(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6713801
(24)【登録日】2020年6月8日
(45)【発行日】2020年6月24日
(54)【発明の名称】蒸気加熱装置
(51)【国際特許分類】
F28D 11/02 20060101AFI20200615BHJP
F22B 3/04 20060101ALN20200615BHJP
【FI】
F28D11/02
!F22B3/04
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-52545(P2016-52545)
(22)【出願日】2016年3月16日
(65)【公開番号】特開2017-166753(P2017-166753A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2019年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【弁理士】
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】土岩 仙明
【審査官】
瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−192041(JP,A)
【文献】
特開2010−252880(JP,A)
【文献】
特開2009−045780(JP,A)
【文献】
特開平1−315336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 11/02
B31F 1/00− 7/02
A61L 2/00− 2/28,
11/00−12/14
F22D 11/06
F22B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気が凝縮して対象物を加熱する熱交換器に接続され、該熱交換器に蒸気を供給する供給管と、
上記熱交換器に排出管を介して接続され、該熱交換器の内部を吸引作用により真空状態にする吸引機構と、
上記排出管の途中から分岐して大気に開放されると共に、開閉弁が設けられた分岐管と、
運転初期時に、上記吸引機構を停止し且つ上記開閉弁を開弁し、上記供給管から大気圧よりも高い圧力の凝縮性ガスを上記熱交換器に供給する初期運転を実行し、上記熱交換器の内部温度が設定温度に達すると、上記開閉弁を閉弁し且つ上記吸引機構を駆動し、上記供給管から大気圧よりも低い圧力の蒸気を上記熱交換器に供給する通常運転を実行する制御部とを備え、
上記吸引機構は、大気開放型のドレンタンクと、吸引口が上記排出管に接続されたエゼクタと、上記ドレンタンクのドレンを上記エゼクタとの間で循環させるポンプとを有し、
上記分岐管は、流入端が上記排出管の途中に接続され、流出端が上記ドレンタンクに接続されている
ことを特徴とする蒸気加熱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蒸気加熱装置において、
上記排出管の途中に設けられたスチームトラップを備えており、
上記分岐管の流入端は、上記排出管における上記スチームトラップの上流側に接続されている
ことを特徴とする蒸気加熱装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の蒸気加熱装置において、
上記制御部は、上記初期運転を実行し、上記熱交換器から上記排出管に排出された流体の温度が設定温度に達すると、上記通常運転を実行する
ことを特徴とする蒸気加熱装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の蒸気加熱装置において、
上記凝縮性ガスは、蒸気である
ことを特徴とする蒸気加熱装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の蒸気加熱装置において、
上記熱交換器は、内部に上記供給管から蒸気が供給される円柱状のロール本体を有する加熱ロールである
ことを特徴とする蒸気加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、真空蒸気で加熱する蒸気加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、大気圧よりも低い圧力の蒸気(真空蒸気)で対象物を加熱する蒸気加熱装置が知られている。この蒸気加熱装置は、熱交換器(反応釜のジャケット部)の内部が吸引機構(ポンプ装置)の吸引作用により真空状態にされる。そして、真空状態の熱交換器に所定温度の蒸気が供給され、その蒸気が凝縮することによって対象物が加熱(潜熱加熱)される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平5−34054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したような蒸気加熱装置は、長時間運転停止した後の運転開始時では熱交換器を含め装置全体が大気圧またはそれに近い圧力状態になっている。つまり、運転が長時間停止されている間、外部から熱交換器等に空気が侵入してしまう。そのため、従来では、通常の運転を開始する前に、吸引機構を駆動して熱交換器から空気を排出する運転を行っていた。そのため、通常運転の開始に時間が懸かる、即ち運転の立ち上げ時間が長いという問題があった。
【0005】
本願に開示の技術は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱交換器から空気を排出させるのに要する時間を短縮し、いち早く運転を開始することができる蒸気加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に開示の技術は、上記の目的を達成するために、運転開始時に、吸引機構を駆動せずに、凝縮性のガスを熱交換器に供給(圧送)して熱交換器の空気等を大気へ排出するようにした。
【0007】
具体的に、本願の蒸気加熱装置は、供給管と、吸引機構と、分岐管と、制御部とを備えている。上記供給管は、蒸気が凝縮して対象物を加熱する熱交換器に接続され、該熱交換器に蒸気を供給するものである。上記吸引機構は、上記熱交換器に排出管を介して接続され、該熱交換器の内部を吸引作用により真空状態にするものである。上記分岐管は、上記排出管の途中から分岐して大気に開放されると共に、開閉弁が設けられている。上記制御部は、運転初期時に初期運転を実行し、上記熱交換器の内部温度が設定温度に達すると、通常運転を実行する。上記初期運転は、上記吸引機構を停止し且つ上記開閉弁を開弁し、上記供給管から大気圧よりも高い圧力の凝縮性ガスを上記熱交換器に供給する運転である。上記通常運転は、上記開閉弁を閉弁し且つ上記吸引機構を駆動し、上記供給管から大気圧よりも低い圧力の蒸気を上記熱交換器に供給する運転である。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本願の蒸気加熱装置によれば、運転開始時に初期運転が実行されることにより熱交換器の内部の空気等を排出することができる。具体的に、初期運転では、凝縮性ガスが供給管から熱交換器に供給されることで、熱交換器の内部および排出管に存在していた空気等の流体が凝縮性ガスによって下流側へ押される。そして、吸引機構は停止している一方、分岐管の開閉弁は開弁されているので、凝縮性ガスによって押された空気等は排出管から分岐管を通じて外部に排出される。ここで、分岐管は大気に開放されているため、熱交換器への凝縮性ガスの供給によって容易に空気等を分岐管から押し出すことができる。
【0009】
また、熱交換器に供給される凝縮性ガスは圧力が大気圧よりも高いため、凝縮性ガスを熱交換器に容易に供給することができると共にその供給速度を高めることができる。これにより、凝縮性ガスが熱交換器等に存在していた流体を押す力を増大させることができる。また、熱交換器の内部および排出管に流れた凝縮性ガスは、放熱して凝縮する。そのため、熱交換器等において凝縮性ガスが供給されることによる圧力上昇を大幅に抑制することができる。以上により、初期運転を行うことで熱交換器の内部から空気等をいち早く排出することができる。
【0010】
初期運転時の熱交換器では、空気等が排出される一方で凝縮性ガスが流入するため、内部温度が上昇する。そして、熱交換器の内部温度が設定温度まで上昇する(設定温度に達する)と、熱交換器の内部から空気等が排出されたとして通常運転が実行される。通常運転では、分岐管の開閉弁が閉弁される一方、吸引機構が駆動されることにより、熱交換器の内部が吸引減圧され真空状態になる。そして、供給管から大気圧よりも低い圧力の蒸気(真空蒸気)が真空状態の熱交換器に供給される。熱交換器では、供給された蒸気が対象物と熱交換して凝縮し、対象物が加熱(潜熱加熱)される。熱交換器で蒸気の凝縮により発生したドレンは、排出管を介して吸引機構に吸引される。このように、本願の蒸気加熱装置によれば、運転開始時において熱交換器の内部から空気等を排出するのに要する時間を短縮することができるので、いち早く通常の加熱運転を開始することができる。つまり、本願の蒸気加熱装置によれば、熱交換器の内部をいち早く加熱運転に必要な所定の真空状態にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態に係る蒸気加熱装置の概略構成を示す配管系統図である。
【
図2】
図2は、加熱ロールを示す概略的な構成図である。
【
図3】
図3は、制御部の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本願の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本願に開示の技術、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の蒸気加熱装置1は、加熱ロール20に加熱源である蒸気(真空蒸気)を供給し、対象物(図示省略)を所定温度に加熱するものである。加熱ロール20は、例えば、段ボールシート製造装置(コルゲートマシンともいう。)に設けられ、対象物である段ボールシートを加熱するものであり、回転ロールとも呼ばれる。蒸気加熱装置1は、加熱ロール20に蒸気を供給する流体回路10と、該流体回路10の運転制御を行う制御部35とを備えている。
【0014】
流体回路10は、供給管11と、排出管12と、真空発生ユニット15と、バイパス管25とを備えている。
【0015】
供給管11は、加熱ロール20に接続され、図示しない蒸気生成部から所定温度の蒸気が加熱ロール20に供給される。加熱ロール20では、供給管11から供給された蒸気が対象物と間接的に熱交換して凝縮(液化)し、対象物が加熱(潜熱加熱)される。つまり、加熱ロール20は蒸気が凝縮して対象物を加熱する加熱熱交換器であり、本願の請求項に係る熱交換器を構成している。供給管11には、蒸気の圧力を調整する調整弁13が設けられている。
【0016】
排出管12は、一端(流入端)が加熱ロール20に接続され、他端(流出端)が真空発生ユニット15に接続されている。排出管12は、加熱ロール20で蒸気が凝縮して発生したドレン(復水)が排出される。排出管12には、流入したドレンを自動的に下流側へ排出するスチームトラップ14が設けられている。
【0017】
真空発生ユニット15は、ドレンタンク16と、循環配管17と、エゼクタ18と、ポンプ19とを有しており、本願の請求項に係る吸引機構を構成している。真空発生ユニット15は、加熱ロール20と排出管12を介して接続されており、加熱ロール20で発生したドレンを吸引回収すると共に、加熱ロール20の内部を吸引減圧して所定の真空状態(大気圧よりも低い圧力状態)に維持するものである。
【0018】
ドレンタンク16は、排出管12を介して回収されたドレンが貯留されるものであり、いわゆる大気開放型のタンクである。循環配管17は、ドレンタンク16に接続されている。つまり、循環配管17は、一端(流入端)がドレンタンク16の下部に接続され、他端(流出端)がドレンタンク16の上部に接続されている。循環配管17には、上流側(流入端側)から順に、ポンプ19およびエゼクタ18が設けられている。また、真空発生ユニット15では、排出管12がエゼクタ18の吸引口に接続されている。
【0019】
真空発生ユニット15では、ポンプ19によってドレンタンク16のドレン(水)が循環配管17を通って循環する。真空発生ユニット15は、ポンプ19によってドレンタンク16の水が、エゼクタ18の流入口に供給されエゼクタ18の流出口から排出されることにより、エゼクタ18の吸引口において吸引作用が生じるように構成されている。真空発生ユニット15は、エゼクタ18の吸引作用によって、加熱ロール20からドレンを回収すると共に、加熱ロール20および排出管12を減圧する。これにより、加熱ロール20内は所定の真空状態に維持される。
【0020】
バイパス管25は、排出管12の途中から分岐して大気に開放されるものであり、本願の請求項に係る分岐管を構成している。具体的に、バイパス管25の流入端は、排出管12におけるスチームトラップ14の上流側に接続されている。バイパス管25の流出端は、真空発生ユニット15のドレンタンク16に接続されている。つまり、バイパス管25はスチームトラップ14およびエゼクタ18をバイパスしてドレンタンク16に繋がっている。バイパス管25の流出端は、大気開放型のドレンタンク16に接続されていることから、大気に開放されている。そして、バイパス管25には開閉弁であるバイパス弁26が設けられている。
【0021】
加熱ロール20の構成について
図2を参照しながら説明する。加熱ロール20は、ロール本体21と、サイフォン管23とを有している。ロール本体21は、軸心Xに沿って延びる中空状の円柱体であり、その内部に蒸気を収容可能に構成されている。ロール本体21の両端には、軸心Xに沿って延びる軸部22aおよび軸部22bが設けられ、両軸部22a,22bは、軸受(図示省略)により回転自在に支持されている。即ち、ロール本体21は、軸心X回りに回転自在に支持されている。ロール本体21は、軸心Xが水平方向に延びる状態で支持されている。一方の軸部22aには供給管11が接続されており、供給管11から蒸気が軸部22aの内部を通ってロール本体21の内部に供給される。ロール本体21内に供給された蒸気は、ロール本体21の外周面に接触する対象物(例えば、段ボールシート)と熱交換して凝縮し、対象物が加熱される。蒸気は、凝縮してドレンとなり、ロール本体21内の底部に溜まる。
【0022】
サイフォン管23は、軸部22aを介してロール本体21を貫通している。サイフォン管23は、軸部22aから軸心Xに沿ってロール本体21の内方へ延びた後、ロール本体21の底部に向かって屈曲している。サイフォン管23の流入端(
図2において右側端)は、ロール本体21の底部におけるロール本体21の内周面に近接している。サイフォン管23の流出端(
図2において左側端)は、軸部22aから軸心Xに沿ってロール本体21の外方へ延びている。サイフォン管23の流出端には、排出管12が接続されている。加熱ロール20では、ロール本体21内に供給された蒸気の圧力によってドレンがサイフォン管23から排出管12に排出される。
【0023】
制御部35は、流体回路10に「初期運転」と「通常運転」とを切り換えて実行させるように構成されている。この制御部35の動作については後述する。また、供給管11には加熱ロール20の直前に圧力センサ31が設けられ、排出管12には加熱ロール20の直後に温度センサ32が設けられている。圧力センサ32は、供給管11から加熱ロール20に流入する直前の流体の圧力を検出するものであり、その検出圧力は加熱ロール20(ロール本体21)の内部圧力に相当する。温度センサ32は、加熱ロール20から排出管12に排出された流体の温度を検出するものであり、その検出温度は加熱ロール20(ロール本体21)の内部温度に相当する。
【0024】
〈運転動作および制御動作〉
制御部35は、運転開始時(運転初期時)において流体回路10に「初期運転」を実行させ、その後、「通常運転」を実行させる。「初期運転」および「通常運転」の運転動作と、制御部35による制御動作について
図3も参照しながら説明する。
【0025】
初期運転は、加熱ロール20の内部から空気等の流体を排出する運転である。初期運転では、先ず、制御部35により、真空発生ユニット15(ポンプ19)が停止されると共に、バイパス弁26が開弁される(ステップST1)。続いて、凝縮性ガスとしての第1圧力蒸気が供給管11から加熱ロール20に供給される(ステップST2)。ここに、第1圧力蒸気とは大気圧よりも高い圧力(例えば、0.15〜0.20MPa)の蒸気である。
【0026】
初期運転では、第1圧力蒸気が加熱ロール20に供給されることにより、加熱ロール20の内部および排出管12に存在していた空気等の流体が第1圧力蒸気によって下流側へ押される。そして、真空発生ユニット15は停止している一方、バイパス弁26は開弁されているので、第1圧力蒸気によって押された空気等はバイパス管25から排出される。ここで、バイパス管25の流出端は大気に開放されているので、加熱ロール20への第1圧力蒸気の供給によって容易に空気等をバイパス管25から押し出すことができる。
【0027】
また、第1圧力蒸気は圧力が大気圧よりも高いため、第1圧力蒸気を加熱ロール20に容易に供給することができるし、その供給速度を高めることができる。これにより、第1圧力蒸気が加熱ロール20等に存在していた流体を押す力が増大する。さらに、加熱ロール20に供給された第1圧力蒸気は、凝縮性であるため、放熱して凝縮する。そのため、加熱ロール20等において第1圧力蒸気が供給されることによる圧力上昇を大幅に抑制することができる。以上のように、初期運転を行うことにより、加熱ロール20の内部から空気等をいち早く排出することができる。
【0028】
制御部35は、初期運転中において、温度センサ32の検出温度(以下、出口温度という。)が上昇して設定温度に達したか否かを判定する(ステップST3)。出口温度が設定温度に達していない場合、初期運転が継続される。また、ステップST3において出口温度が設定温度に達したと判定されると、ステップST4へ移行し、制御部35は流体回路10に通常運転を実行させる。ここで、上記の設定温度は、加熱ロール20に供給される第1圧力蒸気の温度またはそれよりも少し低い温度である。加熱ロール20から排出管12に空気等が排出されている状態では、出口温度はそれほど上昇しない。そして、加熱ロール20内の空気等が全て排出されると、加熱ロール20から排出管12に空気等の温度よりも高温の第1圧力蒸気が流れるため、出口温度が上昇する。つまり、制御部35は、出口温度が設定温度まで上昇したことをもって、加熱ロール20の内部温度が上記設定温度まで上昇したとみなす。そして、加熱ロール20の内部温度が上記設定温度まで上昇したことをもって、加熱ロール20内の空気等が全て排出されたとみなし、初期運転から通常運転に切り換える。さらに言い換えると、本実施形態の蒸気加熱装置1では、初期運転が実行され、その後、加熱ロール20の内部温度が設定温度に達すると、通常運転が実行される。
【0029】
通常運転は、所定の蒸気を加熱ロール20に供給し、蒸気で対象物をその目標温度に加熱する運転である。通常運転では、制御部35により、バイパス弁26が閉弁されると共に、真空発生ユニット15(ポンプ19)が運転(駆動)される(ステップST4,ステップST5)。真空発生ユニット15が運転されることにより、加熱ロール20の内部が所定の真空状態になる。そして、通常運転では、制御部35により、第2圧力蒸気が供給管11から加熱ロール20に供給される(ステップST6)。ここに、第2圧力蒸気は、大気圧よりも低い圧力(例えば、0.08〜0.10MPa)の蒸気、即ち真空蒸気である。加熱ロール20では、供給管11から供給された真空蒸気である第2圧力蒸気が対象物と熱交換して凝縮し、対象物がその目標温度に加熱される。加熱ロール20で第2圧力蒸気の凝縮により発生したドレンは、排出管12を介して真空発生ユニット15に吸引される。
【0030】
以上のように、上記実施形態の蒸気加熱装置1によれば、運転初期時に、真空発生ユニット15を停止すると共にバイパス弁26を開弁し、大気圧よりも高い圧力の凝縮性ガスを加熱ロール20に供給するようにした。これにより、加熱ロール20の内部から空気等を素早く排出することができる。したがって、いち早く通常運転(加熱運転)を開始することができる。
【0031】
また、上記実施形態の蒸気加熱装置1によれば、初期運転で加熱ロール20に供給する凝縮性ガスとして通常運転で用いるものと同じ蒸気を用いるようにしたので、別のガスを用意する必要がない。なお、上記実施形態の初期運転では、蒸気以外の凝縮性ガスを用いるようにしてもよい。例えば、メチルアルコールや1−プロパノールが挙げられる。
【0032】
また、上記実施形態の蒸気加熱装置1では、初期運転中において加熱ロール20から排出管12に排出された流体の温度(出口温度)が設定温度に達すると、通常運転を実行するようにした。つまり、上記実施形態では、加熱ロール20の内部温度が設定温度になったか否かを出口温度に基づいて判定するようにした。したがって、加熱ロール20の内部温度が設定温度になったことを確実に把握することができる。即ち、加熱ロール20は内部容積が比較的大きいため内部において温度ムラが生じる虞があるところ、加熱ロール20の内部温度を直接測定するようにした場合、加熱ロール20の内部温度を正確に測定することができない虞があるが、上記実施形態ではこれを抑制することができる。
【0033】
また、上記実施形態の初期運転では、真空発生ユニット15を停止し、加熱ロール20内の空気等をバイパス管25から大気に排出するようにした。そのため、真空発生ユニット15の吸引容量(吸引能力)に関係なく、加熱ロール20内の空気等を素早く排出することができる。仮に、加熱ロール20内の空気等を真空発生ユニットの吸引によって排出するようにした場合、その排出量は真空発生ユニット15の吸引容量(吸引能力)によって左右される。つまり、真空発生ユニット15の吸引容量が小さいと、加熱ロール20において空気等の排出量も少なくなる。そうすると、空気等の排出に要する時間が長くなってしまう。特に、加熱ロール20(ロール本体21)は一般に容積が比較的大きいため、上述した真空発生ユニット15の吸引容量による影響が顕著となる。上記実施形態では、こういった影響を受けることなく、空気等の排出に要する時間を短縮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本願に開示の技術は、対象物を蒸気で加熱する蒸気加熱装置について有用である。
【符号の説明】
【0035】
1 蒸気加熱装置
11 供給管
12 排出管
15 真空発生ユニット(吸引機構)
20 加熱ロール(熱交換器)
25 バイパス管(分岐管)
26 バイパス弁(開閉弁)
35 制御部