特許第6713358号(P6713358)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6713358
(24)【登録日】2020年6月5日
(45)【発行日】2020年6月24日
(54)【発明の名称】エンジン作業機
(51)【国際特許分類】
   F02B 63/04 20060101AFI20200615BHJP
   F02B 77/13 20060101ALI20200615BHJP
   F01P 5/06 20060101ALI20200615BHJP
【FI】
   F02B63/04 C
   F02B63/04 B
   F02B63/04 D
   F02B77/13 B
   F02B77/13 M
   F02B77/13 N
   F02B77/13 C
   F01P5/06 505
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-128163(P2016-128163)
(22)【出願日】2016年6月28日
(65)【公開番号】特開2018-3634(P2018-3634A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】東 知世洋
【審査官】 高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭53−051525(JP,U)
【文献】 特開2000−282885(JP,A)
【文献】 特開平09−250358(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0185048(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第104295365(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 5/06
F02B 63/00
F02B 63/04
F02B 77/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング中央部に配置されたディーゼルエンジンと、一側方に配置された作業機と、他側方の下方に配置された燃料タンクと、他側方の上方に配置された排気口と、を有するエンジン作業機において、
前記燃料タンクが配置された前記ケーシングの側面の下方に形成された吸気ダクトと、
前記ディーゼルエンジンから排気するためのエンジンファンと、
前記吸気ダクトから空気を吸引し、冷却水を冷却するラジエータと、
前記吸気ダクトから吸引された空気を、前記燃料タンクの一側面、上面、他側面に沿って、順次流すための空気仕切り板と、
前記燃料タンクの前記他側面が傾斜面を形成していること、
を有することを特徴とするエンジン作業機。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジン作業機において、
前記空気仕切り板により、前記ディーゼルエンジンを冷却して熱せられた空気の流れと、前記燃料タンクとが熱的に遮断されていること、
を特徴とするエンジン作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーシング中央部に配置されたディーゼルエンジンと、一側方に配置された作業機と、他側方の下方に配置された燃料タンクと、他側方の上方に配置されたラジエータと、を有するエンジン作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来のエンジン作業機の構成が記載されている。特許文献1の図1図4に示す。図4に示すように、直方体形状のケーシング101の中央付近にディーゼルエンジン102が配置され、ケーシング101の一側方に、発電機等の作業機103が配置され、ケーシング101の他側方の上面に、排気口108が配置されている。ディーゼルエンジン102と排気口108の間には、冷却水を冷却するためのラジエータ107とエンジンファン109が配置されている。吸気ダクト106は、作業機が配置されたケーシング側面に形成されている。ディーゼルエンジン102の下方には、防油堤104が配置され、防油堤104内に燃料タンク105が配置されている。
【0003】
エンジンファン109が駆動されると、吸気ダクト106から空気がケーシング101内に吸引される。吸引された空気P1は、2つの流れに分かれ、一方の空気P2の流れは、作業機103、ディーゼルエンジン102を冷却した後、ラジエータ107を経由して排気口108からケーシング101の外に排気される。また、他方の空気P3の流れは、防油堤104内の燃料タンク105を冷却した後、ラジエータ107を経由して排気口108からケーシング101の外に排気される。
燃料タンク105を冷却しているのは、ディーゼルエンジン102に供給される燃料が高温であると、燃料中に気泡が発生し安定した燃焼が得られず、ディーゼルエンジン102の燃焼効率が低下するので、それを防止するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、エンジン作業機、特に発電機の大型化が必要とされているが、従来のエンジン作業機では、次のような問題があった。
エンジン作業機を大型化する場合には、消費する燃料が増加するため、燃料タンクを大型化する必要があった。しかし、従来のようにディーゼルエンジンや作業機の下方に燃料タンクを配置する場合には、ディーゼルエンジンの載置位置が高くなり、エンジン作業機の重心位置が高くなるため、搬送等の作業において問題があった。そのため、エンジン作業機を大型化するためには、燃料タンクをディーゼルエンジンの下方ではなく、ラジエータの下方に配置する必要があった。
【0006】
しかしながら、燃料タンクをラジエータの下方に配置すると、燃料タンク近傍を通過する空気は、ディーゼルエンジンにより加熱された空気となるため、燃料タンクの中の燃料が加熱されるため、ディーゼルエンジンの燃焼効率が低下する恐れがあり、問題であった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、燃料タンクを大型化して、ラジエータの下方に配置した場合でも、燃料タンクを効率的に冷却できるエンジン作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のエンジン作業機は、次のような構成を有している。
(1)ケーシング中央部に配置されたディーゼルエンジンと、一側方に配置された作業機と、他側方の下方に配置された燃料タンクと、他側方の上方に配置された排気口と、を有するエンジン作業機において、燃料タンクが配置されたケーシングの側面の下方に形成された吸気ダクトと、ディーゼルエンジンから排気するためのエンジンファンと、吸気ダクトから空気を吸引し、冷却水を冷却するラジエータと、吸気ダクトから吸引された空気を、燃料タンクの一側面、上面、他側面に沿って、順次流すための空気仕切り板と、燃料タンクの他側面が傾斜面を形成していること、を有することを特徴とする。
【0009】
(2)(1)に記載のエンジン作業機において、前記空気仕切り板により、前記ディーゼルエンジンを冷却して熱せられた空気の流れと、前記燃料タンクとが熱的に遮断されていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のエンジン作業機は、次のような作用、効果を奏する。
(1)ケーシング中央部に配置されたディーゼルエンジンと、一側方に配置された作業機と、他側方の下方に配置された燃料タンクと、他側方の上方に配置された排気口と、を有するエンジン作業機において、燃料タンクが配置されたケーシングの側面の下方に形成された吸気ダクトと、ディーゼルエンジンから排気するためのエンジンファンと、吸気ダクトから空気を吸引し、冷却水を冷却するラジエータと、吸気ダクトから吸引された空気を、燃料タンクの一側面、上面、他側面に沿って、順次流すための空気仕切り板と、を有するので、燃料タンクの外周を、吸気ダクトから吸引した新鮮な空気で冷却できるため、燃料を効率的に冷却することができ、ディーゼルエンジンの燃焼効率を低下させる恐れがない。
【0011】
(2)(1)に記載のエンジン作業機において、前記空気仕切り板により、前記ディーゼルエンジンを冷却して熱せられた空気の流れと、前記燃料タンクとが熱的に遮断されているので、ディーゼルエンジンを冷却して熱せられた空気が直接燃料タンクに接触することがなく、燃料タンク及び燃料が熱せられることが少ないため、ディーゼルエンジンの燃焼効率を低下させる恐れがない。
【0012】
(3)(1)または(2)に記載のエンジン作業機において、前記燃料タンクの前記他側面が傾斜面を形成しているので、ラジエータから流れ出る熱せられた空気が、燃料タンクの傾斜面に当たり方向変換してそのままラジエータを通ってケーシングの外に排気されるため、熱せられた空気が滞留することがなく、傾斜面に沿って設けられた空気仕切り板を温めることが少なくなり、燃料タンクの温度上昇を低減でき、燃料の温度上昇を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係るエンジン作業機10の側面図(ただし、側面板を取り外した状態)である。
図2】エンジン作業機10の平面図(ただし、上面板を取り外した状態)である。
図3】エンジン作業機10の斜視図(ただし、側面板を取り外した状態)である。
図4】特許文献1の図1を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のエンジン作業機10の実施形態について、図面を参照しながら以下に詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係るエンジン作業機10の側面図(ただし、側面板を取り外した状態)であり、図2は、エンジン作業機10の平面図(ただし、上面板を取り外した状態)である。図3は、エンジン作業機10の斜視図(ただし、側面板を取り外した状態)である。
図1、2、3に示すように、直方体形状のケーシング11の下方には、ケーシング11の全体に渡ってベース板14が配置されている。
ケーシング11の中央部付近、ベース板14の上面に、ディーゼルエンジン12が配置されている。ディーゼルエンジン12の右側、ベース板14の上面に、作業機の一種類である発電機13が配置されている。発電機13の上方には、ディーゼルエンジン12に燃焼用空気を供給するためのエアクリーナ22が配置されている。
【0015】
発電機13の右端部には、吸気口13aが形成され、発電機13の左端部には、排気口13bが形成されている。吸気口13aから吸気された空気は、発電機13を冷却した後、排気口13bから排出される。
ディーゼルエンジン12の左側近くには、エンジンファン19が配設され、その左側にラジエータ17が立設して配置されている。ラジエータ17の左側下方、ベース板14の上面に、燃料タンク15が配置されている。燃料タンク15の断面右上部は切り欠かれており、傾斜面15bを形成している。
【0016】
燃料タンク15の左側の側板には、吸気ダクト16が付設されている。燃料タンク15の外周には、上面15aを覆う上面仕切り板21a、傾斜面15bを覆う傾斜面仕切り板21b、右側面15cを覆う側面仕切り板21cが連続して形成されている。上面仕切り板21a、傾斜面仕切り板21b、及び側面仕切り板21cにより、タンク冷却通路30の一部を構成する仕切り板21が構成されている。
ベース板14には、空気通路入口14aから空気通路出口14bまでの間、仕切り板14dにより仕切られた空間に、空気通路14cが形成されている。
燃料タンク15の上方、ケーシング11の上板部分に、排気口18が配置されている。排気口18の下方には、ディーゼルエンジン12から排気された排ガスの排気音を低減するためのマフラ23が配置されている。ディーゼルエンジン12とマフラ23は、排気管24により接続されている。
【0017】
次に、上記構成を有するエンジン作業機10の作用について説明する。ディーゼルエンジン12を始動すると、発電機13が発電を開始する。同時に、ラジエータ17が始動する。エンジンファン19が回転することにより、ディーゼルエンジン12及び発電機13が配置されている室内が負圧になり、空気通路出口14bから、空気W4が吸引される。
空気通路14cが負圧となり、空気通路入口14aから空気W3が吸引される。
一方、ラジエータ17を通過した空気の一部W5は、傾斜面仕切り板21bに衝突して方向を上向きに変えられ、排気口18から外部に排出される。また、ラジエータ17を通過した空気の残部W6は、そのまま排気口18から外部に排出される。
【0018】
次に、燃料タンク15周辺における空気の流れについて説明する。
空気通路14cに空気W3が流れ込むことにより、右側面15cと側面仕切り板21cで構成されるタンク側面冷却通路30cが負圧となり、傾斜面15bと傾斜面仕切り板21bで構成されるタンク傾斜面冷却通路30bから空気が吸引される。このようにして、外部から吸気ダクト16を介して吸引された空気W1が、上面15aと上面仕切り板21aで構成されるタンク上面冷却通路30aを通過した後、順次タンク傾斜面冷却通路30b、タンク側面冷却通路30cを通過して(空気W2)、仕切り板14dにより仕切られた空間である空気通路14cへと流れる(空気W3)。
【0019】
タンク上面冷却通路30a、タンク傾斜面冷却通路30b、タンク側面冷却通路30cにより、タンク冷却通路30が構成されている。タンク冷却通路30を外部から吸引した新鮮な冷却空気が流れることにより、燃料タンク15内の燃料が効率的に冷却される。
本実施の形態では、吸気ダクト16から吸引した空気の一部を燃料タンク15の両側面(図1における紙面に対して直交方向の両側面)にも流している。
【0020】
以上詳細に説明したように、本実施形態のエンジン作業機10によれば、(1)ケーシング11中央部に配置されたディーゼルエンジン12と、一側方に配置された発電機13と、他側方の下方に配置された燃料タンク15と、他側方の上方に配置された排気口18と、を有するエンジン作業機10において、燃料タンク15が配置されたケーシング11の側面の下方に形成された吸気ダクト16と、ディーゼルエンジン12から排気するためのエンジンファン19と、吸気ダクト16から空気を吸引し、冷却水を冷却するラジエータ17と、吸気ダクト16から吸引された空気を、燃料タンク15の一側面、上面、他側面に沿って、順次流すための空気仕切り板21と、を有するので、燃料タンク15の外周を、吸気ダクト16から吸引した新鮮な空気で冷却できるため、燃料を効率的に冷却することができ、ディーゼルエンジン12の燃焼効率を低下させる恐れがない。
【0021】
(2)(1)に記載のエンジン作業機10において、空気仕切り板21により、ディーゼルエンジン12を冷却して熱せられた空気W5の流れと、燃料タンク15とが熱的に遮断されているので、ディーゼルエンジン12を冷却して熱せられた空気W5が直接燃料タンク15に接触することがなく、燃料タンク15及び燃料が熱せられることが少ないため、ディーゼルエンジン12の燃焼効率を低下させる恐れがない。
【0022】
(3)(1)または(2)に記載のエンジン作業機10において、燃料タンク15の他側面が傾斜面15bを形成しているので、ラジエータ17から流れ出る熱せられた空気が、燃料タンク15の傾斜面15bを覆う傾斜面仕切り板21bに当たり方向変換してそのまま排気口18を通ってケーシング11の外に排気されるため、熱せられた空気が滞留することがなく、傾斜面15bに沿って設けられた傾斜面仕切り板21bを温めることが少なくなり、燃料タンク15の温度上昇を低減でき、燃料の温度上昇を低減できる。
【0023】
なお、本実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。
例えば、本実施の形態では、作業機として、発電機13について説明したが、他の作業機でも良い。
【符号の説明】
【0024】
10 エンジン作業機
11 ケーシング
12 ディーゼルエンジン
13 発電機
14 ベース板
15 燃料タンク
16 吸気ダクト
17 ラジエータ
18 排気口
21 仕切り板
21b 傾斜面仕切り板
30 タンク冷却通路
図1
図2
図3
図4