特許第6713596号(P6713596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6713596-圧縮空気用異物分離除去装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6713596
(24)【登録日】2020年6月8日
(45)【発行日】2020年6月24日
(54)【発明の名称】圧縮空気用異物分離除去装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 50/00 20060101AFI20200615BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20200615BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20200615BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20200615BHJP
   B04C 5/185 20060101ALI20200615BHJP
   B04C 9/00 20060101ALI20200615BHJP
   F04B 39/16 20060101ALI20200615BHJP
   F04B 39/04 20060101ALI20200615BHJP
【FI】
   B01D50/00 501Z
   B01D50/00 501J
   B01D50/00 502A
   B01D53/04 110
   B01J20/20 B
   B01J20/26 A
   B04C5/185
   B04C9/00
   F04B39/16 C
   F04B39/04 G
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-232081(P2018-232081)
(22)【出願日】2018年12月12日
(65)【公開番号】特開2020-93206(P2020-93206A)
(43)【公開日】2020年6月18日
【審査請求日】2018年12月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000154521
【氏名又は名称】株式会社フクハラ
(74)【代理人】
【識別番号】100129056
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 信雄
(72)【発明者】
【氏名】福原 廣
【審査官】 青木 太一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−231035(JP,A)
【文献】 特開2015−020112(JP,A)
【文献】 特許第6389992(JP,B2)
【文献】 特開2007−245014(JP,A)
【文献】 実開昭60−108329(JP,U)
【文献】 特開平9−170582(JP,A)
【文献】 特開平7−185245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 50/00
B01D 45/00−45/18
B01D 46/00−46/54
B01D 53/02−53/12
B01J 20/00−20/34
B04C 1/00−11/00
F04B 39/00−39/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気圧縮機から吐出された圧縮空気中の異物を分離・除去するための圧縮空気用異物分離除去装置であって、
油吸着装置と、配管路と、サイクロンセパレータと、から成り、
該油吸着装置は、中空部を有し上方及び下方が夫々開口した筒状体から成る中空筒本体と、所定箇所に流入口を備え且つ締結手段を介して該中空筒本体の下方開口端を閉塞可能な底板と、所定箇所に排気口を備え且つ締結手段を介して該中空筒本体の上方開口端を閉塞可能な蓋体と、該中空筒本体の中空部内に油吸着材が充填されて成り、
油吸着材は、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリエチレンテフタレートの中から選択される少なくとも一種若しくは複数種の不織布を含む繊維状物に酸変性若しくは酸化させた高級脂肪酸あるいはポリオレフィンワックスを添加または塗布したものを所要長さ・幅・厚さの立方体形状若しくは直方体形状に成形して成り、
配管路は、水平方向から鉛直下方方向に向かう第1屈曲部と、鉛直下方方向から水平方向に向かう第2屈曲部と、水平方向から鉛直上方に向かう第3屈曲部とを有し、
該油吸着装置の前段に、配管路を介してサイクロンセパレータが具備されて成ることを特徴とする圧縮空気用異物分離除去装置。
【請求項2】
前記サイクロンセパレータに、ドレントラップが備えられていることを特徴とする請求項1に記載の圧縮空気用異物分離除去装置。
【請求項3】
前記油吸着装置における中空筒本体の中空部内に、油吸着材と活性炭とが交互に積層した状態で充填されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の圧縮空気用異物分離除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮空気内の異物を分離・除去するための装置に関し、詳しくは、空気圧縮機が吐出する圧縮空気に含有されるオイルミストや水分、オゾンといった異物を分離・除去するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気圧縮機が吐出する圧縮空気内には、オイルミストやスラッジなどの異物が含有している。従来より、かかる異物を圧縮空気から分離・除去すべく、圧縮空気圧回路の所定中間箇所、特に末端箇所において、グラスファイバーや樹脂を編み込み若しくは中空糸膜により成形されたミストフィルターを使用することが一般的であった。
【0003】
しかしながら、上記従来のミストフィルターによれば、油滴やスラッジにより目詰まりが発生し易いといった問題があった。また、上記従来のミストフィルターでは、圧縮空気の通過距離が短いためにオイルミストを完全に除去することができず、多量のオイルミストが残留したまま圧縮空気を吐出してしまうといった問題があった。
【0004】
また、従来より、二重若しくはそれ以上の円筒から構成され、内筒の内側または外筒と内筒の間のどちらか若しくは両方に油吸着材を充填して成り、長さ方向でオイルミストを吸着させる装置も提案されている。
【0005】
しかしながら、上記従来の油吸着材を充填した装置によれば、単にオイルミストのみを分離するだけの機能を有するにとどまり、圧縮空気中のオゾンを除去できるものではなかった。これにより、少なくとも圧縮比分だけ大気より濃度の上がったオゾンは、当該装置でオイルだけを分離・除去してしまうと、オイルのように容易に酸化でき得る相手をなくし、装置以降の2次側機器等において使用されているSBR(スチレンブタジュンゴム)やNBR(ニトリルゴム)、NR(天然ゴム)等のジェン系ゴムを使用したパッキン材等を酸化劣化させることとなって、シール不良を引き起こすといった問題があり、その害を防ぐためにハロゲン類を結合させた素材から成るパッキン類を備える装置へと変更するにも、多くの手間と費用がかかるといった問題があった。
【0006】
上記問題を解決すべく、特開2015−20112号公報(特許文献1)に記載の技術提案がなされている。すなわち、特許文献1では、空気圧縮機から吐出された圧縮空気中の異物を分離・除去するための圧縮空気用オイル及びオゾン分離除去装置であって、中空部を有し上方及び下方が夫々開口した筒状体から成る中空筒本体と、所定箇所に流入口を備え且つ締結手段を介して前記中空筒本体の下方開口端を閉塞可能な底板と、所定箇所に排気口を備え且つ締結手段を介して前記中空筒本体の上方開口端を閉塞可能な蓋体と、から成り、前記中空筒本体の中空部内に、油吸着材と活性炭とが交互に積層した状態で充填された手段を採用している。
【0007】
かかる特許文献1に記載の技術提案によれば、油吸着材と活性炭とを積層しつつ充填した構造であるため、油吸着材により酸化していないオイルミストを分離・除去することができると共に、活性炭により酸化したオイルミストを分離・除去することができ、さらに活性炭がオゾンを分解・除去することが可能となって、当該装置以降に接続された2次側機器をオイルとオゾンから保護することが可能となる。
【0008】
しかしながら、圧縮空気中には、オイルミストやオゾンだけでなく水分もまた含まれていることから、特許文献1に記載の技術提案を採用した場合に、中空筒本体内にも水分を含んだ圧縮空気が流入することとなる。かかる中空筒本体内には油吸着材と活性炭が積層されているが、主にポリエチレンやポリプロピレン、ポリエチレンテフタレートから成る油吸着材は、疎水性であって水分を吸着することはできず、また、活性炭に水分が付着してしまうと、該活性炭が有する細孔の吸着作用が減退してしまいオゾンの分解という本来の目的を阻害してしまう。
また、水分は、酸化したオイルと交じり合うことで、エマルジョンとなったり、Phの高い油水混合体となったりして、油吸着材の油分吸着能力を阻害してしまう。
【0009】
本出願人は、以上のような従来の圧縮空気用異物分離除去装置における問題点に着目し、前段に圧縮空気中の水分を除去する手段を設けることで上記問題点を解決することができないものかとの着想の下、圧縮空気中のオイルミスト及び水分並びにオゾンを同時に分離・除去することが可能な異物分離除去装置を開発し、本発明における「圧縮空気用異物分離除去装置」の提案に至るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2015−20112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑み、圧縮空気中のオイルミスト及び水分並びにオゾンを同時に分離・除去することが可能な、圧縮空気用異物分離除去装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は、 空気圧縮機から吐出された圧縮空気中の異物を分離・除去するための圧縮空気用異物分離除去装置であって、油吸着装置と、配管路と、サイクロンセパレータと、から成り、該油吸着装置は、中空部を有し上方及び下方が夫々開口した筒状体から成る中空筒本体と、所定箇所に流入口を備え且つ締結手段を介して該中空筒本体の下方開口端を閉塞可能な底板と、所定箇所に排気口を備え且つ締結手段を介して該中空筒本体の上方開口端を閉塞可能な蓋体と、該中空筒本体の中空部内に油吸着材が充填されて成り、油吸着材は、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリエチレンテフタレートの中から選択される少なくとも一種若しくは複数種の不織布を含む繊維状物に酸変性若しくは酸化させた高級脂肪酸あるいはポリオレフィンワックスを添加または塗布したものを所要長さ・幅・厚さの立方体形状若しくは直方体形状に成形して成り、配管路は、水平方向から鉛直下方方向に向かう第1屈曲部と、鉛直下方方向から水平方向に向かう第2屈曲部と、水平方向から鉛直上方に向かう第3屈曲部とを有し、該油吸着装置の前段に、配管路を介してサイクロンセパレータが具備された手段を採用する。
【0013】
好ましきは、本発明は、前記サイクロンセパレータに、ドレントラップが備えられている手段を採用する。
【0014】
好ましきは、本発明は、前記油吸着装置における中空筒本体の中空部内に、油吸着材と活性炭とが交互に積層した状態で充填されている手段を採る。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる圧縮空気用異物分離除去装置によれば、油吸着装置の前段にサイクロンセパレータが具備されていることで、該サイクロンセパレータにより圧縮空気中の水分が分離・除去されるため、油吸着装置内への水分の流入を防止することが可能となり、且つ、結果として以降に水分が分離・除去された圧縮空気を送ることが可能となる。そのため、水分が酸化したオイルと交じり合うことで、エマルジョンとなったり、Phの高い油水混合体となったりして、油吸着材の油分吸着能力を阻害することを防止可能である。
【0016】
さらに、本発明にかかる圧縮空気用異物分離除去装置によれば、配管路の第1乃至第3屈曲部にオイルミストを衝突させることで、油滴径を大きくすることができ、油吸着材による吸着処理能力をより向上可能である。
【0017】
総じて、本発明にかかる圧縮空気用異物分離除去装置によれば、サイクロンセパレータで水分とオゾンを分離・除去することが可能であると共に、油吸着装置でオイルミストを分離・除去することが可能であることから、以降に接続された2次側機器をオイル及び水分並びにオゾンから保護することが可能である、といった従来にない優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明にかかる圧縮空気用異物分離除去装置の実施形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明にかかる圧縮空気用異物分離除去装置1は、油吸着材Tが充填されて成る油吸着装置10の前段に、配管路40を介してサイクロンセパレータ30が具備されていることを最大の特徴とする。
以下、本発明にかかる圧縮空気用異物分離除去装置1の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0020】
なお、本発明にかかる圧縮空気用異物分離除去装置1は、以下に述べる実施形態に特に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内、すなわち同一の作用効果を発揮できる形状や寸法、材質等の範囲内で適宜変更することができる。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明にかかる圧縮空気用異物分離除去装置1の実施形態を示す説明図である。
本発明にかかる圧縮空気用異物分離除去装置1は、空気圧縮機から吐出された圧縮空気中の異物を分離・除去するための装置であって、主な構成として、油吸着装置10と、配管路40と、サイクロンセパレータ30と、から構成されている。
【0022】
油吸着装置10は、中空筒本体11と、底板13と、蓋体14と、から構成されている。
該中空筒本体11は、中空部12を有し、上方及び下方が夫々開口した筒状体から構成されている。中空筒本体11の外形状については、筒状であれば特に限定はなく、円筒形状や多角筒形状が考え得る。該中空筒本体11の下方及び上方の開口端には、夫々底板13及び蓋体14が装着される。そしてまた、中空部12内には、油吸着材Tが充填されている。
【0023】
油吸着材Tの材質については、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリエチレンテフタレートといった、従来から用いられている常法のものを使用すれば足り。なお、本発明で使用する油吸着材Tとして、好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテフタレートの中から選択される少なくとも一種若しくは複数種の不織布を含む繊維状物に、酸変性若しくは酸化させた高級脂肪酸あるいはポリオレフィンワックスを添加または塗布し、それを所要長さ・幅・厚さの立方体形状若しくは直方体形状に成形したものを採用る。
【0024】
上記の通り、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテフタレートの繊維状物に、酸変性若しくは酸化させた高級脂肪酸あるいはポリオレフィンワックスを添加または塗布することによって、油吸着材Tの親油性・オイル保持力を高めることが可能となる。
ただし、それらをしても、酸化したオイルとドレンとでPhが高くなった油水混合体を吸着することは難しい。また、エマルジョン化した油水混合体を単独で吸着処理することはほとんど不可能である。
また、油吸着材Tについてはオイルミストの粒径が大きい方が、その吸着・保持効果が高い。
【0025】
油吸着材Tを立方体形状若しくは直方体形状に成形する際の寸法については、特に限定はないが、例えば長さ約10mm、幅約5mm、厚さ約5mm程度の小形の直方体形状とすることが考え得る。これにより、小形の集合体であっても充分にオイルを保持することができると共に、表面積を増やしつつも圧縮空気の通りを良好にし、圧力損失を抑えることを可能にする。
【0026】
油吸着装置10における底板13は、前記中空筒本体11における下方の開口端を閉塞可能な大きさを有し、所定箇所(好ましくは平面視略中央箇所)に流入口13aを備えた構成となっている。該底板13の中空筒本体11の下方開口端への締結手段については、特に限定はないが、例えば螺子等の締結手段により装着されることとなる。
【0027】
前記底板13の上面には、流路形成体20を備える態様が考え得る。該流路形成体20は、所要高さを有する外周側壁21と、該外周側壁21で囲まれた空間上方を閉塞する天面板22と、から構成されており、外周側壁21には、前記流入口13aと略同一径を有する孔部23が複数備えられている。かかる複数の孔部23は、外周側壁21に等間隔で備えられるのが望ましく、さらには4乃至16個の孔部23が外周側壁21に備えられる態様が好ましい。
【0028】
該流路形成体20が備えられることで、底板13の流入口13aから上方略垂直方向に向け流入した圧縮空気が、該流路形成体20の複数の孔部23を介して側方へ方向を変えつつ分流され、その後再び上方略垂直方向に向きを変えて中空筒本体11の中空部12内に均一に流入されることとなる。なお、孔部23の径を流入口13aと略同一径とすることで、圧縮空気の圧力損失を極力抑えることが可能となる。
【0029】
油吸着装置10における蓋体14は、前記中空筒本体11における上方の開口端を閉塞可能な大きさを有し、所定箇所(好ましくは平面視略中央箇所)に排気口14aを備えた構成となっている。該蓋体14の中空筒本体11の上方開口端への締結手段については、前記底板13同様、特に限定はないが、例えば螺子等の締結手段により装着されることとなる。
【0030】
なお、流入口13aが中空筒本体11の底板13側、排気口14aが中空筒本体11の蓋体14側にある理由は、オイルミストの上方へ向かおうとする慣性を重力によって弱めていくためである。
【0031】
サイクロンセパレータ30は、圧縮空気中の水分を除去するためのサイクロン式の分離装置であって、流入口31からハウジング内に入った圧縮空気は、遠心力によって空気中の水分がハウジング32内壁に叩き付けられ落下し、エアのみ中央部に備えられるカートリッジ33を介して排気口34から取り出される構造を有している。
サイクロンセパレータ30によって圧縮空気中の水分が除去されると、水分が酸化したオイルと交じり合うことで、エマルジョンとなったり、Phの高い油水混合体となったりして、油吸着装置10における活性炭Cのオゾン分解能力や油吸着材Tの油分吸着能力を阻害することが防止可能である。
サイクロンセパレータ30は、前記油吸着装置10の前段に配設され、すなわちサイクロンセパレータ30の排気口34と油吸着装置10の流入口13aとは、配管路40によって接続・連通されている。
【0032】
サイクロンセパレータ30には、ドレントラップ35が備えられている。該ドレントラップ35は、サイクロンセパレータ30内部に貯留された水分を外部へ排出するための装置であって、その排出方法により電磁式やフロート式などが存在する。本発明で使用するドレントラップ35は、電磁式とフロート式とを問うものではなく、特に限定されない。かかるドレントラップ35は、サイクロンセパレータ30におけるハウジング32の下端に接続されている。
【0033】
配管路40は、水平方向から鉛直下方方向に向かう第1屈曲部41と、鉛直下方方向から水平方向に向かう第2屈曲部42と、水平方向から鉛直上方に向かう第3屈曲部43とを有している。
各屈曲部は、サイクロンセパレータ30と油吸着装置10とを配管路40によって適宜配管するための効果と、圧縮空気が第1屈曲部41、第2屈曲部42、並びに第3屈曲部43を通過していく際において、オイルミストに対して、その進行方向に対する慣性のはたらきによって、当該屈曲箇所の壁面に当たらせることで、ミストの粒径を大きくして油吸着装置10における吸着能力を増大させるという効果とを有する。
【0034】
以上によれば、サイクロンセパレータ30及びドレントラップ35の効果によって、油吸着装置10において、底板13側にドレンなどの水分が貯留してしまうことがないので、流入口13a側から排気口14a側へ向けて、すなわち2次側に向けて当該ドレンを巻き上げてしまうこともない。
また、巻き上げた水分が酸化したオイルと交じり合うことで、エマルジョンとなったり、Phの高い油水混合体となったりして、油吸着装置10における油吸着材Tの油分吸着能力が阻害されることもない。
さらに、配管路40における第1屈曲部41、第2屈曲部42、並びに第3屈曲部43は、オイルミストの粒径を大きくして油吸着装置10における吸着能力を増大させる。
【0035】
以上の各構成要素から、本発明にかかる圧縮空気用異物分離除去装置1は構成されており、詳しくは、油吸着装置10の前段に、配管路40を介してサイクロンセパレータ30が具備されて成る。本発明にかかる圧縮空気用異物分離除去装置1は、空気圧縮機Aの後段に装備されるもので、該空気圧縮機Aが送出する圧縮空気中に含まれるオイルミストや水分、オゾンといった異物を分離・除去して、以降に接続された2次側機器に対し、異物のない圧縮空気のみを送気すべく機能する。
【0036】
本発明にかかる圧縮空気用異物分離除去装置1の具体的な接続態様は、空気圧縮機Aと圧縮空気用異物分離除去装置1におけるサイクロンセパレータ30の流入口31とが配管路40を介して繋がると共に、油吸着装置10の排気口14aと以降に接続された2次側機器とが同じく配管路40を介して繋がる態様となる。これにより、空気圧縮機Aで発生した圧縮空気は、配管路40を通ってサイクロンセパレータ30に流入し、その後サイクロンセパレータ30から排気されて配管路40を通って油吸着装置10に流入し、該油吸着装置10から排気されて配管路40を通って最終的に以降に接続された2次側機器へ送られることとなる。この過程において、圧縮空気は、サイクロンセパレータ30により水分とオゾンが分離・除去されると共に、油吸着装置10によりオイルミストが分離・除去されることとなって、これら異物が分離除去された綺麗な圧縮空気が2次側機器へ送気されるものである。
【0037】
このように、本発明にかかる圧縮空気用異物分離除去装置1によれば、サイクロンセパレータ30で水分とオゾンを分離・除去することが可能であると共に、油吸着装置10でオイルミストを分離・除去することが可能であることから、以降に接続された2次側機器をオイル及び水分並びにオゾンから保護することが可能であると共に、油吸着装置10へのオゾンの流入が防止されるため、該油吸着装置10における中空筒本体11の中空部12内にオゾン分離・除去用の活性炭Cを充填する必要がなくなる。
【実施例2】
【0038】
本発明にかかる圧縮空気用異物分離除去装置1の他の実施例について説明する。上記実施例1と同様の部分は省略する。
実施例1では、油吸着装置10における中空筒本体11の中空部12内に、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリエチレンテフタレート等から成る油吸着材Tのみを充填する態様について説明した。しかしながら、該油吸着材Tは、酸化したオイルミストの分離・除去効率が著しく悪いものであって、かかる酸化したオイルミストを効率良く分離・除去可能な手段が求められるところであった。
また、圧縮空気中から酸化しやすい異物が除去されると、主として空気圧縮機Aの吐出動作によって発生するオゾンが残存しやすく、回路中のシール材などのゴム状樹脂が劣化しやすいという問題もある。
【0039】
そこで、油吸着装置10における中空筒本体11の中空部12内に、油吸着材Tと併せて活性炭Cを充填する態様、具体的には、油吸着材Tと活性炭Cとが交互に積層した状態で充填されている態様を採用することができる。
活性炭Cは酸化したオイルミストの他に、オゾンを分解させる効果も有するからである。
ただし、活性炭Cについても、ドレンなどの水分の付着によって、オイルミストの吸着やオゾンの分解処理能力が低下する。
活性炭Cについては、従来から用いられている常法のものを使用すれば足り、原材料等についても植物質や石炭質、石油質など特に限定するものではなく、酸化したオイルの吸着効率などを考慮して適宜決定される。なお、本発明で使用する活性炭Cとして、好ましくは、粒状に成形されたものを用いる態様を採用する。
【0040】
活性炭Cを粒状に成形する際の寸法については、特に限定はないが、例えば粒径が約1〜5mm程度とすることが考え得る。これにより、活性炭Cの表面積を増やしつつも圧縮空気の通りを良好にし、圧力損失を抑えることを可能にする。
【0041】
このように、油吸着装置10における中空筒本体11の中空部12内に油吸着材Tと活性炭Cとを交互に積層・充填する場合において、該油吸着材Tと活性炭Cの積層順及び充填量については特に限定はないが、より好ましきは、図示のとおり、最上層及び最下層には油吸着材Tが積層される構成態様を採用し得る。かかる態様を採用することで、酸化していないオイルの活性炭Cへの付着を極力防げ、活性炭の寿命を延ばすことができ、また、以降に接続された2次側機器にオイルが持ち出されることを極力防ぐことができる。
【0042】
かかる油吸着材Tと活性炭Cとは、油吸着装置10における中空筒本体11の中空部12において、上方から所定圧力で加圧しつつ押し込むように積層・充填することが望ましい。これにより、充填むらを無くすことができ、油吸着材T・活性炭C夫々の一重量当たりの吸着能力、および夫々の実際の充填量との積で得られる油吸着装置10としての吸着能力、そして充填密度による圧力損失を、いずれも正確な数値でもって計算・制御することが可能となる。
【0043】
ところで、上記の通り油吸着材T及び活性炭Cを交互に積層した状態で充填する際に、その最下端面あるいは最上端面若しくは油吸着材Tと活性炭Cとの境界面に、パンチングプレート25を配設する態様が可能である。かかるパンチングプレート25は、選択的に少なくとも一箇所以上に配設されるものであり、図面では最下端面と油吸着材Tと活性炭Cとの境界面の二箇所に夫々パンチングプレート25を配設した態様について示している。
【0044】
該パンチングプレート25は、油吸着装置10における中空筒本体11の中空部12内に略水平状に挿嵌可能な平板であって、所定径を有する通気孔が複数備えられた構成となっている。かかる通気孔は、好ましくは2mm以上6mm以下の径を有し、また、隣接する通気孔同士が少なくとも1mm以上の間隔をおいて備えられる。
かかるパンチングプレート25を配設することで、複数の通気孔により圧縮空気を分流して相当数の流路を形成することが可能となって、積層・充填された油吸着材T及び活性炭Cの能力を最大限に引き出すことが可能となる。
【0045】
また、油吸着装置10における蓋体14の下方には、図示していないが、濾過フィルターが装着される態様が考え得る。該濾過フィルターは、底面が閉塞されると共に上方が開放され且つ外周側面にはフィルターエレメントが配備された筒状体構造となっており、開放された上方箇所を蓋体14の排気口14aに連結することで、蓋体14の下方に装着される。
【0046】
なお、フィルターエレメントは粒径0.1マイクロメートル程度の濾過特性を有するものとし、濾過フィルターによる圧力損失が約1〜20kPa程度に抑えることが望ましい。かかる濾過フィルターを備えることで、圧縮空気中に含まれる活性炭の微粉末を濾過フィルターで除去してから排気口14aを介して排気することとなって、該微粉末の2次側機器への漏出を防止することが可能となる。
【0047】
以上の各構成要素から成る本発明にかかる圧縮空気用異物分離除去装置1は、空気圧縮機Aの後段に装備されるもので、該空気圧縮機Aで発生した圧縮空気は、配管路40を通ってサイクロンセパレータ30に流入し、その後サイクロンセパレータ30から排気されて配管路40を通って油吸着装置10に流入し、該油吸着装置10から排気されて配管路40を通って最終的に以降に接続された2次側機器へ送られることとなる。この過程において、圧縮空気は、サイクロンセパレータ30により水分とオゾンが分離・除去されると共に、油吸着装置10の油吸着材Tにより酸化されていないオイルミストが分離・除去され、且つ、活性炭Cにより酸化されたオイルミストが分離・除去されることとなって、これら異物が分離除去された綺麗な圧縮空気が2次側機器へ送気されるものである。
【0048】
このように、本発明にかかる圧縮空気用異物分離除去装置1によれば、実施例1と同様にサイクロンセパレータ30及びドレントラップ35の効果によって、油吸着装置10において、底板13側にドレンなどの水分が貯留してしまうことがないので、流入口13a側から排気口14a側へ向けて、すなわち2次側に向けて当該ドレンを巻き上げてしまうこともない。
また、巻き上げた水分が酸化したオイルと交じり合うことで、エマルジョンとなったり、Phの高い油水混合体となったりして、油吸着装置10の活性炭Cにおけるオゾン分解能力や油吸着材Tの油分吸着能力が阻害されることもない。
さらに、配管路40における第1屈曲部41、第2屈曲部42、並びに第3屈曲部43は、オイルミストの粒径を大きくして油吸着装置10における吸着能力を増大させる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、圧縮空気用異物分離除去装置1において、油吸着装置10の前段に配管路40を介してサイクロンセパレータ30が具備されていることで、該サイクロンセパレータ30で水分とオゾンを分離・除去することが可能であると共に、油吸着装置10でオイルミストを分離・除去することが可能であることから、以降に接続された2次側機器をオイル及び水分並びにオゾンから保護することが可能となる。したがって、本発明にかかる「圧縮空気用異物分離除去装置」の産業上の利用可能性は大であると思料する。
【符号の説明】
【0050】
1 圧縮空気用異物分離除去装置
10 油吸着装置
11 中空筒本体
12 中空部
13 底板
13a 流入口
14 蓋体
14a 排気口
20 流路形成体
21 外周側壁
22 天面板
23 孔部
25 パンチングプレート
30 サイクロンセパレータ
31 流入口
32 ハウジング
33 カートリッジ
34 排気口
35 ドレントラップ
40 配管路
41 第1屈曲部
42 第2屈曲部
43 第3屈曲部
A 空気圧縮機
C 活性炭
T 油吸着材
図1