(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のプローブ要素は第1の材料から形成され、前記第2のプローブ要素は第2の材料から形成され、前記第1及び第2の材料は、使用に際し、前記第1及び第3の表面に隣接する前記サンプルの温度が同じ場合に、前記第1の表面への熱伝達率が前記第3の表面への熱伝達率と異なるように、異なる熱伝導率を有する、請求項8に記載の装置。
前記第1のプローブ要素は、前記サンプルが前記第1のプローブ要素に押し付けられた場合に前記第1の表面が変形して前記サンプルの表面に一致することを可能にするようにされている、請求項1〜12のいずれかに記載の装置。
前記第1の表面を通っての熱伝達率は、所定の汚染物質の沸点よりも低い前記第1の表面での温度で及び前記所定の汚染物質の沸点よりも高い前記第1の表面での温度で測定され、
前記熱伝達特性の変化の検出は、前記所定の汚染物質の沸点よりも低い前記第1の表面での温度で測定された熱伝達率を前記所定の汚染物質の沸点よりも高い前記第1の表面での温度で測定された熱伝達率と比較することを含む、請求項20に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リアルタイムでサンプルの組成を検出し及び/又は液体品質をモニタリングする、代替的で、改善され、及び/又はより単純な方法が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の範囲は添付の特許請求の範囲において画定される。
【0008】
本発明のある側面によると、サンプルの組成を検出するための装置であって、サンプルに直接接触する第1の表面とサンプルに直接接触しない第2の表面とを提供するように構成される第1のプローブ要素と、第1の表面を通っての熱伝達率(rate of heat transfer)を測定するように構成される測定システムと、サンプルの組成の指標となるサンプルの熱伝達特性(heat transfer characteristic)を検出するために、当該測定された熱伝達率を解析するように構成される処理ユニットと、を備える装置が提供される。
【0009】
この装置は、随意的にはリアルタイムで且つ機械的に単純で信頼性のある構造を用いて、サンプルの組成の高感度な検出を可能にする。この手法は、本質的にはサンプルの温度の変動を取り扱う。そのような温度の変動は、他の原理に基づく従来の方法とは対照的に、測定精度に顕著な悪影響を及ぼす恐れはない。装置は、固体、液体、気体、ゲル、及びそれらの相の任意の混合、又は他の相を含む物質の任意の相の組成を検出することに適合させられてよい。ある実施形態においては、装置は、サンプルの化学組成を検出すること及び/又は1つのサンプルの化学組成を他のサンプルの化学組成と比較することが可能である。装置は、公称的には(nominally)同一の対象物の間での化学組成の差を検出することで、品質管理目的で使用されてよい。ある実施形態においては、装置は、サンプルの構造組成を検出すること及び/又は1つのサンプルの構造組成を他のサンプルの構造組成と比較することが可能である。例えば、装置は、鋳造物から形成された対象物等の製造物における望まれない欠陥、介在物、又は空隙を検出するように構成されてよい。装置は、公称的には同一の製造物の間での構造組成の差を検出することで、品質管理目的で使用されてよい。
【0010】
ある実施形態においては、液体の汚染を検出するための装置であって、液体に直接接触する第1の表面と液体に直接接触しない第2の表面とを提供するように構成される第1のプローブ要素と、第1の表面を通っての熱伝達率を測定するように構成される測定システムと、液体の汚染の指標となる液体の熱伝達特性の変化を検出するために、当該測定された熱伝達率を解析するように構成される処理ユニットと、を備える装置が提供される。
【0011】
この装置は、機械的に単純で信頼性のある構造を用いて、液体中の汚染の高感度な検出を可能にする。この手法は、本質的には液体の温度の変動を取り扱う。そのような温度の変動は、他の原理に基づく従来の方法とは対照的に、測定精度に顕著な悪影響を及ぼす恐れはない。
【0012】
ある実施形態においては、第1のプローブ要素は、測定精度を高めるために加熱され得る。例えば、加熱によりサンプル(例えば液体)とプローブ要素の間での温度差を大きくすることができ、これにより精度を高めることができる。
【0013】
ある実施形態においては、複数の(例えば2つの)プローブ要素が設けられる。複数のプローブ要素を設けることで、サンプル(例えば液体)の熱伝達特性の複数の独立した測定値がもたらされ、それにより測定精度が向上し得る。代替的に又は追加的に、サンプル(例えば液体)からプローブ要素への熱伝達率が複数のプローブ要素毎に異なるようにするために、それぞれのプローブ要素は、異なる熱量分だけ加熱され若しくは冷却されてよく及び/又は異なる伝導率の材料から形成されてよい。この場合、異なるプローブ要素からの測定値を結合することで、サンプル(例えば液体)の温度を測定することなしに、サンプル(例えば液体)の熱特性を得ることが可能になる。これにより、動作及び/若しくは構造がより単純化され、信頼性及び/若しくは寿命が改善され、並びに/又は製造コストが低減され得る。
【0014】
他の側面によると、サンプルの組成を検出するための装置であって、各々がサンプルと熱接触するように構成される1つ以上の抵抗要素と、1)1つ以上の抵抗要素の各々に加熱を提供するために1つ以上の抵抗要素の各々に流れる電流を駆動し且つ2)1つ以上の抵抗要素の各々の抵抗の変化を測定するように構成される測定システムと、サンプルの組成の指標となるサンプルの熱伝達特性を検出するために、1つ以上の抵抗要素の各々に供給された熱量と1つ以上の抵抗要素の各々の抵抗の変化との間の関係を解析するように構成される処理ユニットと、を備える装置が提供される。
【0015】
ある実施形態においては、液体の汚染を検出するための装置であって、液体と直接接触するように構成される抵抗要素と、1)抵抗要素に加熱を提供するために抵抗要素に流れる電流を駆動し且つ2)抵抗要素の抵抗の変化を測定するように構成される測定システムと、液体の汚染の指標となる液体の熱伝達特性の変化を検出するために、抵抗要素に供給された熱量と抵抗要素の抵抗の変化との間の関係を解析するように構成される処理ユニットと、を備える装置が提供される。
【0016】
この側面によると、サンプル(例えば液体)に接触する装置の部分が特に単純化され得るので、これにより低コスト化の面で及び高い信頼性の面で有利になる。
【0017】
ある実施形態においては、抵抗要素は、抵抗要素の表面積の少なくとも10%が基板(例えば基板上に実装された薄膜要素としての基板)に接触するような方法で基板上に実装される。この配置の利点は、モニタリングされているサンプル(例えば液体)を損傷する可能性のある高温に抵抗要素が到達することなしに、顕著な加熱電力を抵抗要素に印加することができる点である。基板は、抵抗要素から熱を効果的に逃がすように機能する。
【0018】
代替的な実施形態においては、抵抗要素は、抵抗要素の表面積の90%を超えてサンプル(例えば液体)に直接接触するように実装される。この構成の利点は、抵抗要素の温度を急速に変化させることができ、これにより、熱分解クリーニング及び/又は気相の急速形成(水等の特定の汚染を検出するのに利用可能である)が可能になる点である。
【0019】
他の側面によると、サンプルの組成を検出する方法であって、サンプルに直接接触する第1の表面とサンプルに直接接触しない第2の表面とを有する第1のプローブ要素を提供することと、第1の表面を通っての熱伝達率を測定することと、サンプルの組成の指標となるサンプルの熱伝達特性を検出するために、当該測定された熱伝達率を解析することと、を備える方法が提供される。
【0020】
ある実施形態においては、液体の汚染を検出する方法であって、液体に直接接触する第1の表面と液体に直接接触しない第2の表面とを有する第1のプローブ要素を提供することと、第1の表面を通っての熱伝達率を測定することと、液体の汚染の指標となる液体の熱伝達特性の変化を検出するために、当該測定された熱伝達率を解析することと、を備える方法が提供される。
【0021】
ある実施形態においては、第1の表面を通っての熱伝達率は、所定の汚染物質の沸点よりも低い第1の表面での温度で及び所定の汚染物質の沸点よりも高い第1の表面での温度で測定され、熱伝達特性の変化の検出は、所定の汚染物質の沸点よりも低い第1の表面での温度で測定された熱伝達率を所定の汚染物質の沸点よりも高い第1の表面での温度で測定された熱伝達率と比較することを含む。サンプル(例えば液体)の熱伝達特性は、所定の汚染物質が存在するかどうかに敏感に依存するであろうことが予想される。所定の汚染物質の沸点を越えて第1の表面を加熱することによって、所定の汚染物質が第1の表面の近くに存在している場合に、その量を大きく減らすことができる。サンプル(例えば液体)中に所定の汚染物質が大量に存在している場合、所定の汚染物質の沸点を越える温度及びその沸点を下回る温度で実施された測定の間で、熱伝達特性の大きな差が期待できるはずである。従って、本方法により、所定の汚染物質の存在及び/又は量を高い感度で検出することができる。
【0022】
他の側面によると、サンプルの組成を検出する方法であって、各々がサンプルと熱接触する1つ以上の抵抗要素を提供することと、1つ以上の抵抗要素の各々に流れる電流を駆動することによってその抵抗要素を加熱することと、1つ以上の抵抗要素の各々の抵抗の変化を測定することと、サンプルの組成の指標となるサンプルの熱伝達特性を検出するために、1つ以上の抵抗要素の各々に供給された熱量と1つ以上の抵抗要素の各々の抵抗の変化との間の関係を解析することと、を備える方法が提供される。
【0023】
ある実施形態においては、液体の汚染を検出する方法であって、液体と直接接触する抵抗要素を提供することと、抵抗要素に流れる電流を駆動することによって抵抗要素を加熱することと、加熱により生じる抵抗要素の抵抗の変化を測定することと、液体の汚染の指標となる液体の熱伝達特性の変化を検出するために、加熱に際して抵抗要素に供給された熱量と抵抗要素の抵抗の測定された変化との間の関係を解析することと、を備える方法が提供される。
【0024】
ある実施形態によると、この方法は、所定の汚染物質の沸点を含む温度範囲を経て抵抗要素が加熱されている間に抵抗要素の抵抗を測定することと、所定の汚染物質の蒸気の形成に特有な当該測定された抵抗の特徴を検出することによって、液体における所定の汚染物質の存在及び/又は量を検出することと、を備える。上述したように、所定の汚染物質の気化より前の液体の熱伝達特性は、所定の汚染物質の気化の後の液体の熱伝達特性とは大きく異なるであろう。この差は、抵抗要素が上記の沸点を経て加熱されているときに測定される抵抗の変動に現れるはずであるから、これにより、所定の汚染物質の存在及び/又は量を高い感度で測定することができる。
【0025】
ある実施形態においては、所定の汚染物質は水である。水はありふれた汚染物質であり、多くの状況において有害であり得る。例えば、潤滑油に水が混ざると、潤滑油の潤滑性能を大きく損なうコロイドが形成され得る。
【発明を実施するための形態】
【0028】
発明者は、材料の熱伝達特性(例えば熱伝導率κ、比熱容量c、及びこれらの特性の1つ又は両方に依存する量)が材料の組成(例えば化学組成又は構造組成)に敏感に依存し得ることを認識した。例えば液体の場合、熱伝達特性は液体中の汚染のレベルに敏感に依存し得る。密度をρとすると、熱積√(ρcκ)は、κ及びcの両方を考慮にいれているので、多くの場合、組成(例えば汚染)に特に敏感な熱伝達特性である。κ及びcの一方又は両方の変化は、典型的には、√(ρcκ)の変化をもたらす。水、鉱油、及び絶縁油におけるそれらの量の代表的な値を下表に示す。水の√(ρcκ)を両油のいずれの√(ρcκ)と比べても大きな差があることから、熱伝達特性の変化を測定することによって、油中の水汚染の検出を高感度で行い得ることが示唆される。一方で、2種類の油の間にも√(ρcκ)の大きな差がある。このことから分かるように、そのような差に基づき、水による汚染の他、種々の油(及び他の液体)の状態又は組成の変化を、それら液体の熱伝達特性の変化を測定することによって、検出することが可能である。
【0030】
水による汚染を上述した。油は金属や炭素(これらは可動部の摩耗により油に加えられる)によっても汚染されることがある。金属材料及び炭素は、油よりもかなり高い熱伝導率及び比熱容量を有する。例えば、典型的には、鋼の熱伝導率は約46W/mK、炭素鋼の熱伝導率は約54W/mK、炭素の熱伝導率は約2W/mK、ニッケルの熱伝導率は約91W/mKである。
【0031】
液体の熱伝達特性に対する汚染の影響は、その液体の成分の個々の熱伝達特性を合算するだけでは導出することはできないであろう。汚染により複合的熱特性を有する多相組成が形成されることがあるからである。しかし、多くの汚染物質にとって、全体的には、汚染に起因し得る熱伝達特性の独特な変化があるはずであるから、その変化に効果的に基づいて汚染を検出することができるはずである。
【0032】
発明者は、物質(例えば液体)の熱伝達特性の経時変化を検出することによって、物質の組成(例えば液体の汚染)の変化を検出するための単純で効果的且つ信頼性のある方法を提供し得ることを認識した。
【0033】
ある実施形態においては、液体10の汚染等のサンプルの組成を検出するための装置2が提供される。液体の汚染を検出することに適合するそのような装置2の例が
図1に示されている。この実施形態においては、装置2は第1のプローブ要素14を備える。第1のプローブ要素14は、例えば、熱伝達特性が既知である材料のブロックを備えていてよい。第1のプローブ要素14は細長くてよい(しかし、このことは必須ではない)。この例においては、第1のプローブ要素14は、液体10が収容されている容器壁8を貫通している。第1のプローブ要素14を容器壁8から熱的に絶縁するために、絶縁材料16が設けられる。他の実施形態においては、容器壁8を貫通することに代えて、第1のプローブ要素14は、単に容器壁8に接続され又は容器壁8内に埋め込まれていてよい(繰り返すが、第1のプローブ要素14を容器壁8から熱的に絶縁するために設けられた適切な絶縁を伴う)。容器壁8(任意の実施形態のための容器壁8)は、例えば、エンジン又はギアボックス等の可動部を有する機械のための潤滑油を収容するための油だめの壁であってよい。代替的又は追加的に、容器壁8(任意の実施形態のための容器壁8)は、液体の流れのための導管の一部を形成していてよい。代替的又は追加的に、容器壁(任意の実施形態のための容器壁)は、ガソリン、ディーゼル油、又はケロシン等の燃料のための容器の一部を形成していてよい。第1のプローブ要素14は、サンプル、この例では液体10、と直接接触する第1の表面31を提供するように構成される。例えば、第1の表面31は、サンプル即ち液体10に面している第1のプローブ要素の一端に形成されていてよく、この場合、「直接接触」は、温度センサ又は保護膜等の薄い要素を介して生じてよく、あるいは、もし設けられていれば薄い電気絶縁材料等の支持材の薄膜を介して生じてよい。第1のプローブ要素14は、サンプル、この例では液体10、と直接接触しない第2の表面32を更に備える。例えば、第2の表面32は、サンプル即ち液体10と反対方向に向いている第1のプローブ要素の他端に形成されていてよく、及び/又は第1のプローブ要素の本体によってサンプル即ち液体10から隔てられていてよい。第1の表面31から第2の表面32に伝わる熱は、第1のプローブ要素14の実質的全長を通過する必要がある。
【0034】
第1の表面31を通っての熱伝達率を測定するように構成される測定システムが設けられる。サンプルの組成の指標となる熱伝達特性を検出するために当該測定された熱伝達率を解析するように構成される処理ユニット4が設けられる。この特定の例においては、処理ユニット4は、液体10の汚染の指標となる液体10の熱伝達特性の変化を検出するように構成されてよい。サンプル(例えば液体10)から第1のプローブ要素14に熱が伝わる効率は、サンプル(例えば液体10)の熱伝達特性に依存する。従って、汚染により生じる熱伝達特性の変化は、他の全ての要因が等しいとして液体が汚染されていないとした場合に予想されるものとの相対関係において、第1の表面を通っての当該測定された熱伝達率の変化をもたらすことになる。
【0035】
図1は、第1の表面での温度(以下、「第1の温度」と称するものとする)を測定するように構成される第1の表面温度センサ21を測定システムが備えるタイプの実施形態の例である。このタイプの実施形態における測定システムは、第2の表面での温度(以下、「第2の温度」と称するものとする)を測定するように構成される第2の表面温度センサ22を更に備える。このタイプの実施形態における測定システムは、測定された第1及び第2の温度を用いて第1の表面31を通っての熱伝達率を測定するように構成される。
【0036】
図1の例では、熱伝達率は以下のようにして決定されてよい。
【0037】
第1のプローブ要素14の寸法及び熱伝導率は既知である。従って、第1のプローブ要素14を通っての熱伝達率は、標準的な式
【数1】
から計算することができ、ここでq´は熱伝達率(W/m
2)、κは熱伝導率(W/mK)、dT/dxは温度勾配(K/m)である。第1及び第2の表面温度センサ21及び22を用いた測定によりdT/dxが求まり、κは既知であるから、q´を容易に求めることができる。次いで、q´は、式
【数2】
を用いて、サンプル(例えば液体10)から第1のプローブ要素14への熱伝達と同等とみなすことができ、ここでhは表面熱伝達係数(W/m
2K)、T
Lはサンプル(例えば液体)の温度、T
1は第1の温度(第1の表面温度センサ21により測定される)である。
【0038】
ある実施形態においては、測定システムは、サンプル(例えば液体)の温度T
Lを測定するように構成されるサンプル温度センサ25を備え又はサンプル温度センサ25からの入力を受け取るように構成される。次いで、[2]式を用いてhの値を得ることができる。この計算は、例えば、処理ユニット4によって行われてよい。ある実施形態においては、得られたhの値は、処理ユニット4によって、汚染されていないサンプル(例えば液体)に対して予測されるhの値並びに/又は既知の量で及び/若しくは既知種の汚染物質で汚染されてしまっているサンプル(例えば液体)に対して予測されるhの値と比較される。これらの予測値は、例えばルックアップテーブルを用いて、キャリブレーション測定の結果を参照することで得られてよい。代替的又は追加的に、得られたhの値は、hの変化を検出するために、以前に得られたhの1つ以上の値(又は1つ以上の平均値)と比較されてよい。比較結果は、サンプル(例えば液体)がどれほど汚染されているのか(例えば汚染物質の量及び/又は種類)を決定し及び/又は汚染のレベルの変化を検出するために用いられる。汚染が許容できない性質のもの(例えば過度の汚染及び/又は特定の問題が生じる可能性があることを示す種類の汚染)であると判断された場合、処理ユニット4は、予め定められた特定の処置を行ってよい。処理ユニット4は、サンプル(例えば液体)の汚染の検出を示す信号を出力してよく、この信号は他のデバイスによって種々の方法で使用され得る。予め定められた処置は、警報信号を出すこと又は当該サンプル(例えば液体)に依存し若しくはそれを用いる装置の運転停止を生じさせることを含んでいてよい。例えばエンジン又はギアボックス用の潤滑油との関連では、予め定められた処置は、潤滑油を交換するサービスが実施されるべきであることをユーザに示すことを含んでいてよい。
【0039】
ある実施形態においては、装置2は、第1のプローブ要素14を加熱するように構成される第1のプローブ要素ヒータ26を更に備える。構成例が
図2及び3に示されている。ある実施形態においては、第1のプローブ要素ヒータ26は、第1の表面31にあり(
図2のように)又は第2の表面32にある(
図3のように)。ある実施形態においては、第1のプローブ要素ヒータ26は、第1の表面31とサンプル(例えば液体10)の間の温度差を修正することによりサンプル(例えば液体10)から第1の表面31への熱伝達率を変化させるために用いられる。これは、例えば、加熱が無い場合の温度差が比較的小さい例において有用であろう。これらの状況での温度差を大きくすることで、熱伝達率の決定の精度が高まり、従って汚染の検出の感度を改善することができる。後で説明するように、複数のプローブ要素を有するシステムにおいて使用される場合、第1のプローブ要素ヒータ26は、hを得るためにサンプル(例えば液体)の温度を測定する必要性を排除し又は低減するためにも用いられてよい(プローブ要素の各々と接触しているサンプルが少なくとも概略同一であるとして)。
【0040】
ある実施形態においては、興味の対象となる1つ以上の汚染物質は、プローブ要素を加熱することで達成可能な温度の範囲内に沸点を有していることがある。そのような興味の対象となる汚染物質の一例は水である。例えば、水による潤滑油の汚染は、一般的に遭遇する問題である。水による汚染は、例えばコロイドを形成することにより、油の性能を著しく阻害し得る。そのような実施形態においては、随意的には上述したように第1のプローブ要素ヒータ26を用いて加熱をもたらすために、以下の方法を行うことができる。第1のステップでは、所定の汚染物質(例えば水)の沸点よりも低い第1の表面31での温度で、第1の表面31を通っての熱伝達率が測定される。第2のステップでは、所定の汚染物質(例えば水)の沸点よりも高い第1の表面31での温度で、第1の表面31を通っての熱伝達率が測定される。この実施形態においては、サンプル(例えば液体)の熱伝達特性の変化の検出は、所定の汚染物質(例えば水)の沸点よりも低い第1の表面31での温度で測定された熱伝達率を所定の汚染物質(例えば水)の沸点よりも高い第1の表面31での温度で測定された熱伝達率と比較することを含んでいてよい。サンプル(例えば液体)の熱伝達特性は、所定の汚染物質が存在するかどうかに敏感に依存するであろうことが予想される。所定の汚染物質の沸点を越えて第1の表面31を加熱することによって、所定の汚染物質が第1の表面31の近くに存在している場合に、その量を大きく減らすことができる。サンプル(例えば液体)中に所定の汚染物質が大量に存在している場合、所定の汚染物質の沸点を越える温度及びその沸点を下回る温度で実施された測定の間で、熱伝達特性の大きな差が期待できるはずである。例えば、所定の汚染物質が水である場合、水蒸気の伝導率は水の伝導率に比べてかなり低い(36倍程度低い)。従って、比較的低レベルの水であっても、検出のための比較的大きな出力を生成するはずである。また、水から水蒸気への遷移は比較的激しいであろうから、出力信号において比較的容易に特徴(例えばステップ又は時間的に変化する不安定度)を検出することができる。水汚染の影響を示すデータ例は、
図11及び12に示す実験結果を参照して後で論じる。この手法により、水等の気化させられ得る所定の汚染物質による汚染を高い感度で検出する方法が提供される。また、この手法により、金属不純物のみに起因するサンプル(例えば液体)の熱伝達特性の変化と他の汚染物質(例えば水)に起因するサンプル(例えば液体)の熱伝達特性の変化との間での区別がより容易になる。
【0041】
代替的な実施形態においては、サンプル(例えば液体)と接触する面のサイズ及び形状が同じ複数のプローブ要素が設けられる。これらのプローブ要素は、同じ全体サイズ及び全体形状を有していてもよい。これらのプローブ要素は、使用に際して各プローブ要素に接触しているサンプル(例えば液体)が同じ温度になるように、互いに比較的接近して設けられる。このような配置においては、2つ以上のプローブ要素に対してq´を異ならせることによって、T
Lを測定することなしにhを得ることが可能になる。これにより、動作及び/若しくは構造がより単純化され、信頼性及び/若しくは寿命が改善され、並びに/又は製造コストが低減され得る。
図4はこのタイプの実施形態の例であり、2つのプローブ要素が設けられ、これらのプローブ要素の1つを加熱することによって、これらのプローブの各々に対してq´が異なるようにされている。
【0042】
図4は、第1のプローブ要素14に加えて第2のプローブ要素28を設けることを示している。第1及び第2のプローブ要素14及び28は、絶縁材料16によって互いに及び容器壁8から熱的に絶縁されている。第2のプローブ要素28は第3の表面33を有する。第1のプローブ要素14と同様、第2のプローブ要素28は、容器壁8を貫通していてよく又は貫通していなくてもよい。第3の表面33は、サンプル(例えば液体10)と直接接触するように配置される。第2のプローブ要素28は、サンプル(例えば液体10)と直接接触しない第4の表面34を有する。第3及び第4の表面は、第1のプローブ要素14の第1及び第2の表面31及び32にそれぞれ対応しており、同じように構成されてよい。
【0043】
図示された実施形態においては、測定システムは、第3の表面33の第3の温度を測定するように構成される第3の表面温度センサ23と第4の表面34の第4の温度を測定するように構成される第4の表面温度センサ24とを備える。測定システムは、第3及び第4の表面温度センサ23及び24からの出力を用いて、第3の表面33を通っての熱伝達率を測定することができる(上記[1]式を用いて)。処理ユニット4は、測定された第1及び第3の表面31及び33を通っての熱伝達率を解析して、サンプル(例えば液体10)の組成の指標となるサンプル(例えば液体10)の熱伝達特性を検出し又はサンプル(例えば液体10)の汚染の指標となるサンプル(例えば液体10)の熱伝達特性の変化を検出するように構成される。
【0044】
図示された実施形態では、第1のプローブ要素14は第1のプローブ要素ヒータ26を備える。他の実施形態においては、第2のプローブ要素28もまたヒータ(「第2のプローブ要素ヒータ」と称することがある)を備える。第2のプローブ要素ヒータは、
図2及び
図3を参照して上述したような第1のプローブ要素ヒータ26が構成され得る任意の方法で構成されてよい。
【0045】
例えば
図4に示すように、第1及び第2のプローブ要素14及び28を有する種々の実施形態においては、サンプル(例えば液体10)と2つのプローブ要素14及び28の各々との間のそれぞれの熱伝達率q´
p1及びq´
p2は、下記の[3]及び[4]式によって与えられてよい。
【数3】
【数4】
【0046】
第1のプローブ要素14が加熱される
図4の例においては、第3の表面温度T
3は第1の表面温度T
1よりも低くなるはずである。従って、q´
p1及びq´
p2は互いに異なることになる。両プローブ要素14及び28が同じ設計で且つそれらを通り過ぎる任意の流れ(例えば液体の流れ)が同じであるとすれば、熱伝達係数も同じである(即ちh
1=h
2=h)。これにより2つの等式の未知数はh及びT
Lの2つとなる。従って、hを決定することができる(T
Lの別途の測定を何ら伴わずに)。
【0047】
代替的な手法においては、T
Lは測定されるが、第2及び第4の表面温度のうち一方のみが測定される(q´
p1及びq´
p2の一方のみが利用可能である)。この場合の2つの未知数はhとq´
p1及びq´
p2の一方とであり、やはりhを求めることができる。この場合、第2及び第4の表面温度を測定するための装置を単純化することができる(2つの温度の一方が測定されることのみを必要とすることによって)。そのような実施形態においては、T
Lは測定されてよいし、あるいはキャリブレーション及びルックアップテーブルの定義から導出されてもよい。
【0048】
図4の実施形態においては、一方のプローブ要素を加熱すると共に他方のプローブ要素を加熱しないことによって、異なるq´
p1及びq´
p2が得られる。このことは必須ではない。両プローブ要素を異なる量だけ加熱することによって、一方のプローブ要素を冷却すると共に他方のプローブ要素を加熱することによって、一方のプローブ要素を冷却すると共に他方のプローブ要素を冷却しないことによって、又は両プローブ要素を異なる量だけ冷却することによっても、異なるq´
p1及びq´
p2を求めることができる。代替的又は追加的に、2つのプローブ要素を異なる材料(異なる熱伝導率を有する材料)から形成することができる。例えば、第1のプローブ要素14を金属材料から形成し、第2のプローブ要素28をセラミック材料から形成することができる。プローブ要素14,28を異なる材料から形成することによって、プローブ要素14,28のいずれもが加熱されない場合であっても、異なるq´
p1及びq´
p2を達成することができる(但し、q´
p1及びq´
p2の間の差の大きさを増大するために加熱を適用することはでき、この場合、精度が向上する)。
【0049】
複数のプローブを追加的又は代替的に用いる場合、hの独立した複数の測定をもたらすことにより、精度を向上することができる。この手法は、特に、複数の測定がブリッジ配置に組み込まれて差動出力を提供する場合に特に効果的であろう。
【0050】
ある実施形態においては、装置2は、第1の表面31及び第3の表面33から選択された一方に隣接する領域に磁性粒子又は磁化可能粒子を優先的に引き付けるように構成される磁石72を更に備える。例えば、磁石72は、第3の表面33よりも第1の表面31に近くに位置させられてよく及び/又は第3の表面33の領域内よりも第1の表面31の領域内に強い磁場を印加するように方位付けられていてよい(例えば、磁石72から第1の表面31に至る平均化された磁場の大きさは、磁石72から第3の表面33に至る平均化された磁場の大きさよりも大きい)。そのような配置の例が
図4に示されている。磁石72は、磁性粒子又は磁化可能粒子が検出されることがある場合にその感度を高める。磁石72は、磁性粒子又は磁化可能粒子がその内部で移動可能なサンプル(例えば液体)におけるそのような粒子の存在を検出するために特に効果的である。磁石72は、磁性粒子又は磁化可能粒子を伴う液体の汚染を検出するために特に効果的である。ある実施形態においては、磁性粒子又は磁化可能粒子が優先的に引き付けられる表面(例えば第1の表面31)を通っての熱伝達率の測定値と磁性粒子又は磁化可能粒子が優先的に引き付けられない表面(例えば第3の表面33)を通っての熱伝達率とが比較される。大量の磁性粒子又は磁化可能粒子が存在する場合、それぞれの表面を通っての熱伝達の間で大きな差が期待される。
【0051】
ある実施形態においては、第1のプローブ要素14は、サンプルが第1のプローブ要素14に押し付けられた場合に第1の表面31が変形してサンプルの表面(例えば非平面)に一致することを可能にするようにされている。この種の実施形態は、第1の表面31に自然に一致する表面を有していない固体サンプルへの適用を容易にする。第1のプローブ要素14をこのように構成することにより、例えば、第1の表面31とサンプルの間に他の物質や空隙が存在することを回避できるので、第1の表面31とサンプルの間の良好な熱接触が再現性よく達成される。
【0052】
図4を参照して上述した実施形態においては、第1のプローブ要素ヒータ26と第1の表面温度センサ21は別々の要素として示されている。このことは必須ではない。他の実施形態においては、単一の抵抗要素が第1のプローブ要素ヒータ26及び第1の表面温度センサ21として機能するように構成される。ある実施形態においては、この抵抗要素は薄膜抵抗要素からなり、薄膜抵抗要素は随意的に電気絶縁膜等の支持材内に密閉される。
【0053】
サンプルが液体10である場合に対して
図5にその例が示される実施形態においては、サンプルの組成を検出するための装置が提供される。
図5の特定の例においては、この装置は液体10の汚染を検出するように構成される。この装置は1つ以上の抵抗要素50を備える。各抵抗要素50は、サンプル(例えば液体10)と熱接触するように構成される。抵抗要素50は、例えば、直接接触しており、あるいは支持材、例えば保護膜又は電気絶縁膜等の薄い要素、を介して接触している。上述した実施形態におけるのと同様に、サンプル(例えば液体10)は、容器壁8、例えば潤滑油のための油だめ、燃料容器、又は液体の流れのための導管等、に収容されていてよい。ある実施形態においては、1)1つ以上の抵抗要素50の各々に加熱を提供するために1つ以上の抵抗要素50の各々に流れる電流を駆動し且つ2)1つ以上の抵抗要素50の各々の抵抗の変化を測定するように構成される測定システム54が設けられる。1つ以上の抵抗要素50は、例えば、抵抗要素50の温度を抵抗要素の抵抗に正確に結び付ける所定のキャリブレーションを有する抵抗温度計であってよい。処理ユニット4は、サンプルの組成の指標となるサンプルの熱伝達特性を検出するために、1つ以上の抵抗要素50の各々に供給された熱量と1つ以上の抵抗要素50の各々の抵抗(及び従って温度)の変化との間の関係を解析する。汚染が検出されている
図5の例においては、処理ユニット4は、液体の汚染の指標となる液体10の熱伝達特性の変化を検出する。
【0054】
ある実施形態においては、加熱のパルスが印加されてよい。加熱のパルスに対する応答が、参照サンプル(例えば液体)(例えば前回モニタリングされたサンプルであってよい)に印加された同じパルスに対する応答と比較されてよい。応答の大きさ、時間の関数としての応答の変動、又は応答の他の種々の側面が考慮されてよい。参照サンプルに印加された同じパルスに対する応答からの任意の偏差は、サンプルの汚染を、あるいはサンプルの化学組成又は構造組成の予想される値又は望まれる値からの他の偏差を示すであろう。偏差のサイズ又は時間依存性は、偏差若しくは汚染の種類又は偏差の大きさ(例えば汚染の量)の指標となり得る。検出処理の感度を調整するために、加熱の性質が変化させられてよい。汚染が検出されている場合には、検出処理の感度は、全ての汚染物質に対して概してより高くなるように、あるいは他の汚染物質に対する感度を犠牲にして特定の選択された汚染物質に対する感度をより高めるように調整されてよい。加熱の性質は、例えば、加熱パルス又は一連のパルスの形状、サイズ、継続時間、又は繰返し速度を変えることによって変化させられてよい。
【0055】
ある実施形態においては、抵抗要素は、抵抗要素の表面積の少なくとも10%が、随意的には30%超の表面積が、随意的には約50%が、随意的には抵抗要素を密閉する支持材(例えば電気絶縁材料の薄膜)を介して、基板に接触するような方法で基板上に実装される。ある実施形態においては、抵抗要素50は薄膜抵抗要素(例えば薄膜抵抗温度計)である。ある実施形態においては、抵抗要素は、基板上に実装された白金の薄膜からなる。ある実施形態においては、基板は低熱膨張ホウケイ酸ガラスからなる。
【0056】
ある実施形態においては、1つ以上の抵抗要素50は、サンプル(例えば液体10)に対向する第1の表面51と基板52に対向する第2の表面53とを有する薄膜抵抗要素である。尚、第1の表面51及び第2の表面53は、薄膜の広い面である(非常に薄いいずれの側面も含まない)。ある実施形態においては、第2の表面53と基板52の間にサンプルのいかなる部分も存在しない。第2の表面53は、介在層なしで基板52に接触しているか、あるいは薄い電気絶縁膜等の支持材を介して接触している。
【0057】
この種の実施形態においては、薄膜抵抗要素50に直接隣接する基板の表面が第1のプローブ要素の第1の表面の一例である。第1の表面は、薄膜抵抗要素(及び薄膜抵抗要素50を密閉し得る薄い電気絶縁膜等の任意の支持材)を介してサンプルに直接接触している。観察される抵抗の変化は第1の表面を通っての熱伝達率に直接依存することになるので、薄膜抵抗要素50を通る電流の駆動、及び薄膜抵抗要素の抵抗の変化の測定により、第1の表面を通っての熱伝達率の測定値がもたらされる。
【0058】
ある実施形態においては、1つ以上の抵抗要素は、電気絶縁膜等の支持材内に密閉される。
【0059】
図13及び14は、サンプル(例えば液体10)の組成を検出するための装置であって、1つ以上の抵抗要素50を備える装置の更なる例を示す。この特定の例においては、2つの抵抗要素50、即ち第1の抵抗要素50A及び第2の抵抗要素50Bが設けられる。この例においては、抵抗要素50A,50Bの各々は薄膜抵抗要素である。抵抗要素50A,50Bは、サンプル(この例では液体10)が収容される容器壁8上又は容器壁8内への実装のために構成されるプラグ70上に実装される。この実施形態では、プラグ70は基板として機能する。プラグ内には凹部76が設けられ、抵抗要素50A,50Bを流れる電流を駆動すると共に抵抗要素50A,50Bの抵抗の変化を測定するために、電気線路(electrical tracks)74が容器壁8の外側の領域から抵抗要素50A,50Bへと引き込まれることを可能にしている。凹部76は、例えばプラグのシーリングを可能にするために、絶縁材料で充填されていてよい。第1の抵抗要素50A及び第2の抵抗要素50Bから選択された一方(この特定の例では第1の抵抗要素50A)に隣接する領域に磁性粒子又は磁化可能粒子を優先的に引き付けるために、磁石72が設けられる。例えば、磁石72は、第2の抵抗要素50Bよりも第1の抵抗要素50Aに近くに位置させられてよく及び/又は第2の抵抗要素50Bの領域内よりも第1の抵抗要素50Aの領域内に強い磁場を印加するように方位付けられていてよい(例えば、磁石72から第1の抵抗要素50Aに至る平均化された磁場の大きさは、磁石72から第2の抵抗要素50Bに至る平均化された磁場の大きさよりも大きい)。磁石72は、磁性粒子又は磁化可能粒子が検出される場合にその感度を高める。磁石72は、磁性粒子又は磁化可能粒子がその内部で移動可能なサンプル(例えば液体)におけるそのような粒子の存在を検出するために特に効果的である。磁石72は、磁性粒子又は磁化可能粒子を伴う液体の汚染を検出するために特に効果的である。ある実施形態においては、第1の抵抗要素50Aが実装される表面を通っての熱伝達率の測定値と第2の抵抗要素50Bが実装される表面を通っての熱伝達率とが比較される。大量の磁性粒子又は磁化可能粒子が存在する場合、大きな差が期待される。ある実施形態においては、第1の抵抗要素50Aに供給された熱量と第1の抵抗要素50Aの抵抗の変化の間の関係と第2の抵抗要素50Bに供給された熱量と第2の抵抗要素50Bの抵抗の変化の間の関係とが比較される。大量の磁性粒子又は磁化可能粒子が存在する場合、大きな差が期待される。
【0060】
図15及び16は、1つ以上の抵抗要素50を備える更なる例を示す。この例においては、第1の抵抗要素アセンブリ86が設けられ、第1の抵抗要素アセンブリ86においては、第1の抵抗要素50Aは薄膜抵抗要素であり、導電性線路90及び92が第1の抵抗要素50Aへの電気的接続を提供している。第1の抵抗要素50A及び導電性線路は、フレキシブルな薄い絶縁膜の形態で設けられた支持材84内に密閉されている。ある実施形態においては、第1の抵抗要素アセンブリ86も全体としてフレキシブルである。また、第2の抵抗要素アセンブリ88が設けられ、第2の抵抗要素アセンブリ88においては、第2の抵抗要素50Bは薄膜抵抗要素であり、導電性線路90及び92が第2の抵抗要素50Bへの電気的接続を提供している。第2の抵抗要素50B及び導電性線路は、フレキシブルな薄い絶縁膜の形態で設けられた支持材84内に密閉されている。ある実施形態においては、第2の抵抗要素アセンブリ88も全体としてフレキシブルである。
【0061】
第1及び第2の抵抗要素アセンブリ86,88は基板52上に実装され、従って第1及び第2の抵抗要素50A,50Bは支持材84を介して52上へと実装されている。ある実施形態においては、第1及び第2の抵抗要素アセンブリ86,88は、基板52に接着されてよい。サンプル82は、基板52と反対側の第1及び第2の抵抗要素アセンブリ86,88の表面上に設けられる。これにより、第1及び第2の抵抗要素アセンブリ86,88はサンプル82と基板52の間に挟まれている。第1の抵抗要素50Aに直接隣接する基板52の表面が、第1のプローブ要素の第1の表面31の一例である。第1の表面31は、第1の抵抗要素50A及び支持材84を介してサンプル82に直接接触する。観察される抵抗の変化は第1の表面31を通っての熱伝達率に直接依存することになるので、第1の抵抗要素50Aを流れる電流の駆動、及び第1の抵抗要素50Aの抵抗の変化の測定により、第1の表面31を通っての熱伝達率の測定値がもたらされる。同様に、第2の抵抗要素50Bに直接隣接する基板52の表面が、第2のプローブ要素の第3の表面33の一例である。第3の表面33は、第2の抵抗要素50B及び支持材84を介してサンプル82に直接接触する。観察される抵抗の変化は第3の表面33を通っての熱伝達率に直接依存することになるので、第2の抵抗要素50Bを通る電流の駆動、及び第2の抵抗要素50Bの抵抗の変化の測定により、第3の表面33を通っての熱伝達率の測定値がもたらされる。
【0062】
ある実施形態においては、1つ以上の抵抗要素50及び基板52は、抵抗要素と基板の間の熱接触を維持しつつ、サンプル82が抵抗要素50に(随意的には支持材84を介して)押し付けられた場合に第1の表面31が変形してサンプル82の表面に一致することを可能にするようにされている。
【0063】
図17は代替的な実施形態を示しており、ここでは、第1及び第2の抵抗要素アセンブリ86,88はサンプル82に接続され(例えば接着により)、あるいはサンプル82に押し付けられているが、基板52は設けられていない。代わりに、第1及び第2の抵抗要素アセンブリ86,88の面(sides)が大気中に開放されていてよい。この場合、大気が基板52の役割を果たす。抵抗要素50A,50B内で生じた熱は、基板52内へではなく、大気中へと消散することになる。大気の熱特性がサンプル82の熱特性とそれほど大きくは違わない限りにおいて、サンプルの熱特性の高感度測定が可能である。この配置は、サンプル82が曲面を有している場合に特に有用である。第1及び第2の抵抗要素アセンブリ86,88は、その曲面に一致するようにされれば十分だからである。例えば、曲面に一致するように基板52を配置する必要がない。また、この配置は、構造的に単純であり且つコンパクトである。
【0064】
図15〜17の実施形態は2つの抵抗要素50A,50Bを備えているが、このことは必須ではない。他の実施形態においては、単一の抵抗要素又は3つ以上の抵抗要素が設けられる。
【0065】
図18は、
図17を参照して上述したタイプの実施形態を、曲面を有するサンプル82に適用した例を示す。この特定の例においては、単一の抵抗要素アセンブリ86が示されているが、更なる抵抗要素アセンブリが設けられてもよい。
【0066】
図10は、機械加工可能なガラスセラミック基板上に実装された白金からなる薄膜を抵抗要素50が備える実施形態を用いて得られたデータ例を示す。縦軸は、抵抗要素への一定電流の加熱パルス(約50オームの抵抗に対する5Vに対応)の印加に際しての抵抗要素50からの出力電圧を示している。縦軸は抵抗要素50の抵抗に比例し、抵抗値は、抵抗要素50の温度の関数として所定の形で順次変化する。横軸は0〜5msの時間を測定しており、この時間はこの例では加熱パルスの継続時間に対応する。抵抗要素50は、基板に密着して実装されたので、この特定の例においては、白金膜の表面積の約50%がテスト中の液体に暴露された。
図10に示す3つの曲線は、それぞれ、抵抗要素50が3つの異なる処方の液体に接触した場合に、抵抗要素50の抵抗(及び従って温度)が、加熱パルスの印加に際して時間の関数としてどのように変化したのかを示している。曲線201は、液体が油のみからなる場合に対応する。曲線202は、液体が油と水の混合物からなる場合に対応する。曲線203は、液体が油と小さな銅粒子の混合物からなる場合に対応する。見て分かる通り、3つの曲線201〜203の高さは、各場合において同一の加熱パルスが印加されたという事実にもかかわらず、著しく異なる。3つの曲線201〜203の間の差は、各場合における液体の熱伝達特性が異なることにより生じている。要するに、水又は銅粒子(及び拡張的には他の汚染物質)による油の汚染の検出は、抵抗要素50がテスト中の液体に暴露されている場合に同一の加熱パルスを抵抗要素50に印加すると共に結果を
図10の曲線と比較することによって達成可能であるということである。例えば、この例における汚染は、加熱パルスの印加に際して抵抗要素50の温度をより高くする傾向があるので、加熱パルスの印加に際しての所定の時点(又は平均値)での、純粋油参照曲線よりも高い所定のスレッショルド量を超える抵抗要素50の温度の検出は、許容量を超える汚染を示しているものと解釈されてよい。
【0067】
代替的な実施形態においては、抵抗要素50は要素60を備え、要素60は、要素60の表面積の大部分を越えて、随意的には表面積の90%を越えて、随意的には表面積の95%を越えて、随意的には表面積の99%を越えてサンプル(例えば液体10)に直接接触するように実装される。そのような要素60の一例が
図6に示されている。要素60はワイヤ(例えば約100ミクロン直径)又は他の細長い要素を備えていてよい。要素60は、その幅(例えば円形ワイヤの場合の直径)よりも実質的に大きな長さを有していてよい。例えば、長さは、要素60の幅又は直径の100倍よりも大きくてよい。要素60は例えば支柱62間に懸架されていてよく、これら支柱62は、電極として機能してよく又は電極を支持してよい。支柱/電極62は、要素60よりも何倍も大きくてよく(従って何倍も大きな熱容量を有していてよい)。支柱62が電極として機能する場合には、サンプル(例えば液体10)が収容される容器壁8からこれらの電極を絶縁するために、電気絶縁材料64が設けられてよい。この種の配置においては、要素60への及び要素60からの熱流の大部分又は実質的に全部が、サンプル(例えば液体10)を通過する必要がある。要素60内で極めて鋭い温度遷移を達成することができ及び/又は蒸気相を急速に生成することができる。
【0068】
ある実施形態においては、装置は、要素60の表面をクリーニングするために、極めて高い温度(例えば700〜800K)まで加熱するように構成される。例えば、要素60を極めて高い温度で熱分解クリーニングすることによって、油性ワニス等の堆積物を除去することができる。そのような堆積物が除去されないとすると、熱伝達測定に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0069】
ある実施形態においては、要素60は、所定の汚染物質(例えば水)の沸点を含む温度範囲を経て加熱される。上述したように、所定の汚染物質の気化より前の液体10の熱伝達特性は、所定の汚染物質の気化の後の液体10の熱伝達特性とは大きく異なるであろう。従って、所定の汚染物質の沸点を含む温度範囲を経て要素60の温度が駆動されるときの時間に対する要素60の抵抗の曲線は、関与している特定の所定の汚染物質に特有な特徴を示すはずである。例えば、所定の汚染物質が水である場合、その曲線は、要素60に隣接する水の沸騰を生じさせる点まで要素60の温度が上昇するにつれて特徴(ステップ又は不安定性等)を示すはずであるから、これにより、水の存在の識別が可能である。また、特徴の大きさは、存在している汚染物質の量に関する情報を提供するであろう。
【0070】
上述したように、測定システム54は、要素60の抵抗(及び従ってキャリブレーションが利用可能である場合に温度)を測定するのと同時に、要素60に流れる電流を駆動することによって、抵抗要素(例えば要素60)へ電力を供給するように構成されてよい。例えば要素60が白金からなる場合、温度と抵抗の間の極めて線形的な関係が知られている。
【0071】
要素60に供給される電力Pは、それに流れる電流I及び要素60の抵抗Rを用いて
【数5】
と表すことができ、ここでRは温度Tの関数であり下記に従う。
【数6】
【0072】
例えば、要素60が一定の電圧パルスで駆動されるとすると、温度TはIを測定してRを決定することによって導出することができる。f(T)は、事前のキャリブレーション測定から求めることができる。
【0073】
要素60が真空中で加熱(電流によって)されたとすると、昇温速度は下記の[C]式
【数7】
で与えられ、ここでC
pは要素60を形成している材料の比熱容量、mは要素60の質量、Jは要素60に投入された総エネルギ、tは時間、T
0は要素60の初期温度、Tは要素60の最終的な温度である。
【0074】
抵抗加熱からの投入エネルギは下記によって与えられる。
【数8】
【0075】
真空がサンプル(例えば液体)で置き換わるとすると、
【数9】
で与えられるサンプルへのエネルギの移動もあり、ここでq´はサンプル(例えば液体)への熱伝達率である。
【0076】
熱伝達周期が比較的短い場合、
【数10】
で与えられるヌセルト数(Nusselt number)Nu
Lはゼロになる傾向があり、ここでκは液体の熱伝導率、Lは代表長さ(characteristic length)、hは対流熱伝達係数である。これは、ギアボックス内又は油管内等での動的液体における熱伝達を測定する場合に重要である。Nu
Lの結果がゼロになる傾向があるということは、熱伝達の実質的に全てが液体の熱伝達係数に起因するとほぼ推定し得るということである。また、良好な液体及び良好でない液体の特性が、意図的な欠陥(1%水添加等)を与えて、あるいは既知の使用後/欠陥サンプルをテストすることによって、実験的にテストされてよい。
【0077】
加熱により生じる抵抗要素の抵抗/温度の変化は、サンプル(例えば液体)が熱を逃がす能力に依存し、従ってサンプル(例えば液体)の熱伝達特性に依存するはずである。サンプル(例えば液体)の熱伝達特性が例えば汚染により参照サンプルとの対比において異なる場合、このことは、供給された熱量と結果として得られた抵抗要素の抵抗/温度の変化との間の関係の、参照サンプル(例えば汚染されていない液体)に対して予想される関係からの偏差として検出可能であるはずである。
【0078】
図5及び6に示すタイプの実施形態によれば、液体10のための容器壁8に接続される装置の一部を簡略化することが可能である(例えばそれよりも前の図面に示すタイプの実施形態との比較において)。その一方で、必要な精度を得るために、より高度な電子的測定及び/又はキャリブレーション測定が必要な場合がある。
【0079】
他の実施形態においては、熱伝達の二次導関数q´´が求められてよい。q´´は下記の通り定義されてよい。
【数11】
【0080】
二次微分q´´はサンプル(例えば液体)の他の有用な特性を明らかにするであろう。二次導関数q´´は要素60に大きなパルス電力を印加することによって得られてよい。
【0081】
そのような測定を行うように構成される測定システム54の回路例が
図7に示されている。
【0082】
以下の要素が
図7に示される。
101 電力増幅器(例えば定格約10A)
102 蓄電器(例えば約40,000μF)
103 電源(例えばDC約30V)
104 Iのための差動増幅器
105 Vのための緩衝増幅器
R1+R2 ブリッジバランス
R3+R
G アクティブブリッジハーフ
Q1 電力スイッチ(例えば高速低抵抗MOSFET)
C 電流I出力
D 電圧V出力
E ブリッジの高側
F ブリッジの低側
G パルス制御信号
R4 電流センスシャント(抵抗)(例えば20mΩ)
A+B 開発のための診断用差動信号出力
106 ダイオード整流器
107 参照電圧
【0083】
電圧源103によって生じた電圧は、整流器ダイオード106を介して高電荷蓄電器102を充電する。蓄電器102は、電力増幅器101への高電流電力源を提供する。参照電圧107は、Eにおいて高側電圧を設定する。
【0084】
A、E、B、及びF点の間にブリッジが作られる。一例として、R3及びR
Gは約1.0オーム、R1及びR2は約470オームである。Gでの信号パルスの下でF点を急速に接地するために電力スイッチデバイスQ1が設けられている。この回路は、電力増幅器101からの高利得帯域を必要とせずにブリッジ定常電圧が維持されることを可能にする。電力増幅器101は、あるDCレベルを維持しさえすればよい。ブリッジの低側で高速MOSFET電力スイッチQ1を用いて、正確なタイミングで高エネルギパルスを生じさせることが可能である。
【0085】
ブリッジへの電圧印加により、差動電圧点(A及びB)間には、ゲージ要素R
G(例えば
図6の要素60)のオーム抵抗変化に対応する電位差がもたらされる。ブリッジ内の他の抵抗としては、温度による抵抗変化が極めて小さい(ppm)ものが選択される。従って、観測されるブリッジ電圧は、ゲージR
Gのみの関数となる。
【0086】
要素60への熱伝達及び要素60からサンプル(例えば液体)への熱伝達の正確な測定のために、[C]、[D]、及び[E]式は、要素60に関する電圧V及び電流Iの測定を必要とする。電流は、Cでの回路出力から決定される。電圧は、Dでの回路出力から決定される。このように、投入エネルギ及び対応する温度上昇を決定することができ、サンプル(例えば液体)への熱伝達関数を計算することができる。
【0087】
総エネルギ及びエネルギ率は、参照電圧107及びGでのパルス継続時間を変化させることによって制御され得る。典型的な実施形態においては、1つのパルスは数ミリ秒続き、数百ミリ秒の間パルス印加が繰り返されることはない。
【0088】
この回路は、貧弱な電源がエネルギを蓄えて極めて高いエネルギ密度のパルスを供給することを可能にする。電子制御により、C及びDでの電圧信号を読み取りつつ、電力レベル及びパルス継続が駆動される。電子制御は、測定システム54又は処理ユニット4(あるいは両方)によってもたらされてよい。
【0089】
ある実施形態においては、熱伝達データを計算する時間を残すために、コンピュータメモリ内の記憶装置への高速ADCが採用され、この熱伝達データから、定量的測定を行ってこれをキャリブレーションされたルックアップテーブルと比較することでテスト中のサンプル(例えば液体)の汚染特性の定性的評価をもたらすことができる。この機能は、例えば処理ユニット4内において実行されてよい。
【0090】
図11及び12は、種々の異なる液体に暴露された場合に、
図6に示すタイプの抵抗要素50に加熱パルスを印加した結果を示す代表的データを示す。この特定の例においては、抵抗要素50は以下の特性を有していた。即ち、組成=99.9%Pt、直径=100ミクロン、長さ=10mmであった。抵抗要素50の環境抵抗(ambient resistance)Rは、R≒0.14オームであった。抵抗要素50を約80℃だけ加熱することにより、抵抗は0.1722オームまで上昇することになる。10倍増幅のブリッジ上では、これにより2.05ボルトが生じる。電力を管理し、電力不安定性又はスパイクにより生じ得る抵抗要素50の損傷を回避するために、制御電子回路が設けられる。縦軸は、加熱パルスの印加に際しての抵抗要素50からの出力電圧を示す。縦軸は抵抗要素50の抵抗に比例し、抵抗値は、抵抗要素50の温度の関数として所定の形で順次変化する。横軸は、加熱パルスの印加に渡る時間間隔を測定している。
【0091】
図11に示す7つの曲線は、それぞれ、抵抗要素50が7つの異なる処方の液体に接触した場合に、抵抗要素50の抵抗(及び従って温度)が、加熱パルスの印加に際して時間の関数としてどのように変化したのかを示している。曲線301は、液体が比較的硬度の低い水のみからなる場合に対応する。曲線302は、液体が10W40油のみからなる場合に対応する。曲線303は、液体が10W40油+10%水の混合物からなる場合に対応する。曲線304は、液体が古いエンジン油からなる場合に対応する。曲線305は、液体がIPA(イソプロパノールアルコール)クリーナからなる場合に対応する。曲線306は、液体がIPAクリーナ及び水の50/50混合物からなる場合に対応する。曲線307は、液体が比較的硬度の高い水からなる場合に対応する。
【0092】
図12に示す6つの曲線は、それぞれ、抵抗要素50がディーゼル燃料に基づく6つの異なる処方の液体に接触した場合に、抵抗要素50の抵抗(及び従って温度)が、加熱パルスの印加に際して時間の関数としてどのように変化したのかを示している。曲線401は、液体がディーゼル燃料のみからなる場合に対応する。曲線402は、液体が1%の水を有するディーゼル燃料からなる場合に対応する。曲線403は、液体が2%の水を有するディーゼル燃料からなる場合に対応する。曲線404は、液体が5%の水を有するディーゼル燃料からなる場合に対応する。曲線405は、液体が10%の水を有するディーゼル燃料からなる場合に対応する。曲線406は、液体が非常に汚れた「スラッジ」組成からなる場合に対応する。
【0093】
図11及び12の曲線において、関与した液体の組成の変更は、特定の時点での抵抗要素50の抵抗の絶対値においてのみならず、抵抗が時間の関数としてどのように変化したか(即ち曲線の形状)においても、顕著な変化をもたらしていたことが明らかに分かる。従って、曲線の絶対値及び形状のいずれか一方又は両方を用いて、液体の組成の変化を検出することができる。曲線の形状は、例えば、時間に関する抵抗(又は温度)の導関数(例えば一次導関数、二次導関数等)に注目することによってパラメータ化されてよい。液体の組成の変化は、例えば、所定のスレッショルドより大きい抵抗の導関数の変化を探すことによって検出されてよい。既に述べたように、感度を最適化するために、入力パルスの性質が変化させられてもよい(それにより、例えば、投入エネルギの量、エネルギ投入速度、投入エネルギの変化の速度等が変化する)。
【0094】
図11及び12の曲線は、液体の成分の相変化(例えば水の気化)が曲線における区別可能な(及び従って検出可能な)特徴をどのようにもたらすのかも示している。例えば、
図11及び12の実験設定において、80℃の温度上昇(水の沸点に到達するのに概ね必要であろう温度上昇)が、結果として抵抗要素50の抵抗の23%の変化をもたらしている。電圧単位に変換すると、これは2.05ボルトである。水の気化の最も単純な効果は、
図11の曲線301及び307において見ることができ、これらの曲線は、それぞれ、影響のある他の成分を伴わない比較的硬度が低い水及び比較的硬度が高い水を表している。温度が100℃あたりに達すると(約2.05ボルトの電圧上昇)、それぞれの曲線は不安定になり始め、一連の温度の下降及び上昇を示すことが分かる。温度の下降は、水蒸気のポケットが形成され次いで冷水で満たされる(これにより温度低下がもたらされる)ときに生じる。水は次いで、水蒸気の次のポケットが生成されるまで再び加熱される(これにより温度上昇がもたらされる)。そのような挙動の識別を用いて、液体(又は液体内の成分)の沸点を識別することができ、それにより、液体の組成又は液体内の成分の組成に関する情報が提供され得る。
【0095】
図12の曲線402〜406において、ディーゼル燃料が比較的汚染されていない場合(曲線401)と比べて、抵抗要素50から熱がどれほど効率的に持ち出されるのかに水の存在が大きく影響していることが分かる。尚、最初の100℃は出力電圧の2.05ボルトの上昇に対応し、それに続く各100℃は出力電圧の2.73ボルトの上昇に対応する。従って、ディーゼル燃料のこのテスト例においては、温度が350℃程度まで上昇していることが分かるはずである。14msあたりで曲線401に見られる僅かな傾斜の変化は、比較的純粋なディーゼル燃料でさえも実際には微量の水を含んでいる(0.1%のオーダと推定される)のが理由である。微量の水でさえも水の熱伝達特性にこのように大きな影響を与えるという事実からも、汚染を検出する本手法の感度が強調される。
【0096】
図11に示す油と水の混合物に対する曲線と
図12に示す燃料と水の混合物に対する曲線は、形状が大きく異なる。これは、各場合に含まれる成分の異なる相対的混和性、及び結果として得られる2相混合物の特性に影響する他の要因に起因しているものと思われる。
【0097】
ある実施形態においては、装置2は、液体内の金属汚染物質を検出するように構成される渦電流センサ36を更に備える。構成例が
図4に示すタイプの配置に関連して
図8及び9に模式的に示されている。しかし、渦電流センサ36のための多くの他の構成を想定することができ、本発明の任意の実施形態との組み合わせにおいてそれらを用いることができる。渦電流センサは、1つのコイル(
図8のような)、2つのコイル(
図9のような)、又は更なるコイルを備えていてよい。コイルは、第1及び/又は第2の表面31,32や抵抗要素50に隣接する液体10の一部分において優先的に金属不純物の存在を検出するように構成されてよい。渦電流センサ36は、汚染のレベル及び/又は液体の汚染の種類に関する更なる情報を提供することができる。
【0098】
本発明の実施形態は、多種多様な状況において液体の汚染を検出するために適用することができる。例えば、液体は、エンジン及びギアボックスを含む、可動部を有する任意の機械における潤滑液又は冷却液であってよい。液体は、油圧油又は燃料を備えていてよい。液体は、洗浄液、例えば食品製造施設で使用する洗浄液であってもよい。
【0099】
図19は、サンプルが種々の異なる個体対象物を備える場合に、
図5又は
図13〜18のいずれかを参照して上述したタイプの抵抗要素50に加熱パルスを印加した結果を示す代表的データを示している。抵抗要素50は、薄い導電性膜を備える支持材内に密閉された。参照固体対象物に対する曲線には「Datum」と表示されている。同一の公称組成の他の個体対象物に対する曲線はM1〜M7で表されている。この特定の例においては、固体対象物はそれぞれ微粒子化された岩石のサンプルである。縦軸は、加熱パルスの印加に際しての抵抗要素50からの出力電圧を示す。縦軸は抵抗要素50の抵抗に比例し、抵抗値は、抵抗要素50の温度の関数として所定の形で順次変化する。横軸は、加熱パルスの印加に渡る時間間隔を測定している。
図19は、同一の公称組成の固体サンプルにおいてさえも、実際の組成の小さな変化が、加熱パルスに対する抵抗要素50の応答において検出可能な差をもたらし、それにより、サンプルの参照サンプル(「Datum」)からの偏差の検出が可能であることを実証するものである。
【0100】
抵抗要素50が支持材又は他の材料によってサンプル82から隔てられている実施形態においては、発生した熱がサンプル82内に有意に移行するのに十分長い時間(パルス長)電流が印加されるべきである。もしパルス長が短すぎると、加熱に際して支持材又は他の材料のみについてサンプリングがなされ、支持材又は他の材料の熱特性に関する情報が提供されてしまい、これは興味の対象ではないであろう。これが、
図19の例(抵抗要素は支持材により密閉されている)におけるパルス長(0.1s)が
図10〜12の例において用いられたパルス長よりもだいぶ長い理由である。抵抗要素50で生じた熱により種々の層が順次サンプリングされるという事実は、一回の測定で1つのサンプルの種々の層に関する情報を得るために用いることができる。異なる時間窓における抵抗要素の抵抗の差異は、異なる層に起因している可能性がある(より早い時間窓はより深い時間窓よりも浅い層に対応している)。これにより、1つのサンプルの熱特性に関する情報をそのサンプル内の異なる深さで選択的に得る便利な方法が提供される。