特許第6713819号(P6713819)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6713819
(24)【登録日】2020年6月8日
(45)【発行日】2020年6月24日
(54)【発明の名称】歯科用接着剤セット
(51)【国際特許分類】
   A61K 6/30 20200101AFI20200615BHJP
   A61K 6/60 20200101ALI20200615BHJP
【FI】
   A61K6/30
   A61K6/60
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-92270(P2016-92270)
(22)【出願日】2016年5月2日
(65)【公開番号】特開2017-200881(P2017-200881A)
(43)【公開日】2017年11月9日
【審査請求日】2018年12月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】515279946
【氏名又は名称】株式会社ジーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】坂本 美由紀
【審査官】 榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−086421(JP,A)
【文献】 特開2007−137798(JP,A)
【文献】 特開2011−126830(JP,A)
【文献】 特開2006−176488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K6/00−6/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プライマーと、接着剤を有する歯科用接着剤セットであって、
前記プライマーは、酸基及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を1〜60質量%含有し、水を1〜98質量%含有し、
前記接着剤は、酸基及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を〜40質量%含有し、水溶性有機溶媒を1〜60質量%含有し、水を1〜60質量%含有し、酸基を有さず、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を10〜90質量%含有することを特徴とする歯科用接着剤セット。
【請求項2】
前記接着剤は、前記水の含有量が5〜60質量%であることを特徴とする請求項1に記載の歯科用接着剤セット。
【請求項3】
前記接着剤は、前記水溶性有機溶媒の含有量が25〜55質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の歯科用接着剤セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用接着剤セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯科治療における接着システムとして、エッチング剤によるエッチング、プライマーによるプライミング、ボンディング剤によるボンディングからなる3ステップ接着システムが用いられていた。
【0003】
近年、1液型歯科用接着剤による1ステップ接着システムが開発されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−176488号公報
【特許文献2】特開2011−126830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、接着強さを向上させることが望まれている。
【0006】
本発明の一態様は、接着強さを向上させることが可能な歯科用接着剤セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、プライマーと、接着剤を有する歯科用接着剤セットであって、前記プライマーは、酸基及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を1〜60質量%含有し、水を1〜98質量%含有し、前記接着剤は、酸基及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を〜40質量%含有し、水溶性有機溶媒を1〜60質量%含有し、水を1〜60質量%含有し、酸基を有さず、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を10〜90質量%含有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、接着強さを向上させることが可能な歯科用接着剤セットを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明を実施するための形態を説明する。
【0010】
歯科用接着剤セットは、プライマーと、接着剤を有する。
【0011】
ここで、歯科用接着剤セットは、例えば、歯質にプライマー及び接着剤を順次塗布した後、歯科用コンポジットレジンを充填し、光を照射することにより、プライマー及び接着剤を硬化させて使用する。
【0012】
なお、接着強さを向上させる必要が無い場合は、例えば、接着剤のみを塗布した後、歯科用コンポジットレジンを充填し、光を照射することにより、接着剤を硬化させて使用することができる。
【0013】
[プライマー]
プライマーは、(a)酸基及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物、(c)水を含有する。
【0014】
なお、本願明細書及び特許請求の範囲において、(メタ)アクリロイルオキシ基は、メタクリロイルオキシ基及び/又はアクリロイルオキシ基を意味する。
【0015】
プライマー中の(a)酸基及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の含有量は、1〜60質量%であり、5〜30質量%であることが好ましい。プライマー中の(a)酸基及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の含有量が1質量%未満である場合、又は、60質量%を超える場合は、接着強さが低下する。
【0016】
プライマー中の(c)水の含有量は、1〜98質量%であり、20〜70質量%であることが好ましい。プライマー中の(c)水の含有量が1質量%未満である場合、又は、98質量%を超える場合は、接着強さが低下する。
【0017】
プライマーは、必要に応じて、(b)水溶性有機溶媒、(d)酸基を有さず、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物、(e)光重合開始剤、(f)光重合促進剤、(g)重合禁止剤等をさらに含有してもよい。
【0018】
[接着剤]
接着剤は、(a)酸基及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物、(b)水溶性有機溶媒、(c)水、(d)酸基を有さず、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を含有する。
【0019】
接着剤中の(a)酸基及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の含有量は、1〜40質量%であり、5〜25質量%であることが好ましい。接着剤中の(a)酸基及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の含有量が1質量%未満である場合、又は、40質量%を超える場合は、接着強さが低下する。
【0020】
接着剤中の(b)水溶性有機溶媒の含有量は、1〜60質量%であり、25〜55質量%であることが好ましい。接着剤中の(b)水溶性有機溶媒の含有量が1質量%未満である場合、又は、60質量%を超える場合は、接着強さが低下する。
【0021】
接着剤中の(c)水の含有量は、1〜60質量%であり、5〜30質量%であることが好ましい。接着剤中の(c)水の含有量が1質量%未満である場合、又は、60質量%を超える場合は、接着強さが低下する。
【0022】
接着剤中の(d)酸基を有さず、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の含有量は、10〜90質量%であり、15〜30質量%であることが好ましい。接着剤中の(d)酸基を有さず、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の含有量が10質量%未満である場合、又は、90質量%を超える場合は、接着強さが低下する。
【0023】
接着剤は、(e)光重合開始剤、(f)光重合促進剤、(g)重合禁止剤、(h)フィラーをさらに含有することが好ましい。
【0024】
接着剤中の(e)光重合開始剤の含有量は、0.1〜5質量%であることが好ましく、1〜2.5質量%であることがさらに好ましい。接着剤中の(e)光重合開始剤の含有量が0.1質量%未満である場合、又は、5質量%を超える場合は、接着強さが低下する。
【0025】
接着剤中の(f)光重合促進剤の含有量は、0.1〜5質量%であることが好ましく、0.2〜1質量%であることがさらに好ましい。接着剤中の(f)光重合促進剤の含有量が0.1質量%以上である場合、又は、5質量%以下である場合は、接着強さがさらに向上する。
【0026】
接着剤中の(g)重合禁止剤の含有量は、0.1〜5質量%であることが好ましく、0.2〜1質量%であることがさらに好ましい。接着剤中の(g)重合禁止剤の含有量が0.1質量%以上である場合、又は、5質量%以下である場合は、保存安定性が向上する。
【0027】
接着剤中の(h)フィラーの含有量は、0.5〜20質量%であることが好ましく、2.5〜9質量%であることがさらに好ましい。接着剤中の(h)フィラーの含有量が0.5質量%以上である場合、又は、20質量%以下である場合は、接着強さがさらに向上する。
【0028】
次に、プライマー及び接着剤に含まれる材料について説明する。
【0029】
(a)酸基及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物における酸基としては、例えば、リン酸基、カルボキシル基、スルホン酸基等が挙げられる。
【0030】
(a)酸基及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、複数の(メタ)アクリロイルオキシ基を有していてもよい。
【0031】
リン酸基及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]ハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアシッドホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシブチルアシッドホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシデシルアシッドホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンホスフェート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、7−(メタ)アクリロイルオキシヘプチルジハイドロジェンホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンホスフェート、9−(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンホスフェート、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンホスフェート、16−(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルジハイドロジェンホスフェート、20−(メタ)アクリロイルオキシイコシルジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ブロモエチルハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−(4−メトキシフェニル)ハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−(4−メトキシフェニル)ハイドロジェンホスフェート等が挙げられる。
【0032】
カルボキシル基及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物としては、(メタ)アクリル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸及びその酸無水物、6−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸及びその酸無水物、1,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルピロメリット酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、N−(メタ)アクリロイル−p−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−o−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸等が挙げられる。
【0033】
スルホン酸基及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物としては、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。
【0034】
ここで、(a)酸基及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、二種以上併用してもよい。
【0035】
これらの中でも、ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]ハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアシッドホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸及びその酸無水物、6−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸及びその酸無水物、1,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルピロメリット酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸が好ましい。
【0036】
なお、プライマー及び接着剤に含まれる(a)酸基及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0037】
(b)水溶性有機溶媒としては、(a)酸基及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を溶解させることができ、歯質との濡れ性を向上させることが可能であれば、特に限定されないが、エタノール、アセトン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0038】
なお、プライマーが(b)水溶性有機溶媒を含有する場合、プライマー及び接着剤に含まれる(b)水溶性有機溶媒は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0039】
(d)酸基を有さず、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物としては、特に限定されないが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2,2−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、ビス((メタ)アクリロイルオキシ)プロパノール、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0040】
ウレタン結合を有する(メタ)アクリレートとしては、ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート等が挙げられる。
【0041】
なお、プライマーが(d)酸基を有さず、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を含有する場合、プライマー及び接着剤に含まれる(d)酸基又は水酸基を有さず、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0042】
(e)光重合開始剤としては、特に限定されないが、カンファーキノン、ベンジルケタール、ジアセチルケタール、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルビス(2−メトキシエチル)ケタール、4,4'−ジメチル(ベンジルジメチルケタール)、アントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、1−ヒドロキシアントラキノン、1−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1−ブロモアントラキノン、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−ニトロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロ−7−トリフルオロメチルチオキサントン、チオキサントン−10,10−ジオキシド、チオキサントン−10−オキシド、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、アジド基を含む化合物等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。
【0043】
なお、プライマー及び接着剤が(e)光重合開始剤を含有する場合、プライマー及び接着剤に含まれる(e)光重合開始剤は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0044】
(f)光重合促進剤としては、特に限定されないが、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、トリエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等の3級アミン、バルビツール酸、1,3−ジメチルバルビツール酸、1,3,5−トリメチルバルビツール酸、1,3,5−トリエチルバルビツール酸、5−ブチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸等のバルビツール酸誘導体が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0045】
なお、プライマー及び接着剤が(f)光重合促進剤を含有する場合、プライマー及び接着剤に含まれる(f)光重合促進剤は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0046】
(g)重合禁止剤としては、特に限定されないが、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−t−ブチル−2,4−キシレノール等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0047】
なお、プライマー及び接着剤が(g)重合禁止剤を含有する場合、プライマー及び接着剤に含まれる(g)重合禁止剤は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0048】
(h)フィラーは、有機フィラー及び無機フィラーのいずれであってもよいが、無機フィラーであることが好ましい。
【0049】
無機フィラーとしては、特に限定されないが、シリカ粉末、ガラス粉末(例えば、バリウムガラス粉末、フルオロアルミノシリケートガラス粉末)等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0050】
無機フィラーは、必要に応じて、シランカップリング剤等の表面処理剤で処理されていてもよい。
【実施例】
【0051】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【0052】
[プライマー及び接着剤の作製]
表1及び表2に示す配合で各成分を混合することにより、プライマー及び接着剤を作製した。
【0053】
なお、表1及び表2における略称の意味は、以下の通りである。
【0054】
MDP:10−メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート
MEP:2−メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート
MEPP:2−メタクリロイルオキシエチルフェニルアシッドホスフェート
MENT:6−メタクリロイルオキシエチルナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸
MET:4−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
EDB:4−ジメチルアミノ安息香酸エチル
701:1,3−ビス(メタクリロイルオキシ)−2−プロパノール(新中村化学工業社製)
3G:トリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製)
NPG:ネオペンチルグリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製)
Bis−GMA:2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシプロポキシ)フェニル]プロパン
ルシリンTPO:ジフェニル(2,4,6−トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド(BASF社製)
DC:2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール
無機フィラー:R972シリカ(日本アエロジル社製)
次に、(プライマー及び)接着剤の接着強さを評価した。
【0055】
[接着強さ]
注水下、耐水研磨紙#320を用いて、牛の新鮮な前歯の表面を研磨し、エナメル質及び象牙質を各5個ずつ露出させた。
【0056】
研磨した歯質にプライマーを塗布し、20秒後に中圧エアーで5秒間乾燥させた。次に、接着剤を塗布し、10秒後に強圧のエアーで5秒間乾燥させた。さらに、直径が2.3798mmのULTRADENTの型の上から、光照射器G−ライトプリマ(ジーシー社製)を用いて、モードF5で光を照射した。次に、コンポジットレジンとして、クリアフィルAP−X(クラレ社製)を充填した後、光照射器G−ライトプリマ(ジーシー社製)を用いて、モード20で光を照射し、(プライマー及び)接着剤を硬化させた。さらに、37℃の水中で1晩浸漬した後、クロスヘッドスピードを1mm/minとして、せん断試験を実施し、各5個の接着強さの平均値を求めた。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
表1及び表2から、実施例1〜10のプライマー及び接着剤(接着剤セット)は、接着強さに優れることがわかる。
【0060】
これに対して、比較例1〜2の接着剤は、プライマーを用いないため、接着強さが低下する。
【0061】
比較例3の接着剤は、水を含まないことに加え、プライマーを用いないため、接着強さが低下する。
【0062】
比較例4の接着剤は、水溶性有機溶媒を含まないため、一様に混和せず、接着剤として使用できない。
【0063】
比較例5のプライマー及び接着剤(接着剤セット)は、プライマー中に酸基及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を含まないため、接着強さが低下する。
【0064】
比較例6のプライマー及び接着剤(接着剤セット)は、プライマー中に酸基及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を過剰に含有するため、接着強さが低下する。
【0065】
比較例7のプライマー及び接着剤(接着剤セット)は、プライマー中に水を含まないため、接着強さが低下する。