(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記異常検出部は、第1相の巻線に電流が集中して通電されている状態で第2相の巻線に逆方向で同じ値の電流を通電させ、且つ第3相の巻線には電流が通電されない状態とした後に、
前記第2相と前記第3相とを入れ替えて再度通電を行う請求項1又は2記載の洗濯機モータの制御装置。
前記異常検出部は、前記インバータ回路を構成する上側スイッチング素子の2相とこれら2相を除く下側スイッチング素子の1相とを同時にオンするスイッチング状態を3回変化させる請求項1又は2記載の洗濯機モータの制御装置。
前記異常検出部は、前記インバータ回路を構成する上側スイッチング素子の1相とこの1相を除く下側スイッチング素子の2相とを同時にオンするスイッチング状態を3回変化させる請求項1又は2記載の洗濯機モータの制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、縦軸形の全自動洗濯機に適用した第1実施形態につき、
図1から
図10を参照して説明する。
図10は、全自動洗濯機1の全体構成を示す縦断面図である。全体として矩形状をなす外箱2内には、水受槽3が、4組のうち1組のみ図示する防振機構4を介して弾性支持されている。この場合、防振機構4は、上端が外箱2内において上方に係止された吊り棒4aと、その吊り棒4aの他端側に取り付けられた振動減衰用のダンパー4bとを含んで構成されている。これらの防振機構4を介して水受槽3が弾性支持されることにより、洗濯運転時に発生する振動の外箱2への伝達を防止している。
【0011】
上記水受槽3内には、洗濯槽兼脱水槽用の回転槽5が配設されており、この回転槽5の内底部には、撹拌体6が配設されている。上記回転槽5は、槽本体5aと、この槽本体5aの内側に設けられた内筒5bと、これらの上端部に設けられたバランスリング5cとから構成されている。そして、この回転槽5が回転されると、内部の水を回転遠心力により揚水して槽本体5aの上部の脱水孔5dから水受槽3内に放出する。
【0012】
また、回転槽5の底部には、通水口7が形成されており、この通水口7は、排水通路7aを通して排水口8に連通されている。そして、排水口8には、排水弁9を備えた排水路10が接続されている。従って、排水弁9を閉塞した状態で回転槽5内に給水すると、回転槽5内に水が貯溜され、排水弁9を開放すると、回転槽5内の水は排水通路7a、排水口8および排水路10を通じて排出される。水受槽3の底部には、補助排水口8aが形成されており、この補助排水口8aは、図示しない連結ホースを介し前記排水弁9をバイパスして前記排水路10に接続され、前記回転槽5が回転したときに、その上部から水受槽3内に放出された水を排出する。
【0013】
また、前記水受槽3の外底部には、機構部ハウジング11が取付けられており、この機構部ハウジング11には、中空の槽軸12が回転自在に設けられ、この槽軸12には、回転槽5が連結されている。また、槽軸12の内部には、撹拌軸13が回転自在に設けられており、この撹拌軸13の上端部には、撹拌体6が連結されている。そして、撹拌軸13の下端部は、アウタロータ形のDCブラシレスモータ14のロータ14aに連結されている。このモータ14は、洗い時には、撹拌体6を直接正逆回転駆動する。DCブラシレスモータ14は永久磁石型モータであり、以下、単にモータと称す。
【0014】
また、モータ14は、脱水時には、図示しないクラッチにより槽軸2と撹拌軸13とが連結された状態で、回転槽5および撹拌体6を一方向に直接回転駆動する。従って、本実施形態では、モータ14の回転速度は、洗い時には撹拌体6のそれと同一になり、脱水時には回転槽5および撹拌体6のそれと同一になる、いわゆる、ダイレクトドライブ方式が採用されている。モータ14は、低速領域での出力トルクが大きくなるように構成されている。
【0015】
図9は、モータ14の駆動制御系を示す機能ブロック図である。インバータ回路21は、6個のIGBT22a〜22fを3相ブリッジ接続して構成されており、各IGBT22a〜22fのコレクタ−エミッタ間には、フライホイールダイオード23a〜23fが接続されている。IGBT22は半導体スイッチング素子に相当する。下アーム側のIGBT22d、22e、22fのエミッタは、シャント抵抗24を介してグランドに接続されている。シャント抵抗24は、電流検出抵抗に相当する。また、IGBT22d、22e、22fのエミッタとシャント抵抗24との共通接続点は、抵抗素子25及びコンデンサ26を介してグランドに接続されている。そして、抵抗素子25及びコンデンサ26の共通接続点は、ピークホールド回路27の入力端子及びコンパレータ28の反転入力端子に接続されている。
【0016】
ピークホールド回路27は、コンパレータ29を用いて構成されているが、このコンパレータ29は、コンパレータ28と共にIC30に内蔵されている。すなわち、IC30はコンパレータ2回路入りである。尚、これらのコンパレータ28,29の出力は、オープンコレクタタイプである。
【0017】
コンパレータ29の非反転入力端子は、抵抗素子25+を介して抵抗素子25及びコンデンサ26の共通接続点に接続されていると共に、コンデンサ32を介してグランドに接続されている。これらはRCフィルタを構成している。また、コンパレータ29の反転入力端子は、抵抗素子33及び34を介してグランドに接続されている。コンパレータ29の出力端子は、抵抗素子35を介して5V電源にプルアップされていると共に、ダイオード36及びコンデンサ37を介してグランドに接続されている。そして、ダイオード36のカソードは、抵抗素子38を介して抵抗素子33及び34の共通接続点に接続されていると共に、制御回路39の入力端子に接続されている。
【0018】
5V電源とグランドとの間には、抵抗素子40及び41の直列回路が接続されており、両者の共通接続点は、コンパレータ28の非反転入力端子に接続されている。コンパレータ28の出力端子は、抵抗素子42を介して5V電源にプルアップされていると共に、コンデンサ43を介してグランドに接続され、更に制御回路39の入力端子に接続されている。コンパレータ28の出力信号は過電流検出に基づく緊急停止信号となり、制御回路39は、緊急停止信号の入力があるとインバータ回路21に対するPWM信号の出力を停止する。制御回路39は、異常検知部及びPWM制御部に相当する。
【0019】
モータ14には、ロータの回転位置を検出する位置センサ44(A,B)が配置されている。位置センサ44は例えばホールICで構成され、位相が90度異なる2相信号を出力する。位置センサ44Aが出力するセンサ信号,つまり位置信号の立ち上がりエッジがロータ14aの電気角0度に対応している。センサ信号の出力端子は、夫々NOTゲート45A,45Bを介して制御回路39の入力端子に接続され、NOTゲート45A,45Bの出力端子は、コンデンサ46A,46Bを介してグランドに接続されている。
【0020】
インバータ回路21の入力側には駆動用電源回路47が接続されている。駆動用電源回路47は、100Vの交流電源48を、ダイオードブリッジで構成される全波整流回路49及び直列接続された2個のコンデンサ50a,50bにより倍電圧全波整流し、約280Vの直流電圧をインバータ回路21に供給する。インバータ回路21の各相出力端子は、モータ14の各相巻線14u,14v,14wに接続されている。
【0021】
第1電源回路51は、インバータ回路21に供給される約280Vの駆動用電源を降圧して15V電源を生成すると、制御回路39及び駆動回路52に供給する。また、第2電源回路53は、上記駆動用電源を降圧して5Vの制御用電源を生成し、制御回路39に供給する三端子レギュレータである。高圧ドライバ回路54は、インバータ回路21における上アーム側のIGBT22a〜22cを駆動するために配置されている。
【0022】
また、駆動用電源回路47の出力端子,つまりインバータ回路21の正側直流母線とグランドとの間には、抵抗素子55a,55bの直列回路が接続されており、両者の共通接続点は、制御回路39の入力端子に接続されている。制御回路39は、例えば8ビットのマイクロコンピュータで構成され、電圧・位相制御を行うことで電圧率が正弦波状に変化する三相上下分のPWM信号を生成する。そして、それらのPWW信号を、駆動回路52及び上側については高圧ドライバ回路54を介して、インバータ回路21を構成する各IGBT22a〜22fのゲートに出力する。正弦波駆動方式の詳細については、例えば特開2014−39724号公報等に開示されている。
【0023】
次に、本実施形態の作用について
図1から
図8を参照して説明する。制御回路39は、モータ14のロータ回転位置に同期した位置センサ44A及び44Bのセンサ信号に基づいてPWM信号を生成する。インバータ回路21は、約180V〜300VのDC電源から、前記PWM信号により電圧及び周波数が制御された3相交流電圧を生成する。その際に制御回路39は、DC電源電圧のリップルによる出力変動の影響を排除するため、抵抗素子55a及び55bで分圧された電圧を検出し、リップルを打ち消す電圧分を加えて出力を行う。
【0024】
制御回路39は、洗い運転時にモータ14を約1秒程度で正反転動作させ、その回転数を100rpm〜150rpm程度とするように固定デューティのPWM信号を出力する。この際にモータ14の回転負荷が重く回転数が制御目標値よりも低下したり、モータ14がロック状態になると電流が非常に大きく上昇する。これにより、モータ14の減磁やIGBT22の発熱などの不具合が発生することがある。そのような事態を防止するため、制御回路39は、1m秒毎にピークホールド回路27の出力を検出し、7.5A以上の電流値を検出するとPWMデューティを比例制御で一時的に低下させる。
【0025】
ピークホールド時間は、ピークホールド回路27の出力側コンデンサ37と放電用の抵抗素子38及び34とで調節する。モータ14の1回転において、電流ピークは例えば144回発生する。そこで、電流ピーク間でレベルを保持できるようにピークホールド時間を調節し、制御回路39がA/D変換した電流値を確実に読み取れるようにする。また、電流値とA/D変換部の入力レンジとを考慮した上で、ピークホールド回路27の増幅率を極力大きくするように帰還抵抗の比率を調整する。これにより、ノイズの影響を低減する。
【0026】
図2から
図5は、モータ14の駆動中に過負荷や電力線又は位置センサ線の断線,IGBT22の故障などの異常によりモータ14の回転が停止した後に、断線検知を行うためのスイッチングパターンを示す。
図2に示すパターン(A)は、U相及びV相の上側IGBT22a及び22bを同じPWMデューティでONさせて同じ電圧を発生させる。W相は下側のIGBT22fをONさせるのでモータ14のU相及びV相巻線14u及び14vには同じ電流が通電され、それらの合成電流がW相巻線14wを通ってシャント抵抗24に流れる。
図3に示すパターン(B)では、上側のU相及びW相から下側のV相に電流が通電され、
図4に示すパターン(C)では上側のV相及びW相から下側のU相に電流が通電される。したがって、電流が1相に集中する巻線は、パターン(A)ではW相,パターン(B)ではV相,パターン(C)ではU相となり、シャント抵抗24に流れる電流と等価になる。
【0027】
モータ14の電力線のうち例えばW相が断線すると、パターン(A)による通電時にシャント抵抗24に電流が流れず、制御回路39はピークホールド回路27の出力電圧を検知できない。つまり、パターン(A)〜(C)を切り替えた際に、ピークホールド回路27の出力電圧が所定の閾値未満となったパターンがあれば、断線が発生した相を特定できる。インバータ回路21のIGBT22が故障した場合も上記と同様になるが、モータ14の過負荷や位置センサ44の信号線の断線異常は区別できる。
【0028】
図5は、2相変調によりモータ14の巻線に正弦波電流を発生させる際のU,V,W相の出力電圧波形であり、横軸はロータ角度,縦軸は出力電圧を示す。実際の制御では、位置センサ44のセンサ信号及びそのデータを時間的に補完して得られたロータ角度に基づいて、指示されたPWMデューティと波形振幅とを乗算した出力電圧をPWM信号として出力する。断線検知の際には、図中に示す破線のロータ位置で通電することでパターン(A)〜(C)を実現する。尚、図中に示す(A)’及び(B)’については、第2実施形態において説明する。
【0029】
図1は、モータ14の過電流異常と断線異常とを検出する処理を示すフローチャートである。制御回路39は、モータ14の回転中にこの処理を1m秒毎に実行する。先ず、過電流異常を検知しているか否かを判断し(S1)、検知していなければ(NO)その時点で過電流が発生しているか否かを判断する(S2)。ここでは、例えば15A以上の電流が2μ秒以上流れ続けた際に過電流が発生したと判定する。過電流が発生していれば(YES)、「過電流異常検知中」及び「U相検知中」のステータスをセットし(S3,S4),ロータ位置270°の通電角で、且つ電圧50V相当のPWMデューティで出力を行う(S5)。これは、
図5に示すスイッチングパターン(C)に対応する。
【0030】
一方、ステップS1で「YES」又はステップS2で「NO」と判断すると、「U相検知中」か否かを判断する(S6)。「U相検知中」であれば(YES)0.5秒の経過待ちをする(S7)。0.5秒が経過するまでは(NO)検知中の電流の平均値を計算してから(S22)リターンする。ステップS7において0.5秒が経過すると(YES)、U相の平均電流が2A未満か否かを判断する(S8)。2A以上であれば(NO)「V相検知中」のステータスをセットし(S9),ロータ位置150°の通電角で、且つ電圧50V相当のPWMデューティで出力を行う(S10)。これは、
図5に示すスイッチングパターン(B)に対応する。ステップS8において、U相の平均電流が2A未満であれば(YES)U相の断線が確定する(S20)。断線異常と判定された場合はモータ14の電力線が切れている状態が想定されるので、洗濯機1の図示しない操作パネルにおけるユーザの操作を永久ロック状態とし、且つ「異常表示」を行う(S21)。
【0031】
ステップS6において「U相検知中」でなければ(NO)、「V相検知中」か否かを判断する(S11)。これに続くステップS12〜S15は、「V相検知中」の場合についてステップS7〜S10に対応する処理である。ステップS14では「W相検知中」のステータスをセットし、ステップS15ではロータ位置30°の通電角で、且つ電圧50V相当のPWMデューティで出力を行う。これは、
図5に示すスイッチングパターン(A)に対応する。
【0032】
また、ステップS11において「V相検知中」でなければ(NO)ステップS16に移行する。ステップS16及びS17は、「W相検知中」の場合についてステップS7及びS8に対応する処理である。そして、ステップS17で「NO」と判断すると「過電流異常」が確定し(S18)、操作パネルで対応する異常表示を行う(S19)。すなわち、3相のうち電流平均値が2A以下のものが1つ以上あればステップS20で断線異常を確定させ、そうでなければステップS19で過電流異常と判定する。
【0033】
次に、電圧制御について
図6ないし
図8を参照して説明する。
図6は、電圧・位相制御における電圧,つまりPWMデューティを決定する処理を示すフローチャートであり、この処理は、例えば1m秒周期で実行される。尚、図中ではPWMデューティをDUTYとしている。また、位相制御の詳細についても特開2014−39724号公報に開示されている。制御回路39は、ピークホールド回路27の出力信号をA/D変換して読み込むと(S41)、そのピークホールド値(以下、検出電流値と称す)を電流制御用の閾値(例えば、電流7.5Aに相当する値)と比較する(S42)。そして、検出電流値が閾値以上であれば「過電流フラグ」を「H」にセットする(S43)。すなわちここでは、検出電流値が閾値以上となった状態を「過電流」と称している。
【0034】
この場合、PWM制御におけるDUTYの設定が過大であると判断されるので、続くステップS44においてDUTYを減少させるように制御する。つまり、検出電流値と閾値との差であるオーバー値を求め、オーバー値の大きさに応じて減少させる度合いを変化させる。尚、オーバー値はステップS42で求めておいても良い。すなわち、
図7(a)に示すように、オーバー値が0.4A以下であればDUTYは減少させず、現状の値を維持する。また、1.6A以下であれば8%,2.4A以下であれば12%,3.2A以下であれば16%,3.6A以下であれば24%,4.0A以下であれば39%,4.0Aを超えると47%といったように、減少幅を複数段階にする。
【0035】
続くステップS45において、上記のようにDUTYを減少させた結果、DUTYが予め定めた最小値を下回る場合は(YES)、DUTYを最小値に固定する(S46)。最小値を下回らなければ(NO)処理を終了する。
【0036】
一方、ステップS42において、検出電流値が閾値未満であれば「過電流フラグ」が「H,L」の何れかを判断する(S47)。「過電流フラグ」が「L(リセット)」であれば、特に処理を行う必要はないのでそのまま終了する。「過電流フラグ」が「H」であればDUTYを増加させるが(S48)、増加については、減少の場合のように増加値が複数段階に設定されておらず、
図7(b)に示すように常に16%とする。
【0037】
それから、この段階で、ステップS48で増加させた実際のDUTYが、
図6に示す処理で決定された指令DUTY以上となったか否かを判断し(S49)、指令DUTY未満であれば(NO)そのまま処理を終了する。また、指令DUTY以上であれば(YES)、実際に出力するDUTYを指令DUTYに固定,つまり一致させる。そして、「過電流フラグ」を「L」にすると(S50)処理を終了する。
【0038】
図8は、
図6に示す処理に対応する検出電流値及びDUTYの変化の一例を示すものである。図中に示す丸数字は、
図6に示す同じ丸数字の処理部分に対応している。検出電流値が閾値を超えることなく、指令DUTYと実DUTYとが一致している期間は(3)「過電流検出なし」であり、検出電流値が閾値を超えたことで実DUTYを減少させている期間は(1)「DUTY減少処理部」である。また、実DUTYを増加させている期間は(2)「DUTY復帰処理部」である。
【0039】
図8(a)に示すように、検出電流値が閾値を超えることで指令DUTYに対して実際のDUTYが低下し、両者が乖離すると、検出電流値が閾値を超えないように抑制を図りつつ両者を一致させるように制御が行われる。
【0040】
以上のように本実施形態によれば、制御回路39は、シャント抵抗24の端子電圧をピークホールド回路27を介して読み込み、A/D変換して基準値と比較することで過電流を検出する処理において断線異常も検出する。その際に、シャント抵抗24で検出される電流がモータ14の何れか1相の巻線に集中して通電される電流となるようにインバータ回路21のスイッチング状態を制御し、そのスイッチング状態を1回以上変化させてシャント抵抗24で検出される電流の相を変化させ、全ての相の電流発生状態を参照する。具体的には、インバータ回路21を構成する上側IGBT22a〜22cのうち2相とこれら2相を除く下側IGBT22d〜22fの1相とを同時にオンするスイッチング状態を3回変化させるようにした。
【0041】
このように、過電流を検出する処理に断線異常の検出処理も併せて行うことで、モータ14の過負荷や位置センサ44の信号線の断線異常と、電力線の断線異常やIGBT22の故障とを区別でき、これらの異常対応処理を一括して行うことができる。また3相の断線を個別に検出するので動作が確実である。また、電流の検出には高価なカレントトランスなどを使用せず、シャント抵抗24を用いる。シャント抵抗24やピークホールド回路27等の部品は、モータ14の過電流異常や過大電流制御と共通化されているので安価に構成でき、回路基板のサイズも小さくできる。
【0042】
尚、上記のスイッチング状態に替えて、上側IGBT22a〜22cのうち1相とこの1相を除く下側IGBT22d〜22fの2相とを同時にオンさせても良い。
また、制御回路39は、センサ信号A,Bの出力間隔を補間して得られるタイミングに基づいて、通電パターンにより正弦波状の電圧をモータ14に出力する。したがって、低コストで簡単な構成においても制御精度を高めることでモータ14を正弦波駆動できる。
【0043】
(第2実施形態)
図11から
図13は第2実施形態を示すものであり、第1実施形態と同一部分については同一符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。
図11に示すように、第2実施形態では、過電流異常の検知に替えて、モータ14の回転異常を検知する。回転異常が未検出であれば(S23:NO)、例えば位置センサ信号が0.1秒以上変化がないことを異常と認識すると(S24:YES)、「回転異常検知中」及び「1回目検知中」のステータスをセットする(S25,S26)。そして、ロータ位置60°の通電角で、且つ電圧50V相当のPWMデューティで出力を行う(S27)。これは、
図5に示すスイッチングパターン(A)’に対応する。
【0044】
一方、ステップS23で「YES」又はステップS24で「NO」と判断すると、「1回目検知中」か否かを判断する(S28)。「1回目検知中」であれば(YES)ステップS7及びS8を実行した後、「2回目検知中」のステータスをセットする(S29)。そして、ロータ位置120°の通電角で、且つ電圧50V相当のPWMデューティで出力を行う(S30)。これは、
図5に示すスイッチングパターン(B)’に対応する。
【0045】
また、ステップS28において「1回目検知中」でなければ(NO)、ステップS12及びS13を実行し、ステップS13にて「NO」と判断すると「回転異常」の検知を確定させる(S31)。そして、操作パネルで対応する異常表示を行う(S32)。
【0046】
図12に示すように、スイッチングパターン(A)’では、第1相であるU相電圧を「大」,第3相であるW相電圧を「0」とし、第2相であるV相電圧を「中」,つまり「大」の1/2程度とする。この時、図中に実線で示す電流は上側U相から下側V,W相に分岐して流れ、破線で示す電流は上側V相から下側W相に流れる。したがって、V相巻線14vには、互いに等しい電流が逆方に流れて電流値は「0」になる。また、W相巻線14wでは、U相電流の1/2と破線で示す電流とが合成されるので、U相電流と等しい電流が流れることになる。これにより、シャント抵抗24ではU相電流が検出される。
【0047】
また、スイッチングパターン(B)’では、U相電圧を「大」,V相電圧を「0」とし、W相電圧を「中」とする。この時、図中に実線で示す電流はパターン(A)’と同様に流れ、破線で示す電流は上側W相から下側V相に流れる。したがって、W相巻線14wでは、互いに等しい電流が逆方に流れて電流値は「0」になり、V相巻線14vでは、U相電流の1/2と破線で示す電流とが合成されてU相電流と等しい電流が流れる。すなわち、スイッチングパターン(B)’では、第2相と第3相とがパターン(A)’より入れ替わった状態になる。
【0048】
図13に示すように、断線が検知されない場合の電流のA/D変換値は、例えばフルスケールの8%〜9%程度の値が得られる。これに対して、U,V,W相の何れかに断線が発生した場合のA/D変換値は、例えばフルスケールの4%〜6%程度の値になる。したがって、判定閾値を例えばフルスケールの7%程度に設定することで、断線故障の発生有無を峻別できる。
【0049】
以上のように第2実施形態によれば、制御回路39は、U相巻線14uに電流が集中して通電されている状態でW相巻線14wに逆方向で同じ値の電流を通電させ、且つV相巻線14vには実質的に電流が通電されないスイッチングパターン(A)’を実行した後に、V相とW相とを入れ替えたスイッチングパターン(B)’により再度通電を行うようにした。すなわち、2つのスイッチングパターンを実行することで断線を迅速に検出できる。但し、何れの相に断線が発生しているかの特定はできない。
【0050】
また、第2実施形態によれば、2相変調出力におけるスイッチングパターンをそのまま流用して断線検知を行うことができるので、各IGBT22を連続的にオン状態にする場合のように過電流が発生することが無い。
【0051】
(第3実施形態)
図14に示す第3実施形態は、第2実施形態で行っている回転異常の検知を、第1実施形態の過電流異常検知に置き換えたものである。
【0052】
本発明のいくつか実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0053】
第1実施形態において、過電流検知に替えて回転異常を検知しても良い。
3相変調に適用しても良い。
検出電流に対する閾値の電流値や、DUTYの減少値,増加値については適宜変更して良い。また、増加値を複数設定しても良い。
電流の平均を取る時間についても、適宜変更して良い。
必ずしもIC30を用いる必要はない。
【0054】
ピークホールド回路は、オペアンプを用いて構成しても良い。
また、電流の検出に、必ずしもピークホールド回路を用いる必要はない。
位置センサの数は、3つ以上でも良い。
モータ14の構成は、48極/36スロットに限ることはない。
制御回路39は、必ずしも8ビットのマイクロコンピュータで構成する必要はない。
図7に示すオーバー値とデューティの増減値との関係は一例であり、個別の設計に応じて適宜変更すれば良い。
ドラム式洗濯機に適用しても良い。