特許第6713449号(P6713449)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6713449背圧が減じられたトルクコンバータクラッチ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6713449
(24)【登録日】2020年6月5日
(45)【発行日】2020年6月24日
(54)【発明の名称】背圧が減じられたトルクコンバータクラッチ
(51)【国際特許分類】
   F16H 45/02 20060101AFI20200615BHJP
【FI】
   F16H45/02 X
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-502699(P2017-502699)
(86)(22)【出願日】2015年6月26日
(65)【公表番号】特表2017-521617(P2017-521617A)
(43)【公表日】2017年8月3日
(86)【国際出願番号】US2015037864
(87)【国際公開番号】WO2016010712
(87)【国際公開日】20160121
【審査請求日】2018年6月22日
(31)【優先権主張番号】62/025,143
(32)【優先日】2014年7月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル セイア
(72)【発明者】
【氏名】マシュー スミス
【審査官】 山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−117282(JP,A)
【文献】 特開2013−217452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 45/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルクコンバータであって、
回転軸線と、
前記回転軸線に対して第1の半径方向距離を置いて位置する第1のシールと、
前記回転軸線に対して第2の半径方向距離を置いて位置する第2のシールと、
第1の液圧チャンバの少なくとも一部を画定するインペラシェル及びバランスプレートと、
第2の液圧チャンバの少なくとも一部を画定する、前記バランスプレートに対して前記第1のシールを介してシールされたピストンプレートと、
第3の液圧チャンバの少なくとも一部を画定する、前記ピストンプレートに対して前記第2のシールを介してシールされたカバーと、
を備え、
前記第1の半径方向距離は前記第2の半径方向距離と等しく、
前記第2の液圧チャンバ前記第3の液圧チャンバとは、前記バランスプレートの両側に作用する差圧のための等価の作用領域を形成する、トルクコンバータ。
【請求項2】
トルクコンバータであって、
インペラシェルとカバーとを含むハウジングと、
ボディと、該ボディに対して半径方向外側に位置し、外周面及び該外周面内に設けられた溝を備えた脚部と、前記溝内に位置する第3のシールと、を有する、前記カバーに固定された第1のハブと、
前記第3のシールを介して前記第1のハブに対してシールされたピストンプレートと、クラッチプレートと、を含むトルクコンバータクラッチと、
バランスプレートに対して前記ピストンプレートをシールするための第1のシールと、
前記カバーに対して前記ピストンプレートをシールするための第2のシールと、
前記ピストンプレートに取り付けられ、前記第1のハブに固定されたバランスプレートと、
トランスミッション入力軸に対してシールするために配置された第2のハブに固定されたタービンシェルを含むタービンと、
を備え、
前記クラッチプレートは、前記バランスプレート、適用チャンバ、及びバランスチャンバに対して半径方向外側に位置しており、
前記適用チャンバ前記バランスチャンバとは、前記ピストンプレートの両側に作用する差圧のための等価の作用領域を形成する、トルクコンバータ。
【請求項3】
トルクコンバータであって、
回転軸線と、
液圧流体を、トランスミッション入力軸から、第1のハブに設けられた第1の孔を通して適用チャンバへと流すために配置された第1の流路と、
液圧流体を、前記トランスミッション入力軸と第2のハブとの間から、前記第1のハブに設けられた第2の孔を通してバランスチャンバ内へと流すために配置された第2の流路と、
液圧流体を、第3のハブとステータ軸との間から、流体カップリングチャンバ内へと流すために配置された第3の流路と、
液圧流体を、前記第2のハブと前記ステータ軸との間から、前記流体カップリングチャンバ内へと流すために配置された第4の流路と、
ピストンプレートと、
前記回転軸線に対して第3の半径方向距離を置いて位置する、前記第1のハブを前記ピストンプレートに対してシールするための第3のシールと、
前記回転軸線に対して第1の半径方向距離を置いて位置する、前記ピストンプレートをバランスプレートに対してシールするための第1のシールと、
前記回転軸線に対して第2の半径方向距離を置いて位置する、前記ピストンプレートをカバーに対してシールするための第2のシールと、
を備え、
前記第3の半径方向距離は、前記第1及び第2の半径方向距離と最大で等しく、前記第1及び第2の半径方向距離は等しく、
前記適用チャンバ前記バランスチャンバとは、前記ピストンプレートの両側に作用する差圧のための等価の作用領域を形成する、トルクコンバータ。
【請求項4】
前記第3の液圧チャンバは、前記第1及び第2の液圧チャンバからシールされていて、前記第2の液圧チャンバからの圧力を均衡化するように配置されている、請求項1記載のトルクコンバータ。
【請求項5】
前記ピストンプレートは、内面と外面と内周面とを有しており、前記ピストンプレート内面は、前記第1のシールを介して前記バランスプレートに対してシールされていて、前記ピストンプレート外面は、前記第2のシールを介して前記カバーに対してシールされている、請求項1記載のトルクコンバータ。
【請求項6】
外周面及び該外周面に配置された溝を有する脚部を含み、前記カバーと前記バランスプレートとに固定されているカバーハブと、
前記回転軸線に対して第3の半径方向距離を置いて位置する第3のシールと、
をさらに備える、請求項5記載のトルクコンバータ。
【請求項7】
前記ピストンプレート内周面は、前記溝内に配置された前記第3のシールを介して、前記カバーハブ外周面に対してシールされていて、前記第3の半径方向距離は、前記第1及び第2の半径方向距離よりも小さい、請求項6記載のトルクコンバータ。
【請求項8】
スラスト面を含むスラストワッシャをさらに備え、前記第3のシールは前記スラスト面に対して半径方向外側にある、請求項7記載のトルクコンバータ。
【請求項9】
インペラと、
前記第1の液圧チャンバ内に位置するタービン及びステータと、
ピストンプレートを含むロックアップクラッチと、
をさらに備え、
前記第1の液圧チャンバは、前記タービン、ステータ、又はインペラのキャビテーションを阻止するように加圧されるためのものであり、
前記第2の液圧チャンバは、前記ロックアップクラッチをつなぐように加圧されるためのものであり、
前記第3の液圧チャンバは、前記ロックアップクラッチピストンプレートに対する背圧を減じるように減圧されるためのものであり、
前記ロックアップクラッチは、前記第2及び第3の液圧チャンバに対して半径方向外側に位置している、請求項1記載のトルクコンバータ。
【請求項10】
回転軸線をさらに備え、
前記第1のシールは、前記回転軸線に対して第1の半径方向距離を置いて位置し、
前記第2のシールは、前記回転軸線に対して第2の半径方向距離を置いて位置し、
前記第3のシールは、前記回転軸線に対して第3の半径方向距離を置いて位置しており、
前記第3の半径方向距離は、前記第1及び第2の半径方向距離よりも小さく、
前記第1及び第2の半径方向距離は等しい、請求項2記載のトルクコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、動圧に起因するクラッチのドリフトの阻止に効果的なシール装置を有する解消チャンバを含むトルクコンバータクラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
参照によりこの明細書に援用される米国特許出願公開第2013/0056319号には、3つのチャンバを有し、第3のチャンバは、ロックアップクラッチピストンプレートの背圧を減じるために減圧されるためのものである、トルクコンバータクラッチが開示されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
複数の実施態様は、概して、回転軸線と、回転軸線に対して第1の半径方向距離を置いて位置する第1のシールと、回転軸線に対して第2の半径方向距離を置いて位置する第2のシールと、第1の液圧チャンバの少なくとも一部を画定するインペラシェル及びバランスプレートと、第2の液圧チャンバの少なくとも一部を画定する、バランスプレートに対して第1のシールを介してシールされたピストンプレートと、第3の液圧チャンバの少なくとも一部を画定する、ピストンプレートに対して第2のシールを介してシールされたカバーと、を備えるトルクコンバータからなる。1つの実施態様では、第1の半径方向距離は、第2の半径方向距離と同じであるか又は等しい。
【0004】
1つの実施態様では、第3の液圧チャンバは、第1及び第2の液圧チャンバからシールされている。1つの実施態様では、第3の液圧チャンバは、第2の液圧チャンバからの圧力を均衡化するために配置されている。1つの実施態様では、ピストンプレートは、内面と、外面と、内周面とを有している。1つの実施態様では、ピストンプレート内面は、第1のシールを介してバランスプレートに対してシールされていて、ピストンプレート外面は第2のシールを介してカバーに対してシールされている。
【0005】
1つの実施態様では、トルクコンバータは、外周面及び該外周面に配置された溝を有する脚部を含みカバーとバランスプレートとに固定されているカバーハブと、回転軸線に対して第3の半径方向距離を置いて位置する第3のシールと、をさらに備える。1つの実施態様では、ピストンプレート内周面は、溝内に配置された第3のシールを介して、カバーハブ外周面に対してシールされている。1つの実施態様では、第3の半径方向距離は、第1及び第2の半径方向距離よりも小さい。
【0006】
1つの実施態様では、トルクコンバータは、スラスト面を含むスラストワッシャをさらに備え、第3のシールはスラスト面に対して半径方向外側にある。1つの実施態様では、バランスプレートは、少なくとも1つの板ばねと少なくとも1つのリベットを介して周方向でピストンプレートに接続されている。
【0007】
1つの実施態様では、トルクコンバータは、インペラと、第1の液圧チャンバ内に位置するタービン及びステータと、ピストンプレートを含むロックアップクラッチと、をさらに備え、第1の液圧チャンバは、タービン、ステータ、又はインペラのキャビテーションを阻止するように加圧されるためのものであり、第2の液圧チャンバは、ロックアップクラッチをつなぐように加圧されるためのものであり、第3の液圧チャンバは、ロックアップクラッチピストンプレートに対する背圧を減じるように減圧されるためのものである。1つの実施態様では、ロックアップクラッチは第2及び第3の液圧チャンバに対して半径方向外側に位置している。
【0008】
別の実施態様は、概して、(i)インペラシェルとカバーとを含むハウジングと、(ii)ボディと、ボディに対して半径方向外側に位置し、外周面と該外周面内に設けられた溝とを備えた脚部と、溝内に位置する第1のシールと、を有する、カバーに固定された第1のハブと、(iii)第1のシールを介して第1のハブに対して回転可能にシールされたピストンプレートと、クラッチプレートと、を含むトルクコンバータクラッチと、(iv)バランスプレートに対してピストンプレートをシールするための第2のシールと、(v)カバーに対してピストンプレートをシールするための第3のシールと、(vi)ピストンプレートに対して回転可能に取り付けられ、第1のハブに固定されたバランスプレートと、(vii)トランスミッション入力軸に対してシールするために配置された第2のハブに固定されたタービンシェルを含むタービンと、を備えるトルクコンバータからなる。
【0009】
1つの実施態様では、トルクコンバータは回転軸線をさらに備え、第1のシールは、回転軸線に対して第1の半径方向距離を置いて位置し、第2のシールは、回転軸線に対して第2の半径方向距離を置いて位置し、第3のシールは、回転軸線に対して第3の半径方向距離を置いて位置しており、第1の半径方向距離は、第2及び第3の半径方向距離よりも小さく、第2及び第3の半径方向距離は同じであるか又は等しい。
【0010】
1つの実施態様では、クラッチプレートはバランスプレートに対して半径方向外側にある。1つの実施態様では、トルクコンバータは、バランスプレートに面したスラスト面を含むスラストワッシャをさらに備え、第1のシールはスラスト面に対して半径方向外側にある。1つの実施態様では、トルクコンバータは、第4のシールと第5のシールとをさらに備え、第2のハブは第4のシール及び第5のシールを介して第1のハブに対してシールされている。1つの実施態様では、トルクコンバータは、タービンに駆動係合し、タービンに固定されたばねリテーナを含むダンパをさらに備える。1つの実施態様では、バランスプレートは、少なくとも1つの板ばねと少なくとも1つのリベットを介して周方向でピストンプレートに接続されている。
【0011】
別の実施態様は、概して、回転軸線と、液圧流体を、トランスミッション入力軸から、第1のハブに設けられた第1の孔を通して適用チャンバへと流すために配置された第1の流路と、液圧流体を、トランスミッション入力軸と第2のハブとの間から、第1のハブに設けられた第2の孔を通してバランスチャンバ内へと流すために配置された第2の流路と、液圧流体を、第3のハブとステータ軸との間から、流体カップリングチャンバ内へと流すために配置された第3の流路と、液圧流体を、第2のハブとステータ軸との間から、流体カップリングチャンバ内へと流すために配置された第4の流路と、ピストンプレートと、回転軸線に対して第1の半径方向距離を置いて位置する、第1のハブをピストンプレートに対してシールするための第1のシールと、回転軸線に対して第2の半径方向距離を置いて位置する、ピストンプレートをバランスプレートに対してシールするための第2のシールと、回転軸線に対して第3の半径方向距離を置いて位置する、ピストンプレートをカバーに対してシールするための第3のシールと、を備え、第1の半径方向距離は、第2及び第3の半径方向距離と最大で等しく、第2及び第3の半径方向距離は同じであるか又は等しい、トルクコンバータからなる。1つの実施態様では、トルクコンバータはクラッチプレートをさらに備え、このクラッチプレートは、バランスプレート、適用チャンバ、及びバランスチャンバに対して半径方向外側に位置している。
【0012】
ここで、本発明の性質及び作動モードを、添付の図面に関連した以下の詳細な説明においてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】1つの実施態様によるトルクコンバータを示す部分的な断面図である。
図2】1つの実施態様による図1のトルクコンバータの複数の流路を示す図である。
図3】1つの実施態様によるトルクコンバータの図1の円Bで示した領域を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
最初に、異なる図面に現れる同じ図面番号は、同じか又は機能的に類似の構造要素を特定していることが認識されるべきである。さらに、本発明は、本明細書に記載された特定の実施の形態、方法、材料及び変更に限定されるのではなく、従ってもちろん変更されてよいことが理解される。ここで使用される用語は、特定の態様を説明する目的のためだけのものであり、添付の請求項のみによって限定される本発明の範囲を限定することを意図しれたものではないことも理解される。
【0015】
別段の定めがない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者に一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書において説明されたものと同様の又は均等のあらゆる方法、装置又は材料を、発明の実施又は試験において使用することができるが、ここでは、以下の例示的な方法、装置及び材料が説明される。
【0016】
1つの実施態様では、トルクコンバータクラッチにおけるクラッチ容量は、ピストン差圧を制御することによって改善される。ピストン差圧の可変性に関与する重要な因子は、回転軸線とも呼ばれる中心軸線からの様々な距離における流体の動圧効果である。
【0017】
1つの実施態様では、トルクコンバータクラッチを含む3チャンバトルクコンバータは、チャンバのうちの2つのために、回転軸線から同じ半径方向距離を置いてピストンシールを設けることによってピストン差圧を制御している。1つの実施態様では、等距離のシールにより、動的解消チャンバ(dynamic cancelation chamber)とクラッチ適用チャンバ(clutch apply chamber)との間のバランス作用が提供される。1つの実施態様では、ピストンはS字形構造を有している。
【0018】
1つの実施態様では、同じ効果を有する領域が、動的解消チャンバのために、かつ同様にクラッチ適用チャンバのために設けられている。動圧解消チャンバを最良にすることにより、動的作用をゼロ又はゼロ近くまで減じることができる。1つの実施態様では、解消チャンバとロックアップチャンバとは、共通の外径と共通の内径とを有しているので、ピストンプレートの両側、即ち内面と外面とに作用する差圧のための等価の作用領域を形成する。
【0019】
以下の説明は図1図3を参照して行う。図1には、1つの実施態様におけるトルクコンバータ10の部分横断面が示されている。トルクコンバータ10は、スタッド11を介して内燃機関のクランクシャフトと接続させるためのフロントカバー12と、インペラ18用のリヤカバー16とを備えている。リヤカバー16は、この明細書では換言可能であってインペラシェルとも呼ばれる。インペラは、この技術分野では換言可能であって「ポンプ」とも呼ばれる。フロントカバー12とリヤカバー16とは溶接部14を介して互いに固定されている。カバー12は溶接部52でカバーハブ74に固定又は溶接されていて、カバーハブ74は、ボディ部71と脚部72とカバーパイロット部88とを含む。
【0020】
トルクコンバータ10は、タービン20と、タービンシェル22と、タービン20とインペラ18との間に位置するステータ32とをさらに備える。タービンとインペラとは、この技術分野では公知であるように、複数のブレードを含む。タービン20のタービンブレードは、スロットを通ってコアリング50内へと延在するタブ28を有している。ブレードは折り曲げて組み立てられた後、接合され、ろう付け又は溶接によって、又は当業者に公知の別の方法によってコアリング50に固定される。コアリング50は、単に軸線Aとも呼ばれる回転軸線Aを中心として周方向に延在している。通常、第1の軸方向AD1は、第2の軸方向AD2の逆方向であり、第1の半径方向RD1は、第2の半径方向RD2の逆方向である。
【0021】
同じく図1を参照して、トルクコンバータ10はワンウェイクラッチ30をさらに備え、このワンウェイクラッチ30は、ステータ32を支持し、内レース90と、転動体92と、外レース94とを含んでいる。サイドプレート36が、ステータ32内の場所でワンウェイクラッチ30を保持している。ステータ32は、サイドプレート36を収容する溝を含む。
【0022】
トルクコンバータ10はダンパアッセンブリ40を備えている。このダンパアッセンブリ40はタービン20に接続されていて、タービン20によって駆動可能であり、タービン20とフロントカバー12との間に位置している。ダンパアッセンブリ40は、クラッチプレート34と、ばね42と、タービンシェル22に固定されたばねリテーナ44とを含む。この明細書では換言可能にロックアップクラッチとも呼ぶことができるクラッチプレート34は、付加的に、軸方向でカバー12とピストンプレート38との間に片側又は両側に位置する摩擦材料を含む。クラッチプレート34とばねリテーナ44とは、バランスプレート46の半径方向外側に位置している。トルクコンバータクラッチ33はクラッチプレート34とピストンプレート38とを含む。場合によっては、これらは単に、それぞれクラッチとピストンとも呼ばれる。
【0023】
トルクコンバータ10は、タービンシェル22に固定されたハブ80を含み、このハブ80はカバーハブ74に対してシールされている。シール76は少なくとも部分的に、カバーハブ74に対してハブ80をシールする。スラストワッシャ48は、タービンシェル22とバランスプレート46との間に位置している。スラストワッシャ48のスラスト面47はバランスプレート46に面している。トルクコンバータ10は、保持器を含むベアリング86と、溶接部96と、ハブ98とを含む。図1にはさらに、スプライン78と、入力軸82と、ステータ軸84とを含むトランスミッション構成部分が示されている。ハブ80は、入力軸82にスプライン結合されていて、内レース90はスプライン78においてステータ軸84にスプライン結合されている。
【0024】
1つの実施態様では、トルクコンバータ10は、4路3チャンバのトルクコンバータである。換言すると、トルクコンバータに流体連通するために利用可能な4つの流路が設けられていて、かつ3つの分離したチャンバがあり、流れは少なくともチャンバ間で制限されている。当業者には公知であるように、チャンバ間にはオリフィス(図示せず)があり、このオリフィスによって必要に応じて流体を解放することができるが、オリフィスは流路として考えられるものではない。
【0025】
1つの実施態様では、トルクコンバータ10は回転軸線Aを有しており、この回転軸線Aに対してそれぞれ第1の半径方向距離r1と第2の半径方向距離r2を置いてシール66と68とを有している。1つの実施態様では、第1の半径方向距離r1と第2の半径方向距離r2とは同じであるか又は等しい。換言すれば、シール66と68は軸線Aに対して半径方向外側(半径方向RD1)で半径方向等距離を有している。シール66は半径方向距離r1で位置し、シール68は半径方向距離r2で位置している。半径方向距離r1とr2とは等価であるので、r1はr2と等距離である。
【0026】
インペラシェル16とバランスプレート46とは、第1の液圧チャンバ112の少なくとも一部を画定している。液圧チャンバ112は、この明細書では換言可能であって流体カップリングチャンバとも呼ばれる。ピストンプレート38はシール66を介してバランスプレート46に対してシールされていて、第2の液圧チャンバ114の少なくとも一部を画定している。液圧チャンバ114はこの明細書では換言可能であって、クラッチ適用チャンバ、ロックアップチャンバ、又は適用チャンバとも呼ばれる。この明細書では意図的に、「を介して」は、「によって」、「を通じて」、「を用いて」の意味で使用されている。
【0027】
カバー12は、シール68を介してピストンプレート38に対してシールされていて、第3の液圧チャンバ116の少なくとも一部を画定している。第3の液圧チャンバ116は、この明細書では換言可能であって、動的解消チャンバ、動圧解消チャンバ、解消チャンバ、バランスチャンバとも呼ばれる。1つの実施態様では、液圧チャンバ116は、液圧チャンバ112及び114からシールされている。1つの実施態様では、液圧チャンバ116は、液圧チャンバ114からの圧力を均衡化するために配置されている。ピストンプレート38をクラッチプレート34及びカバー12に係合させるために、チャンバ114内の圧力は増大させられる一方、チャンバ116は大気圧へと開放されている。ピストンプレート38を係合解除するために、チャンバ116内の圧力が増大させられ、かつ/又は、当業者には公知であるように、係合解除のために板ばね64のようなばねが使用される。チャンバ114及び116は、作動中の動圧によってクラッチプレート34がドリフトするのを防止する際に効果的なシール装置を含む。
【0028】
図2に示すように、1つの実施態様では、第1の液圧チャンバ112へ通じる少なくとも2つの流路がある。第1の流路170は、ハブ98とステータ軸84との間にあり、ワンウェイクラッチ30と、溶接部96を介してインペラシェル16に固定されたハブ98との間からトルクコンバータ10に進入しており、第2の流路175は、ステータ軸84と入力軸82との間にあり、ワンウェイクラッチ30と、リベット83を介して固定されたハブ80との間からトルクコンバータ10に進入している。流路180は、トランスミッション入力軸82の中空中心部内に位置していて、ハブ80と、カバーハブ74のカバーパイロット部88との間を通り、孔190を介してカバーハブ74を貫通して、第2の液圧チャンバ又は適用チャンバ114内へ到る。流路185は、ハブ80と入力軸82との間に位置していて、孔200を介してハブ80を貫通し、孔195を介してカバーハブ74を貫通し、第3の液圧チャンバ又はバランスチャンバ116内へ到る。孔190と195とは周方向でずらされているので、交差していない。
【0029】
図3には、図1の円Bで示した領域の拡大図が示されていて、1つの実施態様によるトルクコンバータ用のシールの配置が示されている。ピストンプレート38は、内面37と、外面39と、内周面35とを含んでいる。1つの実施態様では、ピストンプレート内面37は、シール66を介してバランスプレート46に対してシールされている。1つの実施態様では、ピストンプレート外面39は、シール68を介してカバー12に対してシールされている。
【0030】
図1図3に示したように、カバーハブ74は、ボディ71と、外周面73及びこの外周面に設けられた溝70を有する脚部72と、を含む。カバーハブ74は、溶接部52でカバー12に固定されていて、溶接部54でバランスプレート46に固定されている。1つの実施態様では、ピストンプレート38をカバーハブ74に対してシールするシール56は、回転軸線Aに対して第3の半径方向距離r3で位置している。特に、ピストンプレート内周面35は、溝70内に配置されたシール56を介して、カバーハブ外周面73に対してシールされている。1つの実施態様では、第3の半径方向距離r3は、第1及び第2の半径方向距離r1、r2よりも小さい。1つの実施態様では、トルクコンバータ10は、スラスト面47を有するスラストワッシャ48を備える。1つの実施態様では、シール56はスラスト面47に対して半径方向外側にある。1つの実施態様では、トルクコンバータ10は、少なくとも1つの板ばね64と少なくとも1つのリベット60,62を介して周方向でピストンプレート38に接続されたバランスプレート46を備える。
【0031】
1つの実施態様では、トルクコンバータ10は、液圧チャンバ112内に位置するインペラ18とタービン20とステータ32とを備え、さらにピストンプレート38を含むロックアップクラッチ又はクラッチプレート34を備えている。液圧チャンバ112は、タービン20又はステータ32又はインペラ18のキャビテーションを防止するために加圧されるためのものである。液圧チャンバ114は、適用モードでロックアップクラッチ34につなぐために加圧されるためのものである。液圧チャンバ116は、ロックアップクラッチピストンプレート38に対する背圧を減じるために減圧されるためのものである。1つの実施態様では、ロックアップクラッチ34は第2及び第3の液圧チャンバ114及び116に対して半径方向外側に位置している。好適には、チャンバ114及び116は、一定の半径方向距離r1及びr2を維持していて、これら半径方向距離r1及びr2は、ロックアップクラッチが適用モードにあるか又は接続解除されているか否かに関わらず同じである。
【0032】
1つの実施態様では、トルクコンバータ10は、(i)インペラシェル16とカバー12とを含むハウジングと、(ii)ボディ71と、該ボディ71に対して半径方向外側に位置し、外周面73及び該外周面73内に設けられた溝70を備えた脚部72と、溝70内に位置するシール56と、を有する、カバー12に固定された第1のハブ74と、(iii)シール56を介して第1のハブ74に対して回転可能にシールされたピストンプレート38と、クラッチプレート34と、を含むトルクコンバータクラッチ33と、(iv)バランスプレート46に対してピストンプレート38をシールするためのシール66と、(v)カバー12に対してピストンプレート38をシールするシール68と、(vi)ピストンプレート38に対して回転可能に取り付けられ、第1のハブ74に固定されたバランスプレート46と、(vii)トランスミッション入力軸82に対してシールするために配置された第2のハブ80に固定されたタービンシェル22を含むタービン20と、を備えている。1つの実施態様では、半径方向距離r3は、カバーハブ74に対してピストンプレート38をシールするために、半径方向距離r1及びr2に近づく半径方向距離のところで最大化されている。
【0033】
1つの実施態様では、トルクコンバータ10は回転軸線Aをさらに有し、シール56は、回転軸線Aに対して半径方向距離r3を置いて位置し、シール66は、回転軸線Aに対して半径方向距離r1を置いて位置し、シール68は、回転軸線Aに対して半径方向距離r2を置いて位置しており、半径方向距離r3は半径方向距離r1及びr2よりも小さく、半径方向距離r1及びr2は同じであるか又は等しい。1つの実施態様では、クラッチプレート34はバランスプレート46に対して半径方向外側にある。好適には、クラッチ34はシール66及び68でシールされた液圧チャンバ114及び116の半径方向外側でもあり、従って、2つのチャンバ間の圧力の均衡は、適用モードであっても達成される。
【0034】
1つの実施態様では、トルクコンバータ10は、スラスト面47を含むスラストワッシャ48をさらに備え、シール56はスラスト面47に対して半径方向外側にある。1つの実施態様では、スラスト面47はバランスプレート46に面している。1つの実施態様では、トルクコンバータ10はシール76をさらに備え、ハブ80はシール76を介してハブ74に対してシールされている。1つの実施態様では、ハブ80は、トランスミッション入力軸82に対してシールするために配置されている。1つの実施態様では、トルクコンバータ10は、タービン20に駆動係合し、タービン20のタービンシェル22に直接固定されたばねリテーナ44を含むダンパ40をさらに備える。1つの実施態様では、バランスプレート46は、少なくとも1つの板ばね64と少なくとも1つのリベット60,62を介して周方向でピストンプレート38に接続されている。リベット60及び62は周方向でずらされている。
【0035】
もちろん、本発明の上記の例に対する変更及び修正は、請求項に記載の本発明の思想又は範囲から逸脱することなく、当業者にとって容易に明らかとなるべきである。本発明は特定の好適な及び/又は例としての実施の形態を参照することによって説明されているが、請求項に記載の本発明の範囲又は思想から逸脱することなく変更をなし得ることは明らかである。
図1
図2
図3