(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
シールド工法においては、掘削された地山とセグメントとの空間のテールボイドに裏込材が注入充填される。
一般的に裏込材を注入する方法として、即時注入方式と同時注入方式とがある。即時注入方式は、セグメントの内周側から外周側に貫通した注入口から裏込材を注入するものである。同時注入方式は、シールド掘進機に設けられた裏込注入装置から裏込材を注入するものである。同時注入方式の方が、掘進しながらシールド掘進機から裏込材を注入できるため、テールボイドに何も充填されていない時間が短くすることができ、地盤沈下等の影響の抑制に効果的である。
【0003】
同時注入方式の裏込注入装置の従来技術としては、特許文献1に例示するように、シールドの後胴の外周上部の両側に2箇所にわたって突出部が掘進方向に沿って形成され、この突出部内に裏込注入管が配設されている。
【0004】
このような同時注入方式の裏込注入装置を
図9、
図10に示す。
図9(A)は、シールド掘進機110を後方から見た図である。裏込注入装置120は、シールド掘進機110のスキンプレート101の外周面の上部2箇所に設けられている。そして、裏込注入装置120から、セグメント102と掘削された地山との間のテールボイド103に裏込材が注入充填される。
図9(B)は、裏込注入装置120を拡大した図である。裏込注入管121、圧力計122はハウジング123で覆われている。ハウジング123は、スキンプレート101の外周面に突出して設けられている。このように、裏込注入装置120はスキンプレート101の外周面に設けられているので、ハウジング123の分だけテールボイド103が大きくなるテールボイド拡大部103´が発生する。
図10は、
図9(B)の縦断図である。この例では、テールシール131が、スキンプレート101の内周面に3段設けられている。テールシール131によって、土砂、地下水や裏込材等がセグメント102とスキンプレート101との間から浸入することが防止される。
【0005】
このような同時注入方式の裏込注入装置において、特に掘進を行いながらの注入では、裏込材がテールボイド103の下方に落下してしまいテールボイド拡大部103´まで裏込材が確実に充填されないおそれが生じ得る。また、テールボイド拡大部103´からその下方のテールボイド103は、テールボイド幅が狭くなるため、裏込材が流動する際の抵抗が増加して、テールボイド103の下方まで充分な充填が得られないおそれも生じ得る。
【0006】
ところで、一般的にトンネルには止水性が求められ、シールドトンネルも同様である。シールドトンネルの止水性は、主にトンネル構造体であるセグメントが担うことになる。しかし、既設のシールドトンネルに新設のシールドトンネルが接続するような地中接合や並列したシールドトンネルが連結されるような並列連結等では、セグメント自体が切削されたりや欠損するので、セグメント以外による止水性の確保が必要となる。
そのような場合には、凍結工法や薬液注入工法によりセグメントの外側に止水ゾーンが設けられる。
これらの工法は、シールド掘進工程とは別の設備や工程となり、工期やコストがかかってしまう。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の裏込注入装置の実施形態について図面と共に説明する。なお、説明中に数値を用いて説明する場合もあるが、当該数値は例示であって、本発明が当該数値によって限定されないことはいうまでもない。
【0021】
図1(A)は、本発明に係るシールド掘進機10を後から見た図である。シールド掘進機10には、そのスキンプレート1で囲まれた内部にトンネル構造体となるセグメント2が組み立てられる。
図2は、本発明に係るシールド掘進機の後胴部の
図1(A)の縦断図である。
図2の上側の図は、裏込注入装置20が配置された部分についての縦断図である。
図2の下側の図は、裏込注入装置20が配置されていない部分の下部についての縦断図である。
【0022】
掘削された地山とセグメント2との間のテールボイド3に、裏込材が注入充填される。裏込材の厚さを規定することになるテールボイド3の厚さは、止水性を考慮して充分な寸法が設定される。本実施例では、外径5450mmのセグメントに対して、テールボイド3の厚さは一律150mmとして止水性を確保するようにしている。従来としては、裏込材が注入充填されるテールボイドの厚さは、同セグメント外径では75mm程度(裏込注入装置が設けられる部分のテールボイド拡大部では、150mm程度となる。)が設定されるので、本実施の形態においては2倍の裏込材の厚さとなっている。セグメント2の厚さは150mmである。
なお、通常は、シールド掘進機のカッターで掘削される地山は、スキンプレートの外周面より少し大きくなり、地山の掘削面とスキンプレートの外周面とは同一ではない。しかしながら、本明細書では、説明の便宜上同一として説明している。
【0023】
図1(A)に示すように、裏込注入装置20は、スキンプレート1の内周面の周方向の上部に2箇所、内周面の周方向の下部に2箇所固定して設けられている。下部にも設けているのは、より確実な裏込充填を考慮してのものである。本実施の形態では、上部と下部とに2箇所ずつ合計4箇所に設けられているが、裏込材の充填性や効率性を考慮して、その個数や配置は適宜設定すればよい。また、下部については省略してもよい。
【0024】
図1(B)に裏込注入装置20の拡大図を示す。裏込注入装置20は、裏込注入管21、圧力計22、それらを覆うハウジング23を有している。ハウジング23は、裏込注入管21、圧力計22をセグメント2等との接触から保護する機能を有し、掘進の際にセグメント2との接触により掘進の抵抗とならならいように構成されている。ハウジング23は、テールシール31が設けられるハウジング本体部23a、スキンプレート1からハウジング本体部23aを繋ぐハウジング傾斜部23b、ハウジング本体部23aを支えるハウジング補強部23cを備えている。
ハウジング23は、その内部に土砂、地下水および裏込材等が浸入しないようになっており、シールド掘進機のスキンプレート後端部11(
図3)において、図示しないエンドプレートを備えており、このエンドプレートから裏込注入管21の排出口や圧力計22の検知部がテールボイド3に露出するように構成されている。これによって、裏込注入管21や圧力計22の露出した部分以外を、土砂、地下水および裏込材等から保護することができる。
【0025】
このように、裏込注入装置20はスキンプレート1の内周面に設けられているので、テールボイド3は、一律に一定の幅とすることができ、裏込注入装置20が配置される部分についても拡大した形状とはならない。よって、裏込材が注入される際にはスムーズに流動し、確実にテールボイド3に充填され、止水性を確保できる。
また、裏込注入装置20をスキンプレート1の内周面に設けているので、裏込注入管21等に不具合が生じた場合にも、最後列のテールシール31よりも前方において、ハウジング23を取り外し可能にしたり、ハウジング23の内周面に開閉蓋を設ける等しておけば、スキンプレート1の内側で、安全にメンテナンス作業が可能となる。
さらに、裏込注入装置20を、内側がすべて掘削されることになるスキンプレート1の内周面に設けているので、裏込注入装置をスキンプレートの外周面に突出して設けることに比較して、裏込注入装置の部分による掘進抵抗を減らすことができる。
【0026】
図3は、裏込注入装置20をシールド掘進機10の内側から見た詳細図である。ハウジング23は、図示が省略されている。裏込注入管21は、裏込材A液注入管24からの裏込材A液と、裏込材B液注入管25からの裏込材B液とを混合して裏込材を注入するものである。裏込材A液注入管24との合流部手前の裏込材B液注入管25の先端部には、図示しない逆止弁が設けられており、裏込材A液や後述する洗浄水が裏込材B液注入管25に入り込まないようになっている。
裏込材の止水性能は、求められる止水性にあわせて選定される。
【0027】
裏込注入装置20は、洗浄水管26も備えている。バルブ27が可動して裏込注入管21の裏込材A液注入管24との合流部より先端側に位置し、裏込注入管21の排出口を閉じる。そして、洗浄水管26から送られる洗浄水が、裏込材A液注入管24にリターンされて裏込注入後の注入管を洗浄する。
図3ではバルブ27は、裏込注入時の位置を示している。バルブ27は、油圧配管28による油圧によって作動する。
図3では、シールド掘進機10のスキンプレート後端部11より、裏込注入管21が突出して配置されている。裏込注入圧力を管理する圧力計22は、裏込注入管21に並設されている。ハウジング23の図示しないエンドプレートは、スキンプレート1の後端部11に沿って立設されている。
【0028】
図2に示すように、テールシール31は全周にわたって前後方向3列に設けられている。このテールシール31によって、土砂、地下水および裏込材等がスキンプレート1とセグメント2との間から浸入するのが防止される。
本実施の形態では、スキンプレート1の板厚はテールシール31を設ける部分は12mmで薄く、テールシール31を設けない部分は40mmで厚く形成されている。スキンプレート1のテールシール31が設けられる部分は、リング状に組み立てられたセグメントが存在するため、このセグメントによっても外部からの土水圧を受けることができる。よって、この部分のスキンプレート1を薄くすることができる。
【0029】
図4(A)に示すように、ハウジング23のハウジング本体部23aの内周面にはテールシール31が設けられている。ハウジング本体部23aの内周面は、テールシール31が設けられるために、スキンプレート1の曲面に合わせた形状となっている。テールシール31の機能が発揮できるのであれば、ハウジング本体部23aの内周面は、水平としても良い。
【0030】
図1、
図2、
図4(B)に示すように、ハウジング本体部23aが位置しない部分のスキンプレート1の内周面には、スキンプレート1の曲面に合わせてスペーサ30が設けられており、当該スペーサ30の内周面にテールシール31が設けられている。
図1、
図2、
図4(B)では、スペーサ30は斜線のハッチングで示されている。
図1においては、テールシール31は図示していない。
【0031】
図1(B)に示すように、スペーサ30は、その内周面が、ハウジング本体部23aの内周面であってテールシール31が設けられる面と面一となるように設けられている。ハウジング傾斜部23bには、スペーサ30が次第に薄くなるように設けられる。
スペーサ30は、H鋼、プレート、ブロック等どのようなものでよく、テールシール31を固定でき、テールシール31とともに止水性が確保できるものであれば良い。
【0032】
図2、
図4(B)では、スペーサ30は、テールシール31一列につき一列のスペーサ30が設けられているが、テールシール複数列につき一列のスペーサ、すなわち、一列のスペーサに対して複数のテールシールを設けるように構成しても良い。
図5(A)には、中列と最後列のテールシール31に一列のスペーサ30を配置した実施の形態を示す。このような構成とすると、隣り合う列のテールシール31間に充填されるテールグリスの使用量を抑えることができる。また、
図5(B)に示すように、隣り合うスペーサ間の空間を閉塞するためプレート等の閉塞部材32を設けても良い。
【0033】
このように、テールシール31が設けられるハウジング23が存在しない部分にスペーサ30を設けることで、スキンプレート1とセグメント2との隙間が大きい部分(ハウジングがない部分)に対応したテールシールを別途設ける必要がなくなる。このように、一つの寸法の隙間に対応するタイプのテールシールを一種類採用する方が、複数種類のテールシールを採用するよりも、止水性における安定性は高くなる。
【0034】
各種条件に応じて、スペーサ30を省略しても良い。この場合には、テールシールは直接スキンプレートの内周面に設けられる。また、ハウジング本体部およびハウジング傾斜部の内周面にも設けられる。スキンプレートの内周面に直接設けられるテールシールは、セグメントとスキンプレートとの隙間が大きくなるが、それに対応できるテールシールを採用する。ハウジング傾斜部に設けられるテールシールは、暫時変化する隙間に対応できるテールシールを採用する。
【0035】
充分にテールボイド3に裏込材を充填するためには、ある程度の注入圧力が必要となる。この注入圧力が高くなると、スキンプレート1の外周後側から裏込材が切羽側に回り込んでしまうおそれがある。回り込みが生じると、裏込材が無駄になるばかりか、テールボイド3への十分な充填が図れないおそれが生じ得る。従来技術のように、スキンプレートの外周面に裏込注入装置が取付けられていると、裏込注入装置のハウジングと地山とのシールド掘進機前後方向に沿った境界部が、裏込材の切羽への回り込みのガイドとなる通路にも成り得る。しかしながら、本発明ではスキンプレート1の内周面に裏込注入装置20が設けられているので、ガイドとなるような通路は形成されず、回り込みを抑制することができる。
【0036】
さらに切羽への裏込材の回り込みを防ぐために、
図2、
図4に示すように、スキンプレート1の後端部の全周にわたって裏込め材の逆流防止羽根4を設けても良い。
逆流防止羽根4は、スキンプレート1の外周面に取付けられる。本発明では、裏込注入装置20がスキンプレート1の内周面に設けられているので、逆流防止羽根4をスキンプレート1の外周面に取付ける際の支障にならず容易取付けることができる。また、従来技術のように、突出して設けられた裏込注入装置を有するスキンプレートの外周面に、その突出した形状に沿って逆流防止羽根を取付けたとしても、その突出した形状のために逆流防止羽根が複雑な形状となる。しかしながら、本発明では、スキンプレートの外周面に裏込注入装置による突出した部分が存在せず、逆流防止羽根4が複雑な構造とならず、切羽への裏込材が回り込み防止効果を向上させることができる。
【0037】
図6に示すように、裏込材A液注入管24、裏込材B液注入管25等を貫通させるための開口を設けたスペーサ30をスキンプレート1の内周面全周に設け、スペーサ30が設けられていない部分にハウジング23を設けるようにしてもよい。この場合には、リング状に連続してスペーサ30を設けることができるので、ハウジングとスペーサとの境界部がシールド掘進機前後方向に沿って形成される
図4に示す実施の形態よりも止水性に優れる。
注入管とその開口部との間は充分な止水対策を行う。また、スペーサ30の開口そのものを裏込材の流路としても良い。
【0038】
図6に示した実施形態では、リング状に連続して設けるスペーサ30を3列設けているが、適宜の列のテールシールの部分をリング状に設けても良い。例えば、最後列のテールシールの部分のみのスペーサ30をリング状に全周に設けて、それより前方の2列については、
図4に示したようなハウジング本体部23aを除いたスペーサ30を設けるようにしても良い。この場合には、最後列のテールシールのスペーサ30は、その前方に設けられたハウジング23に連接して設けられることになり、前述したエンドプレートのように、裏込注入管21や圧力計22の露出した部分以外を、土砂、地下水および裏込材等から保護することができる機能を備えることになる。
【0039】
図2、
図4(B)には、セグメント落下防止装置5が記載されている。セグメント落下防止装置5は、セグメント2を組み立てる際にスキンプレート1の下方に対して必要なクリアランスを確保するためのものである。図では、セグメント落下防止装置5は、最前列のテールシール31のスペーサ30に連接して設けられている。セグメント落下防止装置5は、鉄筋や鋼材など適宜なもので形成されており、組み立てたセグメント2が、シールド掘進機10の前進の際にスペーサ30やテールシール31に接触する等の障害にならない程度の高さ、材質、形状とされている。また、セグメント落下防止装置5は、スペーサ30をシールド掘進機前方向に延長して形成したものでも良い。
【0040】
本裏込注入装置を備えたシールド掘進機による裏込め方法およびトンネル止水方法を以下に説明する。
シールド掘進機10のカッターヘッドを回転させ地盤を掘削しながら、シールドジャッキを伸長させることにより、シールド掘進機10を前進させる。次に、シールド掘進機10のシールドジャッキを適宜縮小させながら、スキンプレート1の内部の後胴部でセグメント2をリング状に組み立てる。これらの工程を繰り返すのが、基本的なシールド工法の流れである。
【0041】
本実施形態の裏込注入装置による裏込め注入は、シールド掘進機10の前進とともに行われるいわゆる同時注入方式によって施工される。シールド掘進機10の前進中、テールボイド3に開口した裏込注入管21によって、テールボイド3が発生した直後に注入される。このため、テールボイド3に何も充填されていない時間が短くすることができ、地盤沈下等の影響の抑制に効果的であるとともに、いち早くトンネルの止水性を向上させることができる。
本発明の裏込注入装置によって注入充填された裏込材は、充分な厚さと充填となり、止水ゾーンとして高い効果を発揮する。これによって、セグメントが切削されたり欠損するような条件下でも止水性を確保することができる。
【0042】
本裏込注入装置によるトンネル止水方法では、シールド機外径が大きくなり掘削土砂が多くなるが、トンネル掘削延長が比較的短い等、トンネルの止水性がより重視されるような条件においては、特に効果的である。
【0043】
本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。例えば以下のようなものも含まれる。
【0044】
本実施の形態では、シールド掘進機の掘進中と同時に裏込注入する同時裏込注入方式で説明したが、これに限定されるわけでなく、シールド掘進機が停止している場合に裏込注入するものでも良い。
本実施の形態では、セグメントが切削されたり欠損するような場合における止水ゾーンを形成することを想定しているが、このような場合だけでなく、セグメントが切削されたり欠損せずセグメントが主な止水ゾーンとなるような場合にも、補助的な止水ゾーンとしても適用できる。また、凍結工法や薬液注入工法等の地盤改良工法と併用した止水ゾーンにも適用できる。
【0045】
セグメントが切削されたり欠損するような場合において、本発明によって形成した止水ゾーンを適用する例を以下に説明する。
図7(A)および
図7(B)は、地中GにRCコンクリート等の隔壁構造物Cを構築し、内部Nに比較的大きな空間を構築する際の断面の一部を拡大した図である。隔壁構造物Cは、平行なシールドトンネルを連結した空間に構築される。
図7(A)は、従来の凍結工法を用いて施工するもので、
図7(B)が、本発明による止水ゾーンを適用したものである。図面の上方向が地上方向で、下方向が地中方向である。
【0046】
まず、
図7(A)に示す従来の凍結工法を用いて施工手順を説明する。
所定の間隔を空けて先行シールドトンネルS1を構築する。先行シールドトンネルS1を構成するセグメントは、後行シールド掘進機が切削可能な材料のものとする。先行シールドトンネルS1を構成するセグメントには、凍結工法で使用する凍結管Pが取付けられている。
先行シールドトンネルS1内に流動化処理土Rを充填する。流動化処理土Rは、後行シールド掘進機が先行シールドトンネルS1を切削する際に、安定して切削させるために充填されるものである。流動化処理土Rも後行シールド掘進機が切削可能となるように調整されている。
【0047】
先行シールドトンネルS1間に後行シールドトンネルS2を構築する。後行シールド掘進機で、先行シールドトンネルS1のセグメントと流動化処理土Rを切削しながら掘進し、後行シールドトンネルS2のセグメントを組み立てる。後行シールドトンネルS2を構成するセグメントにも、凍結工法で使用する凍結管Pが取付けられている。
先行シールドトンネルS1と後行シールドトンネルS2に取付けられた凍結管Pを用いて、凍結工法を行い、周囲に凍土Tを形成する。
【0048】
後行シールドトンネルS2のセグメントの一部SXを取り外し、先行シールドトンネルS1内に充填された流動化処理土Rを撤去して、先行シールドトンネルS1と後行シールドトンネルS2とを連結させる。この連結の際には、先行シールドトンネルS1と後行シールドトンネルS2との境界部から地下水Wが浸入しようとするが、凍土Tが形成されているので、浸入しない。
連結した先行シールドトンネルS1と後行シールドトンネルS2との内部にRCコンクリート等の隔壁構造物Cを構築する。
【0049】
図7(B)に示す本発明による止水ゾーンを適用した工程を説明する。
この施工では、先行シールドトンネルS1と後行シールドトンネルS2の施工で、本発明による裏込め注入によって、充分な厚さの止水ゾーン51、52を形成して、先行シールドトンネルS1と後行シールドトンネルS2との境界部から地下水Wの浸入を防ぐものである。
【0050】
基本的な施工順序は、
図7(A)と同様である。
先行シールドトンネルS1を構築した際に止水ゾーン51が形成されて、その後、後行シールドトンネルS2を構築した際にも止水ゾーン52が、
図7(B)に示すように形成される。そして、後行シールドトンネルS2の止水ゾーン52は、先行シールドトンネルS1のセグメントと止水ゾーン51と接着されて、先行シールドトンネルS1と後行シールドトンネルS2との境界部から地下水Wの浸入を防ぐことができる。よって、安全に後行シールドトンネルS2のセグメントの一部SXを取り外し、先行シールドトンネルS1内に充填された流動化処理土Rを撤去する作業が可能となる。
【0051】
セグメントが切削されないような場合において、本発明によって形成した止水ゾーンを適用する例を以下に説明する。
図8は、地中GにRCコンクリート等の隔壁構造物Cを構築し、内部Nに比較的大きな空間を構築する際の断面の一部を拡大した図である。隔壁構造物Cは、平行なシールドトンネルを連結した空間に構築される。この例では、凍結工法を併用している。図面の上方向が地上方向で、下方向が地中方向である。
【0052】
所定の間隔を空けて先行シールドトンネルS1を構築する。先行シールドトンネルS1を構築すると同時に止水ゾーン51が形成される。先行シールドトンネルS1を構成するセグメントには、凍結工法で使用する凍結管Pが取付けられているが、図示を省略している。
【0053】
並んだ先行シールドトンネルS1の間であって、上側および下側となる位置に後行シールドトンネルS2を構築する。後行シールドトンネルS2は、並んだ先行シールドトンネルS1の止水ゾーン51と後行シールドトンネルS2の止水ゾーン52とが重なるように構築する。詳述すると、後行のシールド掘進機で、先行シールドトンネルS1の止水ゾーン51を切削した後にその部分に後行シールドトンネルS2の止水ゾーン52を形成する。そして、後行シールドトンネルS2の止水ゾーン52は、先行シールドトンネルS1の止水ゾーン51と接着されて、先行シールドトンネルS1と後行シールドトンネルS2との境界部から地下水Wの浸入を防ぐことができる。後行シールドトンネルS2を構成するセグメントには、凍結工法で使用する凍結管Pが取付けられているが、図示を省略している。
【0054】
先行シールドトンネルS1と後行シールドトンネルS2に取付けられた凍結管Pを用いて、凍結工法を施工し、周囲に凍土Tを形成する。
先行シールドトンネルS1の一部SXを撤去して、先行シールドトンネルS1を連結して、内部空間を形成し、RCコンクリート等の隔壁構造物Cを構築する。先行シールドトンネルS1の一部SXを撤去した際には、後行シールドトンネルS2の止水ゾーン52は、先行シールドトンネルS1の止水ゾーン51と接着されていることと、凍土Tも存在するため、先行シールドトンネルS1と後行シールドトンネルS2との境界部から地下水Wの浸入を防ぐことができる。
【0055】
裏込注入装置20のハウジング23の形状についても、ハウジング本体部23aが曲面でなくとも、平面であっても良い。ハウジング傾斜部23bも厳密な傾斜である必要もなく、ハウジング本体部23aと略垂直になるものでも良い。また、ハウジング補強部23cも柱形状やリブ形状でもよく、必要でなければ省略されても良い。このようにハウジング23の形態について、自由度が高くなるのは、地山からの影響を受けにくいスキンプレート1の内周面に位置するからである。
【0056】
いずれの実施形態における各技術的事項を他の実施形態に適用して実施例としても良い。