特許第6713418号(P6713418)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6713418
(24)【登録日】2020年6月5日
(45)【発行日】2020年6月24日
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/01 20060101AFI20200615BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20200615BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20200615BHJP
【FI】
   A61M25/01
   A61M25/00 600
   A61M25/00 510
   A61M25/10
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-569330(P2016-569330)
(86)(22)【出願日】2016年1月7日
(86)【国際出願番号】JP2016050299
(87)【国際公開番号】WO2016114207
(87)【国際公開日】20160721
【審査請求日】2018年12月14日
(31)【優先権主張番号】特願2015-5105(P2015-5105)
(32)【優先日】2015年1月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 牧人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太
【審査官】 田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05762637(US,A)
【文献】 米国特許第06066114(US,A)
【文献】 国際公開第2013/140669(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0025045(US,A1)
【文献】 特開平9−192235(JP,A)
【文献】 特開2013−005976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/01
A61M 25/00
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空状に形成された近位側の近位シャフトと、中空状に形成された遠位側の遠位シャフトとを軸方向に接合したカテーテルシャフトを有するカテーテルであって、
前記近位シャフトと前記遠位シャフトは、一方の端部が他方の端部の中空内部に挿入されて一体化されており、
前記近位シャフトは、端部に内表面と外表面との間を貫通する貫通部を有し、
前記遠位シャフトは、前記貫通部を通じて前記近位シャフトの一方の表面から他方の表面に向かって貫通する突状部を有し、
前記突状部の先端部は、前記貫通部を通じて前記近位シャフトの内表面または外表面に露出し、
前記突状部は、前記近位シャフトの内表面から突出して露出する先端部が前記貫通部よりも広幅の拡張部を有するカテーテル。
【請求項2】
前記近位シャフトの遠位側端部は、前記遠位シャフトの端部の中空内部に挿入され、前記遠位シャフトの突状部は、前記貫通部を通じて前記近位シャフトの外表面側から内表面側に貫通すると共に、前記近位シャフトの内表面に露出する請求項1記載のカテーテル。
【請求項3】
前記貫通部は、前記近位シャフトの周面に形成される孔またはスリットである請求項1または2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記近位シャフトは金属材により形成され、前記遠位シャフトは樹脂材により形成される請求項1〜のいずれか1項に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記遠位シャフトは、遠位側にバルーンを有する請求項1〜のいずれか1項に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記近位シャフトの遠位側端部から遠位側に伸びる補強体をさらに有し、
前記補強体の近位側端部は、前記近位シャフトの前記貫通部のうち最も遠位側に配置される貫通部の遠位側に配置される請求項1〜のいずれか1項に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のシャフトを接合したカテーテルシャフトを有するカテーテルに関し、特にシャフトの接合強度を高くしたカテーテルシャフトを有するカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルを用いた血管病変の治療は、外科的侵襲が少ないことから広く行われている。例えば、経皮的冠動脈形成術(Percutaneous Transluminal Coronary Angioplasty)において、冠動脈の病変部を押し広げて血流を改善するためにバルーンカテーテルが用いられる。バルーンカテーテルは、長尺な中空状のカテーテルシャフトと、カテーテルシャフトの遠位側に設けられるバルーンと、カテーテルシャフトの近位側に設けられるハブとを有するのが一般的である。
【0003】
カテーテルシャフトは、複雑に屈曲した血管内に挿入するために、術者の押し込む力がカテーテルの近位側から遠位側に確実に伝達される押し込み性と、血管内を先行するガイドワイヤーに沿って円滑かつ確実に進む追従性とを備えていることが必要とされる。これらを両立させるために、カテーテルシャフトの近位側は曲げ剛性の高い材料で形成し、カテーテルシャフトの遠位側は近位側よりも曲げ剛性が低く柔軟性の高い材料で形成し、両者を軸方向に接合したカテーテルシャフトを有するカテーテルが知られている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−5976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
遠位側のシャフトと近位側のシャフトの接合構造は、一方のシャフトを他方のシャフトの中空内部に挿入可能な外径に形成しておき、一方のシャフトの端部を他方のシャフトの中空内部に挿入して両者を圧着、または接着、あるいは圧着と接着を併用して固定する構造が一般的である。
【0006】
しかし、カテーテルシャフト内には、遠位部に設けられるバルーンを拡張させるため等の目的でX線造影剤等の流体が注入され、カテーテルシャフトが内部から加圧されるために、シャフトの接合部分にはシャフト同士が剥離する方向に力がかかることになる。そのため、シャフトの接合部分においては、剥離及びその剥離によるシャフト同士の離脱の虞がある。圧着や接着による接合では、シャフト同士が剥離する力に対抗する十分な接合強度を確保できない場合がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、近位側のシャフトと遠位側のシャフトとが高い接合強度で一体化されたカテーテルシャフトを有するカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明に係るカテーテルは、中空状に形成された近位側の近位シャフトと、中空状に形成された遠位側の遠位シャフトとを軸方向に接合したカテーテルシャフトを有するカテーテルであって、前記近位シャフトと前記遠位シャフトは、一方の端部が他方の端部の中空内部に挿入されて一体化されており、前記近位シャフトは、端部に内表面と外表面との間を貫通する貫通部を有し、前記遠位シャフトは、前記貫通部を通じて前記近位シャフトの一方の表面から他方の表面に向かって貫通する突状部を有し、前記突状部の先端部は、前記貫通部を通じて前記近位シャフトの内表面または外表面に露出し、前記突状部は、前記近位シャフトの内表面から突出して露出する先端部が前記貫通部よりも広幅の拡張部を有する
【発明の効果】
【0009】
上記のように構成したカテーテルは、遠位シャフトが近位シャフトの貫通部を通じて近位シャフトの一方の表面から他方の表面に向かって貫通する突状部を有し、突状部の先端部は貫通部の内表面または外表面に露出する。そのため、近位シャフトと遠位シャフトの接合部分において、遠位シャフトの突状部は、近位シャフトの内表面側から外表面側まで入り込み、または近位シャフトの外表面側から内表面側まで入り込み、両者の接合強度を高くすることができる。これにより、本発明のカテーテルシャフトは、近位シャフトと遠位シャフトの接合面同士の剥離及び近位シャフトと遠位シャフトの離脱を防止することができる。また、カテーテルは、突状部が貫通部から容易には抜けない構造とすることができる。そのため、近位シャフトと遠位シャフトの接合面同士の剥離または近位シャフトと遠位シャフトの離脱をより確実に防止することができる。
【0010】
前記近位シャフトの遠位側端部は、前記遠位シャフトの端部の中空内部に挿入され、前記遠位シャフトの突状部は、前記貫通部を通じて前記近位シャフトの外表面側から内表面側に貫通すると共に、前記近位シャフトの内表面に露出するようにすれば、遠位シャフト外側からの加熱及び押圧により、近位シャフトと遠位シャフトを容易に圧着しつつ、突状部を形成することができる。
【0012】
前記貫通部は、前記近位シャフトの周面に形成される孔またはスリットであるようにすれば、貫通部を近位シャフトに容易に形成することができる。
【0013】
前記近位シャフトは金属材により形成され、前記遠位シャフトは樹脂材により形成されるようにすれば、金属材と樹脂材の圧着による接合において、突状部による両者の固定の効果をより大きくすることができる。より具体的には、金属材と樹脂材との接合は、金属材と樹脂材とが融け合わないため、接合面の接合強度を向上させるのが難しい。しかしながら、本発明のカテーテルシャフトでは、突状部により、近位シャフトと遠位シャフトとの接合面の物理的な接合構造が設けられるので、接合面の接合強度を向上させることができる。
【0014】
前記遠位シャフトは、遠位側にバルーンを有していてもよい。この場合、カテーテルは、バルーンを拡張させる際にカテーテルシャフト内が加圧される。そのため、カテーテルシャフト内の加圧により、近位シャフトと遠位シャフトの接合面同士が剥離または近位シャフトと遠位シャフトが離脱しやすくなるが、確実にこれを防止することができる。
【0015】
前記近位シャフトの遠位側端部から遠位側に伸びる補強体をさらに有し、前記補強体の近位側端部は、前記近位シャフトの前記貫通部のうち最も遠位側に配置される貫通部の遠位側に配置されるようにすれば、補強体が突状部と干渉することがなく、補強体を近位シャフトの端部から遠位シャフト側に直線的に伸ばすことができるので、カテーテルシャフトの屈曲性に悪影響を及ぼさないようにすることができる。また、近位シャフトと遠位シャフトを接合する際、芯金材が補強体に干渉しないようにすることができ、補強体が変形などすることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態のカテーテルの全体構成図である。
図2】カテーテルシャフト及びバルーンの断面図である。
図3】カテーテルシャフトの接合部分付近の拡大断面図である。
図4】近位シャフトの端部付近平面図である。
図5】近位シャフトと遠位シャフトの接合工程のうち収縮チューブを被覆した段階における接合部分付近拡大断面図である。
図6】近位シャフトと遠位シャフトの接合工程のうち収縮チューブを収縮させた段階における接合部分付近拡大断面図である。
図7】別の形態の貫通部を有する近位シャフトの端部付近平面図である。
図8】別の形態の貫通部を有する近位シャフトと遠位シャフトの接合部分付近断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。また、本明細書では、カテーテル10の生体管腔に挿入する側を「遠位」若しくは「遠位側」、操作する手元側を「近位」若しくは「近位側」と称することとする。
【0018】
まず、カテーテル10の構成について説明する。カテーテル10は、図1に示すように、長尺で中空状のカテーテルシャフト11と、カテーテルシャフト11の遠位側端部に設けられるバルーン12と、カテーテルシャフト11の近位側端部に固着されたハブ13とを有している。
【0019】
このカテーテル10は、長尺なカテーテルシャフト11を生体器官内に挿通させ、その遠位側に設けられたバルーン12を病変部で拡張させることで、病変部を押し広げて治療を行うことができる。
【0020】
カテーテルシャフト11には、遠位側寄りにガイドワイヤー14が導入される開口部41を設けてある。すなわち、本実施形態のカテーテル10は、いわゆるラピッドエクスチェンジタイプのカテーテルである。また、カテーテルシャフト11は、近位側の近位シャフト30と、遠位側の遠位シャフト40とが軸方向に接合されて一体化されている。
【0021】
図2に示すように、近位シャフト30と遠位シャフト40は、カテーテルシャフト11の中間位置で軸方向に接合されている。遠位シャフト40は近位シャフト30よりも一回り大きい内径を有しており、近位シャフト30の端部31が遠位シャフト40の端部44に対して挿入されて、両者が接合されている。
【0022】
カテーテルシャフト11のうち開口部41よりも遠位側は、外管42と内管43とが同心円状に配置された二重管構造となっている。外管42は、遠位側先端がバルーン12の近位側端部まで伸びており、その内部には、バルーン12を拡張させるための流体が注入される拡張ルーメン50が形成される。また、カテーテルシャフト11のうち開口部41よりも近位側は単管構造となっており、その内部は外管42による拡張ルーメン50が連続している。
【0023】
内管43は、遠位側先端がバルーン12の遠位側先端よりも遠位側まで伸びており、その内部には、ガイドワイヤー14が挿通されるガイドワイヤールーメン51が形成される。
【0024】
バルーン12の遠位側は内管43に接着され、近位側は外管42に接着されていて、バルーン12内が拡張ルーメン50に連通している。拡張ルーメン50を介して拡張用流体を注入することで、バルーン12を拡張させることができる。拡張用流体は気体でも液体でもよく、例えばヘリウムガス、COガス、Oガス等の気体や、生理食塩水、造影剤等の液体を用いることができる。
【0025】
本実施形態では、近位シャフト30はステンレス、アルミ等の金属材により形成されている。また、遠位シャフト40は、熱可塑性を有する樹脂材により形成されている。具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、あるいはこれら二種以上の混合物等のポリオレフィンや、軟質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂などが使用できる。
【0026】
近位シャフト30を金属材で形成したことにより、カテーテル11の押し込み性を良好にすることができる。また、遠位シャフト40を樹脂材で形成したことにより、血管内を円滑かつ確実に進むための追従性を良好にすることができる。本発明では、金属材からなる近位シャフト30と樹脂材からなる遠位シャフト40とを、高い強度で接合するための構造を有しているので、この点につき以下説明する。
【0027】
図3に示すように、遠位シャフト40の端部44に挿入される近位シャフト30の端部31には、内表面と外表面との間を貫通する貫通部32が形成されている。図4に示すように、貫通部32は、円形状の貫通孔からなり、近位シャフト30の周方向及び軸方向にそれぞれ複数が形成されている。本実施形態では、貫通部32は軸方向に2個ずつ配置され、周方向には互いに180度の角度をなす位置に2個ずつが配置されている。
【0028】
ただし、貫通部32の数及び配置はこれに限られず、必要とされる接合強度に応じて適宜設定することができる。また、貫通部32の孔形状についても、円形状のみならず方形状や楕円形状など他の形状であってもよい。
【0029】
近位シャフト30の端部31と遠位シャフト40の端部44は、圧着により接合されている。これに加えて、図3に示すように、遠位シャフト40の端部44の内面は、近位シャフト30の貫通部32を外表面側から内表面側に貫通する突状部45を有している。突状部45の先端部は、近位シャフト30の内表面側に露出していると共に、貫通部32よりも広幅の拡張部45aを有している。つまり、樹脂材からなる遠位シャフト40の内面側は、貫通部32を介し近位シャフト30の中空内部に入り込んで抜けないような形状を有している。ここで、突状部45の先端部が近位シャフト30の内表面側に露出するとは、突状部45の先端部が貫通部32内に止まることなく、近位シャフト30の内表面と面一または該内表面よりも内側まで突出することを言う。
【0030】
このように、近位シャフト30に貫通部32を設け、遠位シャフト40が貫通部32を介して近位シャフト30の中空内部に入り込む突状部45を有していることにより、近位シャフト30と遠位シャフト40の接合強度を高くすることができる。特に、バルーン12を拡張させるためにカテーテルシャフト11内が加圧された際に、近位シャフト30と遠位シャフト40の接合部分が剥離または近位シャフト30と遠位シャフト40が離脱することを防止できる。
【0031】
また、近位シャフト30が金属材で遠位シャフト40が樹脂材であるため、圧着による接合では、樹脂同士の圧着の場合に比べて、近位シャフト30と遠位シャフト40の接合強度が低くなる。しかし、圧着による接合に加えて突状部45が近位シャフト30の中空内部に入り込むことによって、十分な接合強度を確保することができる。
【0032】
近位シャフト30の遠位側端部には金属製の補強体33が設けられている。補強体33は、近位シャフト30の中空内部に溶接接合された長尺状の線材である。補強体33としては、中実の線材のみならず、ハーフパイプ状の長尺部材など別の形状のものを用いることもできる。金属材で形成される近位シャフト30と樹脂材で形成される遠位シャフト40は、曲げ剛性が大きく異なるため、接合部分において遠位シャフト40の潰れやキンクが生じやすい。これに対し、金属製の補強体33を、近位シャフト30の端部から遠位シャフト40側に伸ばしていることにより、曲げ剛性の急激な変化を緩和することができ、遠位シャフト40の潰れやキンクを防止することができる。
【0033】
補強体33は、近位シャフト30の貫通部32のうち、最も遠位側に配置される貫通部32よりも遠位側寄りに、補強体33の近位側端部が配置されている。これによって、突状部45を形成する際に、後述する芯金材60が補強体33に干渉しないようにすることができ、補強体33が変形などすることを防止できる。また、補強体33が樹脂材からなる突状部45と干渉することを抑制し、補強体33を近位シャフト30の端部から遠位シャフト40側に直線的に伸ばすことができるので、カテーテルシャフト11の屈曲性に悪影響を及ぼさないようにすることができる。なお、補強体33は、遠位シャフト40の突状部45のうち、最も遠位側に配置される突状部45よりも遠位側寄りに、補強体33の近位側端部が配置されていてもよい。これにより、補強体33が樹脂材からなる突状部45と干渉することを更に抑制することができる。
【0034】
次に、近位シャフト30と遠位シャフト40の接合工程について説明する。接合工程の前に、金属製で所定の径及び長さを有する近位シャフト30と、樹脂製で所定の径及び長さを有する遠位シャフト40とを、予め製造しておく。また、近位シャフト30には予め貫通部32が形成され、さらに遠位側端部には補強体33が溶接により接合される。
【0035】
接合工程の際には、まず、図5に示すように、近位シャフト30の遠位側の端部31を遠位シャフト40の近位側の端部44に対して挿入する。近位シャフト30は、全ての貫通部32が遠位シャフト40の中空内部に納まるように、遠位シャフト40に対して挿入される。近位シャフト30の外径は、遠位シャフト40の内径と同等となるように形成されているので、近位シャフト30の外表面は遠位シャフト40の内表面とほぼ密着した状態となる。
【0036】
近位シャフト30の中空内部には、芯金材60が挿入される。芯金材60は金属製の棒材であり、近位シャフト30の内径よりもやや小さい外径を有している。このため、芯金材60と近位シャフト30の内表面との間には、わずかな隙間が形成される。また、芯金材60の遠位側先端位置は、近位シャフト30の貫通部32のうち、最も遠位側に位置する貫通部32よりも遠位側であって、補強体33の近位側端部よりも近位側に配置される。
【0037】
近位シャフト30と遠位シャフト40とが重なり合う部分は、加熱することによって収縮する収縮チューブ61によって被覆される。収縮チューブ61は、例えばポリオレフィンなどの材料からなり、加熱前の径よりも加熱後の径が小さくなるものである。したがって、加熱することで、収縮チューブ61は遠位シャフト40を外側から内側に向かって加圧することができる。一方で、近位シャフト30の中空内部には芯金材60が配置されているから、互いに重なり合う近位シャフト30の端部31と遠位シャフト40の端部44は、収縮チューブ61と芯金材60によって挟まれ、厚みが圧縮される方向に向かって加圧される。
【0038】
近位シャフト30と遠位シャフト40の接合部分は、遠位シャフト40を形成する樹脂材が軟化する温度まで加熱される。前述のように、加熱すると収縮する収縮チューブ61により、遠位シャフト40と近位シャフト30は圧縮方向に加圧されるので、遠位シャフト40の端部44は、近位シャフト30の端部31に圧着される。このとき、軟化した遠位シャフト40の樹脂材は、近位シャフト30の貫通部32内に進入し、貫通部32を貫通して近位シャフト30の中空内部まで入り込む。近位シャフト30の中空内部まで入り込んだ遠位シャフト40の樹脂材は、近位シャフト30と芯金材60の間の空間に入り込むことにより、貫通部32よりも広幅状となり、これによって拡張部45aを有する突状部45が形成される。
【0039】
近位シャフト30と遠位シャフト40が圧着されると共に、突状部45が形成されることで、両者は高い強度で接合される。加熱後は、カテーテルシャフト11を室温まで冷却し、芯金材60を近位シャフト30から引き抜くと共に、収縮チューブ61を近位シャフト30と遠位シャフト40の接合部分から剥がして、接合工程が完了する。
【0040】
次に、貫通部の別の形態について説明する。図7に示すように、この形態の貫通部35は、近位シャフト30の周面が螺旋状に切り込まれた一連のスリットによって形成されている。近位シャフト30は、周方向に圧縮されるのに伴って螺旋状のスリットが開くように弾性変形する。
【0041】
この形態の貫通部35を有する近位シャフト30は、孔状の貫通部32を有する近位シャフト30と同様の工程で遠位シャフト40と接合させることができる。すなわち、近位シャフト30の端部31を遠位シャフト40の端部44内に挿入し、近位シャフト30の中空内部には芯金材60を挿入すると共に、接合部分には外側から収縮チューブ61で被覆する。そして、接合部分を加熱することで、遠位シャフト40が軟化し、収縮チューブ61が収縮して圧縮されることにより、遠位シャフト40の樹脂材は、近位シャフト30に圧着すると共に、圧縮により開いた貫通部35のスリットから近位シャフト30の中空内部に入り込む。
【0042】
図8に示すように、貫通部35を介して近位シャフト30の中空内部に入り込んだ遠位シャフト40の樹脂材は、貫通部35を貫通する突状部46を形成し、その先端部は貫通部35よりも広幅状の拡張部46aとなる。この形態の貫通部35の場合、突状部46は近位シャフト30の周方向に連続した形状となる。
【0043】
以上のように、本実施形態に係るカテーテル10のカテーテルシャフト11は、中空状に形成された近位側の近位シャフト30と、中空状に形成された遠位側の遠位シャフト40とを軸方向に接合し、近位シャフト30と遠位シャフト40は、一方の端部が他方の端部の中空内部に挿入されて一体化されており、近位シャフト30は、端部に内表面と外表面との間を貫通する貫通部32を有し、遠位シャフト40は、前記貫通部を通じて前記近位シャフトの一方の表面から他方の表面に向かって貫通する突状部45を有し、突状部45の先端部は、貫通部32を通じて前記近位シャフトの内表面または外表面に露出する。このため、近位シャフト30と遠位シャフト40の接合部分において、遠位シャフト40の突状部45が近位シャフト30の一方の表面から他方の表面まで入り込み、近位シャフト30と遠位シャフト40の接合面同士が剥離することを防止できて、両者の接合強度を高くすることができる。これにより、本実施形態のカテーテル10のカテーテルシャフト11は、近位シャフト30と遠位シャフト40の接合面同士の剥離及び近位シャフト30と遠位シャフト40の離脱を防止することができる。
【0044】
また、近位シャフト30の遠位側端部は、遠位シャフト40の端部の中空内部に挿入され、遠位シャフト40の突状部45は、貫通部32を通じて近位シャフト30の外表面側から内表面側に貫通すると共に、近位シャフト30の内表面に露出する。このため、遠位シャフト40外側からの加熱及び押圧により、近位シャフト30と遠位シャフト40を容易に圧着しつつ、突状部45を形成することができる。
【0045】
また、突状部45は、近位シャフト30の内表面に露出する先端部が貫通部32よりも広幅の拡張部45aを有する。このため、突状部45が貫通部32から容易には抜けない構造とすることができ、近位シャフト30と遠位シャフト40の接合面同士の剥離または近位シャフト30と遠位シャフト40の離脱をより確実に防止することができる。
【0046】
また、貫通部32は、近位シャフト30の周面に形成される孔またはスリットである。このため、貫通部32を近位シャフト30に容易に形成することができる。
【0047】
また、近位シャフト30は金属材により形成され、遠位シャフト40は樹脂材により形成される。このため、金属材と樹脂材の圧着による接合において、突状部45による両者の固定の効果をより大きくすることができる。
【0048】
また、遠位シャフト40は、遠位側にバルーン12を有する。この場合、カテーテル10は、バルーン12を拡張させる際にカテーテルシャフト11内が加圧される。そのため、カテーテルシャフト11内の加圧により、近位シャフト30と遠位シャフト40の接合面同士が剥離または近位シャフト30と遠位シャフト40が離脱しやすくなるが、確実にこれを防止することができる。
【0049】
また、近位シャフト30の遠位側端部から遠位側に伸びる補強体33をさらに有し、補強体33の近位側端部は、近位シャフト30の貫通部32のうち最も遠位側に配置される貫通部32の遠位側に配置される。このため、補強体33が突状部45と干渉することがなく、補強体33を近位シャフト30の端部から遠位シャフト40側に直線的に伸ばすことができるので、カテーテルシャフト11の屈曲性に悪影響を及ぼさないようにすることができる。また、近位シャフト30と遠位シャフト40を接合する際、芯金材60が補強体33に干渉しないようにすることができ、補強体33が変形などすることを防止できる。
【0050】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、上述の実施形態では、バルーン12を有するカテーテルであったが、バルーンを有しないものであってもよいし、あるいはバルーンにステントをマウントしたものであってもよい。
【0051】
また、上述の実施形態では、金属材で形成された近位シャフト30と樹脂材で形成された遠位シャフト40とを接合しているが、遠位シャフト40は、さらに複数のシャフトで形成されていてもよい。また、近位シャフト30が樹脂材であってもよい。
【0052】
本出願は、2015年1月14日に出願された日本特許出願番号2015−5105号に基づいており、それらの開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。
【符号の説明】
【0053】
10 カテーテル、
11 カテーテル本体部、
11a 先端部
12 バルーン、
13 ハブ、
14 ガイドワイヤー、
30 近位シャフト、
31 端部、
32 貫通部、
33 補強体、
35 貫通部
40 遠位シャフト、
41 開口部、
42 外管、
43 内管、
44 端部、
45 突状部、
45a 拡張部、
50 拡張ルーメン、
51 ガイドワイヤールーメン、
60 芯金材
61 収縮チューブ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8