特許第6713385号(P6713385)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6713385
(24)【登録日】2020年6月5日
(45)【発行日】2020年6月24日
(54)【発明の名称】変速操作装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 20/02 20060101AFI20200615BHJP
【FI】
   B60K20/02 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-173283(P2016-173283)
(22)【出願日】2016年9月6日
(65)【公開番号】特開2018-39308(P2018-39308A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】国崎 大樹
(72)【発明者】
【氏名】野村 浩行
【審査官】 前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−72575(JP,A)
【文献】 実開昭60−109128(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 20/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チェンジレバーのシフト操作及びセレクト操作の夫々をシフト用ケーブル及びセレクト用ケーブルの夫々の前後運動に変換する変速操作装置であって、前記チェンジレバーに対しシフト操作に連動して前記シフト用ケーブルを前後方向に押し引きし得るよう該シフト用ケーブルをシフト用リンクを介して間接的に連結すると共に、該シフト用リンクと前記チェンジレバーとのジョイント部分を前記チェンジレバーのセレクト操作の傾動軸上に設定し且つセレクト操作に伴う前記チェンジレバー側の相対変位を許容して前記シフト用リンク側を不動状態に保ち得るよう滑り対偶と球面対偶を併せ持つ複合自在継手としたことを特徴とする変速操作装置。
【請求項2】
ジョイント部分の複合自在継手を、チェンジレバー側からシフト用リンク側に向けた側方へ突き出し且つその長手方向両側に平滑面を形成した係合ピンと、該係合ピンを摺動自在に嵌挿せしめるスリットを有するボールと、該ボールを転動自在に抱持し得るようシフト用リンク側に形成された球面座とにより構成したことを特徴とする請求項1に記載の変速操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速操作装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トラック等の車両においては、車室内に装備されたチェンジレバーと変速機との間をシフト用とセレクト用の二本のケーブルで連結し、前記チェンジレバーのシフト操作とセレクト操作の何れもが前後運動に換えられて変速機に伝達されるようになっているが、キャブオーバ型のトラックの場合、チェンジレバーの直下に大型のエンジンが配置され、しかも、キャブを前方に傾動中心を取ってシャシに対しチルト(前傾)させる必要があるため、前記各ケーブルを一旦前方へ引き出してから後方へ反転させて変速機へ向かわせるよう配索している。
【0003】
図6はチェンジレバーの操作を各ケーブルの前後運動に変換するための変速操作装置を示し、図中1はチェンジレバー、2はベースプレート、3はキャブのフロアパネル、4はシフト用ケーブル、5はセレクト用ケーブルを夫々示しており、前記チェンジレバー1の基端部がボールジョイント6を介し前記ベースプレート2の上面後部の支持部2aに対し前後左右に傾動自在に枢着されている。
【0004】
そして、シフト用ケーブル4は、チェンジレバー1におけるボールジョイント6近くに傾動自在に直付けされ、チェンジレバー1を前後方向に傾動させて行うシフト操作により前記シフト用ケーブル4が前後方向に直接押し引きされるようになっており、他方、セレクト用ケーブル5は、チェンジレバー1に対しセレクト用リンク7を介して間接的に連結され、チェンジレバー1を左右方向に傾動させて行うセレクト操作により前記セレクト用リンク7を介し前記セレクト用ケーブル5が前後方向に間接的に押し引きされるようになっている。
【0005】
ここで、前記セレクト用リンク7は、ベースプレート2上におけるボールジョイント6近傍に左右方向の回転軸を中心として回動自在に枢支されたL字形(側面視)のレバー部品から成り、チェンジレバー1の基端部から側方へ張り出された係合ピン9が、前記セレクト用リンク7の前方に張り出した一端部の掛止穴10に対し遊嵌されてジョイント部分8を成しており、前記セレクト用リンク7の上方に張り出した他端部に対し前記セレクト用ケーブル5が傾動自在に連結されるようになっている。
【0006】
即ち、セレクト操作によりチェンジレバー1が左右方向に傾動されると、その基端部から側方へ突き出した係合ピン9が俯仰作動してセレクト用リンク7の一端部を上げ下げすることになるので、これによりセレクト用リンク7が回動してセレクト用ケーブル5が前後方向に押し引きされることになる。
【0007】
また、シフト用ケーブル4とセレクト用ケーブル5は、ベースプレート2の前端部より先ではシフト用導管11とセレクト用導管12により外周部を保護され、これらシフト用導管11及びセレクト用導管12の夫々の内部を摺動して押し引きされるようになっている。
【0008】
尚、以上に述べた如きチェンジレバーの操作をシフト用ケーブルとセレクト用ケーブルの前後運動に変換するようにした変速操作装置に関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−98930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
斯かる従来構造にあっては、チェンジレバー1をセレクト操作で左右方向に傾動させた際に、前記チェンジレバー1に直付けされているシフト用ケーブル4が、ベースプレート2からチェンジレバー1までの間で左右方向に振られて揺動角θを持つことになるが、この揺動角θが所定角度以上となってしまうことは、シフト用ケーブル4の健全性を長期に亘り確保する観点から好ましくないため、前記揺動角θが所定角度内に収まるよう変速操作装置の前後寸法を長く確保しなければならず、このことが変速操作装置のコンパクト化を阻む要因となっており、該変速操作装置のレイアウトに制約がかかるという問題があった。
【0011】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、シフト用ケーブルがチェンジレバーのセレクト操作により左右方向に振られる現象が生じないようにして変速操作装置の大幅なコンパクト化を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、チェンジレバーのシフト操作及びセレクト操作の夫々をシフト用ケーブル及びセレクト用ケーブルの夫々の前後運動に変換する変速操作装置であって、前記チェンジレバーに対しシフト操作に連動して前記シフト用ケーブルを前後方向に押し引きし得るよう該シフト用ケーブルをシフト用リンクを介して間接的に連結すると共に、該シフト用リンクと前記チェンジレバーとのジョイント部分を前記チェンジレバーのセレクト操作の傾動軸上に設定し且つセレクト操作に伴う前記チェンジレバー側の相対変位を許容して前記シフト用リンク側を不動状態に保ち得るよう滑り対偶と球面対偶を併せ持つ複合自在継手としたことを特徴とするものである。
【0013】
而して、このようにすれば、セレクト操作でチェンジレバーを左右方向に傾動しても、その傾動軸上に設定されたジョイント部分の複合自在継手により、セレクト操作に伴う前記チェンジレバー側の相対変位が許容されて前記シフト用リンク側が不動状態に保たれ、該シフト用リンクに接続されているシフト用ケーブルがチェンジレバーのセレクト操作により左右方向に振られる現象が生じなくなるので、セレクト操作時におけるシフト用ケーブルの揺動角を所定角度内に収めるべく変速操作装置の前後寸法を長く確保する必要がなくなり、該変速操作装置の前後寸法を従来よりも短縮して大幅なコンパクト化を実現することが可能となる。
【0014】
また、シフト操作でチェンジレバーを前後方向に傾動した場合には、これに連動してシフト用リンクも回動してシフト用ケーブルが前後方向に押し引きされるので、チェンジレバーに対しシフト用ケーブルを直付けしていた場合と変わりなくシフト操作を行うことが可能である。
【0015】
更に、本発明をより具体的に実施するにあたっては、ジョイント部分の複合自在継手を、チェンジレバー側からリンク側に向けた側方へ突き出し且つその長手方向両側に平滑面を形成した係合ピンと、該係合ピンを摺動自在に嵌挿せしめるスリットを有するボールと、該ボールを転動自在に抱持し得るようリンク側に形成された球面座とにより構成することが可能であり、このようにすれば、係合ピンとボールとが滑り対偶を成し且つ該ボールと球面座とが球面対偶を成すようにした複合自在継手が得られる。
【発明の効果】
【0016】
上記した本発明の変速操作装置によれば、シフト用ケーブルがチェンジレバーのセレクト操作により左右方向に振られる現象が生じないようにして変速操作装置の大幅なコンパクト化を実現することができ、これにより変速操作装置のレイアウトに関する制約を緩和して設計的な自由度の向上を図ることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明を実施する形態の一例を示す斜視図である。
図2図1の変速操作装置のセレクト操作に関する作動説明図である。
図3図2の要部を拡大して示す斜視図である。
図4図2のセレクト操作後の状態からシフト操作した時の作動説明図である。
図5図4の要部を拡大して示す斜視図である。
図6】従来例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0019】
図1図5は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図6の従来例と機能的に大きく変わらない構成要件については、多少の意匠的な相違があっても、実質的な同一物を表すものとして同一の符号を付している。
【0020】
図1図5に示す如く、本形態例においては、前述した従来例の場合と同様に、キャブオーバ型のトラック等におけるチェンジレバー1のシフト操作及びセレクト操作の夫々をシフト用ケーブル4及びセレクト用ケーブル5の夫々の前後運動に変換する変速操作装置としているが、これまでチェンジレバー1に対し直付けされていたシフト用ケーブル4をシフト用リンク14を介して間接的に連結するようにしており、しかも、このシフト用リンク14と前記チェンジレバー1とのジョイント部分15を前記チェンジレバー1のセレクト操作の傾動軸A上に設定し且つセレクト操作に伴う前記チェンジレバー1側の相対変位を許容して前記シフト用リンク14側を不動状態に保ち得るよう滑り対偶と球面対偶を併せ持つ複合自在継手としている。
【0021】
より具体的には、キャブのフロアパネル3に取り付けられたベースプレート2の上面後部にチェンジレバー1の支持部2aが設けられ、該支持部2aを側方に回り込むように前記チェンジレバー1の基端部にブラケット16が設けられており、該ブラケット16が前記支持部2aの側面に対しボールジョイント17を介し前後左右に傾動自在に枢着されている。
【0022】
そして、前記ブラケット16のボールジョイント17と反対側の近傍位置には、先に図6で説明した従来例の場合と同様に、側面視でL字形のレバー部品から成るセレクト用リンク7が左右方向の回転軸を中心として回動自在に枢支されており、前記ブラケット16のボールジョイント17と反対側の側面から突き出した係合ピン9が、前記セレクト用リンク7の前方に張り出した一端部の掛止穴10に対し遊嵌されてジョイント部分8を成し、前記セレクト用リンク7の上方に張り出した他端部に対し前記セレクト用ケーブル5が傾動自在に連結されるようにしてある。
【0023】
即ち、セレクト操作によりチェンジレバー1が左右方向に傾動されると、その基端部から側方へ突き出した係合ピン9が俯仰作動してセレクト用リンク7の一端部を上げ下げすることになり、これによりセレクト用リンク7が回動してセレクト用ケーブル5が前後方向に押し引きされるようになっている(図2及び図3参照)。
【0024】
一方、前記ベースプレート2の支持部2aのセレクト用リンク7と反対側の側面に、上面視でS字形のクランク部品から成るシフト用リンク14が左右方向の回転軸を中心として回動自在に枢支され、このシフト用リンク14の支持部2a前方に回り込む一端部と、前記ブラケット16の前方に張り出した一端部との間に前記ジョイント部分15が構成されるようになっていて、前記シフト用リンク14の他端部から上方に立ち上がるレバー部14aの頂部に対し前記シフト用ケーブル4が傾動自在に連結されるようにしてある。
【0025】
この際、前記ジョイント部分15が前記チェンジレバー1のセレクト操作の傾動軸A上に設定されるようにしてあるが、図中における傾動軸Aは、前方へ向けて上り勾配を成すように傾斜したものとなっており、上面視で見た場合に前後方向に沿うように延びていることは勿論である。
【0026】
更に、前記ジョイント部分15が成す複合自在継手は、前記ブラケット16の前方に張り出した一端部からシフト用リンク14側に向けた側方へ突き出し且つその長手方向両側に平滑面18aを形成した係合ピン18と、該係合ピン18を摺動自在に嵌挿せしめるスリット19aを有するボール19と、該ボール19を転動自在に抱持し得るようシフト用リンク14の支持部2a前方に回り込む一端部に形成された球面座20とにより構成されており、係合ピン18とボール19とが滑り対偶を成し且つ該ボール19と球面座20とが球面対偶を成すようにしてある。
【0027】
尚、先に図6で説明した従来例の場合と同様、シフト用ケーブル4とセレクト用ケーブル5は、ベースプレート2の前端部より先でシフト用導管11とセレクト用導管12により外周部を保護され、これらシフト用導管11及びセレクト用導管12の夫々の内部を摺動して押し引きされるようになっている。
【0028】
而して、このように変速操作装置を構成すれば、図2及び図3に示す如く、セレクト操作でチェンジレバー1を左右方向に傾動しても、その傾動軸A上に設定されたジョイント部分15の複合自在継手により、セレクト操作に伴う前記チェンジレバー1側の相対変位が許容されて前記シフト用リンク14側が不動状態に保たれ、該シフト用リンク14に接続されているシフト用ケーブル4がチェンジレバー1のセレクト操作により左右方向に振られる現象が生じなくなるので、セレクト操作時におけるシフト用ケーブル4の揺動角(図6中の揺動角θを参照)を所定角度内に収めるべく変速操作装置の前後寸法を長く確保する必要がなくなり、該変速操作装置の前後寸法を従来よりも短縮して大幅なコンパクト化を実現することが可能となる。
【0029】
また、図4及び図5に示す如く、前述のセレクト操作後の状態からシフト操作でチェンジレバー1を前後方向に傾動した場合には、これに連動してシフト用リンク14も回動してシフト用ケーブル4が前後方向に押し引きされるので、チェンジレバー1に対しシフト用ケーブル4を直付けしていた場合と変わりなくシフト操作を行うことが可能である。
【0030】
従って、上記形態例によれば、シフト用ケーブル4がチェンジレバー1のセレクト操作により左右方向に振られる現象が生じないようにして変速操作装置の大幅なコンパクト化を実現することができ、これにより変速操作装置のレイアウトに関する制約を緩和して設計的な自由度の向上を図ることができる。
【0031】
尚、本発明の変速操作装置は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、複合自在継手の形式には図示例以外の様々な形式を採用し得ること、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0032】
1 チェンジレバー
4 シフト用ケーブル
5 セレクト用ケーブル
14 シフト用リンク
15 ジョイント部分
18 係合ピン
18a 平滑面
19 ボール
19a スリット
20 球面座
A 傾動軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6