(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の保護液ノズルは、前記第1の噴射領域の前記移動軌跡の延長線に対し平面視で上流側に所定の鋭角傾斜する第1の入射方向から前記第1の着液位置に前記保護液が入射するように前記保護液を吐出し、
前記第2の保護液ノズルは、前記第1の噴射領域の前記移動軌跡の延長線に対し平面視で上流側に所定の鋭角傾斜する第2の入射方向から前記第2の着液位置に前記保護液が入射するように前記保護液を吐出する、請求項1に記載の基板処理装置。
前記第1の保護液ノズルは、前記第1の着液位置に着液した前記保護液が、前記第1の噴射領域の前記移動軌跡だけでなく、前記第2の噴射領域の前記移動軌跡の一部をも覆うように設けられており、ならびに/または、
前記第2の保護液ノズルは、前記第2の着液位置に着液した前記保護液が、前記第2の噴射領域の前記移動軌跡だけでなく、前記第1の噴射領域の前記移動軌跡の一部をも覆うように設けられている、請求項1または2に記載の基板処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような基板処理装置を用いて、基板の上面に、たとえば洗浄処理が施される。基板の洗浄処理では、近年極めて高い洗浄性能(パーティクル除去性能)が求められている。高い清浄性能を実現するために、液滴ノズルの噴射圧を高めることも考えられる。しかしながら、液滴ノズルの噴射圧を上げると基板の上面にダメージを与えるおそれがあるから、この手法は採用できない。すなわち、基板の上面に与えるダメージを抑制しながら、液滴ノズルからの処理液を用いて基板の上面を良好に処理することが求められている。
【0005】
また、特許文献1の手法では、保護液ノズルからの保護液を、液滴ノズルの下方領域に斜め方向から入射させる必要があるため、保護液ノズルは低い位置に配置されることが多い。したがって、基板の回転状態における基板の撓みの程度によっては、回転状態にある基板が、保護液ノズルの下端に接触するおそれもある。このような保護液ノズルと基板との接触を確実に防止することが望ましい。
【0006】
そこで、この発明の一の目的は、基板のダメージを抑制しながら、処理液の液滴により処理効率を増大させることができる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
また、この発明の他の目的は、保護液ノズルと基板との接触を確実に防止できる基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、基板を水平に保持する基板保持ユニットと、前記基板保持ユニットによって保持された基板を、鉛直な回転軸線まわりに回転させる回転ユニットと、前記基板保持ユニットによって保持された基板の上面内の所定の第1の噴射領域に処理液の液滴を吹き付ける第1の液滴ヘッド部と、当該基板の上面内における、前記第1の噴射領域とは異なる所定の第2の噴射領域に処理液の液滴を吹き付ける第2の液滴ヘッド部とを有する液滴ノズルと、前記第1の液滴ヘッド部および前記第2の液滴ヘッド部が取り付けられたノズルアームと、前記第1の噴射領域および前記第2の噴射領域を移動させるべく、前記ノズルアームを前記基板の上面に沿って所定の範囲で移動させるアーム移動ユニットと、前記ノズルアームとは異なる所定の部材に支持され、前記ノズルアームの移動に伴う
前記第1の噴射領域の移動軌跡、および前記ノズルアームの移動に伴う
前記第2の噴射領域の移動軌跡を覆う保護液の液膜を前記基板の上面に形成するために、前記基板の上面に向けて保護液を吐出する複数の保護液ノズルとを含み、前記複数の保護液ノズルは、専ら前記第1の噴射領域を保護液で覆うために、前記基板の上面における所定の第1の着液位置に向けて前記保護液を吐出する第1の保護液ノズルと、専ら前記第2の噴射領域を保護液で覆うために、前記基板の上面における所定の第2の着液位置に向けて前記保護液を吐出する第2の保護液ノズルとを含む、基板処理装置を提供する。
【0008】
この構成によれば、液滴ノズルの第1の液滴ヘッド部が基板の上面内の第1の噴射領域に処理液の液滴を吹き付ける。また、液滴ノズルの第2の液滴ヘッド部が基板の上面内の第2の噴射領域に処理液の液滴を吹き付ける。また、基板を回転させながら、第1の噴射領域および第2の噴射領域を基板の上面内を移動させることにより、第1の噴射領域および第2の噴射領域を、基板の上面を走査させることができる。
【0009】
第1の噴射領域および第2の噴射領域に処理液の液滴を同時に吹き付ける場合には、1つの噴射領域に液滴を吹き付ける場合と比較して、液滴の吹き付け面積を増大させることができる。これにより、処理液の液滴により処理効率を増大させることができる。液滴ヘッド部からの噴射圧の増大ではなく、噴射領域の面積の増大により、処理液の液滴により処理効率を増大させることができるので、基板の上面に与えるダメージがほとんどない。
【0010】
また、第1の保護液ノズルおよび第2の保護液ノズルから吐出される保護液によって、基板の上面に保護液の液膜が形成される。第1の保護液ノズルからの保護液の着液位置等、および第2の保護液ノズルからの保護液の着液位置等をそれぞれ最適化することにより、その保護液の液膜によって、第1の噴射領域の移動軌跡および第2の噴射領域の移動軌跡を覆うことができる。そのため、第1の噴射領域の位置によらずに当該第1の噴射領域を保護液で覆うことができ、かつ第2の噴射領域の位置によらずに当該第2の噴射領域を保護液で覆うことができる。これにより、基板のダメージを抑制できる。
【0011】
ゆえに、基板のダメージを抑制しながら、処理液の液滴により処理効率を増大させることができる基板処理装置を提供できる。
また、第1の保護液ノズルおよび第2の保護液ノズルが、第1の液滴ヘッド部および第2の液滴ヘッド部が取り付けられているノズルアームとは異なる部材によって支持されている。この場合、第1の保護液ノズルおよび第2の保護液ノズルが、それぞれ、第1の液滴ヘッド部および第2の液滴ヘッド部と離れて配置される。そのため、第1の保護液ノズルおよび第2の保護液ノズルを、基板の上面内において、保護液ノズルの下端を対応する液滴ヘッド部の下端より低くなるように設定する必要はないから、保護液ノズルと基板との接触が生じることはない。ゆえに、保護液ノズルと基板との接触を確実に防止できる基板処理装置を提供することができる。
【0012】
この発明の一実施形態では、前記アーム移動ユニットは、前記第1の噴射領域および前記第2の噴射領域を前記基板の周縁部と前記基板の中央部との間で移動させるものである。
そして、前記第1の着液位置は、着液した前記保護液が、前記第1の噴射領域の移動軌跡の最も中央部寄りの位置に供給されるような位置である。
そして、前記第2の着液位置は、着液した前記保護液が、前記第2の噴射領域の移動軌跡の最も中央部寄りの位置に供給されるような位置であ
る。
前記第1の着液位置は、前記第1の噴射領域の前記移動軌跡の延長線上に位置していることが好ましい。前記第2の着液位置は、前記第2の噴射領域の前記移動軌跡の延長線上に位置していることが好ましい。
前記第1の着液位置に着液した前記保護液および前記第2の着液位置に着液した前記保護液によって、前記第1の噴射領域の移動軌跡の全域および前記第2の噴射領域の移動軌跡の全域が覆われることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、第1の着液位置および第2の着液位置をそれぞれ最適化することにより、第1の移動軌跡および第2の噴射領域を良好に覆う保護液の液膜を形成することができる。そのため、第1の液滴ヘッド部および第2の液滴ヘッド部をノズルアームとは異なる部材に取り付けた場合であっても、移動する第1の噴射領域および第2の噴射領域の位置によらずに、第1の噴射領域および第2の噴射領域を保護液によって覆い続けることができる。これにより、基板のダメージを抑制できる。
【0014】
この発明の一実施形態では、前記アーム移動ユニットは、前記第1の噴射領域および前記第2の噴射領域を前記基板の周縁部と前記基板の中央部との間で移動させるものである。
そして、前記第1の保護液ノズルは、前記第1の着液位置に対し前記第1の噴射領域の移動軌跡と反対側から当該第1の着液位置に向けて前記保護液を吐出する。
そして、前記第2の保護液ノズルは、前記第2の着液位置に対し前記第2の噴射領域の移動軌跡と反対側から当該第2の着液位置に向けて前記保護液を吐出す
る。
【0015】
この構成によれば、第1の着液位置および第2の着液位置への保護液の入射方向をそれぞれ最適化することにより、第1の移動軌跡および第2の噴射領域を良好に覆う保護液の液膜を形成することができる。そのため、第1の液滴ヘッド部および第2の液滴ヘッド部をノズルアームとは異なる部材に取り付けた場合であっても、移動する第1の噴射領域および第2の噴射領域の位置によらずに、第1の噴射領域および第2の噴射領域を保護液によって覆い続けることができる。これにより、基板のダメージを抑制できる。
【0016】
この発明の一実施形態では、前記第1の保護液ノズルは、前記第1の噴射領域の前記移動軌跡の延長線に対し平面視で上流側に所定の鋭角傾斜する第1の入射方向から前記第1の着液位置に前記保護液が入射するように前記保護液を吐出
する。そして、前記第2の保護液ノズルは、前記第1の噴射領域の前記移動軌跡の延長線に対し平面視で上流側に所定の鋭角傾斜する第2の入射方向から前記第2の着液位置に前記保護液が入射するように前記保護液を吐出する。
【0017】
この構成によれば、第1の着液位置および第2の着液位置への保護液の入射方向をそれぞれより一層最適化することにより、第1の移動軌跡および第2の噴射領域を、より一層良好に覆う保護液の液膜を形成することができる。
この発明の一実施形態では、前記第1の保護液ノズルは、前記第1の着液位置に着液した前記保護液が、前記第1の噴射領域の前記移動軌跡だけでなく、前記第2の噴射領域の前記移動軌跡の一部をも覆うように設けられており、ならびに/または、前記第2の保護液ノズルは、前記第2の着液位置に着液した前記保護液が、前記第2の噴射領域の前記移動軌跡だけでなく、前記第1の噴射領域の前記移動軌跡の一部をも覆うように設けられてい
る。
【0018】
この構成によれば、第1の保護液ノズルから吐出された保護液が、第1の噴射領域の移動軌跡だけでなく、第2の噴射領域の移動軌跡の少なくとも一部をも覆う。あるいは/さらに、第2の保護液ノズルから吐出された保護液が、第1の噴射領域の移動軌跡だけでなく、第1の噴射領域の移動軌跡の少なくとも一部をも覆う。これにより、第1の保護液ノズルおよび第2の保護液ノズルをノズルアームとは異なる部材に取り付けた場合であっても、当該第1の保護液ノズルおよび第2の保護液ノズルから吐出される保護液による保護液の液膜によって、第1の噴射領域の移動軌跡および第2の噴射領域の移動軌跡を覆うことができる。
【0019】
この発明の一実施形態では、前記基板処理装置が、前記基板保持ユニットの周囲を包囲する処理カップをさらに含
む。そして、前記
第1および第2の保護液ノズルは、前記処理カップに固定されてい
る。
この構成によれば、固定ノズル(第1の保護液ノズルおよび第2の保護液ノズル)を、基板保持ユニットの周囲に良好に配置することができる。
【0020】
この発明の一実施形態では、前記第1の噴射領域および前記第2の噴射領域は長手を有し
ている。そして、前記第1の液滴ヘッド部および前記第2の液滴ヘッド部は、前記第1の液滴ヘッド部および前記第2の液滴ヘッド部が前記基板の周縁部上に配置されている状態で、前記第1の噴射領域および前記第2の噴射領域がそれぞれ基板の周端縁に沿って配置されるように、前記ノズルアームに取り付けられてい
る。
【0021】
この構成によれば、第1および第2の噴射領域が周縁部上に配置されているときに、第1の液滴ヘッド部および第2の液滴ヘッド部が基板の周端縁に沿っている。これにより、処理液の液滴の基板外への吹き付けを抑制しながら、基板の上面の周縁部を漏れなく洗浄できる。
この発明の一実施形態では、前記第1の液滴ヘッド部と前記第2の液滴ヘッド部とは、別個に設けられてい
る。
【0022】
この構成によれば、第1の液滴ヘッド部と第2の液滴ヘッド部とが別個に設けられているので、第1の液滴ヘッド部と第2の液滴ヘッド部とを一部材で設ける場合と比較して、第1の液滴ヘッド部または第2の液滴ヘッド部の交換等が容易である。
この発明の一実施形態では、前記第1および第2の保護液ノズルの下端が、前記第1の液滴ヘッド部および前記第2の液滴ヘッド部の下端よりも上方に位置している。
この発明は、基板を水平に保持する基板保持工程と、前記基板を、鉛直な回転軸線まわりに回転させる回転工程と、前
記基板の上面内の所定の第1の噴射領域に、第1の液滴ヘッド部からの処理液の液滴を吹き付け、かつ当該基板の上面内における、前記第1の噴射領域とは異なる所定の第2の噴射領域に、第2の液滴ヘッド部からの処理液の液滴を吹き付ける液滴供給工程と、前記第1の液滴ヘッド部および前記第2の液滴ヘッド部を支持するノズルアームを除く所定の部材に支持された複数の保護液ノズルから保護液を吐出して、前記ノズルアームの移動に伴う
前記第1の噴射領域の移動軌跡、および前記ノズルアームの移動に伴う
前記第2の噴射領域の移動軌跡を覆う保護液の液膜を前記基板の上面に形成する保護液液膜工程と、前記第1の噴射領域および前記第2の噴射領域を移動させるべく前記
ノズルアームを移動させるアーム移動工程とを含み、前記保護液液膜工程は、専ら前記第1の噴射領域を保護液で覆うために、第1の保護液ノズルから前記保護液を、前記基板の上面における所定の第1の着液位置に向けて吐出する第1の吐出工程と、専ら前記第2の噴射領域を保護液で覆うために、前記第1の吐出工程に並行して、第1の保護液ノズルから前記保護液を、前記基板の上面における所定の第2の着液位置に向けて吐出する第2の吐出工程とを含む、基板処理方法を提供する。
【0023】
この方法によれば、第1の液滴ヘッド部が基板の上面内の第1の噴射領域に処理液の液滴を吹き付ける。また、第2の液滴ヘッド部が基板の上面内の第2の噴射領域に処理液の液滴を吹き付ける。また、基板を回転させながら、第1の噴射領域および第2の噴射領域を基板の上面内を移動させることにより、第1の噴射領域および第2の噴射領域を、基板の上面を走査する。
【0024】
第1の噴射領域および第2の噴射領域に処理液の液滴を同時に吹き付けるので、1つの液滴ヘッド部から1つの噴射領域に液滴を吹き付ける場合と比較して、液滴の吹き付け面積を増大させることができる。これにより、処理液の液滴により処理効率を増大させることができる。液滴ヘッド部からの噴射圧の増大ではなく、噴射領域の面積の増大により、処理液の液滴により処理効率を増大させることができるので、基板の上面に与えるダメージがほとんどない。
【0025】
また、第1の保護液ノズルおよび第2の保護液ノズルから吐出される保護液によって、基板の上面に保護液の液膜が形成される。第1の保護液ノズルからの保護液の着液位置等、および第2の保護液ノズルからの保護液の着液位置等をそれぞれ最適化することにより、その保護液の液膜によって、第1の噴射領域の移動軌跡(の全域)および第2の噴射領域の移動軌跡(の全域)を覆うことができる。そのため、第1の噴射領域の位置によらずに当該第1の噴射領域を保護液で覆うことができ、かつ第2の噴射領域の位置によらずに当該第2の噴射領域を保護液で覆うことができる。これにより、基板のダメージを抑制できる。
【0026】
ゆえに、基板のダメージを抑制しながら、液滴ノズルからの処理液を用いて基板の上面を良好に処理できる基板処理方法を提供できる。
この発明の一実施形態では、前記保護液液膜工程は、前記第1の吐出工程が前記第1の着液位置に向けて薬液を吐出し、前記第2の吐出工程が前記第2の着液位置に向けて温水を吐出する第1の吐出状態と、前記第1の吐出工程が前記第1の着液位置に向けて前記温水を吐出し、前記第2の吐出工程が前記第2の着液位置に向けて前記薬液を吐出する第2の吐出状態とを切り換える吐出状態切り換え工程をさらに含
む。
【0027】
この方法によれば、薬液による処理の面内均一性を保ちながら、薬液の消費量の低減を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1の内部のレイアウトを説明するための図解的な平面図である。基板処理装置1は、半導体ウエハなどの基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。この実施形態では、基板Wは、円板状の基板である。基板処理装置1は、処理液で基板Wを処理する複数の処理ユニット2と、処理ユニット2で処理される複数枚の基板Wを収容するキャリヤCが載置されるロードポートLPと、ロードポートLPと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送ロボットIRおよびCRと、基板処理装置1を制御する制御装置3とを含む。搬送ロボットIRは、キャリヤCと基板搬送ロボットCRとの間で基板Wを搬送する。基板搬送ロボットCRは、搬送ロボットIRと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。複数の処理ユニット2は、たとえば、同様の構成を有している。
【0030】
図2は、処理ユニット2の構成例を説明するための図解的な断面図である。
図3は、液滴ノズル6およびこれに関連する構成を説明するための平面図である。
基板処理装置1は、基板Wを水平に保持して回転させるスピンチャック5(基板保持ユニット)と、処理ユニット2は、箱形のチャンバ4と、チャンバ4内で一枚の基板Wを水平な姿勢で保持して、基板Wの中心を通る鉛直な回転軸線A1まわりに基板Wを回転させるスピンチャック5と、互いに別個に設けられた第1の液滴ヘッド部7および第2の液滴ヘッド部8を有し、基板Wに処理液の液滴を衝突させる液滴ノズル6と、第1の液滴ヘッド部7および第2の液滴ヘッド部8が取り付けられたノズルアーム9と、ノズルアーム9を鉛直な揺動軸線A2まわりに揺動させるアーム移動ユニット10と、基板Wに保護液を供給する第1の保護液ノズル11と、基板Wに保護液を供給する第2の保護液ノズル12と、基板Wにリンス液を供給するリンス液供給ユニット13と、スピンチャック5を取り囲む筒状の処理カップ14とを含む。
【0031】
チャンバ4は、箱状の隔壁15と、隔壁15の上部から隔壁15内(チャンバ4内に相当)に清浄空気を送る送風ユニットとしてのFFU(ファン・フィルタ・ユニット)16と、隔壁15の下部からチャンバ4内の気体を排出する排気装置(図示しない)とを含む。
FFU16は隔壁15の上方に配置されており、隔壁15の天井に取り付けられている。FFU16は、隔壁15の天井からチャンバ4内に清浄空気を送る。排気装置は、処理カップ14内に接続された排気ダクト17を介して処理カップ14の底部に接続されており、処理カップ14の底部から処理カップ14の内部を吸引する。FFU16および排気装置により、チャンバ4内にダウンフロー(下降流)が形成される。
【0032】
スピンチャック5として、基板Wを水平方向に挟んで基板Wを水平に保持する挟持式のチャックが採用されている。具体的には、スピンチャック5は、スピンモータ18(回転ユニット)と、このスピンモータ18の駆動軸と一体化されたスピン軸19と、スピン軸19の上端に略水平に取り付けられた円板状のスピンベース20とを含む。
スピンベース20は、基板Wの外径(たとえば約450mm)よりも大きな外径を有する水平な円形の上面20aを含む。上面20aには、その周縁部に複数個(3個以上。たとえば4個)の挟持部材21(
図3を併せて参照)が配置されている。複数個の挟持部材21は、スピンベース20の上面周縁部において、基板Wの外周形状に対応する円周上で適当な間隔を空けてたとえば等間隔に配置されている。
【0033】
また、スピンチャック5としては、挟持式のものに限らず、たとえば、基板Wの裏面を真空吸着することにより、基板Wを水平な姿勢で保持し、さらにその状態で鉛直な回転軸線まわりに回転することにより、スピンチャック5に保持されている基板Wを回転させる真空吸着式のもの(バキュームチャック)が採用されてもよい。
第1の液滴ヘッド部7および第2の液滴ヘッド部8は、それぞれ、インクジェット方式によって多数の液滴を噴射するインクジェットノズルである。第1の液滴ヘッド部7および第2の液滴ヘッド部8は、この実施形態では、薬液(SC1(NH
4OHとH
2O
2とを含む液))の液滴を吐出する。
【0034】
リンス液供給ユニット13は、リンス液ノズル22を含む。リンス液ノズル22は、たとえば、連続流の状態で液を吐出するストレートノズルであり、スピンチャック5の上方で、その吐出口を基板Wの上面中央部に向けて固定的に配置されている。リンス液ノズル22には、リンス液供給源からのリンス液が供給されるリンス液配管23が接続されている。リンス液配管23の途中部には、リンス液ノズル22からのリンス液の吐出/供給停止を切り換えるためのリンス液バルブ24が介装されている。リンス液バルブ24が開かれると、リンス液配管23からリンス液ノズル22に供給された連続流のリンス液が、リンス液ノズル22の下端に設定された吐出口から吐出される。また、リンス液バルブ24が閉じられると、リンス液配管23からリンス液ノズル22へのリンス液の吐出が停止される。リンス液は、たとえば脱イオン水(DIW)であるが、DIWに限らず、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水および希釈濃度(たとえば、10ppm〜100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。
【0035】
また、リンス液ノズル22は、それぞれ、スピンチャック5に対して固定的に配置されている必要はなく、たとえば、スピンチャック5の上方において水平面内で揺動可能なアームに取り付けられて、このアームの揺動により基板Wの上面におけるリンス液の着液位置がスキャンされる、いわゆるスキャンノズルの形態が採用されてもよい。
図2に示すように、処理カップ14は、スピンチャック5を取り囲む、基板Wの周囲に飛散した処理液(薬液およびリンス液)を受け止めるための複数(
図2ではたとえば4つ)のガード25,26,27,28と、個々のガードを独立して昇降させるガード昇降ユニットとを含む。処理カップ14は折り畳み可能であり、ガード昇降ユニットがガード25,26,27,28のうち少なくとも一つを昇降させることにより、処理カップ14の展開および折り畳みが行われる。
【0036】
ノズルアーム9は水平方向に延びている。その先端部に第1の液滴ヘッド部7が取り付けられ、第1の液滴ヘッド部7よりも基端側に第2の液滴ヘッド部8が取り付けられている。ノズルアーム9には、アーム移動ユニット10が結合されている。
アーム移動ユニット10は、ノズルアーム9を揺動軸線A2周りに揺動させるノズル揺動ユニットとして機能する。アーム移動ユニット10はたとえばモータを含む。アーム移動ユニット10は、スピンチャック5の上方を含む水平面内で液滴ノズル6(第1の液滴ヘッド部7および第2の液滴ヘッド部8)を水平に移動させる。
【0037】
図3に示すように、アーム移動ユニット10は、スピンチャック5に保持された基板Wの上面に沿って延びる第1の円弧軌道X1に沿って第1の液滴ヘッド部7を水平に移動させる。第1の円弧軌道X1は、スピンチャック5に保持された基板Wの上面に垂直な垂直方向(鉛直方向)から見たときに基板Wの上面に重ならない2つの位置を結び、鉛直方向から見たときに基板Wの上面の回転軸線A1を通る曲線である。また、アーム移動ユニット10は、スピンチャック5に保持された基板Wの上面に沿って延びる第2の円弧軌道X2に沿って第2の液滴ヘッド部8を水平に移動させる。第2の円弧軌道X2は、第1の円弧軌道X1と同心かつ小径の曲線である。
【0038】
また、アーム移動ユニット10は、アーム揺動ユニットだけでなく、ノズルを昇降させるためのノズル昇降機構としても機能する。ノズル移動ユニットは、たとえば、ボールねじ機構と、このボールねじ機構を駆動するモータとを含む。アーム移動ユニット10は、ノズルアーム9を鉛直方向に昇降させる。液滴ノズル6は、ノズルアーム9と共に鉛直方向に昇降する。これにより、液滴ノズル6が鉛直方向に移動する。
【0039】
液滴ノズル6がスピンチャック5に保持された基板Wの上方に位置する状態で、アーム移動ユニット10が液滴ノズル6を降下させると、第1の液滴ヘッド部7および第2の液滴ヘッド部8が、基板Wの上面に近接する。処理液の液滴を基板Wに衝突させるときは、第1の液滴ヘッド部7および第2の液滴ヘッド部8が基板Wの上面に近接している状態(近接位置。
図4および
図9A等に示す位置)で、制御装置3が、アーム移動ユニット10を制御して、ノズルアーム9を揺動軸線A2周りに揺動させる。これにより、第1の液滴ヘッド部7が第1の円弧軌道X1に沿って水平に移動すると共に、第2の液滴ヘッド部8が第2の円弧軌道X2に沿って水平に移動する。
【0040】
第1の保護液ノズル11および第2の保護液ノズル12は、処理カップ14の最も外側のガード28の先端部(上端部)に固定されたノズルホルダ29に保持されている。第1の保護液ノズル11および第2の保護液ノズル12は、それぞれ、たとえば、連続流の状態で液を吐出するストレートノズルであり、その吐出口を基板Wの上面に向けて固定的に配置されている。第1の保護液ノズル11は、専ら、第1の噴射領域T1を保護液で覆うための保護液ノズルであり、第2の保護液ノズル12は、専ら、第2の噴射領域T2を保護液で覆うための保護液ノズルである。
【0041】
第1の保護液ノズル11は、第1の保護液供給管30に接続されている。第1の保護液供給管30には、保護液供給源からの保護液が供給される。第1の保護液供給管30には、第1の保護液供給管30を開閉するための第1の保護液バルブ31、および第1の保護液供給管30の開度を調整して吐出流量を調整するための第1の流量調整バルブ32が、第1の保護液ノズル11側からこの順に介装されている。図示はしないが、第1の流量調整バルブ32は、弁座が内部に設けられたバルブボディと、弁座を開閉する弁体と、開位置と閉位置との間で弁体を移動させるアクチュエータとを含む。他の流量調整バルブについても同様である。第1の保護液バルブ31が開かれると、第1の保護液ノズル11から保護液が吐出される。また、第1の保護液ノズル11からの保護液の吐出流量は、制御装置3が第1の流量調整バルブ32の開度を調整することにより変更可能である。
【0042】
第2の保護液ノズル12は、第2の保護液供給管33に接続されている。第2の保護液供給管33には、保護液供給源からの保護液が供給される。第2の保護液供給管33には、第2の保護液供給管33を開閉するための第2の保護液バルブ34、および第2の保護液供給管33の開度を調整して吐出流量を調整するための第2の流量調整バルブ35が、第2の保護液ノズル12側からこの順に介装されている。第2の保護液バルブ34が開かれると、第2の保護液ノズル12から保護液が吐出される。また、第2の保護液ノズル12からの保護液の吐出流量は、制御装置3が第2の流量調整バルブ35の開度を調整することにより変更可能である。
【0043】
第1の保護液ノズル11や第2の保護液ノズル12から吐出される保護液は、SC1などの薬液や水を例示できるが、この実施形態では、処理液と同じ種類の液(つまりSC1)が採用される。
図4は、第1の液滴ヘッド部7および第2の液滴ヘッド部8の模式的な側面図である。
図5A,5Bは、第1の液滴ヘッド部7および第2の液滴ヘッド部8の拡大平面図である。
図4には、第1の液滴ヘッド部7および第2の液滴ヘッド部8からの処理液の液滴を用いて基板Wの上面が処理されている状態が示されている。以下、
図4および
図5A,5Bを参照して、第1の液滴ヘッド部7および第2の液滴ヘッド部8について説明する。
【0044】
第1の液滴ヘッド部7および第2の液滴ヘッド部8は、互いに共通の諸元を有している。第1の液滴ヘッド部7および第2の液滴ヘッド部8は横方向に並んでおり、それぞれの下端位置高さが互いに揃っている。
図4に示すように、第1の液滴ヘッド部7は、処理液の液滴を噴射する第1の本体36Aと、第1の本体36Aを覆う第1のカバー37Aと、第1のカバー37Aによって覆われた第1の圧電素子(piezo element)38Aと、第1の本体36Aと第1のカバー37Aとの間に介在し、第1のカバー37Aの内部を密閉する第1のシール39Aとを含む。第1の圧電素子38Aは、第1の配線49Aを介して、たとえばインバータを含む電圧印加ユニット50に接続されている。第1の配線49Aの端部は、たとえば半田(solder)によって、第1のカバー37Aの内部で第1の圧電素子38Aに接続されている。電圧印加ユニット50から交流電圧が第1の圧電素子38Aに印加されると、印加された交流電圧の周波数に対応する周波数で第1の圧電素子38Aが振動する。制御装置3は、電圧印加ユニット50を制御することにより、第1の圧電素子38Aに印加される交流電圧の周波数を任意の周波数(たとえば、数百KHz〜数MHz)に変更することができる。すなわち、制御装置3は、第1の圧電素子38Aの振動の周波数を制御する。
【0045】
図1に示すように、第1の液滴ヘッド部7には、第1の処理液供給管40Aを介して処理液供給ユニット41が接続されている。また、第1の液滴ヘッド部7には、第1の処理液排出管42Aが接続されている。第1の処理液排出管42Aは、排出バルブ43を介して機外の排液配管に接続されている。処理液供給ユニット41は、たとえばポンプを含む。処理液供給ユニット41は、常時、所定圧力(たとえば、10MPa以下)で処理液を第1の液滴ヘッド部7に供給している。制御装置3は、処理液供給ユニット41を制御することにより、第1の液滴ヘッド部7に供給される処理液の圧力(つまり、第1の液滴ヘッド部7からの処理液の液滴の噴射圧)を任意の圧力に変更することができる。
【0046】
図4に示すように、第1の本体36Aは、処理液が供給される第1の供給口44Aと、第1の供給口44Aに供給された処理液を排出する第1の排出口45Aと、第1の供給口44Aと第1の排出口45Aとを接続する第1の処理液流通路46Aと、第1の処理液流通路46Aに接続された複数の第1の噴射口47Aとを含む。第1の処理液流通路46Aは、第1の本体36Aの内部に設けられている。第1の供給口44A、第1の排出口45A、および第1の噴射口47Aは、第1の本体36Aの下面7aで開口している。第1の本体36Aの下面7aは、たとえば、水平な平坦面であり、第1の噴射口47Aは、第1の本体36Aの下面7aで開口している。第1の噴射口47Aは、たとえば数μm〜数十μmの直径を有する微細孔である。第1の処理液供給管40Aおよび第1の処理液排出管42Aは、それぞれ、第1の供給口44Aおよび第1の排出口45Aに接続されている。
【0047】
第1の噴射口47Aは、第1の本体36Aの下面8aに形成された底面視略矩形の第1の噴射口形成領域48Bに複数(たとえば数十個)形成されている。第1の噴射口47Aは、複数(
図5Aおよび
図5Bでは、たとえば4つ)の列L1を構成している。各列L1は、等間隔で配列された多数(たとえば10個以上)の第1の噴射口47Aによって構成されている。各列L1は、水平な長手方向D3に沿って直線状に延びている。各列L1は、直線状に限らず、曲線状であってもよい。4つの列L1は、互いに平行である。4つの列L1のうちの2つの列Lは、長手方向D3に直交する水平な方向に隣接している。同様に、残り2つの列L1も、長手方向D3に直交する水平な方向に隣接している。
【0048】
処理液供給ユニット41は、常時、高圧で処理液を第1の液滴ヘッド部7に供給している。第1の処理液供給管40Aを介して処理液供給ユニット41から第1の供給口44Aに供給された処理液は、第1の処理液流通路46Aに供給される。排出バルブ16が閉じられている状態では、第1の処理液流通路46Aでの処理液の圧力(液圧)が高い。そのため、排出バルブ43が閉じられている状態では、液圧によって各第1の噴射口47Aから処理液が噴射される。さらに、排出バルブ43が閉じられている状態で、交流電圧が第1の圧電素子38Aに印加されると、第1の処理液流通路46Aを流れる処理液に第1の圧電素子38Aの振動が付与され、各第1の噴射口47Aから噴射される処理液が、この振動によって分断される。そのため、排出バルブ43が閉じられている状態で、交流電圧が第1の圧電素子38Aに印加されると、処理液の液滴が各第1の噴射口47Aから噴射される。これにより、粒径が均一な多数の処理液の液滴が均一な速度で同時に噴射される。
【0049】
一方、排出バルブ43が開かれている状態では、第1の処理液流通路46Aでの液圧が十分に上昇していないため、第1の処理液流通路46Aに供給された処理液は、微細孔である第1の噴射口47Aから噴射されずに、第1の排出口45Aから第1の処理液排出管42Aに排出される。
図4に示すように、第2の液滴ヘッド部8は、処理液の液滴を噴射する第2の本体36Bと、第2の本体36Bを覆う第2のカバー37Bと、第2のカバー37Bによって覆われた第2の圧電素子(piezo element)38Bと、第2の本体36Bと第2のカバー37Bとの間に介在し、第2のカバー37Bの内部を密閉する第2のシール39Bとを含む。第2の圧電素子38Bは、第2の配線49Bを介して、たとえばインバータを含む電圧印加ユニット50に接続されている。第2の配線49Bの端部は、たとえば半田(solder)によって、第2のカバー37Bの内部で第2の圧電素子38Bに接続されている。電圧印加ユニット50から交流電圧が第2の圧電素子38Bに印加されると、印加された交流電圧の周波数に対応する周波数で第2の圧電素子38Bが振動する。制御装置3は、電圧印加ユニット50を制御することにより、第2の圧電素子38Bに印加される交流電圧の周波数を任意の周波数(たとえば、数百KHz〜数MHz)に変更することができる。すなわち、制御装置3は、第2の圧電素子38Bの振動の周波数を制御する。
【0050】
図1に示すように、第2の液滴ヘッド部8には、第2の処理液供給管40Bを介して処理液供給ユニット41が接続されている。また、第2の液滴ヘッド部8には、第2の処理液排出管42Bが接続されている。第2の処理液排出管42Bは、排出バルブ43を介して機外の排液配管に接続されている。処理液供給ユニット41は、常時、所定圧力(たとえば、10MPa以下)で処理液を第2の液滴ヘッド部8に供給している。制御装置3は、処理液供給ユニット41を制御することにより、第2の液滴ヘッド部8に供給される処理液の圧力(つまり、第2の液滴ヘッド部8からの処理液の液滴の噴射圧)を任意の圧力に変更することができる。
【0051】
図4に示すように、第2の本体36Bは、処理液が供給される第2の供給口44Bと、第2の供給口44Bに供給された処理液を排出する第2の排出口45Bと、第2の供給口44Bと第2の排出口45Bとを接続する第2の処理液流通路46Bと、第2の処理液流通路46Bに接続された複数の第2の噴射口47Bとを含む。第2の処理液流通路46Bは、第2の本体36Bの内部に設けられている。第2の供給口44B、第2の排出口45B、および第2の噴射口47Bは、第2の本体36Bの下面8aで開口している。第2の本体36Bの下面8aは、たとえば、水平な平坦面であり、第2の噴射口47Bは、第2の本体36Bの下面8aで開口している。第2の噴射口47Bは、たとえば数μm〜数十μmの直径を有する微細孔である。第2の処理液供給管40Bおよび第2の処理液排出管42Bは、それぞれ、第2の供給口44Bおよび第2の排出口45Bに接続されている。
【0052】
第2の噴射口47Bは、第2の本体36Bの下面8aに形成された底面視略矩形の第2の噴射口形成領域48Bに複数(たとえば数十個)形成されている。第2の噴射口47Bは、複数(
図5Aおよび
図5Bでは、たとえば4つ)の列L2を構成している。各列L2は、等間隔で配列された多数(たとえば10個以上)の第2の噴射口47Bによって構成されている。各列L2は、水平な長手方向D4に沿って直線状に延びている。各列L2は、直線状に限らず、曲線状であってもよい。4つの列L2は、互いに平行である。4つの列L2のうちの2つの列Lは、長手方向D4に直交する水平な方向に隣接している。同様に、残り2つの列L2も、長手方向D4に直交する水平な方向に隣接している。
【0053】
処理液供給ユニット41は、常時、高圧で処理液を第2の液滴ヘッド部8に供給している。第2の処理液供給管40Bを介して処理液供給ユニット41から第2の供給口44Bに供給された処理液は、第2の処理液流通路46Bに供給される。排出バルブ16が閉じられている状態では、第2の処理液流通路46Bでの処理液の圧力(液圧)が高い。そのため、排出バルブ43が閉じられている状態では、液圧によって各第2の噴射口47Bから処理液が噴射される。さらに、排出バルブ43が閉じられている状態で、交流電圧が第2の圧電素子38Bに印加されると、第2の処理液流通路46Bを流れる処理液に第2の圧電素子38Bの振動が付与され、各第2の噴射口47Bから噴射される処理液が、この振動によって分断される。そのため、排出バルブ43が閉じられている状態で、交流電圧が第2の圧電素子38Bに印加されると、処理液の液滴が各第2の噴射口47Bから噴射される。これにより、粒径が均一な多数の処理液の液滴が均一な速度で同時に噴射される。
【0054】
一方、排出バルブ43が開かれている状態では、第2の処理液流通路46Bでの液圧が十分に上昇していないため、第2の処理液流通路46Bに供給された処理液は、微細孔である第2の噴射口47Bから噴射されずに、第2の排出口45Bから第2の処理液排出管42Bに排出される。
図4に示すように、第1の液滴ヘッド部7(第1の噴射口形成領域48A)から噴射された多数の液滴は、基板Wの上面内の第1の噴射領域T1に吹き付けられる。また、第2の液滴ヘッド部8(第2の噴射口形成領域48B)から噴射された多数の液滴は、基板Wの上面内の第2の噴射領域T2に吹き付けられる。
図3に示すように、第1の噴射領域T1は、長手方向D3に延びる平面視長方形状であり、第2の噴射領域T2は、長手方向D4に延びる平面視長方形状である。
【0055】
図3に示すように、後述する第1の基板処理例および第2の基板処理例では、洗浄工程(
図8のステップS3)において、アーム移動ユニット10がノズルアーム9を揺動させて、液滴ノズル6を中央部位置Pc(
図3に実線で図示する位置)と周縁位置Pe(
図3に一点鎖線で図示)との間で移動(たとえば往復移動)させる(ハーフスキャン)。
液滴ノズル6が中央部位置Pcに配置されているとき、第1の噴射領域T1が、基板Wの上面中央部上の第1の中央部位置Pc1に配置されると共に、噴射領域T2が、基板Wの上面中央部上の第2の中央部位置Pc2に配置される。液滴ノズル6が中央部位置Pcに配置されているときの第1の液滴ヘッド部7および第2の液滴ヘッド部8の拡大平面図を、
図5Aに示す。
【0056】
一方、液滴ノズル6が周縁位置Peに配置されているとき、第1の噴射領域T1が、基板Wの上面周縁上の第1の周縁位置Pe1に配置されると共に、第2の噴射領域T2が、基板Wの上面中央部上の第2の周縁位置Pe2に配置される。液滴ノズル6が周縁位置Peに配置されているときの第1の液滴ヘッド部7および第2の液滴ヘッド部8の拡大平面図を、
図5Bに示す。液滴ノズル6が周縁位置Peに配置されている状態では、第1の噴射領域T1の長手方向D3が基板Wの周端縁に沿い、かつ第2の噴射領域T2の長手方向D4が基板Wの周端縁に沿っている。換言すると、第1の液滴ヘッド部7および第2の液滴ヘッド部8は、液滴ノズル6が周縁位置Peに配置されている状態において第1の液滴ヘッド部7の水平方向の向きおよび第2の液滴ヘッド部8の水平方向の向きがそれぞれ基板Wの周端縁に沿うように、ノズルアーム9に取り付けられている。これにより、処理液の液滴の基板W外への吹き付けを抑制しながら、基板Wの上面の周縁部を、処理液の液滴を用いて漏れなく処理できる。
【0057】
中央部位置Pcと周縁位置Peとの間の液滴ノズル6の移動(ハーフスキャン)により、第1の噴射領域T1が、第1の中央部位置Pc1と第1の周縁位置Pe1との間を、円弧を描きながら往復移動する。また、このとき、第2の噴射領域T2が、第2の中央部位置Pc2と第2の周縁位置Pe2との間を、円弧を描きながら往復移動する。第1の噴射領域T1の移動軌跡を、以下、第1の移動軌跡X3として説明し、また、第2の噴射領域T2の移動軌跡を、以下、第2の移動軌跡X4として説明する。
【0058】
そして、基板Wが回転軸線A1周りに回転させられている状態で、液滴ノズル6が中央部位置Pcと周縁位置Peとの間で移動させられることにより、基板Wの上面全域を、第1の噴射領域T1および第2の噴射領域T2のいずれかによって走査することができる。すなわち、第1の噴射領域T1および第2の噴射領域T2の双方を合わせた走査範囲が、基板Wの上面全域に及んでいる。
【0059】
次に、第1の保護液ノズル11および第2の保護液ノズル12について説明する。
第1の保護液ノズル11は、保護液を吐出する第1の吐出口11aを有している。第1の吐出口11aはたとえば円形であるが、円形に限らず、楕円形であってもよいしスリット状であってもよい。第1の保護液ノズル11は、基板W上における第1の着液位置P1に第1の吐出口11aを向けた状態で、第1の吐出口11aから保護液を吐出する。
【0060】
図3に示すように、第1の着液位置P1は、第1の吐出口11aと第1の噴射領域T1の第1の中央部位置Pc1との間のうち、第1の中央部位置Pc1寄りの位置である。第1の着液位置P1は、着液した保護液が、第1の中央部位置Pc1に配置されている状態の第1の噴射領域T1(すなわち、第1の移動軌跡T3の最も中央部寄りの位置)に供給されるように配置されている。
【0061】
なお、基板Wの洗浄工程S3時には、処理カップ14の最も外側のガード28は常に一定の高さに保持されている(たとえばガード28の上端(先端)が基板Wの周端面よりも上方に位置する上位置に配置)。そのため、第1の吐出口11aおよび第2の吐出口12aから吐出される保護液は、基板W上の所期の位置に着液する。
図5Aに示すように、第1の吐出口11aから吐出された保護液は、基板W上における第1の着液位置P1に対して第1の入射方向D1に入射する。第1の入射方向D1は、第1の吐出口11aから第1の着液位置P1に向かう方向であるとともに、平面視において第1の吐出口11aから第1の噴射領域T1の第1の中央部位置Pc1に向かう方向である。換言すると、第1の液滴ヘッド部7は、第1の着液位置P1に対し第1の移動軌跡T3と反対側から、第1の着液位置P1に向けて保護液を吐出する。
【0062】
第1の入射方向D1は、水平方向に対して第1の着液位置P1の方へ傾けられている。すなわち、基板Wの上面に対して傾いている。基板Wの上面と第1の入射方向D1とがなす角度は、たとえば、10〜40度の範囲内における所定の角度に設定されている。
第1の入射方向D1は、第1の中央部位置Pc1における第1の移動軌跡T3の接線方向D5(
図6参照。第1の移動軌跡T3の延長線方向)に対し、基板Wの回転方向Drの上流側に傾斜している。平面視において、第1の入射方向D1と接線方向D5とがなす角度(入射角度)θH1(
図6参照)は、所定の角度(所定の鋭角)に設定されている。
【0063】
第2の保護液ノズル12は、保護液を吐出する第2の吐出口12aを有している。第2の吐出口12aはたとえば円形であるが、円形に限らず、楕円形であってもよいしスリット状であってもよい。第2の保護液ノズル12は、基板W上における第2の着液位置P2に第2の吐出口12aを向けた状態で、第2の吐出口12aから保護液を吐出する。
図3に示すように、第2の着液位置P2は、第2の吐出口12aと第2の噴射領域T2の第2の中央部位置Pc2との間のうち、第2の中央部位置Pc2寄りの位置である。第2の着液位置P2は、着液した保護液が、第2の中央部位置Pc2に配置されている状態の第2の噴射領域T2(すなわち、第2の移動軌跡T4の最も中央部寄りの位置)に供給されるように配置されている。
【0064】
図5Aに示すように、第2の吐出口12aから吐出された保護液は、基板W上における第2の着液位置P2に対して第2の入射方向D2に入射する。第2の入射方向D2は、第2の吐出口12aから第2の着液位置P2に向かう方向であるとともに、平面視において第2の吐出口12aから第2の噴射領域T2の第2の中央部位置Pc2に向かう方向である。換言すると、第2の液滴ヘッド部8は、第2の着液位置P2に対し第2の移動軌跡T4と反対側から、第2の着液位置P2に向けて保護液を吐出する。
【0065】
第2の入射方向D2は、水平方向に対して第2の着液位置P2の方へ傾けられている。すなわち、基板Wの上面に対して傾いている。基板Wの上面と第2の入射方向D2とがなす角度は、たとえば、10〜40度の範囲内における所定の角度に設定されている。
第2の入射方向D2は、第2の中央部位置Pc2における第2の移動軌跡T4の接線方向D6(
図6参照。第2の移動軌跡T4の延長線方向)に対し、基板Wの回転方向Drの上流側に傾斜している。平面視において、第2の入射方向D2と接線方向D6とがなす角度(入射角度)θH2(
図6参照)は、所定の角度(所定の鋭角)に設定されている。
【0066】
図6は、基板Wの上面に形成される保護液の液膜LFについて説明するための平面図である。
図3および
図6を参照して、基板Wの上面に供給された保護液の流れについて説明する。
基板Wが回転軸線A1周りに回転させられている状態で、第1および第2の保護液ノズル11,12から保護液が吐出される。第1の保護液ノズル11から吐出された保護液は、第1の着液位置P1に着液する。回転状態の基板Wに保護液が供給されるので、基板Wに供給された保護液は、基板Wとの接触によって径方向(回転半径方向)に加速されるとともに基板Wの回転方向Drに加速される。したがって、第1の着液位置P1に着液した保護液は、第1の着液位置P1から径方向に拡がりながら回転方向に流れる。基板Wの中心部では基板Wの回転速度が遅いので、基板Wの上面中心部に供給された保護液は、第1の着液位置P1を頂点の1つとする三角形状を保ちながら広範囲に拡がる。
【0067】
また、第2の保護液ノズル12から吐出された保護液は、第2の着液位置P2に着液する。回転状態の基板Wに保護液が供給されるので、基板Wに供給された保護液は、基板Wとの接触によって径方向(回転半径方向)に加速されるとともに基板Wの回転方向Dr(
図3等参照)に加速される。したがって、第2の着液位置P2に着液した保護液は、第2の着液位置P2から径方向に拡がりながら回転方向に流れる。第2の着液位置P2は、基板Wの周縁部と基板Wの中央部との中間に位置するため、基板Wの回転速度が基板Wの中央部よりも速く、そのため、基板Wの上面周縁部に供給された保護液は、第2の着液位置P2を頂点の1つとする角度の小さな鋭角三角形状(基板Wの周方向に沿うほぼ直線状)をなしつつ径方向に比較的高速で拡がる。
【0068】
第1の着液位置P1に着液した保護液、および第2の着液位置P2に着液した保護液が基板Wの上面を流れ、これにより、基板Wの上面に処理液の液膜LFが形成される。この処理液の液膜LFは、第1の移動軌跡T3の全域および第2の移動軌跡T4の全域を覆う大きさおよび形状に設けられる必要がある。保護液の液切れにより、第1の移動軌跡T3の一部または第2の噴射領域T2の一部が露出してしまうと、液滴ノズル6(第1の液滴ヘッド部7および第2の液滴ヘッド部8)からの処理液の液滴が基板Wの上面に直接衝突し、基板Wの上面にダメージを与える等の悪影響が生じるからである
図6には、たとえば外径約450mmの円形の基板Wにおいて、第1の着液位置P1、第1の入射方向D1、第1の保護液ノズル11からの保護液の吐出流量、第2の着液位置P2、第2の入射方向D2、第2の保護液ノズル12からの保護液の吐出流量および基板Wの回転速度を最適化したときの処理液の流れを示す。この状態で、第1の保護液ノズル11および第2の保護液ノズル12からの保護液の吐出流量は、それぞれ約1.5(リットル/分)であり、基板Wの回転速度は約300rpmである。
【0069】
この場合、保護液の液膜LFは、第1の移動軌跡T3の全域および第2の移動軌跡T4の全域を覆っている。そのため、この実施形態のように第1の液滴ヘッド部7および第2の液滴ヘッド部8をノズルアーム9とは異なる部材(たとえば処理カップ14)に取り付けた場合であっても、移動する第1の噴射領域T1および第2の噴射領域T2の位置によらずに、第1の噴射領域T1および第2の噴射領域T2を保護液によって覆い続けることができる。しかも、このときの保護液の吐出流量は合計で約3.0(リットル/分)であり、保護液の吐出流量の低減(保護液の消費量の低減)も同時に図られている。
【0070】
また、この実施形態では、第2の着液位置P2に着液した保護液が、第2の移動軌跡T4だけでなく、第1の移動軌跡T3の一部をも覆っている。これにより、第1の保護液ノズルからの保護液の少流量化を図りながら、保護液の液膜LFによって、第1の移動軌跡T3の全域および第2の移動軌跡T4の全域を覆うことができる。
このように、第1の着液位置P1、第1の入射方向D1、第1の保護液ノズル11からの保護液の吐出流量、第2の着液位置P2、第2の入射方向D2、第2の保護液ノズル12からの保護液の吐出流量、および基板Wの回転速度をそれぞれ最適化することにより、(保護液の少流量化を図りながら、)第1の移動軌跡T3の全域および第2の移動軌跡T4の全域を覆う保護液の液膜LFを形成することができる。そのため、この実施形態のように第1の液滴ヘッド部7および第2の液滴ヘッド部8をノズルアーム9とは異なる部材(たとえば処理カップ14)に取り付けた場合であっても、移動する第1の噴射領域T1および第2の噴射領域T2の位置によらずに、第1の噴射領域T1および第2の噴射領域T2を保護液によって覆い続けることができる。
【0071】
図7は、基板処理装置1の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。
制御装置3は、たとえばマイクロコンピュータを用いて構成されている。制御装置3は、CPU等の演算ユニット、固定メモリデバイス、ハードディスクドライブ等の記憶ユニット、および入出力ユニットを有している。記憶ユニットには、演算ユニットが実行するプログラムが記憶されている。
【0072】
制御装置3は、スピンモータ18、アーム移動ユニット10および電圧印加ユニット50等の動作を制御する。また、制御装置3は、リンス液バルブ24、第1の保護液バルブ31、第2の保護液バルブ34、排出バルブ43等を開閉する。
また、制御装置3は、第1の流量調整バルブ32および第2の流量調整バルブ35の開度を調整する。
【0073】
図8は、処理ユニット2による第1の基板処理例を説明するための流れ図である。
図9A,9Bは、第1の基板処理例の洗浄工程S3を説明するための図解的な図である。
以下、
図1〜
図3および
図6〜
図8を参照しながら、第1の基板処理例について説明する。
図8A〜8Bについては適宜参照する。第1の基板処理例は、基板Wの上面に形成されたレジストを除去するためのレジスト除去処理である。
【0074】
第1の基板処理例は、基板Wの上面から異物(パーティクル)を除去するための洗浄処理である。この実施形態では、液滴ノズル6に供給される処理液として、洗浄薬液(たとえばSC1)が用いられる。また、第1および第2の保護液ノズル11,12から吐出される保護液として薬液(たとえばSC1)が用いられる。
未処理の基板Wは、搬送ロボットIR,CRによってキャリヤCから処理ユニット2に搬入され、チャンバ4内に搬入され(S1:基板W搬入)、基板Wがその表面(洗浄対象面)を上方に向けた状態でスピンチャック5に受け渡され、スピンチャック5に基板Wが保持される。基板Wの搬入に先立って、液滴ノズル6は、スピンチャック5の側方に設定されたホーム位置に退避させられている。
【0075】
搬送ロボットCRが処理ユニット2外に退避させられた後、制御装置3は、スピンモータ18を制御して基板Wの回転を開始させる(
図8のステップS2)。基板Wは予め定める液処理速度(たとえば約300rpm)まで上昇させられ、その液処理速度に維持される。基板Wの回転速度が液処理速度に達すると、次いで、制御装置3は、洗浄工程(
図8のステップS3)を実行する。
【0076】
洗浄工程S3では、まず、基板Wの上面が保護液(たとえばSC1)によって覆われる。具体的には、制御装置3は、第1の保護液バルブ31および第2の保護液バルブ34を開いて、
図9Aに示すように、制御装置3は、保護液バルブ31,34を開いて、第1の保護液ノズル11および第2の保護液ノズル12の双方から、基板Wの上面に向けて保護液を吐出する。第1の保護液ノズル11から吐出された保護液は、第1の着液位置P1に着液する。第2の保護液ノズル12から吐出された保護液は、第2の着液位置P2に着液する。第1の着液位置P1および第2の着液位置P2に着液した保護液は、基板Wの上面を周縁部に向けて流れる。これにより、基板Wの上面に処理液の液膜LFが形成される。この処理液の液膜LFは、第1の移動軌跡T3の全域および第2の移動軌跡T4の全域を覆う大きさおよび形状に設けられている。
【0077】
また、洗浄工程S3において、制御装置3は、アーム移動ユニット10を制御して、ノズルアーム9を揺動軸線A2周りに揺動させ、液滴ノズル6を、ホーム位置から基板Wの上方に移動させる。
洗浄工程S3の開始(洗浄液の吐出開始)から所定の時間が経過すると、制御装置3は、アーム移動ユニット10を制御して、液滴ノズル6を近接位置に向けて下降させる。また、制御装置3は、液滴ノズル6の第1および第2の液滴ヘッド部7,8から処理液(SC1)の液滴を噴射させる(液滴噴射工程)。具体的には、制御装置3は、排出バルブ43を閉じるとともに、電圧印加ユニット50によって所定の周波数の交流電圧を第1および第2の圧電素子38A,38Bに印加させる。多数の洗浄処理液の液滴が第1および第2の液滴ヘッド部7,8から下方に噴射されることにより、基板Wの上面に第1および第2の噴射領域T1,T2が形成される。
【0078】
さらに、制御装置3は、
図9Bに示すように、第1および第2の保護液ノズル11,12からの保護液(SC1)の吐出、および第1および第2の液滴ヘッド部7,8からの処理液(SC1)の噴射を維持しながら、アーム移動ユニット10を制御して、液滴ノズル6を、中心位置Pcと周縁位置Peとの間で往復移動させる(ハーフスキャン)。液滴ノズル6の往復移動に伴って、第1の噴射領域T1が、第1の中央部位置Pc1と第1の周縁位置Pe1との間を、円弧を描きながら往復移動する。この液滴ノズル6の往復移動に伴って、第2の噴射領域T2が、第2の中央部位置Pc2と第2の周縁位置Pe2との間を、円弧を描きながら往復移動する。これにより、第1および第2の噴射領域T1,T2によって基板Wの上面を走査させることができる。
【0079】
多数の処理液(SC1)の液滴が第1および第2の液滴ヘッド部7,8から噴射されることにより、保護液(SC1)の液膜LFによって覆われている噴射領域T1,T2に多数の処理液(SC1)の液滴が吹き付けられる。基板Wの上面に対する処理液(SC1)の液滴の衝突によって、パーティクルなどの異物が、基板Wの上面から物理的に除去される。また、異物と基板Wとの結合力は、SC1が基板Wを溶解させることにより弱められる。したがって、異物がより確実に除去される。また、基板Wの上面全域が液膜によって覆われている状態で、処理液(SC1)の液滴が噴射領域T1に吹き付けられるので、基板Wの上面のダメージを抑制または防止でき、かつ基板Wに対する異物の再付着を抑制または防止される。
【0080】
液滴ノズル6の往復移動(ノズルアーム9の往復揺動動作)が予め定める回数(たとえば4回)行われると、洗浄工程S3は終了する。具体的には、制御装置3は、排出バルブ43を開いて、第1および第2の液滴ヘッド部7,8からの処理液の液滴の噴射を停止させる。また、制御装置3は、アーム移動ユニット10を制御して、液滴ノズル6をホーム位置へと退避させる。
【0081】
さらに、制御装置3は、第1または第2の保護液バルブ31,34を閉じて、第1または第2の保護液ノズル11,12からの保護液の吐出を停止する。
次いで、リンス液を基板Wに供給するリンス工程(
図8のステップS4)が行われる。具体的には、制御装置3は、リンス液バルブ24を開いて、基板Wの上面中央部に向けてリンス液ノズル22からリンス液を吐出させる。リンス液ノズル22から吐出されたリンス液は、基板Wの上面中央部に着液する。基板Wの上面中央部に着液したリンス液は、基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの上面上を基板Wの周縁部に向けて流れる。これにより、基板W上の処理液(SC1)が、リンス液によって外方に押し流され、基板Wの周囲に排出される。これにより、基板Wの上面の全域において処理液(SC1)が洗い流される。リンス工程S5の開始から予め定める期間が経過すると、制御装置3は、リンス液バルブ24を閉じて、リンス液ノズル22からのリンス液の吐出を停止させる。
【0082】
次いで、基板Wを乾燥させるスピンドライ工程(
図8のステップS5)が行われる。具体的には、制御装置3は、スピンモータ18を制御することにより、洗浄工程S3およびリンス工程S4における回転速度よりも大きい乾燥回転速度(たとえば数千rpm)まで基板Wを加速させ、乾燥回転速度で基板Wを回転させる。これにより、大きな遠心力が基板W上の液体に加わり、基板Wに付着している液体が基板Wの周囲に振り切られる。このようにして、基板Wから液体が除去され、基板Wが乾燥する。そして、基板Wの加速から所定時間が経過すると、制御装置3は、スピンモータ18を制御することにより、スピンチャック5による基板Wの回転を停止させる(
図8のステップS6)。
【0083】
次に、チャンバ4内から基板Wが搬出される(
図8のステップS7)。具体的には、制御装置3は、基板搬送ロボットCRのハンドをチャンバ4の内部に進入させる。そして、制御装置3は、基板搬送ロボットCRのハンドにスピンチャック5上の基板Wを保持させる。その後、制御装置3は、基板搬送ロボットCRのハンドをチャンバ4内から退避させる。これにより、洗浄処理後の基板Wがチャンバ4から搬出される。
【0084】
図10A,10Bは、第2の基板処理例を説明するための図解的な図である。
図2に2点鎖線で示すように、第1の保護液供給管30には、温水供給源からの温水(たとえば液温40℃〜60)が供給される第1の温水配管101が分岐接続されている。また、第1の保護液供給管30には、たとえば40℃〜60℃の液温を有する薬液(SC1)が供給されている。第1の温水配管101には、第1の温水配管101を開閉するための第1の温水バルブ102が介装されている。第1の温水バルブ102を閉じながら、第1の保護液バルブ31が開かれることにより、第1の保護液ノズル11の第1の吐出口11aから薬液(SC1)が吐出される。また、第1の保護液バルブ31を閉じながら、第1の温水バルブ102が開かれることにより、第1の保護液ノズル11の第1の吐出口11aからSC1でなく温水が吐出される。
【0085】
図2に2点鎖線で示すように、第2の保護液供給管33には、温水供給源からの温水(たとえば40℃〜60℃の液温を有する)が供給される第2の温水配管103が分岐接続されている。また、第2の保護液供給管33には、たとえば40℃〜60℃の液温を有する薬液(SC1)が供給されている。第2の温水配管103には、第2の温水配管103を開閉するための第2の温水バルブ104が介装されている。第2の温水バルブ104を閉じながら、第2の保護液バルブ34が開かれることにより、第2の保護液ノズル12の第1の吐出口12aから薬液(SC1)が吐出される。また、第2の保護液バルブ34を閉じながら、第2の温水バルブ104が開かれることにより、第2の保護液ノズル12の第2の吐出口12aからSC1でなく温水が吐出される。
【0086】
第2の基板処理例が前述の第1の基板処理例と相違する点は、洗浄工程S3の液滴噴射工程において、第2の基板処理例は、SC1等の薬液および温水の双方を保護液として用いるようにした点にある。その他の工程においては、第1の基板処理例と変わりがない。
第2の基板処理例に係る洗浄工程S3では、液滴ノズル6の複数回(たとえば4回)のうち、半分の回数(たとえば2回)の往復移動の際に、第1の保護液ノズル11から吐出される保護液として温水を用い、かつ第2の保護液ノズル12から吐出される保護液として薬液(SC1)を用いる。そして、半分の回数(たとえば2回)の往復移動の際には、第1の保護液ノズル11から吐出される保護液として薬液(SC1)を用い、かつ第2の保護液ノズル12から吐出される保護液として温水を用いる。
【0087】
この実施形態では、たとえば1回目および3回目の往復移動において、制御装置3は、
図10Aに示すように、第1の保護液ノズル11から薬液(SC1)を吐出しかつ第2の保護液ノズル12から温水を吐出する(第1の吐出状態)。また、制御装置3は、たとえば2回目および4回目の往復移動において、
図10Bに示すように、第1の保護液ノズル11から温水を吐出し、かつ第2の保護液ノズル12から薬液(SC1)を吐出する(第2の吐出状態)。
【0088】
前述のような液滴ノズル6を用いて洗浄処理を行う場合、薬液(SC1)の消費量を低減させてコストダウンを図るべく、第1の保護液ノズル11および第2の保護液ノズル12の一方から薬液(SC1)を吐出させ、かつ第1の保護液ノズル11および第2の保護液ノズル12の他方から温水を吐出させることが考えられる。たとえば、洗浄処理においてSC1を薬液として用いる場合、SC1がエッチング力を有しているために、SC1によるエッチングが問題になる。
【0089】
すなわち、第1の保護液ノズル11から薬液(SC1)を吐出させ、かつ第2の保護液ノズル12から温水を吐出させると、基板Wの上面中央部のエッチング量が、基板Wの上面周縁部に比べて高くなる。また、第1の保護液ノズル11から温水を吐出させ、かつ第2の保護液ノズル12から薬液(SC1)を吐出させると、基板Wの上面中央部のエッチング量が、基板Wの上面周縁部に比べて低くなる。
【0090】
洗浄処理は、そもそもエッチングを行うことを主たる目的としていない。SC1を薬液として用いるためにエッチングの問題が生じるのであれば、そのエッチングは面内均一性を保っていることが好ましい。
液滴ノズル6の往復移動動作毎に、第1の吐出状態と第2の吐出状態とを切り換えることにより、薬液(SC1)の省液を図りながら、エッチングの面内均一性を保つことができる。
【0091】
以上によりこの実施形態によれば、第1の液滴ヘッド部7が基板Wの上面内の第1の噴射領域T1に処理液の液滴を吹き付ける。また、第2の液滴ヘッド部8が基板Wの上面内の第2の噴射領域T2に処理液の液滴を吹き付ける。また、基板Wを回転させながら、第1の噴射領域T1および第2の噴射領域T2を基板Wの上面内を移動させることにより、第1の噴射領域T1および第2の噴射領域T2を、基板Wの上面を走査させることができる。
【0092】
第1の噴射領域T1および第2の噴射領域T2に処理液の液滴を同時に吹き付けるので、1つの液滴ヘッド部から1つの噴射領域に液滴を吹き付ける場合と比較して、液滴の吹き付け面積を増大させることができる。
これにより、洗浄効率(処理液の液滴による処理効率)を増大させることができる。液滴ヘッド部からの噴射圧の増大ではなく、噴射領域の面積の増大により、処理液の液滴により洗浄効率を増大させることができるので、基板Wの上面に与えるダメージがほとんどない。
【0093】
また、第1の着液位置P1、第1の入射方向D1、第1の液滴ヘッド部7からの保護液の吐出流量、第2の着液位置P2、第2の入射方向D2、第2の液滴ヘッド部8からの保護液の吐出流量、および基板Wの回転速度をそれぞれ最適化することにより、(保護液の消費量の低減を図りながら、)第1の移動軌跡T3の全域および第2の噴射領域T2の全域を覆う保護液の液膜LFを形成することができる。そのため、第1の液滴ヘッド部7および第2の液滴ヘッド部8をノズルアーム9とは異なる部材(たとえば処理カップ14)に取り付けた場合であっても、移動する第1の噴射領域T1および第2の噴射領域T2の位置によらずに、第1の噴射領域T1および第2の噴射領域T2を保護液によって覆い続けることができる。これにより、基板Wのダメージを抑制できる。
【0094】
ゆえに、基板Wのダメージを抑制しながら、液滴ノズル6(第1の液滴ヘッド部7および第2の液滴ヘッド部8)からの処理液を用いて基板Wの上面を良好に処理できる基板処理装置1を提供できる。
また、第1の液滴ヘッド部7および第2の液滴ヘッド部8が、第1の液滴ヘッド部7および第2の液滴ヘッド部8が取り付けられているノズルアーム9ではなく、処理カップ14の最も外側のガード28に支持されている(固定的に設けられている)。この場合、第1の液滴ヘッド部7および第2の液滴ヘッド部8が、それぞれ、第1の液滴ヘッド部7および第2の液滴ヘッド部8と離れて配置される。そのため、第1の液滴ヘッド部7および第2の液滴ヘッド部8を、基板Wの上面内において、第1および第2の保護液ノズル11,12の下端を対応する第1および第2の液滴ヘッド部7,8の下端より低くなるように設定する必要はないから、保護液ノズル11,12と基板Wとの接触が生じることはない。ゆえに、第1および第2の保護液ノズル11,12と基板Wとの接触を確実に防止できる基板処理装置1を提供することができる。
【0095】
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の実施形態では、第1の液滴ヘッド部7と第2の液滴ヘッド部8とが別個に設けられているとして説明したが、第1の液滴ヘッド部7および第2の液滴ヘッド部8が一体に設けられていてもよい。すなわち、液滴ノズル6が平面視で「V」字が90°横転した形状をなしていてもよい。
【0096】
また、処理液および保護液に用いられる薬液としてSC1を例示したが、SC1の他に、SC2(HClとH
2O
2とを含む液)や希フッ酸(HF)等の薬液を用いることができる。
また、処理液および保護液に、薬液でなく水を用いることもできる。水は、たとえば脱イオン水(DIW)であるが、DIWに限らず、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水および希釈濃度(たとえば、10ppm〜100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。
【0097】
また、保護液ノズル11,12が、処理カップ14でなく、それ以外の部材に設けられていてもよい。
また、液滴ヘッド部は、2つに限られず、3個以上であってもよい。この場合、保護液ノズルの数も液滴ヘッド部の個数に応じて設けられる。
また、前述の実施形態では、基板処理装置1が、半導体ウエハなどの円板状の基板を処理する装置である場合について説明したが、基板処理装置1は、液晶表示装置用ガラス基板などの多角形の基板を処理する装置であってもよい。
【0098】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能で
ある。