特許第6713869号(P6713869)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6713869
(24)【登録日】2020年6月8日
(45)【発行日】2020年6月24日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/143 20180101AFI20200615BHJP
   F21S 41/147 20180101ALI20200615BHJP
   F21S 41/151 20180101ALI20200615BHJP
   F21S 41/16 20180101ALI20200615BHJP
   F21S 41/275 20180101ALI20200615BHJP
   F21S 41/365 20180101ALI20200615BHJP
   F21S 41/663 20180101ALI20200615BHJP
   F21W 102/135 20180101ALN20200615BHJP
   F21W 102/155 20180101ALN20200615BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20200615BHJP
【FI】
   F21S41/143
   F21S41/147
   F21S41/151
   F21S41/16
   F21S41/275
   F21S41/365
   F21S41/663
   F21W102:135
   F21W102:155
   F21Y115:10
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-145335(P2016-145335)
(22)【出願日】2016年7月25日
(65)【公開番号】特開2018-18590(P2018-18590A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2019年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】樹下 佳百合
(72)【発明者】
【氏名】小西 定幸
【審査官】 下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−039020(JP,A)
【文献】 特開2014−026741(JP,A)
【文献】 特開2014−216164(JP,A)
【文献】 特開2015−035337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/143
F21S 41/147
F21S 41/151
F21S 41/16
F21S 41/275
F21S 41/365
F21S 41/663
F21W 102/135
F21W 102/155
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光を出射する第1の光源と、
前記第1の光を車両進行方向の下方側に向けて反射する第1の反射部材と、
前記第1の反射部材により反射された前記第1の光の一部を車両進行方向の上方側に向けて反射する第2の反射部材と、
前記第2の反射部材の下方に配置されて、車両進行方向に向けて第2の光を出射する第2の光源と、
前記第1の光及び前記第2の光を車両進行方向に向けて投影する投影レンズとを備え、
前記第2の光源は、車両高さ方向と車両幅方向とに対応した2方向のうち、少なくとも車両幅方向に対応した方向に並んで配置された複数の発光素子を有し、
前記投影レンズは、前記第1の反射部材により車両進行方向の下方側に向けて反射された第1の光が通過する下部領域と、前記第2の反射部材により車両進行方向の上方側に向けて反射された第1の光が通過する上部領域と、前記下部領域と前記上部領域との間に位置して、前記第2の光源から出射された第2の光が通過する中間領域とのうち、
前記下部領域に対応して配置されて、前記第1の光を車両高さ方向と車両幅方向とに拡散させる第1の拡散面と、
前記上部領域に対応して配置されて、前記第1の光を車両高さ方向と車両幅方向とに拡散させる第2の拡散面と、
前記中間領域に対応して配置されて、前記第2の光を車両高さ方向と車両幅方向とに拡散させる第3の拡散面とを有し、
前記第1の拡散面、前記第2の拡散面及び前記第3の拡散面は、それぞれ前記2方向に曲率を持ったトロイダル形状の複数の凸部又は凹部が前記2方向に並んで配置された凹凸面からなり、
なお且つ、前記2方向の何れかの曲率が異なる少なくとも2種類以上の凸部又は凹部を含むことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
第1の光を出射する第1の光源と、
前記第1の光を車両進行方向の下方側に向けて反射する第1の反射部材と、
前記第1の反射部材により反射された前記第1の光の一部を車両進行方向の上方側に向けて反射する第2の反射部材と、
前記第2の反射部材の下方に配置されて、車両進行方向に向けて第2の光を出射する第2の光源と、
前記第1の光及び前記第2の光を車両進行方向に向けて投影する投影レンズとを備え、
前記第2の光源は、車両高さ方向と車両幅方向とに対応した2方向のうち、少なくとも車両幅方向に対応した方向に並んで配置された複数の発光素子を有し、
前記投影レンズは、前記第1の反射部材により車両進行方向の下方側に向けて反射された第1の光が通過する下部領域と、前記第2の反射部材により車両進行方向の上方側に向けて反射された第1の光が通過する上部領域と、前記下部領域と前記上部領域との間に位置して、前記第2の光源から出射された第2の光が通過する中間領域とのうち、
前記下部領域に対応して配置されて、前記第1の光を車両高さ方向と車両幅方向とに拡散させる第1の拡散面と、
前記上部領域に対応して配置されて、前記第1の光を車両高さ方向と車両幅方向とに拡散させる第2の拡散面と、
前記中間領域に対応して配置されて、前記第2の光を車両高さ方向と車両幅方向とに拡散させる第3の拡散面とを有し、
前記第1の拡散面及び前記第2の拡散面による前記第1の光の拡散強度よりも、前記第3の拡散面による前記第2の光の拡散強度が小さいことを特徴とする車両用灯具。
【請求項3】
前記投影レンズは、車両進行方向とは反対方向に、第1のレンズと第2のレンズとが、この順で並んで配置された構成を有し、
前記第1の拡散面、前記第2の拡散面及び前記第3の拡散面は、前記第1のレンズの前面に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記投影レンズにより投影される前記第1の光が、上端に前記第2の反射部材の前端により規定されるカットオフラインを含む第1の配光パターンを形成し、
前記投影レンズにより投影される前記第2の光が、前記第1の配光パターンの上方に第2の配光パターンを形成し、
前記複数の発光素子の点灯を切り替えることによって、前記第2の配光パターンの配光が可変に制御されることを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記投影レンズは、少なくとも前記第2の光の一部を当該第2の光の光軸よりも下方に向けて屈折させる屈折面を有し、
前記屈折面により下方に向けて屈折された光によって、前記第2の配光パターンが前記カットオフラインと一部重なるように形成されることを特徴とする請求項の記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記屈折面は、前記中間領域の一部に対応して配置されていることを特徴とする請求項に記載の車両用灯具。
【請求項7】
前記投影レンズは、前記屈折面に入射した前記第2の光を拡散させる光拡散部を有することを特徴とする請求項又はに記載の車両用灯具。
【請求項8】
前記第3の拡散面による前記第2の光の拡散強度よりも、前記光拡散部による前記第2の光の拡散強度が小さいことを特徴とする請求項に記載の車両用灯具。
【請求項9】
前記投影レンズは、少なくとも前記第1の光の一部を当該第1の光の光軸よりも上方に向けて回折させる回折面を有し、
前記回折面により回折された光が、前記カットオフラインの上方に第3の配光パターンを形成することを特徴とする請求項の何れか一項に記載の車両用灯具。
【請求項10】
前記回折面は、前記投影レンズの中央を除く周辺領域に対応して配置されていることを特徴とする請求項に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両用前照灯(ヘッドランプ)などの車両用灯具は、光源と、光源から出射された光を車両進行方向に向けて反射するリフレクタと、リフレクタにより反射された光の一部を遮光(カット)するシェードと、シェードにより一部がカットされた光を車両進行方向に向けて投影する投影レンズとを備えている。このような車両用灯具では、すれ違い用ビーム(ロービーム)として、シェードの前端によって規定される光源像を投影レンズにより反転投影することで、上端にカットオフラインを含むロービーム用配光パターンを形成している。
【0003】
また、車両用灯具では、車両進行方向に向けて光を出射する別の光源をシェードの下方に配置し、走行用ビーム(ハイビーム)として、この光源が出射する光を投影レンズにより投影することで、ロービーム用配光パターンの上方にハイビーム用配光パターンを形成している。
【0004】
さらに、最近では、発光ダイオード(LED)などの発光素子を並べて配置し、各発光素子の点灯を切り替えることによって、ハイビーム用配光パターンの配光を可変に制御する配光可変ヘッドランプ(ADB)の開発も進められている。ADBは、車載カメラで前走車や対向車、歩行者などを認識し、前方のドライバーや歩行者に眩しさを与えることなく、夜間におけるドライバーの前方視界を拡大する技術である。
【0005】
ところで、車両用灯具では、上述したシェードにより一部がカットされた光を車両進行方向に向けて投影するため、シェードの前端により規定されるカットオフラインがシャープになり過ぎてしまうといった問題があった。すなわち、ロービーム用配光パターンでは、G値と呼ばれるカットオフラインを跨ぐ特定位置での光度断面(光度分布)の傾斜度合いが、法規上の基準値を超えて高くなることを防ぐため、カットオフラインの明暗境界を適度にぼかす必要がある。
【0006】
一方、ADBでは、光源となる複数の発光素子を面内に並べて配置するため、これら複数の発光素子を点灯させたときに、隣接する発光素子の各隙間に対応した暗部(ダーク)や光のスジなどが発生してしまうといった問題があった。
【0007】
このような問題を解決するために、下記特許文献1,2に記載の技術が提案されている。具体的に、特許文献1には、プロジェクタレンズの表面に複数の凸状部又は凹状部を規則的に並べて設けることによって、プロジェクタレンズでカットオフライン近傍に発生する色収差を抑制する技術が開示されている。
【0008】
一方、特許文献2には、投影レンズの入射面に、この入射面の基準面に対して少なくとも凸状又は凹状の何れかに形成された鉛直断面形状でシェードの上端縁における水平部分と略平行に延びたレンズ素子からなるカットオフライン調整用の上下方向拡散部を設けることによって、投影レンズの前方へ出射する光を上下方向に拡散しながら、カットオフラインをぼかす技術が開示されている。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、カットオフラインが二重に重なってしまい、路面の照射性能が著しく低下してしまう。一方、特許文献2に記載の技術では、カットオフラインを上下方向でぼかすことは可能であるが、上述したADBによる配光パターンの形成において、各発光素子の隙間に対応した暗部(ダーク)や光のスジなどを左右方向で拡散してぼかすことは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2013−93105号公報
【特許文献2】特開2008−262755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、良好な配光パターンが得られる車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する
第1の光を出射する第1の光源と、
前記第1の光を車両進行方向の下方側に向けて反射する第1の反射部材と、
前記第1の反射部材により反射された前記第1の光の一部を車両進行方向の上方側に向けて反射する第2の反射部材と、
前記第2の反射部材の下方に配置されて、車両進行方向に向けて第2の光を出射する第2の光源と、
前記第1の光及び前記第2の光を車両進行方向に向けて投影する投影レンズとを備え、
前記第2の光源は、車両高さ方向と車両幅方向とに対応した2方向のうち、少なくとも車両幅方向に対応した方向に並んで配置された複数の発光素子を有し、
前記投影レンズは、前記第1の反射部材により車両進行方向の下方側に向けて反射された第1の光が通過する下部領域と、前記第2の反射部材により車両進行方向の上方側に向けて反射された第1の光が通過する上部領域と、前記下部領域と前記上部領域との間に位置して、前記第2の光源から出射された第2の光が通過する中間領域とのうち、
前記下部領域に対応して配置されて、前記第1の光を車両高さ方向と車両幅方向とに拡散させる第1の拡散面と、
前記上部領域に対応して配置されて、前記第1の光を車両高さ方向と車両幅方向とに拡散させる第2の拡散面と、
前記中間領域に対応して配置されて、前記第2の光を車両高さ方向と車両幅方向とに拡散させる第3の拡散面とを有し、
前記第1の拡散面、前記第2の拡散面及び前記第3の拡散面は、それぞれ前記2方向に曲率を持ったトロイダル形状の複数の凸部又は凹部が前記2方向に並んで配置された凹凸面からなり、
なお且つ、前記2方向の何れかの曲率が異なる少なくとも2種類以上の凸部又は凹部を含むことを特徴とする車両用灯具。
第1の光を出射する第1の光源と、
前記第1の光を車両進行方向の下方側に向けて反射する第1の反射部材と、
前記第1の反射部材により反射された前記第1の光の一部を車両進行方向の上方側に向けて反射する第2の反射部材と、
前記第2の反射部材の下方に配置されて、車両進行方向に向けて第2の光を出射する第2の光源と、
前記第1の光及び前記第2の光を車両進行方向に向けて投影する投影レンズとを備え、
前記第2の光源は、車両高さ方向と車両幅方向とに対応した2方向のうち、少なくとも車両幅方向に対応した方向に並んで配置された複数の発光素子を有し、
前記投影レンズは、前記第1の反射部材により車両進行方向の下方側に向けて反射された第1の光が通過する下部領域と、前記第2の反射部材により車両進行方向の上方側に向けて反射された第1の光が通過する上部領域と、前記下部領域と前記上部領域との間に位置して、前記第2の光源から出射された第2の光が通過する中間領域とのうち、
前記下部領域に対応して配置されて、前記第1の光を車両高さ方向と車両幅方向とに拡散させる第1の拡散面と、
前記上部領域に対応して配置されて、前記第1の光を車両高さ方向と車両幅方向とに拡散させる第2の拡散面と、
前記中間領域に対応して配置されて、前記第2の光を車両高さ方向と車両幅方向とに拡散させる第3の拡散面とを有し、
前記第1の拡散面及び前記第2の拡散面による前記第1の光の拡散強度よりも、前記第3の拡散面による前記第2の光の拡散強度が小さいことを特徴とする車両用灯具。
〕 前記投影レンズは、車両進行方向とは反対方向に、第1のレンズと第2のレンズとが、この順で並んで配置された構成を有し、
前記第1の拡散面、前記第2の拡散面及び前記第3の拡散面は、前記第1のレンズの前面に配置されていることを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の車両用灯具。
〕 前記投影レンズにより投影される前記第1の光が、上端に前記第2の反射部材の前端により規定されるカットオフラインを含む第1の配光パターンを形成し、
前記投影レンズにより投影される前記第2の光が、前記第1の配光パターンの上方に第2の配光パターンを形成し、
前記複数の発光素子の点灯を切り替えることによって、前記第2の配光パターンの配光が可変に制御されることを特徴とする前記〔1〕〜〔〕の何れか一項に記載の車両用灯具。
〕 前記投影レンズは、少なくとも前記第2の光の一部を当該第2の光の光軸よりも下方に向けて屈折させる屈折面を有し、
前記屈折面により下方に向けて屈折された光によって、前記第2の配光パターンが前記カットオフラインと一部重なるように形成されることを特徴とする前記〔〕の記載の車両用灯具。
〕 前記屈折面は、前記中間領域の一部に対応して配置されていることを特徴とする前記〔〕に記載の車両用灯具。
〕 前記投影レンズは、前記屈折面に入射した前記第2の光を拡散させる光拡散部を有することを特徴とする前記〔〕又は〔〕に記載の車両用灯具。
〕 前記第3の拡散面による前記第2の光の拡散強度よりも、前記光拡散部による前記第2の光の拡散強度が小さいことを特徴とする前記〔〕に記載の車両用灯具。
〕 前記投影レンズは、少なくとも前記第1の光の一部を当該第1の光の光軸よりも上方に向けて回折させる回折面を有し、
前記回折面により回折された光が、前記カットオフラインの上方に第3の配光パターンを形成することを特徴とする前記〔〕〜〔〕の何れか一項に記載の車両用灯具。
10〕 前記回折面は、前記投影レンズの中央を除く周辺領域に対応して配置されていることを特徴とする前記〔〕に記載の車両用灯具。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、良好な配光パターンが得られる車両用灯具を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施形態に係る車両用灯具の外観を示す斜視図である。
図2図1に示す車両用灯具の構成を示す分解斜視図である。
図3図1に示す車両用灯具の構成を示す断面図である。
図4図1に示す車両用灯具が備える投影レンズを前面側から見た平面図である。
図5】第1〜第3の拡散面の構成を模式的に示す平面図である。
図6図1に示す車両用灯具において、第1の光及び第2の光によって仮想鉛直スクリーンの面上に形成された配光パターンを示す模式図である。
図7】拡散面の有無による仮想鉛直スクリーンの面上に形成されたロービーム用配光パターンの違いを比較するための光度分布図である。
図8図7に示すロービーム用配光パターンの2.5Rでの光度断面を示すグラフである。
図9】拡散面の有無による仮想鉛直スクリーンの面上に形成されたADB用配光パターンの違いを比較するための光度分布図である。
図10】本発明の第2の実施形態に係る車両用灯具の構成を示す断面図である。
図11図10に示す車両用灯具において、第1の光及び第2の光によって仮想鉛直スクリーンの面上に形成された配光パターンを示す模式図である。
図12】本発明の第3の実施形態に係る車両用灯具の構成を示す断面図である。
図13図12に示す車両用灯具が備える第1のレンズを後面側から見た斜視図である。
図14】本発明の第4の実施形態に係る車両用灯具の構成を示す断面図である。
図15】図に示す車両用灯具が備える第2のレンズを後面側から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面においては、各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがあり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0016】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態として、例えば図1図4に示す車両用灯具1について説明する。なお、図1は、車両用灯具1の外観を示す斜視図である。図2は、図1に示す車両用灯具1の構成を示す分解斜視図である。図3は、図1に示す車両用灯具1の構成を示す断面図である。図4は、車両用灯具1が備える投影レンズ6を前面側から見た平面図である。また、以下に示す図面では、XYZ直交座標系を設定し、X軸方向を車両用灯具1の前後方向、Y軸方向を車両用灯具1の左右方向、Z軸方向を車両用灯具1の上下方向として、それぞれ示すものとする。
【0017】
本実施形態の車両用灯具1は、車両用前照灯(ヘッドライト)として、すれ違い用ビーム(ロービーム)と走行用ビーム(ハイビーム)とを車両進行方向に向けて照射するものである。また、この車両用灯具1は、走行用ビーム(ハイビーム)の配光を可変に制御する配光可変ヘッドランプ(ADB)である。
【0018】
具体的に、この車両用灯具1は、図1図3に示すように、ロービーム(LB)用光源ユニット(第1の光源)2と、リフレクタ(第1の反射部材)3と、セパレータ(第2の反射部材)4と、ADB用光源ユニット(第2の光源)5と、投影レンズ6とを備えている。これらは、ヒートシンクとなる筐体7に一体に取り付けられている。また、筐体7には、冷却ファン8がハウジング9を介して取り付けられている。
【0019】
車両用灯具1では、冷却ファン8により送風しながら、各光源ユニット2,5で発生した熱を筐体(ヒートシンク)7から放熱させることで、各光源ユニット2,5の冷却を行っている。
【0020】
LB用光源ユニット2は、すれ違い用ビーム(ロービーム)となる第1の光L1を出射する第1の光源である。LB用光源ユニット2には、パッケージ内にLEDが搭載されたLEDモジュールが用いられている。また、LEDモジュールには、白色光を発するLEDが用いられている。さらに、LEDには、車両照明用の高出力タイプのものが使用されている。
【0021】
LB用光源ユニット2は、光源ホルダ2aに保持された状態で、筐体7の上面7aに熱伝導グリス(図示せず。)を介して取り付けられている。これにより、LB用光源ユニット2は、第1の光L1を上方(+Z方向)に向けて放射状に出射する。
【0022】
なお、LB用光源ユニット2には、上述したLED以外にも、レーザーダイオード(LD)などの発光素子を用いることができる。また、上述した発光素子以外の光源を用いてもよい。さらに、発光素子の数については、1つ限らず、複数であってもよい。
【0023】
リフレクタ3は、第1の反射部材として、例えばアルミダイキャストなどの反射部材からなる。リフレクタ3は、LB用光源ユニット2の上方を覆うように筐体7の上面7aに取り付けられている。リフレクタ3は、車両の前後方向(X軸方向)に沿った断面(X軸断面)において、その基端(後端)側から先端(前端)側に向かって、LB用光源ユニット2の中心(発光点)を焦点とする放物線を描くように湾曲して形成されている。リフレクタ3は、そのLB用光源ユニット2と対向する面(内面)が反射面とされている。リフレクタ3は、この反射面によって、LB用光源ユニット2から出射された第1の光L1を車両進行方向(+X軸方向)に向けて反射する。
【0024】
セパレータ4は、第2の反射部材として、例えばアルミダイキャストなどの反射部材からなる。セパレータ4は、ADB用光源ユニット(第2の光源)5を前方に臨ませる開口部4aと、開口部4aの上端に沿った位置から前方に向けて突出された上部シェード4bと、開口部の下端に沿った位置から前方に向けて突出された下部シェード4cとを有している。セパレータ4は、筐体7の上面7aよりも前方に上部シェード4bが位置するように筐体7の前面7bに取り付けられている。
【0025】
これにより、セパレータ4のうち、上部シェード4bの上面は、リフレクタ3により反射された第1の光L1の一部を車両進行方向の上方側に向けて反射する。また、上部シェード4bの下面及び下部シェード4cの上面は、開口部4aを通してADB用光源ユニット5から出射された第2の光L2を投影レンズ6に向けて反射する。
【0026】
ADB用光源ユニット5は、ADB用ビーム(ハイビーム)となる第2の光L2を出射する第2の光源である。ADB用光源ユニット5は、白色光を発する複数のLED(発光素子)が回路基板の面上に実装された構造を有している。また、複数のLEDは、車両高さ方向(上下方向)と車両幅方向(左右方向)とに対応した回路基板の面内における2方向のうち、少なくとも車両幅方向(左右方向)に対応した方向に並んで配置されている。
【0027】
具体的に、本実施形態のADB用光源ユニット5では、左右方向(Y軸方向)に12個のLEDが等間隔に並んで配置された構成となっている。なお、ADB用光源ユニット5では、複数のLEDが上下方向(Z軸方向)と左右方向(Y軸方向)とに、それぞれマトリックス状に並んで配置された構成とすることも可能である。
【0028】
ADB用光源ユニット5は、セパレータ4の開口部4aから前方に臨む位置に複数のLEDが並ぶように、筐体7の前面7bに熱伝導グリス(図示せず。)を介して取り付けられている。なお、ADB用光源ユニット5を構成する複数の発光素子については、上述したLED以外にも、LDなどの発光素子を用いてもよい。
【0029】
投影レンズ6は、車両進行方向とは反対方向(−X軸方向)に、第1のレンズ10と、第2のレンズ11とが、この順で並んで配置された複合レンズを構成している。このうち、第1のレンズ10は、前面10aがレンズ面(凸面)、後面10bが平面とされている。一方、第2のレンズ11は、前面11aが平面、後面11bがレンズ面(凸面)とされている。
【0030】
第1のレンズ10及び第2のレンズ11は、前面側のリテーナ12と後面側のレンズホルダ13との間に挟み込まれた状態で、これらリテーナ12及びレンズホルダ13により互いの外周部が保持されることによって、投影レンズ6として一体に配置されている。また、投影レンズ6は、リテーナ12及びレンズホルダ13を筐体7の前面7bに取り付けることによって、リフレクタ3及びセパレータ4の前方に配置されている。投影レンズ6は、第1の光L1及び第2の光L2を車両進行方向(+X軸方向)に向けて拡大して投影する。
【0031】
投影レンズ6は、図3及び図4に示すように、リフレクタ3により車両進行方向の下方側に向けて反射された第1の光L1a(L1)が通過する下部領域E1と、上部シェード4bの上面により車両進行方向の上方側に向けて反射された第1の光L1b(L1)が通過する上部領域E2と、下部領域E1と上部領域E2との間に位置して、ADB用光源ユニット5から前方に向けて出射された第2の光L2が通過する中間領域E3とのうち、下部領域E1に対応して配置された第1の拡散面14aと、上部領域E2に対応して配置された第2の拡散面14bと、中間領域E3に対応して配置された第3の拡散面14cとを有している。
【0032】
第1の拡散面14a、第2の拡散面14b及び第3の拡散面14cは、第1のレンズ10の前面10aに配置されている。また、第1の拡散面14a、第2の拡散面14b及び第3の拡散面14cは、それぞれ車両高さ方向と車両幅方向とに対応した2方向(上下方向及び左右方向)に曲率を持ったトロイダル形状の複数の凸部がマトリックス状に並んで配置された凹凸面からなる。さらに、各拡散面14c,14b,14cは、2方向(上下方向及び左右方向)の何れかの曲率が異なる少なくとも2種類以上の凸部を含む構成となっている。
【0033】
具体的に、これら第1〜第3の拡散面14a〜14cの構成を図5(a)〜(c)に模式的に示す。なお、図5(a)は、第1の拡散面14aの構成を模式的に示す平面図、図5(b)は、第2の拡散面14bの構成を模式的に示す平面図、図5(c)は、第3の拡散面14cの構成を模式的に示す平面図である。
【0034】
第1の拡散面14aには、図5(a)に示すように、左右方向(Y軸方向)の曲率が異なる2種類の凸部15a,15bが左右方向(Y軸方向)に交互に並んで配置されると共に、これら凸部15a,15bが上下方向(Z軸方向)に同列に並んで配置されている。これにより、第1の拡散面14aに入射した第1の光L1aを車両高さ方向(Z軸方向)及び車両幅方向(Y軸方向)に亘って拡散させることが可能である。
【0035】
一方、第2の拡散面14bは、図5(b)に示すように、第1の拡散面14aと同様に、左右方向(Y軸方向)の曲率が異なる2種類の凸部15a,15bが左右方向(Y軸方向)に交互に並んで配置されると共に、これら凸部15a,15bが上下方向(Z軸方向)に同列に並んで配置されている。これにより、第2の拡散面14bに入射した第1の光L1bを車両高さ方向(Z軸方向)及び車両幅方向(Y軸方向)に亘って拡散させることが可能である。
【0036】
一方、第3の拡散面14cには、図5(c)に示すように、左右方向(Y軸方向)の曲率と上下方向(Z軸方向)の曲率とが異なる4種類の凸部15c,15d,15e,15fが左右方向(Y軸方向)と上下方向(Z軸方向)とに交互に並んで配置されている。これにより、第3の拡散面14cに入射した第2の光L2を車両高さ方向(Z軸方向)及び車両幅方向(Y軸方向)に亘って拡散させることが可能である。
【0037】
投影レンズ6では、第1の拡散面14a及び第2の拡散面14bによる第1の光L1(L1a,L1b)の拡散強度(D1)よりも、第3の拡散面14cによる第2の光L2の拡散強度(D2)が小さくなるように(D1>D2)、各凸部15a〜15fの種類や曲率、配置の割合等が設定されている。
【0038】
なお、各凸部15a〜15fの種類や曲率、配置の割合等については、設定される第1の光L1(L1a,L1b)の拡散強度(D1)及び第2の光L2の拡散強度(D2)に応じて、適宜変更することが可能である。また、第1の拡散面14aと第2の拡散面14bとの間で、それぞれの拡散強度を異ならせることも可能である。
【0039】
以上のような構成を有する車両用灯具1において、投影レンズ6に正対した仮想鉛直スクリーンに対して、投影レンズ6の前方に照射される第1の光L1及び第2の光L2を投影したときの光源像(第1の光L1及び第2の光L2による配光パターンP1,P2)を図6に模式的に示す。
【0040】
投影レンズ6により投影される第1の光L1は、すれ違い用ビーム(ロービーム)として、投影レンズ6の後側焦点の近傍に形成される光源像を反転投影して、上端に上部シェード4b(セパレータ4)の前端により規定されるカットオフラインCLを含むロービーム(LB)用配光パターン(第1の配光パターン)P1を形成する。
【0041】
一方、投影レンズ6により投影される第2の光L2は、ADB用ビーム(走行用ビーム)として、LB用配光パターンP1の上方に位置して、ADB用配光パターン(第2の配光パターン)P2を形成する。また、各LEDの点灯を切り替えることによって、このADB用配光パターンP2の配光を可変に制御することが可能である。
【0042】
本実施形態の車両用灯具1では、上述した第1の拡散面14a及び第2の拡散面14bに入射した第1の光L1(L1a,L1b)を車両高さ方向(上下方向)に拡散させることによって、カットオフラインCLの明暗境界を適度にぼかしながら、G値が法規上の基準値を超えて高くなることを防ぎつつ、良好なLB用配光パターンP1を得ることが可能である。
【0043】
特に、本実施形態の車両用灯具1では、第1の拡散面14a及び第2の拡散面14bにおいて、上述した曲率の異なる2種類以上の凸部15a,15bを設けることで、カットオフラインCLが二重に重なるといったことを防ぐことが可能である。
【0044】
また、本実施形態の車両用灯具1では、上述した第1の拡散面14a及び第2の拡散面14bに入射した第1の光L1(L1a,L1b)を車両幅方向(左右方向)に拡散させることも可能である。この場合、第2の光L2を車両幅方向(左右方向)に拡散させる第3の拡散面14cとの繋がりを良くして、良好な配光パターンL1,L2を得ることが可能である。
【0045】
ここで、投影レンズ6に正対した仮想鉛直スクリーンに対して、投影レンズ6の前方に照射される第1の光L1を投影したときの光源像(LB用配光パターンP1)について、図7(a)に示す第1〜第3の拡散面14a,14b,14cを設けた場合と、図7(b)に示す第1〜第3の拡散面14a,14b,14cを設けなかった場合との比較を行った。また、図7(a),(b)に示すLB用配光パターンP1における2.5Rでの光度断面を図8に示す。なお、図8中に示す実線は、第1〜第3の拡散面14a,14b,14cを設けた場合を示し、図8中に示す破線は、第1〜第3の拡散面14a,14b,14cを設けた場合を示す。
【0046】
なお、本シミュレーションでは、上記図4に示す下部領域E1の高さ寸法を11mm、上部領域E2の高さ寸法を8.2mm、中間領域E3の高さ寸法を43.8mmとした。上記図5(a)〜(c)に示す凸部15aの左右方向の曲率半径を32mm、上下方向の曲率半径を30mmとし、凸部15bの左右方向の曲率半径を27mm、上下方向の曲率半径を30mmとし、凸部15cの左右方向の曲率半径を32mm、上下方向の曲率半径を25mmとし、凸部15dの左右方向の曲率半径を32mm、上下方向の曲率半径を13mmとし、凸部15eの左右方向の曲率半径を27mm、上下方向の曲率半径を25mmとし、凸部15fの左右方向の曲率半径を27mm、上下方向の曲率半径を13mmとした。
【0047】
図7(a),(b)及び図8に示すように、第1〜第3の拡散面14a,14b,14cを設けた場合は、第1〜第3の拡散面14a,14b,14cを設けなかった場合に比べて、G値の傾斜度合いを緩やかにことができ、カットオフラインCLの明暗境界を適度にぼかすことが可能である。
【0048】
一方、本実施形態の車両用灯具1では、上述した第3の拡散面14cに入射した第2の光L2を車両幅方向(左右方向)に拡散させることによって、隣接するLEDの各隙間に対応した暗部(ダーク)や光のスジなどの発生を防ぎつつ、良好なADB用配光パターンP2を得ることが可能である。
【0049】
特に、本実施形態の車両用灯具1では、第3の拡散面14cにおいて、上述した曲率の異なる2種類以上の凸部15c〜15fを設けることで、ADB用配光パターンP2の車両高さ方向(上下方向)及び車両幅方向(左右方向)における光度をより均一に保つことが可能である。
【0050】
また、本実施形態の車両用灯具1では、上述した第3の拡散面14cに入射した第2の光L2を車両高さ方向(上下方向)に拡散させることも可能である。この場合、第1の光L1(L1a,L1b)を車両高さ方向(上下方向)に拡散させる第1の拡散面14a及び第2の拡散面14bとの繋がりを良くして、良好な配光パターンL1,L2を得ることが可能である。
【0051】
ここで、投影レンズ6に正対した仮想鉛直スクリーンに対して、投影レンズ6の前方に照射される第2の光L2を投影したときの光源像(ADB用配光パターンP2)について、図9(a)に示す第1〜第3の拡散面14a,14b,14cを設けた場合と、図9(b)に示す第1〜第3の拡散面14a,14b,14cを設けなかった場合との比較を行った。
【0052】
図9(a),(b)に示すように、第1〜第3の拡散面14a,14b,14cを設けた場合は、第1〜第3の拡散面14a,14b,14cを設けなかった場合に比べて、隣接するLEDの各隙間に対応した暗部(ダーク)や光のスジなどの発生を抑制し、ADB用配光パターンP2の車両高さ方向(上下方向)及び車両幅方向(左右方向)における光度をより均一に保つことが可能である。
【0053】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
具体的に、上記第1及び第2の拡散面14a,14bについては、上述したLB用配光パターンP1のカットオフラインCLをぼかすため、第1の光L1(L1a,L1b)を少なくとも車両高さ方向(上下方向)に拡散させる構成とすればよい。一方、第3の拡散面14cについては、上述したADB用配光パターンP2の隣接するLEDの各隙間に対応した暗部(ダーク)や光のスジなどの発生を防ぐため、第2の光L2を少なくとも車両幅方向(左右方向)に拡散させる構成とすればよい。
【0054】
但し、これら第1〜第3の拡散面14a,14b,14cが拡散させる第1の光L1(L1a,L1b)と第2の光L2との繋がりを良くするためには、上記実施形態のように、第1〜第3の拡散面14a,14b,14cにおいて、第1の光L1(L1a,L1b)及び第2の光L2を、それぞれ車両高さ方向(上下方向)と車両幅方向(左右方向)とに拡散させる構成とすることが好ましい。
【0055】
また、上記投影レンズ6については、上述した2枚のレンズ(第1のレンズ10及び第2のレンズ11)を組み合わせた複合レンズにより構成されているが、組み合わされるレンズの枚数を更に増やすことも可能である。一方、非球面レンズ等を用いて、投影レンズ6を構成するレンズの枚数を少なくする(場合によっては1枚のレンズにする)ことも可能である。
【0056】
したがって、上記第1〜第3の拡散面14a,14b,14cについては、上述した第1のレンズ10の前面10aに配置された構成に必ずしも限定されるものではなく、投影レンズ6を構成する複数のレンズのうち、これら第1〜第3の拡散面14a,14b,14cが配置可能な何れかのレンズの一面に配置することが可能である。
【0057】
また、上記第1〜第3の拡散面14a,14b,14cについては、上述した複数の凸部15a〜15fを並べて配置する代わりに、2方向(上下方向及び左右方向)に曲率を持ったトロイダル形状の複数の凹部を並べて配置した構成とすることも可能である。
【0058】
なお、上記実施形態では、上述した第1のレンズ10の前面10aが凸面(レンズ面)となるため、この前面10aに配置される第1〜第3の拡散面14a,14b,14cについては、上述した複数の凸部15a〜15fを形成することが凸面を加工する上で好ましい。
【0059】
さらに、上記第1〜第3の拡散面14a,14b,14cを形成する複数の凸部又は凹部については、上述したトロイダル形状に限らず、第1の光L1及び第2の光L2を車両高さ方向(上下方向)と車両幅方向(左右方向)とに拡散させるための別の形状とすることも可能である。
【0060】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態として、例えば図10に示す車両用灯具1Aについて説明する。なお、図10は、車両用灯具1Aの構成を示す断面図である。また、以下の説明では、上記車両用灯具1と同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0061】
本実施形態の車両用灯具1Aは、上記車両用灯具1の構成に加えて、少なくとも第2の光L2の一部を当該第2の光L2の光軸よりも下方に向けて屈折させる屈折面16を設けた構成である。
【0062】
具体的に、この屈折面16は、第1のレンズ10の後面10bに配置されている。また、屈折面16は、上記中間領域E3の一部領域E4に対応した第1のレンズ10の後面10bの一部を切り欠くことによって、前傾の傾斜面として形成されている。これにより、屈折面16に入射した第2の光L2を、第3の光L3として当該第2の光L2の光軸よりも下方に向けて屈折させることができる。
【0063】
この構成の場合、図11に模式的に示すように、屈折面16により下方に向けて屈折された第3の光L3によって、LB用配光パターンP1の上方にカットオフラインCLと一部重なるADB用配光パターンP2を形成することが可能である。
【0064】
したがって、本実施形態の車両用灯具1Aでは、LB用配光パターンP1とADB用配光パターンP2との間に、上部シェード4b(セパレータ4)の厚みに応じた暗部(光が照射されない領域)を発生させることなく、良好な配光パターンP1,P2を得ることが可能である。
【0065】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態として、例えば図12及び図13に示す車両用灯具1Bについて説明する。なお、図12は、車両用灯具1Bの構成を示す断面図である。図13は、第1のレンズ10を後面10b側から見た斜視図である。また、以下の説明では、上記車両用灯具1,1Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0066】
本実施形態の車両用灯具1Bは、上記車両用灯具1Aの構成に加えて、屈折面16に入射した光L2を拡散させる光拡散部17を設けた構成である。具体的に、この光拡散部17は、屈折面16に形成された複数の凸面からなる。また、光拡散部17による第2の光L2の拡散強度(D3)は、第3の拡散面による前記第2の光の拡散強度(D2)よりも小さくなるように設定されている(D2>D3)。
【0067】
なお、本実施形態では、金型成形による都合のため、光拡散部17が複数の凸面により形成されているが、金型成形以外の方法により形成する場合は、上述した凸面に限定されることなく、例えばディンプル加工により複数の凹面を形成することも可能である。
【0068】
本実施形態の車両用灯具1Bでは、このような光拡散部17を設けることによって、屈折面16に入射した光L2(第3の光L3)を車両高さ方向(上下方向)及び車両幅方向(左右方向)に亘って拡散させることが可能である。
【0069】
以上のように、本実施形態の車両用灯具1Bでは、光拡散部17が屈折面16に入射した第2の光L2(第3の光L3)を上下方向(Z軸方向)に拡散させることによって、LB用配光パターンP1とADB用配光パターンP2との境界における繋がりを改善することができる。また、投影レンズ6の下部領域E1及び上部領域E2を通過した第1の光L1及び第2の光L2と、投影レンズ6の中間領域E3を通過した第2の光L2との繋がりを改善して、良好な配光パターンP1,P2を得ることが可能である。
【0070】
また、この車両用灯具1Bでは、光拡散部17が屈折面16に入射した第2の光L2(第3の光L3)を左右方向(Y軸方向)に拡散させることによって、この光拡散部17を設けなかった場合よりも、ADB用配光パターンP2の幅方向(Y軸方向)における各セグメント(各LEDから出射された光の照射領域)の繋がりを改善することが可能である。
【0071】
なお、上記実施形態では、光拡散部17によって屈折面16に入射した第2の光L2(第3の光L3)を左右方向(Y軸方向)と上下方向(Z軸方向)とに拡散させる構成となっているが、このような構成に必ずしも限定されるものでない。場合によっては、光拡散部17が屈折面16に入射した第2の光L2(第3の光L3)を上下方向(Z軸方向)のみ拡散させる構成や、光拡散部17が屈折面16に入射した第2の光L2(第3の光L3)を左右方向(Y軸方向)のみ拡散させる構成とすることも可能である。
【0072】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態として、例えば図14及び図15に示す車両用灯具1Cについて説明する。なお、図14は、車両用灯具1Cの構成を示す断面図である。図15は、第2のレンズ11を後面11b側から見た正面図である。また、以下の説明では、上記車両用灯具1,1A,1Bと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0073】
本実施形態の車両用灯具1Cは、上記車両用灯具1(又は車両用灯具1A,1B)の構成に加えて、第1の光L1の一部(以下、第4の光L4という。)を当該第1の光L1の光軸よりも上方に向けて回折させる回折面18を設けた構成である。具体的に、この回折面18は、第2のレンズ11の後面11bのうち、その中央を除く周辺領域E5に配置されている。回折面18は、この周辺領域E5に形成された回折光学素子(DOE)により構成されている。
【0074】
この構成の場合、第1の光L1のうち、回折面18により上方に向けて回折された第4の光L4によって、カットオフラインCLの上方にオーバーヘッド(OH)用配光パターン(第3の配光パターン)を形成することができる。
【0075】
また、周辺領域E5に配置されるDOE(回折面18)の割合を変更することによって、OH用配光パターンを形成する第4の光L4の光量を調整することが可能である。すなわち、周辺領域E5に配置されるDOE(回折面18)の割合を大きくすれば、第4の光L4の光量を相対的に上げることができる一方、その割合を小さくすれば、第4の光L4の光量を相対的に下げることができる。
【0076】
さらに、回折面18を設けた場合、ADB用配光パターンP2の各セグメントの幅方向(Y軸方向)に発生する色むら(色収差)も低減することが可能である。
【符号の説明】
【0077】
1,1A,1B,1C…車両用灯具 2…ロービーム(LB)用光源ユニット(第1の光源) 3…リフレクタ(第1の反射部材) 4…セパレータ(第2の反射部材) 5…ADB用光源ユニット(第2の光源) 6…投影レンズ 7…筐体(ヒートシンク) 8…冷却ファン 9…ハウジング 10…第1のレンズ 11…第2のレンズ 12…リテーナ 13…レンズホルダ 14a…第1の拡散面 14b…第2の拡散面 14c…第3の拡散面 15a〜15f…凸部 16…屈折面 17…光拡散部 18…回折面 E1…下部領域 E2…上部領域 E3…中間領域 E4…中間領域の一部領域 E5…周辺領域 P1…ロービーム(LB)用配光パターン(第1の配光パターン) P2…ADB用配光パターン(第2の配光パターン) CL…カットオフライン L1…第1の光(すれ違い用ビーム(ロービーム)) L2…第2の光(ADB用ビーム(走行用ビーム)) L3…第3の光 L4…第4の光
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
図11
図12
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図14
図15