングルナノ粒子は互いに結合し、前記銅焼結構造体とも結合し、前記銀シングルナノ粒子の数密度は、前記接合シートの少なくとも片側の表面で高く、内部では低く、傾斜濃度化されていることを特徴とする接合シートを提供できる。
【0022】
本形態の接合シートは、焼成済の銅焼結基板と、未焼成の銀シングルナノ粒子群から構成される。銅焼結基板は銅ナノ粒子の焼結により、微細孔を有して互いに粒子間結合した銅金属の多孔質の焼結構造体(銅焼結構造体)を形成している。有機被覆を有する銀シングルナノ粒子群は、銅焼結基板の表面及び銅焼結構造体の微細孔内に吸着結合して分布している。図2を参照して、銅焼結基板2と銀シングルナノ粒子5からなるこのような構成は、例えば、銅ナノ粒子4を含むナノ銅ペーストを焼成して銅焼結基板2を作製し、銅焼結基板2の表面に銀シングルナノ粒子5を含むシングルナノ銀分散液を塗布・含浸させ、さらにシングルナノ銀分散液の溶媒を乾燥除去することにより形成することができる。「銅焼結基板と・・銀シングルナノ粒子群から構成される」とは、銀シングルナノ粒子を銅焼結基板の表面及び微細孔に配置する際に用いられる溶媒などが除去されていることを意味する。本形態の接合シートは、溶媒が除去されているゆえに、乾燥状態の表面を有するから、特にカバーの為のフィルム等を施さなくても数枚を重ねて保管することに支障がなく、空気中の塵埃も付着しにくく、取り扱いが容易で保存性にも優れる。また、溶媒が除去されているから、該接合シートを用いた接合の為の加圧焼成の際には、溶媒の熱分解や酸化分解によるガスの発生がないので、銅金属の多孔質焼結構造体の破壊・劣化がなく、銀シングルナノ粒子の銀金属成分の低温融解現象により、銅金属の多孔質焼結構造体の銀メッキ化と銀銅合金化により強固な接合構造体が形成される。
【0023】
本形態の接合シートには2つのタイプがある。1つは図(1A)に示すように、裏表の両面に銀シングルナノ粒子が高密度に分布しているタイプAであり、もう1つは図(1B)に示すように、銀シングルナノ粒子が片面には高密度で、裏面は焼成時の接合が可能な程度に低濃度に分布制御されたタイプBである。本形態の接合シートの使用時には、例えば2つの被接合物の間にタイプAの本接合シートを挟んで積層体を形成し、この積層体を加圧焼成することにより、本接合シートに含まれる銀シングルナノ粒子の有機被覆を酸化除去しつつ、該銀シングルナノ粒子の銀核を、他の銀シングルナノ粒子の銀核や、焼結結合済の銅ナノ粒子や、被接合物と焼結結合させて、本接合シートを介して2つの被接合物が接合した接合体を形成する。接合のために焼成する際には、銅焼結基板は焼結済であり、銀シングルナノ粒子を焼結させるだけでよいから、焼成設定温度での焼成に要する時間は短くて済む。加えて本接合シートにおいては、焼結が必要な銀シングルナノ粒子は熱伝達の速い表面付近に集中しており、焼成設定温度での焼成に要する時間は10〜60秒程度の短時間で済み、従来のナノ銀ペーストによる接合の1/5程度の時間で焼成でき、熱分解してガスを発生する溶媒がそもそも存在せず、かつ、接合強度低下の原因となる銀シングルナノ粒子の有機被覆の熱分解に伴うガスの発生量も少ないから大きな接合強度を確保できる。更に、従来のナノ銀ペーストでは必要であった塗布の手間も、はみ出しの心配も、乾燥に要する時間も不要である。加えて、本形態の接合シートは、銀の使用量が少なくて済むから低コストで製造できる。
【0024】
更に、本形態の接合シートにおいては、表面に垂直な方向での銀シングルナノ粒子の濃度分布は、内部に進むにつれて濃度が小さくなり(図(1c)を参照)、被接合物との接合界面33付近には銀シングルナノ粒子がほぼ100%、すなわち95%以上の相対濃度(銀成分の密度の、銀成分と銅成分の密度の合計に対する割合)で集中しており、接合の
ための焼成後の接合界面での接合力は、銀シングルナノ粒子の焼結による低融点化した銀核の融液が全て担い、熱伝導度及び電気伝導度に優れた強接合が可能な設計となっている。また、接合シートの内部においては銀シングルナノ粒子の銀核と多孔質の銅焼結構造体がほぼ合金化されて一体化し、強固な結合を形成する。
【0025】
本明細書において、銅ナノ粒子とは、有機被覆されていない、平均粒径が約5×101nm程度の銅粒子をいう。本形態の接合シートは、焼結結合した複数の銅ナノ粒子からなる多孔質の銅焼結基板が応力緩和特性を発揮するから、接合のための焼成時には被接合物間の温度伸縮特性の相違によらない強固な接合の形成という利点を有し、接合のための焼成後には形成された接合の高耐久性及び長期信頼性という利点を有する。例えば、本形態の接合シートを間に挟んで、接合面には金属メッキ加工がなされたシリコン半導体と銅基板を、加圧焼成により強固に接合することができ、形成された接合は熱衝撃に対する長期耐久性を有する。
【0026】
なお、本明細書において、銀シングルナノ粒子とは、平均粒径が約2nm程度の銀ナノ粒子をいう。銅焼結基板に銀シングルナノ粒子を配置する際に使用する溶媒中での分散性の観点から、銀シングルナノ粒子は有機被覆を有しているが、上記の平均粒径とは、有機被覆の部分を含まない、銀核の粒径(直径)の平均(個数平均)をいう。
【0027】
本発明の第2の形態によれば、前記銀シングルナノ粒子は、銀核の粒径分布における84%粒径(D84)が1.4〜2.0nm、粒径分布幅が15%以下の銀ナノ粒子である前記接合シートを提供できる。84%粒径(D84)は、多数の粒子を粒径が小さい順に並べて、最も粒径が小さい粒子を0%、最も粒径が大きい粒子を100%の位置としたとき、84%の位置に存在する粒子の粒径のことであり、粒径分布が正規分布の場合には、平均粒径(m)に標準偏差(σ)を加えた値(m+σ)に相当する粒径である。本形態の銀シングルナノ粒子は、その84%の粒径が2.0nm以下であり、粒子の融点が250℃以下であるから、250℃程度の低い温度で焼結結合して銀化することが可能である。なお、84%粒径が1.4nm未満の銀シングルナノ粒子群は、作製時の粒径制御が難しい。また、粒径分布幅(粒径分布の標準偏差の、平均粒径に対する割合)は15%以下と狭いことが好ましい。例えば、平均粒径1.7nm±0.3nm(粒径の標準偏差)であれば、粒径分布幅は15%であるから、この条件を満たす。接合シートに含まれる銀シングルナノ粒子の粒径分布幅が狭いと、接合のための焼成の際に、該銀シングルナノ粒子同士はほぼ同一温度で溶融して結合可能となるから、焼結が一気に進み、短時間で効率的に焼結結合して、強固な接合が確実に形成される利点がある。
【0028】
本発明の第3の形態によれば、前記銀シングルナノ粒子が、有機被覆量10〜15質量%のカルボン酸被覆銀ナノ粒子である前記接合シートを提供できる。有機被覆の成分がカルボン酸由来の銀シングルナノ粒子は、焼結時にカルボン酸の酸化分解反応により発熱する。したがって、被接合物と本形態の接合シートを250℃程度の低温の焼結環境温度で接合する場合であっても、本接合シートにおいて、被接合物との接合界面付近に存在する銀シングルナノ粒子は焼結の進行とともに連鎖的に溶融状態となり、効率的かつ加速度的に接合が確実に進行する。すなわち、加温焼結時に銀シングルナノ粒子の有機被覆の酸化分解反応がもたらす発熱効果により、接合シートの接合界面付近全体の温度が自発高温化し、焼結が一気に加速されるように設計されているのである。本形態の接合シートは焼成時に、このように設計された「機能性銀銅ハイブリッド焼結層」を形成可能であるから、低温の焼結環境温度であっても、短時間焼結及び強固な結合の形成という利点を有する。なお、銀シングルナノ粒子の有機被覆量が10質量%未満である場合には、後述するシングルナノ銀分散液の溶媒中における銀シングルナノ粒子の分散性が悪くなり凝集しやすくなるため、銀シングルナノ粒子を銅焼結基板に配置する際に、その表面に沿った方向に均一に配置することが困難になる。また、有機被覆量が15質量%を超える場合には、有機
被覆の酸化分解に時間を要し、短時間焼結が難しくなる。
【0029】
本形態においては、上記の発熱効果を確保する観点から、銀シングルナノ粒子の銀核の粒径が小さくなるほど、カルボン酸被覆のカルボン酸の分子量および炭素数は小さいことが好ましい。しかし、小さすぎる銀核は、湿式還元法で形成する際の粒径の制御が困難である。粒径が約2.0nm程度の銀核に対しては、該カルボン酸は、炭素数8のオクタン酸が最適である。
【0030】
本発明の第4の形態によれば、前記数密度が、前記接合シートの裏表の両方の表面から内部に向けて低くなっている前記接合シートを提供できる。本発明の接合シートには、タイプAとタイプBの2つのタイプがある。本形態は、このうちタイプAの接合シートである。例えばシリコン半導体と銅基板のように、温度伸縮特性の異なる2つの被接合材をタイプAの接合シートを介して積層して低温で加圧焼成することにより、強固な接合を形成することができ、形成された接合は熱衝撃に対する長期耐久性を有する。
【0031】
タイプAの接合シートの場合には、図(2A)に示すように、銀シングルナノ粒子の数密度は、接合シートの裏表の両方の表面で大きく、内部で小さくなり、片側の表面からの距離を横軸に、前記比の値を縦軸にとってグラフを描くと、U字型のグラフとなる。タイプBの接合シートの場合には、図(2B)に示すように、前記数密度は、接合シートの片側の表面で大きく、内部方向に進むにつれて減少し、前記片側の表面からの距離xを横軸に、前記比の値を縦軸にとってグラフを描くとおよそ指数関数的に減少するグラフとなる。dを銅焼結基板の厚さ、C,Lを正のパラメータとして、0<x≦dの範囲で前記比の値を指数関数C×exp(−x/L)でフィットしたとき、長さL×ln(2)をタイプBの接合シートの半減厚という。また、タイプAの接合シートの場合には、C,D,Lを正のパラメータとして、0<x≦dの範囲で前記比の値を2つの指数関数の和C×exp(−x/L)+D×exp((x−d)/L)でフィットしたとき、長さL×ln(2)を半減厚という。なお、いずれのタイプの接合シートでも、ナノ銀がコートされた表面における、銀シングルナノ粒子の前記相対濃度はほぼ100%、すなわち95%以上である。
【0032】
接合シートのナノ銀がコートされた表面から深さLまでの範囲(0≦x≦L)に含まれる体積領域をナノ銀含浸領域という。ナノ銀含浸領域(3)は便宜上、定めた体積領域であって、接合シートのナノ銀含浸領域以外の部分にも銀シングルナノ粒子は存在している。また、接合シートの厚みが薄い場合には、タイプAでもタイプBでも、接合シート全体がナノ銀含浸領域となる。
【0033】
なお、十分な接合強度を確保する観点から、最低限の銀シングルナノ粒子の含有量は必要であり、半減厚は小さすぎないことが好ましい。半減厚は限定されるものではないが、概ね1〜100μmであり、より好ましくは5〜20μmである。なお、接合シートの厚みが薄い場合には、半減厚に上限を設ける必要はない。
【0034】
本発明の第5の形態によれば、前記数密度が、前記接合シートの裏表の表面のうち、片側の表面から他方の表面に向けて低くなっている前記接合シートを提供できる。本形態は、タイプBの接合シートである。タイプBの接合シートは通常、その厚みが薄くて接合シート全体がナノ銀含浸領域であるものを使用し、半分の厚みのものを2枚重ねて使用してタイプAの代わりに用いる。そうすることで、焼成接合後には、タイプAの接合シートにおいて最も脆弱な銅焼結基板の内部のかわりに、「機能性銀銅ハイブリッド焼結層」が配置され、大きな接合強度を確保することができる。
【0035】
本発明の第6の形態によれば、有機被覆を有する銀シングルナノ粒子を溶媒に分散させ
てシングルナノ銀分散液を得る、シングルナノ銀分散液準備工程と、銅ナノ粒子を含有するナノ銅ペーストを焼成して多孔質の銅焼結基板を形成する、銅焼結基板形成工程と、前記銅焼結基板の表面に、前記シングルナノ銀分散液を塗布若しくは含浸させ、更に乾燥させることにより、前記銅焼結基板の前記表面及び該表面に隣接する体積領域に、傾斜濃度化された銀シングルナノ粒子を配置して、傾斜機能を付与する傾斜機能付与工程、を有することを特徴とする接合シートの製法を提供できる。
【0036】
シングルナノ銀分散液準備工程においては、有機被覆を有する銀シングルナノ粒子を溶媒に分散させてシングルナノ銀分散液を得る。溶媒としては限定されるものではないが、アルカン系溶剤、例えばメチルシクロヘキサンを使用できる。粘度調整のために低沸点溶剤を少量加えてもよい。銀シングルナノ粒子は粒径分布幅が約15%以下と狭く、かつ、溶媒中に単分散していることが好ましい。エヴァポレータを用いて濃度を調整し、銀シングルナノ粒子を約10質量%の濃度で含むシングルナノ銀分散液を得る。
【0037】
銅焼結基板形成工程においては、銅ナノ粒子を含有するナノ銅ペーストを焼成して多孔質の銅焼結基板を形成する。鏡面研磨された基板、例えばシリコン基板上にナノ銅ペーストを約15〜200μm程度の均一な厚みで塗布し、ナノ銅ペーストに含まれる溶媒を乾燥させる工程を経て、純窒素ガス雰囲気で無加圧、若しくは低加圧で焼成して、シリコン基板から分離し、約10〜150μm程度の均一厚みの自立した焼結済みの銅焼結基板を得る。
【0038】
傾斜機能付与工程においては、多孔質の銅焼結構造体である銅焼結基板の少なくとも片側の表面に、前記シングルナノ銀分散液を塗布若しくは含浸させ、更に低温でゆっくり乾燥させることにより、前記銅焼結基板の少なくとも前記表面の側に、傾斜濃度化された有機被覆を有する銀シングルナノ粒子を含むナノ銀含浸領域を形成して、前記銅焼結基板にナノ銀をコートしてなる接合シートを得る。このようにしてナノ銀含浸領域を形成することにより、接合シートにおける銀シングルナノ粒子の濃度は、表面が高濃度で、内部に向かって低濃度化した傾斜濃度分布となる。
【0039】
傾斜機能付与工程において、銅焼結基板の表面にシングルナノ銀分散液を塗布若しくは含浸させ、更に低温でゆっくり乾燥させると、銀シングルナノ粒子が銅焼結基板の表面及び微細孔に配置され、前記有機被覆を有する銀シングルナノ粒子群は、銅焼結基板の表面及び多孔質の銅焼結構造体の微細孔内に吸着結合して分布した接合シートが得られる。一方、シングルナノ銀分散液の溶媒と、オプションで添加される低沸点溶剤とは、低温でゆっくり乾燥させる際に蒸発して除去される。したがって、接合シートの表面は乾燥状態となるから、当該接合シートは数枚を重ねて保管することに支障がなく、空気中の塵埃も付着しにくく、取り扱いが容易で保存性にも優れる。更に、接合のための焼成設定温度(250℃〜350℃)での焼成の際には、溶媒や低沸点溶剤は上記の通り蒸発除去されて存在しないから、溶媒や低沸点溶剤が銀シングルナノ粒子の焼結を妨げることはない。
【0040】
本発明の第7の形態によれば、図(3A)又は図(3B)を参照して、前記接合シート(1a又は1b)を介して、第1被接合物(6a)と第2被接合物(6b)を接合する接合方法であり、第1被接合物と、1枚以上の前記接合シート(1a又は1b)と、第2被接合物、をこの順に積層して積層体(10)を形成する積層ステップと、圧力を加えつつ、当該積層体を焼成して接合体を形成するステップ、を有することを特徴とする接合方法を提供できる。被接合物は限定されるものではないが、たとえば、パワー半導体等の半導体、電子部品、金属基板、回路基板、又は放熱板であり、特に、パワー半導体と銅基板が好適である。接合シートは、被接合物の形状にあわせて、自在にカットされた切断片として利用してもよい。
【0041】
本発明に係る接合シートは、製造時及び実装時の取り扱い容易性の観点から、その厚さは、好ましくは10〜150μmの範囲で、より好ましくは20〜100μmの範囲で変える設計が可能で、放熱基板等大面積接合には厚く、小面積の半導体接合では薄くし、多数枚のシートの重ね合わせ接合も可能である。本接合シートによって形成される接合構造をせん断破壊すると、接合界面付近ではなく銅焼結基板の内部で破壊されることから、接合界面付近のナノ銀含浸領域で形成される「機能性銀銅ハイブリッド焼結層」は内部より高強度であることがわかる。したがって、本接合シートは、1枚の厚さが約30μm以下と薄い場合、本接合シートを重ね合わせて加圧・焼成して接合する方が、接合部全体の厚みを有する1枚のみの本接合シートを加圧・焼成して接合する場合と比較して、より低温・低加圧での焼成で同等の接合強度が確保できる。
【0042】
本発明の第8の形態によれば、前記積層ステップにおいて、積層に先立って実装時の固定化を確実にするための固定化助剤を前記接合シートの表面に添加する前記接合方法を提供できる。本形態の接合方法によれば、積層の際、被接合物と当接する接合シートの表面に固定化助剤が添加されているから、軽く抑えるだけで本接合シートを被接合物に確実に固定化することができる利点を有する。固定化助剤は一定の条件を満足するならばその種類を問わない。その条件とは、(1)上記固定化に必要な粘性を有し、(2)銅焼結基板のナノ銀含浸領域の表面に少量を添加したとき、表面全体に一様な厚みで広がる濡れ性を有し、(3)焼成設定温度(250℃〜350℃)より低い温度で蒸発するから、接合のための焼成時に、銀シングルナノ粒子の焼結を妨げることがなく、(4)少量の使用で足りるので、上記の蒸発で発生する気体も少ないこと、である。たとえば、固定化助剤として、イソボロニルシクロヘキサノールを10〜30質量%、より好ましくは20質量%の濃度でメチルシクロヘキサンに溶解させた溶液を用い、該溶液を銅焼結基板のナノ銀含浸領域の表面に1滴若しくは数滴を滴下することで、上記(1)〜(4)の条件を満たす固定化を達成することができる。
【0043】
本発明の第9の形態によれば、図(4A)又は図(4B)を参照して、被接合物(6)に、前記接合シート(1b)を積層して仮留めしてなる積層体を提供できる。被接合物は限定されるものではないが、たとえば、パワー半導体等の半導体、電子部品、金属基板、回路基板、又は放熱板であり、特に、放熱板が好適である。接合シートは、被接合物の形状にあわせて、自在にカットされた切断片として利用してもよい。
【0044】
本形態の利用例について説明する。整流素子など電流仕様の発熱の多い半導体と一般の半導体を同一基板上に接合・配置する際に、整流素子の上面に放熱板をさらに加えて接合する必要がある。1つの実装方法は、まず、一般の半導体と整流素子を本発明に係る接合シートにより基板上に焼成接合・配置し、次に、整流素子と放熱板を本発明に係る接合シートを介して焼成接合する方法である。この場合、本形態のように放熱板にあらかじめ本発明に係る接合シートを仮留めした中間積層体を準備しておくと、整流素子と本発明に係る接合シートと放熱板をこの順に接合した積層体を形成する際の位置合わせ等の手間が省ける。なお、仮留めの方法は限定されず、接着剤による局所接着や、局所加圧焼結など様々な方法があり得る。また、用いる接合シートはタイプAでもタイプBでも構わず、タイプBの裏表は被接合物の性質に応じていずれでもよく、複数枚の接合シートを仮留めしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1図1は接合シートの断面構造の説明図である。
図2図2は接合シートにおける銀シングルナノ粒子の傾斜濃度分布を説明するための模式図である。
図3図3は接合シートを介して2つの被接合物を積層した積層体の説明図である。
図4図4は被接合物と接合シートを積層した中間積層体の説明図である。
図5図5は接合シートの製法のフロー図である。
図6図6はシングルナノ銀分散液についての熱重量示差熱分析の結果を示すグラフ図である。
図7図7は、銀シングルナノ粒子の電子顕微鏡写真の写真図である。
図8図8はシリコン基板上に銅ナノペーストを塗布した状態を示す写真図である。
図9図9はシリコン基板上に形成された銅焼結基板を示す写真図である。
図10図10は銅焼結基板の焼結表面の状態を示すSEM写真図である。
図11図11は銅焼結基板の表面にシングルナノ銀分散液を帯状にスプレー塗布して乾燥させた状態を示す写真図である。
図12図12はカットした接合シートの切断片を示す説明図である。
図13図13は銅試験片の接合強度試験の実施方法を説明するための写真図である。
図14図14は熱サイクル負荷試験の結果を示すグラフ図である。
図15図15は従来の導電性ペーストを用いた接合方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下に、本発明に係る銅焼結基板ナノ銀含浸型接合シートとその製法及び接合方法の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0047】
<1.本発明の背景及び要点>
本発明は、銅ナノ粒子からなる銅焼結基板と、シングルナノ銀単分散液の該銅焼結基板への塗布・乾燥を組み合わせた強接合かつ長期信頼性を示す加圧・短時間焼結接合型の接合シートとその製法、及び該接合シートを用いた接合方法である。
半導体実装分野での高精度化・微細化接合に要請される既述の課題を全て解決するため、接合シートのシート基材として銅ナノ粒子が焼結を完了してなる多孔質の銅焼結基板を用い、半導体と銅基板との接合等における接合機能付与に銀シングルナノ粒子が溶媒中に単分散したシングルナノ銀分散液を用い、実装プロセスの簡易化と実装時間の短時間化を図る。すなわち、シート基材には粒径50nm程度のナノ銅主体の銅焼結基板を用い、低コスト化を図りつつ、応力緩和機能を持たせる。銅焼結基板は、ナノ銅ペーストを無加圧、あるいは低加圧下で焼成して作製され、均一厚みで平行度がよく、微細孔を多数保有して応力緩和機能を有する。その接合面となる片側の表面、あるいは好ましくは両側の表面には、平均粒径がシングルナノメートル程度と極小さく、かつ、粒径分布幅が15%以下と狭く、粒径が均一な銀シングルナノ粒子を含むシングルナノ銀分散液を表面から内部へと浸み込ませて塗布し乾燥させ、表面を高濃度に、内部に向かって低濃度化した傾斜配置分布を実現させ、接合強度の傾斜機能化を図る。すなわち、加温焼結時に銀シングルナノ粒子の有機被覆、好ましくは低分子カルボン酸被覆の酸化分解反応による発熱効果により、接合層全体の温度が自発高温化し、焼結が一気に加速されるように設計された「機能性銀銅ハイブリッド焼結層」を構成し、その接合面は250℃程度の低温域で金属化する粒径分布幅の極狭い銀シングルナノ粒子の分散液を接合面から接合層の内部に向かって、そのナノ粒子濃度を低下するように塗布せしめた、強接合性・内部応力緩和特性を保有させた安価な、半導体接合に適したシート状接合材料である接合シートとその製法、及び接合方法が提供される。焼成のとき、接合層の内部は既に焼結された銅焼結体であるから、焼結の必要な部分は熱伝達の一番早い接合界面近くのみであり、これが接合のための焼成に要する時間をごく短時間とすることを可能としている。
【0048】
本発明に係る接合シートは、基材である多孔質の銅焼結基板を含むゆえに応力緩和機能を有する。鉛はんだ、あるいは鉛フリー合金はんだは、接合時、構成金属成分の融点以上の温度で使用されるので、使用温度としては350℃〜230℃の範囲で使用される。被接合材料間の熱的特性の違いのために、環境温度に変化があると被接合材料を接合している接合用材料の内部には、形状や温度に依存して、内部応力が発生し、それを緩和する機構が必要となる。鉛では原子間のクリープと呼ばれる応力緩和機構が存在する。しかし、
銀や銅金属のナノ粒子を配したナノ金属ペーストは固相焼結接合であり、金属は高融点で原子間相互作用が強く、クリープ現象の発現による応力緩和を期待することはできない。焼結性金属ナノ粒子を含む接合材料を用いた接合形成においては、焼結後の環境変化で生じる内部応力の、クリープ現象以外のメカニズムによる緩和機構の発現解明と、そのような応力緩和機構を有する接合用材料の最適組成設計が必要となる。本発明では、銅ナノ粒子が焼結結合してなる多孔質の銅焼結基板を基材として用いることで、応力緩和を実現している。
【0049】
本発明に係る接合シートとその製法、及び接合方法を、接合を形成するための半導体等の実装過程の観点から見た場合の特徴は、(1)ペーストの塗布作業工程を省き、焼結が完了した銅焼結基板を基材として用いること。(2)焼結では短時間化を実現する。すなわち、粒径分布幅の少ない銀シングルナノ粒子は、その有機被覆成分が低分子カルボン酸由来のため、有機被覆量約13質量%である銀ナノ粒子は焼結時にカルボン酸の酸化分解反応により発熱し、焼結環境温度では銅焼結基板と被接合材間でナノ銀は溶融状態となり、効率的・加速度的に接合プロセスが確実に進行すること。(3)合わせて焼結完了後は、基材である銅焼結基板のミクロ構造が接合層内での応力緩和特性を発現する高機能性焼結性の接合シートを提供できるので、長期信頼性を有する接合構造を形成できること、である。
【0050】
本発明を成し遂げるためには、第1に粒径分布幅の狭い銀シングルナノ粒子の製法を確立し、更に、該銀シングルナノ粒子を分散させたシングルナノ銀分散液の製法を確立すること。第2に銅ナノ粒子が焼結結合してなる多孔質の銅焼結基板の製法を確立すること。第3に銅焼結基板への銀シングルナノ粒子の傾斜塗布の方法を確立すること。第4に得られた接合シートを被接合体に配置して、短時間実装による機能性を評価し、形成される接合構造の長期安定性を適切な評価方法で証明すること、が必要であった。以下、製法を示すフロー図である図5を参照しながら、本発明の一実施形態を順に説明する。
【0051】
<2.シングルナノ銀分散液の準備>
シングルナノ銀分散液を準備するためのシングルナノ銀分散液準備工程S1は、銀シングルナノ粒子形成工程S11と、銀シングルナノ粒子分散工程S12を含む。銀シングルナノ粒子に要請される条件として重要なものを挙げると、(1)粒径分布幅15%以下、(2)平均粒径約2nm程度、(3)有機被覆量15質量%以下、(4)焼成時の有機被覆の酸化分解反応で発熱があること、(5)アルカン溶媒への単分散性に優れていること、である。加えて、焼成設定温度250℃を実現するためには、条件(6)84%粒径(D84)が2.0nm以下、が要請される。
【0052】
<2−1.銀シングルナノ粒子形成工程>
粒径分布幅の狭い銀シングルナノ粒子を製造するための銀シングルナノ粒子形成工程S11では、例えば、180℃まで加温したアルコール溶液中に被覆試薬のカルボン酸を投入し、炭酸銀を投入して撹拌し、反応で生じた分解ガスである炭酸ガスの発生が終了後、反応液を直ちにマイナス40℃まで冷却したイソプロピルアルコール中に排出して、超急速冷却して粒径成長を止める。冷却後の反応液はろ過生成をする過程で、60℃に加温したイソプロピルアルコールで洗浄し、精製された銀シングルナノ銀粒子を得る。
今回は、アルコールとしてオクタノールを、被覆試薬としてオクタン酸を用いて銀シングルナノ粒子の試料#C8AgSN(実施例)を得、また、アルコールとしてデカノールを、被覆試薬としてデカン酸を用いて銀シングルナノ粒子の試料#C10AgSN(比較例)を得た。反応条件や試料の特性を表1に示す。特性のうち、銀化温度の測定方法については後述する。試料#C8AgSNは上記の6つの条件をすべて満足するが、試料#C10AgSNは条件(3),(4),(6)を満たさない。
【0053】
【表1】
【0054】
<2−2.銀シングルナノ粒子分散工程>
次に、溶媒、好ましくはアルカン系溶媒中に銀シングルナノ粒子を単分散させる銀シングルナノ粒子分散工程S12では、例えば、メチルシクロヘキサンを溶媒として用い、該溶媒中に上記銀シングルナノ銀粒子を分散させて銀シングルナノ粒子の単分散状態を作り、エヴァポレータを用いて溶媒を蒸発させ、銀シングルナノ粒子の濃度が約10質量%程度のシングルナノ銀分散液を得る。高分解透過型電子顕微鏡(HRTEM)を用いた粒径分布観測結果は、後述するように(1.7±0.3)nmが得られ、粒径分布幅は約15%と極めて小さい。
【0055】
<2−3.銀シングルナノ粒子の熱解析結果>
銀シングルナノ粒子を用いて形成したシングルナノ銀分散液を試料として、熱重量示差熱分析装置を用いて温度を30℃から400℃まで変化させて熱重量示差熱分析(TG−DTA)を行った。一例として、試料#C8AgSN(下記の<注>を参照)の銀シングルナノ粒子を用いて形成したシングルナノ銀分散液についての熱重量示差熱分析の結果を図6に示す。昇温速度は5℃/分とした。分析に先立って、エヴァポレータを用いてシングルナノ銀分散液の溶媒を十分に蒸発させた。曲線81は示差熱流量(μV)を示し、参照物質と試料との間の温度差を、熱電対を用いて電圧に換算して測定したものである。曲線82は質量比(%)を示し、初期値に対する質量の割合を表している。30℃〜198℃の間では溶媒の蒸発により質量が減少する。198℃における質量は初期値の97.8%である(図6の点B2を参照)。その後、198℃〜260℃の間で銀シングルナノ粒子のカルボン酸被覆が酸化反応により過剰発熱を伴いながら分解し、緩やかに質量が減少する(図6の点A2〜A3〜A4及び点B2〜B4を参照)。更に、銀シングルナノ粒子の銀核が240℃付近から焼結を開始し、約250℃で発熱のピークとなり(点A3を参照)、約260℃で焼結が完了する。したがって、試料#C8AgSNの銀シングルナノ粒子の焼結温度(銀化温度)は約250℃である。焼結完了時における質量は初期値の85.3%であるから(点B4を参照)、試料#C8AgSNの銀シングルナノ粒子の有機被覆量はおよそ
(97.8%−85.3%)/0.978 = 12.8質量%
であるとわかる。
【0056】
また、試料#C10AgSNについても熱重量示差熱分析(TG−DTA)を行い、該試料の銀シングルナノ粒子の有機被覆量が約18質量%で、焼結温度(銀化温度)が約275℃であるとの結果を得た。
【0057】
金属ナノ粒子はその粒径が小さくなると、金属の融点が粒径に依存して降下する現象が認められ、シングルナノの粒径ではバルク値の1/3程度まで融点の降下することが、非特許文献1に記されている。銀や銅のナノ粒子を用いた焼結性接合材料の焼成温度は、すべてこの原理に基づいている。銀シングルナノ粒子の融点が250℃であれば、該銀シングルナノ粒子の銀核の粒径は約2.0nmである。200℃〜300℃の範囲では、銀核の粒径が0.1nm小さくなる毎に、融点は約10℃降下する。
【0058】
<2−4.銀シングルナノ粒子のTEM像>
試料#C8AgSNの銀シングルナノ粒子を用いて形成したシングルナノ銀分散液をシリコン基板に塗布し、溶媒を蒸発させたのち、高分解透過型電子顕微鏡(HRTEM)を用いて観察した。そのTEM像を図7に示す。数個の銀シングルナノ粒子で形成された直径4〜6nm程度のクラスタがいくつか存在している。各クラスタ内の銀シングルナノ粒子は粒径1.2〜2.3nm程度の銀核と有機被覆とで構成されている。各銀核の金属銀の結晶構造が観察できる。なお、このTEM像ではシングルナノ銀分散液の溶媒を蒸発させた状態で観察しているので、銀シングルナノ粒子は凝集してクラスタを形成しているが、溶媒を蒸発させる前の状態ではほぼ単分散していると考えられる。TEM像の解析に基づく銀核の粒径分布として平均粒径1.7nm±0.3nm(標準偏差)が得られた。試料#C8AgSNの銀シングルナノ粒子の銀核の粒径分布幅は約15%とごく狭い。この平均粒径及び粒径分布幅は、既述のTG−DTA分析の結果と整合的である。
【0059】
<3.銅焼結基板の形成>
銅ナノ粒子が焼結結合してなる多孔質の銅焼結基板を形成するための銅焼結基板形成工程S2は、ナノ銅ペーストを基板上に塗布するナノ銅ペースト塗布工程S21と、基板上に塗布されたナノ銅ペーストを焼成して銅焼結基板を得るためのナノ銅ペースト焼成工程S22を含む。
【0060】
<3−1.ナノ銅ペースト>
ナノ銅ペーストは、銅ナノ粒子、増粘剤及び粘度調整溶剤を混練して作製される。平均粒径50nmの有機被覆を有さない銅ナノ粒子を用い、増粘剤としてイソボロニルシクロヘキサノール(商品名:テルソルブ MTPH、日本テルペン化学株式会社製)を、粘度調整溶剤として日本テルペン化学株式会社製のテルソルブTHA−90を、表2に示す質量比で用いて、#高粘度タイプ、#中粘度タイプ、#低粘度タイプの3タイプのナノ銅ペーストを得た。
【0061】
【表2】
【0062】
<3−2.ナノ銅ペーストの塗布及び焼成>
ナノ銅ペーストを基板上に塗布するナノ銅ペースト塗布工程S21においては、例えば
、まず清浄な鏡面研磨されたシリコン基板等の基板上に、ナノ銅ペーストを15〜200μm程度の均一な厚みで塗布する。次いで、基板上に塗布されたナノ銅ペーストを焼成して銅焼結基板を得るナノ銅ペースト焼成工程S22においては、高純度窒素ガスフロー下において350℃程度まで2℃/s程度の昇温速度で約3分間、無加圧下又は低加圧下で焼成して、10〜150μm程度の厚みの剥離・自立した銅焼結基板を得る。無加圧下で焼成する場合には、低粘度ペーストの塗布はスピンコートにより行うことが出来る。低加圧下で焼成する場合には、焼成中に200℃程度の温度の溶剤蒸発工程を設けて、完全乾燥しない温度・時間内に鏡面で押圧することにより数MPa程度の低加圧を行い、塗布されたナノ銅ペーストの表面を平坦化し、焼成後の銅焼結基板の厚みの均一化を図る。塗付したナノ銅ペーストの表面を平坦化しておくことにより、焼成後の銅焼結基板及びその表面に銀シングルナノ粒子をコートしてなる接合シートが均一厚みとなるから、該接合シートを用いた加圧焼成接合の際に、被接合物と接合シートとの接触面積が大きくなり、強い接合強度が確保される。今回は、表3に示す5種類のシート厚と焼成条件に対応した銅ナノペーストを塗布して焼成することにより、銅焼結基板の試料#Cu1〜#Cu5を得た。焼成後の銅焼結基板のシート厚も表3に示した。作成した銅焼結基板の平面サイズは100mm×100mmである。
【0063】
【表3】
【0064】
図8は、シリコン基板7上に銅ナノペースト(#高粘度タイプ)42を塗布した状態の写真図である。
図9は、シリコン基板7上に銅ナノペースト(#高粘度タイプ)を塗布し、高純度窒素ガス中で昇温速度100℃/分、350℃3分間保持の条件で無加圧焼成して得られた銅焼結基板2の写真図である。2つの帯状(平面サイズ10mm×40mm,厚み50μm)の銅焼結基板2が示されている。
図(10A)は、上記の銅焼結基板2において、焼結した銅ナノ粒子4を示す、焼結表面状態のSEM写真図である。倍率は3万倍である。また、図(10B)は上記SEM写真図の拡大図で、倍率は10万倍である。銅焼結基板2は多孔質であり、多数の微細孔21を有し、微細孔21のサイズは数百nm〜1μmであることがわかる。
【0065】
本発明に係る接合シートは、平均粒径5×101nm程度の銅ナノ粒子を主成分とするナノ銅ペーストを焼結させた銅焼結基板が、その質量の大部分を占めるから、ナノ銀と銀フィラーからなるナノ銀ペーストに比べて低価格で作製することができる。なお、接合シートの量産性を念頭におくと、銅ナノ粒子にはかなりの量産製造能力が要請される。
【0066】
<4.ナノ銀含浸領域の形成>
銅焼結基板の少なくとも一方の表面の側に、傾斜濃度化された銀シングルナノ粒子を含むナノ銀含浸領域を形成するための傾斜機能付与工程S3においては、銅焼結基板の少な
くとも片側の表面に、シングルナノ銀分散液を塗布若しくは含浸させ、更に乾燥させることにより、その目的を達成する。
例えば、(1)銅焼結基板を2mm角程度の薄いSUS製メッシュ状板上にのせ、表面に、あらかじめ作製しておいたシングルナノ銀分散液をゆっくりスプレー塗布し、80℃程度のホットプレート上でゆっくり乾燥させて傾斜濃度化されたナノ銀コートの銅焼結基板(接合シート)を得る。または、(2)平らな浅い容器にシングルナノ銀分散液を入れ、銅焼結基板を該シングルナノ銀分散液中に浸し、引き出して乾燥させて、傾斜濃度化されたナノ銀コートの銅焼結基板(接合シート)を得ることもできる。
今回は、銅焼結基板の試料#Cu1〜#Cu5のそれぞれについて、その両側の表面に、片面ずつ、上記(1)の方法でシングルナノ銀分散液(#C8AgSN)をスプレー塗布し、更に乾燥させることにより、両方の表面の側にナノ銀含浸領域を有する接合シート(#1〜#5)を作製した。作製されたタイプAの接合シートのシート厚を表4に示す。銅焼結基板に銀シングルナノ粒子を含浸させて接合シートとしても、その厚みはほとんど変わらず、厚みの増加はサブミクロン以下である。また、各接合シートの平面形状は100mm×100mmである。
【0067】
【表4】
【0068】
図11は、焼成済みの銅焼結基板(#Cu3)2の表面にシングルナノ銀分散液(銀シングルナノ粒子(#C8AgSN)を用いて作製)を帯状にスプレー塗布し、乾燥した状態の表面の写真図である。銅焼結基板の表面のうち、ナノ銀含浸領域3が形成されている領域は青みを帯びた色を呈し、そうでない領域は銅焼結基板2の表面が露出しているので赤みを帯びた色を呈している。なお、図11の上部の明度が高いのは光源光の反射による。
【0069】
接合シートは、適切なサイズにカットし、被接合物に配置して使用する。図12は、平面サイズ10mm×10mm及び5mm×5mmにカットした接合シートの切断片を示す。図で左側に2列に配置された6枚の接合シートの切断片は、シングルナノ銀分散液(#C8AgSNを用いて作製)を片面に塗布し乾燥させた厚み約12μmのタイプBの接合シートの切断片であり、紫がかった色を呈している。図で右側に2列に配置された6枚の接合シートの切断片は、同じシングルナノ銀分散液を両面に塗布し乾燥させた厚み約12μmのタイプAの接合シート(試料#1)の切断片であり、青みを帯びた色を呈している。色の違いは、銀シングルナノ粒子の表面濃度の違いによる。銅焼結基板の厚みが約10μm程度と薄い場合には、シングルナノ銀分散液を銅焼結基板の片面にのみ塗布して乾燥させても、銀シングルナノ粒子は微細孔を通して浸透するので、銅焼結基板の他方の面の側にも銀シングルナノ粒子はいくらか配置され、両面塗布の場合には片面塗布の場合より、一般に表面濃度が大きくなるので、上記の色の違いが生じる。
【0070】
<5.接合シートの諸特性>
このようにして得られた接合シートは、実装に用いる電子回路部品や回路基板の電極等の被接合物のサイズに応じて、適切なサイズにカットし、被接合物に配置して、被接合物の熱容量や耐熱性に応じて、高純度窒素雰囲気で、温度250℃〜350℃、圧力20MPa以上の加圧環境下で、10秒〜3分程度、より好ましくは10秒〜60秒程度の短時間、最短では約10秒の間、上記温度を保持して焼成し、接合構造を形成し、実装過程を完了させる。この短時間実装による機能性を評価し、さらに形成される接合構造の長期安定性を評価した。
【0071】
<5−1.銅試験片の接合における接合強度>
図13に示すように、2つの銅試験片61を、銅焼結基板の両方の側にナノ銀含浸領域を有するタイプAの接合シート1aを用いて接合し、接合強度を調べる試験を行った。銅試験片は、直径10mm、厚み5mmの円柱形の銅試験片(大)61aと、直径5mm、厚み2mmの円柱形の銅試験片(小)61bである。銅試験片(大)61a、接合シート1a、銅試験片(小)61bをこの順に積層して積層体10を形成し、加圧しながら短時間焼成して、接合体を得た。用いた接合シートの試料名と厚み、焼成設定温度、加圧の圧力、保持時間(焼成設定温度を保持する時間)は次の表5の通りである。昇温速度は約2℃/秒であった。得られた接合のせん断強度と最大変位はダイシェアテスターを用いて測定した。表5に測定結果を示す。
【0072】
【表5】
【0073】
銅試験片の接合テストでは、焼成設定温度350℃、20〜40MPaの加圧下、30秒〜3分の短い保持時間で、接合シートの厚み(20〜50μm)によらず、80〜113MPaの大きな接合強度を有する強固な接合が形成できることがわかった。比較例のPb5Snはんだによる接合では30分の保持時間で35MPaの接合強度にとどまる。本接合シートははんだ接合に比べて短時間で強固な接合を形成できる。最大変位は約1mm以内に収まっており、接合シートが有する多孔質の銅焼結基板が応力緩和機能を発揮して接合の安定性に寄与していると考えられる。3つの接合構造No.1,No.2,No.3は、接合シートの厚み以外の焼成条件が共通であるが、接合強度はいずれも約110MPaでほぼ等しい。また、破断面を光学顕微鏡で観察すると、破断は接合シートの表面付近のナノ銀含浸領域ではなく、接合シート(銅焼結基板)の内部で生じていることがわかる。本接合シートを用いた加圧焼成接合により形成される接合の接合強度は、接合シートの厚みにはあまり依存せず、銅焼結基板の強度で決まる。
【0074】
<5−2.接合シートの熱伝導度>
パワー半導体素子等の電子部品の接合に係る接合構造には、高い熱伝導度と高い電気伝導度が求められる。そこで、熱伝導率測定装置を用いて銅焼結基板及び(接合前の)接合シートの熱伝導度を測定した。熱伝導度は、レーザーフラッシュ法で測定した。これは、
試料の表面にレーザ光を瞬間的に照射して加熱し、裏面に伝わる温度勾配から熱拡散率、比熱容量を測定し、試料の密度に基づいて熱伝導率を算出する方法である。この測定のために特別に、ナノ銅ペースト(#高粘度タイプ)を焼成して厚み1.22mmの銅焼結基板(#Cu6)を作製し、また、同様に厚み1.25mmの銅焼結基板を焼成して、その両面にナノ銀含浸領域を設けた接合シート(#6)を作製した。測定にはいずれも、平面サイズが直径8.81mmの円形にカットした切断片を用い、厚みが薄い試料の熱伝導率を計測するための基板測定アタッチメントを使用して測定を行った。その結果を表6に示す。表6には参考のため、鉛共晶はんだ、銀、及び銅の熱伝導度及び比抵抗の数値も記載している。比抵抗の値は、ウィーデマンとフランツによる、金属における熱伝導度と電気伝導度の関係に基づいて、熱伝導度の測定値から計算した。
【0075】
【表6】
【0076】
銅焼結基板(#Cu6)と接合シート(#6)のいずれもが、熱伝導度、電気伝導度(比抵抗の逆数)ともに、バルク金属と同じオーダーの高い値を示している。これは該銅焼結基板及び該接合シートの金属含有率が高く、かつ、銅ナノ粒子が焼結により結合して、比抵抗の低い電気伝導経路ネットワークを形成し、熱エネルギーもその経路に沿って容易に輸送されるからである。それに対して鉛共晶はんだの、熱伝導度及び電気伝導度はバルク金属と比べて1桁小さい低い値となっている。
【0077】
<5−3.接合シートの長期安定性>
接合シートを用いて形成される接合構造の熱衝撃に対する安定性を調べるため、熱サイクル負荷試験(パワーサイクル試験)を行った。
<5−3−1.半導体実装サンプルの作製>
まず、パワーダイオード(ドープトSi製,面実装タイプNPジャンクション,平面サイズ10mm×10mm,厚み150μm)と、平面サイズ約10mm×10mmにカットした接合シート(#4,厚み40μm)の切断片と、銅板(平面サイズ20mm×20mm,厚み2mm)を上からこの順で積層し、40MPaで加圧しながら350℃の焼成設定温度で1分間保持して焼成して、接合シート接合体(半導体実装サンプル)を作製した。昇温速度は約2℃/秒とした。
【0078】
<5−3−2.はんだ接合の作製>
比較例として、同じパワーダイオードと上記と同じサイズの銅板とを、市販の鉛フリーはんだ(Sn3.0Ag0.5Cu)で接合して鉛フリーはんだ接合体を形成した。同様に、市販の鉛共晶はんだを用いて鉛共晶はんだ接合体を形成した。接合層の厚みはいずれも約50μmであった。
【0079】
<5−3−3.熱サイクル負荷試験>
上記の接合シート接合体(半導体実装サンプル)を試料として、熱サイクル負荷試験装置を用いて、200℃〜−40℃の熱サイクル負荷を試料にかけた。試料は、上記の銅板が−40℃のヒートシンクの上面に当接する状態で載置される。パワーダイオードの上面と銅板にそれぞれ電極を接続し、電極間に電圧を印加できるようにする。1サイクルは30分間である。1サイクルは、数秒間、順方向の一定の大電流(順方向電流パルス)を試料に通電して接合部の温度を200℃まで上昇させるステップと、その後、電流を遮断して試料を−40℃のヒートシンクにより冷却するステップとで構成される。サイクル数毎の試料の熱抵抗値を、高い順方向電流パルス印加後の電極間の電気抵抗の変化率に基づいて計測する。熱抵抗値が初期値の30%増となったところを上限値として計測を終了する。
同様に、上記の鉛フリーはんだ接合体、及び、鉛共晶はんだ接合体を試料として、サイクル数毎の試料の熱抵抗値を計測した。その結果を表7に示す。鉛フリーはんだ接合体及び鉛共晶はんだ接合体の熱抵抗値は、それぞれ熱抵抗値の初期値で規格化して示した。また、接合シート接合体の熱抵抗値は、鉛共晶はんだ接合体の熱抵抗値の初期値で規格化して示した。図14は、接合シート接合体と鉛共晶はんだ接合体について、表7に示したサイクル数による熱抵抗値の変化の様子をそれぞれ初期値で規格化(標準化)してグラフ化したグラフ図である。
【0080】
【表7】
【0081】
鉛フリーはんだ接合体では曲線83が示すように200サイクル負荷後に熱抵抗値が80%増、鉛共晶はんだ接合体では500サイクル負荷後に熱抵抗値が60%増となったのに対し、本発明に係る接合シート接合体では曲線84が示すように2000サイクル負荷後でも熱抵抗値が3%程度の増加に留まる。本発明に係る接合シートを用いた接合には、熱衝撃及び冷熱衝撃に対する長期安定性があることが確認された。
【0082】
一般に、はんだ接合の場合には、接合形成のための加熱後の冷却中にも加圧が必要であり、さらに冷却にも時間を要する。冷却中に加圧無しに、冷却を短時間で行うと、接合部に割れが生じ易いからである。本発明に係る接合シートでは、銅焼結基板は初めから焼結しており、焼結を要する部分が薄いナノ銀含浸領域のみであり、焼結で形成されたバルク銀若しくは銀銅合金の融点は高く、かつ、多孔質の銅焼結基板が応力緩和機能を有するから、冷却時に大きな加圧の必要はなく、冷却も短時間で済む利点がある。
【0083】
<5−4.短時間焼成における接合強度のナノ銀ペーストとの比較>
本発明に係る接合シートと比較例としてのナノ銀ペーストを用いて、焼成条件(焼成設定温度、加圧の圧力、保持時間)を変えながら、短時間焼成によりそれぞれ接合体を形成し、せん断強度を比較する。
<5−4−1.ナノ銀ペーストの作製>
比較例として、ペーストの焼成による接合体を形成するために、銅フィラーを含有する
ナノ銀ペースト1及びナノ銀ペースト2を作製した。ナノ銀ペースト1は、銀シングルナノ粒子#C8AgSNと銅フィラーを4:6の質量比で含み、銅フィラーは平均粒径0.10μmの有機被覆を有さない銅粒子であり、更に、増粘剤(イソボルニルシクロヘキサノール)及び粘度調整溶剤(ドデカン)が全質量に対して合わせて約7質量%含有されている。ナノ銀ペースト2は、銀シングルナノ粒子#C10AgSNと銅フィラーを4:6の質量比で含み、銅フィラーは平均粒径0.45μmの有機被覆を有さない銅粒子であり、更に、増粘剤(イソボルニルシクロヘキサノール)及び粘度調整溶剤(ドデカン)が全質量に対して合わせて約7質量%含有されている。
【0084】
<5−4−2.接合強度の比較>
上記のナノ銀ペースト又は本発明に係る接合シートを用いて、前記の銅試験片(大)と銅試験片(小)を次の表8に示す焼成条件で、加圧下で10〜60秒の短い保持時間(焼成設定温度に保持する時間)で焼成して2つの銅試験片を接合した接合体を形成し、前記と同様にして最大せん断強度を計測した。その結果を表8に示す。ここで、昇温速度は約2℃/秒であった。なお、本発明に係る接合シートを介して2つの銅試験片を積層して積層体を形成する際には、積層に先立って、実装時の固定化を確実にするための固定化助剤を接合シートの表面にスポイドで1滴ないし数滴、添加した。固定化助剤としては、イソボロニルシクロヘキサノールを20質量%の濃度でメチルシクロヘキサンに溶解させた溶液を用いた。
【0085】
【表8】
【0086】
表8から読み取れるように、ナノ銀ペーストでは焼成の前にペースト中に含まれるバインダ等の有機成分を除去するための乾燥工程に最低でも3分程度の時間を要するが、本発明に係る接合シートでは、銅焼結基板はすでに焼結済であるから、乾燥工程が不要である。本接合シートを用いれば、接合シートの厚み(20〜50μm)によらず、10〜60秒程度、最短では10秒の短時間の間、焼成設定温度を維持するだけで、ナノ銀ペーストを用いた接合と同等もしくはそれ以上のせん断強度を有する強固な接合を形成することができる。
本発明に係る接合シートを用いて加圧下で10〜60秒程度、焼成設定温度に保持することにより形成した接合構造のせん断強度は、焼成設定温度、焼成時の加圧の圧力、及び保持時間にも依存している。表8に示す6つの接合構造(No.11〜No.16)の接合強度の線形回帰分析(重相関係数R=0.84)により、焼成設定温度が10℃高いとせん断強度は約3MPa大きくなり、焼成時の加圧の圧力が10MPa高いとせん断強度は約13MPa大きくなり、保持時間が10秒長いとせん断強度は約3.5MPa大きくなることがわかる。回帰式によると、焼成設定温度300℃、加圧の圧力30MPa、保
持時間30秒に対して、せん断強度は約65MPaと高強度である。また、接合構造(No.16)は、焼成設定温度250℃、加圧の圧力20MPa、保持時間10秒に対して、せん断強度は約38MPaであるが、これは鉛共晶半田の接合強度(約35MPa)を上回っている。
【0087】
<5−5.本接合シートの特徴のまとめ>
本発明に係る接合シートでは、接合のための焼結の後に形成される金属(銀、銅、銀銅合金)の融点が779℃以上であるから、共晶生成による効果を考慮しても700℃で融解することはない。したがって、本接合シートは高温耐熱接合用途に用いることができる。多くの同種の金属ナノペーストやいくつかの接合シートが提案されているが、接合状態の諸物性、および、その長期安定性を対比し、本発明がすべての点で優れた接合機能性を付与できる。接合の長期安定性は、環境温度の大幅な変化で生じる内部応力の緩和が、本接合シートの多孔質の銅焼結基板により実現されていることによる。実施例における比較表に示したように、本接合シートの優れた点の概要は、(1)長期保存性:常温保存、年以上の期間が可能、(2)金属含有量:99質量%以上(∵銅焼結基板は100質量%。金属含有量85質量%以上のシングルナノ銀の、接合シートにおける総使用量は5質量%以下であるので99質量%以上となる)、(3)電気伝導度:比抵抗3μΩ・cm以下、(4)熱伝導度:200W/(m・K)以上、(5)接合強度(せん断強度):78MPa以上(350℃,20MPa加圧下1分間焼成時の接合強度。鉛共晶はんだでの2.4倍以上)、(6)長期安定性:熱サイクル負荷試験((200℃(数秒),−40℃(約30分))/サイクル)の結果において、2000サイクル負荷後の熱抵抗値が初期値に対して約3%増以下。一方、鉛共晶はんだは同条件負荷では500サイクル時で初期値に対して60%増と高温環境負荷試験では長期安定性に欠ける、および、(7)低コストに製造できることによる経済効果、にある。
【0088】
本接合シートを適切なサイズにカットした切断片を、半導体素子と銅基板など、2つの被接合物の間に配置して加圧焼成することで接合体を形成することができる。従来の各種ナノ金属ペースト塗布による接合方法と比較して、塗布工程・乾燥時間が不要で、焼成設定温度に保持する保持時間も1/5以下と短いから、実装量産性は10倍以上に向上できる特徴がある。また、従来のナノ金属ペーストに樹脂を配した組成の接合シートとの比較でも、本接合シートの焼成設定温度及び保持時間は、より低温で、10〜60秒、最短では10秒と短時間であり、銀ナノ粒子の使用量も少なく、経済性により優れている特徴がある。さらに高温半導体素子との実装では、小型化・大電流負荷によって生じる動作時の発熱を、バルク金属並みの十分な熱伝導性により回避して半導体機能を劣化させない接合特性を発揮し、耐熱性は従来から使用されている鉛共晶はんだを大きく上まわり、熱伝導度では5倍以上であり、加えて電気伝導性もバルク金属並みに優れており、接合特性は従来品のはんだ製品を大きく超えている。また、環境に有害な鉛を含まないので、環境負荷安全性も保有している。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明に係る接合シートは、簡便に使用でき、低コストで製造でき、短い保持時間の焼成で強固な接合を形成でき、形成される接合は従来のはんだ製品を大きく超える接合特性を有し、環境安全性も具備している。従来のはんだ製品及び接合シートの代替品等として、また、従来のはんだ製品では実現不可能であった高温使用に耐える接合形成のための接合用材料として、本接合シートとその製造方法及びそれを用いた接合方法は、幅広い産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0090】
1 接合シート 1a タイプAの接合シート
1b タイプBの接合シート
2 銅焼結基板 21 微細孔
3 ナノ銀含浸領域 31 第1ナノ銀含浸領域
32 第2ナノ銀含浸領域 33 表面(接合面,接合界面)
4 銅ナノ粒子 42 ナノ銅ペースト
5 銀シングルナノ粒子 5c 銀核
6 被接合物 6a 第1被接合物
6b 第2被接合物 61 銅試験片
61a 銅試験片(大) 61b 銅試験片(小)
7 シリコン基板 10 積層体
81〜84 曲線
【要約】
【課題】パワー半導体と銅基板の高温耐熱接合に使用でき、実装が簡便で、形成される接合の強度、電気伝導度及び熱伝導度に優れ、低コストに製造できて長期保存可能な、焼結接合用の接合シート、その製法及び接合方法を提供する。
【解決手段】焼結結合した複数の銅ナノ粒子4からなる多孔質の銅焼結構造体である銅焼結基板2と、該銅焼結基板2の表面33及び微細孔21に配置された、有機被覆を有する複数の銀シングルナノ粒子5から構成される接合シート1であり、銀シングルナノ粒子5は互いに結合し、前記銅焼結構造体とも結合し、銀シングルナノ粒子5の数密度は、接合シート1の表面33で高く、内部では低く、傾斜濃度化され、銀シングルナノ粒子5は銀核の84%粒径D84が1.4〜2.0nm、粒径分布幅15%以下、有機被覆量10〜15質量%のカルボン酸被覆銀ナノ粒子である。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15