特許第6713336号(P6713336)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6713336マスクブランクの製造方法、および転写用マスクの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6713336
(24)【登録日】2020年6月5日
(45)【発行日】2020年6月24日
(54)【発明の名称】マスクブランクの製造方法、および転写用マスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/82 20120101AFI20200615BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20200615BHJP
   B05D 3/10 20060101ALI20200615BHJP
   C03C 17/34 20060101ALI20200615BHJP
【FI】
   G03F1/82
   B05D7/00 E
   B05D3/10 H
   C03C17/34 Z
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-85161(P2016-85161)
(22)【出願日】2016年4月21日
(65)【公開番号】特開2017-194588(P2017-194588A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2019年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100150865
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 司
(72)【発明者】
【氏名】山口 美穂
(72)【発明者】
【氏名】福井 亨
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 寿幸
【審査官】 長谷 潮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−035547(JP,A)
【文献】 特開昭62−247523(JP,A)
【文献】 特開2016−035546(JP,A)
【文献】 特開2011−164598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00−1/86
B05D 3/10,7/00
C03C 17/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板上に、パターン形成用薄膜と、ケイ素を含有する材料からなるハードマスク膜とが、この順に設けられたマスクブランクを準備する工程と、
前記ハードマスク膜の表面に対し、前記ハードマスク膜の表面に存在するOH基の面内分布の均一性を高める処理を行う面内均一化工程と、
前記面内均一化工程後の前記ハードマスク膜の表面に対し、シラン系カップリング剤による表面処理を行う工程と
を有し、
前記ハードマスク膜はSiON膜からなり、
前記面内均一化工程は、前記ハードマスク膜の表面に存在するOH基の数を増加させる処理であり、
前記面内均一化工程は、前記ハードマスク膜が前記ガラス基板上に形成されてから、熱処理されずに行われ、
前記面内均一化工程は、前記パターン形成用薄膜の表面に対してアルカリ性水溶液を接触させる処理を含む工程であり、前記アルカリ性水溶液は、前記パターン形成用薄膜の表面に、滴下、液盛りされることを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【請求項2】
前記シラン系カップリング剤は、ヘキサメチルジシラザンであることを特徴とする請求項に記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項3】
前記ハードマスク膜は、ケイ素および酸素を含有する材料からなることを特徴とする請求項1または2のいずれか一に記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項4】
前記ハードマスク膜は、厚さが3nm以上15nm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一に記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項5】
前記パターン形成用薄膜は、クロムを含有する材料からなることを特徴とする請求項1から4のいずれか一に記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項6】
前記パターン形成用薄膜は、ケイ素を含有する材料からなる光半透過膜であり、前記パターン形成用薄膜と前記ハードマスク膜の間にクロムを含有する材料からなる遮光膜が設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一に記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項7】
前記表面処理を行った後のハードマスク膜の表面に接して有機系材料のレジスト膜を形成する工程を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか一に記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項8】
請求項記載のマスクブランクの製造方法で製造されたマスクブランクを用いる転写用マスクの製造方法であって、
前記レジスト膜に対してパターン形成用薄膜に形成すべきパターンを露光描画し、現像処理を施してレジスト膜にパターンを形成する工程と、
前記パターンを備えるレジスト膜をマスクとし、ドライエッチングにより、前記ハードマスク膜にパターンを形成する工程と
を有することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板上に形成されたケイ素を含有する材料からなる薄膜の表面処理方法、マスクブランクの製造方法、および転写用マスクの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ケイ素を含有する材料からなる薄膜(以下、ケイ素含有薄膜とも称す)をハードマスク膜等として用いたマスクブランクが広く用いられるようになってきている。
ケイ素含有薄膜は、塩素系ガスに対するドライエッチング耐性に優れているので、遮光膜として用いられるクロム系材料膜等を塩素系ガスでドライエッチングするときに好適な膜であり、薄い膜厚であってもエッチングマスクとしての機能を果たす。
【0003】
ケイ素含有薄膜の表面は、極性の低い有機化合物からなるレジスト膜に対する機械的密着性が十分ではない。また、ケイ素含有薄膜の表面は、現像時に現像液やリンス液がケイ素含有薄膜とレジスト膜との界面に染み込みやすい。このため、レジストパターンの倒れ(レジストパターンの剥がれ)が発生しやすくなる。そこでマスクブランクの製造工程においては、レジスト膜をケイ素含有薄膜上に形成する前に、密着性改善のための表面処理がケイ素含有薄膜に対して行われている。この表面処理の代表的なものはHMDS(ヘキサメチルジシラザン)処理である。HMDS処理は、ケイ素含有薄膜に対して、例えば、窒素ガスを用いて蒸散させたHMDSを接触させ、ケイ素含有薄膜の表面にごく薄い疎水性表面層を形成する表面処理である(例えば下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−164598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体デバイスの微細化の進展とともに、転写用マスク上のパターンもより微細なものが要求されている。例えば、線幅が40nm以下のSRAF(Sub―Resolution Assist Feature)が転写用マスク上に設けられるようになってきている。このような微細なパターンは、描画、現像によって形成されたレジストパターンをマスクにして、ハードマスク膜等のケイ素含有薄膜をエッチングして転写用マスク上に形成される。しかしながら、レジストパターンも微細なものになるため密着性がその分低下してしまう。その結果、ケイ素含有薄膜の表面に対してHMDSによる密着性改善のための表面改質処理を行っても、レジストパターンの倒れ(レジストパターンの剥がれ)を十分に抑制することが難しくなってきている。
本発明は、このレジストパターンの倒れを抑制して、ガラス基板上のケイ素含有薄膜上に欠陥の少ないレジストパターンが形成できる表面処理方法を提供する。また、レジストパターンの倒れが抑制されて欠陥の少ない転写用マスクを製造する上で好適なマスクブランクの製造方法、および転写用マスクの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ケイ素含有薄膜上にレジストパターンを形成したときに発生するレジストパターンの倒れに関して詳細な検討を行った。その結果、ケイ素含有薄膜上に形成されたレジストパターンが面内において、そのレジストパターンの倒れやすさに分布があることがわかった。そこで、ケイ素含有薄膜上にレジスト膜を形成するときの塗布条件、レジスト膜にレジストパターンを描画するときの描画条件、レジスト膜を現像するときの条件等、各条件を変更してレジストパターンを形成してみたところ、レジストパターンの倒れの面内分布と、各条件との間での明確な相関性を得ることができなかった。
【0007】
本発明者らは、さらに検討を行ったところ、ケイ素含有薄膜の表面状態、特にOH基の面内分布とレジストパターンの倒れの面内分布との間に相関性があることを見出した。HMDS処理は、ケイ素含有薄膜上のOH基に疎水的性質をもつトリメチルシリル基を結合させてその膜の表面を疎水性に変える処理である。ケイ素含有薄膜上のOH基の面内分布の均一性が低いと、トリメチルシリル基の面内分布の均一性も低くなり、面内で周りよりも疎水性の低い部分(親水的な部分)が生じて、その部分でレジストパターンの倒れが発生しやすくなる。
【0008】
以上の結果から、本発明者らはケイ素含有薄膜の表面に存在するOH基の面内分布を均一化することで、そのケイ素含有薄膜上にレジストパターンを形成したときのレジストパターンの倒れの面内分布の均一性を高められるという結論に至った。これらの検討結果を踏まえ、前記の課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
【0009】
(構成1)
ガラス基板上に、ケイ素を含有する材料からなる薄膜が設けられた薄膜付きガラス基板を準備する工程と、
前記薄膜の表面に対し、その薄膜の表面に存在するOH基の面内分布の均一性を高める処理を行う面内均一化工程と、
前記面内均一化工程後の前記薄膜の表面に対し、シラン系カップリング剤による表面処理を行う工程と
を有することを特徴とする表面処理方法。
【0010】
(構成2)
前記面内均一化工程は、前記薄膜の表面に対してアルカリ性水溶液を接触させる処理を含む工程であることを特徴とする構成1記載の表面処理方法。
【0011】
(構成3)
前記面内均一化工程は、前記薄膜の表面に存在するOH基の数を増加させる処理であることを特徴とする構成1または2に記載の表面処理方法。
【0012】
(構成4)
前記シラン系カップリング剤は、ヘキサメチルジシラザンであることを特徴とする構成1から3のいずれか一に記載の表面処理方法。
【0013】
(構成5)
前記薄膜は、ケイ素および酸素を含有する材料からなることを特徴とする構成1から4のいずれか一に記載の表面処理方法。
【0014】
(構成6)
ガラス基板上に、パターン形成用薄膜と、ケイ素を含有する材料からなるハードマスク膜とが、この順に設けられたマスクブランクを準備する工程と、
前記ハードマスク膜の表面に対し、前記ハードマスク膜の表面に存在するOH基の面内分布の均一性を高める処理を行う面内均一化工程と、
前記面内均一化工程後の前記ハードマスク膜の表面に対し、シラン系カップリング剤による表面処理を行う工程と
を有することを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【0015】
(構成7)
前記面内均一化工程は、前記薄膜の表面に対してアルカリ性水溶液を接触させる処理を含む工程であることを特徴とする構成6記載のマスクブランクの製造方法。
【0016】
(構成8)
前記面内均一化工程は、前記ハードマスク膜の表面に存在するOH基の数を増加させる処理であることを特徴とする構成6または7に記載のマスクブランクの製造方法。
【0017】
(構成9)
前記シラン系カップリング剤は、ヘキサメチルジシラザンであることを特徴とする構成6から8のいずれか一に記載のマスクブランクの製造方法。
【0018】
(構成10)
前記ハードマスク膜は、ケイ素および酸素を含有する材料からなることを特徴とする構成6から9のいずれか一に記載のマスクブランクの製造方法。
【0019】
(構成11)
前記ハードマスク膜は、厚さが3nm以上15nm以下であることを特徴とする構成6から10のいずれか一に記載のマスクブランクの製造方法。
【0020】
(構成12)
前記パターン形成用薄膜は、クロムを含有する材料からなることを特徴とする構成6から11のいずれか一に記載のマスクブランクの製造方法。
【0021】
(構成13)
前記パターン形成用薄膜は、ケイ素を含有する材料からなる光半透過膜であり、前記パターン形成用薄膜と前記ハードマスク膜の間にクロムを含有する材料からなる遮光膜が設けられていることを特徴とする構成6から11のいずれか一に記載のマスクブランクの製造方法。
【0022】
(構成14)
前記表面処理を行った後のハードマスク膜の表面に接して有機系材料のレジスト膜を形成する工程を有することを特徴とする構成6から13のいずれか一に記載のマスクブランクの製造方法。
【0023】
(構成15)
構成14記載のマスクブランクの製造方法で製造されたマスクブランクを用いる転写用マスクの製造方法であって、
前記レジスト膜に対してパターン形成用薄膜に形成すべきパターンを露光描画し、現像処理を施してレジスト膜にパターンを形成する工程と、
前記パターンを備えるレジスト膜をマスクとし、ドライエッチングにより、前記ハードマスク膜にパターンを形成する工程と
を有することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明の方法では、上述のように面内均一化工程によって、ケイ素含有薄膜上のOH基の面内均一性を高めているので、そのOH基と結合するシラン系カップリング剤による表面処理の面内均一性も高まる。このため、ケイ素含有薄膜上で部分的にシリル基が少なく疎水性が低くなっている部分が発生しにくくなるので、ケイ素含有薄膜上のレジストパターンの倒れ(レジストパターンの剥がれ)の発生が抑制される。
【0025】
また、ガラス基板上に、パターン形成用薄膜とケイ素を含有する材料からなるハードマスク膜がこの順に設けられたマスクブランクに対して前記表面処理をハードマスク膜の表面に施すと、ハードマスク膜上で部分的にシリル基が少なく疎水性が低くなっている部分が発生しにくくなる。このため、このマスクブランクは、レジストパターンの倒れが抑制されたマスクブランクとなる。
また、このマスクブランクを用いて転写用マスクを製造すると、レジストパターンの倒れに起因する欠陥の発生が抑制された転写用マスクを製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1の実施形態におけるマスクブランクの構造を示す断面図である。
図2】本発明の第1の実施形態における位相シフトマスクの製造工程を示す断面模式図である。
図3】本発明の第1の実施形態における位相シフトマスクの製造工程を示す断面模式図である。
図4】本発明の効果を中心部と周辺部との規格化二次イオン検出強度の面内比(面内分布比)で示した特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0028】
[マスクブランクの製造と表面処理]
以下に、本発明の詳細な構成を図面に基づいて説明する。ここでは、ケイ素含有薄膜上の表面処理方法として、本発明をハーフトーン型位相シフトマスクブランクの製造に適用した場合の実施の形態を中心に説明し、次いで、この製造方法によって得られたマスクブランクを用いた転写用マスク(ハーフトーン型位相シフトマスク)の製造方法を説明する。なお、各図において同様の構成要素には同一の符号を付して説明を行う。
【0029】
図1は、実施形態のマスクブランクの構造を説明するための断面構造の概略図である。以下に、図1を参照しながら、実施形態のマスクブランクの製造方法を説明する。
【0030】
先ず図1(a)に示すように、ガラス基板1を用意し、このガラス基板1上に、光半透過膜(位相シフト膜)2、遮光膜3、およびケイ素系材料からなるハードマスク膜4をこの順に成膜する成膜工程を行う。このうち、光半透過膜2は、このマスクブランクから転写用マスクが製造されたときに、転写パターンである微細なパターンが形成される。また、ハードマスク膜4および遮光膜3は、このマスクブランクから転写用マスクが製造される途上において、光半透過膜2に形成すべき微細なパターンが一時的に形成される。次に、各構成要素およびその成膜手順の詳細を説明する。
【0031】
<ガラス基板1>
ここで用意する基板1は、ケイ素と酸素を含有する材料からなるガラス基板である。
位相シフトマスク用またはバイナリマスク用のマスクブランクに用いられる場合、ガラス基板1はArFエキシマレーザー光(波長:約193nm)のような露光光に対して透過性を有し、かつ変形しにくい材料で構成される。このような材料としては、合成石英ガラスが一般に用いられるが、この他にも、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラスを用いることができる。特に、合成石英基板は、ArFエキシマレーザー光、またはそれよりも短波長の領域で透明性が高いので、本発明のマスクブランクに特に好適に用いることができる。
また、反射型マスク用のマスクブランクの場合、ガラス基板1は露光時に生じる熱による熱膨張が低く抑えられた低熱膨張ガラス(SiO−TiOガラス等)が特に好適である。
【0032】
以上のようなガラス基板1は、端面および主表面が所定の表面粗さに研磨され、その後、所定の洗浄処理および乾燥処理が施されたものである。
【0033】
<光半透過膜2の成膜>
次に、以上のようなガラス基板1の主表面(第1主表面)上に、例えばスパッタリング法によって光半透過膜2を成膜する。ここで成膜する光半透過膜2は、例えばケイ素(Si)を含有する膜として成膜する。この光半透過膜2は、ケイ素の他に、窒素(N)を含有する材料で形成されていることが好ましい。このような光半透過膜2は、フッ素系ガスを用いたドライエッチングによってパターニングが可能であり、以下に説明するクロム(Cr)を含有する材料で形成された遮光膜3に対して、十分なエッチング選択性を有してパターニングが可能である。
【0034】
また、光半透過膜2は、フッ素系ガスを用いてドライエッチングすることが可能な材料であれば、さらに、半金属元素、非金属元素、金属元素から選ばれる一以上の元素を含有していてもよい。
【0035】
そのような半金属元素の例の1つはケイ素であるが、ケイ素に限るものではない。非金属元素の例は窒素(N)であるが、その他の非金属元素であってもよく、その例としては、酸素(O)、炭素(C)、フッ素(F)および水素(H)から選ばれる一以上の元素が挙げられる。また、金属元素の例としては、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、スズ(Sn)、ホウ素(B)、ゲルマニウム(Ge)が挙げられる。このような元素を含有する光半透過膜2としては、例えばMoSiNで構成されたものが例示される。
【0036】
また、光半透過膜2は、露光光に対して所定の位相差と所定の透過率となるように、屈折率n、消衰係数k、および膜厚dが設定され、光半透過膜2の成膜時には、その屈折率nおよび消衰係数kとなるように、膜材料の組成や成膜条件が調整される。位相差は、例えば、150°〜190°であり、透過率は1%〜30%である。
【0037】
光半透過膜2は、単層膜でもよいし、複数の層からなる多層膜でもよい。単層膜は、製造工程が簡単化されるという特徴があり、多層膜は位相差と透過率の調整範囲が拡がるという特徴がある。また、光半透過膜2は、その膜厚方向に対して均一の組成でもよいし、分布を持った組成でもよい。
【0038】
また、スパッタリング法による光半透過膜2の成膜においては、光半透過膜2を構成する材料を所定の組成比で含有するスパッタターゲットおよび反応性ガスを用い、さらには必要に応じてアルゴン(Ar)、キセノン(Xe)、ヘリウム(He)等の不活性ガスを用いて成膜が行われる。
【0039】
スパッタリング法によって光半透過膜2を成膜した後には、後処理として所定の加熱温度でのアニール処理を行って所定の膜応力になるように調整する。この光半透過膜2に対するアニール処理の加熱温度は、300℃以上であると好ましく、350℃以上であるとより好ましく、400℃以上であるとさらに好ましい。アニール処理の加熱温度を高くすることで、光半透過膜2の緻密性を高め、膜応力の低減を図ることができる。この光半透過膜2に対するアニール処理の加熱温度は、900℃以下であると好ましく、700℃以下であるとより好ましく、600℃以下であるとさらに好ましい。加熱温度が高すぎると、光半透過膜2とともに加熱されるガラス基板1の物性が大きく変化してしまう恐れがあり、好ましくない。
【0040】
<遮光膜3の成膜>
次に、光半透過膜2上に、例えばスパッタリング法によって遮光膜3を成膜する。遮光膜3は、クロム(Cr)を含有する材料からなる膜であって、単層で成膜してもよく、下層と上層からなる2層構造で成膜してもよく、さらに多層の複数層で成膜してもよい。遮光膜3を複数層として成膜する場合は、クロム(Cr)の含有量を変化させて各層を成膜することが好ましい。
【0041】
遮光膜3は、クロム金属のほか、クロム(Cr)に酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、ホウ素(B)、水素(H)およびフッ素(F)から選ばれる一以上の元素を含有する材料を含有していてもよい。さらにこの遮光膜3には、光学濃度(OD)を維持しつつ、膜全体のエッチングレートの低下を抑制することを目的として、インジウム(In)、スズ(Sn)、およびモリブデン(Mo)から選ばれる少なくとも一以上の金属元素を含有していてもよい。
【0042】
このような遮光膜3は、酸素を含有した塩素系ガスを用いたドライエッチングによってパターニングすることが可能である。後述のように、ケイ素(Si)を含有する材料で形成されたハードマスク膜4は、このガスを用いたドライエッチングに対して十分なエッチング耐性を有している。このため、ハードマスク膜4をマスクとして遮光膜3をパターニングすることが可能な材料になっている。ケイ素(Si)を含有する材料で形成された光半透過膜2は、酸素を含有した塩素系ガスを用いたドライエッチングに対して十分なエッチング耐性を有している。このため、遮光膜3は、光半透過膜2にほとんどダメージを与えずにエッチング加工することも除去することも可能である。
【0043】
以上のような遮光膜3は、ドライエッチングにおいての形状精度が確保され、かつ露光転写工程で用いられる露光光に対して所定値以上の光学濃度(OD)を有するように、材料の組成や膜厚が設定される。遮光膜3は、光半透過膜2との積層構造で光学濃度(OD)が2.0より大きいことが求められ、2.8以上であることが好ましく、3.0以上であることがより好ましい。
【0044】
スパッタリング法による遮光膜3の成膜においては、遮光膜3の構成材料を所定の組成比で含有するターゲットおよび反応性ガスを用い、さらには必要に応じてアルゴン(Ar)、キセノン(Xe)、ヘリウム(He)等の不活性ガスを用いて、成膜が行われる。
【0045】
<ハードマスク膜4の成膜>
次いで、遮光膜3上に、例えばスパッタリング法によってハードマスク膜4を成膜する。ここで成膜するハードマスク膜4は、ケイ素(Si)を含有する材料からなる膜であって、遮光膜3をパターニングするためのドライエッチングが終わるまでの間、エッチングマスクとして機能するだけの薄い膜厚で成膜される。
【0046】
このようなハードマスク膜4は、ケイ素(Si)の他に、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、ホウ素(B)および水素(H)から選らばれる一以上の元素を含有する材料を用いて成膜される。特に、ケイ素(Si)に加えて酸素(O)を含有する材料は、ハードマスク膜4としての機能に優れ、また本発明の表面処理の効果が高まるという観点から特に好ましい。このようなハードマスク膜4を構成する材料の具体例としては、酸化シリコン(SiO)、酸化窒化シリコン(SiON)、酸化炭化シリコン(SiOC)、酸化炭化窒化シリコン(SiOCN)等が挙げられる。また、酸素を含まない材料としては、窒化シリコン(SiN)等が挙げられる。
【0047】
このようなケイ素を含有する材料、特にケイ素(Si)に加えて酸素(O)を含有する材料は、フッ素系のガスによって容易にドライエッチングされるので、この材料をハードマスク膜4に用いるとハードマスク膜4の加工精度が向上し、精度の高いハードマスクパターンを形成することが可能になる。
【0048】
また、このようなケイ素を含有する材料、特にケイ素(Si)に加えて酸素(O)を含有する材料は、酸素を含有した塩素系ガスを用いたドライエッチングに対して十分なエッチング耐性を有するので、3nmというような極薄膜であってもクロム(Cr)を含有する材料で形成された遮光膜3のエッチング時に十分なエッチングマスクになる。このため、この材料からなるハードマスク膜4の膜厚は3nm以上あればよい。ハードマスク膜4の膜厚は、微細パターン形成という観点から、15nm以下、より好ましくは10nm以下とするのが好ましい。ハードマスク膜4の膜厚をこれらの値以上厚くすると、ハードマスク膜4を加工するためのレジスト膜の膜厚も厚くする必要があるが、厚くしたレジストは解像度の低下を招き、また、レジストパターンの倒れが起こりやすいためである。
【0049】
ハードマスク膜4の成膜方法としては、スパッタリング法が挙げられる。そこでは、ハードマスク膜4を構成する材料を所定の組成比で含有するターゲットを用い、アルゴン(Ar)、キセノン(Xe)、ヘリウム(He)等の不活性ガスや酸素(O)などを含んだ反応性ガスを必要に応じて使用する。
【0050】
<表面処理工程>
ここでの表面処理工程は、ハードマスク膜(ケイ素含有薄膜)4の表面のケイ素に結合したOH基(シラノール基)の面内分布均一性を高める面内均一化工程と、その工程の後に行うシラン系カップリング剤による疎水化処理工程からなる。
【0051】
OH基の面内分布均一性を高める面内均一化工程は、ハードマスク膜4の表面に対して強アルカリ水溶液を接触させる処理を含む工程からなる。ここで、強アルカリ水溶液としては、TMAH(TetraMethyl Ammonium Hydroxide)水溶液、TBAH(TetraButhyl Ammonium Hydroxide)水溶液、アンモニア水、アンモニア過水(アンモニア水と過酸化水素水からなる水溶液)、KOH水溶液、NaOH水溶液などが挙げられる。
【0052】
この中でも、TMAH水溶液はレジストの現像液として、またアンモニア過水は洗浄液として、転写用マスクの製造プロセスで使用されているものであり、使用する装置もこれらの処理に用いる装置と共用して用いることができるため、好ましく使用することができる。ここで、TMAH水溶液を用いる場合、その水溶液の濃度は現像液と同じ2.38重量%でよく、また処理プロセスも現像処理と同じでよい。また、アンモニア過水の場合は、金属不純物除去を目的とした洗浄で用いられるSC1(Standard Clean 1)洗浄工程で用いられているものと同じでよい。
【0053】
ケイ素を含有する材料からなるハードマスク膜4を強アルカリで処理すると、図1(a)に示すように、膜表面に存在するケイ素(Si)のダングリングボンドにOH基が結合する。また、膜表面のケイ素に有機物(汚染物質)などが付着している場合は、その一部がOH基に入れ替わってケイ素と結合する。その結果、ケイ素含有薄膜の表面は、比較的均一、かつ緻密にケイ素に結合したOH基(シラノール基)で覆われ、OH基の面内分布均一性が高まるとともに、OH基の密度も向上する。また、強アルカリ処理により、ハードマスク膜4上の汚染が減ることと、シラン系カップリング剤との反応性があるOH基が増えることにより、ハードマスク膜4上にレジストを塗布した時の塗布ムラが抑制される。
【0054】
OH基の面内分布均一性を高める面内均一化工程を施す領域は、ハードマスク膜4の表面上のクオリティエリア(転写パターン形成領域)として定義されている領域を少なくとも含む領域である。ここで、クオリティエリアはマスクブランクの製品規格として決められている。例えば、6025サイズ(一辺が約152mmの正方形)のマスクブランクの場合は、主表面の中心を基準とする132mm×104mmの四角形の内側領域である。但し、マスクブランクの製造管理やマスクブランクの管理運用を鑑みると、面内均一化工程を施す領域は、主表面の中心を基準とする132mm×132mmの四角形の内側領域であると好ましく、142mm×142mmの四角形の内側領域であるとより好ましく、146mm×146mmの四角形の内側領域であるとさらに好ましい。
【0055】
OH基の面内分布均一性は、飛行時間型二次イオン質量分析(TOF−SIMS:Time−of−Flight Secondary Mass Spectoscopy)によって調べることができる。例えば、面内均一化工程を施したケイ素含有薄膜(ハードマスク膜4)の表面を十分な臭素(Br)修飾処理を施してから、ビスマスイオン(Bi)等を一次イオン種として照射して検出された臭素由来の規格化二次イオン強度の面内分布比較からOH基の面内分布均一性を調べることができる。本明細書でいう規格化二次イオン強度とは、薄膜の表面の所定領域内に一次イオンが照射されたことによって、薄膜の表面から放出された二次イオンをカウントした総個数で、対象のイオン(臭素由来のイオン)の個数を除して算出した数値である。
【0056】
OH基の面内分布均一化の方法としては、前記強アルカリ水溶液を用いた方法の他に、アニール処理によりOH基の面内分布均一性を向上させる方法もある。ケイ素含有薄膜を、大気中または窒素ガスをパージした雰囲気下で、350℃以上900℃以下の温度にしてアニールすると、OH基の量は減少するものの、表面状態の均質化が図られ、OH基の面内分布均一性が高まる。
【0057】
次に、面内均一化工程が行われた後のハードマスク膜(ケイ素含有薄膜)4に対し、シラン系カップリング剤を用いた表面処理を行って、図1(b)に示すように、ハードマスク膜4の表面のOH基(シラノール基)を化学修飾基で修飾する。シラン系カップリング剤の具体例としては、1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ビニルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。
【0058】
上述した具体例において、HMDSが好ましく用いられる。HMDSは、トリメチルシリル基[−Si(CH]をもつアミン化合物であり、ハードマスク膜4の表面のシラノール基(−SiOH)に結合可能な官能基であるアミノ基を有する。また、レジスト膜との親和性に優れる(レジスト材料と疎水―疎水相互作用によって結合する)メチル基を有する。
【0059】
このようなHMDSを用いた表面処理(HMDS表面処理)によれば、ハードマスク膜4の表面のケイ素に結合したOH基と、HMDSとが反応し、OH基に対して、HMDSのトリメチルシリル基[−Si(CH]が化学修飾基として結合する。これにより、もともとケイ素を含有するハードマスク膜4の表面にトリメチルシリル基が結合する。このため、疎水化度以外の膜質をほとんど変化させることなく、ハードマスク膜4の表面処理を施すことができる。なお、この反応により発生するアンモニアは、アンモニアガスとして速やかに外部に排出される。
【0060】
ハードマスク膜4の表面のOH基が多いと、それに結合するトリメチルシリル基の量も増えて、ハードマスク膜4の表面の疎水性もより高いものとなる。このため、ハードマスク膜4上にレジスト膜を形成し、そのレジスト膜に対して露光、現像を行ってレジストパターンを形成する際、ハードマスク膜4の表面とレジストパターンの界面に現像液やリンス液が浸入しにくくなって、レジストパターンの倒れ(レジストパターンの剥がれ)は抑制される。
【0061】
HMDS表面処理をはじめとするシラン系カップリング剤による表面処理は、気相、液相のいずれの処理でも構わない。例えば、シラン系カップリング剤を蒸気にして、ハードマスク膜4の表面に導入して表面処理を行ってもよいし、シラン系カップリング剤を原液のままで、あるいはアセトンなどの溶媒と混合させた混合液でハードマスク膜4の表面に塗布して表面処理を行ってもよい。
【0062】
また、HMDS表面処理をはじめとするシラン系カップリング剤を用いた表面処理工程は、処理時間、シラン系カップリング剤の供給流量、および処理温度のうちの少なくとも1つを制御することにより、シラノール基に対する化学修飾基の結合量を調整することができる。
【0063】
<レジスト膜の形成>
次に、化学修飾基の結合によって表面処理されたハードマスク膜4の表面上に、有機系の材料からなるレジスト膜を形成する(図示なし)。レジスト膜の形成は、例えば、スピンコート法のような塗布法によるレジスト材料層の成膜と、ベーク処理などのその後の処理からなる。ここで形成するレジスト膜は、特に材料が限定されることはないが、微細パターンを形成する場合は解像度に優れる化学増幅型レジストを用いることが好ましい。また、ネガ型、ポジ型のいずれのレジストも適用可能である。有機系の材料からなるレジストは、前記表面処理を施されたハードマスク膜4との密着性に優れ、レジストパターンの倒れ(レジストパターンの剥がれ)を起こしにくい。また、ハードマスク膜4をエッチングするときのエッチング選択比を確保しやすく、除去用の薬液や酸素を用いたアッシングなどによりハードマスク膜4にダメージを与えずに容易に除去できることから、転写用マスクを製造する上で好ましい。
【0064】
以上により、ガラス基板1上に、光半透過膜2、遮光膜3、ハードマスク膜4、およびレジスト膜がこの順に積層されたマスクブランクが得られる。なお、本発明において、マスクブランクの構成としては、レジスト膜は必須ではない。すなわち、このレジスト膜の形成工程を転写用マスクの製造工程の1つとして取り扱い、レジスト膜を形成する前までの、ガラス基板1上に、光半透過膜2、遮光膜3、およびハードマスク膜4がこの順に積層されたものをマスクブランクとして取り扱うこともできる。
【0065】
[転写用マスクの製造方法]
図2および3は、実施形態の転写用マスク(ハーフトーン型位相シフトマスク)の製造方法を説明するための断面工程図であり、そこでは、前記方法により表面処理がなされたマスクブランクを用いる。以下、図2および3を参照して、本実施の形態の転写用マスクの製造方法を説明する。なお、図2および3においては、図1を用いて説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0066】
<レジストパターンの形成>
先ず、デバイスパターン(回路パターン)とアライメントマークパターンなどを描画し、その後、レジスト膜に対してベーク処理、現像処理、リンス処理、およびスピン乾燥処理を行う。この処理によって、ハードマスク膜4の上に第1のレジストパターン5aを形成する(図2(a)参照)。第1のレジストパターン5aは、デバイスパターンなど微細なパターンを多数含むが、ハードマスク膜4の表面が前記表面処理により面内均一かつ十分に疎水化処理されているため、レジストパターンの倒れ(レジストパターンの剥がれ)などのパターン欠陥が起こりにくい良好なものとなる。
【0067】
<ハードマスク膜4のパターニング>
次いで、図2(b)に示すように、第1のレジストパターン5aをエッチングマスクとして、フッ素系ガスを用いてケイ素を含有する材料からなるハードマスク膜4をドライエッチングし、ハードマスクパターン4aを形成する。しかる後、第1のレジストパターン5aを除去する。なお、ここで、第1のレジストパターン5aを除去せず残存させたまま、遮光膜3のドライエッチングを行ってもよい。
【0068】
<光半透過膜2および遮光膜3のパターニング>
次に、図2(c)に示すように、ハードマスクパターン4aをエッチングマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガス(酸素含有塩素系ガス)を用いてクロムを含有する材料からなる遮光膜3のドライエッチングを行い、遮光膜3をパターニングして、第1の遮光膜パターン3aを形成する。
【0069】
その後、図3(a)に示すように、第1の遮光膜パターン3aをマスクとして、フッ素系ガスを用いてケイ素を含有する材料で形成された光半透過膜2のドライエッチングを行ない、光半透過膜2をパターニングして光半透過膜パターン2aを形成する。なお、このようなケイ素を含有する材料で形成された光半透過膜2のドライエッチングにおいては、ケイ素を含有する材料で形成されたハードマスクパターン4aも同時に除去される。
【0070】
次に、ガラス基板1における外周領域を覆う形状で遮光帯などを形成するための有機系材料からなる第2のレジストパターンを形成する。第2のレジストパターンは、レジストパターンの倒れを起こしにくい前記表面処理が施されたハードマスク膜4上に形成するものではないが、クロムを含有する材料からなる遮光膜3は、有機系レジストとの密着性に優れるとともに、第2のレジストパターンは遮光帯パターンなど比較的大きな寸法のパターンであることから、レジストパターンの倒れ等の問題は発生しにくい。
【0071】
その後、第2のレジストパターンをエッチングマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いてクロムを含有する材料からなる遮光膜3のドライエッチングを行う。しかる後、第2のレジストパターンを除去して遮光帯などを有する第2の遮光膜パターン3bを形成する(図3(b)参照)。その後、洗浄等の所定の処理を行って、転写用マスクであるハーフトーン型位相シフトマスク30が得られる。
【0072】
[実施形態の効果]
以上説明した実施形態のマスクブランクの製造方法によれば、ケイ素を含有する材料からなるハードマスク膜4の表面のOH基の面内分布均一性を高める面内均一化工程と、その工程の後に行うシラン系カップリング剤による疎水化処理工程からなる表面処理により、ハードマスク膜4の表面は疎水化の面内均一性が高くかつ適度に疎水化される。これにより、レジスト膜の密着性が高く、レジスト膜に対して露光、現像を行ってパターンを形成した際に、レジストパターンの倒れが発生しにくいマスクブランクを製造することが可能になる。
【0073】
また、実施形態で説明した転写用マスク(ハーフトーン型位相シフトマスク)の製造方法によれば、ハードマスク膜4に対して前記の表面処理が施されているため、ハードマスク膜4の表面は面内均一かつ適度に疎水化されて、ハードマスク膜4上に形成される第1のレジストパターン5aは、レジストパターンの倒れが抑制され、パターン欠陥の少ないものとなる。このため、パターン欠陥の少ない転写用マスク(ハーフトーン型位相シフトマスク)を製造することが可能になる。
【0074】
なお、以上においてはマスクブランクの製造方法の実施形態として、ハーフトーン型位相シフトマスク用のマスクブランクの製造方法を例示した。しかしながら、本発明のマスクブランクの製造方法は、ケイ素を含有する材料からなるハードマスク膜に接してレジスト膜を形成する工程を有するレベンソン型位相シフトマスクブランク、CPL(Chromeless Phase Lithography)用マスクブランク、バイナリ型マスクブランクなどのマスクブランクの製造方法に広く適用可能であり、同様の効果を得ることができる。同様に、これらのマスクブランクを用いて製造される各種転写用マスクの製造方法に広く適用可能であり、同様の効果を得ることができる。
【0075】
このような例として、例えばバイナリ型のマスクブランクを例示することができる。バイナリ型のマスクブランクの製造方法に本発明を適用する場合、ガラス基板上に、例えばクロムを含有する材料からなる遮光膜を成膜し、この上部にケイ素を含有する材料からなるハードマスク膜を成膜した後、このハードマスク膜の表面に対して前記の表面処理工程を行えばよく、同様の効果を得ることが可能である。
【0076】
また、以上においては前記の表面処理を、ケイ素を含有する材料からなるハードマスク膜に対して行う場合を示したが、この表面処理の対象はハードマスク膜に限らず、ケイ素を含有する材料からなる他の用途の薄膜に対しても同様に効果がある。この表面処理を行ったケイ素含有薄膜は、レジスト膜に対し高い密着性を有し、その結果、この薄膜上に微細なレジストパターンを、レジストパターンの倒れを抑制して形成することが可能になる。
【0077】
このような例として、例えば、ケイ素を含有する材料からなる遮光膜上に直接レジストパターンを形成して製造するバイナリ型マスクを例示することができる。このバイナリ型マスクの製造では、先ず、ガラス基板上にケイ素を含有する材料からなる遮光膜を成膜し、遮光膜の表面に対して前記の表面処理工程を行ってマスクブランクを準備する。その後、その遮光膜上にレジストパターンを形成し、そのレジストパターンをエッチングマスクとしてフッ素系ガスによるドライエッチングによって遮光膜パターンを形成する。このようにして製造されたバイナリ型マスクは、パターン欠陥の少ない転写用マスクとなる。
【実施例】
【0078】
以下、実施例により、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
[マスクブランクの製造と表面処理]
主表面の寸法が約152mm×約152mmで、厚さが約6.35mmの合成石英ガラスからなるガラス基板1を準備した。このガラス基板1は、端面および主表面を所定の表面粗さ以下(二乗平均平方根粗さRqで0.2nm以下)に研磨され、その後、所定の洗浄処理および乾燥処理を施されたものである。
【0079】
次に、ガラス基板1の主表面に接して、モリブデン、ケイ素および窒素からなる光半透過膜2(位相シフト膜)を69nmの膜厚で形成した。具体的には、枚葉式DCスパッタリング装置内にガラス基板1を設置し、モリブデン(Mo)とケイ素(Si)との混合焼結ターゲット(Mo:Si=12:88(原子%比))を用い、アルゴン(Ar)、窒素(N)およびヘリウム(He)の混合ガス(流量比 Ar:N:He=8:72:100,圧力=0.2Pa)をスパッタリングガスとする反応性スパッタリング(DCスパッタリング)によって、光半透過膜2を形成した。別のガラス基板上に同条件で形成した光半透過膜(MoSiN膜)に対してX線光電子分光法(XPS)による分析を行った結果、その材料組成比は、Mo:Si:N=4.1:35.6:60.3(原子%比)であった。
【0080】
次に、スパッタリング装置から光半透過膜2が形成されたガラス基板1を取り出し、ガラス基板1上の光半透過膜2に対し、大気中で450℃、30分間の熱処理を行った。この熱処理後の光半透過膜2に対し、位相シフト量測定装置 MPM193(レーザーテック社製)を使用してArFエキシマレーザー光の波長(193nm)における透過率と位相シフト量を測定したところ、透過率は6.1%、位相シフト量は177.3度であった。
【0081】
次に、光半透過膜2が形成されたガラス基板1を再びスパッタリング装置に入れて、光半透過膜2の上に、CrOCN膜からなる下層、およびCrN膜からなる上層の積層構造の遮光膜3を形成した。具体的には、クロムからなるターゲットを用い、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO)、窒素(N)およびヘリウム(He)の混合ガス雰囲気(流量比 Ar:CO:N:He=20:24:22:30、圧力0.3Pa)中で、反応性スパッタリングを行うことにより、光半透過膜2上に厚さ47nmのCrOCN膜からなる遮光膜3の下層を形成した。続いて、同じくクロムターゲットを用い、アルゴン(Ar)と窒素(N)の混合ガス雰囲気(流量比 Ar:N=25:5、圧力0.3Pa)中で、反応性スパッタリングを行うことにより、前記下層の上に厚さ5nmのCrN膜からなる遮光膜3の上層を形成した。
【0082】
形成した遮光膜3の下層のCrOCN膜の組成は、Cr:O:C:N=49.2:23.8:13.0:14.0(原子%比)、遮光膜3の上層のCrN膜の組成は、Cr:N=76.2:23.8原子%比)であった。これらの組成はXPSにより測定した。
【0083】
光半透過膜2と遮光膜3からなる積層膜の光学濃度(OD)は、ArFエキシマレーザー光の波長(193nm)において3.0以上(透過率0.1%以下)であった。また、波長880nm(露光装置に搭載されている基板位置決めに用いられる検出光の波長)における透過率は50%以下であった。
【0084】
次に、遮光膜3の上に、SiON膜からなるハードマスク膜4を形成した。具体的には、シリコンのターゲットを用い、アルゴン(Ar)、一酸化窒素(NO)およびヘリウム(He)の混合ガス雰囲気(流量比 Ar:NO:He=8:29:32、圧力0.3Pa)中で、反応性スパッタリングを行うことにより、遮光膜3の上に厚さ15nmのSiON膜からなるハードマスク膜4を形成した。形成したSiON膜の組成は、Si:O:N=37:44:19(原子%比)であった。この組成はXPSにより測定した。
【0085】
その後、ハードマスク膜4の表面上のOH基の面内分布均一性を高める表面処理として、ハードマスク膜4上に強アルカリ液であるTMAH(TetraMethyl Ammonium Hydroxide)を滴下、液盛りするTMAH表面処理を行った。具体的には、ハードマスク膜4に対して、2.38重量%のTMAH水溶液を、レジスト現像を行うときと同じ条件で滴下、液盛りし、その後、純水を用いてリンスした。
【0086】
このTMAH表面処理により、ハードマスク膜4の表面上におけるOH基の面内分布均一性が高まることを、ガラス基板1上に前記方法と同じ工程により作製したSiON膜に対して、飛行時間型二次イオン質量分析(TOF−SIMS:Time−of−Flight Secondary Mass Spectoscopy)を行って調べた。具体的には、前記TMAH表面処理を行ったSiON膜とTMAH表面処理を行わなかったSiON膜に対して、その表面を十分に臭素(Br)修飾処理した後、中心部(基板の中心を基準とする一辺が10mmの四角形の4隅:計4点)と外周部(基板の中心を基準とする一辺が132mmの四角形の4隅:計4点)に対し、TOF−SIMSによって臭素由来の規格化二次イオン強度を測定した。なお、このTOF−SIMSにおける測定条件は、以下のとおりである。
測定装置 :TRIFT V nano TOF(ULVAC−PHI社製)
一次イオン種 :Bi
一次加速電圧 :30kV
一次イオン電流 :1.0nA
一次イオン照射領域:一辺が650μmの正方形の内側領域
二次イオン測定範囲:0.5〜3000m/z
【0087】
そして、TMAH表面処理を行ったSiON膜とTMAH表面処理を行わなかったSiON膜のそれぞれに対し、中心部の4点と外周部の4点で測定した合計8点の臭素由来の規格化二次イオン強度の中から最小値Iminと最大値Imaxを抽出した。さらに、その臭素由来の規格化二次イオン強度の最小値Iminで最大値Imaxを除することにより、臭素由来の規格化二次イオン強度の面内分布比(Iratio=Imax/Imin)を算出した。その結果を図4に示す。SiON膜の場合、臭素由来の規格化二次イオン強度の面内分布比(Iratio)は、TMAH表面処理を行わなかった場合が2.45であるのに対し、TMAH表面処理を行った場合が1.51であり、TMAH表面処理を行うことによって規格化二次イオン強度の面内分布比は0.94縮まっていた。この結果は、臭素(Br)修飾がOH基に対する修飾であることを鑑みると、TMAH表面処理によりSiON膜の表面におけるOH基の面内均一性が向上したことを意味する。
【0088】
その後、シラン系カップリング剤としてHMDSを用いた表面処理を行った。具体的には、SiON膜からなるハードマスク膜4に対して前記TMAH表面処理を行ったガラス基板1をHMDS表面処理チャンバーに入れ、減圧状態にした後、気相のHMDSを表面処理チャンバーに導入してHMDS表面処理を行った。なお、この場合の化学修飾基は、トリメチルシリル基[Si(CH]である。
【0089】
次に、TMAH表面処理とHMDS表面処理の両方を行ったときの効果を、水の接触角を用いて評価した。水に対する接触角が大きいということは疎水性が高いことを意味し、現像液やリンス液がレジストパターンと接する膜の界面へ浸入することによって引き起こされるレジストパターンの倒れ(レジストパターンの剥がれ)が抑制されることを意味する。ハードマスク膜4の表面の水接触角は、全自動接触角計DM―701(協和界面化学株式会社製)を用い、室温23℃の環境下で測定した。なお、ハードマスク膜4の接触角の測定は、基板の中心を基準とする一辺が132mmの四角形の内側の領域に対し、グリット状に等間隔で配置された各測定点(9点×9点=計81点)に対して行った。
【0090】
その結果、各測定点で測定した水の接触角の平均値は、ハードマスク膜4に対してHMDS表面処理のみ行った場合が43.2°であった。この場合において、接触角の測定値が局所的に40°を下回る測定点があることが確認された。一方、ハードマスク膜4に対してTMAH表面処理とHMDS表面処理の2つの表面処理を行った場合が52.8°であった。この場合において、接触角の測定値が局所的に40°を下回る測定点はなかった。
【0091】
TMAH表面処理とHMDS表面処理の両方を行うことにより、ハードマスク膜4の水に対する接触角は9.6°大きくなり、疎水性が高まった。これは、TMAH表面処理により、シラン系カップリング剤であるHMDSの結合先であるSiON膜からなるハードマスク膜4の表面上のOH基の数が増えることにより、HMDS表面処理のみのときより、より多くのトリメチルシリル基がハードマスク膜4の表面上に形成されたためと考えられる。TMAHによる表面処理を行うことにより、OH基の面内均一性が高まるとともに、OH基の量も高まって、ハードマスク膜4の表面は、高い面内均一性で、十分な疎水性を持つようになった。
【0092】
その後、前記のTMAH表面処理とHMDS処理の2つの表面処理を行ったハードマスク膜4の上面に、スピン塗布法によって、電子線描画用の化学増幅型ネガレジストであるSLN−009+(富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)を塗布し、所定のベーク処理を行って、膜厚80nmのレジスト膜を形成した。
以上のようにして実施例1のマスクブランクを作製した。
【0093】
[転写用マスクの製造]
次に、このマスクブランクを用いて、図2および3に示される製造工程にしたがって、ハーフトーン型位相シフトマスクを製造した。
先ず、電子線描画機を用いて、前記レジスト膜に対して所定のデバイスパターンを描画した後、レジスト膜を現像してレジストパターン5aを形成した(図2(a)参照)。ここで、所定のデバイスパターンとは、光半透過膜2に形成すべき微細なパターン(線幅40nm以下のSRAFパターン等)を含むパターン(位相シフトパターン)である。ハードマスク膜4上に形成されたレジストパターン5aは、レジストパターンの倒れが認められない良好なものであった。
【0094】
次に、レジストパターン5aをマスクとして、ハードマスク膜4をドライエッチングして、ハードマスクパターン4aを形成した(図2(b)参照)。ドライエッチングガスとしてはフッ素系ガス(SFガスとHeガスの混合ガス)を用いた。レジストパターン5aを除去した後、ハードマスクパターン4aをマスクとして、上層および下層の積層膜からなる遮光膜3のドライエッチングを連続して行い、第1の遮光膜パターン3aを形成した(図2(c)参照)。ドライエッチングガスとしてはClとOの混合ガス(Cl:O=8:1(流量比))を用いた。
【0095】
続いて、遮光膜パターン3aをマスクにして、光半透過膜2のドライエッチングを行い、光半透過膜パターン2a(位相シフトパターン)を形成した(図3(a)参照)。ドライエッチングガスとしてはフッ素系ガス(SFガスとHeガスの混合ガス)を用いた。なお、この光半透過膜2のエッチング工程において、表面に露出しているハードマスクパターン4aは除去された。
【0096】
次に、スピン塗布法により、基板上にレジスト膜を形成し、電子線描画機を用いて、遮光帯パターンなどからなる所定のパターンを描画した後、現像してレジストパターンを形成した(図示なし)。ここで、レジストには、電子線描画用の化学増幅型ポジレジストであるPRL009(富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)を用いた。続いて、このレジストパターンをマスクとして、露出している第1の遮光膜パターン3aのエッチングを行うことにより、例えば、転写パターン形成領域内の遮光膜パターン3aを除去し、転写パターン形成領域の周辺部には遮光帯パターンが形成された第2の遮光膜パターン3bを形成した。この場合のドライエッチングガスとしてはClとOの混合ガス(Cl:O=8:1(流量比))を用いた。最後に、残存するレジストパターンを除去し、転写用マスクであるハーフトーン型位相シフトマスク30を製造した(図3(b)参照)。
【0097】
製造された転写用マスク30(ハーフトーン型位相シフトマスク)の欠陥検査を行ったところ、レジストパターンの倒れに起因する欠陥は認められず、欠陥の少ない転写用マスクであることが確認された。欠陥が少ないことから、転写用マスクの製造歩留まりは高かった。
【0098】
(実施例2)
実施例2は、ハードマスク膜4を酸化ケイ素で形成して、ケイ素含有薄膜の表面処理、マスクブランクの製造および転写用マスクの製造を行ったものであり、ハードマスク膜4の材料とその成膜方法以外は実施例1と同じである。以下、実施例1と相違する箇所について説明する。
【0099】
実施例1と同様の手順で遮光膜3まで形成した後、二酸化ケイ素(SiO)のターゲットを用い、アルゴン(Ar)ガス(圧力0.03Pa)をスパッタリングガスとして、RFスパッタリングを行うことにより、遮光膜3の上に厚さ12nmのSiO膜からなるハードマスク膜4を形成した。形成したSiO膜の組成は、Si:O=35:65(原子%比)であった。この組成はXPSにより測定した。
【0100】
続いて、実施例1と同様の手順で、SiO膜(ハードマスク膜4)の臭素由来の規格化二次イオン強度の面内分布比Iratioを算出した。その結果、図4に示すように、TMAH表面処理を行わなかったSiO膜の場合が4.60であるのに対し、TMAH表面処理を行ったSiO膜の場合が1.65であった。TMAH表面処理を行うことによって、規格化二次イオン強度の面内分布比Iratioは2.95縮まり、SiO膜の表面のOH基の面内均一性が向上することが確認できた。
【0101】
ハードマスク膜4上にレジストパターンを形成したところ、レジストパターンの倒れは観察されなかった。その結果、製造された転写用マスクは、パターン欠陥の少ないマスクであった。
【0102】
(比較例1)
比較例1は、SiONハードマスク膜4の表面処理をHMDS表面処理のみにしてマスクブランクの製造および転写用マスクの製造を行ったものである。それ以外、すなわちTMAH表面処理を行わなかったこと以外は、実施例1からの変更点はない。
SiON膜からなるハードマスク膜4上にレジストパターンを形成したところ、レジストパターンを形成した面内の一部にレジストパターンの倒れが観察された。その結果、製造された転写用マスクは、パターン欠陥の多いマスクとなった。
これは、ハードマスク膜4の表面上のOH基の面内均一性が低いことと、その表面の疎水性が比較的小さいことに起因すると考えられる。実施例1のところで述べたように、TMAH表面処理を行わないと、ハードマスク膜4のOH基の面内均一性は低く、また、疎水性の指標である水の接触角も低いものとなる。
【符号の説明】
【0103】
1…ガラス基板
2…光半透過膜(位相シフト膜)
2a…光半透過膜パターン(位相シフトパターン)
3…遮光膜
3a…第1の遮光膜パターン
3b…第2の遮光膜パターン
4…ハードマスク膜
4a…ハードマスクパターン
5a…レジストパターン
30…ハーフトーン型位相シフトマスク
図1
図2
図3
図4