特許第6713263号(P6713263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6713263
(24)【登録日】2020年6月5日
(45)【発行日】2020年6月24日
(54)【発明の名称】タイヤ内面用離型剤
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20200615BHJP
   B29C 33/56 20060101ALI20200615BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20200615BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20200615BHJP
【FI】
   B29C33/02
   B29C33/56
   B29C35/02
   B29L30:00
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-218020(P2015-218020)
(22)【出願日】2015年11月6日
(65)【公開番号】特開2017-87491(P2017-87491A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松村 佳澄
(72)【発明者】
【氏名】武市 賢治
【審査官】 浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−039575(JP,A)
【文献】 特開昭53−091988(JP,A)
【文献】 特開平11−114970(JP,A)
【文献】 特開2000−202835(JP,A)
【文献】 特開2013−124292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00−35/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸金属石鹸シリコーン成分と、界面活性剤と、水溶性高分子成分と、と、
防腐剤、消泡剤、防錆剤、酸化防止剤、キレート剤及びpH調整剤から選ばれる少なくとも1種と、からなるタイヤ内面用離型剤であって、
前記脂肪酸金属石鹸の平均粒子径が1〜100μmであり、
前記脂肪酸金属石鹸が、ミリスチン酸亜鉛及び/又はステアリン酸カルシウムを含み、
前記脂肪酸金属石鹸を構成する脂肪酸の炭素数が6〜20であり、
前記脂肪酸金属石鹸の融点が125〜170℃であり、
離型剤に占める前記脂肪酸石鹸の重量割合が5重量%超かつ50重量%以下、前記シリコーン成分の重量割合が1〜25重量%、前記界面活性剤の重量割合が0.5〜20重量%であり、
20℃での粘度が400mPa・s以上である、タイヤ内面用離型剤。
【請求項2】
前記平均粒子径が2μm超かつ100μm以下である、請求項1に記載のタイヤ内面用離型剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のタイヤ内面用離型剤を、生タイヤとブラダー間および/または生タイヤと金型の間に介在させて、前記ブラダーを加熱膨張させて前記生タイヤを金型に注入し、加熱成型する加硫工程を含む、タイヤの製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のタイヤ内面用離型剤を、生タイヤの内面および/または外面に付着させ加硫してなる、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ内面用離型剤に関する。より詳しくは、タイヤ加硫成型時に生タイヤとブラダーとの間に介在して潤滑、離型作用を発揮するタイヤ内面用離型剤に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの製造工程において、未加硫生タイヤの加硫成型は、通常、ブラダーと呼ばれるゴム製袋を生タイヤ内側で温風、熱水又は蒸気で膨張させることで、金型内に未加硫生タイヤを圧入成型することによって行われる。
通常、この工程を円滑に行うために生タイヤのインナーライナー面(以下、生タイヤ内面)にあらかじめ離型剤(タイヤ内面用離型剤)が塗布される。タイヤ内面用離型剤には主に、生タイヤ内面とブラダーとの間に良好な潤滑性を与える性能(平滑性)、ブラダーと生タイヤ内面に入り込んだ空気を逃し両者を密着させる性能(空気透過性)が必要であり、また、加硫終了後にブラダーを収縮させるときにはブラダーと生タイヤ内面とが円滑にはがれる性能(離型性)が求められる。
【0003】
そのため、離型性を付与するシリコーン類の水中油滴型乳化物と、平滑性及び空気透過性を付与する固体粒子懸濁液との混合組成物を、タイヤ内面用離型剤として塗布することが広く行われてきた。特に固体粒子の組成としては天然鉱物や粘土に由来する無機粉体が好適とされてきた。このため、前記の固体粒子による加硫製品の外観低下および環境悪化がタイヤメーカーにおける課題となっている。
特許文献1では、シリコーンの水性乳化物と一次平均粒子径が55〜95μmのマイカを含む無機粉体との組成物を、タイヤ内面用離型剤として使用することが示されている。この例では、離型剤としての性能である平滑性、空気透過性、離型性は良好であるが、無機粉体が一般に白色であるために、タイヤ内面用離型剤を生タイヤ内面に塗布した場合、加硫後のタイヤの外観の透明性が低く、白っぽく曇ってしまい美観が損なわれるという問題がある。
特許文献2では、脂肪酸エステルとワックスが主成分で実質的に無機粉末を使用していないため、加硫後のタイヤの外観低下には問題ない。しかし、乳化物の平均粒子径が50〜2000nmと小さいため、空気透過性が不十分であり、かつ塗布乾燥後の視認性が十分でなく、工程を管理する上で塗布の判別が難しく、問題が生じてしまう問題がある。
このように、工程管理においては視認でき、かつ、加硫後のタイヤの外観の透明性を満たすという、相反する性質を同時に満たすタイヤ内面用離型剤はないのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−193448号公報
【特許文献2】特開2015−77720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加硫成型前の未加硫生タイヤに塗布乾燥後の視認性が良く、かつ、加硫成型後に透明となるタイヤ内面用離型剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の平均粒子径の脂肪酸金属石鹸を含有するタイヤ内面用離型剤であれば、上記課題が解決されることを見出し、本発明に達した。
【0007】
すなわち本発明のタイヤ内面用離型剤は、脂肪酸金属石鹸シリコーン成分と、界面活性剤と、水溶性高分子成分と、と、防腐剤、消泡剤、防錆剤、酸化防止剤、キレート剤及びpH調整剤から選ばれる少なくとも1種と、からなるタイヤ内面用離型剤であって、前記脂肪酸金属石鹸の平均粒子径が1〜100μmであり、前記脂肪酸金属石鹸が、ミリスチン酸亜鉛及び/又はステアリン酸カルシウムを含み、前記脂肪酸金属石鹸を構成する脂肪酸の炭素数が6〜20であり、前記脂肪酸金属石鹸の融点が125〜170℃であり、離型剤に占める前記脂肪酸石鹸の重量割合が5重量%超かつ50重量%以下、前記シリコーン成分の重量割合が1〜25重量%、前記界面活性剤の重量割合が0.5〜20重量%であり、20℃での粘度が400mPa・s以上である、タイヤ内面用離型剤である。
【0008】
前記平均粒子径が2μm超かつ100μm以下であると好ましい
【0009】
本発明のタイヤの製造方法は、上記タイヤ内面用離型剤を、生タイヤとブラダー間および/または生タイヤと金型の間に介在させて、前記ブラダーを加熱膨張させて前記生タイヤを金型に注入し、加熱成型する加硫工程を含む、タイヤの製造方法である。
【0010】
本発明のタイヤは、上記タイヤ内面用離型剤を、生タイヤの内面および/または外面に付着させ加硫してなる、タイヤである。
【0011】
本発明のタイヤの製造方法は、上記タイヤ内面用離型剤を生タイヤとブラダー間に介在させて、前記ブラダーを加熱膨張させて前記生タイヤを金型に注入し、加熱成型する加硫工程を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明のタイヤ内面用離型剤は、塗布乾燥後の視認性が十分であり、かつ、加硫成型後に透明となるため、本発明のタイヤ内面用離型剤を使用するタイヤの製造方法は、タイヤの生産効率と高品質を同時に充足する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のタイヤ内面用離型剤に配合される各成分について説明し、タイヤ内面用離型剤について詳述する。
【0014】
〔脂肪酸金属石鹸〕
本発明のタイヤ内面用離型剤は、脂肪酸金属石鹸を必須に含有する。
【0015】
脂肪酸金属石鹸を構成する金属は、特に限定されないが、亜鉛、カルシウム、マグネシウム等が挙げられる。
脂肪酸金属石鹸を構成する脂肪酸の炭素数は6〜20が好ましく、8〜18がより好ましく、10〜18がさらに好ましく、12〜18が特に好ましい。6未満では加硫後の透明性低下、20を超えると視認性が低下することがある。
【0016】
脂肪酸金属石鹸の融点は、125〜170℃が好ましく、125〜160℃がより好ましく、125〜150℃がさらに好ましい。これは加硫温度が一般的に140〜180℃であり、125℃より低いと加硫時に脂肪酸金属石鹸の融点にすぐ達してしまい、融解までの時間が短く粒子として存在する時間が短いために空気透過性が十分に発現しないことがある。また、乾燥条件により視認性が低下してしまう場合がある。
170℃を超えると加硫時に脂肪酸金属石鹸の融点に達しないため、粒子として存在する時間が長いため十分な空気透過性を得られるが、加硫後も表面に粒子として残留してしまい外観が完全に透明とならず、外観低下の問題を生じる。
脂肪酸金属石鹸としては、たとえば、ラウリン酸マグネシウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、ミリスチン酸カルシウム、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、トリオクタデカン酸アルミニウム、ジオクタデカン酸アルミニウム、モノオクタデカン酸アルミニウム、オクタデカン酸カルシウム、オクタデカン酸亜鉛、オクタデカン酸マグネシウム、オクタデカン酸バリウム等からなる粒子が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0017】
脂肪酸金属石鹸の平均粒子径は、1〜100μmであり、2μm超かつ100μm以下が好ましく、2μm超かつ20μm以下がより好ましく、2μm超かつ15μm以下がさらに好ましい。脂肪酸金属石鹸をビーズミルやホモジナイザー等の機械的分散力の高い分散機を用いることにより、乳化粒子径として1μm未満のものも作製可能であるが、粒子径が細かくなると、塗布乾燥後の視認性が十分ではなくなってしまう。また、スペーサーの役割をせず、十分な空気透過性も得られない。
100μmより大きい場合には、塗布乾燥後の十分な視認性が得られず、また、スプレーガンなどを用いて離型剤を付着させる工程で、スプレーガンノズルが閉塞する。
なお、平均粒子径は体積平均粒子径であり、測定方法はレーザー回折散乱法である。
【0018】
〔ワックス〕
ワックスは、天然ワックス、合成ワックス、配合ワックス等の種類に大別される。天然ワックスとしては、例えばキャンデリラワックス、カルナバロウワックス、ライスワックス、木ロウ等の植物系ワックス;みつろう、ラノリン、鯨ろう等の動物形ワックス、;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン等の鉱物系ワックス;パラフィンワックス、マイクロスタリンワックス、ペトラタム等の石油ワックス等が挙げられる。
【0019】
合成ワックスとしては、たとえば、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素;モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロスタリンワックス誘導体等の変性ワックス;硬化ひまし油、硬化ひまし油誘導体等の水素化ワックス;ラウリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸;オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の酸アミド;ステアリン酸メチル、ステアリン酸ステアリル等のエステル類;ビスヘプタデシルケトン等のケトン類等が挙げられる。
【0020】
ワックスの重量割合は5重量%未満であるのが好ましい。5重量%以上になると、空気透過性や視認性の低下に影響することがある。
【0021】
〔シリコーン成分〕
本発明のタイヤ内面用離型剤は、シリコーン成分を含むと、離型性や潤滑性が向上する。シリコーンは、オルガノポリシロキサン類の総称であって、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーンレジンを含む。シリコーン成分はこれらのシリコーンを含む。
オルガノポリシロキサン類としては、たとえば、ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、メチルイソプロピルポリシロキサン、メチルドデシルポリシロキサン等のジアルキルポリシロキサン;メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体等のアルキルフェニルポリシロキサン;メチル(フェニルエチル)ポリシロキサン、メチル(フェニルプロピル)ポリシロキサン等のアルキルアラルキルポリシロキサン;3,3,3−トリフルオロプロピルメチルポリシロキサン等を挙げることができる。これらのオルガノポリシロキサン類は、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0022】
シリコーン成分としては、離型性の点からは、分子構造が直鎖状で、重合度が低く常温で流動性を有するシリコーンオイル等が好ましい。その粘度については、特に限定はないが、離型性と製品安定性のバランスの点で、25℃における粘度が、好ましくは100〜50万cSt、さらに好ましくは300〜10万cStである。
【0023】
〔界面活性剤〕
界面活性剤は脂肪酸金属石鹸を水中に分散させ、タイヤ内面用離型剤の分散安定性を高めるだけでなく、タイヤ内面用離型剤をスプレー装置などにより生タイヤに塗布する際に、液はじきを防止する特性(濡れ性)を与える。その配合量を調整することによって、濡れ性を調節することができる。
界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれた少なくとも1種であればよく、好ましくは非イオン型界面活性剤及び/又はアニオン型界面活性剤である。
【0024】
非イオン性界面活性剤としては、特に限定はないが、たとえば、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシアルキレン硬化ひまし油;ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル;ポリグリセリン脂肪酸エステル;アルキルグリセリンエーテル;ポリオキシアルキレンコレステリルエーテル;アルキルポリグルコシド;ショ糖脂肪酸エステル;ポリオキシアルキレンアルキルアミン;オキシエチレンーオキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。本発明においては、脂肪酸金属石鹸に対する水への分散効果の面で、ポリオキシエチレンアルキルエーテル・ポリオキシプロピレンアルキルエーテル(アルキルは1〜3級のいずれでもよい)、などポリオキシアルキレン系が望ましい。非イオン性界面活性剤は、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0025】
アニオン性界面活性剤としては、特に限定はないが、たとえば、オレイン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、オレイン酸トリエタノールアミン等の脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩;ステアロイルメチルタウリンNa、ラウロイルメチルタウリンNa、ミリストイルメチルタウリンNa、パルミトイルメチルタウリンNa等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩;ラウロイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシン塩;モノステアリルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸塩;ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等の長鎖スルホコハク酸塩、N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウムモノナトリウム、N−ステアロイル−L−グルタミン酸ジナトリウム等の長鎖N−アシルグルタミン酸塩等が挙げられる。本発明においては、脂肪酸金属石鹸に対する水への分散効果の面で、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等の長鎖スルホコハク酸塩系が望ましい。
【0026】
本発明においては、タイヤ内面用離型剤を付着させる効果の面から、カルボン酸型アニオン性界面活性剤、スルホン酸型アニオン性界面活性剤等が適しており、カルボン酸型アニオン性界面活性剤では、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩等が特に適している。スルホン酸型アニオン性界面活性剤では、アルカンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸塩等が特に適している。これらのアニオン性界面活性剤は、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0027】
カチオン性界面活性剤としては、たとえば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩;ジアルキルジメチルアンモニウム塩;トリアルキルメチルアンモニウム塩、アルキルアミン塩が挙げられる。
【0028】
両性界面活性剤としては、たとえば、2−ウンデシル−N,N−(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)−2−イミダゾリンナトリウム、2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等のイミダゾリン系両性界面活性剤;2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等のベタイン系両性界面活性剤;N−ラウリルグリシン、N−ラウリルβ−アラニン、N−ステアリルβ−アラニン等のアミノ酸型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0029】
分散安定性や濡れ性を高めるために、界面活性剤の2種以上を併用してもよく、たとえば、非イオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤の併用系を挙げることができる。
【0030】
これら使用する界面活性剤のHLB値には限定はないが、タイヤ内面用離型剤液を付着させる際の濡れ性の観点から、6〜16が好ましい。HLB値が小さすぎたり大きすぎたりすると、タイヤ内面用離型剤液を均一に塗布できないことがある。HLB値とは、界面活性剤の水と油との親和性の程度を表す1〜20の数値で、数値が小さいほど新油性が高く、数値が大きいほど親水性が高い。
【0031】
〔水〕
水は、水道水、イオン交換水、蒸留水等のいずれでもよく、特に限定はないが、イオン交換水や蒸留水等が好ましい。
【0032】
〔水溶性高分子成分〕
水溶性高分子は、離型剤を増粘させ、経日的な沈降を抑制する成分である。また、水溶性高分子は、ゴム表面で被膜を形成し、脂肪酸金属石鹸をゴム表面に結合させる成分である。
水溶性高分子による増粘効果は、水溶性高分子の分子量が大きい方が優れる。また、水溶性高分子の被膜も同様に、水溶性高分子の分子量が大きい方が優れる。しかしながら、水溶性高分子の分子量が大きすぎると、増粘効果が大きく流動性が悪くなるし、離型処理する場合に、保水性が高くなりすぎることによって、乾燥性が著しく低下することがある。そのため、本発明では、水溶性高分子の分子量は適正な範囲で選択するのが望ましい。
水溶性高分子は、一般に分子量分布を持つため、その水溶液の粘度で管理される。水溶性高分子の1%水溶液の粘度について、特に限定はないが、好ましくは5〜1×10mPa・s、さらに好ましくは10〜5×10mPa・s、特に好ましくは、10〜1×10mPa・sである。
【0033】
水溶性高分子としては、特に限定はないが、たとえば、酸化でんぷん、酢酸でんぷん、カルボキシメチルスターチ、カルボキシエチルスターチ、ヒドロキシエチルスターチ、陽性でんぷん、シアノエチル化でんぷん、ジアルデヒドでんぷん等のでんぷん類;マンナン;アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸トリエタノールアミン、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸類;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルローヅ、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロースエーテル類;タラカントガム、アラビアガム、グアーガム、キサンタンガム、ブリティッシュガム、グルコマンナン、ジェランガム、タラガム、ローカストビーンガム、カラギーナン等の天然ガム類;ゼラチン、カゼイン、コラーゲン等の蛋白類;ポリアクリル酸ソーダ;ポリビニルアルコール;ポリエチレングリコール;ポリエチレンオキシド;ゼラチン;カゼイン;コラーゲン;水溶性アクリル樹脂;水溶性ウレタン樹脂;水溶性メラミン樹脂;水溶性エポキシ樹脂;水溶性ブタジエン樹脂;水溶性フェノール樹脂等が挙げられる。これらの水溶性高分子は1種または2種以上を併用しても良い。
本発明では様々な水溶性高分子を選択することができるが、セルロースエーテル類および天然ガム類から選ばれる少なくとも1種が、被膜強度が高く、粉塵飛散の抑制および防着性能に優れるために好ましい。セルロースエーテル類としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等がさらに好ましく、天然ガム類としてはキサンタンガムがさらに好ましい。
【0034】
〔その他の成分等〕
本発明の離型剤は上記で説明した各成分以外に、消泡剤や防腐剤等をさらに含有していてもよい。
【0035】
〔消泡剤〕
消泡剤としては、たとえば、ポリメチルシロキサン、ポリエーテル変性シリコー等のシリコーン系消泡剤;ヒマシ油、ゴマ油、アマニ油、動植物油等の油脂系消泡剤;ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸等の脂肪酸系消泡剤;ステアリン酸イソアミル、コハク酸ジステアリル、エチレングリコールジステアレート、ステアリン酸ブチル等の脂肪酸エステル系消泡剤;ポリオキシアルキレンモノハイドリックアルコールジ−t−アミルフェノキシエタノール、3−ヘプタノール、2−エチルヘキサノール等のアルコール系消泡剤;ジ−t−アミルフェノキシエタノール3−ヘプチルセロソルブノニルセロソルブ3−ヘプチルカルビトール等のエーテル系消泡剤;トリブチルホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート等のリン酸エステル系消泡剤;ジアミルアミン等のアミン系消泡剤;ポリアルキレンアミド、アシレートポリアミン等のアミド系消泡剤;ラウリル硫酸エステルナトリウム等の硫酸エステル系消泡剤;ポリオキシアルキレン系消泡剤;鉱物油等が挙げられる。
【0036】
〔防腐剤〕
防腐剤としては、たとえば、チアゾール、2−メルカプトチアゾール等のチアゾール類;メチレンビスチオシアネート、アンモニウムチオシアネート等のチオシアネート類;o−ベンゾイックスルフィミド、フェニルマーキュリック−o−ベンゾイックスルフィミド等のスルフィミド類;メチルジメチルチオカルバメート、エチルジエチルジチオカルバメート等のアルキルジアルキルチオカルバメート類;テトラメチルチラウムスルフィド、テトラエチルチラウムスルフィド等のチラウムスルフィド類;テトラメチルチラウムジスルフィド、テトラエチルチラウムジスルフィド等のチラウムジスルフィド類;フェリックジエチルジチオカルバメート、リードジメチルジチオカルバメート等のジチオカルバメート類;o−トルエンスルホンアミド、ベンゼンスルフォンアニリド等のスルファミド類;1−アミノナフチル−4−スルホン酸、1−アミノ−2−ナフトール−4−スルホン酸等のアミノスルホン酸類;ペンタクロロフェノール、o−フェニルフェノール等のフェノール類及びこれらのアルカリ金属塩類;;テトラクロロ−p−ベンゾキノン、2,3−ジクロロ−1,4−ナフトキノン等の塩化キノン類;ジニトロカプリルフェニルクロトネート、ジニトロ−o−クレゾール等のニトロ基含有化合物類;1,3,5−トリヒドロキシエチルヘキサハイドロ−1,3,5−トリアジン、1,3,5−トリエチルヘキサハイドロ−1,3,5−トリアジン等のトリアジン類;フェニルマーキュリックフタレート、o−ヒドロキシフェニルマーキュリッククロライド等の有機水銀化合物;p−アミノアゾベンゼン、ジフェニルアミン等のアミン類;シンナムアニリド等のアミド類;1,3−ジヨード−2−プロパノール等のヨウ素含有化合物等が挙げられる。
【0037】
〔タイヤ内面用離型剤〕
本発明のタイヤ内面用離型剤に対する脂肪酸金属石鹸の重量割合は5重量%超かつ50重量%以下、より好ましくは5〜45重量%、さらに好ましくは10〜45重量%、特に好ましくは10〜40重量%である。5重量%以下の場合は、十分な平滑性、空気透過性、塗布乾燥後の視認性が得られない。一方、50重量%超では、加硫後にエア抜きラインに残留してしまい、透明な外観が得られなくなることがある。
【0038】
本発明のタイヤ内面用離型剤がシリコーン成分を含む場合には、タイヤ内面用離型剤に対するシリコーン成分の重量割合は、好ましくは1〜25重量%、より好ましくは5〜20重量%、さらに好ましくは8〜15重量%である。1重量%未満の場合は、離型性が悪化することがある。また、シリコーン成分が25重量%を越える場合は、平滑性が悪化することがある。
【0039】
本発明のタイヤ内面用離型剤が界面活性剤を含む場合には、タイヤ内面用離型剤に対する界面活性剤の重量割合は、好ましくは0.5〜20重量%、さらに好ましくは1〜15重量%、特に好ましくは1〜10重量%である。0.5重量%未満の場合は、離型剤を塗布時に生タイヤ内面での液はじきの発生、タイヤ内面用離型剤の保存安定性が悪化することがある。20重量%超の場合には、平滑性の悪化やタイヤ内面用離型剤の泡立ちによる塗布不良が発生することがある。
【0040】
本発明のタイヤ内面用離型剤が水溶性高分子を含む場合には、タイヤ内面用離型剤に対する水溶性高分子の重量割合は、好ましくは0.5〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%、さらに好ましくは1〜3重量%である。
【0041】
本発明において、粘度は20℃でブルックフィールド粘度計を用いて測定する。
本発明の離型剤の粘度は、400mPa・s以上であり、400〜4000mPa・sが好ましく、600〜2000mPa・sがより好ましく、800〜2000mPa・sがさらに好ましい。
離型剤の粘度が400mPa・s未満であると、十分な粘度を与えず、タイヤ内面に離型剤を噴きつけ後に液ダレが発生し、不均一な付着状態になってしまう。そのため、十分な被膜形成、離型性が得られず、また加硫時の透明性及び視認性の低下にも繋がってしまう。一方、4000mPa・sを超えると、離型剤塗布後の乾燥性が低下してしまい作業効率の悪化に繋がることがある。
【0042】
本発明のタイヤ内面用離型剤は、上記で説明した成分以外に必要に応じて、乳化安定剤、防錆剤、酸化防止剤、キレート剤・pH調整剤などのビルダー類を含有していてもよい。
【0043】
〔タイヤ〕
本発明のタイヤは、上記で説明したタイヤ内面用離型剤を生タイヤ内面またはブラダーに付着させ、加硫して得られる。
本発明のタイヤは、たとえば、以下に示す付着工程と加硫工程とを経て製造することができる。
【0044】
〔付着工程〕
付着工程では、まず、未加硫のゴムを主体にビードワイヤーやタイヤコード等の必要な部材を組み合わせ接着して、生タイヤと呼ばれるタイヤ原形を準備する。
次いで、本発明のタイヤ内面用離型剤をこの生タイヤ内面に付着させる。タイヤ内面用離型剤の付着方法は、エアガンやエアレスガンによる吹き付けが一般的であるが、刷毛塗りや遠心塗装機等を用いてもよい。タイヤ内面用離型剤の付着量は、タイヤ製品の用途やサイズなどにより様々であるが、乾燥後に10〜50g/mであると好ましい。タイヤ内面用離型剤の付着量が少ない場合は十分な離型剤性能が得られない。一方、付着量が多すぎる場合は離型剤成分が多く脱落し周辺を汚すことがある。その後、内面に付着したタイヤ内面用離型剤が十分乾燥するまでの間、室温にて数十分から長い場合は数日間、生タイヤは放置される。
【0045】
〔加硫工程〕
上記付着工程で得られた乾燥した生タイヤに対して、次のように加硫が行われる。まず、生タイヤを金属製の金型内に設置し、その内側からブラダーと呼ばれるゴム製のバッグを水蒸気等で高温加圧して、生タイヤを金型に押し付けて、最終的なタイヤ形状やトレッドパターン等となるように加硫する。加硫時のブラダー表面温度(金型温度)は好ましくは140〜180℃、圧力は好ましくは12〜30kg/cmであり、加硫時間は好ましくは10〜60分間である。
【実施例】
【0046】
以下、本発明の実施例及び比較例について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に拘束されることはない。以下で、「部」とあるのは「重量部」を意味する。
【0047】
評価方法は次の通り。
1.平滑性
4cm×7cm×0.5cmの未加硫ゴムシート上に、乾燥後重量が15g/平方メートルとなるように、この上面のみにタイヤ内面用離型剤を噴霧機で付着させた。次いで、この評価用未加硫ゴムに、同じ大きさのブラダーゴムシートを重ね合わせ、さらに500gの分銅を垂直荷重として乗せ、水平に引っ張り(引張速度;100mm/min)、この時の引っ張り荷重を平滑性とした。以下の評価基準で判断し、◎及び○を合格とした。
◎:2.5N以下
○:3.2N以下
×:3.2N超
【0048】
2.離型性
4cm×7cm×0.5cmの未加硫ゴムシート上に、乾燥後重量が15g/平方メートルとなるように、この上面のみにタイヤ内面用離型剤を噴霧機で付着させた。次いで、この評価用未加硫ゴムに、同じ大きさのブラダーゴムシートを重ね合わせ、卓上型テストプレス機にセットし、温度160℃、圧力20kg/平方センチメートルで20分間加圧して加硫し、加硫済み評価ゴムを得た。加硫終了後、離型性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
加硫済み評価ゴムとブラダーゴムシートを90度に引き剥がしその際に必要な剥離荷重を引っ張り試験機で測定して、離型性を評価した。離型性の評価基準は次のとおりであり、◎及び○を合格とした。なお、加硫終了時に既に剥離している場合は、引っ張り試験はできないが、離型性は言うまでもなく優れているから、◎と評価する。以下の評価基準で判断し、◎及び○を合格とした。
◎:0.5N未満の引っ張り荷重で剥離。
○:0.5N以上1.5N以下の引っ張り荷重で剥離。
×:1.5N以上の引っ張り荷重で剥離。
【0049】
3.空気透過性
4cm×7cm×0.5cmの未加硫ゴムシート上に、乾燥後重量が15g/平方メートルとなるように、この上面のみにタイヤ内面用離型剤を噴霧機で付着させた。次いで、この評価用未加硫ゴムに、同じ大きさのブラダーゴムシートを重ね合わせ、卓上型テストプレス機にセットし、温度160℃、圧力20kg/平方センチメートルで20分間加圧して加硫し、加硫済み評価ゴムを得た。次いで、加硫済み評価ゴムおよびブラダーゴムシートを観察し、空気透過性不足により生じる両ゴム間の外観不良の有無を目視で観察して、空気透過性を評価した。以下の評価基準で判断し、○を合格とした。
○:空気が残っていた跡が全くないもの。
△:空気が残っていた跡が目視で確認できるが、加硫は完全に行われている。
×:空気が残っていた跡が目視で確認でき、その部分に未加硫部分がある。
【0050】
4.加硫後外観
4cm×7cm×0.5cmの未加硫ゴムシート上に、乾燥後重量が15g/平方メートルとなるように、この上面のみにタイヤ内面用離型剤を噴霧機で付着させた。次いで、この評価用未加硫ゴムに、同じ大きさのブラダーゴムシートを重ね合わせ、卓上型テストプレス機にセットし、温度160℃、圧力20kg/平方センチメートルで20分間加圧して加硫し、加硫済み評価ゴムを得た。次いで、この加硫済み評価ゴムのゴム表面と、離型剤未処理のゴム表面との外観の変化を、L*a*b*表色系における色差ΔEにて評価した。ΔEの数値が小さい程、外観の変化が少ないことを表し、ΔEが3以下を合格とした。
ΔEは、L*a*b*表色系における色差を表わし、L*a*b*表色系は、CIE(国際照明委員会)で規格化され、日本でもJIS(JISZ8729)において採用されている。物体の色を表すのに、現在あらゆる分野で最もポピュラーに使用されている表色系で、CIELAB表色系(慣用的にはシーラブ)という。明度をL*、色相と彩度を示す色度をa*、b*で表わす。a*、b*は、色の方向を示し、+a*は赤方向、−a*は緑方向、そして+b*は黄方向、−b*は青方向を示す。数値が大きくなるに従い色鮮やかになり、中心になるに従ってくすんだ色になる。この中心点に垂直にL*が突き刺さっている。L*が小さいと黒っぽく、大きいと白っぽくなる。a*とb*は、−60〜+60の範囲の値、L*は、0〜100の値をとる。L*a*b*表色系の場合、2つの色の色差は、ΔE={(ΔL*)+(Δa*)+(Δb*)}の数値で表す。Δは差を表す記号である。
【0051】
5.視認性
4cm×7cm×0.5cmの未加硫ゴムシート上に、乾燥後重量が15g/mとなるように、この上面のみにタイヤ内面用離型剤を噴霧機で付着させ、常温にて水分を乾燥させることで、評価用未加硫ゴムを得た。次いで、この評価用未加硫ゴムのゴム表面と、離型剤未塗布の未加硫ゴムのゴム表面との色相の差を、L*a*b*表色系における色差ΔEにて評価した。ΔEの数値が大きい程、色相の変化が大きいために視認性は良好であり、ΔEが10以上を合格とした。
【0052】
〔実施例1〕
(タイヤ内面用離型剤の調製及び評価)
水80.9gに対して、平均粒子径10μmのミリスチン酸亜鉛6g、ジメチルポリシロキサン乳化物10g、非イオン界面活性剤であるPOEアルキルエーテル1.5g、カルボキシメチルセルロース1.5g、イソチアゾリン系防腐剤0.1gを、混合容器に入れホモミキサーにて混合攪拌して均一なタイヤ内面用離型剤を得た。得られたタイヤ内面用離型剤の物性を評価した結果を表1に示す。
上記で、成分として、成分そのものではなくて、それを含む組成物を用いた場合(たとえば、ジメチルシリコーンオイルそのものではなくて、ジメチルシリコーンを含む組成物である水性エマルションを用いた場合)は、成分そのもののg数を表1に示した。
【0053】
〔実施例2〜10および比較例1〜5〕
〔実施例1〕で用いた各成分および配合量を表1および2に示すものに変更する以外は、実施例1と同様にして混合攪拌を行い、タイヤ内面用離型剤をそれぞれ得た。得られた離型剤の物性をそれぞれ評価し、その結果を表1および表2に示す。ただし、実施例10は、参考例10とする。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
実施例1〜10では、タイヤ内面用離型剤に平均粒子径として1〜100μmの脂肪酸金属石鹸が離型剤に占める重量割合が5重量%を超えて含まれているため、塗布乾燥後の視認性が良好であり、かつ離型剤としての性能にも優れ、加硫後の外観も透明となる。
一方、表2に示す比較例1〜5では、平均粒子径として1〜100μmの脂肪酸金属石鹸が離型剤に占める重量割合が5重量%以下である、あるいは平均粒子径が1〜100μmの脂肪酸金属石鹸を用いていない、あるいは粘度が400mPa・s未満であるため本願の課題である塗布乾燥後の視認性が十分ではないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のタイヤ内面用離型剤は、良好な離型性・平滑性・空気透過性を与え、タイヤ製造時に用いることができる。その際、加硫成型前、未加硫生タイヤに塗布乾燥後の視認性が良好であり、工程を管理する上で塗布の判別が容易であり、かつ加硫成型後に外観が透明なタイヤを製造可能となる。