特許第6713144号(P6713144)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6713144昇降式作業足場用の連結金具および設置方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6713144
(24)【登録日】2020年6月5日
(45)【発行日】2020年6月24日
(54)【発明の名称】昇降式作業足場用の連結金具および設置方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 5/04 20060101AFI20200615BHJP
【FI】
   E04G5/04 C
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-5911(P2020-5911)
(22)【出願日】2020年1月17日
【審査請求日】2020年1月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592192907
【氏名又は名称】日建リース工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】509341606
【氏名又は名称】株式会社川瀬工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】関山 正勝
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 洋介
(72)【発明者】
【氏名】関根 和司
(72)【発明者】
【氏名】相澤 信幸
【審査官】 前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−292621(JP,A)
【文献】 特開2018−003380(JP,A)
【文献】 特開平07−018848(JP,A)
【文献】 特開平10−317661(JP,A)
【文献】 特開2013−019195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 5/04
E04G 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁つなぎ梁を含んで構成する昇降式の作業足場を、縦胴縁を有する躯体に沿って設置する際に使用する連結金具であって、
前記躯体側に設け前記縦胴縁との固定機構を有する、基部と、
前記作業足場側に設け、前記基部に対して縦方向に移動可能に構成し、かつ前記壁つなぎ梁との把持機構を有する、移動部と、
を少なくとも備えることを特徴とする、
連結金具。
【請求項2】
前記基部が、
縦方向に延伸する、柱部と、
前記縦胴縁と接触して結合可能な、結合部と、
前記柱部と、前記結合部との間を繋ぐ、腕部と、を少なくとも備えることを特徴とする、
請求項に記載の連結金具。
【請求項3】
前記腕部が、
前記結合部に一端を接続して前記柱部に他端を挿入する、ネジ軸と、
前記柱部側から、前記ネジ軸の他端へと螺合するナットと、を少なくとも含み、
前記ネジ軸に対する前記ナットの螺合位置によって、前記腕部の長さを調整可能としてあることを特徴とする、
請求項に記載の連結金具。
【請求項4】
前記結合部が、
縦方向に延伸して、前記縦胴縁と接触する、ベース材と、
前記ベース材と前記縦胴縁とを貫通するように挿入して両者を結合する、結合材と、を少なくとも含むことを特徴とする、
請求項またはに記載の連結金具。
【請求項5】
前記結合材が、ワンサイドボルトであることを特徴とする、
請求項に記載の連結金具。
【請求項6】
前記移動部が、
前記柱部の側周の一部または全部を囲む形状を呈する、摺動部と、
前記摺動部から前記作業足場側に張り出す態様で配置する、張出部と、
前記張出部に設けて、前記壁つなぎ梁の横材を把持する、クランプと、
を少なくとも備えることを特徴とする、
請求項2乃至のうち何れか1項に記載の連結金具。
【請求項7】
縦胴縁を有する躯体に対する、昇降式の作業足場の設置方法であって、
請求項1乃至のうち何れか1項に記載の連結金具を、前記固定機構を介して前記躯体の左右方向に間隔を空けて設置してある縦胴縁にそれぞれ固定する工程と、
前記把持機構でもって把持した壁つなぎ梁に、前記作業足場を構成するマストを固定する工程と、を少なくとも含むことを特徴とする、
昇降式の作業足場の設置方法。
【請求項8】
前記壁つなぎ梁を、全長の異なる複数のトラス材を任意に連結して構成し、
前記複数の縦胴縁にそれぞれ固定した連結金具で、前記壁つなぎ梁を把持することを特徴とする、
請求項に記載の昇降式の作業足場の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降式の作業足場を躯体に沿って設置する際に、躯体と作業足場との間に介設する連結金具と、当該連結金具を用いた昇降式の作業足場の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物の構築工事や補修工事の際に、構造物の躯体に沿って昇降式の作業足場を構築する場合がある。
この昇降式の作業足場は、従来の枠組足場と比較して眺望や日当たりへの悪影響が少ない点などにおいて利点を有する。
例えば、以下の特許文献1には、上下移動ステージを架設柱に昇降自在に設けつつ、架設柱を、壁つなぎを介して既存建物の外部に取り付けてなる仮設足場が開示されている。
【0003】
特許文献1には、壁つなぎと既存建物との取付態様について詳細な言及がないところ、近年では、躯体の縦方向に間隔を設けて配置してある複数の横胴縁に連結金具をそれぞれ設け、この連結金具に、横方向を長手方向とするトラス梁を把持させて壁つなぎ梁とし、この壁つなぎ梁に、足場を昇降させるための架設柱(マスト)に直接または間接的に固定することで、作業足場を安定化する手法が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−317661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、近年の建築物の中には、横胴縁を設けずに縦胴縁を配置した躯体構造を採用したものが見受けられる。
この場合、従来、横胴縁への固定に使用していた連結金具を用いることができないため、新たな金具を考案する必要があった。
【0006】
したがって、本発明は、構造物の躯体を構成する縦胴縁への取付に適する連結金具の提供および、当該連結金具を用いた昇降式の作業足場の設置方法を提供することを目的の一つとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべくなされた本願の第1発明は、壁つなぎ梁を含んで構成する昇降式の作業足場を、縦胴縁を有する躯体に沿って設置する際に使用する連結金具であって、前記躯体側に設け前記縦胴縁との固定機構を有する、基部と、前記作業足場側に設け、前記基部に対して縦方向に移動可能に構成し、かつ前記壁つなぎ梁との把持機構を有する、移動部と、を少なくとも備えることを特徴とする。
また、本願の第発明は、前記第発明において、前記基部が、縦方向に延伸する、柱部と、前記縦胴縁と接触して結合可能な、結合部と、前記柱部と、前記結合部との間を繋ぐ、腕部と、を少なくとも備えることを特徴とする。
また、本願の第発明は、前記第発明において、前記腕部が、前記結合部に一端を接続して前記柱部に他端を挿入する、ネジ軸と、前記柱部側から、前記ネジ軸の他端へと螺合するナットと、を少なくとも含み、前記ネジ軸に対する前記ナットの螺合位置によって、前記腕部の長さを調整可能としてあることを特徴とする。
また、本願の第発明は、前記第発明または第発明において、前記結合部が、縦方向に延伸して、前記縦胴縁と接触する、ベース材と、前記ベース材と前記縦胴縁とを貫通するように挿入して両者を結合する、結合材と、を少なくとも含むことを特徴とする。
また、本願の第発明は、前記第発明において、前記結合材が、ワンサイドボルトであることを特徴とする。
また、本願の第発明は、前記第2発明乃至第発明のうち何れか1つの発明において、前記移動部が、前記柱部の側周の一部または全部を囲む形状を呈する、摺動部と、前記摺動部から前記作業足場側に張り出す態様で配置する、張出部と、前記張出部に設けて、前記壁つなぎ梁の横材を把持する、クランプと、を少なくとも備えることを特徴とする。
また、本願の第発明は、縦胴縁を有する躯体に対する、昇降式の作業足場の設置方法であって、前記第1発明乃至第発明のうち何れか1つの発明に記載の連結金具を、前記固定機構を介して前記躯体の左右方向に間隔を空けて設置してある縦胴縁にそれぞれ固定する工程と、前記把持機構でもって把持した壁つなぎ梁に、前記作業足場を構成するマストを固定する工程と、を少なくとも含むことを特徴とする。
また、本願の第発明は、前記第発明において、前記壁つなぎ梁を、全長の異なる複数のトラス材を任意に連結して構成し、前記複数の縦胴縁にそれぞれ固定した連結金具で、前記壁つなぎ梁を把持することを特徴とする。

【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、以下に記載する効果のうち少なくとも何れか1つの効果を奏する。
(1)横胴縁を設けずに縦胴縁のみを配置した躯体構造を採用した構造物であっても、壁つなぎ梁を用いた昇降式の作業足場を設置することができる。
(2)縦胴縁との固定機構を設けた基部と、壁つなぎ梁との把持機構を設けた移動部との間を縦方向に相対移動可能に構成することで、躯体に対する壁つなぎ梁の設置高さの微調整が可能となる。
(3)縦胴縁と接触する結合部に対し、腕部を介して離隔するように柱部を設けることで、柱部が縦胴縁の前面側に位置する壁材と干渉することが無い。
(4)腕部の長さを調整可能に構成することで、縦胴縁の前方に設ける壁材の厚さの大小にも対応できる。
(5)縦方向に延伸させたベース材と縦胴縁とをワンサイドボルトで結合することにより、縦胴縁にナット要素を追加することなく、ベース材側からの作業のみで、強固に連結金具を固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る連結金具の全体構成を示す概略斜視図。
図2】基部を分解した構成を示す概略斜視図。
図3】移動部の構成を示す概略斜視図。
図4】連結金具を介して躯体に沿って設置した昇降足場の概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施例について説明する。
【実施例】
【0011】
<1>全体構成(図1
本発明に係る連結金具Aは、縦胴縁Bを有する躯体に沿って昇降式の作業足場(以下、単に「昇降足場D」ともいう。)を設置する際に使用する金具である。
より具体的に説明すると、本発明に係る連結金具Aでもって、構造物の躯体を構成する縦胴縁Bと、昇降足場Dを構成する壁つなぎ梁D1との間を連結することによって、昇降足場Dを躯体に対して位置決めすることができる。
図1に示すように、本実施例における連結金具Aは、躯体側に設けて縦胴縁Bとの固定機構を備える基部A1と、基部A1に対して縦方向に移動可能に構成しつつ、作業足場側に設けて壁つなぎ梁D1を把持する把持機構を備える移動部A2と、を少なくとも含んで構成する。
【0012】
<2>基部(図2
基部A1は、連結金具Aを躯体の縦胴縁Bに固定するための要素である。
本実施例では、基部A1を、縦方向に延伸する柱部10と、前記縦胴縁Bと接触して結合可能な結合部20と、前記柱部10と前記結合部20との間を繋ぐ腕部30と、を少なくとも備えて構成する。
以下、各構成部材の詳細について説明する。
【0013】
<3>柱部(図2
柱部10は、移動部A2を縦方向に移動可能に構成するための部材である。
本実施例では、柱部10に縦方向を長手方向とする角柱を用いている。
なお、柱部10の縦長は、移動部A2に求められる、基部A1との間での縦方向への相対移動長によって適宜設定すればよい。
【0014】
<4>結合部(図2
結合部20は、基部A1を縦胴縁Bに固定するための部材である。
本実施例では、結合部20を、縦胴縁Bと接触するように配置するベース材21と、前記ベース材21と前記縦胴縁Bとを貫通するように挿入して両者を結合する、結合材22と、を少なくとも含んで構成している。
【0015】
<4.1>ベース材(図2
ベース材21は、縦胴縁Bの縦方向に延伸する平板状の部材であり、ベース材21の上下に、結合材22を挿入するための挿入孔211を設けている。
【0016】
<4.2>結合材(図2
結合材22は、縦胴縁Bとベース材21とを結合するための部材である。
結合材22は、両者を適宜着脱可能とする手段が好ましく、ボルトナットなどの締結手段を用いることができる。
本実施例では、結合材22にワンサイドボルトを用いている。
ワンサイドボルトとは、締結対象の片側からの操作によって締結を行うことができるボルトである。
このワンサイドボルトを、縦胴縁Bに別途削孔して形成する貫通孔と、ベース材21に設けた取付孔に挿入した後に締結作業を行うことによって、縦胴縁Bとベース材21とを結合することができる。
躯体を構成する縦胴縁Bには、後付けでナット要素を設けることが難しいため、ワンサイドボルトを用いれば、結合作業がより容易になる。
【0017】
<5>腕部(図2
腕部30は、柱部10をベース材21から所定長離隔した位置に留め置くための部材である。
腕部30の長さは、構造物の躯体において縦胴縁Bよりも前方に配置される壁材Cなどの構成部材の厚さを踏まえて設計すればよい。
【0018】
<5.1>腕部の長さ調整機構(図2
本実施例では、ベース材21の前面に一端を固定したネジ軸を腕部30としており、柱部10を貫通する貫通孔11に挿通したネジ軸の他端を、柱部10の前面側に配置するナット12に螺合して締結する態様としており、ネジ軸におけるナット12の位置を調整することで、腕部30の長さを調整可能としている。
本構成によれば、各腕部30の長さを調整することで、連結金具Aで把持する壁つなぎ梁D1の位置や姿勢の微調整が可能となる。
【0019】
<6>移動部(図3
移動部A2は、前記基部A1に対して縦方向に移動可能に構成することで、移動部A2で把持する壁つなぎ梁D1の配置高さを任意の高さに設定するための要素である。
本実施例では、移動部A2を、前記柱部10に移動可能に配置する摺動部40と、前記摺動部40から張り出すように配置する張出部50と、各張出部50に設けるクランプ60と、を少なくとも備えて構成する。
以下、各構成部材の詳細について説明する。
【0020】
<7>摺動部(図3
摺動部40は、基部A1を構成する柱部10の長手方向に沿って移動することで、基部A1に対するクランプ60の位置(高さ)を調整するための部材である。
本実施例では、摺動部40を、平面視して内面を柱部10の外形に対応させた中空形状を有しつつ、側壁の一部を切り欠いた形状で構成している。
この摺動部40の一方の側面には締結孔41を設けておき、この締結孔41へのボルト42の螺合作業によってボルト42の先端を柱部10に押しつけることで、摺動部40を柱部10の所定位置に固定可能としている。
また、摺動部40の前面にも別途締結孔を設けておき、後述する張出部50側から新たなボルトを螺合することによって、摺動部40をさらに位置決め可能としている。
【0021】
<8>張出部(図3
張出部50は、摺動部40から躯体の外側方向に延伸して設けることで、当該張出部50に取り付けるクランプ60を、躯体から離隔した位置に保持するための部材である。
本実施例では、摺動部40の前面と接触する縦板51と、当該縦板51の上下からそれぞれ延伸する横板52と、上下の横板52間を接続するコ字状部材53とによって張出部50を構成している。なお、図3では上側の横板52の一部について図示を省略している。
【0022】
<8.1>柱部との位置決め機構(図3
縦板52には貫通孔511を設けておき、この貫通孔511からボルト512を挿入して、前述した摺動部40の前面に設けた締結孔(図示せず)に螺合することで、柱部10に対し、摺動部40と張出部50の位置決めを可能としている。
【0023】
<9>クランプ(図3
クランプ60は、壁つなぎ梁D1を把持するための部材である。
本実施例では、上側の横板の上面と、下側の横板の下面にそれぞれクランプ60を二箇所ずつ設けている。なお、図3では一部のクランプ60の図示を省略している。
この二箇所ずつのクランプ60に別々に壁つなぎ梁D1を把持させることで、一つの連結金具Aに対し、二つの壁つなぎ梁D1を、縦方向に離隔させた状態で取り付けることができる。
【0024】
<10>使用例(図4
本発明に係る連結金具Aを用いて、昇降足場Dを設置する方法について図4を参照しながら説明する。
まず、躯体の左右方向に間隔を空けて設置してある縦胴縁Bにそれぞれ連結金具Aを固定し、その後、連結金具Aに設けた把持機構でもって壁つなぎ梁D1を把持させる。
その後、壁つなぎ梁D1とマストD2とを連結固定して、昇降機D3や足場板D4などの各種部材を設置して、昇降足場Dの構築作業を進めればよい。
【0025】
<10.1>壁つなぎ梁の構成例
なお、壁つなぎ梁D1を、全長の異なる複数のトラス材を長手方向に連結自在に構成すれば、縦胴縁Bの間隔、すなわち連結金具Aの設置間隔が異なる現場においても、全長の異なる複数のトラス材を適宜組み合わせることによって、連結金具Aによる壁つなぎ梁D1の把持部分を確保した態様で、昇降足場Dを設置することができる。
【符号の説明】
【0026】
A 連結金具
A1 基部
10 柱部
20 結合部
21 ベース材
22 結合材
30 腕部
A2 移動部
40 摺動部
50 張出部
60 クランプ
B 縦胴縁
C 壁材
D 昇降足場
D1 壁つなぎ梁
D2 マスト
D3 昇降機
D4 足場板
【要約】
【課題】構造物の躯体を構成する縦胴縁への取付に適する連結金具を提供すること。
【解決手段】壁つなぎ梁D1を含んで構成する昇降式の作業足場を、縦胴縁Bを有する躯体に沿って設置する際に使用する連結金具Aであって、縦胴縁Bの固定機構を設けた基部A1と、壁つなぎ梁D1の把持機構を設け、基部A1に対して縦方向に移動可能に構成した移動部A2と、を少なくとも有することを特徴とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4