特許第6713225号(P6713225)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6713225逆流防止装置に特徴を有する金属射出成形機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6713225
(24)【登録日】2020年6月5日
(45)【発行日】2020年6月24日
(54)【発明の名称】逆流防止装置に特徴を有する金属射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/20 20060101AFI20200615BHJP
   B22D 21/04 20060101ALI20200615BHJP
【FI】
   B22D17/20 G
   B22D17/20 L
   B22D21/04 B
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-193853(P2017-193853)
(22)【出願日】2017年10月3日
(65)【公開番号】特開2019-63833(P2019-63833A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2019年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】川邊 主税
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 研
(72)【発明者】
【氏名】前原 明弘
【審査官】 田口 裕健
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−314510(JP,A)
【文献】 特開2005−193283(JP,A)
【文献】 特開2008−194718(JP,A)
【文献】 特開2000−190364(JP,A)
【文献】 特表2003−524525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/00−17/32
B22D 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱シリンダと、該加熱シリンダ内に回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられているスクリュとからなりマグネシウム合金を射出する金属射出成形機であって、
前記スクリュの先端に逆流防止装置が設けられ、
該逆流防止装置は、前記スクリュの先端に設けられている押金と、前記押金に固定されているスクリュヘッドと、逆流防止リングとから構成され、前記スクリュヘッドは前記押金に固定されている所定径の軸部と該軸部に接続されている頭部とからなり、前記逆流防止リングは前記加熱シリンダのボアに液密的に摺動されていると共に前記軸部に挿通されており、
計量時において前記逆流防止リング前記頭部に当接した状態で溶融したマグネシウム合金が前記逆流防止装置を流れて前記スクリュの先端に計量されるとき、溶融したマグネシウム合金は、前記逆流防止装置における最上流であって前記加熱シリンダの前記ボアと前記押金の間に形成されている第1の流路と、該第1の流路の下流で前記押金と前記逆流防止リングの間に形成されている第2の流路と、該第2の流路の下流で前記軸部と前記逆流防止リングの間に形成されている第3の流路と、該第3の流路の下流で前記頭部に形成されている第4の流路とを順次流れるようになっており、
前記第2〜4の流路のそれぞれの断面積は、前記第1の流路の断面積と等しいかそれより大きいことを特徴とする金属射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネシウム合金を射出材料とし金属成形品を成形する金属射出成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マグネシウム合金から金属成形品を成形する方法は色々あり、広く実施されている方法としてダイカスト法が周知である。ダイカスト法には、コールドチャンバー方式とホットチャンバー方式とがあり、コールドチャンバー方式では射出装置に形成されているスリーブから溶融したマグネシウム合金を注入して、プランジャを駆動して金型に射出するようになっており、ホットチャンバー方式では溶融したマグネシウム合金で満たされた溶融炉にいわゆるグースネックを入れてマグネシウム合金を供給しプランジャを駆動して金型に射出するようになっている。つまりダイカスト法では、いずれの方式でもマグネシウム合金を完全に溶融する必要がある。従って、例えば汎用的なマグネシウム合金であり融点が595℃のAZ91Dであれば、それよりかなり高温、例えば650〜670℃に加熱しなければならない。このようにダイカスト法ではマグネシウム合金を完全に溶融するために高温にする必要があるので凝固時にある程度の収縮が発生する。それによって引け巣が生じたり、ガスの巻き込みが生じるいわゆる鋳造欠陥が生じやすいという欠点もある。
【0003】
このようなダイカスト法に対して、インラインスクリュ式の射出成形機によってマグネシウム合金を溶融し金型に射出して成形する射出成形法も周知である。インラインスクリュ式の射出成形機は、射出装置が加熱シリンダとこの加熱シリンダ内で回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられているスクリュとから構成され、金属を射出材料とする射出成形機は金属射出成形機と呼ばれている。例えば、特許文献1、2等のように、金属射出成形機に関連する色々な技術が本願の出願人によって提案されているが、金属射出成形機でマグネシウム合金を溶融すると、比較的低温で溶融して金型に射出することができる。具体的には、液相線温度近傍、あるいはそれよりも低温の580℃で半溶融状態に溶融し、射出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−281413号公報
【特許文献2】特開2003−94159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マグネシウム合金から成形品を得るとき金属射出成形機によって射出する射出成形法を実施すると、液相線温度近傍で溶融して射出することができるので、つまり比較的低温で溶融して射出することができるので、凝固時の収縮率が小さく鋳造欠陥の発生を抑制できる。また成形品の変形が小さくなるので精度の高い成形品が得られる。すなわちマグネシウム合金から成形品を得る方法として射出成形法は優れた点が多いと言える。しかしながら解決すべき問題も見受けられる。具体的には、液相線以下の温度で成形を繰り返すと流動性が悪くなり、逆流防止装置通過時の流動抵抗が増えることにより成形安定性が落ちる点である。高温で溶融して射出する場合には成形を繰り返しても成形不良が発生することはほとんど無いが、液相線温度より低い温度で溶融して射出する場合には成形不良が発生しやすい。本発明者の調査によると、成形不良が発生するときには、スクリュの逆流防止弁近傍において未溶融状態のマグネシウムの金属粒子が堆積して溶融した金属が流動する流路を塞いでいることが分かった。マグネシウム合金によって射出成形するとき、凝固時の収縮率を小さくするために比較的低温で溶融して射出したいという要求があり、特にそのような場合に成形が安定しない。
【0006】
本発明は、上記したような問題点を解決した金属射出成形機を提供することを目的とし、具体的には、マグネシウム合金を液相線温度の近傍あるいはそれより低温で溶融して射出するにも拘わらず、成形サイクルを繰り返し実施しても成形不良が発生しにくい金属射出成形機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために、加熱シリンダとスクリュとからなる金属射出成形機であって、逆流防止装置に特徴を有する金属射出成形機として構成する。逆流防止装置は、スクリュの先端に設けられている押金と、押金に固定されているスクリュヘッドと、逆流防止リングとから構成されている。そしてスクリュヘッドは所定径の軸部と頭部とからなり、逆流防止リングは加熱シリンダのボアに液密的に摺動されていると共に軸部に挿通されている。計量時には逆流防止リングは頭部に当接し、溶融したマグネシウム合金は、加熱シリンダのボアと押金の間に形成されている第1の流路、押金と逆流防止リングの間に形成されている第2の流路、軸部と逆流防止リングの間に形成されている第3の流路、頭部に形成されている第4の流路を順次流れる。本発明は、第2〜4の流路のそれぞれの断面積が、第1の流路の断面積と等しいかそれより大きいように構成する。
【0008】
かくして、請求項1記載の発明は、上記目的を達成するために、加熱シリンダと、該加熱シリンダ内に回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられているスクリュとからなりマグネシウム合金を射出する金属射出成形機であって、前記スクリュの先端に逆流防止装置が設けられ、該逆流防止装置は、前記スクリュの先端に設けられている押金と、前記押金に固定されているスクリュヘッドと、逆流防止リングとから構成され、前記スクリュヘッドは前記押金に固定されている所定径の軸部と該軸部に接続されている頭部とからなり、前記逆流防止リングは前記加熱シリンダのボアに液密的に摺動されていると共に前記軸部に挿通されており、計量時において前記逆流防止リング前記頭部に当接した状態で溶融したマグネシウム合金が前記逆流防止装置を流れて前記スクリュの先端に計量されるとき、溶融したマグネシウム合金は、前記逆流防止装置における最上流であって前記加熱シリンダの前記ボアと前記押金の間に形成されている第1の流路と、該第1の流路の下流で前記押金と前記逆流防止リングの間に形成されている第2の流路と、該第2の流路の下流で前記軸部と前記逆流防止リングの間に形成されている第3の流路と、該第3の流路の下流で前記頭部に形成されている第4の流路とを順次流れるようになっており、前記第2〜4の流路のそれぞれの断面積は、前記第1の流路の断面積と等しいかそれより大きいことを特徴とする金属射出成形機として構成される。
【発明の効果】
【0009】
以上によると本発明は、加熱シリンダと、該加熱シリンダ内に回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられているスクリュとからなりマグネシウム合金を射出する金属射出成形機として構成される。スクリュの先端に逆流防止装置が設けられ、逆流防止装置は、スクリュの先端に設けられている押金と、押金に固定されているスクリュヘッドと、逆流防止リングとから構成され、スクリュヘッドは押金に固定されている所定径の軸部と該軸部に接続されている頭部とからなり、逆流防止リングは加熱シリンダのボアに液密的に摺動されていると共に軸部に挿通されている。そして計量時において逆流防止リング頭部に当接した状態で溶融したマグネシウム合金が逆流防止装置を流れてスクリュの先端に計量されるとき、溶融したマグネシウム合金は、逆流防止装置における最上流であって加熱シリンダのボアと押金の間に形成されている第1の流路と、該第1の流路の下流で押金と逆流防止リングの間に形成されている第2の流路と、該第2の流路の下流で軸部と逆流防止リングの間に形成されている第3の流路と、該第3の流路の下流で頭部に形成されている第4の流路とを順次流れるようになっている。本発明は、第2〜4の流路のそれぞれの断面積は、第1の流路の断面積と等しいかそれより大きいように構成されている。つまり流路の断面積は上流と下流において等しいか、下流側の方が大きい。従って、マグネシウム合金が液相線温度以下の比較的低い温度で溶融して、半溶融状態であっても、粒子状の固体のマグネシウム合金は溶融したマグネシウム合金と共に滑らかに流動して計量される。つまり粒子状の固体のマグネシウム合金が逆流防止装置において堆積しない。従って成形サイクルを繰り返し実施しても成形不良は発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係る金属射出成形機を示す正面断面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る金属射出成形機の一部であって、逆流防止装置近傍を拡大して示す正面断面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る金属射出成形機によって成形したマグネシウム合金からなる成形品を切断した切断面の拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明の実施の形態に係る金属射出成形機1は、図1に示されている射出装置2、図示されていない型締装置等から構成されている。射出装置2は、加熱シリンダ4と、この加熱シリンダ4内に回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられている本実施の形態に係るスクリュ6とからなる。加熱シリンダ4には、その後方にホッパ7が設けられマグネシウム合金のチップ状原料が加熱シリンダ4内に供給されるようになっている。そして加熱シリンダ2の先端には射出ノズル8が設けられ、図1に示されていないが、加熱シリンダ2の外周面には複数のヒータが設けられ加熱されるようになっている。スクリュ6は、所定の駆動機構10によって回転方向と軸方向に駆動されるようになっている。
【0012】
本実施の形態に係る金属射出成形機1は、スクリュ6に設けられている逆流防止装置12に特徴がある。逆流防止装置12は、図2に拡大して示されているように、スクリュ6の先端に固定されている押金14と、スクリュヘッド15と、逆流防止リング16とから構成されている。押金14は上流側が高さの低い円柱部18になっており、下流側がテーパ状に縮径した円錐部19になっている。スクリュヘッド15は、所定径の軸部21と、この軸部21に固着されている頭部22とから構成されている。スクリュヘッド15は、この軸部21が押金14に固定されることによってスクリュ6に取付けられている。逆流防止リング16は筒状に形成され、スクリュヘッド15の軸部21が挿通しており、その外周面が加熱シリンダ4のボア24に対して液密的に摺動するようになっている。逆流防止リング16は、押金14に近い部分においてテーパ面25が形成されており、射出時には逆流防止リング16はこのテーパ面25において押金14の円錐部19に押し付けられる。つまり着座する。一方、計量時には逆流防止リング16はスクリュヘッド15の頭部22に当接することになる。スクリュヘッド15の頭部22には複数個の切り欠き、あるいは複数個の貫通孔27が形成されており、逆流防止リング16が頭部22に当接しても次に説明する第4の流路34が確保されるようになっている。
【0013】
計量時には、逆流防止リング16がスクリュヘッド15の頭部22に当接するが、次の複数の流路を経由して溶融したマグネシウム合金がスクリュ6の先端に送られる。まず、逆流防止装置12における最上流の流路は、押金14と加熱シリンダ4のボア24との間に形成される第1の流路31である。本実施の形態においては押金14は円柱部18を備えているので、第1の流路31は円柱部18の外周面とボア24の間の環状の流路になる。このような第1の流路31の下流側に第2の流路32が形成されている。第2の流路32は、押金14の円錐部19と逆流防止リング16のテーパ面25の間に形成されている。この第2の流路32の下流側に第3の流路33が形成されている。第3の流路33はスクリュヘッド15の軸部21と逆流防止リング16の間に形成され、円筒状になっている。第4の流路34は、スクリュヘッド15の頭部22に形成されている流路であり、複数個の切り欠きあるいは複数個の貫通孔27からなる。マグネシウム合金は第4の流路34を流れてスクリュ6の先端に計量されることになる。
【0014】
本実施の形態に係る金属射出成形機1では、これら第1〜4の流路31、32、…の断面積の関係に特徴がある。具体的には、第2〜4の流路32、33、34の断面積は、より詳しく言うと流れ方向と垂直な面における断面積は、第1の流路31の断面積と実質的に等しいか、第1の流路31の断面積より大きい。なお、第4の流路34は、複数個の切り欠き、あるいは複数個の貫通孔27からなるが、その断面積はそれらの合計の断面積とする。第1〜4の流路31、32、…の断面積の関係はこのようになっているが、従来の金属射出成形機では軸部21が比較的径が大きく、第3の流路33が第1の流路31に比して断面積が約1/2と小さい。このため従来の金属射出成形機では粒状の固体のマグネシウム合金が逆流防止装置12において堆積することがあった。これに対して本実施の形態に係る金属射出成形機1においては、流路の断面積が逆流防止装置12において上流から下流まで等しいか、あるいは他の流路の断面積は第1の流路31より大きいので、粒状の固体のマグネシウム合金が溶融したマグネシウム合金と共に流れても、粒状の固体のマグネシウム合金が逆流防止装置12内で堆積しない。つまり計量において問題が生じない。マグネシウム合金は液相線温度の近傍、あるいは液相線温度より低温で溶融して射出すると、成形品の収縮率が小さく好ましいが、本実施の形態に係る金属射出成形機1は、このように比較的低温で溶融しても粒状の固体のマグネシウム合金が逆流防止装置12に堆積しないで、良好に計量できる。
【実施例1】
【0015】
本実施の形態に係る金属射出成形機1は、従来の金属射出成形機に比して計量が安定し、成形不良が発生し難いことを確認するため、実験を行った。
実験内容:
本発明の実施例の金属射出成形機1として、加熱シリンダ4の内径が51mmの金属射出成形機の機種を採用し、第1〜4の流路31、32、…の断面積の比率が下の表1のようになるように逆流防止装置12を制作しスクリュ6に取付けた。すなわち、第2、3、4の流路32、33、34のそれぞれの断面積が、第1の流路31の断面積に対して、1.03、1.13、1.11倍になるようにした。ただし、第2の流路32については、流れ方向は円錐部19の円錐面に平行になっているとして、その断面積を計算している。具体的には、円錐部19の円錐面は一方の端部が円柱部18に、そして他方の端部が軸部21にそれぞれ接続されているが、これら両端部から等距離の位置、つまり円錐面の中央の位置から円錐面に対して垂直に延ばしてテーパ面25に達する断面を考え、その面積を第2の流路32の断面積であるとして計算している。
【0016】
【表1】
【0017】
比較例として同機種の金属射出成形機を用意し、従来の逆流防止装置をスクリュに取付けた。従来の逆流防止装置において第2、3、4の流路のそれぞれの断面積は、表1に示されているように、第1の流路の断面積に対して0.97、0.50、0.63倍であった。
【0018】
本発明の実施例の金属射出成形機1と、比較例の金属射出成形機のそれぞれにおいてマグネシウム合金AZ91Dを材料として溶融・射出し、100×200×2mmの平板成形品を成形した。なお、表2のように加熱シリンダ4の設定温度は色々な温度を与え、それぞれの温度において50個ずつ平板成形品を成形した。その結果を表2に示す。表2において○は成形した全ての成形品が正常であったことを、△は数個の成形品において成形不良が生じたことを、そして×は実質的に成形ができなかったことをそれぞれ示している。
【0019】
【表2】
【0020】
考察:マグネシウム合金AZ91Dの融点は595℃であり、600℃においては実質的に完全に溶融して射出されていると考えられる。この温度では本発明の実施例の金属射出成形機1においても、比較例の金属射出成形機においても正常に成形が実施できた。590℃は液相線温度よりわずかに低い温度であるが、この温度においても本発明の実施例の金属射出成形機1においても、比較例の金属射出成形機においても正常に成形が実施できた。液相線温度よりわずかに温度が低いだけであるので、溶融したマグネシウム合金の中に粒状の固体のマグネシウム合金が存在しているとしてもわずかであり、逆流防止装置12において堆積しないからであると推測される。加熱シリンダ4の温度を580℃に設定して成形すると、比較例の金属射出成形機においては一部成形不良が発生した。比較例の金属射出成形機の逆流防止装置を調べたところ、粒状の固体のマグネシウム合金の堆積が見られた。これに対して本発明の実施例の金属射出成形機1においては正常に成形ができた。つまり逆流防止装置12において堆積はなかったと考えられる。加熱シリンダ4の設定温度を575℃で成形すると、比較例の金属射出成形機では実質的に成形ができなかったが、本発明の実施例の金属射出成形機1においては正常に成形ができた。この575℃において本発明の実施例の金属射出成形機1において成形した平板成形品を切断し、その断面を撮影したものを図3に示す。成形品中に粒状のマグネシウム合金が多数含まれているが、これらは固体の状態で溶融したマグネシウム合金と共に射出されたものである。マグネシウム合金が半溶融状態で射出されていることが確認できた。加熱シリンダ4の設定温度を570℃にしても、本発明の実施例の金属射出成形機1では正常に成形品が成形できたが、565℃にすると、一部成形不良が見られた。以上の実験から、本発明の実施の形態に係る金属射出成形機1は、従来の射出成形機においては射出成形が困難な低い温度であっても、マグネシウム合金を半溶融状態にして安定的に射出でき、良好な成形品を成形できることが確認できた。
【符号の説明】
【0021】
1 金属射出成形機 2 射出装置
4 加熱シリンダ 6 スクリュ
7 ホッパ 8 射出ノズル
12 逆流防止装置 14 押金
15 スクリュヘッド 16 逆流防止リング
18 円柱部 19 円錐部
21 軸部 22 頭部
24 ボア 25 テーパ面
31 第1の流路 32 第2の流路
33 第3の流路 34 第4の流路
図1
図2
図3