特許第6713306号(P6713306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6713306
(24)【登録日】2020年6月5日
(45)【発行日】2020年6月24日
(54)【発明の名称】車両の側面衝突時の乗員保護構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/21 20110101AFI20200615BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20200615BHJP
【FI】
   B60R21/21
   B62D25/08 L
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-56922(P2016-56922)
(22)【出願日】2016年3月22日
(65)【公開番号】特開2017-170990(P2017-170990A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2018年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長澤 勇
【審査官】 鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−63509(JP,A)
【文献】 実開平3−124967(JP,U)
【文献】 実開平6−1027(JP,U)
【文献】 実開昭59−121257(JP,U)
【文献】 特開2007−090990(JP,A)
【文献】 特表2001−523183(JP,A)
【文献】 特開2009−149196(JP,A)
【文献】 特開2008−114631(JP,A)
【文献】 特開2000−272551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/21
B62D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネルの車幅方向端縁に沿って車体の側面となるサイドパネルが立設される車体と、
前記フロアパネルより上側において、前記サイドパネルより車幅方向内側に窪んだ車輪ハウスを画成する車輪ハウスパネルと、
前記車輪ハウスの車幅方向内側において前記フロアパネルの上に設けられるシートと、
前記車輪ハウスパネルの上に設けられるハウス上エアバッグ装置と、
を有し、
前記シートには座部を含み、当該座部の上面は、前記車輪ハウスパネルの上面より上側に位置し、
前記ハウス上エアバッグ装置は、車両の側面衝突の際に前記車輪ハウスパネルの上面からエアバッグを展開する、
車両の側面衝突時の乗員保護構造。
【請求項2】
前記シートは、着座した乗員の上体を支える背部を有し、
前記ハウス上エアバッグ装置のエアバッグは、前記車輪ハウスパネルの上から、前記背部に対応する高さで展開する、
請求項1記載の車両の側面衝突時の乗員保護構造。
【請求項3】
展開した前記ハウス上エアバッグ装置のエアバッグの車幅方向内側は、下側より上側が車幅方向外側となるように傾斜しており
当該傾斜は、前記背部に対応する高さで展開したエアバッグの車幅方向内側全体にわたり形成される、
請求項2記載の車両の側面衝突時の乗員保護構造。
【請求項4】
展開した前記ハウス上エアバッグ装置のエアバッグの車幅方向内側の傾斜面は、前記シートに着座した乗員の体形に対応する凹凸面に形成される、
請求項3記載の車両の側面衝突時の乗員保護構造。
【請求項5】
前記サイドパネルの内側において上から下へ展開するカーテンエアバッグ装置を有し、
展開した前記ハウス上エアバッグ装置のエアバッグと展開した前記カーテンエアバッグ装置のエアバッグとは、上下から当接する、
請求項1から4のいずれか一項記載の車両の側面衝突時の乗員保護構造。
【請求項6】
前記ハウス上エアバッグ装置は、前記カーテンエアバッグ装置より先に展開する、
請求項5記載の車両の側面衝突時の乗員保護構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車といった車両の側面衝突時の乗員保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車は、特許文献1から3に開示されている。特許文献1から3では、三列目シートを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−239869号公報
【特許文献2】特開2003−335155号公報
【特許文献3】特開2004−114792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、これらの自動車では、三列目シートの車幅方向両側に車輪ハウスが位置する。車輪ハウス内にはホイール、タイヤといった車輪が配置される。このため、自動車の三列目シートでは、シートと車体の側面との間が空いている。
その結果、車体の側面にたとえば他の車体が衝突した場合、シートに着座した乗員の上体が車幅方向へ向かって大きく振れて倒れてしまう可能性がある。車幅方向外側へ大きく倒れた乗員の上体は、下がった状態で、他の車体が直接衝突する車体の側面に当たる可能性がある。
また、衝撃により、シートに着座した乗員が、車輪ハウスの上へ移動してしまう可能性がある。
そして、自動車では、車体の側面に沿って上からカーテンエアバッグが展開可能である。車幅方向外側へ大きく倒れた乗員の上体がカーテンエアバッグに当たれば、大きく倒れた乗員の上体が車体の側面に直撃することを避けることができる。しかしながら、上述したようにシートに着座した乗員の上体が車幅方向へ向かって大きく倒れる場合、上体は下がるため、カーテンエアバッグの下側から外へすり抜けて、車体の側面に当たる可能性がある。車体の側面に沿って上から展開するカーテンエアバッグでは、車幅方向へ向かって大きく倒れる乗員の上体を適切に保護できるとは言えない。
【0005】
このように自動車といった車両の車体では、側面衝突時の乗員保護性能を高めることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両の側面衝突時の乗員保護構造は、フロアパネルの車幅方向端縁に沿って車体の側面となるサイドパネルが立設される車体と、前記フロアパネルより上側において、前記サイドパネルより車幅方向内側に窪んだ車輪ハウスを画成する車輪ハウスパネルと、前記車輪ハウスの車幅方向内側において前記フロアパネルの上に設けられるシートと、前記車輪ハウスパネルの上に設けられるハウス上エアバッグ装置と、を有し、前記シートには座部を含み、当該座部の上面は、前記車輪ハウスパネルの上面より上側に位置し、前記ハウス上エアバッグ装置は、車両の側面衝突の際に前記車輪ハウスパネルの上面からエアバッグを展開する。
【0007】
好適には、前記シートは、着座した乗員の上体を支える背部を有し、前記ハウス上エアバッグ装置のエアバッグは、前記背部に対応する高さで展開する、とよい。
【0008】
好適には、展開した前記ハウス上エアバッグ装置のエアバッグの車幅方向内側は、下側より上側が車幅方向外側となるように傾斜しており当該傾斜は、前記背部に対応する高さで展開したエアバッグの車幅方向内側全体にわたり形成される、とよい。
【0009】
好適には、展開した前記ハウス上エアバッグ装置のエアバッグの車幅方向内側の傾斜面は、前記シートに着座した乗員の体形に対応する凹凸面に形成される、とよい。
【0010】
好適には、前記サイドパネルの内側において上から下へ展開するカーテンエアバッグ装置を有し、展開した前記ハウス上エアバッグ装置のエアバッグと展開した前記カーテンエアバッグ装置のエアバッグとは、上下から当接する、とよい。
【0011】
好適には、前記ハウス上エアバッグ装置は、前記カーテンエアバッグ装置より先に展開する、とよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明において、前記車輪ハウスパネルの上に設けられたハウス上エアバッグ装置は、車両の側面衝突の際に車輪ハウスパネルの上にエアバッグを展開する。よって、シートの座面に着座した乗員の腰部の外側にエアバッグを展開して支えることができる。乗員が車幅方向外側へ移動し難くなり、車体の側面に近づき難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る自動車の車体の車幅方向部分断面図である。
図2図2は、図1の自動車に適用される側面衝突時の乗員保護構造の説明図である。
図3図3は、図2の側面衝突時の乗員保護構造の変形例の説明図である。
図4図4は、本発明の第2実施形態に係る自動車の側面衝突時の乗員保護構造の説明図である。
図5図5は、本発明の第3実施形態に係る自動車の側面衝突時の乗員保護構造の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0015】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る自動車1の車体2の車幅方向部分断面図である。
自動車1は、車両の一例である。
【0016】
図1の自動車1の車体2は、乗員室の床面を構成するフロアパネル3を有する。フロアパネル3の車幅方向両側の端縁には、一対のサイドパネル4が縁に沿って立設される。
フロアパネル3とサイドパネル4との間には、車輪ハウスパネル5が設けられる。車輪ハウスパネル5は、サイドパネル4より車幅方向内側に窪んだ車輪ハウス6を、フロアパネル3より上側に画成する。車輪ハウス6内には、ホイールおよびゴムタイヤからなる車輪7が格納される。一対の車輪7は、車軸8により、ホイールの中心同士が連結される。車軸8は、フロアパネル3下のサイドフレーム9の下側に取り付けられたクロスメンバ10により回転可能に軸支される。
サイドパネル4および車輪ハウスパネル5の内側には、サイドパネル4および車輪ハウスパネル5の内側を覆うサイドトリム11が設けられる。
【0017】
左右一対の車輪ハウス6の間には、サイドトリム11を挟んで、自動車1の三列目シート12が設けられる。三列目シート12は、左右分割された複数のシート13で構成される。各シート13は、座部14、背部15、脚部16、を有する。座部14は、左右の脚部16によりフロアパネル3の上に取り付けられ、車輪ハウス6の車幅方向内側に位置する。背部15は、座部14の後側で立設される。座部14の上面は、車輪ハウスパネル5の上面より上側に位置する。座部14の外側面は、車輪ハウスパネル5の内側面と対向する。
【0018】
ところで、このような自動車1の車体2では、車体2の側面に沿って上からカーテンエアバッグを展開することができる。また、一列目シートまたは二列目シートでは、シート13の車幅方向両側に車輪ハウス6が位置することはない。このため、一列目シートまたは二列目シートは、サイドパネル4の近くに配置できる。この場合、車体2の側面に沿って上から展開されるカーテンエアバッグにより、車幅方向外側へ向かって比較的小さく振れた状態で乗員の上体を支えることができる。乗員の上体が、車体2の側面に対して直接的に当接することを防止し、かつ車幅方向外側へ大きく振れることを抑制することができる。
しかしながら、自動車1の三列目シート12では、その車幅方向両側に車輪ハウス6が位置する。車輪ハウス6内には車輪7が配置される。このため、三列目シート12では、シート13と車体2の側面との間に空間が形成される。
その結果、車体2の側面にたとえは他の車体が衝突した場合、三列目シート12に着座した乗員の上体は、車幅方向へ大きく振れ得る。そして、乗員の上体は、車幅方向外側へ向かって大きく振れて倒れることにより、高い速度で、下がった状態で、他の車体が直接衝突するサイドパネル4に当たる可能性がある。下がった上体は、カーテンエアバッグの下側から外へすり抜け、車体2の側面に当たる可能性がある。
また、衝撃により、シート13に着座した乗員が、車輪ハウス6の上へ移動してしまう可能性がある。
このように、車体2の側面に沿って上から展開するカーテンエアバッグでは、三列目シート12に着座し、車幅方向へ向かって大きく倒れる乗員の上体を適切に保護しているとは言えない。
【0019】
図2は、図1の自動車1に適用される側面衝突時の乗員保護構造の説明図である。
図2(A)は、通常時の状態である。図2(B)は、側面衝突時の状態である。
図2の自動車1の乗員保護構造は、車輪ハウスパネル5の上に設けられるハウス上エアバッグ装置31、を有する。
【0020】
ハウス上エアバッグ装置31は、インフレータを有するエアバッグ本体32、エアバッグ本体32から展開されるエアバッグ33、を有する。
エアバッグ本体32は、車輪ハウスパネル5の上面部に設けられる。エアバッグ33は、エアバッグ本体32から、車体2の上方向へ向かって展開される。エアバッグ33は、車輪ハウスパネル5の上面部からシート13の背部15の上端までに至る縦長の形状を有する。
【0021】
次に、側面衝突時の乗員保護動作について説明する。
【0022】
まず、図2(A)に示すように、車体2の側面に対して、車幅方向から他の車体が追突する。サイドパネル4および車輪7についての他の車体が衝突した部分は、車幅方向内側へ押し込まれるように変形する。
この他の車体を検出すると、ハウス上エアバッグ装置31は、インフレータ内の圧縮ガスをエアバッグ33へ注入し、エアバッグ33の展開を開始する。エアバッグ33は、車輪ハウスパネル5の上面部から、車体2の上方向へ向かって展開する。
これにより、図2(B)に示すように、エアバッグ33は、車輪ハウス6の上方の空間で膨張する。
展開したエアバッグ33は、車輪ハウスパネル5の上から、背部15に対応する高さで展開する。また、展開したエアバッグ33の車幅方向内側は、下側より上側が車幅方向外側となる傾斜面に形成される。図2では、傾斜面は、車輪ハウス6の内上隅と乗員室の外上隅とを結ぶ仮想線よりも下側が内側へ張り出している。展開したエアバッグ33の下端部は、シート13の着座面の上に到達している。この他にもたとえば、傾斜面は、仮想線に沿って形成されてもよい。
【0023】
このように、サイドパネル4とシート13との間の車輪ハウス6の上方の空間において、下から上へ、シート13の背部15に対応する高さでエアバッグ33が展開することにより、エアバッグ33による壁がシート13の外側のすぐ傍に形成される。よって、車両の側面衝突の際にシート13に着座した乗員の上体が車幅方向外側である側面衝突側へ傾く場合でも、上体はエアバッグ33に当たってそれ以上外側へ傾かないように支えられる。上体は、車体2の側面に近づかないようになり、車幅方向外側へ大きく傾くこともない。
その結果、三列目シート12に着座した乗員の上体は、車幅方向外側へ向かって高い速度で、かつ下がった状態で、他の車体が直接衝突するサイドパネル4に当たることが起き難くなる。
特に、展開したエアバッグ33の車幅方向内側は、下側より上側が車幅方向外側となる傾斜面に形成される。よって、この傾斜面により、たとえばシート13に着座したまま外側へ倒れる上体を上から下までを、その倒れる姿勢のままで全体的に支えることができる。なお、仮想線に沿った傾斜面でも、同様の効果を期待できる。
【0024】
以上のように、本実施形態では、車輪ハウスパネル5の上にハウス上エアバッグ装置31が設けられ、このハウス上エアバッグ装置31が、車両の側面衝突の際に車輪ハウスパネル5の上にエアバッグ33を展開する。よって、シート13の座面に着座した乗員の少なくとも腰部の外側には、エアバッグ33が展開し、該腰部を支えることができる。乗員がシート13から車幅方向外側へ移動し難くなり、車体2の側面に近づき難くなる。
【0025】
また、本実施形態では、ハウス上エアバッグ装置31のエアバッグ33は、前記車輪ハウスパネル5の上から、背部15に対応する高さで展開する。よって、車体2の側面を構成するサイドパネル4とシート13の背部15との間は、エアバッグ33で埋められる。車両の側面衝突の際にシート13に着座した乗員の上体が車幅方向外側である側面衝突側へ傾く場合でも、上体が車幅方向外側に大きく傾くことはなく、しかも、傾こうとする上体を車体2の側面から離れた位置でエアバッグ33により支えることができる。
特に、ハウス上エアバッグ装置31を車輪ハウスパネル5の上に設け、エアバッグ33を下から上へ展開させているので、シート13に着座した乗員の上体をたとえば腰から肩までを全体的に支えることができる。上体を上から下まで全体的に支えることができる。これに対して、たとえばカーテンエアバッグなどを頭部横で展開させた場合には、上体を上から下まで全体的に支えることは難しい。
【0026】
また、本実施形態では、展開したハウス上エアバッグ装置31のエアバッグ33は、その車幅方向内側が、下側より上側が車幅方向外側となるように傾斜している。よって、たとえばシート13に着座したまま外側へ倒れる上体を上から下までを、その倒れる姿勢のままで全体的に支えることができる。これに対して、上体の一部のみを支える場合、支えられた部位と支えられていない部位とが生じるため、支えられた上体において局所的なひずみが生じ易くなる。本実施形態では、このような事態の発生を効果的に抑制し、支えた上体に局所的な力が作用し難くすることができる。
【0027】
図3は、図2の側面衝突時の乗員保護構造の変形例の説明図である。
図3において、展開したエアバッグ33の車幅方向内側の面は、前記シート13に着座した乗員の体形に対応する凹凸面に形成される。具体的には、エアバッグ33の中央部から下部にかけては、下側より上側が車幅方向外側となる傾斜面に形成され、上部は該傾斜面より車幅方向内側へ突出している。
このようにエアバッグ33の車幅方向内側の面を、シート13に着座した乗員の体形に対応する凹凸を有する傾斜面に形成することにより、シート13に着座したまま外側へ倒れる上体は、その倒れる姿勢のままで頭部を含めて上から下まで全体的にエアバッグ33に当接して支えられるようになる。その結果、頭部を含めて、支えた上体に局所的な力が作用し難くなり、より一層の乗員保護効果を期待できる。
【0028】
[第2実施形態]
図4は、本発明の第2実施形態に係る自動車1の側面衝突時の乗員保護構造の説明図である。
図4の自動車1の乗員保護構造は、車輪ハウスパネル5の上に設けられるハウス上エアバッグ装置31、を有する。
ハウス上エアバッグ装置31のエアバッグ33は、車輪ハウスパネル5の上面部からシート13の座部14に着座した乗員の腰の高さ、またはそれより少し高い、略円柱状のひじ掛け形状を有する。
【0029】
そして、車体2の側面に対して他の車体が追突すると、ハウス上エアバッグ装置31は、エアバッグ33の展開を開始する。エアバッグ33は、車輪ハウスパネル5の上面部から、車体2の上方向へ向かって展開し、シート13の座部14に着座した乗員の腰の外側において、略円柱状のひじ掛け形状に展開する。
これにより、シート13に着座した乗員の腰は、その外側からエアバッグ33により支持される。
【0030】
[第3実施形態]
図5は、本発明の第3実施形態に係る自動車1の側面衝突時の乗員保護構造の説明図である。
図5の自動車1の乗員保護構造は、車輪ハウスパネル5の上に設けられるハウス上エアバッグ装置31、車輪ハウスパネル5の上方向から下へ向かって展開するカーテンエアバッグ装置34、を有する。
ハウス上エアバッグ装置31のエアバッグ33は、車輪ハウスパネル5の上面部からシート13の座部14に着座した乗員の腰の高さ、またはそれより少し高い、略円柱状のひじ掛け形状を有する。
カーテンエアバッグ装置34のエアバッグ35は、サイドパネル4の内側において上から下へ展開する。カーテンエアバッグ装置34のエアバッグ35は、下端が、展開したハウス上エアバッグ装置31のエアバッグ33の上に当接する長さを有する。
【0031】
そして、車体2の側面に対して他の車体が追突すると、ハウス上エアバッグ装置31は、エアバッグ33の展開を開始する。エアバッグ33は、車輪ハウスパネル5の上面部から、車体2の上方向へ向かって展開し、シート13の座部14に着座した乗員の腰の外側において、略円柱状のひじ掛け形状に展開する。
これにより、シート13に着座した乗員の腰は、その外側からエアバッグ33により支持される。
また、カーテンエアバッグ装置34は、ハウス上エアバッグ装置31のエアバッグ33の展開後に、エアバッグ35を展開させる。カーテンエアバッグ装置34のエアバッグ35は、展開しているハウス上エアバッグ装置31のエアバッグ33の上に当接する。
【0032】
以上のように、本実施形態では、ハウス上エアバッグ装置31から下から上へ展開し、その上からカーテンエアバッグ装置34のエアバッグ35が下へ向かって展開し、これらのエアバッグ33,35が上下から当接する。よって、シート13に着座した乗員の外側には、上下から展開して互いに接触する複数のエアバッグ33,35により、柔軟なエアバッグの壁を形成することができる。これにより、乗員の上体が車幅方向外側へ移動し難くなり、車体2の側面に近づき難くなる。
【0033】
また、本実施形態では、ハウス上エアバッグ装置31がカーテンエアバッグ装置より先に展開する。よって、カーテンエアバッグ装置34のエアバッグ35は、展開した状態にあるハウス上エアバッグ装置31のエアバッグ33の上部に対して、当たるようになる。これにより、先に展開するハウス上エアバッグ装置31のエアバッグ33を所望の形状に展開させ、シート13に着座する乗員の腰部を好適に支えることができる。
【0034】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【符号の説明】
【0035】
1…自動車(車両)
2…車体
3…フロアパネル
4…サイドパネル
5…車輪ハウスパネル
6…車輪ハウス
7…車輪
8…車軸
9…サイドフレーム
10…クロスメンバ
11…サイドトリム
12…三列目シート
13…シート
14…座部
15…背部
16…脚部
31…ハウス上エアバッグ装置
32…エアバッグ本体
33…エアバッグ
34…カーテンエアバッグ装置
35…エアバッグ
図1
図2
図3
図4
図5