【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。なお、特に制限のない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
【0039】
使用した原料および調製方法を以下に示す。
ジエチレングリコール
オルフィンE1004(日信化学工業(株)製、HLB7〜9:パンフレット値)
サーフィノール440(エアープロダクツジャパン(株)製、HLB8:パンフレット値)
オルフィンE1010(日信化学工業(株)製、HLB13〜14:パンフレット値)
サーフィノール104E(エアープロダクツジャパン(株)製、HLB4:パンフレット値)
プロキセルGXL(S)(ロンザジャパン社製)
NaOH
グリセリン
水
水性インクジェットインク組成物A(製造方法は以下を参照)
【0040】
<水性インクジェットインク組成物Aの製造方法>
以下の原料等を使用し、水性インクジェットインク組成物Aを製造した。
(カーボンブラックA)
商品名:プリンテックス90(平均粒子径14nm、比表面積300m
2/g、pH9.0)、デグサ社製
(アルカリ可溶性樹脂A)
ガラス転移温度40℃、質量平均分子量20,000、酸価100mgKOH/gのアクリル酸/n−ブチルアクリレート/ベンジルメタクリレート/スチレン共重合体
(ワックスエマルジョンA)
ノニオン乳化ポリエチレンワックス、商品名:ハイテックE−6314(固形分35%、平均粒子径100nm)、東邦化学(株)製
(界面活性剤A)
アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、商品名:アセチレノールE100、川研ファインケミカル(株)製
(陽イオン交換樹脂)
商品名:DOWEX MONOSPHERE (H)650C、ダウケミカル社製
(高圧乳化分散装置)
ゴーリンホモジナイザー、A.P.V. GAULIN INC社製
【0041】
アルカリ可溶性樹脂A25質量部を、水酸化ナトリウム3.2質量部と水71.8質量部との混合溶液に溶解させ、水性樹脂ワニスA(アルカリ可溶性樹脂濃度25質量%)を得た。得られた水性樹脂ワニスA32質量部、水48質量部、カーボンブラックA20質量部を攪拌混合し、湿式サーキュレーションミルで練肉して水性インクジェット用ベースインクAを得た。得られた水性インクジェット用ベースインクAを水で4倍に希釈し、希釈液Aを得た。得られた希釈液A100質量部に陽イオン交換樹脂5質量部を添加し攪拌して、pHが4未満となるまでイオン交換し、樹脂被覆顔料Aを得た。その後、イオン交換樹脂をメッシュフィルターで濾過した後、水を吸引濾過し、樹脂被覆顔料Aを含有する含水ケーキを得た。得られた含水ケーキに、樹脂被覆顔料A中のアルカリ可溶性樹脂の酸価の80%を中和する量の水酸化ナトリウムを加え、顔料濃度が20%となるよう水で希釈し、高圧乳化分散装置で攪拌し、水性顔料分散液Aを得た。得られた水性顔料分散液A60質量部、ワックスエマルジョンA5質量部、グリセリン15質量部、ジエチレングリコール15質量部、界面活性剤A1質量部、水4質量部を攪拌混合して、顔料濃度12質量%、顔料/アルカリ可溶性樹脂(質量)=10/4の水性インクジェットインク組成物Aを得た。
【0042】
<実施例1〜10および比較例1〜7>
以下の表1に示される配合に従い、各原料をビーカーに仕込み、攪拌装置で攪拌混合して実施例1〜10および比較例1〜7の充填液をそれぞれ作製した。なお、本発明でpHが13を超える場合は洗浄性の面では有利になるが、ともに労働衛生上の面では好ましくないという理由から、今回は充填液を作製しなかった。得られた充填液を用いて、以下の評価方法に従って、充填液の粘度およびpH、ノズル内における泡抜け、水性インクジェットインク組成物Aの乾燥皮膜の溶解性評価と、吐出不良の改善性評価を行った。結果を表1に示す。
【0043】
(粘度)
E型回転粘度計(東機産業(株)製のRE215型)を用いて、25℃における充填液の粘度(cps)を測定した。
【0044】
(pH)
pHメータ((株)堀場製作所製のB−712)を用いて、25℃における充填液のpHを測定した。
【0045】
<ノズル内における泡抜け(ノズルチェックによる評価)>
インクジェットプリンター(PX−105 セイコーエプソン(株)製)に初期充填モードで実施例1〜10および比較例1、3、6および7のそれぞれの洗浄液を充填した後、水性インクジェットインク組成物Aを充填し、ノズルチェック印字を行った。インクの吐出不良が起こるノズルが複数確認された(ピン抜け)場合、ノズルのサッキング(吸引)によるクリーニングを繰り返してヘッド内の気泡の除去を行い、不吐出ノズルが解消するサッキング回数より、以下の評価基準により泡抜け性を評価した。
(評価基準)
◎:サッキング回数は、0回であった。
○:サッキング回数は、1回であった。
×:サッキング回数は、2回以上であった。
【0046】
<水性インクジェットインク組成物Aの乾燥皮膜の溶解性評価>
水性インクジェットインク組成物A5gを容器にとり、開放系にて50℃のオーブン中で3ヵ月間放置した。得られたインクの乾燥皮膜0.1gを実施例1〜10および比較例1、3、6および7のそれぞれの洗浄液5g中に浸漬し、乾燥皮膜の溶解性を以下の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
◎:乾燥皮膜は、洗浄液に浸漬されてすぐに溶解を始め、全て溶解した。
○:乾燥皮膜は、洗浄液に浸漬された後、軽くかき混ぜると溶解し始め、全て溶解した。
△:乾燥皮膜は、洗浄液に浸漬された後、軽くかき混ぜると溶解し始め、一部が溶解した。
×:乾燥皮膜は、洗浄液に浸漬された後、激しくかき混ぜても溶解しなかった。
【0047】
<吐出不良の改善性評価>
インクジェットプリンター(PX−105 セイコーエプソン(株)製)に水性インクジェットインク組成物Aを充填し、A4サイズの紙に10枚連続でベタ印字を行ってインクが充填されていることを確認した。その後、水性インクジェットインク組成物Aが記録ヘッドの中に充填された状態で50℃のオーブンに3ヵ月間放置した。放置後、ノズルチェック印字を行うと、インクの吐出不良が起こるノズルが複数確認された(ピン抜け)。インクの吐出不良が起こった記録ヘッドに、初期充填モードで実施例1〜10および比較例1、3、6および7のそれぞれの洗浄液を充填し、吐出不良の改善性を以下の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
◎:初期充填シーケンスのみで全ノズルが回復し、吐出不良が改善した。
○:初期充填シーケンス後にクリーニング操作を1〜2回行うことにより、全ノズルが回復し、吐出不良が改善した。
△:初期充填シーケンス後にクリーニング操作を3回行うことにより、全ノズルが回復し、吐出不良が改善した。
×:初期充填シーケンス後にクリーニング操作を3回行っても、ピン抜けが起こり、吐出不良が改善されなかった。
【0048】
【表1】
【0049】
表1に示されるように、実施例1〜10の充填剤は、いずれも、泡抜けが良好であり、かつ、乾燥皮膜の溶解性や、吐出不良の改善性も良好であった。一方、HLBの大きなアルキレンオキサイド付加物を使用した比較例1の充填液は、泡抜けが悪い結果となった。また、アルキレンオキサイド付加物の含有量の少なかった比較例2の充填液は、混和性が悪く、アルキレンオキサイド付加物が分離する結果となった。アルキレンオキサイド付加物の含有量の少なかった比較例3の充填液は、泡抜けが悪く、アルキレンオキサイド付加物の含有量の多かった比較例4の充填液は、混和性が悪く、アルキレンオキサイド付加物が分離する結果となった。また、保湿剤の含有量の少なかった比較例5の充填液についても、アルキレンオキサイド付加物が分離する結果となった。一方で、保湿剤の含有量の多かった比較例6の充填液は、粘度が高くなり、インクジェットヘッドに充填しにくく、また、泡抜けも悪い結果となった。また、pH調整剤を用いて、pHを7にした比較例7の充填液は、乾燥皮膜の溶解性や吐出不良の改善性が悪い結果となった。