(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6713265
(24)【登録日】2020年6月5日
(45)【発行日】2020年6月24日
(54)【発明の名称】バイオハザード対策用キャビネット
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20200615BHJP
B01L 1/00 20060101ALI20200615BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20200615BHJP
【FI】
C12M1/00 K
B01L1/00 C
F24F7/06 C
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-225353(P2015-225353)
(22)【出願日】2015年11月18日
(65)【公開番号】特開2017-93302(P2017-93302A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】314005768
【氏名又は名称】PHCホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】土居 英二
(72)【発明者】
【氏名】松井 昌朋
(72)【発明者】
【氏名】戒能 直司
【審査官】
坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭59−028480(JP,U)
【文献】
国際公開第2014/156135(WO,A1)
【文献】
特開2010−084989(JP,A)
【文献】
実開平05−051442(JP,U)
【文献】
特開平05−264084(JP,A)
【文献】
特開昭57−008437(JP,A)
【文献】
特開2011−015892(JP,A)
【文献】
特開平08−111115(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/046413(WO,A1)
【文献】
特開2014−002259(JP,A)
【文献】
特開2005−285701(JP,A)
【文献】
特開2006−340877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
B01L 1/00
F24F 7/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/WPIDS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に開閉扉を有し、内部に作業空間を形成するキャビネット本体と、
前記作業空間の一側に設けた給気用のフィルタと、
前記作業空間の他側に配置され、この作業空間内の空気が通過する排気孔を有する作業台と、
前記開閉扉の外側においてフィルタ側に配置され、照明具と、前記照明具の前記開閉扉とは反対側に設けられて前記照明具からの光を前記作業台上に集光させるための反射板と、を有する照明装置と、
前記作業台に対する前記反射板の角度を変える調節機構と、
を備え、
前記照明装置は、前記反射板を前記照明具から遠ざける方向に回転させる支点を有し、前記照明具に対する前記反射板の角度を変える構成とした
バイオハザード対策用キャビネット。
【請求項2】
前記調節機構は、前記キャビネット本体に締結する本体側締結部と、前記反射板に締結する反射板側締結部と、を有し、前記キャビネット本体の奥行き方向に向けて前記本体側締結部と前記反射板側締結部とが設けられ、前記キャビネット本体に着脱可能な接続板を、さらに備える請求項1に記載のバイオハザード対策用キャビネット。
【請求項3】
前記調節機構は、前記照度分布において、最高照度が得られる場所を無段階的に設定する構成とした請求項1に記載のバイオハザード対策用キャビネット。
【請求項4】
前記調節機構は、前記照度分布において、最高照度が得られる場所を少なくとも2段階に設定する構成とした請求項1に記載のバイオハザード対策用キャビネット。
【請求項5】
前記調節機構は、前記照明具と前記反射板が一体となって可動する請求項1に記載のバイオハザード対策用キャビネット。
【請求項6】
前記調節機構は、前記反射板のみが可動する請求項1に記載のバイオハザード対策用キャビネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、実験環境機器に用いられるバイオハザード対策用キャビネットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のバイオハザード対策用キャビネットは、作業台上を照らす照明具および反射板が、前面開閉扉である前面ガラスの外側に固定されており、作業台中央ライン上が明るくなるようになっていた。また、照明具の交換時には、反射板を取り外す構成となっている。(これに類似する先行文献としては下記特許文献1が存在する)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2014/156135号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来例では、照明具および反射板の位置が固定されているため、作業台上の明るさのポイントが固定されている。そのため、作業場所によっては、手元が暗くなることもあり、作業台上に電気スタンド等の別照明を用意する必要が生じることもあり、雑菌混入の一因となることもあった。
【0005】
そのため、実験環境機器に用いられるバイオハザード対策用キャビネットとして信頼性を確保できない虞があった。
【0006】
そこで本発明は、実験環境機器に用いられるバイオハザード対策用キャビネットとして信頼性を確保することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、この目的を達成するために本発明は、前面に開閉扉を有し、内部に作業空間を形成するキャビネット本体と、前記作業空間の一側に設けた給気用のフィルタと、前記作業空間の他側に配置され、この作業空間内の空気が通過する排気孔を有する作業台と、前記開閉扉の外側においてフィルタ側に配置され、照明具と、前記照明具の前記開閉扉とは反対側に設けられて前記照明具からの光を前記作業台上に集光させるための反射板と、を有する照明装置と、前記作業台に対する前記反射板の角度を変える調節機構と、を備え、
前記照明装置は、前記反射板を前記照明具から遠ざける方向に回転させる支点を有し、前記照明具に対する前記反射板の角度を変える構成とし、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0008】
すなわち、上記構成により本発明は、反射板単体もしくは照明灯と反射板とをセットで取り付け角度を可変にすることにより、作業台上の任意の場所を明るく照らすことができる。これにより、雑菌混入の一因となっていた別照明の必要性をなくすことができ、その結果として、実験環境機器に用いられるバイオハザード対策用キャビネットとして信頼性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るバイオハザード対策用キャビネットの概略断面図
【
図2】
図1のバイオハザード対策用キャビネットの要部を説明する図
【
図3】
図1のバイオハザード対策用キャビネットの要部を説明する図
【
図4】本発明の他の実施形態に係るバイオハザード対策用キャビネットの要部を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を、添付図面を用いて詳細に説明する。
【0011】
(実施の形態1)
図1は、本発明の一実施形態におけるバイオハザード対策用キャビネットの概略断面図である。
【0012】
図1に示すごとく、本実施形態におけるバイオハザード対策用キャビネット(以下、キャビネットと記す)1は、例えば、実験環境機器に用いられる装置であって、作業者はこの装置を用いて、例えば細菌やウィルスなどを取り扱う作業を行う。
【0013】
キャビネット1は、本体ケース2と、前面シャッタ3と、背面板4と、空調装置5とを備えている。
【0014】
本体ケース2(キャビネット本体の一例)は、前面に開口部6を有する箱状の部材であって、キャビネット1を利用する作業者は、開口部6から手を本体ケース2の内部に挿入した状態で作業を行う。
【0015】
本体ケース2の開口部6は、前面シャッタ3によって覆われている。
【0016】
前面シャッタ3は、キャビネット1に対して上下方向に移動させることが可能な構成としていて、この前面シャッタ3を移動させることによって本体ケース2の開口部6の開口領域を大きくしたり、小さくしたりさせる。
【0017】
前面シャッタ3(開閉扉の一例)は、ガラス板などの透明部材で構成され、実験などの作業を行う状態において作業者は前面シャッタ3を介して、本体ケース2内の状態を目視しながら作業を行うことができる構成としている。
【0018】
そして、本体ケース2内において前面シャッタ3と反対側の奥方向である背面側には背面板4が設けられている。
【0019】
背面板4は、例えば金属製の板状部材であって、プレス加工などによって形成されている。
【0020】
本体ケース2内において下方向である底面側には、作業台となる底面板7が設けられている。
【0021】
底面板7は、例えば金属製の板状部材であって、プレス加工などによって形成され、背面板4に略直交した状態で設けられている。
【0022】
本体ケース2は、左右方向において背面板4に略直交する一対の側面板と、上方向において背面板4に略直交する上面板とで箱状の作業空間を形成している。
【0023】
本体ケース2の上方向である天面側には空調装置5が設置されている。
【0024】
空調装置5は、本体ケース2の内部に空気を送る装置であって、HEPA(High−Efficiency Particulate Air filter)などのフィルタを有している。
【0025】
そして、このフィルタで雑菌などを取り除いた空気を本体ケース2内に送ることによって、本体ケース2内の環境を無菌状態に保つ構成としている。つまり、給気用のフィルタとして構成されている。
【0026】
さらに、底面板7において本体ケース2の前面側と背面側にはそれぞれ前面側気体排出部8および背面側気体排出部9が設けられている。空調装置5によって本体ケース2の内部に送られた空気は、前面側気体排出部8および背面側気体排出部9から本体ケース2の外に排出される。
【0027】
つまり、これらの前面側気体排出部8および前背面側気体排出部9は、作業空間内の空気が通過する排気孔として構成されている。
【0028】
また、前面シャッタ3の外側上方部に、照明具10およびその照明具10からの光を作業台7上に集光させるための反射板11を有する照明装置を備えている。
【0029】
つまり、作業台7上の作業領域は、照明具10からの直接光と、反射板11からの反射光で明るく照らされている。すなわち、照明装置は、前面シャッタ3の外側において空調装置5側に配置され、照明具10およびこの照明具10からの光を作業台7上に集光させるための反射板11を有する構成としている。
【0030】
さらに、照明装置部分について
図2を用いて詳細に説明する。
【0031】
図2は、
図1に記載のA部を拡大した詳細断面図である。
【0032】
図2に示すごとく、照明装置は、照明具10と、反射板11、その反射板11が取り付いている反射板ケース12を有している。
【0033】
また、この反射板ケース12は、両端部を支点13で支えられており、さらに、ツマミ14で、その両端部を固定されている。つまり、ツマミ14は、例えば、ねじなどによって本体ケース2側に螺合されるように構成され、ツマミ14によって反射板ケース12を締め付けることによって本体ケース2側に固定する。
【0034】
このようにして固定された照明装置により、作業台7上の所定の領域に、照明を当てる構成としている。
【0035】
そして、その領域は、例えば、作業台7の奥行き方向で中央付近の一列のことが多く、この領域が固定された最も明るい領域となるようにツマミ14によって反射板ケース12を本体ケース2側に固定している。ここで、本実施形態における照明装置について
図3を用いて、さらに詳細に説明する。
【0036】
図3に示すごとく、照明装置は接続板15(調節機構の一例)を備えている。この接続板15は本体ケース2側に着脱可能に設けられている。例えば、本実施形態では、接続板15は、ねじなどで締結することによって着脱可能に本体ケース2側に設けられている。
【0037】
そして、この着脱可能な接続板15を用いて、反射板ケース12は支点13を中心に照明具10から遠ざける方向に回転させ、その状態で上述したようにツマミ14を用いて反射板ケース12を本体ケース2側に固定する構成としている。
【0038】
つまり、照明具10に対する反射板11の角度を変える構成としている。
【0039】
以上の構成とすることで、作業台7上を照らす反射板11からの反射光の領域を変えることができる。すなわち、作業台7上の照度分布を作業台7の奥行き方向に対して可変させる構成としている。
【0040】
ここで、接続板15は、本体ケース2側に締結する本体ケース側締結部15aと、反射板ケース12側に締結する反射板ケース側締結部15bを有し、本体ケース2の奥行き方向に向けて本体ケース側締結部15aと反射板ケース側締結部15bが設けられている。
【0041】
そして、接続板15の長手方向(
図3の左右方向)において、本体ケース側締結部15aと反射板ケース側締結部15bの長さに応じて作業台7上の照度分布を変えることができる。
【0042】
このようにすることで、本体ケース側締結部15aと反射板ケース側締結部15bの長さに応じて予め定められた所定の位置においてツマミ14によって反射板ケース12を締め付ける構成としている。
【0043】
したがって、照度分布において、最高照度が得られる場所を所望の位置に容易に設定することができる。
【0044】
例えば、本体ケース側締結部15aと反射板ケース側締結部15bの長さが長ければ、作業台7上の照度分布を作業台7の奥行き方向に対して手前方向を明るくすることができる。
【0045】
このようにして、本実施形態では、接続板15によって作業台7に対する反射板11の角度を変える構成としている。
【0046】
したがって、接続板15を着脱することで、作業者が、作業者の都合に合わせて、作業台7上の最も明るい領域を選択することができる。つまり、作業者が所望の領域を最も明るく照らすことができる構成としている。
【0047】
その領域は、例えば、作業台7の奥行き方向で手前付近の一列とすればよい。つまり、本体ケース2の開口部6の入り口に近い作業領域を照らすようにしている。以上のように、本実施形態においては、作業者の都合に合わせて、作業台7上の最も明るい領域を選択できるようになる。
【0048】
その結果として、作業者が作業しやすい領域を使用し、常に手元が明るい環境での作業を行うことで、雑菌混入の一因となっていた別照明の必要性をなくすことができ、バイオハザード対策用キャビネットとして信頼性を確保することができる。
【0049】
(他の実施の形態)
さらに、
図4に示すごとく、外装ケース16にスリット17を配し、反射板ケース12をツマミ18でスリット17に固定するようにする。
【0050】
つまり、反射板ケース12は支点13を中心として、スリット17の範囲で回動可能となる構成としている。
【0051】
ここで、ツマミ14は、上述した実施形態1と同様に、例えば、ねじなどによって本体ケース2側に螺合されるように構成され、ツマミ14によって反射板ケース12をスリット17に締め付けることによって本体ケース2側に固定する。
【0052】
このように構成することで、作業者の都合に合わせて、作業台7上の最も明るい領域を任意の場所にすることができる。すなわち、照度分布において、最高照度が得られる場所を無段階的に設定する構成としている。
【0053】
以上のように、本実施形態においては、作業者の都合に合わせて、上述した実施形態1よりもさらに細やかに作業台7上の最も明るい領域を選択できるようになる。
【0054】
その結果として、作業者が作業しやすい領域を使用し、常に手元が明るい環境での作業を行うことで、雑菌混入の一因となっていた別照明の必要性をなくすことができ、バイオハザード対策用キャビネットとして信頼性を確保することができる。
【0055】
なお、上述した実施形態では、反射板11が取り付けてある反射板ケース12が回動するとして説明したがこれに限定されるものではない。反射板11とともに照明具10も一体となって回動する構成としてもよい。また、例えば、スリット17の所定の位置に凹凸を設け、この凹凸に反射板ケース12が係合する構成としてもよい。そして、スリット17と反射板ケース12が係合した位置においてツマミ14によって反射板ケース12をスリット17に締め付ける。
【0056】
このようにすることで、予め定められた所定の位置においてツマミ14によって反射板ケース12をスリット17に締め付ける構成としている。
【0057】
したがって、照度分布において、最高照度が得られる場所を所望の位置に容易に設定することができる。
【0058】
また、スリット17の所定の位置に設ける凹凸は、例えば、スリット17の長手方向において2箇所に設けてもよい。このようにすることで、照度分布において、最高照度が得られる場所を所望の位置に2段階に容易に設定することができる。
【0059】
なお、スリット17の所定の位置に設ける凹凸の数は2箇所に限定されるものではなく、最高照度が得られる場所に応じて複数個設けてもよい。このようにすることで、照度分布において、最高照度が得られる場所を所望の位置に多段階に容易に設定することができる。
【0060】
また、スリット17は、外装ケース16側に設けるとして説明したが、これに限定されるものではない。スリット17は、反射板11や、反射板ケース12に設ける構成としてもよい。
【0061】
また、スリット17の所定の位置に設けた凹凸は任意の位置を認識させるための単なるマーキングなどでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上のように本発明のバイオハザード対策用キャビネットにおいては、バイオハザード対策用キャビネットとして信頼性を確保することができる。
【0063】
したがって、例えば、実験環境機器に用いられるバイオハザード対策用キャビネットとしての活用が大いに期待されるものとなる。
【符号の説明】
【0064】
1 キャビネット(バイオハザード対策用キャビネット)
2 本体ケース
3 前面シャッタ
4 背面板
5 空調装置
6 開口部
7 底面版
8 前面側気体排出部
9 背面側気体排出部
10 照明具
11 反射板
12 反射板ケース
13 支点
14 ツマミ
15 接続板
15a 本体ケース側締結部
15b 反射板ケース側締結部
16 外装ケース
17 スリット
18 ツマミ