(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6713305
(24)【登録日】2020年6月5日
(45)【発行日】2020年6月24日
(54)【発明の名称】天井埋め込み型照明器具
(51)【国際特許分類】
F21S 8/02 20060101AFI20200615BHJP
F21V 21/04 20060101ALI20200615BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20200615BHJP
【FI】
F21S8/02 420
F21V21/04 310
F21Y115:10
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-55210(P2016-55210)
(22)【出願日】2016年3月18日
(65)【公開番号】特開2017-168405(P2017-168405A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2018年11月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100044
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 重夫
(74)【代理人】
【識別番号】100183564
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 伸也
(72)【発明者】
【氏名】福山 領二
【審査官】
山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−118786(JP,A)
【文献】
特開2010−205501(JP,A)
【文献】
特開2015−170474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/02 − 19/00
F21V 21/04 − 21/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井板の下面に当接させるためのフランジ部を有するケーシングと、
上記ケーシングに収容される光源と、
一本のバネ用鋼線を中央部分で二つ折りにした状態で、開放側の一端をコイル状に巻回することでコイルバネ部を形成すると共に、上記開放側の一端が上記ケーシングに取り付けられ、閉鎖側の他端が初期状態において上記ケーシングのフランジ部よりも外側で且つ下方に位置し、一端側を回転軸にして他端を上方に回転させた状態において下方に付勢力を生じる一対の弾性バネとを備えた天井埋め込み型照明器具であって、
上記弾性バネは、上記ケーシングに取り付けた一端の近傍、一端と他端との中間部近傍、他端近傍をそれぞれ鈍角となるように下方に向けて折曲して形成した略弧状のアーム部を有し、
上記ケーシングが、本体部と、その本体部から上方に向かって延び、平行に配列される複数の放熱板とを備えており、
上記弾性バネのコイルバネ部が、上記本体部の上面の径方向中央部近傍に取り付けられると共に、上記アーム部が上記放熱板間を通って外側に延出され、
この天井埋め込み型照明器具の重量をMとした場合、
上記弾性バネを上記天井板の取付孔に挿入し、上記弾性バネの他端と上記ケーシングのフランジ部とで上記天井板を挟持したときの上記弾性バネの付勢力が、上記天井板の厚みが0.5mmのとき1.2M以上4M以下であり、上記天井板の厚みが25mmのとき3.0M以上10M以下である
ことを特徴とする天井埋め込み型照明器具。
【請求項2】
上記弾性バネを上方に回転させ、上記天井板の取付孔よりも小径の円に収まるようにするために必要な力が、弾性バネの自由端側の先端から全長の半分までの距離において25kgF以下である
請求項1記載の天井埋め込み型照明器具。
【請求項3】
上記ケーシングが上方に向かって窄んでいる
請求項1または2記載の天井埋め込み型照明器具。
【請求項4】
上記ケーシングが略円柱状である
請求項1から3のいずれかに記載の天井埋め込み型照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、天井板の取付孔に取り付ける天井埋め込み型照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に室内照明に用いられるダウンライトなどの照明器具は、天井板に埋め込み穴を設け、天井に埋め込むことによって天井にすっきりと取り付けられている。
特許文献1には、従来の天井埋め込み型の照明器具が開示されている。この照明器具は、下端にフランジ部を有するケーシングと、そのケーシングのフランジ部の上部近傍から斜め上方に向かって延びるとともに、互いにケーシングの対角線上に位置する一対の板バネとを備えており、板バネを内側に寄せた(ケーシングに近づけた)状態で照明器具を天井板の取付孔(埋め込み穴)に挿入することで、板バネの外側に広がろうとする付勢力と板バネの傾斜とを利用してケーシングを上方に持ち上げつつ、ケーシングのフランジ部で上方への移動を規制し、取付孔の開口部内面と板バネ側面との摩擦力と、前記板バネが外側に広がろうとする横方向の付勢力を板バネの傾斜面によって上方ベクトルに転換した力とで、照明器具の天井板への取り付けを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平04−062709号公報
【特許文献2】特開2009−085432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記構成の照明器具では、天井板の厚みによっては安定した取り付けができないことがあった。すなわち、板バネが何ら外力を加えられていない初期状態において斜め上方に向いていることから、ケーシングのフランジ部の上面から板バネの外側面(下面)までの鉛直距離に比べて天井板の厚みが薄いと、天井板を付勢することができないのである。この場合、板バネの外側面が天井板に触れるまで下方に移動して初めて上記摩擦力を生じることとなるが、天井板の取付孔内面を外方向へ押し付ける板バネの付勢力をあまり得ることができないため、ぐらぐらな状態であり、また、天井板の下面にケーシングのフランジ部が当接していないことから取り付け不良の状態に陥ることとなる。
【0005】
そこで特許文献1では、板バネのケーシングへの取り付けに際し、上下方向に長い長孔を用いることで、板バネの取り付け位置をある程度変えることができるようにし、天井板の厚みの変化に対応しようとしている。
【0006】
しかしながら、天井板の厚みが変わるたびに、板バネの取り付け位置を調整していくことは煩雑である。また、板バネの付勢力は、主として、斜め上方へ折り返した屈曲部を支点とする延長部全体の撓み変形によってもたらされるものであって、折り曲げ加工で硬化し変形し難くなった屈曲部近傍で十分な付勢力を得ることは困難である。そのため、屈曲部近傍で取り付けを行おうとしても柔らかい弾性での摩擦力を生じさせることは難しい。
さらに、天井を金属製のシステム天井とし、不燃材料の天井板として、石膏ボードやケイ酸カルシウム板などのボードを使わず、鋼板、それも厚みの極めて薄い(例えば0.5mm)鋼板製天井板を用いた場合、取付孔の内径をケーシング対角線上の2つの板バネの離れ寸法とぎりぎりの径にすると、板バネの屈曲部が、ケーシングのフランジ部の上方に位置することから、板バネの屈曲部が上方に逃げてフランジ部と板バネ屈曲部の間に取付孔が位置して固定することができない。また、取付孔の内径をケーシング対角線上の2つ
の板バネの離れ寸法よりの大きい径とすると、ケーシングのフランジ部が天井板の下面と当接しない状態に陥ることとなる。このように、板バネが上向きに広がる形では十分に対応することができないのである。
【0007】
ところで、照明器具の天井板取付構造において、バネが斜め下向きに広がる技術も僅かだが存在する。特許文献2には、初期状態において斜め下方に向いた弾性バネを備え、この弾性バネとケーシングのフランジ部とで天井板を挟持することで、天井板への取り付けができる照明器具が開示されている。この照明器具は、取付時(取付孔への挿入時)において支持手段(弾性バネ)の外向きへの移動を防止するリテイナーと、ケーシング内部からリテイナーを解除する仕組みを備えている。しかしながら、このような照明器具も、天井板にある程度の厚みがある場合に初めて弾性バネからの十分な付勢力が得られる、すなわち、弾性バネを初期状態からある程度上方に回転させたときに初めて取り付けに必要な付勢力が得られるものであって、厚みの極めて薄い天井板にこのまま適用するすると安定した取り付けができない場合がある。また、リテイナーを備えているので、取付孔に挿入するのは容易ではあるが、リテイナーを解除して初めて取り付けが完了するものであるため、解除作業が完了するまで照明器具を上向きに保持し続けなければならず、誤ってケーシングごと落下させる恐れがある。また、リテイナー解除により弾性バネが勢い良く天井板の上面にぶつかるため、薄い鋼板である天井板に凹みをつける恐れもある。
【0008】
なお、例えば予め専用の固定金具を天井板に取り付けておき、その固定金具にネジ止めするようにすれば、天井板の厚みに関わらず照明器具を取り付けることが可能である。ただ、ネジ止めとなると作業に時間がかかってしまう。また、ネジ止め部分を天井裏に設ける場合には、器具ごとに作業者が天井内にもぐる必要があり、取付作業はより煩雑なものとなる。ねじ止めを天井下からドライバーで行う場合も、天井内の固定金具との位置合わせが不可視なので困難であり、結局のところ、天井内で目視が必要となる。
【0009】
そこで、本発明は、天井板の厚みに関わらず、簡単に且つ安定した取り付けを行うことのできる天井埋め込み型照明器具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の天井埋め込み型照明器具1、1Aは、天井板100の下面に当接させるためのフランジ部23を有するケーシング20と、上記ケーシング20に収容される光源10と、一端が上記ケーシング20に取り付けられ、他端が初期状態において上記ケーシング20のフランジ部23よりも外側で且つ下方に位置し、一端側を回転軸にして他端を上方に回転させた状態において下方に付勢力を生じる弾性バネ30とを備えた天井埋め込み型照明器具1、1Aであって、この天井埋め込み型照明器具1、1Aの重量をM(kg)とした場合、上記弾性バネ30を上記天井板100の取付孔110に挿入し、上記弾性バネ30の他端と上記ケーシング20のフランジ部23とで上記天井板100を挟持したときの上記弾性バネ30の付勢力が、上記天井板100の厚みが0.5mmのとき1.2M(kgF)以上4M(kgF)以下であり、上記天井板100の厚みが25mmのとき3.0M(kgF)以上10M(kgF)以下であることを特徴とする。
【0011】
上記弾性バネを上方に回転させ、上記天井板の取付孔よりも小径の円に収まるようにするために必要な力が、弾性バネ30の自由端側の先端から全長L1の半分までの距離において25kgF以下であることが好ましい。
【0012】
上記弾性バネ30の一端が上記ケーシング20の外径方向中央部近傍に取り付けられていることが好ましい。
【0013】
上記ケーシング20が上方に向かって延びる複数の放熱板24を備えており、上記弾性バネ30が上記放熱板24、24間を通って外側に延出されていることが好ましい。
【0014】
上記ケーシング20が上方に向かって窄んでいることが好ましい。
【0015】
上記ケーシング20が略円柱状であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の天井埋め込み型照明器具では、ケーシングのフランジ部と弾性バネとの間で天井板を挟持することで天井板への取り付けができるため、取付作業が簡単である。また、天井埋め込み型照明器具の重量をM(kg)とした場合、弾性バネの他端とケーシングのフランジ部とで天井板を挟持したときの弾性バネの付勢力が、天井板の厚みが0.5mmのときで1.2M(kgF)以上4M(kgF)以下であるため、厚みの極めて薄い天井板であっても確実に挟持することができる。また、付勢力が照明器具の重量を上回っているため、定常時は勿論のこと、地震等の揺れが加わったとしても安定した取り付け状態を維持することができる。
【0017】
弾性バネを上方に回転させ、天井板の取付孔よりも小径の円に収まるようにするために必要な力が25kgF以下であれば、弾性バネを取付孔に挿入する際、成人男性の平均握力よりも下回るので、作業を簡単に行うことができる。
【0018】
弾性バネの一端をケーシングの中央部近傍に取り付けていれば、弾性バネの一端をケーシングの外周に取り付けている場合に比べて、照明器具を天井板の取付孔に挿入するにあたっての弾性バネの回転角を小さくすることができる。そのため、弾性バネを回転させるために必要な力が小さくて済み、取付作業を簡単に行うことができる。
【0019】
弾性バネを、放熱板間を通って外側に延出させていれば、放熱板との干渉を避けるために放熱板上に弾性バネを取り付けた場合に比べて、弾性バネの取り付け位置を低くすることができ、弾性バネの回転角を小さくすることができる。そのため、弾性バネを回転させるために必要な力がより小さくて済み、取付作業を簡単に行うことができる。
【0020】
ケーシングが上方に向かって窄んでいれば、天井板の取付孔に挿入し易くなり、作業性が向上する。
【0021】
ケーシングが略円柱状であれば、一般的に略円形とされる天井板の取付孔に挿入し易くなり、作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】この発明の一実施形態に係る天井埋め込み型照明器具の断面図である。
【
図2】同じくその天井埋め込み型照明器具の側面図である。
【
図3】同じくその天井埋め込み型照明器具の平面図及び底面図である。
【
図4】天井埋め込み型照明器具の天井板への取り付け過程を示す概略図である。
【
図5】この発明の他の実施形態に係る天井埋め込み型照明器具の断面図である。
【
図6】同じくその天井埋め込み型照明器具の側面図及び平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、この発明の天井埋め込み型照明器具1の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。この発明の天井埋め込み型照明器具1は、
図1に示すように、光源10と、ケーシング20と、一対の弾性バネ30、30とから構成されている。
【0024】
光源10は、例えばLED素子11と、このLED素子11を取り付けるための基板12と、LED素子11からの光を反射させるための反射板13とからなる。基板12はLED素子11や自身からの発熱をケーシング20に伝達するため、
図1に示すように、その上面がケーシング20に当接している。また、光源10の下方には、光源10からの光を適宜拡散するためのレンズ40が取り付けられている。
【0025】
ケーシング20は、例えばアルミニウムなどの金属製であって、
図1に示すように、上方に底部21を有し、且つその内部に光源10を収容可能な略円柱状の収納空間22aを有する略円筒状の本体部22と、本体部22の下端から側方に延出され、天井板100の取付孔110よりも大径とされたフランジ部23と、本体部22の底部21から上方に延出された複数の放熱板24とから構成されている。放熱板24は、
図2a、bや
図3aに示すように、互いに略平行となるようにして延出されており、放熱板24、24間には略同一方向に並ぶ隙間25が形成されている。また、放熱板24は平面視、ケーシング20の底部21の上面中央部近傍には設けられておらず、この放熱板24が設けられていない部分が、弾性バネ30を取り付けるための空間26となっている(
図1参照)。
【0026】
また、本体部22と放熱板24は、
図2a、bに示すように、上に向かうにつれて細くなっており、ケーシング20全体としては、上方に向かって窄んだ形状となっている。なお、本体部22と放熱板24は最も太い下端においても、天井板100の取付孔110よりも小径とされている。
【0027】
弾性バネ30は、太さ1mm程度のバネ用鋼線を適宜折曲加工することで構成されている。具体的には、1本のバネ用鋼線を中央部分で二つ折りにした状態において、
図1に示すように、開放側の端部をコイル状に巻回することでコイルバネ部31を形成するとともに、コイルバネ部31の近傍、コイルバネ部31と閉鎖側の端部との中間部近傍、閉鎖側の端部近傍をそれぞれ鈍角となるように下方に向けて折曲して略弧状のアーム部32を形成することで、弾性バネ30が構成されている。
【0028】
弾性バネ30のコイルバネ部31は、
図1に示すように、上記の放熱板24が設けられていない部分(空間)26に収容されている。弾性バネ30のケーシング20への固定は、コイルバネ部31の終端部31a(
図1において点線で示す部分)をケーシング20の底部21に挿入するとともに、蓋体50によって上からコイルバネ部31を覆うことで行う。このように固定することで、アーム部32の上方への回転にコイルバネ部31及びアーム部32自身の反発力で抵抗する、換言すれば、コイルバネ部31を回転軸としてアーム部32を上方に回転させた状態において下方に付勢力を生じるようになっている。なお、この蓋体50には、
図3aに示すように、アーム部32の上方への回転を許容するため、アーム部32の回転軌道に沿ってスリット51が形成されている。
【0029】
また、アーム部32は、
図2bや
図3aに示すように、放熱板24、24間の隙間25を通って外側に延出されているが、この隙間25と略平行となるように配置されているため、回転に際して放熱板24と干渉することはない。アーム部32の先端は、
図1や
図2a、bに示すように、何ら外力を加えていない初期状態においてケーシング20のフランジ部23よりも外側で且つ下方に位置している。なお、上記の通り、アーム部32が弧状に形成されているため、弾性バネ30がケーシング20の底部21の中央部近傍に固定されていても、難なくアーム部32の先端をフランジ部32の下方に位置させることができる。また、弾性バネ30の回転中心からレンズ40までの距離よりも、弾性バネ30の回転中心からアーム部32の先端までの距離が長いため、アーム部32の先端がレンズ40に接触して傷つけることもない。
【0030】
上記構成の天井埋め込み型照明器具1は、以下の手順により、天井板100に固定され
る。まず、一対の弾性バネ30、30を互いに近接させるようにして、アーム部32を、コイルバネ部31を回転軸として上方に向かって回転させる。この際、アーム部32が、平面視、天井板の取付孔よりも小径の円に収まるまで回転させる。なお、この回転に必要な力は、弾性バネ30の自由端側の先端から固定端(コイルバネ部31)とを結んだ直線の長さL1を弾性バネ30の全長とした場合、弾性バネ30の自由端側の先端から全長L1の半分までの距離において、25kgF(ひとつの弾性バネにつき12.5kgF)以下である。なお、弾性バネ30の全長L1は50〜70mmである。このようにバネの戻りトルクを規定することで、成人男性であれば施工時にらくらく握って天井の取付孔110に挿通することができつつ、天井設置時の挟持力も有効に天井板100に作用することになる。また、弾性バネ30は、上記の通り太さ1mm程度と小径であるため、
図4aに示すように、アーム部32、32同士を交差させることが可能である。
【0031】
また、本発明の天井埋め込み型照明器具1は、弾性バネ30の取り付け位置が、ケーシング20の底部21の中央部近傍にあるため、取り付け位置がケーシング20の外周部にあるものと比べて弾性バネ30を上方に回転させる角度が小さくて済む。つまり、バネの巻き進めるトルクをその回転角度分小さくすることができ、取付孔110への装着時に無駄な作業力が必要なくなるだけでなく、巻き戻りの角度も小さくなるので、天井設置の際の巻き戻り時のトルクも確保できることとなる。
【0032】
その後、
図4bに示すように、アーム部32の先端を、天井板100に設けられた取付孔110に差し入れ(挿入し)、弾性バネ30の回転を解除する。すると、アーム部32の反発力、コイルバネの反発力によって、アーム部32が元の位置まで戻ろうとする結果、ケーシング20が上方に持ち上げられて、放熱板24や本体部22が取付孔110に挿入される。また、フランジ部23の上面が天井板100の下面に当接することで、最終的にケーシング20のフランジ部23と弾性バネ30の先端とによって天井板100が挟持され、天井板100への天井埋め込み型照明器具1の固定が完了する(
図4c〜4e参照)。
【0033】
ところで、弾性バネ30の付勢力(挟持力)は、アーム部32やコイルバネ部31の変形量によって左右されるため、天井板100の厚みによって変化することになるが、例えばシステム天井の天井板100として用いられる鋼板の厚みt1(0.5mm)の場合で約0.36kgF(ひとつの弾性バネにつき約0.18kgF)以上、一般的な天井に用いられるケイ酸カルシウム板の厚みt2(25mm)の場合で約0.86kgF(ひとつの弾性バネにつき約0.43kgF)以上とすることが好ましい。これは、単純に重量分を反力として持ち上げつつ天井板100とフランジ部23との間の摩擦力で少しの横応力に耐えうる力である。なお、天井埋め込み型照明器具1の重量Mは約0.18〜0.28kgであるから、Mを基準に弾性バネ30の付勢力を表すと、天井板100の厚みが0.5mmの場合で約1.2Mとなり、25mmの場合で約3.0M(いずれもM=0.28kgの場合)となる。上限は、平成8年制定の総合耐震基準に基づき、水平震度1.5〜2Gから横方向の摩擦力も勘案し3倍の加速度を考慮して、天井板100の厚みが0.5mmの場合で約3.6M→4Mとし、厚みが25mmの場合で約9M→10Mとすることが好ましい。
【0034】
このように、付勢力を照明器具1の重量よりも余裕を持って大としていれば、地震等の揺れが加わったとしても安定した取り付けが可能となり、耐震性を確保することができる。また、耐震性に特に着目するのであれば、例えば、照明器具1に2Gの水平加速度が加わった場合に生じる鉛直力を上回るように付勢力を設定しても良い。
【0035】
なお、付勢力が大きければ大きいほどしっかりと固定できるが、その分、アーム部32を上方に回転させることが困難となり、作業性に劣ることになる。特に天井一面に多数(
例えば数百〜数万)取り付けなければならない場合には、重要な要素となる。そこで、一対の弾性バネ30のそれぞれのアーム部32の先端が、天井板の取付孔よりも小径の円に収まるまで回転させた場合の弾性バネ30の反力が25kgF以下(ひとつ当たり12.5kgF以下)となるように設定することが好ましい。
【0036】
図5は、本発明の異なる実施形態に係る天井埋め込み型照明器具1Aを示す断面図である。この天井埋め込み型照明器具1Aは、弾性バネ30Aの取り付け位置が、ケーシング20の底部21の中央部近傍ではなく外周部にあるところに特徴を有する。このように、弾性バネ30Aの取り付け位置をケーシング20の外周部とすることで、弾性バネ30Aを短くすることができる。
【0037】
また本実施形態では、放熱板24Aが平面視、略長方形状となるように並んで設けられている点も特徴のひとつである(
図6b参照)。さらに、弾性バネ30Aの形状も上記実施形態とは異なっている。具体的には、本実施形態の場合、
図6a、bに示すように、アーム部32の中央部近傍の折曲角度が浅く、またアーム部32の先端部が外側に向かってさらに折曲されており、天井面との当接面積が広くなるようになっている。
【0038】
なお、他の部分については、上記実施形態と略同様の構成であるため、同符号を付し詳細な説明は省略する。
【0039】
以上に、この発明の実施形態について説明したが、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0040】
1、1A・・天井埋め込み型照明器具
10・・光源
11・・LED素子
12・・基板
13・・反射板
20・・ケーシング
21・・底部
22・・本体部
22a・・収納空間
23・・フランジ部
24、24A・・放熱板
25・・隙間
26・・空間
30、30A・・弾性バネ
31・・コイルバネ部
31a・・終端部
32・・アーム部
40・・レンズ
50・・蓋体
51・・スリット
100・・天井板
110・・取付孔
t1・・鋼板の厚み
t2・・ケイ酸カルシウム板の厚み
M・・埋め込み型照明器具の重量
L1・・弾性バネの全長