(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6713384
(24)【登録日】2020年6月5日
(45)【発行日】2020年6月24日
(54)【発明の名称】フルトラクタ用エンドクロスの締結部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 21/02 20060101AFI20200615BHJP
【FI】
B62D21/02 Z
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-173282(P2016-173282)
(22)【出願日】2016年9月6日
(65)【公開番号】特開2018-39307(P2018-39307A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 聡訓
【審査官】
森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−091536(JP,A)
【文献】
特開2012−081878(JP,A)
【文献】
特開2010−221841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルトラクタのエンドクロスの両端部に形成されたサイドレールのウェブに沿う結合代を介して前記エンドクロスを前記サイドレールのウェブに対し締結したフルトラクタ用エンドクロスの締結部構造であって、前記エンドクロスの結合代における車両前方側の先端部を該結合代の残部よりも締結箇所を取り囲む面積が小さくなるような形状としたことを特徴とするフルトラクタ用エンドクロスの締結部構造。
【請求項2】
結合代の車両前方側の先端部が車両前方へ向け舌状に張り出す張出部として形成され且つ該張出部に最前の締結箇所が設定されていることを特徴とする請求項1に記載のフルトラクタ用エンドクロスの締結部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルトラクタ用エンドクロスの締結部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4に示す如く、フルトラクタ1(荷台付きの牽引車)に対しフルトレーラ2(完全被牽引車)を連結する場合には、フルトラクタ1のエンドクロス3に装備したピントルフック4にフルトレーラ2側のルネットアイ5を掛止させて連結を行うようにしているが、フルトラクタ1のエンドクロス3には、フルトレーラ2の牽引時に車両後方へ向かう荷重が入力されるため、フルトラクタ1のサイドレール6とエンドクロス3との結合部に集中する応力への対策が必要となる。
【0003】
図5はフルトラクタ1のサイドレール6に対するエンドクロス3の従来構造の一例を示すもので、ここに図示している例では、エンドクロス3が一枚の鋼材を曲げ加工して製作されており、左右のサイドレール6間を亘る横梁部分が車両前方へ開口した溝形を成し、その長手方向の両端部にて前記溝形の上下のフランジ3aが前記サイドレール6のウェブ6bに沿うように互いに向き合う方向に曲折されて結合代7を成し、該結合代7と前記サイドレール6のウェブ6bとがボルト・ナット8を介し締結されて結合されている。尚、
図5中における符号の3bは前記エンドクロス3の上下のフランジ3a間を繋ぐウェブ、6aはサイドレール6の上下のフランジを夫々示している。
【0004】
また、このようなサイドレールのウェブに対しクロスメンバの両端部を結合した構造については、下記の特許文献1等が先行技術文献情報として既に存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−78962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、斯かる従来構造にあっては、エンドクロス3の車幅方向中央部分がピントルフック4を介して車両後方へ引かれることにより、前記エンドクロス3を平面視でV字状に曲げるように力が加わり、該エンドクロス3の両端部の結合代7における車両前方側に締結箇所を車幅方向内側へ引き込むような面外応力が集中し、前記サイドレール6のウェブ6bへの入力が局所的に強く作用する懸念があり、この部分でウェブ6bが損傷しないよう補強材9により断面係数を上げて大幅な強度向上を施していたため、この補強材9の分だけ車両重量の増加やコストの高騰を招いてしまっていた。
【0007】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、従来の如き補強材を不要として車両重量の低減化とコスト削減を実現し得るフルトラクタ用エンドクロスの締結部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、フルトラクタのエンドクロスの両端部に形成されたサイドレールのウェブに沿う結合代を介して前記エンドクロスを前記サイドレールのウェブに対し締結したフルトラクタ用エンドクロスの締結部構造であって、前記エンドクロスの結合代における車両前方側の先端部を該結合代の残部よりも締結箇所を取り囲む面積が小さくなるような形状としたことを特徴とするものである。
【0009】
而して、このようにすれば、エンドクロスの結合代における車両前方側の先端部の剛性が残部よりも低下し、フルトレーラの牽引によりピントルフックに車両後方へ向かう荷重が入力された際に前記結合代の車両前方側の先端部が相対的に撓み易くなり、これまで前記結合代における車両前方側の先端部に集中していた車幅方向内側へ向かう面外応力が残部にも分散されてサイドレールのウェブが面外方向に向ける入力が均される結果、従来の如き補強材を用いた補強を施さなくてもサイドレールの損傷を未然に回避することが可能となる。
【0010】
また、本発明をより具体的に実施するにあたっては、例えば、結合代の車両前方側の先端部が車両前方へ向け舌状に張り出す張出部として形成され且つ該張出部に最前の締結箇所が設定されていることが好ましく、このようにすれば、エンドクロスの結合代における車両前方側の先端部を該結合代の残部よりも締結箇所を取り囲む面積が小さくなるような形状とすることが容易に実現される。
【発明の効果】
【0011】
上記した本発明のフルトラクタ用エンドクロスの締結部構造によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0012】
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、エンドクロスの結合代における車両前方側の先端部に集中していた車幅方向内側へ向かう面外応力を残部にも分散してサイドレールのウェブが面外方向に受ける入力を均すことができ、これによりサイドレールのウェブに対し局所的に強く作用していた入力を緩和してサイドレールの損傷を未然に回避することができるので、フルトラクタのサイドレールとエンドクロスとの結合部に補強のために施していた補強材を不要として車両重量の低減化とコスト削減を実現することができる。
【0013】
(II)本発明の請求項2に記載の発明によれば、エンドクロスの結合代における車両前方側の先端部を該結合代の残部よりも締結箇所を取り囲む面積が小さくなるような形状とすることが容易に実現でき、既存のエンドクロスに大幅な改良を施すことなく実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明を実施する形態の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図1の構造を車両左側から見た側面図である。
【
図4】一般的なフルトレーラ方式の運搬形態を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1〜
図3は本発明を実施する形態の一例を示すもので、本形態例においては、前述した
図5の従来例の場合と略同様に、フルトラクタ1のエンドクロス3の両端部に形成されたサイドレール6のウェブ6bに沿う結合代7を介して前記エンドクロス3を前記サイドレール6のウェブ6bに対し締結するようになっており、より具体的には、前記エンドクロス3の左右のサイドレール6間を亘る横梁部分が車両前方へ開口した溝形を成していると共に、その長手方向の両端部にて前記溝形の上下のフランジ3aが前記サイドレール6のウェブ6bに沿うように互いに向き合う方向に曲折されて結合代7を成しており、該結合代7と前記サイドレール6のウェブ6bとがボルト・ナット8を介し締結されて結合されるようにしてあるが、前記エンドクロス3の結合代7における車両前方側の先端部を該結合代7の残部よりも締結箇所を取り囲む面積が小さくなるような形状としたところが特徴となっている。
【0017】
即ち、ここに図示している例の場合は、エンドクロス3の結合代7における車両前方側の先端部を該結合代7の残部よりも締結箇所を取り囲む面積が小さくなるような形状とするにあたり、結合代7の車両前方側の先端部が車両前方へ向け舌状に張り出す張出部10として形成され且つ該張出部10に最前のボルト・ナット8による締結箇所が設定されるようにしてある。
【0018】
而して、このようにすれば、エンドクロス3の結合代7における車両前方側の先端部の剛性が残部よりも低下し、フルトレーラの牽引によりピントルフックに車両後方へ向かう荷重が入力された際に前記結合代7の車両前方側の先端部が相対的に撓み易くなり、これまで前記結合代7における車両前方側の先端部に集中していた車幅方向内側へ向かう面外応力が残部にも分散されてサイドレール6のウェブ6bが面外方向に向ける入力が均される結果、従来の如き補強材を用いた補強を施さなくてもサイドレール6の損傷を未然に回避することが可能となる。
【0019】
従って、上記形態例によれば、エンドクロス3の結合代7における車両前方側の先端部に集中していた車幅方向内側へ向かう面外応力を残部にも分散してサイドレール6のウェブ6bが面外方向に受ける入力を均すことができ、これによりサイドレール6のウェブ6bに対し局所的に強く作用していた入力を緩和してサイドレール6の損傷を未然に回避することができるので、フルトラクタ1のサイドレール6とエンドクロス3との結合部に補強のために施していた補強材を不要として車両重量の低減化とコスト削減を実現することができる。
【0020】
また、結合代7の車両前方側の先端部が車両前方へ向け舌状に張り出す張出部10として形成され且つ該張出部10に最前の締結箇所が設定された構成を採用し、斯かる構成によりエンドクロス3の結合代7における車両前方側の先端部を該結合代7の残部よりも締結箇所を取り囲む面積が小さくなるような形状とすることが容易に実現でき、既存のエンドクロス3に大幅な改良を施すことなく実施することができる。
【0021】
尚、本発明のフルトラクタ用エンドクロスの締結部構造は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0022】
1 フルトラクタ
2 フルトレーラ
3 エンドクロス
6 サイドレール
6b ウェブ
7 結合代
10 張出部